(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025053925
(43)【公開日】2025-04-07
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造装置および製造方法、並びに搬送装置
(51)【国際特許分類】
C03B 35/14 20060101AFI20250331BHJP
C03B 33/023 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
C03B35/14
C03B33/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163055
(22)【出願日】2023-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】山城 陸
(72)【発明者】
【氏名】秋山 修二
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015FA01
4G015FB02
4G015GA00
(57)【要約】
【課題】
超薄型のガラスリボンを元にしてガラス物品を製造するに際し、搬送中のガラスリボンに処理を施す場合に、ガラスリボンの有効部への皺の侵入を可及的に防止すること。
【解決手段】
ガラスリボンGを平置き姿勢で搬送経路Rに沿って搬送する搬送手段(搬送装置M3)と、搬送経路R上に配置され、ガラスリボンGに処理を施す処理手段(切断装置M4)と、を備えたガラス物品の製造装置Mについて、搬送経路R上における処理手段(切断装置M4)の上流側に、ガラスリボンGの幅方向端部Gb側から中央側へと向かう皺Wの移動を堰き止める堰止手段15を配置した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスリボンを平置き姿勢で搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送経路上に配置され、前記ガラスリボンに処理を施す処理手段と、
を備えたガラス物品の製造装置であって、
前記搬送経路上における前記処理手段の上流側に、前記ガラスリボンの前記幅方向端部側から中央側へと向かう皺の移動を堰き止める堰止手段が配置されていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項2】
前記堰止手段が、下記の(1)~(3)のうち、少なくとも一つを備えていることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
(1)前記ガラスリボンの上面に接触が可能な周面と、前記皺に対して前記ガラスリボンの幅方向内側から接触が可能な側面と、を有するローラー
(2)前記皺を上方から押えることが可能な毛を有するブラシ
(3)前記皺に向けて前記ガラスリボンの幅方向内側から流体の噴射が可能なノズル
【請求項3】
前記堰止手段が、上記の(1)~(3)の全てを備えていることを特徴とする請求項2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項4】
前記ローラーが、前記搬送経路上において前記ブラシおよび前記ノズルよりも上流側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項5】
前記ブラシが、前記ガラスリボンの幅方向において前記ノズルよりも外側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項6】
前記堰止手段が前記ローラーを備え、
前記ローラーがフリーローラーであることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項7】
前記堰止手段が前記ローラーを備え、
前記ローラーの送り方向が、前記ガラスリボンの搬送方向に対して幅方向外側に傾斜していることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項8】
前記堰止手段が前記ローラーを備え、
前記ローラーが、回転中心を含んだ芯材と、前記芯材の外周側に配置された弾性材と、前記弾性材の外周側に配置されて前記周面を構成する被覆材と、を有することを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項9】
前記堰止手段が前記ローラーを備え、
前記ローラーは、前記周面が前記ガラスリボンにおける前記皺の存在しない部位の上面とは非接触となる高さ位置に設置されていることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項10】
前記堰止手段が前記ブラシを備え、
前記ブラシは、少なくとも上下方向における設置位置の変更が可能であることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項11】
前記堰止手段が前記ノズルを備え、
前記ノズルは、前記流体としてガスの噴射が可能であり、
前記ノズルは、少なくとも上下方向における設置位置の変更が可能であることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項12】
前記堰止手段が前記ノズルを複数備え、
前記複数のノズルが、前記ガラスリボンの搬送方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項13】
前記処理手段として、前記ガラスリボンを前記幅方向中央の有効部と前記幅方向端部との境界に沿って切断し、前記有効部から前記幅方向端部を分断する処理を施す切断装置を備え、
前記堰止手段が、前記ガラスリボンの幅方向において、前記切断装置よりも外側、又は、前記切断装置と重複する位置に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項14】
前記切断装置が、前記ガラスリボンの前記有効部と前記幅方向端部との境界にレーザーを照射するレーザー切断器であることを特徴とする請求項13に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項15】
請求項1~5のいずれかに記載のガラス物品の製造装置を用いて、平置き姿勢で搬送中のガラスリボンに対し、その幅方向端部よりも内側に位置する有効部に処理を施す処理工程を備えたガラス物品の製造方法。
【請求項16】
前記ガラスリボンの厚みが200μm以下であることを特徴とする請求項15に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項17】
ガラスリボンを平置き姿勢で搬送経路に沿って搬送する搬送装置であって、
前記ガラスリボンの幅方向端部側から中央側へと向かう皺の移動を堰き止める堰止手段を備え、
前記堰止手段が、下記の(1)~(3)のうち、少なくとも一つを備えていることを特徴とする搬送装置。
(1)前記ガラスリボンの上面に接触が可能な周面と、前記皺に対して前記ガラスリボンの幅方向内側から接触が可能な側面と、を有するローラー
(2)前記皺を上方から押えることが可能な毛を有するブラシ
(3)前記皺に向けて前記ガラスリボンの幅方向内側から流体の噴射が可能なノズル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス物品の製造装置および製造方法、並びに搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスフィルムやガラスロール等のガラス物品は、超薄型のガラスリボン(例えば、厚みが200μm以下)を元にして製造される場合が多い。特許文献1には、ガラスリボンからガラスロールを製造する形態の一例が開示されている。
【0003】
同形態では、まず、ダウンドロー法を利用して超薄型のガラスリボンを成形する。ガラスリボンは、その幅方向中央に位置する有効部と、有効部を間に挟んで両側に位置する幅方向端部(特許文献1では不要部)とを有する。次に、成形したガラスリボンの搬送方向を縦方向から横方向に転換させる。その後、搬送中のガラスリボンの有効部と幅方向端部との境界にレーザーを照射し、ガラスリボンを有効部と幅方向端部とに切断する。これに伴い、有効部から幅方向端部を分断して除去する処理を行う。最後に、有効部のみでなるガラスリボンを巻芯の周りに巻き取ってガラスロールとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の形態では、ガラスリボンの有効部から幅方向端部を分断して除去する処理を行う際に、以下のような問題が生じていた。
【0006】
超薄型のガラスリボンは搬送中に皺が発生しやすい。そして、
図8に示すように、レーザーLの照射位置(有効部Gaと幅方向端部Gbとを切断する位置)に到達する前のガラスリボンGに、幅方向端部Gb側から有効部Ga側(中央側)へと向かう皺Wが発生することがある。なお、同図に例示した皺Wでは、ガラスリボンGの搬送経路の上流側に移行するに連れて、皺Wの頂部(太線で表示)が漸次にガラスリボンGの幅方向内側に遷移している。この皺WがガラスリボンGの有効部Gaに侵入し、皺Wが境界Bを挟んで有効部Gaと幅方向端部Gbとに跨った状態でレーザーLの照射位置に到達すると、ガラスリボンGの切断が不安定になる難点がある。
【0007】
具体的には、
図9に示すように、皺Wに起因してガラスリボンGにおけるレーザーLの照射位置がうねることから、照射位置が平坦である場合(皺Wが存在しない場合)とは異なり、レーザーLの照射条件が必然的に不安定になってしまう。その結果、ガラスリボンGの切断が不安定になり、これに伴ってガラスリボンGにクラックが発生する不具合が生じていた。このため、皺WがガラスリボンGの有効部Gaに侵入するのを防止できる技術の確立が期待されていた。
【0008】
ここで、ガラスリボンの有効部に侵入する皺に起因した問題は、ガラスリボンの有効部から幅方向端部を分断して除去する処理を行う場合にのみ発生しているものではない。例えば、搬送中のガラスリボンに対する成膜処理、塗布処理、印刷処理、エッチング処理、洗浄処理、穴開け処理、ラミネート処理、コーティング処理、光学処理、熱処理、検査等、他の処理を行う場合にも同様に発生している問題である。
【0009】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、超薄型のガラスリボンを元にしてガラス物品を製造するに際し、搬送中のガラスリボンに処理を施す場合に、ガラスリボンの有効部への皺の侵入を可及的に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための第1のガラス物品の製造装置は、ガラスリボンを平置き姿勢で搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、搬送経路上に配置され、ガラスリボンに処理を施す処理手段と、を備えたガラス物品の製造装置であって、搬送経路上における処理手段の上流側に、ガラスリボンの幅方向端部側から中央側へと向かう皺の移動を堰き止める堰止手段が配置されていることを特徴とする。
【0011】
第1のガラス物品の製造装置では、ガラスリボンの搬送経路上における処理手段の上流側に堰止手段が配置されている。これにより、処理手段の上流側でガラスリボンの幅方向端部側から中央側(有効部側)へと向かう皺が発生したとしても、当該皺の中央側への移動を堰止手段により堰き止めることが可能となる。その結果、処理手段により処理されるガラスリボンの有効部に皺が侵入することを可及的に防止できる。
【0012】
第2のガラス物品の製造装置は、上記の第1の製造装置において、堰止手段が、下記の(1)~(3)のうち、少なくとも一つを備えている構成としたものである。
(1)ガラスリボンの上面に接触が可能な周面と、皺に対してガラスリボンの幅方向内側から接触が可能な側面と、を有するローラー
(2)皺を上方から押えることが可能な毛を有するブラシ
(3)皺に向けてガラスリボンの幅方向内側から流体の噴射が可能なノズル
【0013】
第2のガラス物品の製造装置において、堰止手段がローラーを備えている場合、ローラーの側面が皺に対してガラスリボンの幅方向内側から接触することで、皺の中央側(有効部側)への移動を堰き止めることが可能となる。堰止手段がブラシを備えている場合、ブラシの毛が皺を上方から押えることで、皺の中央側への移動を堰き止めることが可能となる。また、毛が皺を上方から押えることから、皺の大型化(皺の高さの嵩上げ)についても阻止できる。堰止手段がノズルを備えている場合、ノズルから噴射された流体がガラスリボンの幅方向内側から皺を押すことで、皺の中央側への移動を堰き止めることが可能となる。
【0014】
ここで、ローラーは、上記(1)~(3)の部材(ローラー、ブラシ、ノズル)の中で皺の移動を堰き止める効果が最も大きいという利点がある。ブラシは、ガラスリボンと接触した際に毛が適度に変形することから、設置位置の調整が容易という利点がある。ノズルは、ガラスリボンと接触させる必要がなく、設置位置の調整が容易であることに加え、省スペース性に優れるという利点がある。なお、ブラシとノズルとの比較においては、ブラシの方がノズルよりも皺の移動を堰き止める効果がより大きい。
【0015】
第3のガラス物品の製造装置は、上記の第2の製造装置において、堰止手段が、上記の(1)~(3)の全てを備えている構成としたものである。
【0016】
第3のガラス物品の製造装置では、堰止手段が、ローラー、ブラシ、及び、ノズルの全てを備えていることから、皺の中央側(有効部側)への移動を堰き止める上で有利となる。
【0017】
第4のガラス物品の製造装置は、上記の第3の製造装置において、ローラーが、搬送経路上においてブラシおよびノズルよりも上流側に配置されている構成としたものである。
【0018】
第4のガラス物品の製造装置では、ローラーがブラシおよびノズルよりも上流側に配置されている。このため、まず、皺の移動を堰き止める効果が最も大きいローラーによって皺の中央側(有効部側)への移動を好適に堰き止めることができる。その上で、ローラーよりも下流側で再び皺が中央側へと向かおうとしても、当該皺の移動をブラシおよびノズルによって堰き止めることができる。その結果、より確実な皺の移動の堰き止めを実現できる。
【0019】
第5のガラス物品の製造装置は、上記の第3又は第4の製造装置において、ブラシが、ガラスリボンの幅方向においてノズルよりも外側に配置されている構成としたものである。
【0020】
第5のガラス物品の製造装置では、ブラシとノズルとのうち、皺の移動を堰き止める効果がより大きいブラシを外側に配置したことで、皺の移動を堰き止める上で更に有利となる。
【0021】
第6のガラス物品の製造装置は、上記の第2~第5のいずれかの製造装置において、ローラーがフリーローラーである構成としたものである。
【0022】
第6のガラス物品の製造装置では、ローラーがフリーローラーであることで、ローラーがガラスリボンと接触した際に、ガラスリボンに対して過度な負荷が掛かることを回避できる。これにより、ローラーとの接触に起因してガラスリボンが割れるような恐れを可及的に排除することが可能となる。
【0023】
第7のガラス物品の製造装置は、上記の第2~第6のいずれかの製造装置において、ローラーの送り方向が、ガラスリボンの搬送方向に対して幅方向外側に傾斜している構成としたものである。
【0024】
第7のガラス物品の製造装置では、ローラーの送り方向の傾斜に付随して、ローラーの側面もガラスリボンの搬送方向に対して幅方向外側に傾斜した状態となる。そのため、ローラーの側面で堰き止めた皺をガラスリボンの幅方向外側へと積極的に逃がすことができる。従って、ガラスリボンの有効部への皺の侵入を一層好適に防止できる。
【0025】
第8のガラス物品の製造装置は、上記の第2~第7のいずれかの製造装置において、ローラーが、回転中心を含んだ芯材と、芯材の外周側に配置された弾性材と、弾性材の外周側に配置されて周面を構成する被覆材と、を有する構成としたものである。
【0026】
第8のガラス物品の製造装置では、ローラーが弾性材を有することで、ローラーの周面に柔軟性を付与することが可能となる。このため、ローラーがガラスリボンと接触した際に、ガラスリボンに対して過度な負荷が掛かることをより確実に回避できる。その結果、ローラーとの接触に起因してガラスリボンが割れるような恐れをより確実に排除できる。
【0027】
第9のガラス物品の製造装置は、上記の第2~第8のいずれかの製造装置において、ローラーは、周面がガラスリボンにおける皺の存在しない部位の上面とは非接触となる高さ位置に設置されている構成としたものである。
【0028】
第9のガラス物品の製造装置では、ローラーが、ガラスリボンにおける皺が存在する部位とは接触する一方、皺の存在しない部位(平坦な部位)とは接触しなくなる。このとおり、ローラーとガラスリボンとが接触する機会を可及的に低減できるため、ローラーとの接触に起因してガラスリボンが割れる可能性を確実に低減することが可能となる。
【0029】
第10のガラス物品の製造装置は、上記の第2~第9のいずれかの製造装置において、ブラシは、少なくとも上下方向における設置位置の変更が可能である構成としたものである。
【0030】
第10のガラス物品の製造装置では、少なくともブラシの上下方向における設置位置を変更できるため、皺の状態に合わせてブラシの毛が皺を上方から好適に押えられるように調整が可能となる。
【0031】
第11のガラス物品の製造装置は、上記の第2~第10のいずれかの製造装置において、ノズルは、流体としてガスの噴射が可能であり、ノズルは、少なくとも上下方向における設置位置の変更が可能である構成としたものである。
【0032】
第11のガラス物品の製造装置では、少なくともノズルの上下方向における設置位置を変更できるため、皺の状態に合わせてノズルから噴射したガスが皺を好適に押せるように調整が可能となる。
【0033】
第12のガラス物品の製造装置は、上記の第2~第11のいずれかの製造装置において、堰止手段がノズルを複数備え、複数のノズルが、ガラスリボンの搬送方向に沿って配列されている構成としたものである。
【0034】
第12のガラス物品の製造装置では、ガラスリボンの搬送方向に沿って複数のノズルが配列されていることから、複数のノズルから噴射した流体(ガス)によって皺の移動を堰き止める流体の壁(カーテン)を形成できる。これにより、皺の中央側(有効部側)への移動を堰き止める上で一層有利となる。
【0035】
第13のガラス物品の製造装置は、上記の第1~第12のいずれかの製造装置において、処理手段として、ガラスリボンを幅方向中央の有効部と幅方向端部との境界に沿って切断し、有効部から幅方向端部を分断する処理を施す切断装置を備え、堰止手段が、ガラスリボンの幅方向において、切断装置よりも外側、又は、切断装置と重複する位置に配置されている構成としたものである。
【0036】
第13のガラス物品の製造装置では、堰止手段が切断装置よりも外側、又は、切断装置と重複する位置に配置されているため、ガラスリボンの有効部への皺の侵入を的確に防止することが可能となる。従って、有効部に侵入した皺に起因してガラスリボンの切断不良が生じることを回避できる。
【0037】
第14のガラス物品の製造装置は、上記の第13の製造装置において、切断装置が、ガラスリボンの有効部と幅方向端部との境界にレーザーを照射するレーザー切断器である構成としたものである。
【0038】
第14のガラス物品の製造装置では、皺に起因してガラスリボンに対するレーザーの照射条件が不安定になり、ガラスリボンの切断が不安定となることを回避できる。
【0039】
上記の第1~第14のいずれかのガラス物品の製造装置を用いて、第1のガラス物品の製造方法を実行することが可能である。同製造方法は、平置き姿勢で搬送中のガラスリボンに対し、その幅方向端部よりも内側に位置する有効部に処理を施す処理工程を備えたガラス物品の製造方法である。
【0040】
第1のガラス物品の製造方法によれば、上記の第1~第14のガラス物品の製造装置と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【0041】
第2のガラス物品の製造方法は、上記の第1の製造方法において、ガラスリボンの厚みが200μm以下である形態としたものである。
【0042】
第2のガラス物品の製造方法では、ガラスリボンの厚みが200μm以下と薄いことから、搬送中のガラスリボンに皺が発生しやすい。しかしながら、既述の製造装置について説明したように皺への対策が十分に講じられているため、ガラスリボンの有効部への皺の侵入に起因して有効部の処理に不具合が生じることを回避できる。
【0043】
上記の課題を解決するための搬送装置は、ガラスリボンを平置き姿勢で搬送経路に沿って搬送する搬送装置であって、ガラスリボンの幅方向端部側から中央側へと向かう皺の移動を堰き止める堰止手段を備え、堰止手段が、下記の(1)~(3)のうち、少なくとも一つを備えていることを特徴とする。
(1)ガラスリボンの上面に接触が可能な周面と、皺に対してガラスリボンの幅方向内側から接触が可能な側面と、を有するローラー
(2)皺を上方から押えることが可能な毛を有するブラシ
(3)皺に向けてガラスリボンの幅方向内側から流体の噴射が可能なノズル
【0044】
上記の搬送装置を用いてガラスリボンを搬送するに際し、搬送経路上における処理手段(ガラスリボンに処理を施すための手段)の上流側に堰止手段が配置されるようにすれば、上記の第2のガラス物品の製造装置と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0045】
本開示に係るガラス物品の製造装置および製造方法によれば、超薄型のガラスリボンを元にしてガラス物品を製造するに際し、搬送中のガラスリボンに処理を施す場合に、ガラスリボンの有効部への皺の侵入を可及的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】ガラス物品の製造装置および製造方法を示す側面図である。
【
図2】ガラス物品の製造装置および製造方法を示す平面図である。
【
図3】ガラス物品の製造装置に備わった堰止手段の周辺を示す平面図である。
【
図4】ガラス物品の製造装置(変形例)に備わった堰止手段の周辺を示す平面図である。
【
図5】ガラス物品の製造装置に備わった堰止手段の周辺を示す側面図である。
【
図6】ガラス物品の製造装置に備わった堰止手段の周辺を示す側面図である。
【
図7】(a),(b)はガラス物品の製造装置に備わった堰止手段の周辺を示す断面図である。
【
図8】従来における課題を説明するための平面図である。
【
図9】従来における課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施形態に係るガラス物品の製造装置および製造方法、並びに搬送装置について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の説明で参照する各図面に表示したX方向、Y方向、及び、Z方向は、互いに直交する方向である。
【0048】
図1及び
図2にガラス物品の製造装置M(以下、単に製造装置Mと表記)、及び、同製造装置Mを用いたガラス物品の製造方法(以下、単に製造方法と表記)を示す。両図に示すように、本実施形態においては、ダウンドロー法(図示例ではオーバーフローダウンドロー法)を利用して成形した超薄型のガラスリボンGからガラス物品としてのガラスフィルムGfを切り出して製造する。
【0049】
製造装置Mは、主たる構成要素として、成形装置M1と、搬送方向転換装置M2と、搬送装置M3と、切断装置M4とを備えている。
【0050】
製造装置Mを用いた製造方法は、主たる工程として、成形装置M1を用いてガラスリボンGを成形する成形工程P1と、搬送方向転換装置M2を用いてガラスリボンGの搬送方向を転換させる搬送方向転換工程P2と、搬送装置M3を用いてガラスリボンGを搬送する搬送工程P3と、切断装置M4を用いてガラスリボンGから不要部(後述の幅方向端部Gb)を分断する不要部分断工程P4と、不要部が分断された後のガラスリボンGからガラスフィルムGfを取得する取得工程P5と、を備えている。
【0051】
成形装置M1は、成形体1と、上下複数段に配置されたローラーでなるローラー群2とを備えている。ローラー群2の中には、上段側から順番に、エッジローラー3と、アニーラローラー4と、支持ローラー5とが含まれている。
【0052】
成形工程P1では、成形体1に供給された溶融ガラスMGからガラスリボンGを縦方向(Z方向)に引き出しながら連続的に成形する。ガラスリボンGの引き出しにはローラー群2を用いる。
【0053】
ローラー群2に含まれるローラーのうち、エッジローラー3は、成形体1の直下でガラスリボンGと接触してガラスリボンGの幅方向(X方向)の収縮を抑制する。アニーラローラー4は、徐冷炉(図示省略)内で歪点以下の温度まで徐冷されるガラスリボンGの下方への移動を案内する。支持ローラー5は、冷却室(図示省略)内で室温付近まで温度が低下したガラスリボンGを支持しながら下方に牽引する。
【0054】
成形したガラスリボンGは、その幅方向中央に位置する有効部Gaと、有効部Gaを間に挟んで両側に位置する幅方向端部Gbとを有する。(有効部Gaと幅方向端部Gbとの境界Bを二点鎖線で表示)。有効部Gaは、後の取得工程P5でガラスフィルムGfとして取得される部位である。幅方向端部Gbは、ガラスリボンGの他の部位と比較して厚みの大きい耳部を含んでいる。ガラスリボンGの厚み(耳部を除く部位の厚み)は、例えば200μm以下、100μm以下、50μm以下である。
【0055】
搬送方向転換装置M2は、複数のローラーでなるローラーコンベア6を備えている。ローラーコンベア6に含まれる複数のローラーは、側面視で(X方向から視て)円弧状の湾曲に沿って並べられている。
【0056】
搬送方向転換工程P2では、成形工程P1により成形したガラスリボンGの搬送方向を縦方向(Z方向)から横方向(Y方向)に転換させる。
【0057】
搬送装置M3は、ガラスリボンGを平置き姿勢で搬送経路Rに沿って搬送する搬送手段の一例である。
【0058】
搬送装置M3は、ベルトコンベア7と、支持台8と、ベルトコンベア9と、ボード10と、複数のガイドローラー11と、帯状保護シート12の供給機(図示省略)とを備えている。供給機は、帯状保護シート12(例えば帯状樹脂シート)の連続的な供給および回収が可能である。供給機から供給された帯状保護シート12は、複数のガイドローラー11に案内されながら支持台8上、ベルトコンベア9上、及び、ボード10上を搬送経路Rの下流側に向かって移動したのち回収される。
【0059】
搬送工程P3では、ベルトコンベア7と、支持台8上、ベルトコンベア9上、及び、ボード10上の帯状保護シート12とにより、ガラスリボンGを下方から支持しながら搬送経路Rの下流側へと送る。
【0060】
本実施形態においては、搬送手段として搬送装置M3を採用しているが、これに限定されるものではない。搬送手段は、ガラスリボンGを平置き姿勢で搬送経路Rに沿って搬送できる装置であれば任意の構成の装置としてよい。
【0061】
切断装置M4は、ガラスリボンGの有効部Gaに処理を施す処理手段の一例である。具体的には、切断装置M4は、搬送中のガラスリボンGを有効部Gaと幅方向端部Gbとの境界Bに沿って切断し、有効部Gaから幅方向端部Gbを不要部として分断する処理を施すものである。
【0062】
切断装置M4は、ガラスリボンGの搬送経路R上に配置されている。切断装置M4は、ガラスリボンGの有効部Gaと幅方向端部Gbとの境界BにレーザーLを照射するレーザー切断器13である。レーザー切断器13は、二箇所の境界Bのそれぞれに対応するように二機が配置されている(
図7を参照)。レーザー切断器13は、支持台14上を通過するガラスリボンGに対してレーザー割断法による切断を実行する機器であり、同割断法を利用してガラスリボンGを長手方向に沿って連続的に切断する。
【0063】
本実施形態においては、切断装置M4としてレーザー割断法による切断を実行するレーザー切断器13を採用しているが、これに限定されるものではない。切断装置M4は、一例として、レーザー溶断法による切断を実行するレーザー切断器であってもよい。
【0064】
ガラスリボンGの搬送経路R上において、切断装置M4の上流側には、ガラスリボンGの幅方向端部Gb側から有効部Ga側(中央側)へと向かう皺W(
図3及び
図7を参照)の移動を堰き止める堰止手段15が配置されている。本実施形態における堰止手段15は、上記の搬送装置M3に備わっている。
【0065】
皺Wは、ガラスリボンGを波状にうねらせる皺である(
図3の太線は皺Wの頂部)。皺Wの高さは、最大で50mm程度になり得る。なお、「皺Wの高さ」とは、搬送装置M3の搬送面から皺Wの頂部までの高さを意味する。皺WがガラスリボンGの有効部Gaに侵入し、皺Wが境界Bを挟んで有効部Gaと幅方向端部Gbとに跨った状態でレーザーLの照射位置に到達すると、ガラスリボンGの切断が不安定となる。そのため、堰止手段15により皺Wの有効部Ga側への移動を堰き止めることで、皺Wの有効部Gaへの侵入を防止する。
【0066】
以下、
図3~
図7を参照しながら堰止手段15の詳細について説明する。
【0067】
図3に示すように、堰止手段15は、ガラスリボンGの幅方向一方側と他方側とで対となる二機が配置されている。二機の堰止手段15の各々は、ローラー16と、ブラシ17と、ノズル18とを備えている。
【0068】
堰止手段15は、ガラスリボンGの幅方向において、レーザー切断器13(
図3にはレーザーLの照射位置のみを表示)よりも外側に配置されている。本配置について詳述すると、堰止手段15に備わったローラー16、ブラシ17、及び、ノズル18のうち、最も幅方向内側に位置する部材(図示例ではローラー16)が、レーザーLの照射位置よりも幅方向外側に存在するように、堰止手段15が配置されている。つまり、堰止手段15は、平面視で(Z方向から視て)ガラスリボンGの幅方向端部Gb上に配置されている。
【0069】
図4に示した堰止手段15の配置は、本実施形態の変形例である。本変形例においては、堰止手段15が、ガラスリボンGの幅方向において、レーザー切断器13(
図4にはレーザーLの照射位置のみを表示)と重複する位置に配置されている。本配置について詳述すると、堰止手段15に備わったローラー16、ブラシ17、及び、ノズル18のうち、最も幅方向内側に位置する部材(図示例ではローラー16)が、レーザーLの照射位置と幅方向(X方向)において重複する位置に存在するように、堰止手段15が配置されている。本変形例を適用する場合、ローラー16がガラスリボンGに対するレーザーLの照射の邪魔になることを回避する必要がある。そのため、ガラスリボンGの搬送方向(Y方向)において、ローラー16とレーザーLの照射位置とが重複しないように、ローラー16をレーザーLの照射位置よりも上流側に配置する。
【0070】
ここで、例えば、本実施形態での配置と、上記の変形例での配置との間で堰止手段15の配置転換を可能とするために、ローラー16、ブラシ17、及び、ノズル18は、それぞれガラスリボンGの幅方向における設置位置の調整が可能となっていてもよい。
【0071】
ローラー16は、ガラスリボンGの搬送経路R上において、ブラシ17およびノズル18よりも上流側に配置されている。一方、ブラシ17とノズル18とは、ガラスリボンGの搬送経路R上において、ほぼ同地点に配置されている。ブラシ17は、ガラスリボンGの幅方向においてノズル18よりも外側に配置されている。
【0072】
図5に示すように、ローラー16は、ガラスリボンGを間に挟んで、支持台8上を通過する帯状保護シート12と対向するように配置されている。ローラー16は、ガラスリボンGの上面Guに接触が可能な周面16aと、皺Wに対してガラスリボンGの幅方向内側から接触が可能な側面16bと、を有する。ローラー16は、側面16bを皺Wに接触させることで、皺Wの有効部Ga側への移動を堰き止める(
図7(a)を参照)。
【0073】
本実施形態においては、ローラー16における周面16aと側面16bとの接続部が角角張った形状に構成されている(
図7(a)を参照)。これにより、接続部が湾曲している場合(接続部にR面取りを施した場合)と比較して、皺Wの有効部Ga側への移動を側面16bにより堰き止めやすくなる。一方、皺Wの堰き止めやすさよりも、ローラー16との接触によってガラスリボンGが割れる恐れを可及的に排除することを重視したい場合がある。この場合には、本実施形態の変形例として、周面16aと側面16bとの接続部を湾曲させてもよい。
【0074】
ローラー16は、
図5に矢印で示すように、上下方向(Z方向)における設置位置(高さ位置)の調整が可能である。本調整により、ローラー16は、ガラスリボンGにおける皺Wの存在しない部位(帯状保護シート12から浮いていない平坦な部位)の上面Guとは周面16aが非接触となる。一方、ローラー16は、ガラスリボンGにおける皺Wが存在する部位の上面Guとは周面16aが接触し得る。ローラー16は、その周面16aとガラスリボンGの上面Guとの接触に伴って回転する。つまり、ローラー16はフリーローラーである。なお、ローラー16はフリーローラーであることが好ましいが、本実施形態の変形例として、駆動源と連結された駆動ローラーとしてもよい。
【0075】
ローラー16は、回転中心を含んだ芯材19と、芯材19の外周側に配置された弾性材20と、弾性材20の外周側に配置されて周面16aを構成する被覆材21と、を有する。芯材19の材質は、一例としてPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)である。弾性材20は、ローラー16との接触に起因してガラスリボンGが割れないように、ローラー16の周面16aに柔軟性を付与する。弾性材20の材質は、一例としてウレタンゴムである。被覆材21は、耐熱性および平滑性に優れたテープであり、弾性材20の外周面に貼り付けられている。被覆材21の材質は、一例として導電性布テープである。
【0076】
ローラー16は、被覆材21の平滑性により、ガラスリボンGと接触した際に、周面16aがガラスリボンGの上面Guに対して滑るように構成されている。つまり、ローラー16の周面16aとガラスリボンGの上面Guとは、互いに接触した際に相対移動するようになっている。
【0077】
図3に示すように、ローラー16の送り方向は、ガラスリボンGの搬送方向(Y方向)に対して幅方向外側に傾斜している。これにより、ローラー16の側面16bもガラスリボンGの搬送方向に対して幅方向外側に傾斜している。本傾斜を利用することで、ローラー16の側面16bで堰き止めた皺WをガラスリボンGの幅方向外側に追いやる。ここで、ローラー16の送り方向がガラスリボンGの搬送方向に対して傾斜した角度θは、0°超~45°以下とすることが好ましい。
【0078】
図5に示すように、ブラシ17は、ガラスリボンGを間に挟んで、支持台14と対向するように配置されている。ブラシ17は、皺Wを上方から押えることが可能な多数の毛17aを有する。ブラシ17は、多数の毛17aが皺Wを上方から押えることで、皺Wの有効部Ga側への移動を堰き止めると共に、皺Wの大型化を阻止する(
図7(b)を参照)。ブラシ17の毛17aとしては、典型的には毛細状の毛を採用すればよいが、ガラスリボンGの搬送方向に幅広な毛を採用してもよいし、内部に空洞を有するパイプ状の毛を採用してもよい。
【0079】
ブラシ17は、ガラスリボンGの搬送方向(Y方向)の長さ寸法がガラスリボンGの幅方向(X方向)の長さ寸法よりも、大きくなるよう構成されている。そのため、ブラシ17の毛17aは、ガラスリボンGの幅方向よりも搬送方向に沿って多数が配列されている。ブラシ17は、
図5に矢印で示すように、上下方向における設置位置の調整が可能である。本調整により、ブラシ17は、ガラスリボンGにおける皺Wの存在しない部位(支持台14から浮いていない平坦な部位)の上面Guとは毛17aが非接触となる。一方、ブラシ17は、ガラスリボンGにおける皺Wが存在する部位の上面Guとは毛17aが接触し得る。
【0080】
本実施形態の変形例として、ブラシ17の設置位置の調整により、毛17a(毛17aの先端)がガラスリボンGにおける皺Wの存在しない部位の上面Guと接触するようにしてもよい。この場合、多数の毛17aによりガラスリボンGを不当に拘束しないようにブラシ17の設置位置を調節する。
【0081】
ブラシ17の毛17aは、当該毛17aに作用する外力によって撓み変形が可能である。ただし、ブラシ17の毛17aと皺Wとが接触した際には、毛17aよりも皺Wの方が変形しやすい。ブラシ17の毛17aの材質は、一例としてPP(ポリプロピレン)である。毛17aの直径は、一例として100μm~2000μmである。毛17aの長さは、一例として30mm~100mmである。
【0082】
図6(同図ではブラシ17の図示を省略)に示すように、ノズル18は、ガラスリボンGを間に挟んで、支持台14と対向するように配置されている。ノズル18は、皺Wに向けてガラスリボンGの幅方向内側から流体としてのガスA(例えば空気等)の噴射が可能となっている。ノズル18は、噴射したガスAの圧力で皺Wを押すことで、皺Wの有効部Ga側への移動を堰き止める(
図7(b)を参照)。
【0083】
ノズル18は、任意の部位で曲げることが可能な多関節状のガス供給路22に取り付けられている。このため、ノズル18は、
図6に矢印で示すように、上下方向における位置を含めて設置位置を任意に変更することが可能である。さらに、ノズル18は、当該ノズル18が指向する方向についても任意に変更することが可能である。
【0084】
ノズル18は複数(図示例では三つ)が備わっており、複数のノズル18は相互に同方向を指向している。複数のノズル18が指向する方向は、鉛直下方に対してガラスリボンGの幅方向外側に傾いた方向である(
図7(b)を参照)。複数のノズル18は、ガラスリボンGの搬送方向に沿って配列されている。これにより、複数のノズル18から噴射されたガスAは、皺Wの移動を堰き止めるガスAの壁(カーテン)を形成する。
【0085】
本実施形態の変形例として、ガラスリボンGの搬送方向に配列された複数のノズル18に代えて、搬送方向に長尺な単一のノズル孔(ガスAの噴射口)を有するノズルを採用してもよい。別の変形例として、多関節状のガス供給路22に代えて、相互にノズルの配置や指向方向が異なる、複数のノズル付きパイプ(曲げが不可能なパイプ)を準備し、ノズル付きパイプの交換に伴ってノズルの設置位置や指向方向が変更されるようにしてもよい。
【0086】
図7に示すように、不要部分断工程P4では、ローラー16、ブラシ17、及び、ノズル18により皺Wの有効部Ga側への移動を堰き止め、皺Wの有効部Ga側への侵入を防止しつつ、ガラスリボンGの有効部Gaから幅方向端部Gbを分断していく。なお、分断後の幅方向端部Gbは、不要部分断工程P4よりも下流側でガラスリボンGの搬送経路Rから離脱させて廃棄する。
【0087】
図1及び
図2に示すように、取得工程P5では、搬送経路Rの下流端ReでガラスリボンGを幅方向(X方向)に繰り返し切断することで、ガラスリボンGから連続的にガラスフィルムGfを取得する。ガラスリボンGの幅方向に沿った切断は、公知の装置や、作業者による切断作業により実施が可能である。ガラスリボンGから取得した複数枚のガラスフィルムGfは、例えば緩衝シートと交互に重ね合わせた上で梱包する。以上により、製造方法が完了する。
【0088】
ここで、上記の実施形態に対しては、下記のような変形例を適用することも可能である。
【0089】
上記の実施形態においては、堰止手段15が、ローラー16と、ブラシ17と、ノズル18との三種の部材を備えている。しかしながらこの限りではなく、堰止手段15が、ローラー16と、ブラシ17と、ノズル18の三種の部材のうちの一種のみ、或いは、三種の部材から選択される二種のみを備えていてもよい。ただし、堰止手段15は、ローラー16を備えていることが好ましい。そのため、上記三種の部材16~18から二種を選択する場合、ローラー16とブラシ17の二種、又は、ローラー16とノズル18の二種を選択することがより好ましい。
【0090】
上記の実施形態においては、ガラスリボンGからガラス物品としてのガラスフィルムGfを切り出して製造している。勿論この限りではなく、ガラスリボンGをロール状に巻き取ったガラスロールをガラス物品として製造しても構わない。
【0091】
上記の実施形態においては、処理手段の一例である切断装置M4を用いて、ガラスリボンGの有効部Gaから幅方向端部Gbを分断する処理を施している。勿論この限りではなく、切断装置M4に代えて、処理手段として有効部Gaに別の処理を施すための装置を採用してもよい。例えば、処理手段として、有効部Gaに対する成膜処理、塗布処理、印刷処理、エッチング処理、洗浄処理、穴開け処理、ラミネート処理、コーティング処理、光学処理、熱処理、検査等を実行するための装置を採用してもよい。この場合、列挙した各処理を行うための処理工程を上記の不要部分断工程P4に代えて実行する。
【符号の説明】
【0092】
13 レーザー切断器
15 堰止手段
16 ローラー
16a 周面
16b 側面
17 ブラシ
17a 毛
18 ノズル
19 芯材
20 弾性材
21 被覆材
A ガス
B 境界
G ガラスリボン
Ga 有効部
Gb 幅方向端部
Gu 上面
L レーザー
M ガラス物品の製造装置
M3 搬送装置
M4 切断装置
P4 不要部分断工程
R 搬送経路
W 皺