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特開2025-5397抗炎症製剤を調製するためのコゴメミズ抽出物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005397
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】抗炎症製剤を調製するためのコゴメミズ抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20250108BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250108BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250108BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/185
A61P29/00
A61Q19/00
A61P17/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094551
(22)【出願日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】112123907
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】524221798
【氏名又は名称】裕郡生技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110004392
【氏名又は名称】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼裕仁
(72)【発明者】
【氏名】林振頡
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE13
4C083FF01
4C088AB12
4C088BA08
4C088CA05
4C088MA16
4C088MA27
4C088MA28
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗炎症効果を提供することで皮膚の状態を改善する天然の製剤を提供する。
【解決手段】抗炎症製剤の調製のためのコゴメミズ抽出物の使用であって、前記コゴメミズ抽出物は、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液を抽出溶媒とし、1~1.2Kgf/cmの範囲の圧力及び121~135℃の範囲の温度でコゴメミズサンプルを20~30分間抽出して得られるものである、コゴメミズ抽出物の使用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗炎症製剤の調製のためのコゴメミズ抽出物の使用であって、前記コゴメミズ抽出物は、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液を抽出溶媒とし、121~135℃の範囲の温度でコゴメミズサンプルを20~30分間抽出して得られるものである、コゴメミズ抽出物の使用。
【請求項2】
前記リン酸塩緩衝生理食塩水溶液は、濃度が0.12~0.14Mの範囲の塩化ナトリウム、及び濃度が0.008~0.012Mの範囲のリン酸二水素ナトリウムを含む、請求項1に記載のコゴメミズ抽出物の使用。
【請求項3】
1~1.2Kgf/cmの範囲の圧力で前記コゴメミズサンプルを抽出する、請求項1に記載のコゴメミズ抽出物の使用。
【請求項4】
前記コゴメミズ抽出物は、100~300μg/cmの用量で所望の個体に投与される、請求項1に記載のコゴメミズ抽出物の使用。
【請求項5】
前記コゴメミズ抽出物は、塗布方式で所望の個体に投与されて、前記所望の個体の炎症現象を抑制する、請求項1から3のいずれか1項に記載のコゴメミズ抽出物の使用。
【請求項6】
前記コゴメミズ抽出物は、1日2~3回、毎回、皮膚の平方センチメートル当たり100~300μgの塗布量で前記所望の個体に投与される、請求項5に記載のコゴメミズ抽出物の使用。
【請求項7】
前記抗炎症製剤は、乳液状、クリーム状、液状又はゲル状で化粧品として使用するか、又は皮膚ドレッシング材に用いられる、請求項5に記載のコゴメミズ抽出物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コゴメミズ抽出物の使用に関し、特にコゴメミズ抽出物の抗炎症製剤を調製するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の最も外側の器官であるが、非常に脆弱である。ヒトの皮膚細胞が過剰なフリーラジカルの刺激を受けた場合、人体の免疫機構は、炎症反応を引き起こし、さらに皮膚細胞の老化をもたらす。研究により、人体の炎症反応は一酸化窒素(nitric oxide,NO)と関係があることが表明されている。一酸化窒素は、血管、心臓、神経伝導等に大きく寄与し、人体を保護するために不可欠な化合物である。しかしながら、人体内の一酸化窒素の濃度が高すぎると炎症反応を引き起こしやすい。
【0003】
人体内では、一酸化窒素の生成は主に一酸化窒素合成酵素(nitric-oxide synthase,NOS)により制御され、一酸化窒素合成酵素は、体内のL-アルギニン(L-arginine)を出発材料とし、体内で一連の触媒反応を経て一酸化窒素を生成する。一酸化窒素合成酵素は、さらに神経型一酸化窒素シンターゼ(nNOS)、内皮型一酸化窒素シンターゼ(eNOS)及び誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)に区分され得る。神経型一酸化窒素シンターゼ(nNOS)及び内皮型一酸化窒素シンターゼ(eNOS)は、構成型(constitutive)一酸化窒素シンターゼに属し、一般に特定の生理的環境のみにおいてその作用を発揮し、そのうち、前者は、人体の中枢神経系や末梢神経系の神経組織内で一酸化窒素を生成する役割を担うのに対して、後者は、血管内で一酸化窒素を生成する役割を担う。誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)は、普段人体内で濃度が非常に低いが、人体が刺激(例えば、フリーラジカル)を受けると誘発されて大量に増殖し、且つ大量の一酸化窒素が生成され、それにより炎症反応等の人体に有害な現象をもたらす。そのため、人体の炎症反応は、部分的に誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の誘導発現と関係があるため、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現を低減するための適切な手段が見つけられれば、また、既に生成された過剰な一酸化窒素を他の物質に変換すれば、人体の炎症反応を効果的に改善することができる。
【0004】
現在、市場で多くのケア用品業者はケア用品に化学添加物を配合することで上記の効果を達成しているが、現在の消費者がケア用品の原料の天然性に非常に重視し、しかも過剰な化学添加物が皮膚に余計な負担を与える可能性もある。
【0005】
これに鑑みて、抗炎症効果を提供することで皮膚の状態を改善する天然の製剤を開発する必要は確かにある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sajad Papi et al., Immunopathologia Persa(2019) 5(1):e08
【発明の概要】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の目的は、抗炎症製剤を調製するためのコゴメミズ抽出物の使用を提供することである。
【0008】
本発明の全文に記載されている部品及び部材について、単に説明を容易にし、且つ本発明の範囲の一般的な意味を示すために、「一」又は「1つ」という助数詞を使用し、本発明において1つ又は少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、また、単一の概念は、明らかに他の意味を指さない限り、複数の場合も含む。
【0009】
抗炎症製剤の調製のための本発明のコゴメミズ抽出物の使用であって、前記コゴメミズ抽出物は、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液を抽出溶媒とし、1~1.2Kgf/cmの範囲の圧力及び121~135℃の範囲の温度でコゴメミズサンプルを20~30分間抽出して得られるものである、本発明のコゴメミズ抽出物の使用である。
【0010】
それによると、本発明のコゴメミズ抽出物の使用は、前記コゴメミズ抽出物を所望の個体に投与する際に、前記コゴメミズ抽出物に含まれる有効成分が前記所望の個体の表皮又は体内で効能を生じさせ、表皮又は体内でのフリーラジカル及び一酸化窒素を消去することによって炎症反応を効果的に抑制及び/又は軽減し、さらに抗炎症効果を提供することができることである。そして、前記コゴメミズ抽出物は、細胞に対する毒性が低く、ひいては細胞の成長を促すことができるため、前記コゴメミズ抽出物は、本発明の効果である抗炎症製剤の調製に用いることができる。
【0011】
前記リン酸塩緩衝生理食塩水溶液は、濃度が0.12~0.14Mの範囲の塩化ナトリウム、及び濃度が0.008~0.012Mの範囲のリン酸二水素ナトリウムを含む、本発明のコゴメミズ抽出物の使用である。このように、このような成分のリン酸塩緩衝生理食塩水を抽出溶媒とする場合、前記コゴメミズサンプルに豊かに含まれる有効成分を完全に抽出し、その上で前記コゴメミズ抽出物の抗炎症効果を高めることができる。
【0012】
1~1.2Kgf/cmの範囲の圧力で前記コゴメミズサンプルを抽出する、本発明のコゴメミズ抽出物の使用である。このように、さらに前記コゴメミズサンプルに豊かに含まれる有効成分を完全に抽出し、その上で前記コゴメミズ抽出物の抗炎症効果を高めることができる。
【0013】
前記コゴメミズ抽出物は、100~300μg/cmの用量で所望の個体に投与される、本発明のコゴメミズ抽出物の使用である。このように、前記コゴメミズ抽出物の投与量により、患部の炎症反応を効果的に軽減及び/又は抑制して、高い抗炎症効果を得ることができる。
【0014】
前記コゴメミズ抽出物は、塗布方式で所望の個体に投与されて、前記所望の個体の炎症現象を抑制する、本発明のコゴメミズ抽出物の使用である。このように、使用者は、前記コゴメミズ抽出物の有効成分を簡便に取得して、患部の炎症反応を軽減及び/又は抑制することができる。
【0015】
前記コゴメミズ抽出物は、1日2~3回、毎回、皮膚の平方センチメートル当たり100~300μgの塗布量で前記所望の個体に投与される、本発明のコゴメミズ抽出物の使用である。このように、前記コゴメミズ抽出物の用量により、患部の炎症反応を効果的に軽減及び/又は抑制して、高い抗炎症効果を得ることができる。
【0016】
前記抗炎症製剤は、乳液状、クリーム状、液状又はゲル状で化粧品として使用するか、又は皮膚ドレッシング材に用いられる、本発明のコゴメミズ抽出物の使用である。このように、使用者は、塗布方式によって患部の炎症反応を軽減及び/又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】試験(A)において、第A0群~第A7群の被検サンプルの細胞生存率の柱状グラフである。
図2】試験(B)において、第B0群~第B7群の被検サンプルの細胞生存率の柱状グラフである。
図3】試験(C)において、第C0群~第C10群の被検サンプルのDPPH消去率の柱状グラフである。
図4】試験(D)において、第D0群~第D9群の被検サンプルの一酸化窒素消去率の柱状グラフである。
図5】(図面代用写真)試験(E)において、角化細胞株HaCatを免疫蛍光染色法で試験した結果である。
図6】(図面代用写真)試験(F)において、マウスマクロファージRAW264.7を免疫蛍光染色法で試験した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点をより明確に分かりやすくするために、以下において、本発明の好ましい実施形態を挙げて、添付の図面を併せて詳細に説明する。
【0019】
本発明に記載の「製剤」とは、有効成分を加工・調合して特定の剤型にし、且つ一定用量の薬品及び化粧品を含むものを意味するが、本発明に記載の「抗炎症製剤」とは、使用者の炎症反応を改善する等の活性を有するものを意味し、これらは当業者であれば理解可能なものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0020】
本発明に記載の「コゴメミズ(Pilea microphylla)」は、イラクサ科(Urticaceae)ミズ属(Pilea)の植物を指し、現在台湾全島の中海抜地区に分布し、その茎が緑白色の透明状を呈し、日光の下で光を透過する性質があるため、「透明草」とも呼ばれ、小水麻、小号珠仔草、小葉冷水花又は小葉冷水草等の通称もある。
【0021】
本発明のコゴメミズ抽出物は、表皮又は体内でのフリーラジカル及び一酸化窒素を消去して、炎症反応を効果的に抑制及び/又は軽減し、さらに抗炎症効果を提供することができる。そして、前記コゴメミズ抽出物は、細胞に対する毒性が低く、ひいては細胞の成長を促すことができるため、前記コゴメミズ抽出物は、抗炎症製剤の調製に用いることができる。前記コゴメミズ抽出物は、少なくとも1つの医薬学的に許容可能な担体と共に前記抗炎症製剤を構成してもよいし、又は、前記抗炎症製剤に抗炎症効果を有する他種の有効成分を追加的に添加し、所望の個体に共に投与してもよく(例えば、100~300μg/cmの用量で前記所望の個体の皮膚に投与できる)、前記担体は、賦形剤又は添加剤であるが、共同して液状、乳液状、クリーム状又はゲル状等の様々な形態の製剤を形成でき、さらに前記所望の個体への使用を容易にできるものが好ましい。
【0022】
本発明のコゴメミズ抽出物とは、コゴメミズサンプルから抽出して取得された任意の抽出物を意味し得て、ここで、前記コゴメミズ抽出物は、コゴメミズサンプルを用意するステップと、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液(phosphate buffer saline,PBSと略称)を抽出溶媒とし、1~1.2Kgf/cmの範囲の圧力及び121~135℃の範囲の温度で前記コゴメミズサンプルを抽出して、コゴメミズ粗抽出液を得るステップと、前記コゴメミズ粗抽出液を濃縮して、前記コゴメミズ抽出物を得るステップと、を含む方法によって調製し得ることが好ましい。
【0023】
詳細的には、前記コゴメミズサンプルは、コゴメミズの全草植物であってもよい。前記コゴメミズサンプルを取得した後、直接前記リン酸塩緩衝生理食塩水溶液で抽出してもよいし、又は、抽出前に、前記コゴメミズサンプルを事前に乾燥し、例えば乾燥して前記コゴメミズサンプルの含水量を3~10%まで低減してもよい。また、前記リン酸塩緩衝生理食塩水溶液で抽出する時の接触表面積を大きくするために、前記コゴメミズサンプルを事前に粉砕し、例えば前記コゴメミズの粒径を5~20nmの範囲にしてもよく、それにより後続の抽出効率を高める。
【0024】
前記リン酸塩緩衝生理食塩水溶液は、塩化ナトリウム(NaCl,sodium chloride)、及びリン酸二水素ナトリウム(NaHPO,sodium dihydrogen phosphate)を含み得る水溶液であり、且つ前記水溶液のpHの値が大体中性である。例えば、前記リン酸塩緩衝生理食塩水溶液は、濃度が0.12~0.14Mの範囲の塩化ナトリウム、及び濃度が0.008~0.012Mの範囲のリン酸二水素ナトリウムを含み得るが、濃度が0.13Mの塩化ナトリウム、及び濃度が0.01Mのリン酸二水素ナトリウムを含み、且つ前記リン酸塩緩衝生理食塩水溶液のpHの値が7.0であることが好ましい。
【0025】
一実施形態において、100グラムあたりのコゴメミズサンプルは、200ミリリットルの前記抽出溶媒と混合して混合物を得ることができ、次に1~1.2Kgf/cmの範囲(例えば1.033Kgf/cm)の圧力、121~135℃の範囲(例えば127℃)の温度で抽出を行い、抽出時間が20~30分間の範囲内(例えば20分間)であってもよく、前記コゴメミズサンプルに豊かに含まれる有効成分が完全に前記抽出溶媒に溶解できるようにし、こうして前記コゴメミズ粗抽出液を得ることができる。また、一実施形態において、さらに孔径0.22μmの濾過孔で微生物を濾過する。また、上記抽出ステップは、抽出中の細菌及び/又は微生物の含有量を低減し、コゴメミズに含まれる有効成分の効果が細菌及び/又は微生物の影響を受けないように、滅菌器で行われることが好ましい。
【0026】
前記コゴメミズ粗抽出液を取得した後、前記コゴメミズ粗抽出液を冷凍乾燥して、前記コゴメミズ抽出物を得ることができ、この工程によって、前記コゴメミズ抽出物の有効成分をより濃縮にすることができるため、少量の前記コゴメミズ抽出物だけで最適な効果を発揮することができる。一実施形態において、遠心分離機を用いて12000rpmで20分間遠心分離してコゴメミズ粗抽出液内の残滓を除去し、次いで-50~-80℃の範囲の温度で冷凍乾燥して乾燥粉体を得ると、前記コゴメミズ抽出物を得ることができる。
【実施例0027】
本発明のコゴメミズ抽出物はヒトの皮膚細胞に対して毒性がなく、ひいては皮膚細胞の新生を促進する活性を有することを実証するために、次の試験(A)、(B)を行う。
【0028】
(A)コゴメミズ抽出物が角化細胞株の細胞生存率に及ぼす影響
【0029】
表1を参照し、本試験は、本発明のコゴメミズ抽出物を角化細胞(keratinocyte)株HaCatに加え、24時間培養した後、MTT分析法により各群のモデル細胞株の細胞生存率を算出し、且つ対照群である第A0群(即ち、コゴメミズ抽出物の濃度が0μg/mLの群)の吸光値を100%として残りの群の吸光値の結果を算出し、これで各群の被検サンプルの相対的細胞生存率を換算することができ、その結果を図1に示す。
【0030】
表1、本試験の各群の被検サンプルである。
【表1】
【0031】
図1に示すように、第A1群~第A4群の相対的細胞生存率が第A0群の相対的細胞生存率よりも高く、中低濃度(20μg/mL~80μg/mL)のコゴメミズ抽出物の添加は角化細胞株HaCatの生存を促進できることを示した。コゴメミズ抽出物の濃度の上昇に伴い、第A5群~第A7群は相対的細胞生存率が次第に上昇することを示し、中高濃度(100μg/mL~200μg/mL)のコゴメミズ抽出物の添加は角化細胞株HaCatに対して細胞毒性がないことを示した。
【0032】
(B)コゴメミズ抽出物が繊維芽細胞株の細胞生存率に及ぼす影響
【0033】
表2を参照し、本試験は、本発明のコゴメミズ抽出物を繊維芽細胞(fibroblast)株HS68に加え、24時間培養した後、MTT分析法により各群のモデル細胞株の細胞生存率を算出し、且つ対照群である第B0群(即ち、コゴメミズ抽出物の濃度が0μg/mLの群)の吸光値を100%として残りの群の吸光値の結果を算出し、これで各群の被検サンプルの相対的細胞生存率を換算することができ、その結果を図2に示す。
【0034】
表2、本試験の各群の被検サンプルである。
【表2】
【0035】
図2に示すように、試験(A)で得られた結果と同様であり、第B1群~第B4群の相対的細胞生存率が第B0群の相対的細胞生存率よりも高く、中低濃度(20μg/mL~80μg/mL)のコゴメミズ抽出物の添加は繊維芽細胞株HS68の生存を促進できることを示した。コゴメミズ抽出物の濃度の上昇に伴い、第B5群~第B7群は相対的細胞生存率が次第に上昇することを示し、中高濃度(100μg/mL~200μg/mL)のコゴメミズ抽出物の添加は繊維芽細胞株HS68に対して細胞毒性がないことを示した。
【0036】
次に、本発明のコゴメミズ抽出物は確かに、フリーラジカルを消去し、さらに誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現を抑制するために用いられ得ることを実証するために、次の試験(C)を行う。
【0037】
(C)DPPHフリーラジカル消去効果試験
【0038】
本試験は、DPPHフリーラジカル消去分析法により被検サンプルの抗酸化能力を測定する。DPPH(α,α-diphenyl-β-pricrylhydrazyl)は、安定したフリーラジカルを生成でき、抗酸化力を測定する指標としてよく用いられる化合物である。DPPHは、アルコール溶液では青紫色を呈し、DPPHが生成したフリーラジカルが被検サンプルによって消去された時、溶液の色が青紫色から黄色に変化する。そのため、前記DPPH溶液の脱色程度が高いほど、前記被検サンプルの抗酸化力効果が高いことを示す。表3を参照し、本試験は、各群の被検溶液をそれぞれ50μL採取し、1mLのDPPH溶液及び0.95mLのTris-HCl緩衝溶液を順次加え、均一に混合(震動)した後、室温で30分間静置し、その後、分光光度計により波長517nmにおける吸光値を測定する。続いて、各群の吸光値を下記式に代入すれば、各群の被検サンプルのDPPH消去率を得ることができる。また、本試験の第C1群は陰性対照群であり、75%エタノール水溶液のみを加え、且ついかなるコゴメミズ抽出物も加えないのに対して、第C2群は陽性対照群であり、40μg/mLビタミンCを加えるが、いかなるコゴメミズ抽出物も加えない。DPPH溶液は波長517nmで高い吸光値を有するため、測定された吸光値が低いほど、被検サンプルのDPPH消去率(抗酸化力)が高いことを示す。
【数1】
【0039】
表3、本試験の各群の被検サンプルである。
【表3】
【0040】
図3に示すように、本発明のコゴメミズ抽出物のDPPH消去率は、そのコゴメミズ抽出物の濃度と正の相関性を有し、且つ濃度が200μg/mL以上(即ち、第C8群~第C10群)である場合に、DPPH消去率が50%以上に達し、本発明のコゴメミズ抽出物は確かに、フリーラジカルを効果的に消去し、さらに誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現を抑制することができることを示した。
【0041】
次に、本発明のコゴメミズ抽出物は確かに、既に生成された一酸化窒素を消去し、さらに炎症反応を抑制/軽減するために用いられ得ることを実証するために、次の試験(D)を行う。
【0042】
(D)一酸化窒素消去効果試験
【0043】
本試験は、ニトロプルシドナトリウム(sodium nitroprusside,SNP)消去分析法により被検サンプルの一酸化窒素消去効果を測定する。ニトロプルシドナトリウム(SNP)は、溶液中で一酸化窒素を安定的に生成できる物質であり、一酸化窒素消去効果を測定する指標としてよく用いられる。表4を参照し、本試験は、各群の被検溶液をそれぞれ0.12mL採取し、SNP溶液(12.5mM、PBSに溶解する)を0.08mL加えた後、室温で30分間反応させる。続いて、0.02mLのスルファニルアミド溶液(重量百分率濃度が1%であり、5%のリン酸水溶液に溶解する)、及び0.02mLのN-(ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩の水溶液(重量百分率濃度が1%)を加えた後、5分間均一に震動し、その後、波長550nmにおける吸光値を測定する。続いて、各群の吸光値を下記式に代入すれば、各群の被検サンプルの一酸化窒素消去率を得ることができ、吸光値が低いほど、被検サンプルの一酸化窒素消去能力が高いことを示す。また、本試験の第D1群は陰性対照群であり、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液(PBS)水溶液のみを加え、且ついかなるコゴメミズ抽出物も加えない。
【数2】
【0044】
表4、本試験の各群の被検サンプルである。
【表4】
【0045】
図4に示すように、本発明のコゴメミズ抽出物の一酸化窒素消去率は、そのコゴメミズ抽出物の濃度と正の関連性を有し、且つ濃度が400μg/mL以上(即ち、第D8群~第D9群)である場合に、一酸化窒素消去率が50%以上に達し、本発明のコゴメミズ抽出物は確かに、既に生成された一酸化窒素を効果的に消去し、さらに人体の炎症反応を解消及び/又は軽減することができることを示した。
【0046】
続いて、本発明のコゴメミズ抽出物は皮膚細胞の抗老化発現を促進できることを実証するために、次の試験(E)を行う。
【0047】
(E)コゴメミズ抽出物が抗老化タンパク質Sirt6の発現に及ぼす影響
【0048】
本試験は、それぞれ0μg/mL、100μg/mL及び200μg/mLのコゴメミズ抽出物を角化細胞(keratinocyte)株HaCatに加え、24時間培養した後、本発明のコゴメミズ抽出物が抗老化タンパク質Sirt6の発現に及ぼす影響を観察するために、免疫蛍光染色法により抗老化タンパク質Sirt6を染色し、ここで、DAPIは、細胞核染色剤であり、細胞核の位置を明確に標示することができる。
【0049】
図5に示すように、対照群に本発明のコゴメミズ抽出物を加えず、抗老化タンパク質Sirt6はほとんど発現しない。コゴメミズ抽出物の濃度の増加に伴い、抗老化タンパク質Sirt6の発現が顕著に増強され、本発明のコゴメミズ抽出物は確かに、抗老化タンパク質Sirt6の発現を増強し、さらに抗老化効果を提供することができることを示した。
【0050】
続いて、本発明のコゴメミズ抽出物は抗炎症効果を提供できることを実証するために、次の試験(F)を行う。
【0051】
(F)コゴメミズ抽出物が転写因子NF-κBの発現に及ぼす影響
【0052】
転写因子NF-κBは、炎症反応を調節できる代表的な因子であり、その機能は、先天的免疫細胞中の炎症促進遺伝子を調節し、且つ炎症性T細胞の活性化及び分化を制御できることである。本試験は、マウスマクロファージ(macrophages)RAW264.7をモデル細胞株とし、リポ多糖(lipopolysaccharide,LPS)により細胞の免疫反応を誘発した後、免疫反応が起こったマウスマクロファージRAW264.7に100μg/mL及び200μg/mLのコゴメミズ抽出物をそれぞれ加え、6時間培養した後、本発明のコゴメミズ抽出物が転写因子NF-κBの発現に及ぼす影響を観察するために、免疫蛍光染色法により転写因子NF-κBを染色し、ここで、DAPIは、細胞核染色剤であり、細胞核の位置を明確に標示することができる。
【0053】
図6に示すように、対照群は、本発明のコゴメミズ抽出物を加えず、且つリポ多糖(LPS)により細胞の免疫反応を誘発しない群であり、転写因子NF-κBの発現が非常に弱く、且つ細胞内の細胞質に位置する。リポ多糖(LPS)により細胞の免疫反応を誘発した後、転写因子NF-κBの蛍光強度が明らかに増強され、且つ蛍光の大部分が細胞核内の位置に集中していることは観察され、マウスマクロファージRAW264.7は確かにリポ多糖(LPS)に影響されて免疫反応が起こったことを示した。続いて、異なる濃度(即ち、100μg/mL及び200μg/mL)のコゴメミズ抽出物を用いて、既に免疫反応が起こったマウスマクロファージRAW264.7を処理したところ、転写因子NF-κBの蛍光強度が明らかに低下し、且つ蛍光が細胞核から離れて細胞質に分散し、本発明のコゴメミズ抽出物は確かに、炎症反応を効果的に抑制及び/又は軽減し、さらに抗炎症効果を提供することができることを示した。
【0054】
要約すると、本発明のコゴメミズ抽出物の使用は、前記コゴメミズ抽出物を所望の個体に投与する際に、前記コゴメミズ抽出物に含まれる有効成分が前記所望の個体の表皮又は体内で効能を生じさせ、表皮又は体内でのフリーラジカル及び一酸化窒素を消去することによって炎症反応を効果的に抑制及び/又は軽減し、さらに抗炎症効果を提供することができることである。そして、前記コゴメミズ抽出物は、細胞に対する毒性が低く、ひいては細胞の成長を促すことができるため、前記コゴメミズ抽出物は、本発明の効果である抗炎症製剤の調製に用いることができる。
【0055】
上記の好ましい実施例によって本発明を開示したが、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱させることなく上記の実施例に対する種々の変更及び修正は、いずれも依然として本発明の保護範囲内に含まれるものとするため、本発明の保護範囲は、添付される特許請求の範囲に記載の内容及びその均等な範囲内の全ての変更を含むべきである。
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図2
図3
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図5
図6