(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005418
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電気モーターシステム用の潤滑流体
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20250108BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20250108BHJP
C10M 139/00 20060101ALN20250108BHJP
C10M 135/36 20060101ALN20250108BHJP
C10M 133/56 20060101ALN20250108BHJP
C10M 133/06 20060101ALN20250108BHJP
C10M 133/46 20060101ALN20250108BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20250108BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20250108BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20250108BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20250108BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20250108BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20250108BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20250108BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/16
C10M139/00 A
C10M135/36
C10M133/56
C10M133/06
C10M133/46
C10N10:04
C10N20:02
C10N30:06
C10N30:10
C10N30:12
C10N30:00 Z
C10N40:04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100665
(22)【出願日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】18/342,202
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】アイアー、ラムナス
(72)【発明者】
【氏名】タレン、リサ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BE02C
4H104BE11C
4H104BE30C
4H104BF03C
4H104BG19C
4H104BJ05C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EA02Z
4H104EA13Z
4H104FA02
4H104LA03
4H104LA05
4H104LA08
4H104LA20
4H104PA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】許容可能な摩擦性能、良好な電気伝導度及び酸化安定性を有する電気駆動系流体、並びに電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑するための方法を提供する。
【解決手段】電気駆動系流体であって、潤滑粘度の1つ以上の基油と、約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤と、チアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤と、1種類以上のカルシウム含有洗浄剤を提供する洗浄剤系と、約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤と、を含み、前記電気駆動系流体が、約3.2cSt以上のkV100粘度と、約150~約270ppmの総リンと、前記電気駆動系流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正導電率試験によって測定され、20Hz及び170℃で測定される約130nS/M以下の電気伝導度と、を有する電気駆動系流体が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動系流体であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、
約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、前記スクシンイミド分散剤は最大約1重量パーセントの窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約150~約270ppmの分散剤リン(P)を前記電気駆動系流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、
チアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤であって、前記チアジアゾール又はその誘導体が、少なくとも約1000ppmのチアジアゾール硫黄(S)を前記電気駆動系流体に提供する、硫黄提供添加剤と、
前記分散剤リン及び前記チアジアゾール硫黄の組み合わせ(P+S)が、少なくとも約1300ppmであり、前記分散剤リンの前記チアジアゾール硫黄に対する重量比(P/S)が、少なくとも約0.1であり、
1種類以上のカルシウム含有洗浄剤を提供する洗浄剤系であって、前記1種類以上のカルシウム含有洗浄剤が約200ppm以下のカルシウムを提供する、洗浄剤系と、
約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤と、
を含み、
前記電気駆動系流体が、約3.2cSt以上のkV100粘度と、約150~約270ppmの総リンと、前記電気駆動系流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正導電率試験によって測定され、20Hz及び170℃で測定される約130nS/M以下の電気伝導度と、を有する電気駆動系流体。
【請求項2】
前記摩擦調整剤が、アルキルイミド、アルキルアミン、ヒドロカルビルイミダゾール、それらの誘導体、若しくはそれらの組み合わせであり、及び/又は前記摩擦調整剤が、0~約0.08重量パーセントのエトキシ化アルキルアミンであり、及び/又は前記有機摩擦調整剤が、アミン、ポリアミン、若しくはアンモニアと反応させた0~約0.4重量パーセントの直鎖若しくは分岐C16~C18置換コハク酸若しくは無水物である、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項3】
前記ポリイソブチレンの数平均分子量が約2000~約2400であり、及び/又は前記電気モーター潤滑流体が約2~約8重量パーセントの前記スクシンイミド分散剤を含む、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項4】
前記電気駆動系流体が、CEC L-48-Aに従って前記電気駆動系流体をエイジングさせた後に0.5cSt未満の粘度変化を有する、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項5】
前記電気駆動系流体が、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/120スカッフィング試験において少なくとも約8の不合格負荷ステージを達成する、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項6】
前記チアジアゾール又はその誘導体が、約1500ppm以下の硫黄を提供する、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項7】
前記分散剤リン及びチアジアゾール硫黄の組み合わせ(P+S)が、約1300ppm~約1400ppmであり、及び/又は前記分散剤リンの前記チアジアゾール硫黄に対する重量比(P/S)が、約0.1~約0.3である、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項8】
総リンの約90~約100パーセントが前記スクシンイミド分散剤によって提供され、及び/又は提供されるリンの量が、前記スクシンイミド分散剤のポリイソブチレン部分の各8~13の数平均分子量単位当たり約1ppmのリンである、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項9】
前記チアジアゾール又はその誘導体が、式Iの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【化1】
式中、
各R
10は、独立して、水素又は硫黄であり、
各R
11は、独立して、アルキル基であり、
nが、0又は1の整数であり、R
10が水素である場合、隣接のR
11部分の前記整数nが0であり、R
10が硫黄である場合、隣接のR
11部分の前記nが1であり、
少なくとも1つのR
10が、硫黄である、請求項1に記載の電気駆動系流体。
【請求項10】
電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑するための方法であって、
前記駆動系構成要素を電気駆動系流体で潤滑することを含み、
前記電気駆動系流体は、(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、前記スクシンイミド分散剤は最大約1重量パーセントの窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約150~約270ppmの分散剤リン(P)を前記電気駆動系流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(iii)少なくとも約1000ppmのチアジアゾール硫黄(S)を前記電気駆動系流体に提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤であって、前記分散剤リン及びチアジアゾール硫黄の組み合わせ(P+S)が少なくとも約1300ppmであり、前記分散剤リンの前記チアジアゾール硫黄に対する重量比(P/S)が少なくとも約0.1である、硫黄提供添加剤と、(iv)1種類以上のカルシウム含有洗浄剤を提供する洗浄剤系であって、前記1種類以上のカルシウム含有洗浄剤が、約200ppm以下のカルシウムを提供する、洗浄剤系と、(v)約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤と、を含み、
前記電気駆動系流体が、約3.2cSt以上のkV100粘度と、約150~約270ppmの総リンと、前記電気駆動系流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正導電率試験によって測定され、20Hz及び170℃で測定される約130nS/M以下の電気伝導度とを有する、方法。
【請求項11】
前記摩擦調整剤が、アルキルイミド、アルキルアミン、ヒドロカルビルイミダゾール、それらの誘導体、若しくはそれらの組み合わせであり、及び/又は前記摩擦調整剤が、0~約0.08重量パーセントのエトキシ化アルキルアミンであり、及び/又は前記摩擦調整剤が、0~約0.4重量パーセントの、アミン、ポリアミン、又はアンモニアと反応した直鎖又は分岐鎖C16~C18置換コハク酸又は無水物である、請求項10に記載の電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑する方法。
【請求項12】
前記ポリイソブチレンの数平均分子量が約2000~約2400であり、及び/又は前記電気駆動系流体が約2~約8重量パーセントの前記スクシンイミド分散剤を含む、請求項10に記載の電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑する方法。
【請求項13】
前記電気駆動系流体が、CEC L-48-Aに従って前記電気駆動系流体がエイジングされた後に約0.5cSt未満のエイジング後の粘度変化を有する、請求項10に記載の電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑する方法。
【請求項14】
前記電気駆動系流体が、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/120スカッフィング試験において少なくとも約8の不合格負荷ステージを達成する、請求項10に記載の電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑する方法。
【請求項15】
前記総リンの約90~約100パーセントが、前記スクシンイミド分散剤によって提供され、及び/又は前記チアジアゾール又はその誘導体が、式IIIの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【化2】
式中、
各R
10は、独立して、水素又は硫黄であり、
各R
11は、独立して、アルキル基であり、
nが、0又は1の整数であり、R
10が水素である場合、隣接のR
11部分の前記整数nが0であり、R
10が硫黄である場合、隣接のR
11部分の前記nが1であり、
少なくとも1つのR
10が、硫黄である、請求項10に記載の電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気モーターシステム用の潤滑流体、及び電気モーターシステム内の駆動系を潤滑する方法に関する。特に、開示される方法及び潤滑流体は、潤滑粘度の油及び少なくとも1種の高分子量分散剤を含む、電気又はハイブリッド電気車両の電気モーター及び/又は駆動系において使用するための低粘度潤滑流体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車両の駆動系の潤滑剤を開発する際の主要な課題は、許容可能な摩擦性能を達成すると共に酸化安定性を維持する一方で、駆動系中の帯電した構成要素との潤滑剤相溶性を確実にすることである。電気又はハイブリッド電気車両内の潤滑剤はまた、電気モーター内の構成要素と接触し得るため、流体の電気伝導度はまた、帯電した構成要素の静電蓄積及び放電を阻止するために、比較的低い必要がある。
【0003】
効率を改善するために、潤滑剤製造業者は、潤滑剤の粘度を低下させようとすることが多いが、より低い粘度の流体は、産業及び/又は自動車製造業者によってしばしば要求される厳しい摩耗試験には、あまり望ましくないことが多い。したがって、より低い粘度の流体は、必要とされる摩耗試験を満たすために、追加の耐摩耗添加剤を必要とする場合が多くなることがある。しかしながら、これらの追加の添加剤を添加することは、しばしば、潤滑剤の電気伝導度を増加させ、及び/又は酸化安定性若しくは粘度安定性を減少させる。
【0004】
とりわけ、シャダー耐久性を改善するために、従来のトランスミッション潤滑剤中に1種類以上の摩擦調整剤を含むことも一般的である。しかしながら、電気車両の駆動系用の潤滑剤は、高レベルの摩擦調整剤によって悪影響を受ける傾向があり、摩擦調整剤は、摩耗防止添加剤などの潤滑剤中の他の成分の性能を妨げる可能性がある。したがって、電気又はハイブリッド電気車両用に構成された低粘度潤滑剤の状況では、耐摩耗性、酸化安定性、導電性、腐食、及び/又は摩擦性能における所望の性能を達成することは困難であり得る。
【発明の概要】
【0005】
一手法又は実施形態では、電気又はハイブリッド電気車両に好適な電気駆動系流体が本明細書に記載される。本手法又は実施形態の一態様では、電気駆動系流体は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、スクシンイミド分散剤は最大約1重量パーセントの窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約150~約270ppmの分散剤リン(P)を電気駆動系流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、チアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤であって、チアジアゾール又はその誘導体が、少なくとも約1000ppmのチアジアゾール硫黄(S)を電気駆動系流体に提供する、硫黄提供添加剤と、分散剤リン及びチアジアゾール硫黄の組み合わせ(P+S)が、少なくとも約1300ppmであり、分散剤リンのチアジアゾール硫黄に対する重量比(P/S)が、少なくとも約0.1であり、1種類以上のカルシウム含有洗浄剤を提供する洗浄剤系であって、1種類以上のカルシウム含有洗浄剤が約200ppm以下のカルシウムを提供する、洗浄剤系と、約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤を含み、電気駆動系流体が、約3.2cSt以上のkV100粘度と、約150~約270ppmの総リンと、電気駆動系流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正導電率試験によって測定され、20Hz及び170℃で測定された場合に約130nS/M以下の電気伝導度と、を有する電気駆動系流体。
【0006】
他の手法又は実施形態では、前段落に記載される電気駆動系流体は、任意の組み合わせで、1つ又は複数の任意選択の特徴又は実施形態を含んでもよい。これらの任意選択の特徴又は実施形態は、以下の1つ又は複数を含むことができ、摩擦調整剤は、アルキルイミド、アルキルアミン、ヒドロカルビルイミダゾール、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせであり、及び/又は摩擦調整剤は、アミン、ポリアミン、又はアンモニアと反応させた(好ましくはアンモニアと反応させた)0~約0.4重量パーセントの1つ以上の直鎖又は分岐鎖C16~C18置換コハク酸又は無水物、0~約0.08重量パーセントのエトキシ化アルキルアミン(好ましくはエトキシ化タローアミン)を含み、及び/又は摩擦調整剤が、アミン、ポリアミン、又はアンモニアと反応した(好ましくはアンモニアと反応した)0~約0.1重量パーセントの直鎖又は分岐鎖C16~C18置換コハク酸又は無水物であり、及び/又は、ポリイソブチレンの数平均分子量が、約2000~約2400であり、及び/又は、電気モーター潤滑流体が、約2~約8重量パーセント(好ましくは、約4~約8重量パーセント)のスクシンイミド分散剤を含み、及び/又は電気駆動系流体が、CEC L-48-Aに従って電気駆動系流体がエイジングされた後に約0.5cSt未満の粘度変化を有し、及び/又は電気駆動系流体が、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/120スカッフィング試験において少なくとも約8の不合格負荷ステージを達成し、及び/又はチアジアゾール又はその誘導体が、約1500ppm以下の硫黄を提供し、及び/又は分散剤リン及びチアジアゾール硫黄の組み合わせ(P+S)が、約1300ppm~約1400ppmであり、及び/又は分散剤リンのチアジアゾール硫黄に対する重量比(P/S)が、約0.1~約0.3であり、及び/又は総リンの約90~約100%が、スクシンイミド分散剤によって提供され、及び/又は提供されるリンの量が、スクシンイミド分散剤のポリイソブチレン部分の各8~13の数平均分子量単位当たり約1ppmのリンであり、及び/又はチアジアゾール又はその誘導体が、式Iの構造を有する1つ以上の化合物を含む。
【0007】
【化1】
式IIIの各R
10は、独立して、水素又は硫黄であり、式IIIの各R
11は、独立して、アルキル基であり、nが、0又は1の整数であり、R
10が水素である場合、隣接のR
11部分の整数nが0であり、R
10が硫黄である場合、隣接のR
11部分のnが1であり、少なくとも1つのR
10が硫黄である。
【0008】
別の手法又は実施形態では、電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑するための方法が本明細書に記載される。この実施形態の態様では、方法は、駆動系構成要素を電気駆動系流体で潤滑することを含み、いくつかの実施形態では、電気駆動系流体は、電気モーターの部分に接触する。この実施形態の他の態様では、電気駆動系流体は、(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、スクシンイミド分散剤は最大約1重量パーセントの窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約150~約270ppmの分散剤リン(P)を電気駆動系流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(iii)少なくとも約1000ppm(好ましくは約1000~約1400ppm)のチアジアゾール硫黄(S)を電気駆動系流体に提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤であって、分散剤リン及びチアジアゾール硫黄の組み合わせ(P+S)が少なくとも約1300ppm(好ましくは約1300~約1400)であり、分散剤リンのチアジアゾール硫黄に対する重量比(P/S)が少なくとも約0.1(好ましくは約0.1~約0.3)である、硫黄提供添加剤と、(iv)1種類以上のカルシウム含有洗浄剤を提供する洗浄剤系であって、1種類以上のカルシウム含有洗浄剤が約200ppm以下のカルシウムを提供する、洗浄剤系と、(v)約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤とを含み、電気駆動系流体が、約3.2cSt以上のkV100粘度と、約150~約270ppmの総リンと、電気駆動系流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正導電率試験によって測定され、20Hz及び170℃で測定された場合に約130nS/M以下の電気伝導度と、を有する電気駆動系流体。
【0009】
また更なる手法又は実施形態では、前段落で説明したような電気モーターを含む駆動系構成要素を潤滑するための方法は、1つ又は複数の任意選択の方法ステップ、特徴、又は実施形態を任意の組み合わせで含むことができる。これらの任意選択の方法工程、特徴、又は実施形態は、以下の1つ又は複数を含むことができ、摩擦調整剤が、アルキルイミド、アルキルアミン、ヒドロカルビルイミダゾール、それらの誘導体、若しくはそれらの組み合わせであり、及び/又は摩擦調整剤は、0~約0.08重量パーセントのエトキシ化アルキルアミン(好ましくはエトキシ化タローアミン)であり、及び/又は有機摩擦調整剤が、アミン、ポリアミン、又はアンモニアと反応させた(好ましくはアンモニアと反応させた)0~約0.4重量パーセントの直鎖又は分岐C16~C18置換コハク酸又は無水物であり、及び/又はポリイソブチレンの数平均分子量が約2000~約2400であり、及び/又は電気駆動系流体が、約2~約8重量パーセントのスクシンイミド分散剤(好ましくは、約4~約8重量パーセント)を含み、及び/又は電気駆動系流体が、CEC L-48-Aに従って電気駆動系流体がエイジングされた後に約0.5cSt未満の粘度変化を有し、及び/又は電気駆動系流体が、CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/120スカッフィング試験において少なくとも約8の不合格負荷ステージを達成し、及び/又は総リンの約90~約100パーセントがスクシンイミド分散剤によって提供され、及び/又はチアジアゾール又はその誘導体が、式IIIの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【0010】
【化2】
各R
10は、独立して、水素又は硫黄であり、各R
11は、独立して、アルキル基であり、nが、0又は1の整数であり、R
10が水素である場合、隣接のR
11部分の整数nが0であり、R
10が硫黄である場合、隣接のR
11部分のnが1であり、少なくとも1つのR
10が硫黄である。
【0011】
他の手法又は実施形態において、本明細書に記載の電気駆動系流体の使用は、(i)電気駆動系流体を使用し20Hz及び170℃で測定され、ASTM D2624-15に準拠した修正導電率試験によって測定される、約130nS/M以下の電気伝導度、(ii)CEC L-48-Aに従って電気駆動系流体がエイジングされた後に約0.5cSt未満の粘度変化、及び/又は(iii)CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/120スカッフィング試験における少なくとも約8の不合格負荷ステージ、の1つ以上を達成するように本明細書に記載される。そのような実施形態では、電気駆動系流体は、本概要に記載される任意の実施形態を含み、少なくとも(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、スクシンイミド分散剤は最大約1重量パーセントの窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約150~約270ppmの分散剤リン(P)を電気駆動系流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(iii)少なくとも約1000ppm(好ましくは約1000~約1400ppm)のチアジアゾール硫黄(S)を電気駆動系流体に提供するチアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤であって、分散剤リン及びチアジアゾール硫黄の組み合わせ(P+S)が少なくとも約1300ppm(好ましくは約1300~約1400)であり、分散剤リンのチアジアゾール硫黄に対する重量比(P/S)が少なくとも約0.1(好ましくは約0.1~約0.3)である、硫黄提供添加剤と、(iv)1種類以上のカルシウム含有洗浄剤を提供する洗浄剤系であって、1種類以上のカルシウム含有洗浄剤が約200ppm以下のカルシウムを提供する、洗浄剤系と、(v)約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤とを含み、当該電気駆動系流体は、約3.2cSt以上のkV100粘度、約150~約270ppmの総リンを有する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示した発明の明細書及び発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供される。
【0014】
「潤滑油」、「潤滑組成物(lubricant composition)」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「潤滑剤」、及び「潤滑及び冷却流体」という用語は、主要量の基油と、少量の添加剤組成物とを含む、完成した潤滑生成物を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、及び「添加剤組成物」という用語は、過半量の基油を除いた潤滑油組成物の部分を指している。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知である、その通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、且つ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基から独立して選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント(percent by weight)」又は「重量%(wt%)」という用語は、別段の断りがない限り、列挙した成分が組成物全体の重量に対して表す百分率を意味する。
【0018】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が、全ての割合で油中に可溶性、溶解性、混和性、又は懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、約1~約200個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、約3~約30個の炭素原子の直鎖、分岐鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はヘテロ原子、例えば、限定するものではないが窒素及び酸素を含み得る単環及び多環芳香族化合物を指している。
【0022】
本明細書で使用される場合、「数平均分子量」又は「Mn」は、市販のポリスチレン標準(較正基準として約180~約18,000のMnを有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって判定される。
【0023】
本開示全体を通して、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」などは、オープンエンドであると考えられ、明示的に列挙されていない任意の要素、工程、又は配合成分を含むことを理解すべきである。「から本質的になる」という句は、任意の明示的に列挙された要素、工程、又は配合成分、及び本発明の基本的及び新規の態様に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の要素、工程、又は配合成分を含むことを意味している。本開示はまた、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「含有する(contains)」を使用して記載される任意の組成物は、具体的に列挙されたその成分「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」同じ組成物の開示を含むものとして解釈されるべきであることも企図している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示的な実施形態によれば、CEC L-84-02のA10/16.6R/90試験などの要求の厳しいFZGスカッフィング試験において合格性能を驚くほど達成し、同時に、良好な電気伝導度を達成し酸化安定性を維持する、選択された元素関係を有する、電気又はハイブリッド電気車両に好適な低粘度駆動系潤滑剤が本明細書に記載される。しかしながら、本明細書中の潤滑流体について驚くべきことは、2000より大きい数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤を含む特定の添加剤の組み合わせは、このような分散剤が、選択されたリン、硫黄、及びカルシウムの元素関係と組み合わせて使用される場合に、合格摩耗、導電性、及び酸化性能を達成するのに有用であることが見出されたことである。いくつかの実施形態では、特定の摩擦調整剤が組成物中で制限される必要があることも発見された。
【0025】
本明細書の選択されたスクシンイミド分散剤を、特定の元素関係(例えば、以下で更に考察されるリン、硫黄、及び/又はカルシウムの関係)を有する他の潤滑油添加剤と組み合わせて完成潤滑油を形成した場合、本明細書の完成潤滑油は、より低い粘度、合格スカッフィング性能、好適な導電性、及び/又は酸化安定性を達成し、流体を電気又はハイブリッド電気車両の駆動系に好適にした。
【0026】
本明細書の流体は、少なくとも(i)約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されるスクシンイミド分散剤であって、最大約1重量パーセントの窒素を有し、リン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理され、約150~約270ppmの分散剤リン(P)を電気駆動系流体に送達する、スクシンイミド分散剤と、(ii)チアジアゾール又はその誘導体を含む硫黄提供添加剤であって、チアジアゾール又はその誘導体が少なくとも約1000ppmの硫黄(S)を電気駆動系流体に提供する、硫黄提供添加剤とを含む。更に、電気又はハイブリッド電気車両の性能を達成するために、分散剤リンから送達されるリンとチアジアゾール又はその誘導体から送達される硫黄との合計量(P+S)は、少なくとも約1300ppm(好ましくは、約1300ppm~約2000ppm、約1300ppm~約1600ppm、又は約1300ppm~約1400ppm)である必要があり、分散剤リンから送達されるリンとチアジアゾール又はその誘導体から送達される硫黄との重量比(P/S)は、少なくとも約0.1(好ましくは、約0.1~約0.5、約0.1~約0.4、又は約0.1~約0.3)である必要があることが発見された。
【0027】
更に、本明細書における潤滑剤の他の実施形態はまた、ハイブリッド及び/又はハイブリッド電気車両に好適な性能を達成するために、選択された洗浄剤系及び/又は選択された摩擦調整剤系を含む。一実施形態において、本明細書の潤滑剤は、1種類以上のカルシウム含有洗浄剤を提供するが限られた量のカルシウムのみを有する、洗浄剤系を更に含む。好ましくは、洗浄剤系は、約200ppm以下のカルシウムを提供する1種類以上のカルシウム含有洗剤を含む。更に他の実施形態では、本明細書の潤滑剤は、アルキルアミド、アルキルイミド、アルキルアミン、ヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリアミン、ヒドロカルビルイミダゾール、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤を有する選択された摩擦調整剤系を更に含むことができる。以下に更に説明するように、本明細書の潤滑剤は、限られた量のエトキシ化アルキルアミン摩擦調整剤及び/又は限られた量のアルキル化コハク酸又はその無水物若しくは誘導体のみを含んでもよい。例えば、本明細書の潤滑剤は、0.1重量パーセント未満のエトキシ化アルキルアミン(好ましくはエトキシ化タローアミン)、及び/又は0.3重量パーセント未満のアルキル化コハク酸若しくはその無水物若しくは誘導体を含む摩擦調整剤を含んでもよい。
【0028】
本明細書の電気駆動系流体が、約3.2cSt以上(好ましくは約3.2cSt~約7cSt)の比較的低いkV100粘度、及び上記の他の成分、関係、及び系と組み合わせた約150~約270ppmの総リンを有する場合、潤滑剤は、低い電気伝導度、合格耐摩耗性能、及び/又は所望の酸化安定性を同時に示す。例えば、本明細書の流体は、以下の(i)電気駆動系流体を使用してASTM D2624-15に準拠した修正導電率試験によって測定され、20Hz及び170℃で測定されるとき、約130nS/M以下の電気伝導度、(ii)CEC L-48-Aに従って電気駆動系流体がエイジングされた後に約0.5cSt未満の粘度変化、及び/又は(iii)CEC L-84-02のFZG A10/16.6R/120スカッフィング試験において少なくとも約8の不合格負荷ステージ、の1つ以上を示す。成分添加剤、関係、及び系のそれぞれについて、以下に更に記載する。
【0029】
スクシンイミド分散剤
本明細書の電気モーター駆動系流体は、好ましくは約2000以上の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導されたスクシンイミド分散剤であり、かつリン含有化合物及びホウ素含有化合物で後処理されている、少なくとも1種の油溶性無灰分散剤を有する分散剤系を含有する。本明細書のスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換ジカルボン酸又は無水物から誘導することができる。スクシンイミド分散剤及びそれらの調製は、少なくとも、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,897,696号及び/又は米国特許第4,234,435号に開示されている。
【0030】
ヒドロカルビル-ジカルボン酸又はその無水物のヒドロカルビル部分は、ブテンポリマー、例えば、イソブチレンのポリマーから誘導され得る。本明細書における使用に好適なポリイソブチレンとしては、従来のポリイソブチレン又は約70%~約90%以上などの少なくとも約60%の末端ビニリデン含有量を有する高反応性ポリイソブチレンから形成されるものが挙げられる。好適なポリイソブチレンは、BF3触媒を用いて調製されたものを含み得る。
【0031】
本明細書の分散剤のポリイソブチレン置換基の数平均分子量は、ポリスチレン(数平均分子量180~約18,000)を較正基準として使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって判定される際、少なくとも約2000から及び時には、最大約3000まで変化する場合がある。GPC法は、重量平均分子量分布情報を更に提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、W.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0032】
本明細書の分散剤中のポリイソブチレン部分は、重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)対数平均分子量(number average molecular weight、Mn)の比により決定した、多分散度指数とも称される分子量分布(molecular weight distribution、MWD)をも有する。いくつかの手法又は実施形態において、好適なポリイソブチレン部分は、約3.0未満、又は約2.8未満、又は約2.5未満のMw/Mnを有してもよく、他の手法において、好適なポリイソブチレン置換基は、約1.5~約3.0、又は約2.0~約3.0の多分散性を有する。
【0033】
本明細書の分散剤を形成するのに好適なジカルボン酸又は無水物は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、エチルマレイン酸、無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など、対応する酸ハライド及びC1-C4脂肪族エステルを含むカルボン酸系反応物から選択することができる。いくつかの手法では、ヒドロカルビルジカルボン酸又は無水物を作製するために使用される反応混合物中のヒドロカルビル部分に対するジカルボン酸又は無水物のモル比は、大きく変化し得る。したがって、仕込みモル比は、5:1~1:5、例えば3:1~1:3に変化し得る。いくつかの実施形態では、酸又は無水物のヒドロカルビル部分に対する、特に好適なモル比は、1:1~1.6:1未満である。他の実施形態では、ジカルボン酸又は無水物のヒドロカルビル部分に対する別の有用な仕込みモル比は、1:1~1.5:1、又は1:1~1.4:1、又は1.1:1~1.3:1、又は1:1~1.2:1であってもよい。
【0034】
多数のポリアルキレンポリアミンのいずれかを、本明細書の分散剤添加剤の調製に使用することができる。非限定的な例示的ポリアミンとしては、重炭酸アミノグアニジン(aminoguanidine bicarbonate、AGBC)、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(pentaethylene hexamine、PEHA)及び重質ポリアミンが挙げられ得る。重質ポリアミンは、TEPA及びPEHAなどの少量のポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子当たり7個以上の窒素原子、2個以上の一級アミンを有するオリゴマーを有し、かつ従来のポリアミン混合物よりも広範囲の分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。典型的に、これらの重質ポリアミンは、1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有する。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用され得る更なる非限定的なポリアミンは、米国特許第6,548,458号に開示されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヒドロカルビルジカルボン酸又は無水物のポリアルキレンポリアミンに対する仕込みモル比は、約1:1~約3.0:1でもよい。一実施形態では、本明細書に記載の本開示における分散剤は、ポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)とポリアミン、例えば、重ポリアミンとの反応生成物であってもよく、ポリアミンに対するポリイソブテニル置換コハク酸無水物の仕込みモル比は、約1.7:1~約2.5:1である。
【0035】
上記のように、本明細書のスクシンイミド分散剤は、ホウ素化合物で後処理されてもよい。本明細書における分散剤を形成するのに有用な好適なホウ素化合物は、ホウ素含有種を無灰分散剤に導入することができるいずれかのホウ素化合物又はホウ素化合物の混合物を含む。かかる反応を受けることができる有機又は無機の任意のホウ素化合物を使用することができる。したがって、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ボロン酸(例えば、アルキル-B(OH)2、又はアリール-B(OH)2)などのHBF4ホウ素酸、ホウ酸(すなわち、H3BO3)、四ホウ酸(すなわち、H2B5O7)、メタホウ酸(すなわち、HBO2)、かかるホウ素酸のアンモニウム塩、及びかかるホウ素酸のエステルを使用することができる。三ハロゲン化ホウ素とエーテル、有機酸、無機酸、又は炭化水素との錯体の使用は、ホウ素反応物質を反応混合物に導入する便利な手段である。かかる錯体は知られており、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素-フェノール、三フッ化ホウ素-リン酸、三塩化ホウ素-クロロ酢酸、三臭化ホウ素-ジオキサン及び三フッ化ホウ素-メチルエチルエーテルにより例示される。
【0036】
本明細書のスクシンイミド分散剤は、リン化合物で後処理することもできる。本明細書における分散剤を形成するための好適なリン化合物としては、リン含有種を無灰分散剤に導入することができるリン化合物又はリン化合物の混合物が挙げられる。このため、かかる反応を受けることができる有機又は無機の任意のリン化合物を使用することができる。したがって、かかる無機リン化合物を、無機リン酸、及びその水和物を含む無機酸化リンとして使用することができる。典型的な有機リン化合物としては、リン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、及びテトラチオリン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステルなどのリン酸の完全エステル及び部分エステル;亜リン酸、チオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、及びトリチオ亜リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル;トリヒドロカルビルホスフィンオキシド;トリヒドロカルビルホスフィンスルフィド;モノ-及びジヒドロカルビルホスホネート、(RPO(OR’)(OR”)(式中、R及びR’は、ヒドロカルビルであり、R”は、水素原子又はヒドロカルビル基である)、及びそれらのモノ-、ジ-、並びにトリチオ類似体;モノ-及びジヒドロカルビルホスホナイト、(RP(OR’)(OR”)(式中、R及びR’は、ヒドロカルビルであり、R”は、水素原子又はヒドロカルビル基である)、及びそれらのモノ-並びにジチオ類似体など、が挙げられる。このため、かかる化合物を、例えば、亜リン酸(H3PO3、H2(HPO3)と表されることもあり、オルト-亜リン酸又はリン酸と呼ばれることもある)、リン酸(H3PO4、オルトリン酸と呼ばれることもある)、次リン酸(H4P2O6)、メタリン酸(HPO3)、ピロリン酸(H4P2O7)、次亜リン酸(H3PO2、ホスフィン酸と呼ばれることもある)、ピロ亜リン酸(H4P2O5、ピロホスホン酸と呼ばれることもある)、亜ホスフィン酸(H3PO)、トリポリリン酸(H5P3O10)、テトラポリリン酸(H5P4O13)、トリメタリン酸(H3P3O9)、三酸化リン、四酸化リン、五酸化リンなどとして使用することができる。ホスホロテトラチオ酸(H3PS4)、ホスホロモノチオ酸(H3PO3S)、ホスホロジチオ酸(H3PO2S2)、ホスホロトリチオ酸(H3POS3)、セスキ硫化リン、七硫化リン、及び五硫化リン(P2S5、P4S10と称されることもある)などの部分又は全硫黄類似体もまた、本開示のための分散剤の形成に使用することができる。また、PCl3、PBr3、POCl3、PSCl3等の無機ハロゲン化リン化合物も使用できる。
【0037】
同様に、有機リン化合物、例えば、リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル(例えば、トリヒドロカルビルホスフェート、ジヒドロカルビルモノアシッドホスフェート、モノヒドロカルビルジアシッドホスフェート、及びこれらの混合物)、亜リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル(例えば、トリヒドロカルビルホスファイト、ジヒドロカルビル水素ホスファイト、ヒドロカルビル二酸ホスファイト、及びこれらの混合物)、ホスホン酸のエステル(「一級」RP(O)(OR)2、及び「二級」R2P(O)(OR)の両方)、ホスフィン酸のエステル、ホスホニルハロゲン化物(例えば、RP(O)Cl2及びR2P(O)Cl)、ハロリン酸塩(例えば、(RO)PCl2及び(RO)2PCl)、ハロホスファイト(例えば、ROP(O)Cl2及び(RO)2P(O)Cl)、三級ピロホスフェートエステル(例えば、(RO)2P(O)-O-P(O)(OR)2)、並びに前述の有機リン化合物のうちのいずれかの全硫黄類似体又は部分硫黄類似体などを使用することができ、各ヒドロカルビル基は、最大100個の炭素原子、好ましくは、最大50個の炭素原子、より好ましくは、最大24個の炭素原子、及び最も好ましくは、最大12個の炭素原子を含む。ハロゲン化ハロホスフィン(例えば、四ハロゲン化ヒドロカルビルリン、三ハロゲン化ジヒドロカルビルリン、及び二ハロゲン化トリヒドロカルビルリン)、及びハロホスフィン(モノハロホスフィン及びジハロホスフィン)も使用可能である。
【0038】
一実施形態では、本明細書の流体のスクシンイミド分散剤は、少なくとも約2000、他の手法では約2000~約3000、又は更に別の手法では約2000~約2300の数平均分子量を有する少なくともポリイソブテニル部分を含み、約0.5~約1重量%の窒素、約0.05~約0.25重量%のホウ素、及び約0.20~約0.45重量%のリンを有するか、又は更に別の実施形態では、少なくとも2000~2300の数平均分子量を有するポリイソブテニル部分を含み、約0.60~約0.90重量%の窒素、約0.10~約0.20重量%のホウ素、及び約0.25~約0.40重量%のリンを有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の分散剤は、約2~約8重量パーセント(好ましくは約4~約8重量パーセント)の電気モーター駆動系流体を含み、約300~約600ppmの窒素、約150~約270ppmのリン、及び約50~約120ppmのホウ素を完成流体に送達する。以下の実施例に示されるように、このようなスクシンイミド分散剤が、他の流体成分、特に、選択された量の硫黄、ホウ素、窒素、及び/又はリンと組み合わされる場合、この潤滑剤は、電気及び/又はハイブリッド電気車両の駆動系又はパワートレインにおいて使用される潤滑剤に好適な、合格摩耗及び導電性能、並びに酸化安定性を達成する。
【0040】
硫黄提供添加剤
電気モーター駆動系流体はまた、上記のスクシンイミドと組み合わされた場合に、摩耗性能、導電性、及び酸化安定性を改善する量で硫黄提供添加剤を含む。本明細書の手法又は実施形態において、硫黄提供添加剤は、本明細書の潤滑流体に少なくとも約1000ppmの硫黄(好ましくは約1000~約1500ppmの硫黄、より好ましくは約1000~約1400ppmの硫黄、最も好ましくは約1000~約1300ppmの硫黄)を提供する量の1つ以上のチアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体であってもよい。他の手法では、硫黄提供化合物は、チアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体の混合物であってよい。使用され得るチアジアゾール化合物の例としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(ヒドロカルビルチオ)-1,3,4-チアジアゾール、又は2,5-ビス(ヒドロカルビルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールが挙げられるが、これらに限定されない。1,3,4-チアジアゾールは、一般的にヒドラジンと二硫化炭素から既知の方法により合成される。例えば、米国特許第2,765,289号、米国特許第2,749,311号、米国特許第2,760,933号、米国特許第2,850,453号、米国特許第2,910,439号、米国特許第3,663,561号、米国特許第3,862,798号及び米国特許第3,840,549号を参照されたい。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書の硫黄提供添加剤の形態及び量は、低い導電率及び酸化安定性を維持し、同時に他の所望の摩耗性能特性も満たす流体の能力に寄与する。手法では、チアジアゾール又はその誘導体は、式IIIの構造を有する1つ以上の化合物を含み、
【0042】
【化3】
式中、式IIIの各R1が、独立して、水素又は硫黄であり、式IIIの各R2が、独立して、アルキル基であり、nが、0又は1の整数であり、R1が水素である場合、隣接のR2部分の整数nが0であり、R1が硫黄である場合、隣接のR2部分のnが1であり、ただし、少なくとも1つのR1が硫黄である。他の手法では、チアジアゾール添加剤は、以下に示される式IIIa及び式IIIbの化合物のブレンドであり、
【0043】
【化4】
式IIIa中、各整数nは、1であり、各R1は、硫黄であり、各R2は、C5~C15アルキル基、好ましくはC8~C12アルキル基であり、
【0044】
【化5】
式IIIb中、一方の整数nは、1であり、関連するR2基は、C5~C15アルキル基(好ましくは、C8~C12アルキル基)であり、他方の整数nは、0であり、両方のR1は、硫黄である。いくつかの実施形態では、硫黄提供添加剤は、式IIIa及びIIIbのブレンドを含み、式Ivaがブレンドの大部分であり、他の手法では、IIIa及びIIIbのブレンドは、約75~約90重量パーセントのIIIa及び約10~約25重量パーセントのIIIb(又はその中の他の範囲)である。別の手法では、硫黄提供添加剤は、2,5-ビス-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約75~約90%など)と、2,5-モノ-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(約10~約25%など)とのブレンドを含む、2,5ジメルカプト1,3,4チアジアゾールである。
【0045】
チアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体は、本明細書の電気モーター潤滑流体中に、少なくとも約1000ppmの硫黄、少なくとも約1100ppmの硫黄、又は少なくとも約1200ppmの硫黄を送達する量で存在する。実施形態では、チアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体は、約1000~約1500ppmの硫黄、他の実施形態では、約1000~約1400ppmの硫黄、又は約1000~約1300ppmの硫黄を送達する量で本明細書の電気モーター潤滑流体中に存在する。一実施形態において、チアジアゾール化合物は、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールであり、このチアジアゾール化合物又はそのヒドロカルビル置換誘導体は、約1000~約1300ppm(又はその範囲内の他の範囲)の硫黄を送達する量で潤滑流体中に存在する。
【0046】
摩擦調整剤
いくつかの実施形態では、本明細書の電気モーター駆動系流体は、低レベルの摩擦調整剤のみ、特に、約0.4重量パーセント以下の摩擦調整剤を含有する。本明細書において、電気モーター駆動系流体は、アルキルアミド、アルキルイミド(1つ以上のアルキルC15~C30アルキル鎖を有する)、アルキルアミン、ヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリアミン、ヒドロカルビルイミダゾール、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む摩擦調整剤を約0.4重量パーセント未満含有する。一実施形態では、本明細書の電気駆動系流体は、摩擦調整剤を有してもよいが、アンモニアと反応させた約0.3重量パーセント以下の直鎖又は分岐C16~C18置換コハク酸又は無水物を有してもよい。別の実施形態では、本明細書の電気駆動系流体は、アミン、ポリアミン、又はアンモニアと反応した約0.3重量パーセント以下の直鎖又は分岐C16~C18置換コハク酸又は無水物、及び/又は0~約0.05重量パーセントのアルキル又はアルケニル置換イミダゾリン、及び/又は0~約0.08重量パーセントのエトキシ化アルキルアミン(好ましくはエトキシ化タローアミン)を含有してもよい。
【0047】
他の実施形態では、本明細書の電気駆動系流体は、約0.10重量パーセント以下の、アミン、ポリアミン、又はアンモニアとの反応(好ましくはアンモニアとの反応)によって得られる直鎖若しくは分岐鎖C16~C18置換コハク酸若しくは無水物摩擦調整剤又はそれらの誘導体を含む摩擦調整剤、及び/又は約0.05重量パーセント未満のアルキル若しくはアルケニル置換イミダゾリンを有し得る。他の実施形態では、本明細書の電気駆動系流体は、アミン、ポリアミン、若しくはアンモニア及び/又は約0.08重量パーセント未満のエトキシ化タローアルキルアミンとの反応によって得られる、直鎖若しくは分岐C16~C18置換コハク酸若しくは無水物摩擦調整剤又はそれらの誘導体を含む、約0.30重量パーセント以下の摩擦調整剤を有してもよい。
【0048】
他の実施形態では、本明細書の潤滑剤における限定された量の摩擦調整剤はまた、少量の任意の金属含有及び/又は少量の有機若しくは金属非含有の摩擦調整剤を含んでもよく、イミダゾリン類、アミド類、アミン類、スクシンイミド類、アルコキシル化アミン類、アルコキシル化エーテルアミン類、アミンオキシド類、アミドアミン類、ニトリル類、ベタイン類、四級アミン類、イミン類、アミン塩類、アミノグアニジン類、アルカノールアミド類、ホスホン酸類、金属含有化合物類、グリセロールエステル類、硫化脂肪族化合物及びオレフィン類、ヒマワリ油他の天然に存在する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル若しくは部分エステルなどを含む少量のそのような摩擦調整剤のみを含んでもよい。
【0049】
本明細書の電気駆動系潤滑剤において限定される傾向がある摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はこれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有することができ、かかるヒドロカルビル基は飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、12~25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0050】
本明細書の潤滑剤において制限される傾向がある他の摩擦調整剤としては、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤を挙げることができる。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0051】
アミン系摩擦調整剤もまた、本明細書の潤滑剤中に限定されてもよく、そのような摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含んでもよい。かかる化合物は、飽和又は不飽和のいずれかの直鎖、又はこれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、12~25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖状で、飽和、不飽和のいずれかのヒドロカルビル基、又はそれらの混合物を有し得る。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0052】
本明細書の任意の実施形態において、本明細書の潤滑剤は、存在する場合、約0.4重量パーセント以下の全摩擦調整剤、特に約0.4重量パーセント以下の上記の種類の摩擦調整剤を含む。いくつかの実施形態において、本明細書の潤滑剤は、摩擦調整剤を実質的に含まない、又は好ましくは含まず、これは、潤滑剤が、約0.4重量パーセント以下のそのような摩擦調整剤、約0.2重量パーセント以下の摩擦調整剤、約0.1重量パーセント以下の摩擦調整剤、約0.08重量パーセント以下の摩擦調整剤、約0.06重量パーセント以下の摩擦調整剤、約0.04重量パーセント以下の摩擦調整剤、約0.02重量パーセント以下の摩擦調整剤、約0.01重量パーセント以下の摩擦調整剤を有するか、又は機能量の上記摩擦調整剤を有さないことを意味する。
【0053】
基油
本明細書の電気モーター駆動系流体は、潤滑粘度を有する1つ以上の基油を含む。本開示による電気及び/又はハイブリッド電気モーター車両で使用するための電気モーター潤滑流体を配合する際に使用するのに好適な基油は、好適な潤滑粘度を有する好適な合成若しくは天然油又はそれらの混合物のいずれかから選択され得る。天然油は、動物油、及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、並びに液体石油及びパラフィン系、ナフテン系、又は混合パラフィン-ナフテン型の溶媒処理若しくは酸処理した鉱物潤滑油などの鉱物油を含んでいてもよい。石炭又はシェールに由来する油もまた好適であり得る。更に、ガス液化プロセスから導かれる油もまた好適である。基油は、ASTM D445によって測定される際、100℃において約2~約6cStの動粘度を有し得る。
【0054】
本明細書に記載される本発明で使用される基油は、単一の基油であり得るか、又は2つ以上の基油の混合物であり得る。1つ以上の基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesにおいて指定されているグループIII又はIV中の基油のいずれかから選択され得る。かかる基油グループを、以下のように表1に示す。
【0055】
【0056】
一変形形態では、基油は、APIグループIII基油、若しくはAPIグループIV基油、又はこれらの基油の混合物から選択され得る。代替的に、基油は、APIグループIII基油のうちの2つ以上、又はAPIグループIV基油のうちの2つ以上の混合物であり得る。
【0057】
APIグループIII基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から誘導される油を含み得る。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H2及びCOを含有する合成ガスから作製される。かかる炭化水素は、典型的には、基油として有用であるために更なる処理を必要とする。これらのタイプの油は、一般にガス液化油(GTL)と呼ばれる。例えば、炭化水素は、米国特許第6,103,099号若しくは同6,180,575号に開示されるプロセスを使用して水素異性化されるか、米国特許第4,943,672号若しくは同6,096,940号に開示されるプロセスを使用して、水素化分解若しくは水素異性化されるか、米国特許第5,882,505号に開示される方法を使用して脱ロウされるか、又は米国特許第6,013,171号、同6,080,301号、若しくは同6,165,949号に開示されるプロセスを使用して、水素異性化及び脱ロウされてもよい。
【0058】
APIグループIV基油である、PAOは、典型的には、4~30個、又は4~20個、又は6~16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。本発明で使用され得るPAOの例としては、オクテン、デセン、それらの混合物などに由来するものが挙げられる。PAOは、ASTM D2270-10によって測定される際、100℃において、2~15、又は3~12、又は4~8cStの動粘度を有し得る。PAOの例としては、100℃で4cStのPAO、100℃で6cStのPAO、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
基油は、本明細書の実施形態において開示されるような添加剤組成物と組み合わされて、電気モーター、歯車、及びクラッチを有する電気モーターシステム内で使用するための潤滑剤を提供する。したがって、基油は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、約80重量パーセントを超える量で、潤滑流体中に存在し得る。いくつかの実施形態では、基油は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、約85重量%超の量で潤滑及び冷却流体中に存在し得る。
【0060】
他の添加剤
本明細書に記載される電気モーター駆動系流体は、上記に記載される成分に加えて、電気モーター流体組成物中で使用されるタイプの他の添加剤も含み得る。かかる添加剤としては、酸化防止剤、粘度調整剤、リン含有成分、清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、並びに追加の分散剤、追加の摩擦調整剤、及び追加の硫黄含有成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
酸化防止剤
いくつかの実施形態では、電気モーター駆動系流体は、1種類以上の酸化防止剤を含有する。好適な酸化防止剤としては、とりわけ、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、及び有機亜リン酸エステルが挙げられる。
【0062】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、三級ブチル化フェノールの液体混合物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ter-t-ブチルフェノール)、及び混合メチレン架橋ポリアルキルフェノール、及び4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N,N’-ジ-sec-ブチル-フェニレンジアミン、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、並びに環アルキル化ジフェニルアミンが挙げられる。例としては、立体障害性三級ブチル化フェノール、ビスフェノール、及びケイ皮酸誘導体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
芳香族アミン酸化防止剤としては、以下の式:
【0064】
【化6】
(式中、R’及びR”は、各々独立して、6~30個の炭素原子を有する置換又は無置換アリール基を表す)を有するジアリールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基の置換基の例示としては、1~30個の炭素原子を有するアルキルなどの脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸若しくはエステル基、又はニトロ基が挙げられる。
【0065】
アリール基は、好ましくは置換又は非置換フェニル又はナフチルであり、特に、アリール基の一方又は両方が、4~30個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子、最も好ましくは4~9個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルで置換されている。一方又は両方のアリール基が置換されていることが好ましく、例えば、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジ-アルキル化ジフェニルアミン、又はモノ-及びジ-アルキル化ジフェニルアミンの混合物である。
【0066】
使用され得るジアリールアミンの例としては、ジフェニルアミン;様々なアルキル化ジフェニルアミン、3-ヒドロキシジフェニルアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、モノブチルジフェニル-アミン、ジブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、モノテトラデシルジフェニルアミン、ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、モノオクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、フェニル-ベータ-ナフチルアミン、モノヘプチルジフェニルアミン、ジヘプチル-ジフェニルアミン、p-配向スチレン化ジフェニルアミン、混合ブチルオクチルジ-フェニルアミン、及び混合オクチルスチリルジフェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
硫黄含有酸化防止剤としては、それらの生産に使用されるオレフィンの種類及び酸化防止剤の最終硫黄含有量によって特徴付けられる硫化オレフィン類が挙げられるが、これらに限定されない。高分子量オレフィン、すなわち、168~351g/モルの平均分子量を有するオレフィンが好ましい。使用され得るオレフィンの例としては、アルファ-オレフィン、異性化アルファ-オレフィン、分岐鎖オレフィン、環状オレフィン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
アルファ-オレフィンとしては、任意のC4~C25アルファ-オレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。アルファ-オレフィンは、硫化反応前又は硫化反応中に異性化され得る。内部二重結合及び/又は分枝を含有するアルファオレフィンの構造異性体及び/又は配座異性体も使用され得る。例えば、イソブチレンは、アルファ-オレフィン1-ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0069】
オレフィンの硫化反応において使用され得る硫黄源としては、元素状硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、及び硫化プロセスの異なる段階で共に添加されるこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
不飽和油はまた、それらの不飽和のために、硫化され、酸化防止剤としても使用され得る。使用され得る油又は脂肪の例としては、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、ブドウ種子油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ヤシ油、ナタネ油、ベニバナ種子油、ゴマ種子油、ダイズ油、ヒマワリ種子油、獣脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
本明細書に記載の潤滑及び冷却流体中の酸化防止剤の総量は、最大約200ppmの窒素、又は最大約150ppmの窒素、又は最大約100ppmの窒素を送達する量で存在し得る。
【0072】
洗浄剤
本明細書に記載の電気モーター駆動系流体に含まれ得る金属洗浄剤は、一般に、長い疎水性尾部を有する極性頭部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩からなる。塩は、実質的に化学量論量の金属を含有し得、その場合、それらは通常、通常又は中性の塩として説明され、典型的には、0~150未満の全塩基価又はTBN(total base number)(ASTM D2896によって測定される)を有する。大量の金属塩基は、酸化物又は水酸化物などの過剰の金属化合物を二酸化炭素などの酸性ガスと反応させることによって、含まれ得る。得られる過塩基性洗浄剤は、無機金属塩基(例えば、水和炭酸塩)のコアを取り囲む中和された洗浄剤のミセルを含む。かかる過塩基性洗浄剤は、約150以上、例えば、約150~約450以上のTBNを有していてもよい。
【0073】
本実施形態における使用に好適であり得る洗浄剤には、油溶性過塩基性、低塩基性及び中性のスルホネート、フェネート、硫化フェネート、及び金属、特に、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムのサリチレートが挙げられる。1つより多い金属、例えばカルシウムとマグネシウムの両方が存在してもよい。カルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムとの混合物もまた好適であり得る。好適な金属洗浄剤は、150~450TBNのTBNを有する過塩基性カルシウム又はマグネシウムスルホネート、150~300TBNのTBNを有する過塩基性カルシウム又はマグネシウムフェネート又は硫化フェネート、及び130~350のTBNを有する過塩基性カルシウム又はマグネシウムサリチレートであり得る。かかる塩の混合物もまた使用され得る。
【0074】
金属含有洗浄剤は、流体の防錆性能を改善するのに十分な量で潤滑及び冷却流体中に存在し得る。金属含有洗浄剤は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大130ppmのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で流体中に存在し得る。
【0075】
一手法では、好ましい洗浄剤は、中性から低塩基性のスルホン酸塩であってもよく、いくつかの手法では、スルホン酸カルシウムであってもよい。好適な洗浄剤は、50以下(例えば、約25~約30)のTBNを有するスルホン酸カルシウムであってもよい。
【0076】
粘度調整剤
電気モーター駆動系流体は、任意選択的に、1つ以上の粘度調整剤を含有し得る。好適な粘度調整剤としては、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はこれらの混合物が挙げられ得る。粘度調整剤はスターポリマーを含んでいてもよく、好適な例は、米国特許出願公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0077】
本明細書に記載される電気モーター駆動系流体はまた、任意選択的に、粘度調整剤に加えて、又は粘度調整剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度調整剤を含有し得る。好適な分散剤粘度調整剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0078】
粘度調整剤及び/又は分散剤粘度調整剤の総量は、存在する場合、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大約1.0重量%、又は最大約0.5重量%、又は最大約0.3重量%であり得る。
【0079】
消泡剤
安定した泡の形成を低減又は防止するために使用される消泡剤には、シリコーン、ポリアクリレート、又は有機ポリマーが含まれる。開示される発明の組成物において有用であり得る消泡剤としては、ポリシロキサン、エチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとのコポリマー、及び任意選択的に、酢酸ビニルが挙げられる。存在する場合、潤滑及び冷却流体中の消泡剤の量は、潤滑及び冷却流体の総重量に基づいて、最大約0.1重量%、又は最大約0.05重量%、又は約0.04重量%未満であり得る。
【0080】
流動点降下剤
電気モーター駆動系流体は、任意選択的に、1つ以上の流動点降下剤を含有し得る。好適な流動点降下剤としては、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート若しくはポリアクリルアミド、又はこれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤が存在する場合、潤滑剤の総重量に基づいて、約0.001重量%~約0.04重量%の量で存在し得る。
【0081】
概して、本明細書に記載される潤滑及び冷却流体は、表2に列挙される範囲内の添加剤成分を含み得る。
【0082】
【0083】
上記の各成分のパーセンテージは、列挙された成分を含有する潤滑及び冷却流体の総重量に基づく、各成分の重量パーセントを表す。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態である場合には成分の組み合わせによってもたらされる相互相溶性を利用する。また、濃縮物の使用は、混合時間を短縮し、混合エラーの可能性を低減する。
【実施例0084】
本開示及びその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例解的なものであり、範囲又は趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、及びデバイスの変形形態を使用することができることを容易に理解するであろう。特に明記しない限り、又は以下の実施例及び本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載する全ての百分率、比、及び部は、重量基準である。
【0085】
本明細書の流体が合格摩耗、酸化安定性、及び導電性をどのように達成するかを実証するために、本明細書の本発明の流体を、窒素、ホウ素、硫黄、及び/又はリンの様々な元素関係を有する流体と比較して、摩耗、酸化安定性、及び導電性を評価する。配合物を、FZGスカッフィング、酸化粘度安定性、及び電気伝導度について評価した。以下の表に示すように、本発明の実施例は、比較例と比較して、改善された摩耗性能、導電性能、及び酸化安定性を示した。必要とされる成分を有し、必要とされる処理速度である本発明の実施例は、したがって、電気又はハイブリッド電気車両の駆動系を潤滑するのに好適であった。多すぎるリン、多すぎる摩擦調整剤、多すぎる清浄剤を送達した比較例、及び/又は低すぎる数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される多すぎる分散剤を含んだ比較例は、摩耗性能の低下、酸化安定性の低下、及び/又は導電性の低下を有し、したがって、電気又はハイブリッド電気車両駆動系を潤滑するのに好適ではなかった。本明細書で試験した全ての流体は、約3.2~約8cStのkV100℃(ASTM D445)を有する低粘度流体とみなされた。
【0086】
FZGスカッフィングは、潤滑剤のスカッフィング負荷容量を評価するために使用され、CEC L-84-02のA10/16.6R/90試験に従って実施された。結果は、不合格負荷ステージで表され、より高い不合格負荷ステージを有する試料についてより良い結果が得られる。本明細書の本発明の潤滑剤は、少なくとも8の不合格負荷ステージを達成する。
【0087】
酸化粘度安定性を使用して、流体をCEC L-48-A-00に従って192時間エイジングした後の初期粘度と最終粘度との間の差を評価した。より低い値は、改善された性能を示唆する。従って、高い酸化安定性を有する流体は、エイジングの前後に測定される粘度においてわずかな変化しか示さない。本明細書の流体は、約0.5cSt以下の粘度変化を有する。
【0088】
電気モーター流体が低い導電率を示すことは有益である。流体の導電率は、1.5V,20Hz及び170℃で、Flucon Epsilon+を使用して、ASTM D2624-15(燃料ではなく、潤滑剤の試験)の修正版に従って測定した。本明細書の流体は、約130nS/m以下の導電率を有する。
【0089】
以下の表3において試験された本発明の実施例及び比較例は全て、表3に示されるような種々の量の硫化成分、摩擦調整剤、及び分散剤を含有した。その他の点では、各流体は、酸化防止剤、消泡剤、腐食防止剤、洗浄剤、解乳化剤、及びプロセス油を含む同じ追加の添加剤を含有していた。本発明の実施例及び比較例をグループIV基油で試験して、以下の表に示す100℃での動粘度を有する最終流体を得た。本発明の実施例において分散剤から送達される硫黄、摩擦調整剤、及びリンのバランスのとれた送達は、驚くほど改善された摩耗、酸化安定性、及び潤滑剤導電性をもたらした。多すぎるリンを送達した、及び/又は比較的低分子量の分散剤添加剤を含んでいた、及び/又は多すぎる摩擦調整剤を含有していた比較例は、摩耗性能、又は酸化安定性、及び/又は潤滑剤導電性が低下した。これらの実施例で使用したこれらの成分の詳細を以下に記載する。
・硫黄成分(S-1)
およそ35重量%の硫黄を含有する2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び/又はその誘導体であって、2,5-ビス-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールと2,5-モノ-(ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールとの75:25~85:15混合物であった。
・分散剤1(Disp-1)
950Mnのポリイソブチレン、無水マレイン酸、1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有するポリアルキレンポリアミンの混合物、リン酸、及びホウ酸から作製された、リン酸化及びホウ酸化されたスクシンイミド分散剤。この分散剤は、およそ0.76重量%のリン、およそ0.35重量%のホウ素、及びおよそ1.75%の窒素を含んでいた。
・分散剤2(Disp-2)
2100Mnのポリイソブチレン、無水マレイン酸、1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有するポリアルキレンポリアミンの混合物、リン酸、及びホウ酸から作製された、リン酸化及びホウ酸化されたスクシンイミド分散剤。分散剤は、およそ0.77重量%の窒素、約0.15重量%のホウ素、及び約0.35重量%のリンを有していた。
・洗剤添加剤1(Det-1)
約300のTBN及び約11.9重量パーセントのカルシウムを有する過塩基性スルホン酸カルシウム
・摩擦調整剤1(FM-1)
1-ヒドロキシ-2-ヘプタデセニルイミダゾリン
・摩擦調整剤2(FM-2)
アンモニアと反応した分岐C16~C18置換コハク酸又は無水物。
・摩擦調整剤3(FM-3)
エトキシ化牛脂アルキルアミン
【0090】
【0091】
【0092】
【表5】
**CEC L-84-02(A10/16.6R/90)
***CEC L-48-A
****ASTM D2624-15(20Hz、170℃)をフルコンエプシロン又は同等のテスターで実施した
【0093】
本発明の実施例1は、許容可能なFZG性能(8以上)、改善された酸化性能(初期粘度とエイジング後の最終粘度との間の差が0.5cSt以下)、及び改善された電気伝導度(130nS/m以下)を有したが、比較例は、低下したFZG性能、低下した酸化性能、及び/又は低下した導電性能のいずれかを有した。
【0094】
本発明の実施例2及び比較例5を以下の表6に示す。実施例をグループIII又はグループIV/V基油で試験して、以下の表に示す100℃での動粘度を有する完成流体を得た。本発明の実施例2及び比較例5は、以下の表6に示されるように、様々な量の摩擦調整剤及び洗浄剤を含有した。その他の点では、実施例は、酸化防止剤、消泡剤、解乳化剤、及びプロセス油を含む同様の量の追加の添加剤を含有していた。本発明の実施例2における硫黄、摩擦調整剤、及び分散剤のバランスのとれた送達は、驚くほど改善された摩耗、酸化安定性、及び潤滑剤導電性をもたらした。比較例5は、多すぎる摩擦調整剤及び多すぎる清浄剤を含有し、したがって、摩耗における性能、又は酸化安定性、及び/又は潤滑剤導電性が低下した。これらの実施例で使用した追加成分の詳細を以下に記載する。
・分散剤3(Disp-3):950Mnのポリイソブチレン、無水マレイン酸、及び1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有するポリアルキレンポリアミンの混合物から得られるスクシンイミド分散剤。分散剤は、およそ2.0重量%の窒素を有した。
・摩擦調整剤4(FM-4):アンモニアと反応した直鎖C16~C18置換コハク酸又は無水物。
・摩擦調整剤5(FM-5):イソデシルオキシプロピルモノアミン、n-オレイル-1,3-ジアミノプロパン、及びジメチルオクタデシルアミンを含有する摩擦調整剤の混合物
・酸化防止剤(AO):ヒンダードフェノール及びアルキル化ジフェニルアミンからなる1種類以上の酸化防止剤
【0095】
【0096】
【0097】
【表8】
**CEC L-84-02(A10/16.6R/90)
***CEC L-48-A
****ASTM D2624-15(20Hz、170℃)をフルコンエプシロン又は同等のテスターで実施した
【0098】
本発明の実施例2は、許容可能なFZG性能(8以上)、改善された酸化性能(0.5cSt以下のエイジング後の初期粘度と最終粘度との間の差)、及び改善された電気伝導度(130nS/m以下)を有したが、比較例5は、低下したFZG性能、低下した酸化性能、及び/又は低下した導電性能を有した。
【0099】
本開示の潤滑組成物は、その詳細な説明及び本明細書における要約と共に記載されているが、前述の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本開示の範囲を説明することが意図され、これを限定するものではないと理解するべきである。他の態様、利点、及び修正は、特許請求の範囲内にある。本明細書及び実施例は、例示のみとして考えられ、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0100】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮及び本明細書に開示される実施形態の実施から当業者に明らかとなるであろう。明細書及び特許請求の範囲を通して使用される場合、「a」及び/又は「an」は、1つ又は1つより多くを指し得る。他に指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、分子量、パーセント、比、反応条件などのような特性を表す全ての数字は、「約」という用語が存在するか否かにかかわらず、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差を本質的に含有する。
【0101】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ又は複数との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0102】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。このため、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値の、並びに1~4、1~3、1~2、2~4、2~3などのような値のいずれかの範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0103】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。
【0104】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。