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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025053866
(43)【公開日】2025-04-07
(54)【発明の名称】ゼオライト成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/20 20060101AFI20250331BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250331BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20250331BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20250331BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
C01B39/20
C08K3/013
C08L1/08
C08L29/04
C08L71/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162946
(22)【出願日】2023-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】相本 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 夏生
(72)【発明者】
【氏名】三津井 知宏
【テーマコード(参考)】
4G073
4J002
【Fターム(参考)】
4G073BA57
4G073BA63
4G073BB71
4G073BD26
4G073CZ03
4G073DZ02
4G073DZ04
4G073UA01
4J002AB02W
4J002BE02W
4J002CH01W
4J002DJ006
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002GD00
(57)【要約】
【課題】摩耗しにくいゼオライト成形体の製造方法の提供。
【解決手段】ゼオライト、無機バインダーおよび高分子架橋剤を含むスラリーを調製するスラリー化工程、前記スラリーを噴霧乾燥してゼオライト成形体を成形する成形工程、を備え、前記スラリーに含まれる前記高分子架橋剤の含有率が、前記高分子架橋剤を除く前記スラリーの全質量に対して、0.01質量%~10質量%の範囲にある、
ゼオライト成形体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト、無機バインダーおよび高分子架橋剤を含むスラリーを調製するスラリー化工程、
前記スラリーを噴霧乾燥してゼオライト成形体を成形する成形工程、を備え、
前記スラリーに含まれる前記高分子架橋剤の含有率が、前記高分子架橋剤を除く前記スラリーの全質量に対して、0.01質量%~10質量%の範囲にある、
ゼオライト成形体の製造方法。
【請求項2】
前記高分子架橋剤の平均分子量が40,000~7,000,000の範囲にある、請求項1に記載のゼオライト成形体の製造方法。
【請求項3】
前記高分子架橋剤が、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のゼオライト成形体の製造方法。
【請求項4】
前記スラリーに含まれる前記ゼオライトの含有率(Wz)と前記無機バインダーの含有率(Wb)との質量比(Wz:Wb)が、20:80~90:10の範囲である、請求項3に記載のゼオライト成形体の製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライト成形体の形状が球状であり、その直径が1μm~1,000μmの範囲にある、請求項1~4の何れか1項に記載のゼオライト成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗しにくい(耐摩耗性が高い)ゼオライトを含む成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、結晶性の多孔質アルミノシリケートおよび結晶性のメタロケイ酸塩の総称である。また、ゼオライトと同様の構造を持つ物質はゼオライト類似物質と呼ばれている。ゼオライトおよびゼオライト類似物質(以下、ゼオライトおよびゼオライト類似物質を総称してゼオライトという。)は、その結晶構造に由来する特殊な細孔を有しており、この細孔を利用して様々な用途で使用されている。例えば、前記細孔に化合物が吸着することを利用して、脱水剤、脱臭剤などの用途で広く使用されている。また、前記細孔構造を分子篩として利用して、ガスの分離膜にも使用されている。更に、ゼオライトが有する固体酸性と前記分子篩機能を利用して、種々の触媒反応に使用されている。
【0003】
ゼオライトは、その用途に適した形状に成形されて使用される。例えば、吸着剤や触媒用として固定床で使用する場合は、押出成形や打錠成形等によって円柱状に成形されることがある。また、懸濁床や流動床で使用する場合は、噴霧乾燥法等によって球状に成形されることがある。特に、懸濁床や流動床で使用する場合は、成形体が流動するので摩耗しやすいという課題があった。これまで、球状に成形されたゼオライトの粉化を抑制することを目的として、種々の検討がなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、塩基性塩化アルミニウムを含む無機酸化物マトリックス前駆体を噴霧乾燥して触媒組成物を得た後、該触媒組成物に硫酸又は硫酸化物を担持することにより、細孔容積が大きく、しかも、耐摩耗性が高い流動接触分解触媒が得られることが開示されている。また、特許文献2には、a)クレイ、ゼオライトおよび準結晶性ベーマイトを含んでなるスラリーを製造し(但し、スラリーは解膠準結晶性ベーマイトを含んでなるものでない)、b)このスラリーに一価の酸を添加し、c)このスラリーにケイ素源を添加し、そしてd)このスラリーを賦型して、粒子を形成する段階を含んでなる、触媒を製造する方法により、高いアクセシビリティおよび高い耐摩耗性の触媒が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-207948号公報
【特許文献2】特表2008-537505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の特許文献に記載された方法とは異なる方法を用いて、摩耗しにくいゼオライト成形体を製造することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前述の特許文献に記載されるような無機バインダーのみを用いるのではなく、高分子架橋剤を用いて摩耗しにくいゼオライト成形体を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
具体的には、ゼオライト、無機バインダーおよび高分子架橋剤を含むスラリーを調製するスラリー化工程、前記スラリーを噴霧乾燥してゼオライト成形体を成形する成形工程、を備え、前記スラリーに含まれる前記高分子架橋剤の含有率が、前記高分子架橋剤を除く前記スラリーの全質量に対して、0.01質量%~10質量%の範囲にある、ゼオライト成形体の製造方法を用いることで、摩耗しにくいゼオライト成形体を製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、摩耗しにくいゼオライト成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、摩耗しにくいゼオライト成形体を製造するための方法に関する発明(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)を含む。以下、本発明の製造方法について詳述する。なお、本発明において、数値範囲を示す際に「~」と記載されている場合は、その数値範囲に上限と下限の値を含むものとする。例えば、「1~2」と記載されている場合は、「1以上かつ2以下」を指すものとする。
【0011】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、高分子架橋剤と、ゼオライトおよび無機バインダーとを含むスラリーを調製し、ゼオライトの粒子間を架橋した状態で噴霧乾燥することで、摩耗しにくいゼオライト成形体が得られることを特徴とする。さらに、このゼオライト成形体は、焼成して高分子架橋剤を除去されたとしても、摩耗しにくいという特徴がある。これは高分子架橋剤の添加により、噴霧乾燥における液滴の乾燥時にゼオライトと無機バインダーの物質移動速度の違いによる液滴内での分布の偏りを抑制することで、ゼオライトと無機バインダーの結着を維持できるようになったことによるものと考えられる。以下、本発明の製造方法について、詳述する。
【0012】
[スラリー化工程]
本発明の製造方法は、ゼオライト、無機バインダーおよび高分子架橋剤を含むスラリーを調製するスラリー化工程を含む。この工程では、スラリー中に分散したゼオライトの粒子間を高分子架橋剤で架橋する。これにより、後述の噴霧乾燥によって摩耗しにくいゼオライト成形体が得られる。なお、本発明の製造方法におけるスラリーは、液体と固体粒子との懸濁液を指すものとする。
【0013】
この工程では、従来公知のゼオライトを用いることができる。ゼオライトの種類は、その結晶構造によって分類することができる。国際ゼオライト学会が定義したコードに基づけば、FAU、MFI、CHA、BEA、MORといった種々の結晶構造を持つゼオライトを用いることができる。本発明の製造方法においては、触媒として有効なMFIまたはFAUの何れか一方またはその両方を用いることが好ましい。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属、典型金属、希土類元素、非金属元素でイオン交換やゼオライト骨格を一部置換したゼオライトについても用いることができる。ゼオライトのメジアン径は、0.1μm~10μmの範囲にあることが好ましく、0.5μm~8μmの範囲にあることがより好ましく、1μm~7μmの範囲にあることが特に好ましい。メジアン径が前述の範囲にあるゼオライトを用いると、摩耗しにくいゼオライト成形体が得られやすい。なお、このメジアン径は、レーザー回折・散乱法に基づき測定された粒度分布(体積基準)から求めるものとする。
【0014】
この工程では、高分子架橋剤として、エチレン系樹脂やセルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂等の一般的な高分子を使用することができる。この工程では、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、ポリエチレンオキサイドを用いることがより好ましい。前述の化合物を高分子架橋剤として用いると、ゼオライトの粒子間をより強く架橋できるので、摩耗しにくいゼオライト成形体が得られやすい。また、高分子架橋剤の平均分子量は、40,000~7,000,000の範囲にあることが好ましく、50,000~6,000,000の範囲にあることがより好ましく、60,000~4,000,000の範囲にあることが特に好ましい。分子量が前述の範囲にある高分子架橋剤を用いると、摩耗しにくいゼオライト成形体が得られやすい。なお、平均分子量の特定方法は、島津製作所製 HPLC Prominence504システムにて行った。具体的には、サンプルを約0.1質量%となるようにテトロヒドロフラン(THF)に溶解し、孔径0.45μmの親水性PTFEフィルターでろ過して不溶物を除き、測定サンプルとし、測定を行った。
【0015】
この工程では、無機バインダーとして一般的な化合物を使用することができる。この工程では、シリカ、アルミナ、粘土鉱物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、シリカ、アルミナの何れか一方またはその両方であることがより好ましく、シリカであることが特に好ましい。さらに、スラリーに含まれるゼオライトの含有率(Wz)と無機バインダーの含有率(Wb)との比(Wz:Wb)は、20:80~90:10の範囲であることが好ましく、25:75~85:15の範囲にあることがより好ましく、30:70~80:20の範囲にあることが特に好ましい。この比が前述の範囲にあるスラリーを用いると、ゼオライトの含有量が多くかつ摩耗しにくいゼオライト成形体が得られやすい。
【0016】
この工程では、ゼオライトと高分子架橋剤と液体(溶媒)とを混合することでスラリーを調製する。この時、液体は、有機溶媒であってもよく、水であってもよい。後述の噴霧乾燥工程で液体が除去されるので、環境負荷が小さい水を用いることが好ましい。ゼオライトが液体中で凝集する場合は、超音波やホモジナイザー、コロイドミル等により分散処理するとよい。ゼオライトが液体に分散した状態で高分子架橋剤を用いて架橋することで、より摩耗しにくいゼオライト成形体が得られやすい。また、ゼオライトと無機バインダーとがより均一に混合される。
【0017】
この工程では、スラリーに含まれる高分子架橋剤の含有率が高分子架橋剤を除くスラリーの全質量に対して、0.01質量%~10質量%の範囲にあり、0.05質量%~8質量%の範囲にあることが好ましく、0.1質量%~5質量%の範囲にあることがより好ましい。高分子架橋剤の含有率が前述の範囲にあるスラリーを用いると、より摩耗しにくいゼオライト成形体が得られる。
なお、本発明においてスラリーに含まれる高分子架橋剤の含有率は外部比率である。つまり、スラリーに含まれる高分子架橋剤以外の全成分(ゼオライト、無機バインダーおよび溶媒を含む)の合計に基づいて100質量%を算出し、その合計質量に対する質量比率として高分子架橋剤の含有率を表す。したがって、上記の、スラリーに含まれる高分子架橋剤の含有率が高分子架橋剤を除くスラリーの全質量に対して0.01質量%~10質量%の範囲にあるということは、スラリーに含まれる高分子架橋剤以外の成分の合計含有量とスラリーに含まれる高分子架橋剤の含有量との質量比が100:0.01~10の範囲にあると同義である。
したがって、本発明におけるゼオライトの含有率(Wz)、無機バインダーの含有率(Wb)、溶媒の含有率は、スラリーに含まれる高分子架橋剤以外の全成分を基準として(100%として)算出した値を意味する。
なお、本明細書において「含有率」は特に断りが無い限り「質量%」を意味する。
【0018】
この工程では、スラリーに含まれるゼオライトの含有率(Wz)と無機バインダーの含有率(Wb)の和が、5質量%~50質量%の範囲にあり、15質量%~40質量%の範囲にあることが好ましく、20質量%~35質量%の範囲にあることがより好ましい。高分子架橋剤の質量が前述の範囲にあるスラリーを用いると、より摩耗しにくいゼオライト成形体が得られる。なお、スラリーに含まれるゼオライトの含有率は、ゼオライトを1000℃で1時間焼成したときのゼオライト質量を基準とする。
【0019】
この工程では、スラリーのpHが、4~12の範囲にあることが好ましく、5~10の範囲にあることがより好ましく、6~9の範囲にあることが特に好ましい。pHが前述の範囲にあるスラリーを用いると、ゼオライトの分散性が高くなるので、高分子架橋剤でより架橋されやすくなる。また、スラリーの粘度は、1mPa・s~5000mPa・sの範囲にあることが好ましく、5mPa・s~3000mPa・sの範囲にあることがより好ましく、10mPa・s~1000mPa・sの範囲にあることが特に好ましい。粘度が前述の範囲にあるスラリーを用いると、後述の噴霧乾燥において球状のゼオライト成形体が成形されやすくなる。
【0020】
[成形工程]
本発明の製造方法は、前述の工程で得られたスラリーを噴霧乾燥してゼオライト成形体を成形する成形工程を含む。噴霧乾燥とは、熱風気流中にスラリーを噴霧することで、噴霧されたスラリー中の液体が除去され、スラリーに含まれるゼオライトが球状に成形される方法である。
【0021】
この工程では、従来公知の噴霧乾燥方法を用いることができる。噴霧乾燥の方法は、ディスクを用いて噴霧するディスク方式、ノズルを使って噴霧するノズル方式がある。この工程ではどちらの方法を用いてもよい。ディスク方式を用いる場合は、ディスクの回転数を制御することで、得られるゼオライト成形体のサイズをコントロールすることができる。また、ノズル方式を用いる場合は、噴霧圧やノズル径を制御することで、得られるゼオライト成形体のサイズをコントロールすることができる。噴霧乾燥においては、熱風気流の入口温度(スラリーを噴霧する前の熱風気流の温度)は、500℃より低いことが好ましく、100℃~450℃の範囲にあることがより好ましい。熱風気流の入口温度が前述の範囲にあると、スラリー中で高分子架橋剤の架橋が壊れにくくなり、摩耗しにくいゼオライト成形体が得られやすくなる。また、熱風気流の出口温度(スラリーを噴霧した後の熱風気流の温度)は、50℃~200℃の範囲にあることが好ましく、80℃~150℃の範囲にあることがより好ましい。
【0022】
[焼成工程]
本発明の製造方法は、前述の工程で得られたゼオライト成形体を焼成する焼成工程を含んでいてもよい。ゼオライト成形体を焼成することで、高分子架橋剤は除去される。しかし、高分子架橋剤が除去されたとしても、焼成後のゼオライト成形体は摩耗しにくい。また、焼成工程の前後にイオン交換水等で洗浄する工程を含んでいてもよい。
【0023】
この工程では、ゼオライト成形体を200~700℃の温度域で焼成することが好ましく、300℃~650℃の温度域で焼成することがより好ましく、350℃~600℃の温度域で焼成することが特に好ましい。前述の温度範囲でゼオライト成形体を焼成すると、効率的に高分子架橋剤を除去することができる。また、焼成する時間については特に制限はないが、1時間~24時間の範囲で焼成することが好ましく、1時間~12時間の範囲で焼成することが好ましく、1時間~6時間の範囲で焼成することがより好ましい。
【0024】
本発明の製造方法で得られるゼオライト成形体の形状は球状であることが好ましい。形状が球状であるか否かは、目視または顕微鏡を用いて成形体の外縁を直接観察して判断することができる。この時、ゼオライト成形体を合計100個観察し、そのうち90個以上の外縁が完全な円またはいびつな円に該当すれば球状と判断できる。ここで、いびつな円とは、成形体の外縁の長径に対する短径の割合が、60%以上100%未満にある楕円を指すものとする。また、そのメジアン径は1μm~1000μm以下の範囲にあってもよく、5μm~500μmの範囲にあってもよく、10μm~100μmの範囲にあってもよい。なお、このメジアン径は後述の測定方法により特定することができる。
【実施例0025】
以下、実施例により本発明の製造方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例において行った測定および評価の方法は、以下[1]~[4]の通り。
【0027】
[1]メジアン径
メジアン径の測定は、(株)堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-950V2)にて行った。具体的には、光線透過率が70~95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し 、循環速度2.8L/min、反復回数30で測定した。得られた粒度分布(体積基準)から、付属の解析装置を用いてメジアン径を算出した。。
【0028】
[2]pH
pHの測定は、(株)堀場製作所製ポータブル型pHメータ(D―51)にて行った。具体的には、標準液で校正した電極をスラリー中に3cm以上浸し、オートホールド測定で表示された値を採用した。
【0029】
[3]粘度
粘度の測定は、東機産業(株)製デジタル粘度計(TVB-10M)にて行った。具体的には、スラリーの粘度に適したロータを用い、回転速度60rpm、測定時間30秒で表示された値を採用した。
【0030】
[4]粉化率
粉化率の測定は、ASTM(American Society for Testing and Materials)-5757-00を参照したJET-Cup法を参考にした。具体的には、測定対象物を500℃、1時間焼成した後、測定対象物45gに、水5gを添加して調湿した。ついで、上記ASTMを参照して自作したAtrrition装置に測定対象物を仕込み、Air JET法で、空気(相対湿度約10%)を7L/minの速度で供給し、測定対象物を流動させた。このとき、Atrrition装置のオリフィス出口の流速は304m/sであった。流動開始後5~20時間の間、摩耗により発生した微粒子をフィルターで捕集した。フィルターで捕集された微粒子の重量を仕込んだ測定対象物の重量で除して、摩耗率を求めた。
【0031】
[実施例1]
ゼオライト(日揮触媒化成社製:品名USY-5、FAU、メジアン径6μm、灼熱減量1000℃-1時間:10%)250g、高分子架橋剤(明成化学工業社製:品名R-400、PEO、平均分子量20~30万)1.8g、無機バインダー(日揮触媒化成社製:品名S-20L、シリカ、シリカ濃度20.5%)1.1kgと、イオン交換水250gとを混合しスラリーを調製した。スラリーの構成成分、含有率、pH、粘度等を表1に示す。
【0032】
噴霧乾燥機を用いて前述の工程で得られたスラリーを噴霧乾燥した。入口温度が150℃、出口温度が90℃となるように熱風供給量およびスラリー供給量をコントロールし、生成したゼオライト成形体を回収した。マッフル炉を用いて得られたゼオライト成形体を550℃で3時間焼成した。焼成後のゼオライト成形体について、顕微鏡を用いて形状を観察したところ、球状であった。また、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いてゼオライト成形体のメジアン径を測定したところ、86μmであった。さらに、その粉化率を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
高分子架橋剤の含有率を0.5質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
高分子架橋剤の含有率を3質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
高分子架橋剤の含有率を9質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
[実施例5]
ゼオライトと無機バインダーの含有率の比率を70:30に調整したこと以外は、実施例2と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
[実施例6]
ゼオライト(ズードケミー社製:品名ZSM-5 SAR80、MFI、メジアン径5μm)を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
高分子架橋剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例2]
高分子架橋剤の含有率を12質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例3]
高分子架橋剤を用いなかったこと以外は、実施例6と同様の方法でゼオライト成形体を得た。また、実施例1と同様の方法で測定ないし評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】