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特開2025-5401電気モータシステム用の低粘度潤滑流体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005401
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電気モータシステム用の低粘度潤滑流体
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20250108BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20250108BHJP
   C10M 155/00 20060101ALN20250108BHJP
   C10M 137/08 20060101ALN20250108BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20250108BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20250108BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20250108BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20250108BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20250108BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20250108BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20250108BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M169/04
C10M139/00 A
C10M155/00
C10M137/08
C10M137/10 Z
C10M135/36
C10N40:00 D
C10N40:04
C10N30:10
C10N30:06
C10N30:00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024096117
(22)【出願日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】18/342,010
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ハーレー、スージー
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BG19C
4H104BH05C
4H104BH06C
4H104BJ05C
4H104CJ15C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA03
4H104LA05
4H104LA20
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低粘度を有する電気モータシステム流体において使用するために、許容可能な摩耗性能、並びに良好な電気伝導率及び酸化安定有する電気モータ潤滑流体を提供する。
【解決手段】潤基油と、スクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約70~約140ppmのリン及び約150~約300ppmの窒素を送達する、スクシンイミド分散剤と、約40~70ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、前記電気モータ潤滑流体に約40~約70ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、前記電気モータ潤滑流体に最大950ppmの硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤とを含み、約4.5cSt以下のkV100℃及び約150~約250ppmの総リンを有する、電気モータ潤滑流体とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車又はハイブリッド電気自動車に適した電気モータ潤滑流体であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、
約2,000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約70~約140ppmのリン及び約150~約300ppmの窒素を前記電気モータ潤滑流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、
前記電気モータ潤滑流体に約40~70ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、
前記電気モータ潤滑流体に約40~約70ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、
前記電気モータ潤滑流体に最大950ppmの硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を含み、
約4.5cSt以下のkV100℃及び約150~約250ppmの総リンを有する、電気モータ潤滑流体。
【請求項2】
前記リン酸エステルのアミン塩は、式Iの構造又はその溶媒和物若しくは水和物を有し、
【化1】
式中、
及びRは、独立して、水素、又は直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状ヒドロカルビル基であり、
mが、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、
、R、R及びRは、独立して、水素又はヒドロカルビル基であり、R~Rのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基であり、好ましくは、R及びRは、独立して、C~C10アルキル基であり、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、C10~C20アルキル基である、請求項1に記載の電気モータ潤滑流体。
【請求項3】
前記高分子量ポリイソブチレンの数平均分子量は、約2,000~約2,300であり、及び/又は前記電気モータ潤滑流体は、約2~約4重量%の前記スクシンイミド分散剤を含む、請求項1に記載の電気モータ潤滑流体。
【請求項4】
前記スクシンイミド分散剤、前記リン酸エステルのアミン塩、前記無灰ジアルキルジチオホスフェート、及び
チアジアゾール又はその誘導体は、添加剤濃縮物中に提供され、前記添加剤濃縮物は、約15~約80cStのkV100℃を有し、及び/又は前記添加剤濃縮物のkV100℃と前記電気モータ潤滑流体のkV100℃との比は、約5:1~約30:1である、請求項1に記載の電気モータ潤滑流体。
【請求項5】
前記電気モータ潤滑流体は、CEC L-48-A)に従って前記電気モータ潤滑流体がエージングされた後に0.09cSt未満の粘度変化を有し、及び/又は前記電気モータ潤滑流体は、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/90スカッフィング試験において少なくとも8の破壊荷重段階を達成し、及び/又は前記電気モータ潤滑流体は、前記電気モータ潤滑流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正伝導率試験によって測定され、20Hz及び100℃で測定されて、約60nS/M以下の電気伝導率を有する、請求項1に記載の電気モータ潤滑流体。
【請求項6】
前記無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む前記油溶性リン耐摩耗添加剤は、(a)有機ヒドロキシ化合物を五硫化リンと反応させて反応生成物を形成する工程と、前記反応生成物を不飽和カルボン酸と更に反応させて、前記無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む前記油溶性リン耐摩耗添加剤を形成する工程と、を含むプロセスによって作製され、及び/又は前記無灰ジアルキルジチオホスフェートは、式IIの化合物又はその塩を含み、
【化2】
及びRは、独立して、C~C直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、Rは、-H又は-CHであり、好ましくは、前記無灰ジアルキルジチオホスフェートは、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロパン酸である、請求項1に記載の電気モータ潤滑流体。
【請求項7】
前記チアジアゾール又はその誘導体は、式IIIの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【化3】
式中、
各R10は、独立して、水素又は硫黄であり、
各R11は、独立して、アルキル基であり、
nは、0又は1の整数であり、R10が、水素である場合、隣接のR11部分の前記整数nは、0であり、R10が、硫黄である場合、隣接のR11部分の前記整数nは、1であり、
少なくとも1つのR10は、硫黄である、請求項1に記載の電気モータ潤滑流体。
【請求項8】
前記電気モータ潤滑流体に約50ppm以下のカルシウムを提供する1つ以上の金属含有清浄添加剤を更に含む、請求項1に記載の電気モータ潤滑流体。
【請求項9】
電気モータ潤滑流体に適した添加剤濃縮物であって、
約2,000以上の数平均分子量を有する高分子量ポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約1400~約2450ppmのリン及び約3000~約5400ppmの窒素を前記分散剤添加剤濃縮物に送達する量で存在する、スクシンイミド分散剤と、
前記添加剤濃縮物に約1000~1500ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、
前記添加剤濃縮物に約800ppm~約1300ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、
前記添加剤濃縮物に硫黄を提供するが、約18,000ppm以下の硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を含み、
約15cSt~約80sCtのkV100℃を有する、添加剤濃縮物。
【請求項10】
前記高分子量ポリイソブチレンの前記数平均分子量は、約2,000~約2,300であり、及び/又は前記スクシンイミド分散剤は、約40~約70重量%の前記添加剤濃縮物を含み、及び/又は前記添加剤濃縮物に約950ppm以下のカルシウムを提供する1つ以上の金属含有清浄添加剤を更に含む、請求項9に記載の添加剤濃縮物。
【請求項11】
電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法であって、
前記駆動系部品を電気モータ潤滑組成物で潤滑する工程であって、前記電気モータ潤滑組成物は、前記電気モータの部分に接触する、工程を含み、
前記電気モータ潤滑組成物は、(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)約2,000以上の数平均分子量を有する高分子量ポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約70~約140ppmのリン及び約150~約300ppmの窒素を前記電気モータ潤滑流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(iii)前記電気モータ潤滑流体に約40~70ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、(iv)前記電気モータ潤滑流体に約40~約70ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、(v)前記電気モータ潤滑流体に硫黄を提供するが、約950ppm以下の硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を含み、
前記電気モータ潤滑流体は、前記電気モータ潤滑流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正伝導率試験によって測定され、20Hz及び100℃で測定されて、約3.5cSt以下のkV100℃、約150~約200ppmの総リン、及び約37nS/M以下の電気伝導率を有する、電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法。
【請求項12】
前記高分子量ポリイソブチレンの前記数平均分子量は、約2,000~約2,300であり、及び/又は前記電気モータ潤滑流体は、約2~約4重量%の前記スクシンイミド分散剤を含む、請求項11に記載の電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法。
【請求項13】
前記スクシンイミド分散剤、前記リン酸エステルのアミン塩、無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む前記油溶性リン耐摩耗添加剤、及びチアジアゾール又はその誘導体を含む前記硫黄提供添加剤は、約15~約80cStのkV100℃を有する添加剤濃縮物中に提供され、及び/又は前記電気モータ潤滑組成物は、前記電気モータ潤滑組成物に約50ppm以下のカルシウムを提供する1つ以上の金属含有清浄添加剤を更に含む、請求項11に記載の電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法。
【請求項14】
前記添加剤濃縮物のkV100℃と前記電気モータ潤滑流体のkV100℃との比は、約5:1~約30:1である、請求項13に記載の電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法。
【請求項15】
前記電気モータ潤滑流体は、CEC L-48-Aに従って前記電気モータ潤滑流体がエージングされた後に0.09cSt未満の粘度変化を有し、及び/又は前記電気モータ潤滑流体は、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/90スカッフィング試験において少なくとも8の破壊荷重段階を達成する、請求項11に記載の電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気モータシステム用の潤滑流体、及び電気モータシステム内のギア及びクラッチを潤滑する方法に関する。特に、開示される方法及び潤滑流体は、潤滑粘度の油及び少なくとも1つのより高分子量の分散剤を含む、電気自動車又はハイブリッド電気自動車の電気モータにおいて使用するための低粘度潤滑流体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車パワートレイン潤滑剤を開発する際の主要な課題は、許容可能な摩耗及び摩擦性能を達成し、酸化安定性を維持する一方で、パワートレイン中の帯電した構成要素との潤滑剤相溶性を確実にすることである。電気自動車又はハイブリッド電気自動車における潤滑剤はまた、電気モータ内の構成要素と接触し得るため、流体の電気伝導率はまた、帯電した構成要素の静電蓄積及び放電を阻止するために、比較的低くする必要がある。
【0003】
効率を改善するために、潤滑剤製造業者は、潤滑剤の粘度を低下させようとすることが多いが、より低い粘度の流体は、産業及び/又は自動車製造業者によってしばしば要求される厳しい摩耗及び摩擦試験にはあまり望ましくないことが多い。したがって、低粘度流体は、必要とされる摩耗試験を満たすために追加の耐摩耗添加剤を必要とすることが多くてもよい。しかしながら、これらの追加の添加剤を添加すると、潤滑剤の電気伝導率が増加し、酸化安定性が低下することが多い。例えば、約4.5cSt以下のkV100℃(ASTM D445)を有する潤滑剤は、必要とされる摩耗性能を達成するために、より高い粘度の潤滑剤において必要とされるよりも多い量の摩耗防止添加剤を必要とし得るが、特定の摩耗防止添加剤の添加は、増加した伝導率及び低下した酸化安定性をもたらし得る。特に、約4.5cSt以下、又は3.5cSt以下、又は3.0cSt以下のkV100℃を有する低粘度潤滑剤が、CEC L-84-02の要求の厳しいA10/16.6R/90スカッフィング試験などの厳しいFZG摩耗試験に合格する一方で、低い伝導率をも示し、酸化安定性を維持することは、以前は困難であった。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、電気自動車又はハイブリッド電気自動車に適した電気モータ潤滑流体が本明細書に記載される。手法では、電気モータ潤滑流体は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、約2,000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約70~約140ppmのリン及び約150~約300ppmの窒素を電気モータ潤滑流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、電気モータ潤滑流体に約40~70ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、電気モータ潤滑流体に約40~約70ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、電気モータ潤滑流体に最大約950ppmの硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を含み、電気モータ潤滑流体は、約4.5cSt以下のkV100℃及び約150~約250ppmの総リンを有する。
【0005】
他の手法又は実施形態では、前段落に記載される電気モータ潤滑は、任意の組合せで、1つ又は複数の任意選択の特徴又は実施形態を含んでもよい。これらの任意選択の特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:リン酸エステルのアミン塩は、式Iの構造又はその溶媒和物若しくは水和物を有し、
【0006】
【化1】
及びRは、独立して、水素、又は直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状ヒドロカルビル基であり、mが、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、R、R、R及びRは、独立して、水素又はヒドロカルビル基であり、R~Rの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基であり、及び/又はR及びRは、独立して、C~C10アルキル基であり、R、R、R及びRの少なくとも1つは、C10~C20アルキル基であり、及び/又は高分子量ポリイソブチレンの数平均分子量は、約2,000~約2,300であり、及び/又は電気モータ潤滑流体は、約2~約4重量%のスクシンイミド分散剤を含み、及び/又はスクシンイミド分散剤、リン酸エステルのアミン塩、無灰ジアルキルジチオホスフェート、及びチアジアゾール又はその誘導体は、添加剤濃縮物中に提供され、添加剤濃縮物は、約15~約80cStのkV100℃を有し、及び/又は添加剤濃縮物のkV100℃と電気モータ潤滑流体のkV100℃との比は、約5:1~約30:1であり、及び/又は電気モータ潤滑流体は、CEC L-48-A)に従って電気モータ潤滑流体がエージングされた後、0.09cSt未満の粘度変化を有し、及び/又は電気モータ潤滑流体は、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/90スカッフィング試験において少なくとも8の破壊荷重段階を達成し、及び/又は電気モータ潤滑流体は、電気モータ潤滑流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正伝導率試験によって測定され、20Hz及び100℃で測定されて、約60nS/M以下の電気伝導率を有し、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤は、(a)有機ヒドロキシ化合物を五硫化リンと反応させて反応生成物を形成する工程と、反応生成物を不飽和カルボン酸と更に反応させて、無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤を形成する工程と、を含むプロセスによって作製され、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートは、式IIの化合物又はその塩を含み、
【0007】
【化2】
及びRは、独立して、C~C直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、Rは、-H又は-CHであり、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートは、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロパン酸であり、及び/又はチアジアゾール若しくはその誘導体は、式IIIの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【0008】
【化3】
各R10は、独立して、水素又は硫黄であり、各R11は、独立して、アルキル基であり、nは、0又は1の整数であり、R10が水素である場合、隣接するR11部分の整数nは0であり、R10が硫黄である場合、隣接するR11部分のnは1であり、少なくとも1つのR10は硫黄であり、及び/又は電気モータ潤滑流体に約50ppm以下のカルシウムを提供する1つ以上の金属含有清浄添加剤を更に含む。
【0009】
更に他の実施形態において、本開示は、電気モータ潤滑流体に適した添加剤濃縮物を提供する。手法では、添加剤濃縮物は、約2,000以上の数平均分子量を有する高分子量ポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約1400~約2450ppmのリン及び約3000~約5400ppmの窒素を分散剤添加剤濃縮物に送達する量で存在する、スクシンイミド分散剤と、添加剤濃縮物に約1000~1500ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、添加剤濃縮物に約800ppm~約1300ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、添加剤濃縮物に硫黄を提供するが、約18,000ppm以下の硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を含み、添加剤濃縮物は、約15cSt~約80sCtのkV100℃を有する。
【0010】
他の実施形態では、前段落の添加剤濃縮物は、任意の組合せで、1つ以上の任意選択的な特色又は実施形態を含み得る。これらの任意選択の特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:リン酸エステルのアミン塩は、式Iの構造又はその溶媒和物若しくは水和物を有し、
【0011】
【化4】
及びRは、独立して、水素、又は直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状ヒドロカルビル基であり、mが、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、R、R、R及びRは、独立して、水素又はヒドロカルビル基であり、R~Rのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基であり、及び/又はR及びRは、独立して、C3~C10アルキル基であり、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、C10~C20であり、及び/又は高分子量ポリイソブチレンの数平均分子量は、約2,000~約2,300であり、及び/又はスクシンイミド分散剤は、約40~約70重量%の添加剤濃縮物を含み、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤は、(a)有機ヒドロキシ化合物を五硫化リンと反応させて反応生成物を形成し、反応生成物を不飽和カルボン酸と更に反応させて無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤を形成する工程を含むプロセスによって作製され、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートは、式IIの化合物又はその塩を含み、
【0012】
【化5】
及びRは、独立して、C~C直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、Rは、-H又は-CHであり、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートは、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロパン酸であり、及び/又はチアジアゾール若しくはその誘導体は、式IIIの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【0013】
【化6】
各R10は、独立して、水素又は硫黄であり、各R11は、独立して、アルキル基であり、nは、0又は1の整数であり、R10が水素である場合、隣接するR11部分の整数nは0であり、R10が硫黄である場合、隣接するR11部分のnは1であり、少なくとも1つのR10は硫黄であり、及び/又は添加剤濃縮物に約950ppm以下のカルシウムを提供する1つ以上の金属含有清浄添加剤を更に含む。
【0014】
更に他の実施形態では、電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法も本明細書に記載される。手法では、本方法は、駆動系部品を電気モータ潤滑組成物で潤滑することを含み、電気モータ潤滑組成物は、電気モータの部分に接触し、電気モータ潤滑組成物は、(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)約2,000以上の数平均分子量を有する高分子量ポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約70~約140ppmのリン及び約150~約300ppmの窒素を電気モータ潤滑流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(iii)電気モータ潤滑流体に約40~70ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、(iv)電気モータ潤滑流体に約40~約70ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、(v)電気モータ潤滑流体に硫黄を提供するが、約950ppm以下の硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を含み、電気モータ潤滑流体は、電気モータ潤滑流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正伝導率試験によって測定され、20Hz及び100℃で測定されて、約4.5cSt以下のkV100℃、約150~約250ppmの総リン、及び約37nS/M以下の電気伝導率を有する。
【0015】
更なる実施形態では、前段落の電気モータを含む駆動系部品を潤滑するための方法は、1つ以上の任意選択の方法の工程、特徴、又は実施形態を任意の組合せで更に含むことができる。これらの任意選択の方法の工程、特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:リン酸エステルのアミン塩は、式Iの構造又はその溶媒和物若しくは水和物を有し、
【0016】
【化7】
及びRは、独立して、水素、又は直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状ヒドロカルビル基であり、mが、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、R、R、R及びRは、独立して、水素又はヒドロカルビル基であり、R~Rの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基であり、及び/又はR及びRは、独立して、C~C10アルキル基であり、R、R、R及びRの少なくとも1つは、C10~C20アルキル基であり、高分子量ポリイソブチレンの数平均分子量は、約2,000~約2,300であり、及び/又は電気モータ潤滑流体は、約2~約4重量%のスクシンイミド分散剤を含み、及び/又はスクシンイミド分散剤と、リン酸エステルのアミン塩と、無灰型ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、チアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、は、約15~約80cStのkV100℃を有する添加剤濃縮物中に提供され、及び/又は添加剤濃縮物のkV100℃と電気モータ潤滑流体のkV100℃との比は、約5:1~約30:1であり、電気モータ潤滑流体は、CEC L-48-Aに従って電気モータ潤滑流体がエージングされた後に0.09cSt未満の粘度変化を有し、電気モータ潤滑流体は、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/90スカッフィング試験において少なくとも8の破壊荷重段階を達成し、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤は、(a)有機ヒドロキシ化合物を五硫化リンと反応させて反応生成物を形成する工程と、反応生成物を不飽和カルボン酸と更に反応させて、無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤を形成する工程と、を含むプロセスによって作製され、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートは、式IIの化合物又はその塩を含む。
【0017】
【化8】
及びRは、独立して、C3~C8直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、Rは、-H又は-CHであり、及び/又は無灰ジアルキルジチオホスフェートは、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロパン酸であり、及び/又はチアジアゾール若しくはその誘導体は、式IIIの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【0018】
【化9】
各R10は、独立して、水素又は硫黄であり、各R11は、独立して、アルキル基であり、nは、0又は1の整数であり、R10が水素である場合、隣接するR11部分の整数nは0であり、R10が硫黄である場合、隣接するR11部分のnは1であり、少なくとも1つのR10は硫黄であり、及び/又は電気モータ潤滑組成物は、電気モータ潤滑組成物に約50ppm以下のカルシウムを提供する1つ以上の金属含有清浄添加剤を更に含む。
【0019】
更に別の実施形態では、本開示は、電気モータ潤滑流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正伝導率試験によって測定され、20Hz及び100℃で測定されて、約150~約250ppmの総リン、及び約37nS/M以下の電気伝導率を有する電気モータ潤滑組成物の約4.5cSt以下のkV100℃を達成するための、電気モータ潤滑組成物における添加剤濃縮物の使用及び/又は電気モータ潤滑組成物の使用を提供する。他の実施形態では、使用は、(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)約2,000以上の数平均分子量を有する高分子量ポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、約0.5~約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約70~約140ppmのリン及び約150~約300ppmの窒素を電気モータ潤滑流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(iii)電気モータ潤滑流体に約40~70ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、(iv)電気モータ潤滑流体に約40~約70ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、(v)電気モータ潤滑流体に硫黄を提供するが、約950ppm以下の硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を有する電気モータ潤滑組成物を含む。更に他の手法又は実施形態において、使用はまた、本概要において上記で説明されるような、電気モータ潤滑組成物の任意の他の実施形態、方法の任意の他の実施形態、又は添加剤濃縮物の任意の他の実施形態を含んでもよい。
【0020】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示した発明の明細書及び発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。
【0021】
以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供される。
【0022】
「潤滑油」、「潤滑組成物(lubricant composition)」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「潤滑剤」、及び「潤滑及び冷却流体」という用語は、主要量の基油と、少量の添加剤組成物とを含む、完成した潤滑生成物を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、及び「添加剤組成物」という用語は、過半量の基油を除いた潤滑油組成物の部分を指している。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知である、その通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基から独立して選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「重量%(percent by weight)」又は「重量%(wt%)」という用語は、別段の断りがない限り、列挙した成分が組成物全体の重量に対して表す百分率を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が、全ての割合で油中に可溶性、溶解性、混和性、又は懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、約1~約200個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、約3~約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はヘテロ原子、例えば、限定するものではないが窒素及び酸素を含み得る単環及び多環芳香族化合物を指している。
【0030】
本明細書で使用される場合、「数平均分子量」又は「Mn」は、市販のポリスチレン標準(較正基準として約180~約18,000のMnを有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって判定される。
【0031】
本開示全体を通して、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」などは、オープンエンドであると考えられ、明示的に列挙されていない任意の要素、工程、又は配合成分を含むことを理解すべきである。「から本質的になる」という句は、任意の明示的に列挙された要素、工程、又は配合成分、及び本発明の基本的及び新規の態様に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の要素、工程、又は配合成分を含むことを意味している。本開示はまた、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」を使用して記載される任意の組成物は、具体的に列挙されたその成分「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」同じ組成物の開示を含むものとして解釈されるべきであることも企図している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
例示的な実施形態によれば、約4.5cSt以下、約3.5cSt以下、又は約3.0cSt以下のkV100℃での低粘度を有し、依然として、CEC L-84-02のA10/16.6R/90試験などの厳しいFZGスカッフィング試験に合格することができ、同時に、良好な電気伝導率を達成し、酸化安定性を維持することができる、電気自動車又はハイブリッド電気自動車に適した電気モータ潤滑流体が本明細書に記載される。しかしながら、本明細書中の潤滑流体について驚くべきことは、比較的高分子量のポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤を含む特定の添加剤の組合せが、合格摩耗、伝導率、及び酸化性能を達成するのに有用であることが見出されたことである。本明細書に記載の選択された比較的高分子量の分散剤は、添加剤濃縮物に組み込まれると、比較的高い粘度を有する添加剤濃縮物をもたらす。このような高粘度添加剤濃縮物は、厳密な摩耗保護、低い伝導率、及び酸化安定性を必要とする低粘度完成潤滑剤(例えば、約4.5cSt以下、約3.5cSt以下、又は約3.0cSt以下のkV100℃を有する完成潤滑剤)においてこれまで使用されていない。
【0033】
比較的高分子量のスクシンイミド分散剤を有する比較的高粘度の添加剤濃縮物が、電気自動車及び/又はハイブリッド電気自動車の摩耗、伝導率、及び酸化性能試験に合格することができる低粘度の完成潤滑剤を形成するのに好適であったとは予想されなかった。しかし、本明細書の選択された比較的高分子量のスクシンイミド分散剤を、特定の元素関係を有する他の潤滑剤添加剤と組み合わせて完成潤滑剤を形成した場合、本明細書の完成潤滑剤は、電気モータ又はハイブリッド電気モータを有する駆動系に対して、低粘度、合格スカッフィング性能、適切な伝導率、及び酸化安定性を達成した。
【0034】
比較的高分子量のポリイソブチレン分散剤は、このような高分子量分散剤がまた、例えば、リン酸エステルのアミン塩、無灰ジアルキルジチオホスフェート、及びチアジアゾール又はその誘導体を含む他の添加剤から、選択された量のリン、窒素、及び/又は硫黄と組み合わせて、最終流体中に特定の量で提供される場合、低い最終流体粘度を有するこのような電気用途又はハイブリッド電気用途のための流体に提供され得ることが、本明細書中で見出された。一手法において、例えば、本明細書に記載の流体は、(i)約2,000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導され、約1重量%の窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理されたスクシンイミド分散剤であって、約60~約120ppmのリン及び約150~約300ppmの窒素を電気モータ潤滑流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(ii)電気モータ潤滑流体に約45~75ppmのリンを提供するリン酸エステルのアミン塩と、(iii)電気モータ潤滑流体に約40~約70ppmのリンを提供する無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤と、(iv)潤滑剤に硫黄を提供するが、電気モータ潤滑流体に約950ppm以下の硫黄を提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、を含み、電気モータ潤滑流体は、電気モータ潤滑流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正伝導率試験によって測定され、約20Hz及び約100℃で測定されて、約4.5cSt以下、約3.5cSt以下、約3.0cSt以下(ASTM D4450)のkV100℃、約150~約250ppmの総リン、及び約60nS/M以下の電気伝導率を有する。更に他の実施形態では、本明細書に記載の潤滑剤はまた、洗浄剤添加剤からのある量のカルシウム(例えば、潤滑剤中の最大約50ppmのカルシウム、又は中性から低塩基性洗浄剤の添加剤濃縮物中の最大約950ppmのカルシウム)を含んでもよい。以下、各成分の添加剤について更に説明する。
【0035】
スクシンイミド分散剤:
本明細書の電気モータ潤滑流体は、約2000以上の数平均分子量を有する比較的高分子量のポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であり、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理もされている、少なくとも1つの油溶性無灰分散剤を有する分散剤系を含有する。そのような比較的高分子量のスクシンイミド分散剤は、適切な処理速度で、約15~約80cSt(ASTM D445)のkV100℃を有する分散剤添加剤濃縮物をもたらす。本明細書のスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させた比較的高分子量のヒドロカルビル置換ジカルボン酸又は無水物から誘導することができる。スクシンイミド分散剤及びそれらの調製は、参照により本明細書に組み込まれる、少なくとも米国特許第7,897,696号及び/又は米国特許第4,234,435号に開示されている。
【0036】
ヒドロカルビル-ジカルボン酸又はその無水物の比較的高分子量のヒドロカルビル部分は、ブテンポリマー、例えば、イソブチレンのポリマーから誘導され得る。本明細書における使用に好適なポリイソブチレンとしては、ポリイソブチレン又は約70%~約90%以上などの少なくとも約60%の末端ビニリデン含有量を有する高反応性ポリイソブチレンから形成されるものが挙げられる。好適なポリイソブチレンとしては、BF触媒を使用して調製されるものが挙げられ得る。
【0037】
本明細書の分散剤は、比較的高い分子量を有し、したがって、本明細書の分散剤のポリイソブチレン置換基の数平均分子量は、較正基準としてポリスチレン(180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるように、少なくとも約2,000から、場合によっては、最大約3,000まで変動し得る。GPC法は、平均重量分子量分布情報を更に提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、W.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0038】
本明細書の分散剤中のポリイソブチレン部分はまた、好ましくは、重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)対数平均分子量(number average molecular weight、Mn)の比により決定した、多分散度インデックスとも称される分子量分布(molecular weight distribution、MWD)を有していてもよい。いくつかの手法又は実施形態において、好適なポリイソブチレン部分は、約3.0未満、又は約2.8未満、又は約2.5未満のMw/Mnを有してもよく、他の手法において、好適なポリイソブチレン置換基は、約1.5~約3.0、又は約2.0~約3.0の多分散性を有する。
【0039】
分散剤を形成するのに適したジカルボン酸又は無水物は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、エチルマレイン酸、無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など、対応する酸ハライド及びC~C脂肪族エステルを含むカルボン酸系反応物から選択することができる。いくつかの手法では、ヒドロカルビルジカルボン酸又は無水物を作製するために使用される反応混合物中のジカルボン酸又は無水物対ヒドロカルビル部分のモル比は、大きく変化し得る。したがって、電荷モル比は、5:1~1:5、例えば3:1~1:3に変化し得る。いくつかの実施形態では、酸又は無水物とヒドロカルビル部分の特に好適モル比は、1:1~1.6:1未満である。他の実施形態では、ジカルボン酸又は無水物とヒドロカルビル部分との別の有用な電荷モル比は、1:1~1.5:1、又は1:1~1.4:1、又は1.1:1~1.3:1、又は1:1~1.2:1であり得る。
【0040】
多数のポリアルキレンポリアミンのいずれかを、本明細書の分散剤添加剤の調製に使用することができる。非限定的な例示的ポリアミンとしては、重炭酸アミノグアニジン(aminoguanidine bicarbonate、AGBC)、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(pentaethylene hexamine、PEHA)及び重質ポリアミンが挙げられ得る。重質ポリアミンは、TEPA及びPEHAなどの少量のポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子当たり7個以上の窒素原子、2個以上の一級アミンを有するオリゴマーを有し、かつ従来のポリアミン混合物よりも広範囲の分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。典型的に、これらの重質ポリアミンは、1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有する。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用され得る更なる非限定的なポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒドロカルビルジカルボン酸又は無水物対ポリアルキレンポリアミンの電荷モル比は、約1:1~約3.0:1であり得る。一実施形態では、本明細書に記載の本開示における分散剤は、ポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)と、ポリアミン、例えば、ポリイソブテニル置換コハク酸無水物とポリアミンとの電荷モル比が約1.7:1~約2.5:1である重質ポリアミンと、の反応生成物であってもよい。
【0041】
上記のように、本発明の高分子量スクシンイミド分散剤は、ホウ素化合物で後処理することができる。本明細書における分散剤を形成するのに有用な好適なホウ素化合物は、ホウ素含有種を無灰分散剤に導入することができるいずれかのホウ素化合物又はホウ素化合物の混合物を含む。かかる反応を受けることができる有機又は無機の任意のホウ素化合物を使用することができる。したがって、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、HBFホウ素酸、例えば、ボロン酸(例えば、アルキル-B(OH)、又はアリール-B(OH))、ホウ酸(すなわち、HBO)、四ホウ酸(すなわち、H)、メタホウ酸(すなわち、HBO)、かかるホウ素酸のアンモニウム塩、及びかかるホウ素酸のエステルを使用することができる。三ハロゲン化ホウ素とエーテル、有機酸、無機酸、又は炭化水素との錯体の使用は、ホウ素反応物質を反応混合物に導入する便利な手段である。かかる錯体は知られており、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素-フェノール、三フッ化ホウ素-リン酸、三塩化ホウ素-クロロ酢酸、三臭化ホウ素-ジオキサン及び三フッ化ホウ素-メチルエチルエーテルにより例示される。
【0042】
本発明の高分子量スクシンイミド分散剤は、リン化合物で後処理することもできる。本明細書における分散剤を形成するための好適なリン化合物としては、リン含有種を無灰分散剤に導入することができるリン化合物又はリン化合物の混合物が挙げられる。このため、かかる反応を受けることができる有機又は無機の任意のリン化合物を使用することができる。したがって、かかる無機リン化合物を、無機リン酸、及びその水和物を含む無機酸化リンとして使用することができる。典型的な有機リン化合物としては、リン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、及びテトラチオリン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステルなどのリン酸の完全エステル及び部分エステル;亜リン酸、チオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、及びトリチオ亜リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル;トリヒドロカルビルホスフィンオキシド;トリヒドロカルビルホスフィンスルフィド;モノ-及びジヒドロカルビルホスホネート、(RPO(OR’)(OR”)(式中、R及びR’は、ヒドロカルビルであり、R”は、水素原子又はヒドロカルビル基である)、及びそれらのモノ-、ジ-、並びにトリチオ類似体;モノ-及びジヒドロカルビルホスホナイト、(RP(OR’)(OR”)(式中、R及びR’は、ヒドロカルビルであり、R”は、水素原子又はヒドロカルビル基である)、及びそれらのモノ-並びにジチオ類似体など、が挙げられる。このため、かかる化合物を、例えば、亜リン酸(HPO、H(HPO)と表されることもあり、オルト-亜リン酸又はリン酸と呼ばれることもある)、リン酸(HPO、オルトリン酸と呼ばれることもある)、次リン酸(H)、メタリン酸(HPO)、ピロリン酸(H)、次亜リン酸(HPO、ホスフィン酸と呼ばれることもある)、ピロ亜リン酸(H、ピロホスホン酸と呼ばれることもある)、亜ホスフィン酸(HPO)、トリポリリン酸(H10)、テトラポリリン酸(H13)、トリメタリン酸(H)、三酸化リン、四酸化リン、五酸化リンなどとして使用することができる。ホスホロテトラチオ酸(HPS)、ホスホロモノチオ酸(HPOS)、ホスホロジチオ酸(HPO)、ホスホロトリチオ酸(HPOS)、セスキ硫化リン、七硫化リン、及び五硫化リン(P、P10と称されることもある)などの部分又は全硫黄類似体もまた、本開示のための分散剤の形成に使用することができる。PCl、PBr、POCl、PSClなどのような無機ハロゲン化リン化合物も使用可能である。
【0043】
同様に、有機リン化合物、例えば、リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル(例えば、トリヒドロカルビルホスフェート、ジヒドロカルビルモノアシッドホスフェート、モノヒドロカルビルジアシッドホスフェート、及びこれらの混合物)、亜リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル(例えば、トリヒドロカルビルホスファイト、ジヒドロカルビル水素ホスファイト、ヒドロカルビル二酸ホスファイト、及びこれらの混合物)、ホスホン酸のエステル(「一級」RP(O)(OR)、及び「二級」RP(O)(OR)の両方)、ホスフィン酸のエステル、ホスホニルハロゲン化物(例えば、RP(O)Cl及びRP(O)Cl)、ハロリン酸塩(例えば、(RO)PCl及び(RO)PCl)、ハロホスファイト(例えば、ROP(O)Cl及び(RO)P(O)Cl)、三級ピロホスフェートエステル(例えば、(RO)P(O)-O-P(O)(OR))、並びに前述の有機リン化合物のうちのいずれかの全硫黄類似体又は部分硫黄類似体などを使用することができ、各ヒドロカルビル基は、最大100個の炭素原子、好ましくは、最大50個の炭素原子、より好ましくは、最大24個の炭素原子、及び最も好ましくは、最大12個の炭素原子を含む。ハロゲン化ハロホスフィン(例えば、四ハロゲン化ヒドロカルビルリン、三ハロゲン化ジヒドロカルビルリン、及び二ハロゲン化トリヒドロカルビルリン)、及びハロホスフィン(モノハロホスフィン及びジハロホスフィン)も使用可能である。
【0044】
一実施形態では、本明細書の流体の比較的高分子量のスクシンイミド分散剤は、少なくとも約2000、他の手法では約2000~約3000、又は更に別の手法では約2000~約2300の数平均分子量を有する少なくともポリイソブテニル部分を含み、約0.5~約1重量%の窒素、約0.05~約0.25重量%のホウ素、及び約0.20~約0.45重量%のリンを有するか、又は更に別の実施形態では、2000~2300の数平均分子量を有する少なくともポリイソブテニル部分を含み、約0.60~約0.90重量%の窒素、約0.10~約0.20重量%のホウ素、及び約0.25~約0.40重量%のリンを有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される比較的高分子量の分散剤は、約40~約70重量%の添加剤濃縮物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される比較的高分子量のスクシンイミド分散剤は、約2000~約2300の数平均分子量を有する少なくともポリイソブテニル部分を含み、約0.6~約0.9重量%の窒素、約0.10~約0.20重量%のホウ素、及び約0.25~約0.40重量%のリンを有し、添加剤濃縮物の約40~約70%を構成し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される比較的高分子量のスクシンイミド分散剤は、約2000~約2300の数平均分子量を有する少なくともポリイソブテニル部分を含み、約3000~約5400ppmの窒素、約600~約1000ppmのホウ素、及び約1400~約2450ppmのリンを添加剤濃縮物に送達する。
【0046】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される比較的高分子量の分散剤は、約2.0~約4.0%の電気モータ潤滑流体を含み、約150~約300ppmの窒素、約70~約140ppmのリン、及び約30~約60ppmのホウ素を送達する。以下の実施例に示されるように、このようなスクシンイミド分散剤が、他の流体成分、特に、選択された量の硫黄、ホウ素、窒素、及び/又はリンと組み合わされる場合、この潤滑剤は、良好な摩耗性能及び伝導率性能、並びに酸化安定性を達成する。
【0047】
リン酸エステルのアミン塩:
本明細書の電気モータ潤滑流体はまた、アミン塩から流体に約40~約70ppmのリンを提供する量の第1のリン提供添加剤を含む。手法又は実施形態では、第1のリン提供添加剤は、リン酸エステルのアミン塩の形態である。いくつかの手法では、リン酸エステルのアミン塩としては、1種以上のモノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、及び/又はこれらの混合物を挙げることができ、これらのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状であり得る。本明細書の流体はまた、リンを提供する他の化合物を含んでもよいが、いくつかの実施形態では、本明細書のリン酸エステルのアミン塩は、電気モータ潤滑流体中の総リンの約20~約40重量%を提供する。
【0048】
手法又は実施形態では、リン酸エステルの例示的なアミン塩は、式Iで表され得、
【0049】
【化10】
式IのR及びRは、独立して、水素、又は直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状ヒドロカルビル基であり得、式Iのmは、0~1の整数であり、式Iのpは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、式IのR、R、R及びRは、独立して、水素又はヒドロカルビル基であり得、式IのR~Rのうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である。式IのR及び/又はRに好適なアルキル又はヒドロカルビル基の例としては、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及び/又はデシル基などであるが、これらに限定されない直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。更に別の例示的な手法では、式IのR及びRは、環状ヒドロカルビル基であり得、例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルエチルシクロペンチル、ジエチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、メチルエチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、ジメチルシクロヘプチル、メチルエチル-シクロヘプチル、及び/又はジエチルシクロヘプチルが挙げられる。いくつかの手法又は実施形態では、リン酸エステルの好適なアミン塩は、モノアルキル及びジアルキルリン酸エステルの混合物である。モノアルキル及びジアルキル基は、上記のような、直鎖状、分岐鎖状、又は環状であり得る。
【0050】
リン酸エステルのアミン塩は、一級、二級、若しくは三級アミン、又はそれらの混合物から誘導され得る。塩に好適な例示的なアミンは、脂肪族、環状、芳香族、又は非芳香族であり得るが、一般的には脂肪族アミンである。好適な一級アミンの例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン、オクチルアミン、及びドデシルアミン、並びにn-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、又はオレイアミンなどの脂肪アミンが挙げられる。好適な二級アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、N-メチル-1-アミノ-シクロヘキサン、及び/又はエチルアミルアミンが挙げられる。二級アミンはまた、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンなどの環状アミンであり得る。好適な三級アミンの例としては、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-デシルアミン、トリ-ラウリルアミン、トリ-ヘキサデシルアミン、及び/又はジメチル-オレイルアミンを挙げることができる。
【0051】
いくつかの手法では、上記の式Iのアミンは、C10~C20アルキル基であるR、R、R又はR基のうちの少なくとも1つを有し得、他の手法又は実施形態では、式IのR、R、R又はR基のうちの少なくとも2つは、独立して、C10~C20アルキル基である。いくつかの実施形態では、式IのR、R、R又はR基のうちの少なくとも2つは、独立して、C12~C14アルキル基である。
【0052】
リン酸エステルのアミン塩は、好適なリン化合物をアミンと反応させて、リン酸エステルのアミン塩を形成することによって調製され得る。一実施形態では、リン酸エステルのアミン塩は、式Iのものであってもよく、式中、R及びRは、独立して、C又は水素であってもよく、mが、0~1の整数であり、pは、1~2の整数であり、m+pは、2に等しく、R、R、R及びRは、独立して、水素又はC12~C14のヒドロカルビル基であり得、R~Rのうちの少なくとも1つは、C12~C14のヒドロカルビル基である。
【0053】
いくつかの実施形態では、リン酸エステルのアミン塩は、添加剤濃縮物中に、2重量%~約3重量%又は約2.2重量%~約2.5重量%の量で存在していてもよい。リン酸エステルのアミン塩は、約1000~約1500ppmのリン又は約1000~約1250ppmのリンを添加剤濃縮物に送達することができる。
【0054】
手法では、リン酸エステルのアミン塩は、本明細書の電気モータ潤滑流体中に、潤滑組成物の少なくとも約0.1重量%~約0.3重量%、又は約0.1~約0.25重量%の量で存在し得る。リン酸エステルのアミン塩は、約50~約150ppmのリン又は約50~約125ppmのリンを潤滑組成物に送達することができる。
【0055】
無灰ジアルキルジチオホスフェート:
手法又は実施形態では、本明細書の電気モータ潤滑流体はまた、酸性チオホスフェート又はチオホスフェートエステルの形態の第2のリン提供添加剤を含んでもよい。一手法又は実施形態では、この第2のリン提供添加剤は、無灰でアミン非含有のジアルキルジチオリン酸エステル又は硫黄含有リン酸エステルであり得る。
【0056】
第2のリン化合物の酸性チオホスフェート、チオホスフェートエステル、又は硫黄含有リン酸エステルは、1つ以上の硫黄-リン結合を有し得る。一実施形態では、硫黄含有リン酸エステルは、酸性チオホスフェート、チオホスフェートエステル、チオリン酸、又はそれらの塩であり得る。チオリン酸エステルは、ジチオリン酸エステルであり得る。いくつかのより具体的なアプローチでは、酸性チオホスフェート又はチオホスフェートエステルは、式IIの構造又はその塩を有し得、
【0057】
【化11】
式中、式IIのR及びRは、各々独立して、直鎖又は分岐C~C10ヒドロカルビル基であり、式IIのRは、C~C10直鎖若しくは分岐カルボキシル基、又はC~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルアルカノエート基である。好ましくは、式IIのR及びRは、各々C~C直鎖又は分岐アルキル基であり、式IIのRは、2-メチルプロパン酸(2-methyl proponoic acid)から誘導されており、その結果リン生成物(又はその塩)は、以下の式IIの構造を有し、
【0058】
【化12】
式中、上記式IIのR及びRは、独立して、C~C直鎖又は分岐アルキル基(好ましくは、分岐C基)であり、上記式IIのRは、-H又は-CHである。いくつかのアプローチ又は実施形態では、第2のリン生成物は、好ましくは、3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロパン酸である。
【0059】
いくつかの手法では、無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤は、(a)有機ヒドロキシ化合物を五硫化リン(いくつかの形態では、モノマー又はその二量体)と反応させて反応生成物を形成する工程と、反応生成物を不飽和カルボン酸と更に反応させて、無灰ジアルキルジチオホスフェートを含む油溶性リン耐摩耗添加剤を形成する工程と、を含むプロセスによって作製される。
【0060】
好適な有機ヒドロキシ化合物としては、ノルマル直鎖アルコール、分岐鎖アルコール、フェノール及びナフトールなどのヒドロキシアリール化合物、ジアミルフェノールなどの置換アリールヒドロキシ化合物、又はヒドロキシ基が五硫化リンと反応する任意の他のヒドロキシ有機物質が挙げられ得る。1つの手法では、出発アルコールは、飽和アルコール又は飽和アルキル基によって置換されたアリールヒドロキシ化合物などの置換アリールヒドロキシ化合物である。いくつか手法では、有機ヒドロキシ化合物は、1つ又は複数のメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、フェノール、ナフトール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、イソ-ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、オクタデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、4-メチル-2-ペンチルアルコール、フェニルアルコール、ブチルフェニルアルコール、シクロヘキシルアルコール、メチルシクロペンチルアルコール、プロペニルアルコール、ブテニルアルコール、又はそれらの組合せなどの、C~C10(他の手法では、C~C)直鎖又は分岐アルコール、ヒドロキシアリール化合物、又はこれらの混合物であってもよい。本明細書の好ましい有機ヒドロキシ化合物としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、又はイソプロピルアルコールなどのC~Cアルコールが挙げられ、最も好ましくは、有機ヒドロキシ化合物はイソブチルアルコールである。
【0061】
本開示の油溶性リン耐摩耗添加剤を形成するのに好適な不飽和カルボン酸としては、多種多様な不飽和カルボン酸又は脂肪酸を挙げることができる。好ましい不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、又はこれらの組合せなどのC~C20不飽和脂肪酸を挙げることができ、最も好ましくはメタクリル酸である。(本明細書で使用される場合、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかを指す。)
【0062】
いくつかの実施形態では、第2のリン提供添加剤は、800ppm~1300ppmのリン及び2800ppm未満の硫黄を添加剤濃縮物に提供する量で添加剤濃縮物中に存在する酸性チオホスフェート又はチオホスフェートエステルである。別の実施形態では、第2のリン提供添加剤は、900ppm~1200ppmのリン及び2500ppm未満の硫黄を添加剤濃縮物に提供する量で添加剤濃縮物中に存在する酸性チオホスフェート又はチオホスフェートエステルである。一手法では、添加剤濃縮物は、約80重量%~約1.75重量%の無灰ジアルキルジチオホスフェート化合物を含み、他の手法では、約0.9重量%~約1.40重量%、約1.0重量%~約1.3重量%を含む。
【0063】
手法又は実施形態では、本明細書の電気モータ潤滑流体はまた、無灰ジアルキルジチオホスフェート化合物の形態の第2のリン提供添加剤を、約40~約70ppmのリン及び160ppm未満の硫黄を流体に提供する量で含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書の電気モータ潤滑流体は、無灰ジアルキルジチオホスフェート化合物の形態の第2のリン提供添加剤を、約50~約65ppmの総リン及び140ppm未満の硫黄を流体に提供する量で含み得る。一手法又は実施形態では、本明細書の電気モータ潤滑流体は、約0.03重量%~約0.1重量%の無灰ジアルキルジチオホスフェート化合物を含み、他の手法では、約0.04重量%~約0.08重量%を含む。
【0064】
硫黄提供添加剤:
電気モータ潤滑流体は、硫黄提供添加剤を含む。本明細書の手法又は実施形態において、硫黄提供添加剤は、本明細書の潤滑流体に硫黄を提供するが、約950ppm以下の硫黄を提供する量の1つ以上のチアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体であってもよい。他の手法では、硫黄提供化合物は、チアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体の混合物であってよい。使用され得るチアジアゾール化合物の例としては、これらに限定されないが、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(ヒドロカルビルチオ)-1,3,4-チアジアゾール、又は2,5-ビス(ヒドロカルビルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。1,3,4-チアジアゾールは、一般的にヒドラジンと二硫化炭素から既知の方法により合成される。例えば、米国特許第2,765,289号、米国特許第2,749,311号、米国特許第2,760,933号、米国特許第2,850,453号、米国特許第2,910,439号、米国特許第3,663,561号、米国特許第3,862,798号、及び米国特許第3,840,549号を参照されたい。
【0065】
手法では、チアジアゾール又はその誘導体は、式IIIの構造を有する1種以上の化合物を含み、
【0066】
【化13】
式中、式IIIの各Rは、独立して、水素又は硫黄であり、式IIIの各Rは、独立して、アルキル基であり、nは、0又は1の整数であり、Rが、水素である場合、隣接のR部分の整数nは、0であり、Rが、硫黄である場合、隣接のR部分のnは、1であり、ただし、少なくとも1つのRが硫黄であることを条件とする。他の手法では、チアジアゾール添加剤は、以下に示される式IIIa及び式IIIbの化合物のブレンドであり、
【0067】
【化14】
式IIIa中、各整数nは、1であり、各Rは、硫黄であり、各Rは、C5~C15アルキル基、好ましくはC~C12アルキル基であり、
【0068】
【化15】
式IIIb中、一方の整数nは、1であり、関連するR基は、C~C15アルキル基(好ましくは、C~C12アルキル基)であり、他方の整数nは、0であり、両方のRは、硫黄である。いくつかの実施形態では、硫黄提供添加剤は、式IIIa及びIIIbのブレンドを含み、式Ivaがブレンドの大部分であり、他の手法では、IIIa及びIIIbのブレンドは、約75~約90重量%のIIIa及び約10~約25重量%のIIIb(又はその中の他の範囲)である。別の手法では、硫黄提供添加剤は、2,5-ビス-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約75~約90%など)と、2,5-モノ-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約10~約25%など)とのブレンドを含む、2,5ジメルカプト1,3,4チアジアゾールである。
【0069】
チアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体は、本明細書の電気モータ潤滑流体中に、約950ppm以下の硫黄、約925ppm以下の硫黄、又は約900ppm以下の硫黄、他の実施形態では、少なくとも約700ppmの硫黄、又は少なくとも約800ppmの硫黄(又はその中の他の範囲)を送達する量で存在する。一実施形態では、チアジアゾール化合物は、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールであり、このチアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体は、潤滑及び冷却流体中に、約700~約950ppmの硫黄、又は約750~約900ppmの硫黄(又はその中の他の範囲)を送達する量で存在する。
【0070】
基油:
本明細書の電気モータ潤滑流体は、潤滑粘度を有する1つ以上の基油を含む。本開示による電気自動車及び/又はハイブリッド自動車で使用するための電気モータ潤滑流体を配合する際に使用するのに好適な基油は、好適な潤滑粘度を有する好適な合成若しくは天然油又はそれらの混合物のいずれかから選択され得る。天然油は、動物油、及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、並びに液体石油及びパラフィン系、ナフテン系、又は混合パラフィン-ナフテン型の溶媒処理若しくは酸処理した鉱物潤滑油などの鉱物油を含んでいてもよい。石炭又はシェールに由来する油もまた好適であり得る。更に、ガス液化プロセスから導かれる油もまた好適である。基油は、ASTM D2270-10によって測定される際、100℃において約2~約15cStの動粘度を有し得る。
【0071】
本明細書に記載される本発明で使用される基油は、単一の基油であり得るか、又は2つ以上の基油の混合物であり得る。1つ以上の基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesにおいて指定されているグループIII又はIV中の基油のいずれかから選択され得る。かかる基油グループを、以下のように表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
一変形形態では、基油は、APIグループIII基油、若しくはAPIグループIV基油、又はこれらの基油の混合物から選択され得る。代替的に、基油は、APIグループIII基油のうちの2つ以上、又はAPIグループIV基油のうちの2つ以上の混合物であり得る。
【0074】
APIグループIII基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から誘導される油を含み得る。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H及びCOを含有する合成ガスから作製される。かかる炭化水素は、典型的には、基油として有用であるために更なる処理を必要とする。これらのタイプの油は、一般にガス液化油(GTL)と呼ばれる。例えば、炭化水素は、米国特許第6,103,099号若しくは同第6,180,575号に開示されるプロセスを使用して水素異性化されるか、米国特許第4,943,672号若しくは同第6,096,940号に開示されるプロセスを使用して、水素化分解若しくは水素異性化されるか、米国特許第5,882,505号に開示される方法を使用して脱ロウされるか、又は米国特許第6,013,171号、同第6,080,301号、若しくは同第6,165,949号に開示されるプロセスを使用して、水素異性化及び脱ロウされてもよい。
【0075】
APIグループIV基油である、PAOは、典型的には、4~30個、又は4~20個、又は6~16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。本発明で使用され得るPAOの例としては、オクテン、デセン、それらの混合物などに由来するものが挙げられる。PAOは、ASTM D2270-10によって測定される際、100℃において、2~15、又は3~12、又は4~8cStの動粘度を有し得る。PAOの例としては、100℃で4cStのPAO、100℃で6cStのPAO、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
基油は、本明細書の実施形態において開示されるような添加剤組成物と組み合わされて、電気モータ、歯車、及びクラッチを有する電気モータシステム内で使用するための潤滑及び冷却流体を提供する。したがって、基油は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、約80重量%超の量で、潤滑及び冷却流体中に存在し得る。いくつかの実施形態では、基油は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、約85重量%超の量で潤滑及び冷却流体中に存在し得る。
【0077】
他の添加剤
本明細書に記載される電気モータ潤滑流体は、上記に記載される成分に加えて、トランスミッション液組成物中で使用されるタイプの従来の添加剤も含み得る。かかる添加剤としては、酸化防止剤、粘度調整剤、リン含有成分、清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、並びに追加の分散剤、追加の摩擦調整剤、及び追加の硫黄含有成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
酸化防止剤:いくつかの実施形態では、電気モータ潤滑流体は、1つ以上の酸化防止剤を含有する。好適な酸化防止剤としては、とりわけ、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、含硫黄酸化防止剤、及び有機ホスファイトが挙げられる。
【0079】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、三ブチル化フェノールの液体混合物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ter-t-ブチルフェノール)、及び混合メチレン架橋ポリアルキルフェノール、及び4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N,N’-ジ-sec-ブチル-フェニレンジアミン、4-イイソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、及び環アルキル化ジフェニルアミンが挙げられる。例としては、立体障害性三級ブチル化フェノール、ビスフェノール、及びケイ皮酸誘導体、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0080】
芳香族アミン酸化防止剤としては、以下の式:
【0081】
【化16】
(式中、R’及びR’’は、各々独立して、6~30個の炭素原子を有する置換又は無置換アリール基を表す)を有するジアリールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基の置換基の例示としては、1~30個の炭素原子を有するアルキルなどの脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸若しくはエステル基、又はニトロ基が挙げられる。
【0082】
アリール基は、好ましくは置換又は非置換フェニル又はナフチルであり、特に、アリール基の一方又は両方が、4~30個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子、最も好ましくは4~9個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルで置換されている。一方又は両方のアリール基が置換されていることが好ましく、例えば、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジ-アルキル化ジフェニルアミン、又はモノ-及びジ-アルキル化ジフェニルアミンの混合物である。
【0083】
使用され得るジアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン;様々なアルキル化ジフェニルアミン、3-ヒドロキシジフェニルアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、モノブチルジフェニル-アミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、モノオクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-ベータ-ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチル-ジフェニルアミン、p-配向スチレン化ジフェニルアミン、混合ブチルオクチルジ-フェニルアミン、及び混合オクチルスチリルジフェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
硫黄含有酸化防止剤としては、それらの生産に使用されるオレフィンの種類及び酸化防止剤の最終硫黄含有量によって特徴付けられる硫化オレフィン類が挙げられるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち、168~351g/モルの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用され得るオレフィンの例としては、アルファ-オレフィン、異性化アルファ-オレフィン、分岐鎖オレフィン、環状オレフィン、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0085】
アルファ-オレフィンとしては、任意のC~C25アルファ-オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。アルファ-オレフィンは、硫化反応前又は硫化反応中に異性化され得る。内部二重結合及び/又は分枝を含有するアルファオレフィンの構造異性体及び/又は配座異性体も使用され得る。例えば、イソブチレンは、アルファ-オレフィン1-ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0086】
オレフィンの硫化反応において使用され得る硫黄源としては、元素状硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、及び硫化プロセスの異なる段階で共に添加されるこれらの混合物が挙げられる。
【0087】
不飽和油はまた、それらの不飽和のために、硫化され、酸化防止剤としても使用され得る。使用され得る油又は脂肪の例としては、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、ブドウ種子油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ヤシ油、ナタネ油、ベニバナ種子油、ゴマ種子油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、獣脂、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0088】
本明細書の潤滑及び冷却流体中の酸化防止剤の総量は、最大約200ppmの窒素、又は最大約150ppmの窒素、又は約100~約150ppmの窒素を送達する量で存在し得る。
【0089】
摩擦調整剤:いくつかの実施形態では、電気モータ潤滑流体は、上記に記載される摩擦調整剤系内に含有されるもの以外の追加の摩擦調整剤を含有する。好適な追加の摩擦調整剤は、金属含有及び金属フリー摩擦調整剤を含むことができ、好適な摩擦調整剤としては、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に存在する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールのエステル又は部分エステル、並びに1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0090】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はこれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有することができ、かかるヒドロカルビル基は飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、12~25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0091】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれ得る。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0092】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含み得る。かかる化合物は、飽和又は不飽和のいずれかの直鎖、又はこれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、12~25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖状で、飽和、不飽和のいずれかのヒドロカルビル基、又はそれらの混合物を有し得る。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0093】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0094】
追加の摩擦調整剤が窒素を含有する場合、そのような追加の摩擦調整剤は、性能要件が損なわれない限り、任意の量で潤滑及び冷却流体中に存在してもよい。
【0095】
洗浄剤:本明細書に記載されている電気モータ潤滑流体に含まれ得る金属洗浄剤は、一般に、極性頭部と長い疎水性尾部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩からなる。塩は、実質的に化学量論量の金属を含有し得、その場合、それらは通常、通常又は中性の塩として説明され、典型的には、0~150未満の全塩基価又はTBN(total base number)(ASTM D2896によって測定される)を有する。大量の金属塩基は、酸化物又は水酸化物などの過剰の金属化合物を二酸化炭素などの酸性ガスと反応させることによって、含まれ得る。得られる過塩基性洗浄剤は、無機金属塩基(例えば、水和炭酸塩)のコアを取り囲む中和された洗浄剤のミセルを含む。かかる過塩基性洗浄剤は、約150以上、例えば、約150~約450以上のTBNを有していてもよい。
【0096】
本実施形態における使用に好適であり得る洗浄剤には、油溶性過塩基性、低塩基性及び中性のスルホネート、フェネート、硫化フェネート、及び金属、特に、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムのサリチレートが挙げられる。1つより多い金属、例えばカルシウムとマグネシウムの両方が存在してもよい。カルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムとの混合物もまた好適であり得る。好適な金属洗浄剤は、150~450TBNのTBNを有する過塩基性カルシウム又はマグネシウムスルホネート、150~300TBNのTBNを有する過塩基性カルシウム又はマグネシウムフェネート又は硫化フェネート、及び130~350のTBNを有する過塩基性カルシウム又はマグネシウムサリチレートであり得る。かかる塩の混合物もまた使用され得る。
【0097】
金属含有洗浄剤は、流体の防錆性能を改善するのに十分な量で潤滑及び冷却流体中に存在し得る。金属含有洗浄剤は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大90ppmのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で流体中に存在し得る。一例では、金属含有洗浄剤は、約20~約50ppmのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で存在し得る。別の実施形態では、金属含有洗浄剤は、約30~約40ppmのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0098】
一手法では、好ましい洗浄剤は、中性から低塩基性のスルホネートであってもよく、いくつかの手法では、カルシウムスルホネートであってもよい。好適な洗浄剤は、50以下(例えば、約25~約30)のTBNを有し、潤滑剤に約50ppm以下のカルシウムを提供するカルシウムスルホネートであってもよい。他の手法では、洗浄剤は、完成した電気モータ潤滑流体又は組成物に約25~約40ppmのカルシウム、約30~約40ppmのカルシウム、又は約30~約38ppmのカルシウムを提供することができる。添加剤濃縮物に関して、洗浄剤は、添加剤濃縮物に対して約950ppm超のカルシウム、又は添加剤濃縮物に対して約500~約950ppmのカルシウム、約550~約900ppmのカルシウム、約600~約800ppmのカルシウム、若しくは約600~約700ppmのカルシウムを提供し得る。
【0099】
腐食抑制剤:防錆剤又は腐食防止剤もまた、本明細書に記載される電気モータ潤滑流体内に含まれ得る。かかる材料としては、モノカルボン酸及びポリカルボン酸が挙げられる。好適なモノカルボン酸の例は、オクタン酸、デカン酸及びドデカン酸である。好適なポリカルボン酸としては、トール油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸のような酸から生成されるダイマー及びトリマー酸が挙げられる。
【0100】
別の有用なタイプの防錆剤は、例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸無水物などのアルケニルコハク酸及びアルケニルコハク酸無水物腐食抑制剤であり得る。アルケニル基中に8~24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸とポリグリコールなどのアルコールとの半エステルも有用である。他の好適な防錆剤又は腐食防止剤としては、エーテルアミン、酸性リン酸、アミン、エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、エトキシル化アルコールなどのポリエトキシル化化合物、イミダゾリン、アミノコハク酸又はその誘導体などが挙げられる。かかる防錆剤又は腐食抑制剤の混合物が使用され得る。本明細書に記載される潤滑組成物中に存在する場合の腐食防止剤の総量は、潤滑組成物の総重量に基づいて、最大2.0重量%、又は0.01~1.0重量%の範囲であり得る。
【0101】
粘度調整剤:電気モータ潤滑流体は、任意選択的に、1つ以上の粘度調整剤を含有し得る。好適な粘度調整剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はこれらの混合物が挙げられ得る。粘度調整剤はスターポリマーを含んでいてもよく、好適な例は、米国特許出願公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0102】
本明細書に記載の電気モータ潤滑流体はまた、任意で、粘度調整剤に加えて、又は粘度調整剤の代わりに、1種以上の分散剤粘度調整剤を含んでいてもよい。好適な分散剤粘度調整剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0103】
粘度調整剤及び/又は分散剤粘度調整剤の総量は、存在する場合、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大約1.0重量%、又は最大約0.5重量%、又は最大約0.3重量%であり得る。
【0104】
解乳化剤:解乳化剤としては、トリアルキルホスフェート、並びにポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む、エチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの様々なポリマー及びコポリマー、又はこれらの混合物が挙げられる。存在する場合、潤滑及び冷却流体中の解乳化剤の量は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大約0.05重量、又は最大約0.02重量%、又は約0.015重量%未満であり得る。
【0105】
消泡剤:安定した泡の形成を低減又は防止するために使用される消泡剤としては、シリコーン、ポリアクリレート、又は有機ポリマーが挙げられる。開示される発明の組成物において有用であり得る消泡剤としては、ポリシロキサン、エチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとのコポリマー、及び任意選択的に、酢酸ビニルが挙げられる。存在する場合、潤滑及び冷却流体中の消泡剤の量は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大約0.1重量、又は最大約0.05重量%、又は約0.04重量%未満であり得る。
【0106】
流動点降下剤:電気モータ潤滑流体は、任意選択的に、1つ以上の流動点降下剤を含有し得る。好適な流動点降下剤としては、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート若しくはポリアクリルアミド、又はこれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤が存在する場合、潤滑剤の総重量に基づいて、約0.001重量%~約0.04重量%の量で存在し得る。
【0107】
概して、本明細書に記載される潤滑及び冷却流体は、表2に列挙される範囲内の添加剤成分を含み得る。
【0108】
【表2】
【0109】
上記の各成分のパーセンテージは、列挙された成分を含有する潤滑及び冷却流体の総重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組合せで基油にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態である場合には成分の組合せによってもたらされる相互相溶性を利用する。また、濃縮物の使用は、混合時間を短縮し、混合エラーの可能性を低減する。
【0110】
上記のように、比較的高分子量のスクシンイミド分散剤、リン酸エステルのアミン塩、無灰ジアルキルジチオホスフェート、及びチアジアゾール又はその誘導体を含む添加剤濃縮物は、約4.5cSt以下、約3.5cSt以下、又は約3.0cSt以下のkV100℃での粘度を有する車両潤滑剤において一般的に使用されるものよりもはるかに高い粘度を有していた。いくつかの手法において、そのような成分の本明細書の添加剤濃縮物は、約15~約80cStのkV100℃を有するが、言及された元素関係を有する完成流体において使用される場合、本明細書の電気モータ潤滑流体は、改善された摩耗、伝導率、及び酸化安定性と共に、約4.5cSt以下、約3.5cSt以下、又は約3.0cSt以下の完成kV100℃をなお有する。いくつかの実施形態では、添加剤濃縮物のkV100℃と完成流体のkV100℃との比は、約5:1~約30:1である。本明細書の電気モータ潤滑流体の任意の実施形態は、流体がCEC L-48-Aに従って170℃~180℃で少なくとも192時間エージングされた後、約0.10cSt以下(例えば、0.01~0.1cSt又は0.04~0.08cSt)の変化などの、エージング後のわずかな粘度変化のみを示す。本明細書の電気モータ潤滑流体はまた、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/90スカッフィング試験において少なくとも8の破壊荷重段階を達成する。最後に、本明細書の電気モータ潤滑流体はまた、電気モータ潤滑流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正伝導率試験によって測定され、フルコンイプシロン試験機又は同等物を使用して20Hz及び約100℃で測定されて、約60nS/M以下(例えば、約20~約60nS/M)の電気伝導率を有する。低い伝導率及び高い酸化安定性を有するこのような低粘度流体が、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/90スカッフィング試験において上記の許容可能な性能を達成することができることは驚くべきことであった。
【実施例0111】
本開示及びその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例解的なものであり、範囲又は趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、及びデバイスの変形形態を使用することができることを容易に理解するであろう。特に明記しない限り、又は以下の実施例及び本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載する全ての百分率、比、及び部は、重量基準である。
【0112】
高分子量分散剤が低粘度流体中でどのように使用されて、合格摩耗及び伝導率を達成することができるかを実証するために、本明細書のシステムは、窒素、ホウ素、硫黄、及び/又はリンの様々な元素関係を有する流体を比較して、約4.5cSt以下、約3.5cSt以下、約3.0cSt以下、又は約2.9cSt以下のkV100℃を有する極低粘度流体中の流体の摩耗、酸化安定性、及び伝導率を評価した。配合物を、FZGスカッフィング、酸化粘度安定性、及び電気伝導率について評価した。
【0113】
FZGスカッフィングは、潤滑剤のスカッフィング負荷容量を評価するために使用され、CEC L-84-02のA10/16.6R/90試験に従って実施された。結果は、破壊荷重段階で報告され、より高い破壊荷重段階を有する試料についてより良好な結果が得られる。
【0114】
酸化粘度安定性を使用して、初期粘度とCEC L-48-A-00に従って、170℃~180℃の操作条件で192時間、流体をエージングした後の最終粘度との間の差を評価し、エージングは、この実施例の流体について170℃で行った。より低い値は、改善された性能を示唆する。したがって、高い酸化安定性を有する流体は、エージングの前後に測定されるわずかな粘度変化しか示さない。
【0115】
電気モータ流体が低い伝導率を呈することは有益である。流体の伝導率は、フルコンイプシロン+を使用して1.5V、20Hz、及び100℃で、ASTM D2624-15の修正版(燃料ではなく、潤滑剤の試験)に従って測定した。
【0116】
以下の表3において試験された本発明の配合物及び比較配合物は全て、表3に示されるように、様々な量の硫化成分、リン添加剤、洗浄剤、及び分散剤を含有した。各流体は更に同じ酸化防止剤、消泡剤及びプロセス油を含んでいた。酸化防止剤及び消泡剤を、同一の処理速度で各流体に添加した。本発明の配合物及び比較配合物を同じ基油中で試験して、以下の表に示す100℃での動粘度を有する完成流体を得た。本発明の配合物は、比較配合物と同様の添加剤を含有するが、驚くほど改善された摩耗、酸化安定性、及び潤滑剤の伝導率を達成するために、硫黄、リン、及び分散剤の送達を異なるようにバランスさせた。これらの構成要素の詳細を以下に説明する:
・硫黄成分(S-1):およそ35重量%の硫黄を含有する2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び/又はその誘導体であって、2,5-ビス-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールと2,5-モノ-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールとの75:25~85:15混合物であった。
・分散剤(Disp-1):950Mnのポリイソブチレン、無水マレイン酸、1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有するポリアルキレンポリアミンの混合物、リン酸、及びホウ酸から作製された、リン酸化及びホウ酸化されたスクシンイミド分散剤。この分散剤は、約0.76重量%のリン、約0.35重量%のホウ素、及び約1.75%の窒素を含んでいた。
・分散剤2(Disp-2):2100Mnのポリイソブチレン、無水マレイン酸、1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有するポリアルキレンポリアミンの混合物、リン酸、及びホウ酸から作製された、リン酸化及びホウ酸化されたスクシンイミド分散剤。分散剤は、およそ0.77重量%の窒素、約0.15重量%のホウ素、及び約0.35重量%のリンを有していた。
・リン添加剤1(P-1):リン酸ジヘキシル及びリン酸モノヘキシルと、C12~C14のアルキル基を有するジ及び/又はトリアルキル化アミンとの混合物を含むリン酸エステルのアミン塩。このリン供給源は、約2.5重量%の窒素及び約4.9重量%のリンを含んでいた。
・リン添加剤2(P-2):少なくとも3-[[ビス(2-メチルプロポキシ)ホスフィノチオイル]チオ]-2-メチル-プロパン酸を含む無灰ジアルキルジチオホスフェート
・洗浄剤添加剤1(Det-1):約25~約30のTBN及び約2.6重量%のカルシウムを有する中性スルホン酸カルシウム。
【0117】
本明細書で試験した全ての流体は、グループIII及びグループIV基油の同じブレンドを含んでいた。以下の表に示されるように、全ての本発明の実施例は、少なすぎる又は多すぎるリンを送達し、比較的低分子量の分散剤添加剤を含んだ比較例と比較して、改善された摩耗性能、伝導率性能、及び酸化安定性を示した。全ての流体は、約4.5cSt以下のkV100℃(ASTM D445)を有する低粘度流体とみなされた。
【0118】
【表3】
-kV100℃をASTM D445に準拠して測定した。
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
**CEC L-84-022(A10/16.6R/90)
***初期粘度とCEC L-48-Aに準拠したエージング後の最終粘度との間の差
****フルコンイプシロン又は同等のテスターで実施されたASTM D2624-15(20Hz、100℃)
【0121】
本開示の潤滑組成物は、その詳細な説明及び本明細書における要約と共に記載されているが、前述の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本開示の範囲を説明することが意図され、これを限定するものではないと理解するべきである。他の態様、利点、及び修正は、特許請求の範囲内にある。本明細書及び実施例は、例示のみとして考えられ、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0122】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮及び本明細書に開示される実施形態の実施から当業者に明らかとなるであろう。明細書及び特許請求の範囲を通して使用される場合、「a」及び/又は「an」は、1つ又は1つより多くを指し得る。他に指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、分子量、パーセント、比、反応条件などのような特性を表す全ての数字は、「約」という用語が存在するか否かにかかわらず、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差を本質的に含有する。
【0123】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ又は複数との組合せでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0124】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。このため、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値の、並びに1~4、1~3、1~2、2~4、2~3などのような値のいずれかの範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0125】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。
【0126】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【外国語明細書】