(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025053865
(43)【公開日】2025-04-07
(54)【発明の名称】行動推定装置、行動推定方法、プログラム及び行動推定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20250331BHJP
G06Q 10/0639 20230101ALI20250331BHJP
【FI】
G06Q50/22
G06Q10/0639
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162945
(22)【出願日】2023-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】520351901
【氏名又は名称】株式会社トライト
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐司
(72)【発明者】
【氏名】碇 誠悟
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】スタッフの位置情報をより高精度に検知して、スタッフの行動をより適切に推定することを可能とする。
【解決手段】介護施設内で作業する介護者の行動を推定する行動推定システム100は、介護施設の所定の位置に設けられたUWBタグ10と、UWB方式の無線通信を行って、介護者とUWBタグ10との距離及び方角を示す測距情報を取得するセンサ部21を有する介護者端末20と、センサ部21から取得した測距情報に基づいて介護者の位置情報を算出し、介護者の行動を推定する行動推定装置30と、管理者端末40を備える。行動推定装置30は、測距情報取得部311、位置情報算出部312、行動推定部313、行動推定結果出力部314及び行動記録作成部315を有する制御部31を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内で作業するスタッフの行動を推定する行動推定装置であって、
前記スタッフが携帯する1以上のセンサ部が、前記施設内の所定の位置に設けられた1以上のUWBタグとUWB方式の無線通信を行って取得した、前記UWBタグとの距離及び方角を含む測距情報を取得し、
取得した前記測距情報に基づいて前記スタッフの位置情報を算出し、
算出した前記位置情報に基づいて、前記スタッフの行動を推定する制御部を備える
ことを特徴とする行動推定装置。
【請求項2】
前記施設は、介護施設であり、前記スタッフは、前記介護施設で介護行動を行う介護者である
ことを特徴とする請求項1に記載の行動推定システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記測距情報として1つの前記UWBタグの前記距離のみを取得したときであって、前記UWBタグが、遮蔽空間に設置されたものであるとき、前記遮蔽空間の位置情報を、前記スタッフの前記位置情報とする
ことを特徴とする請求項1に記載の行動推定システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記測距情報として複数の前記UWBタグの前記距離のみを取得したときであって、複数の前記UWBタグが非遮蔽空間に設置されたものであるとき、取得した複数の前記距離に基づいて、前記UWBタグ間の相対座標を算出し、算出した前記相対座標に基づいて、前記スタッフの前記位置情報を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の行動推定システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記測距情報として1つの前記UWBタグの前記距離のみを取得したときであって、前記UWBタグが非遮蔽空間に設置されたものであるとき、直前に取得した他の前記UWBタグの前記測距情報に基づいて、前記スタッフの前記位置情報を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の行動推定システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記測距情報が取得できないとき、直前に取得した前記UWBタグの前記測距情報と、当該測距情報を取得してから現在までの経過時間及び前記スタッフの歩行速度に基づいて、前記スタッフの前記位置情報を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の行動推定システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項の行動推定装置の制御部で実行される行動推定装置であって、
前記スタッフが携帯する1以上のセンサ部が、前記施設内の所定の位置に設けられた1以上のUWBタグとUWB方式の無線通信を行って取得した、前記UWBタグとの距離及び方角を含む測距情報を取得する工程と、
取得した前記測距情報に基づいて前記スタッフの位置情報を算出する工程と、
算出した前記位置情報に基づいて、前記スタッフの行動を推定する工程と、を含む
ことを特徴とする行動推定方法。
【請求項8】
コンピュータにより実行されるプログラムであって、
このコンピュータに、請求項7に記載の行動推定方法の各工程を実行させるプログラム。
【請求項9】
施設内で作業するスタッフの行動を推定する行動推定システムであって、
前記施設の所定の位置に設けられ、UWB方式の無線通信を行う1以上のUWBタグと、
前記スタッフが携帯し、前記UWBタグとUWB方式の無線通信を行って、前記UWBタグとの距離及び方角を含む測距情報を取得する1以上のセンサ部と、
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の行動推定装置と、を備える
ことを特徴とする行動推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、行動推定装置、行動推定方法、プログラム及び行動推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種センサでの検知結果に基づいて、施設で作業するスタッフの行動を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1~3等参照)。特許文献1には、介護施設の各部屋にビーコンを設置し、各ビーコンが発するシグナルを、スタッフである介護者が携帯する受信機で受信し、受信結果に基づいて介護行動を推定する行動推定装置が記載されている。特許文献2には、介護者が装着する加速度センサから出力される加速度データを受信し、受信結果に基づいて介護行動を推定する行動推定装置が記載されている。特許文献3には、病院の病室等にセンサを設置し、看護師が送信機を携帯し、センサの受信結果に基づいて看護師の行動を推測する行動推定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-149242号公報
【特許文献2】特開2018-79069号公報
【特許文献3】特許第7137840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で用いるビーコン等のような近距離無線では、測距精度が低く、隣り合う居室のように直線距離が近い場所では、介護者がいる場所を識別することが難しい。特許文献2で用いる加速度センサも、介護者の行動を正確に把握することが難しい(正確に把握することができる介護者の行動は非常に限定的である。)。このため、これらの従来技術は、どの場所でどの被介護者に対してどのような介護行動を行ったのかを適切に推定できないことがある。特許文献3に記載の技術は、高価なセンサを複数の場所に設置するため、導入コストが高くなり、限られた施設でしか導入ができない。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、介護者等のスタッフの位置情報をより高精度に検知して、スタッフの行動をより適切に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の行動推定装置は、施設内で作業するスタッフの行動を推定する行動推定装置である。この行動推定装置は、前記スタッフが携帯する1以上のセンサ部が、前記施設内の所定の位置に設けられた1以上のUWBタグとUWB方式の無線通信を行って取得した、前記UWBタグとの距離及び方角を含む測距情報を取得し、取得した前記測距情報に基づいて前記スタッフの位置情報を算出し、算出した前記位置情報に基づいて、前記スタッフの行動を推定する制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
このように構成することで、スタッフの位置情報をより高精度に検知して、スタッフの行動をより適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る行動推定装置を備える行動推定システムの全体構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る行動推定システムにおける、介護施設内でのUWBタグの設置例を示す概略図である。
【
図3】記憶部のデータ構造の一例を示す模式図であって、(a)は介護者情報記憶部のデータ構造、(b)はタグ情報記憶部のデータ構造、(c)は行動パターン情報記憶部のデータ構造、(d)は取得情報記憶部のデータ構造、(e)は行動推定情報記憶部のデータ構造である。
【
図4】介護者の位置情報の算出手順を説明するための説明図である。
【
図5】介護者の位置情報の算出手順を説明するための説明図である。
【
図6】介護者の位置情報の算出手順を説明するための説明図である。
【
図7】行動推定装置の動作の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】位置情報算出工程の流れ一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】介護者の位置情報の算出手順を説明するための説明図であり、(a)はUWBタグとの距離及び方角が取得できた場合の算出手順、(b)はUWBタグとの距離のみが取得でき、かつ介護者が遮蔽空間にいる場合の算出手順、(c)は複数のUWBタグとの距離のみが取得でき、かつ介護者が非遮蔽空間にいる場合の算出手順である。
【
図10】介護者の位置情報の算出手順を説明するための説明図であり、(a)は1つのUWBタグとの距離のみが取得でき、かつ介護者が非遮蔽空間にいる場合の算出手順、(b)はUWBタグを検知できない場合の算出手順である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に係る行動推定システム100は、図面を参照して、以下のように説明される。第1実施形態に係る行動推定システム100は、介護施設1内で介護作業するスタッフである介護者(介助者)の介護行動(介助行動)を推定するシステムである。さらに第1実施形態に係る行動推定システム100は、推定した行動に基づいて、行動記録である介護記録を作成するシステムである。
【0010】
なお、本開示の行動推定システムが適用される分野は、介護に限定されず、医療、保育、接客、販売等、様々な分野に適用できる。例えば、医療の場合、行動推定システムは、病院等の医療施設で、スタッフである医師、看護師等が、患者等に対して行う医療行動を推定するシステムとすることができる。保育の場合は、行動推定システムは、保育施設で、スタッフである保育士等が、保育園児等に対して行う保育行動を推定するシステムとすることができる。接客の場合は、商業施設、観光施設等で、スタッフである接客係が顧客等に対して行う接客行動を推定するシステムとすることができる。販売の場合は、商業施設等で、スタッフである販売等が、顧客等に対して行う販売行動を推定するシステムとすることができる。
【0011】
図1、
図2に示されるように、第1実施形態に係る行動推定システム100は、UWBタグ10と、センサ部21を有する介護者端末(スタッフ端末)20と、行動推定装置30と、管理者端末40と、を主に備えている。
【0012】
UWBタグ10は、センサ部21とUWB方式の無線通信(超広帯域無線通信)を行うタグである。UWB方式の無線通信は、通信範囲が半径約10mとされているが、高速通信が可能であり、かつcmオーダーの精度での測距が可能である。また、センサ部21は、非常に広い帯域を用いる技術であることから、直接届く電波や壁等の遮蔽物に反射して届く電波など複数の経路(マルチパス)で届く電波の判別性能が非常に高い。したがって、センサ部21は、ビーコンやBluetooth(登録商標)を用いた場合に比べ、より高精度での測距情報の取得が可能である。
【0013】
UWBタグ10は、
図2に示されるように、介護施設1の複数の場所の所定の位置(例えば、壁、天井等)に各々設置されている。より具体的には、居室(1)~居室(9)の壁等にはUWBタグ101~109が設置されている。便所(1)~(3)の壁等にはUWBタグ110~112が設置されている。浴室(1)~(2)の壁等にはUWBタグ113~114が設置されている。静養室の壁等にはUWBタグ115、リネン室の壁等にはUWBタグ116、サービスステーションの壁等にはUWBタグ117が設置されている。エレベータ近傍の壁等にはUWBタグ118が、階段の壁等にはUWBタグ119が、倉庫の壁等にはUWBタグ120が設置されている。廊下、ロビー、食堂等の共有エリア(1)~(4)の天井等にはUWBタグ121~124が設置されている。
【0014】
居室、便所、浴室、静養室、リネン室、階段、倉庫は、壁や扉で仕切られた遮蔽空間である。ただし、これらの部屋の扉が開いているときは、非遮蔽空間となる。これに対して、サービスステーション、共有エリア、エレベータ近傍は、隣接したUWBタグ10を遮る壁等がなく、非遮蔽空間となっている。
【0015】
UWBタグ10は、タグIDが記憶されており、このタグIDを含むUWB電波を所定の検知範囲内に送信する。
【0016】
介護者端末20は、介護者が携帯する端末であり、UWBタグ10からUWB電波を受信することで、UWBタグ10との距離及び方角を含む測距情報を取得し、行動推定装置30へ測距情報を含む情報を送信する。介護者端末20は、スマートフォンからなる。なお、介護者端末20は、スマートフォンに限定されず、介護者が携帯しつつ介護行動が行えればよく、タブレット端末等の情報端末でもよいし、センサ部21のみを備える機器でもよい。
【0017】
介護者端末20は、介護者端末20用の行動推定アプリケーションソフトウェアが予めインストールされている。介護者端末20は、行動推定装置30と、Wi-Fi(登録商標)等の近距離無線通信又は電話回線等を介して相互に情報を送受信可能に接続されている。
【0018】
介護者端末20は、前述したセンサ部21と、介護者端末制御部22と、測距情報記憶部23と、介護者端末表示部24と、介護者端末入力部25とを主に備えるが、この他にもスマートフォンが通常備える部材を備えている。
【0019】
センサ部21は、UWBセンサからなり、UWBタグ10とUWB方式の無線通信を行って、UWBタグとの距離及び方角を示す測距情報、並びにタグIDを取得する。
【0020】
介護者端末制御部22は、スマートフォンに内蔵されたCPU、MPU等のプロセッサ等から構成される。介護者端末制御部22は、予めインストールされた行動推定アプリケーションソフトウェアを実行し、介護者端末20の動作を制御する。介護者端末制御部22は、センサ部21が取得した測距情報を、タグIDと紐づけて測距情報記憶部23に記憶する。また、介護者端末制御部22は、タグID、測距情報、測距情報の取得時刻及び端末IDを、行動推定装置30へ送信する。さらに介護者端末制御部22は、介護者が操作する操作メニューや、行動推定装置30が生成した介護記録を介護者端末表示部24に表示させる。
【0021】
測距情報記憶部23は、スマートフォンに内蔵されたメモリ等からなり、介護者端末制御部22により、センサ部21が取得した測距情報がタグIDと紐づけられて記憶される。介護者端末表示部24は、タッチパネルディスプレイからなり、介護者端末制御部22の制御により、介護者が操作する操作メニューや介護記録が表示される。このタッチパネルディスプレイは、介護者端末入力部25としても機能する。介護者端末入力部25は、介護者の操作の入力を受け付け、介護者端末制御部22に操作信号を出力する。
【0022】
管理者端末40は、介護施設の職員又はシステムの管理者が操作する機器であり、介護施設のサービスステーションや、これとは別の事務室内等に設定される。管理者端末40は、ノート型PC、デスクトップ型PC等の情報端末を用いることができるが、タブレット端末、スマートフォン等の携帯情報端末を用いることもできる。管理者端末40は、行動推定装置30と、インターネット等の通信ネットワークを介して相互に情報を送受信可能に接続されている。
【0023】
管理者端末40は、管理者端末制御部41と、管理者端末記憶部42と、管理者端末表示部43と、管理者端末入力部44とを備える。また、この他にも、管理者端末40は、マイク、スピーカ、カメラ、A/D変換器、通信機器、プリンタ等、情報端末が備える機器を備えている。
【0024】
管理者端末制御部41は、CPU、MPU等のプロセッサ等から構成される。管理者端末制御部41は、管理者端末40の動作を制御する。管理者端末40は、汎用のブラウザ等を用いて、又は予めインストールされた行動推定アプリケーションソフトウェアを起動することで、通信ネットワークを介して行動推定装置30にアクセスし、行動推定サービスを利用することができる。
【0025】
管理者端末記憶部42は、ROM、RAM等の半導体メモリ、メモリカード等の記憶媒体等から構成される。管理者端末記憶部42は、管理者端末40における各種動作に用いられる各種プログラムや各種データが一時的又は非一時的に格納される。
【0026】
管理者端末表示部43は、例えば液晶ディスプレイからなり、管理者端末制御部41の制御により、介護者が操作する操作メニューや介護記録が表示される。管理者端末入力部44は、キーボード、マウス等からなり、管理者等の操作の入力を受け付け、管理者端末制御部41に操作信号を出力する。
【0027】
行動推定装置30は、介護者が携帯する介護者端末20のセンサ部21が取得したUWBタグ10との距離及び方角を含む測距情報及びタグIDに基づいて、介護者の位置情報を算出し、算出した位置情報に基づいて、介護者の行動を推定する装置である。
【0028】
行動推定装置30は、クラウドコンピューティングサービスを利用した、クラウドサーバ(以下、単に「サーバ」という。)とすることができる。行動推定装置30は、行動推定サービスを提供する業者等が有するサーバとすることや、自社サーバ等とすることや、レンタルサーバとすることができる。行動推定装置30は、例えば、1台又は複数台のサーバ用PCやサーバ用汎用コンピュータ(メインフレーム)等からなるが、これらに限定されない。
【0029】
行動推定装置30は、制御部31と、記憶部32とを主に備えるが、この他にも、通信機器等、サーバが備える機器を備えている。
【0030】
記憶部32は、ROM、RAM等の半導体メモリ、メモリカード等の記憶媒体等から構成される。記憶部32は、行動推定装置30における各種動作に用いられる各種プログラムや各種データが一時的又は非一時的に格納される。また、記憶部32は、介護者情報記憶部321と、タグ情報記憶部322と、行動パターン情報記憶部323と、取得情報記憶部324と、行動推定情報記憶部325とを含む。
図3の(a)~(e)は、各記憶部(321~325)のデータ構造の一例を示す模式図である。
【0031】
介護者情報記憶部321は、
図3(a)に示されるように、介護者端末20を識別する端末IDと、各介護者端末20を携帯する介護者の名前又は介護者ID等を含む介護者情報が記憶されている。タグ情報記憶部322は、
図3(b)に示されるように、UWBタグ10を識別するタグIDと、各UWBタグ10が設置されている場所(例えば、居室(1)、居室(2)等、
図2に示されている各場所)と、当該場所の位置情報である位置座標と、遮蔽空間かどうかを示す遮蔽状態フラグを含むタグ情報と、当該場所における電波変化特徴量が記憶されている。遮蔽状態フラグは、例えば、遮蔽空間を示すフラグ、非遮蔽空間を示すフラグが設定されるが、さらに、閉扉時は遮蔽空間だが、開扉時は非遮蔽空間となる場所を示すフラグ、共有スペースで原則非遮蔽空間だが、可動式パーテーション等を設置して遮蔽空間とした場所を示すフラグ等を設定することもできる。
【0032】
行動パターン情報記憶部323は、介護施設1における行動(介護業務)の行動パターン情報(スケジュール情報)が記憶される。行動パターン情報は、例えば、
図3(c)に示されるように、「10:00 Aさん排泄介助」、「11:00 Bさん入浴介助」等のように、介護施設1の一日における全ての行動の時刻と行動内容を含む。なお、行動パターン情報は、これに限定されず、例えば、被介護者ごとに、被介護者ID等の被介護者情報と、各被介護者に対して行われる行動の時刻及び介護内容を含むものであってもよい。または行動パターン情報は、介護者ごとに、介護者ID等の介護者情報と、各介護者が行う行動の対象となる被介護者、時間、行動内容等を含むものであってもよい。
【0033】
介護者情報記憶部321、タグ情報記憶部322及び行動パターン情報記憶部323の各情報は、行動推定サービスの導入やメンテナンス等における初期設定時に、管理者端末40から管理者、業者等によって登録される。
【0034】
取得情報記憶部324は、
図3(d)に示されるように、後述の測距情報取得部311が測距情報を取得した日時と、測距情報に基づいて位置情報算出部312が取得した位置情報を含む取得情報が記憶される。取得情報は、介護者ごとに位置情報算出部312により取得情報記憶部324に記憶される。
【0035】
行動推定情報記憶部325は、
図3(e)に示されるように、後述の行動推定部313が推定した行動の内容(行動推定結果)を含む行動推定情報が記憶される。行動推定情報は、行動推定部313により行動推定情報記憶部325に、介護者ごとに記憶されるが、被介護者ごとに記憶されてもよい。また、行動推定情報は、管理者端末40又は介護者端末20からの入力によって修正又は追加されることもできる。
【0036】
制御部31は、CPU、MPU等のプロセッサ等から構成される。制御部31は、GPU、FPGA、ASIC等を備えていてもよい。制御部31は、記憶部32に予め記憶されたコンピュータプログラムを、例えば記憶部32のRAM上に展開することにより、行動推定装置30の動作を統括的に制御する。
【0037】
また、制御部31は、記憶部32に記憶された行動推定プログラムを実行することで、
図1に示されるように、測距情報取得部311、位置情報算出部312、行動推定部313、行動推定結果出力部314及び行動記録作成部315として機能する。
【0038】
測距情報取得部311は、各介護者端末20から、取得日時、端末ID、タグID及び測距情報等を取得する。取得日時は、介護者端末20のセンサ部21が測距情報を取得した日時である。端末IDは、当該介護者端末20の識別子である。タグIDは、センサ部21がUWBタグ10から取得したUWBタグ10の識別子である。測距情報は、センサ部21が取得したUWBタグ10との距離及び方角を含む情報である。
【0039】
測距情報取得部311は、これらの情報を、所定の間隔、例えば、1分間隔で介護者端末20から取得しているが、これに限定されない。測距情報取得部311は、これらの情報を、30秒間隔、10分間隔、30分間隔等、適宜の間隔で取得してもよいし、より短い間隔でほぼ連続的に取得してもよいし、業務終了後等に一括で取得してもよい。
【0040】
位置情報算出部312は、測距情報取得部311が取得した端末ID、タグID及び測距情報に基づき、介護者端末20を携帯する介護者の位置情報(位置座標)を算出する。位置情報算出部312は、算出した位置情報及び取得時刻を、端末ID(介護者)ごとに取得情報記憶部324に記憶する。
【0041】
位置情報算出部312は、以下のような取得手順によって位置情報を取得する。まず、位置情報算出部312は、端末IDをキーに介護者情報記憶部321を検索し、介護者情報を取得する。次に、位置情報算出部312は、例えば、介護者端末20が、ある日時において1つのUWBタグ10から測距情報を取得したとき、タグIDをキーにタグ情報記憶部322を検索し、当該UWBタグ10のタグ情報を取得し、タグ情報中の位置座標と、測距情報の距離及び方角に基づいて、介護者の位置情報を算出する。
【0042】
位置情報算出部312は、介護者端末20が、同時刻に複数のUWBタグ10からタグID及び測距情報を取得していたとき、距離の最も近いUWBタグ10に基づいて介護者の位置情報を算出する。なお、他の異なる実施形態として、位置情報算出部312は、取得したすべてのUWBタグ10の情報に基づいて位置情報を算出し、算出した複数の位置情報を取得情報記憶部324に記憶してもよい。この場合、行動推定部313が、複数の位置情報に基づいて介護行動を推定し、推定した介護行動の一致度を判定してもよい。
【0043】
ところで、施設内の所定の場所にUWBタグ10を設置した際に、設置場所の位置座標を事前に取得することが難しく、介護者の位置情報を座標レベルで正確に把握することは困難である。また、介護者が携帯する介護者端末20は、スマートフォンであることから、センサ部21のアンテナは、スマートフォンの背面側に設けられている。このため、アンテナがUWBタグ10の方向に向いていない場合に、測距情報を適切に取得できないことがある。測距情報を適切に取得するためには、介護者は、UWBタグ10に近づいたときに、毎回アンテナをUWBタグ10に向けるという動作が必要になるが、介護者は介護業務中に介護者端末20を手で保持せずに、ポケット等に収納して様々な介護を行っているため、アンテナを常にUWBタグ10へ向けさせるのは現実的ではない。
【0044】
このような課題を解消すべく、本実施形態の位置情報算出部312は、以下のようにして介護者の位置情報を算出している。介護者端末20が、あるUWBタグ10を検知してから特定時間(例えば数秒)後に別のUWBタグ10を検知した場合、その時間内に介護者等のスタッフが移動できる範囲が限られることから、二つのUWBタグ10のタグの距離が特定の値に絞られることになる。
【0045】
より具体的には、
図4に示されるように、UWBタグ10の位置を中心とした半径R1の円内が、センサ部21によるUWBタグ10の検知可能範囲である。そして、センサ部21が、このUWBタグ10を検知できなくなった後、経過時間S秒以内に介護者が存在する可能性がある範囲は、
図4に示されるように、検知可能範囲外であってUWBタグ10の位置を中心とした半径R2の円内となり、下記式(1)が導き出される。
R2=R1+S×V (1)
上記式中、Vは介護者の歩行速度である。
【0046】
図5に示されるように、二つのUWBタグ10(
図5のタグaとタグb)の距離をXとする。介護者端末20が、タグaを検知できなくなってからS秒後にタグbを検知したとすると、
図5に示すタグa及びタグbの位置関係から、下記式(2)が導き出される。
R1 + R1 ≦ X ≦ R2 + R1 (2)
【0047】
上記式(2)に前述の式(1)を当てはめることで、二つのUWBタグ10間の距離は、以下の式(3)のとおりに絞られる。位置情報算出部312は、この式(3)に基づいて、UWBタグ10間の相対座標を算出する。
2R1 ≦ X ≦ 2R1 + S×V (3)
【0048】
同様に、複数のUWBタグ10間の距離をそれぞれ絞り込むと、
図6に示されるように、タグaとタグbとの角度、タグaとタグcとの角度も絞り込める。この結果、タグbとタグcが存在する範囲も特定できる。これを様々なUWBタグ10の組み合わせで行い、各UWBタグ10間の距離を絞り込むことで、各UWBタグ10間の相対座標を算出できる。
【0049】
したがって、UWBタグ10との測距情報が適切に取得できない場合でも、位置情報算出部312は、上述のようにして算出したUWBタグ10間の相対座標に基づいて、介護者の位置情報(位置座標)を算出できる。「測距情報が適切に取得できない」は、具体的には、例えば測距情報が取得できない、測距情報の距離のみ取得でき、方角が取得できない、等である。介護者の位置情報の算出手順の詳細は、後に詳細に説明される。
【0050】
位置情報算出部312は、算出した位置情報及び取得日時を、端末ID(介護者)ごとに取得情報記憶部324に記憶する。
図3(d)の例では、例えば、取得情報記憶部324の1つ目のレコードでは、日時は「2023/4/20 10:12」が設定され、位置情報は「Aさんの居室(1)」を示す位置情報(位置座標)が記憶される。
【0051】
行動推定部313は、位置情報算出部312が算出した介護者の位置情報を含む取得情報に基づいて、介護者の行動(介護行動)を推定する。行動推定部313は、取得情報の日時及び位置情報と、行動パターン情報記憶部323の行動パターン情報とを比較して、介護者が介護行動を行った被介護者と、この介護行動とを推定する。例えば、
図3(d)の「2023/4/20 10:12 Aさんの居室(1)」、「2023/4/20 10:18 便所(1)」、「2023/4/20 10:25 Aさんの居室(1)」の取得情報と、
図3(c)の「10:00 Aさん排泄介助」の行動パターン情報から、行動推定部313は、介護者が10時12分~10時25分まで、被介護者Aさんの排泄介助をしたと推定する。行動推定部313は、この行動推定結果を、行動推定情報記憶部325に記憶する(
図3(e)参照)。
【0052】
なお、他の異なる実施形態として、行動推定部313は、ある介護者(介護者端末20)において、同じ日時に、複数の取得情報が取得されていたとき、複数の取得情報に対する行動を各々推定することもできる。次いで、行動推定部313は、推定した複数の行動に対して、重み付けや過去の行動に基づき、又はAIを用いて、各行動の一致度を算出し、この一致度が高い行動を、当該日時における行動と推定することもできる。
【0053】
また、行動推定部313は、管理者端末40又は介護者端末20からの入力によって、行動推定情報の修正や追加があったとき、行動推定情報記憶部325を更新することもできる。これにより、推定された介護行動を、より適切なものとすることができる。
【0054】
行動推定結果出力部314は、行動推定部313による行動推定結果を管理者端末40に送信し、管理者端末40の管理者端末表示部43に表示させる。行動推定結果出力部314は、行動推定情報記憶部325から行動推定情報を取得し、端末ID(介護者)ごとに、端末IDと、行動推定情報の取得日時及び行動推定結果を管理者端末40に送信する。管理者端末40は、管理者端末表示部43に、例えば、介護者ごとに、
図3(e)の行動推定結果情報と同様の内容、つまり介護行動を行った日時と、被介護者及び被介護者に対して行った介護行動の一覧を表示する。また、行動推定結果は、介護者端末20に送信されて、介護者端末表示部24に表示されてもよい。
【0055】
管理者は、管理者端末表示部43に表示された行動推定結果を確認できるとともに、管理者端末入力部44から行動推定結果を修正したり、追加したりできる。この修正及び追加された行動推定結果は、端末IDとともに行動推定装置30へ送信され、行動推定部313が行動推定情報記憶部325を更新する。
【0056】
行動記録作成部315は、行動推定部313が推定した行動推定情報に基づいて行動記録を作成する。本実施形態の行動推定システム100は、介護施設1における介護行動を推定するシステムであるため、行動記録として介護記録が作成される。本実施形態における介護記録は、よりよい介護サービスを提供すべく、各介護サービス提供事業者が業務の実態把握および改善・効率化や利用者の家族への報告等の自己の事業のために作成される。なお、介護記録には、介護保険法により介護保険料の請求のために作成・提出が義務付けられているものがあり、このような介護記録を作成する際に、行動記録作成部315が作成した介護記録を役立てることが可能である。
【0057】
従来、介護者が介護記録を作成する際には、介護中やその直後に手書きでメモを残し、業務の終わり等に介護記録システムに転記しているのが一般的である。このため、手書きと介護記録システムでの入力の二度手間が発生しており、効率的ではない。また、介護者は介護行動中に詳細なメモを残すことが難しいため、正確な記録を入力できない場合も多いのが現状である。
【0058】
これに対して、本実施形態の行動推定システム100は、介護者の介護行動に基づいて、行動推定部313が介護者の介護行動を推定している。このため、この推定した介護行動を用いて、行動記録作成部315が、介護記録を自動で生成することができる。したがって、本実施形態の行動推定システム100は、手書きの手間も介護記録システムへの入力の手間も省くことができ、しかも、介護者の行動に基づいた、より正確な介護記録を作成できる。行動記録作成部315は、例えば、すべての被介護者に対して行った介護行動が一覧表で記載された介護記録を作成することや、被介護者ごとに介護記録を作成すること等ができ、介護施設1に対応した所望の介護記録を作成できる。
【0059】
作成された介護記録は、管理者端末40に送信され、管理者端末記憶部42に記憶されたり、管理者端末表示部43に表示されたり、管理者端末40が備えるプリンタから印刷されたりする。また、介護記録は、介護者端末20に送信され、介護者端末表示部24に表示されてもよい。
【0060】
本実施形態に係る行動推定システム100で実行される動作の一例は、図面に基づいて以下のように説明される。行動推定システム100を動作するに際して、介護施設1の各領域にUWBタグ10が設置され、介護者端末20、行動推定装置30、管理者端末40等の各機器の電源がONとなっているものとする。また、各機器は行動推定プログラムが起動しており、介護者端末20及び管理者端末40と、行動推定装置30とが相互にデータを送受信可能に接続されているものとする。
【0061】
まず、行動推定システム100の導入時又はメンテナンス時に、初期設定が行われる。初期設定では、介護者情報、タグ情報及び行動パターン情報が登録される。すなわち、管理者等は、管理者端末40の管理者端末入力部44から、介護者情報である端末ID、介護者名等を入力し、タグ情報であるタグID、位置座標及び遮蔽状態フラグ等を入力し、パターン情報である時刻及び行動情報を入力する。
【0062】
入力された各情報は、行動推定装置30に送信される。行動推定装置30の制御部31は、入力された介護者情報を介護者情報記憶部321に記憶し、入力されたタグ情報をタグ情報記憶部322に記憶し、入力された行動パターン情報を行動パターン情報記憶部323に記憶する。
【0063】
介護施設1の複数の介護者は、各々支給された介護者端末20を携帯しながら、介護行動を行う。この介護行動の間に、各介護者端末20に内蔵されているセンサ部21が、UWBタグ10のUWB電波を検知すると、センサ部21は、このUWBタグ10との距離及び方角を測距情報として取得する。介護者端末20の介護者端末制御部22は、取得した測距情報及び取得時刻を測距情報記憶部23に記憶する。介護者端末制御部22は、測距情報記憶部23に記憶した測距情報及び取得時刻を、1分ごとに行動推定装置30に送信する。
【0064】
行動推定装置30の動作(行動推定方法)の流れの一例は、
図7、
図8に示されるフローチャートを用いて以下のように説明される。
図7のフローチャートに示されるステップS1で、測距情報取得部311は、介護者端末20から測距情報、取得時刻及びタグIDを取得し、取得情報記憶部324に記憶する。
【0065】
次のステップS2で、位置情報算出部312は、ステップS1で取得された測距情報、取得時刻及びタグIDに基づいて、介護者の位置情報を算出する。このステップS2の詳細は、
図8のフローチャート及び
図9~
図10を参照して、以下のように説明される。
【0066】
図8のフローチャートに示されるステップS101で、位置情報算出部312は、UWBタグ10を検出したか判定する。この判定は、ある時刻に介護者端末20が何れかのUWBタグ10の測距情報を取得したかどうかで判定できる。UWBタグ10を検出した(測距情報を取得した)と判定したとき(YES)、プログラムはステップS102へ進む。タグを検出しない(測距情報が取得できない)と判定したとき(NO)、プログラムはステップS109へ進む。
【0067】
ステップS102で、位置情報算出部312は、UWBタグ10との距離及び方角を取得したか判定する。距離及び方角を取得したとき、プログラムはステップS103へ進み、距離のみ取得したとき、プログラムはステップS104へ進む。
【0068】
ステップS103で、位置情報算出部312は、取得した距離及び方角に基づいて介護者の具体的な位置情報(位置座標)を特定する。より具体的には、位置情報算出部312は、タグIDをキーにタグ情報記憶部322を検索して、タグIDに対応する設置場所の位置座標を取得し、この位置座標と測距情報の位置及び方角に基づいて、介護者の位置座標を特定する。例えば、
図9(a)に示されるように、介護者が居室(7)に居て、UWBタグ107との距離及び方角が取得できていれば、位置情報算出部312は、介護者の位置情報を、高精度に特定することができる。
【0069】
ステップS104で、位置情報算出部312は、タグIDに基づいて、UWBタグ10の設置場所は遮蔽されているか判定する。より具体的には、位置情報算出部312は、タグIDをキーにタグ情報記憶部322を検索して、タグIDに対応する設置場所の遮蔽状態を示すフラグに基づいて、遮蔽されているかどうかを判定する。遮蔽されていると判定したとき(YES)、プログラムはステップS105へ進み、遮蔽されていないと判定したとき(NO)、プログラムはステップS106へ進む。
【0070】
ステップS105は、UWBタグ10との距離のみ取得でき、かつUWBタグ10の設置場所が遮蔽されているときの介護者の位置情報の取得工程である。例えば、
図9(b)に示される浴室(2)のように、壁や扉で遮蔽された場所では、壁等を通過することやその他空間内に配置された什器、機器等によりUWB電波の状態が変化するため、各遮蔽空間ごとにその変化の特徴を取得しタグ情報記憶部322に記録する。この各遮蔽空間ごとの電波変化の特徴量から、センサ部21は、遮蔽空間内に設置されたUWBタグ10からのUWB電波を適切に識別できる。このため、距離のみが取得でき、方角が取得できていなくても、UWBタグ10が遮蔽された場所に設置されていることがわかれば、そのUWBタグ10が設置された場所に介護者が居ることが特定できる。位置情報算出部312は、タグIDに対応する場所の位置座標をタグ情報記憶部322から取得し、この位置座標を介護者の位置座標とする。
【0071】
ステップS106で、位置情報算出部312は、介護者端末20が複数のUWBタグ10を検知したか判定する。複数のUWBタグ10を検知したと判定したとき(YES)、プログラムはステップS107へと進み、1つのUWBタグ10のみ検知したとき(YES)、プログラムはステップS108へ進む。
【0072】
ステップS107は、UWBタグ10との距離のみが取得でき、UWBタグ10が遮蔽されておらず、かつ複数のUWBタグ10が検知されているときの介護者の位置情報の取得工程である。このような状況は、例えば、
図9(c)に示されるように、介護者が非遮蔽空間である廊下(共有エリア)にいた場合等である。
【0073】
このステップS107で、位置情報算出部312は、取得した複数のUWBタグ10の検知結果に基づいて、前述した
図5~
図6を用いて説明したような手法を用いて、各UWBタグ10間の位置関係(相対座標)を算出する。位置情報算出部312は、取得したUWBタグ10(118,123,124)間の相対座標及びセンサ部21が取得した各UWBタグ10との距離に基づいて、例えば三点測位の手法を用いて介護者の位置情報を算出できる。
【0074】
ステップS108は、UWBタグ10との距離のみが取得でき、UWBタグ10が遮蔽されておらず、かつ1つのUWBタグ10のみが検知されているときの介護者の位置情報の取得工程である。このような状況は、例えば、
図10(a)に示されるように、介護者が非遮蔽空間であるサービスステーションにいた場合等であり、その直前に居室(6)にいた場合等である。
【0075】
このステップS108で、位置情報算出部312は、取得した1つのUWBタグ10(117)と介護者との距離と、当該UWBタグ10を検知する直前に検知したUWBタグ10(107)と介護者との距離に基づいて、前述した
図4~
図6で説明した手法を用いて、介護者の位置情報を算出できる。
【0076】
ステップS109は、センサ部21がUWBタグ10を検知しなかったときの介護者の位置情報の取得工程である。このような状況は、例えば、
図10(b)に示されるように、居室(1)等の遮蔽空間の近傍の廊下(共有エリア(1))に設置されたUWBタグ10(121)の検知範囲から離れた位置に介護者が居る場合や、センサ部21がUWBタグ10タグの方を向いていない場合等である。このようにUWBタグ10を検知できない場合でも、位置情報算出部312は、直前に検知(算出)した介護者の位置から、介護者が移動し得る範囲と、何れのUWBタグ10をも検知できない範囲とを掛け合わせることで、現在の介護者の位置情報を算出できる。
【0077】
より具体的には、位置情報算出部312は、前述した
図5~
図6を用いて説明したような手法を用いて、直前に取得した介護者の位置情報、つまり、共有エリア(1)のUWBタグ10(121)の検知範囲(
図10(b)に斜線で示した円の範囲)と、このUWBタグ10との距離及び方角に基づいて算出した介護者の位置から、介護者が移動し得る範囲(
図10(b)に二点鎖線で示した円の範囲)とに基づいて、介護者の位置情報を算出できる。
【0078】
位置情報算出部312は、以上のようにして算出した介護者の位置情報を日時と紐づけた取得情報を、取得情報記憶部324に記憶する。例えば、
図3(d)に示される例では、「日時:2023/4/20 10:12、位置情報:Aさんの居室(1)」、「日時:2023/4/20 10:18、位置情報:便所(1)」、「日時:2023/4/20 10:25、位置情報:Aさんの居室(1)」のように取得情報が記憶される。
【0079】
以上のステップS101~S109により位置情報が取得されたら、プログラムは
図7のフローチャートに戻り、ステップS3へ進む。このステップS3で、行動推定部313は、介護者の行動を推定する。より具体的には、行動推定部313は、ステップS2で取得された介護者の位置情報と、行動パターン情報記憶部323に予め記憶された介護施設1における行動(介護業務)の行動パターン情報に基づいて、介護者の行動を推定する。行動推定部313は、推定した当該介護者の行動を、行動推定情報記憶部325に時系列で記憶する。例えば、
図3(e)に示される例では、ステップS2で例示した取得情報と、
図3(c)に示される行動パターン情報記憶部323の「10:00 Aさん排泄介助」から、「10時12分~10:20までAさんの排泄介助」が推定される。
【0080】
次のステップS4で、行動推定結果出力部314は、ステップS3で推定された推定情報を出力する。より具体的には、行動推定結果出力部314は、管理者端末40からの要求に従って、行動推定情報記憶部325から推定情報を取得し、管理者端末表示部43に表示させる推定結果画面を、例えば介護者ごとに、又は被介護者ごとに生成し、管理者端末40へ送信する。この推定結果画面の入力を受けると、管理者端末制御部41は、推定結果画面を管理者端末表示部43に表示するとともに、印刷指示に基づいて、プリンタから出力する。これにより、管理者は、各介護者の行動を画面や印刷物で確認できる。
【0081】
また、管理者は、管理者端末入力部44から行動推定装置30に対して、介護記録を作成して表示する指示を入力することができる。この入力による操作信号は、管理者端末制御部41か行動推定装置30の制御部31へと送信される。この操作信号の入力を受け付け、ステップS5で、行動記録作成部315は、行動推定情報記憶部325に記憶されている行動推定情報に基づいて介護記録を作成する。介護記録は管理者端末40、さらには介護者端末20に送信され、管理者端末表示部43や介護者端末表示部24に表示される。管理者や介護者は、介護が適切に行われたか確認できる。管理者は、介護記録を印刷して保管したりできる。また、管理者は、これらの介護記録に対して、適宜加工等を行った上で、介護保険法上の「介護記録」として役所等に提出することもできる。
【0082】
また、管理者は、管理者端末表示部43に表示された介護記録を確認しつつ、管理者端末入力部44から、介護記録を修正したり、追加したりすることができる。これらの修正及び追加の入力結果は、管理者端末制御部41から行動推定装置30へと出力され、制御部31によって行動推定情報記憶部325が更新される。また、介護記録は、介護者端末20の介護者端末表示部24に表示され、介護者によって修正や追加が行われてもよい。
【0083】
以上説明したように、第1実施形態の行動推定装置30は、施設(介護施設1)内で作業するスタッフ(介護者)の行動を推定する行動推定装置である。この行動推定装置30は、介護者が携帯する1以上のセンサ部21が、介護施設1内の所定の位置に設けられた1以上のUWBタグ10とUWB方式の無線通信を行って取得した、UWBタグ10との距離及び方角を含む測距情報を取得し、取得した測距情報に基づいて介護者の位置情報を算出し、算出した位置情報に基づいて、介護者の行動を推定する制御部31を備える。制御部31は、測距情報を取得する測距情報取得部311、測距情報に基づいて介護者の位置情報を算出する位置情報算出部312、算出した位置情報に基づいて介護者の行動を推定する行動推定部313、推定した行動推定情報を外部装置(介護者端末20、管理者端末40等)に出力する行動推定結果出力部314及び行動推定情報に基づいて介護記録を作成する行動記録作成部315を有する。
【0084】
第1実施形態の行動推定方法は、行動推定装置30の制御部31で実行される行動推定方法である。この行動推定方法は、介護者が携帯する1以上のセンサ部21が、施設内の所定の位置に設けられた1以上のUWBタグとUWB方式の無線通信を行って取得した、UWBタグとの距離及び方角を含む測距情報を取得する工程と、取得した測距情報に基づいて介護者の位置情報を算出する工程と、算出した位置情報に基づいて、スタッフの行動を推定する工程と、を含む。
【0085】
第1実施形態のプログラムは、コンピュータに、上述のよう行動推定方法の各工程を実行させるプログラムである。
【0086】
第1実施形態の行動推定システム100は、介護施設1内で作業する介護者の行動を推定する行動推定システムである。この行動推定システム100は、介護施設1の所定の位置に設けられ、UWB方式の無線通信を行う1以上のUWBタグ10と、介護者が携帯し、UWBタグ10とUWB方式の無線通信を行って、UWBタグ10との距離及び方角を含む測距情報を取得する1以上のセンサ部21と、上述した第1実施形態の行動推定装置30と、を備える。
【0087】
したがって、第1実施形態の行動推定装置30、行動推定方法、プログラム及び行動推定システム100は、UWB方式の無線通信を用いることで、ビーコンやBluetooth等を活用した屋内測位技術・サービスと比較して、測距精度をより高くすることができる。この結果、第1実施形態の行動推定装置30、行動推定方法、プログラム及び行動推定システム100は、介護者の位置情報をより高精度に検知して、介護者の行動をより適切に推定できる。
【0088】
さらに、第1実施形態の行動推定装置30等は、高価なセンサ部21ではなく、比較的安価なUWBタグ10を各所に設置しているため、第1実施形態の行動推定システム100を導入する施設側の導入コストを低減させられる。
【0089】
また、第1実施形態の行動推定装置30等は、介護者がセンサ部21を備えた介護者端末20を携帯して介護施設1内を移動することで、UWBタグ10間の位置関係(相対座標)を取得することができる。このことから、第1実施形態の行動推定装置30等は、センサ部21がUWBタグ10タグに適切に向いておらず、測距情報を取得できない場合でも、その直前に検知したUWBタグ10の測距情報に基づき算出した介護者の位置情報から推定される範囲、及びいずれのUWBタグ10も検知できない範囲から、UWBタグ10を検知できない状況の介護者の位置情報を高い精度で推定できる。したがって、第1実施形態の行動推定装置30等は、介護者の位置情報をより高精度に検知して、介護者の行動をより適切に推定できる。
【0090】
以上、図面を参照して、本開示の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施形態に限らず、本開示の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 :介護施設 10 :UWBタグ
21 :センサ部 30 :行動推定装置
31 :制御部 100 :行動推定システム
101~124 :UWBタグ