(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005426
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ロータリーバルブ、ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20250108BHJP
F16K 11/085 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F16K5/04 A
F16K11/085 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102061
(22)【出願日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2023104949
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000143307
【氏名又は名称】株式会社荒井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 敦大
(72)【発明者】
【氏名】大坂 翼
【テーマコード(参考)】
3H054
3H067
【Fターム(参考)】
3H054AA02
3H054BB01
3H054BB16
3H054CA03
3H054CA33
3H054CA36
3H067AA23
3H067CC02
3H067CC32
3H067DD03
3H067EA02
3H067EA33
3H067EA38
3H067EC13
3H067GG01
3H067GG21
(57)【要約】
【課題】部品点数の軽減を図り、組立作業者及び部品管理者の労力を軽減すると共にコスト低廉化を図り、かつ密封性能を向上することの可能なロータリーバルブを提供する。
【解決手段】複数の第一流路11を有するハウジング1と、ハウジング1に回転可能に支持され、ハウジング1の複数の第一流路11と選択的に連通する第二流路17を有する弁体13と、ハウジング1と弁体13との間に配置され、第一流路11と第二流路17との間を密封する密封部材19と、を含み、密封部材19は、無端帯状に形成されると共に、それぞれの第一流路11に対応する通孔21を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一流路を有するハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に支持され、前記ハウジングの複数の第一流路と選択的に連通する第二流路を有する弁体と、
前記ハウジングと前記弁体との間に配置され、前記第一流路と前記第二流路との間を密封する密封部材と、を含み、
前記密封部材は、無端帯状に形成されると共に、前記それぞれの第一流路に対応する通孔を有することを特徴とするロータリーバルブ。
【請求項2】
前記密封部材は、前記ハウジングの内面に対し、前記弁体の回転動作に供回りしないように備えられていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーバルブ。
【請求項3】
前記密封部材は、前記弁体と摺接する内周面側に滑性薄膜が被着されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーバルブ。
【請求項4】
円筒状に成形された滑性薄膜を管状治具内にセットする工程と、
前記管状治具と前記滑性薄膜との間を真空引きすることで前記滑性薄膜を拡径する工程と、
前記管状治具内にて拡径されている状態の前記滑性薄膜内に中型をセットし、その後、真空引きを解除して前記滑性薄膜を縮径させて前記中型外周に密着させる工程と、
前記管状治具内から滑性薄膜が密着された状態の中型を取り出し、滑性薄膜の外周に未加硫ゴムを配する工程と、
前記滑性薄膜の外周に未加硫ゴムを配した状態の中型を金型に配置し、圧縮成型して滑性薄膜層とゴム層からなる環状部材を成型する工程と、
前記圧縮成型後、離型した管状部材を所定幅毎にカットして無端帯状の密封部材を成形する工程と、
前記無端帯状の密封部材における所定箇所に内面と外面とに連通する通孔を設ける工程と、
を含むことを特徴とするロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリーバルブに関し、さらに詳しくは、流体や粉体などの流路が切り換え可能に構成されているロータリーバルブ、及びロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車や産業機械などにおいてロータリーバルブが使用されている。
従来のロータリーバルブとして、例えば、複数の第一流路(固定流路)を有するハウジングと、ハウジングに回転可能に支持され、ハウジングの複数の第一流路と選択的に連通する第二流路(可動流路)を有する弁体と、ハウジングと弁体との間に配置され、第一流路と第二流路との間を密封する密封部材と、を含んで構成され、弁体の回転操作により、ハウジングの任意の第一流路と弁体の第二流路とを連通させて流路の切り換え調整を選択的に図るものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に例示する従来のロータリーバルブにおいては、ハウジングに形成されているそれぞれの第一流路に対応し、独立したシール部材(密封部材)をそれぞれ個別に取り付け固定していた。
【0004】
しかし、従来のロータリーバルブのように、それぞれ独立したシール部材をそれぞれの第一流路に対応して個別に取り付け固定する形態では、部品点数が多く取付工程も増えることから、作業労力が掛かると共に作業時間も増大していた。
また、部品点数が多い分、その保管管理作業も煩雑となる。
このようなことから組立作業者及び部品管理者の労力が増えると共に煩雑となり、結果的にコスト高騰化を招くことになる。
さらに、独立したシール部材をそれぞれの第一流路に個別に取り付ける技術的手段の場合、弁体の回転操作による流路切り換え頻度が高くなると、シール部材が剥離する虞もあり、密封性能を損ねてしまう虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の有する上記不具合を解消するためになされたものであり、その課題とするところは、部品点数の軽減を図り、組立作業者及び部品管理者の労力を軽減すると共にコスト低廉化を図り、かつ密封性能を向上することの可能なロータリーバルブ及びロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、第一の本発明は、複数の第一流路を有するハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に支持され、前記ハウジングの複数の第一流路と選択的に連通する第二流路を有する弁体と、
前記ハウジングと前記弁体との間に配置され、前記第一流路と前記第二流路との間を密封する密封部材と、を含み、
前記密封部材は、無端帯状に形成されると共に、前記それぞれの第一流路に対応する通孔を有することを特徴とするロータリーバルブとしたことである。
【0008】
第二の本発明は、第一の本発明において、前記密封部材は、前記ハウジングの内面に対し、前記弁体の回転動作に供回りしないように備えられていることを特徴とするロータリーバルブとしたことである。
【0009】
第三の本発明は、第一の本発明において、前記密封部材は、前記弁体と摺接する内周面側に滑性薄膜が被着されていることを特徴とするロータリーバルブとしたことである。
【0010】
第四の本発明は、円筒状に成形された滑性薄膜を管状治具内にセットする工程と、
前記管状治具と前記滑性薄膜との間を真空引きすることで前記滑性薄膜を拡径する工程と、
前記管状治具内にて拡径されている状態の前記滑性薄膜内に中型をセットし、その後、真空引きを解除して前記滑性薄膜を縮径させて前記中型外周に密着させる工程と、
前記管状治具内から滑性薄膜が密着された状態の中型を取り出し、滑性薄膜の外周に未加硫ゴムを配する工程と、
前記滑性薄膜の外周に未加硫ゴムを配した状態の中型を金型に配置し、圧縮成型して滑性薄膜層とゴム層からなる管状部材を成型する工程と、
前記圧縮成型後、離型した管状部材を所定幅毎にカットして無端帯状の密封部材を成形する工程と、
前記無端帯状の密封部材における所定箇所に、内面と外面とに連通する通孔を設ける工程と、を含むことを特徴とするロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法としたことである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品点数の軽減を図り、組立作業者及び部品管理者の労力を軽減すると共にコスト低廉化を図り、かつ密封性能を向上することの可能なロータリーバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明ロータリーバルブの一実施形態を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す本実施形態のロータリーバルブの概略分解斜視図である。
【
図7】本実施形態のロータリーバルブを構成する密封部材の一実施形態を示す部分拡大概略断面図である。
【
図8】ハウジングと密封部材との係合状態を示す部分拡大概略断面図である。
【
図9A】弁体の回転動作時におけるハウジングの第一流路と弁体の第二流路との関係を示す概略断面図である。
【
図9B】弁体の回転動作時におけるハウジングの第一流路と弁体の第二流路との関係を示す概略断面図で、
図9Aの流路選択状態から時計回り方向に弁体を60度回転制御した状態である。
【
図9C】弁体の回転動作時におけるハウジングの第一流路と弁体の第二流路との関係を示す概略断面図で、
図9Bの流路選択状態から時計回り方向に弁体を60度回転制御した状態である。
【
図10A】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、滑性薄膜を管状治具内にセットする工程の概略断面図である。
【
図10B】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、管状治具と滑性薄膜との間を真空引きして滑性薄膜を拡径する工程の概略断面図である。
【
図10C】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、管状治具と滑性薄膜との間を真空引きしている状態において、滑性薄膜内に中型を挿入した工程の概略一部断面図である。
【
図10D】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、真空引きを解除し、滑性薄膜を縮径して中型外周に密着させる工程の概略一部断面図である。
【
図10E】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、管状治具から取り出し、外周に滑性薄膜を密着させた中型の概略一部断面図である。
【
図10F】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、滑性薄膜の外周に未加硫ゴムを配する工程の概略一部断面図である。
【
図10G】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、滑性薄膜の外周に未加硫ゴムを配した状態の中型を金型に配置し、圧縮成型して滑性薄膜層とゴム層からなる管状部材を成型する工程の概略一部断面図である。
【
図10H】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、圧縮成型された滑性薄膜層とゴム層からなる管状部材から中型を取り外す工程の概略断面図である。
【
図10I】本発明ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法の一実施形態であって、圧縮成型後、離型した管状部材をカットして密封部材を成形する工程の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明ロータリーバルブの一実施形態に過ぎず、これに何ら限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
【0014】
本実施形態では、本発明ロータリーバルブの一実施形態について説明する。
本実施形態のロータリーバルブは、ハウジング1と、ハウジング1内にて回転可能に支持されている弁体13と、ハウジング1と弁体13との間にて、流体の漏れを阻止する密封部材19とで構成されている(
図2参照)。
【0015】
ハウジング1は、例えば立方体に形成されると共に、図面において、鉛直方向Vで頂面3から底面5にわたり円筒状に弁体収容部7を凹設している(
図1~
図4参照)。
本実施形態においてハウジング1は、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)やPOM(ポリオキシメチレン)などの合成樹脂から形成することを想定している。
なお、ハウジング1の外観形態及び材質は本実施形態に限定解釈されず本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
【0016】
本実施形態では、ハウジング1を構成している4つの側面9のうち、相対向する2つの側面9aと側面9bとには、それぞれ相対向して第一流路11a(11)と11b(11)及び、第一流路11c(11)と11d(11)とが穿設されている。また、他の相対向する2つの側面9cと側面9dとには、相対向して第一流路11eと第一流路11fとが穿設されている。それぞれの第一流路11a~11fは、側面9a~9dの外周面91と内周面92とにわたり、同一径の短尺円筒状に貫通形成されている。なお、第一流路11を固定流路とも称する。
【0017】
弁体13は、ハウジング1に回転可能に支持され、ハウジング1の複数の第一流路11a~11fと選択的に連通する二本の第二流路17a(17),17b(17)を有している。なお、第二流路17を可動流路とも称する。
本実施形態における弁体13は、ハウジング1の弁体収容部7内に収容され、弁体収容部7の内面に沿う外径とした円柱状に形成されている。
また、本実施形態において弁体13は、例えば、ハウジング1と同じく、PPS(ポリフェニレンスルファイド)やPOM(ポリオキシメチレン)などの合成樹脂から形成することを想定している。
第二流路17a,17bは、
図3において鉛直方向Vに直交する水平方向Hで相対向する外周面15にわたって貫通し、所定の間隔をあけて平行に穿設されている(
図3、
図4及び
図9参照)。
また、弁体13は、例えば軸14の一端側14aが、図示しない駆動源と連携して回転制御可能に構成されている。
軸14は、弁体13と一体に形成され、他端側14bがハウジング1の底面5にて回転可能に軸支されている。
【0018】
図9は、第一流路11a~11fと第二流路17a,17bとを選択的に連通させる流路選択切り換え状態を示す概略説明図である。
図9Aは、弁体13の第二流路17aを、ハウジング1の第一流路11aと11bとにわたって連通し、第二流路17bを、ハウジング1の第一流路11cと11dとにわたって連通して流路を構成している状態を示す。
図9Bは、
図9Aの流路選択状態から時計回り方向(図面にて右回り方向)に弁体13を60度回転制御した状態で、弁体13の第二流路17aを、ハウジング1の第一流路11dと11eとにわたって連通し、第二流路17bを、ハウジング1の第一流路11aと11fとにわたって連通して流路を構成している状態を示す。
図9Cは、
図9Bの流路選択状態から時計回り方向(図面にて右回り方向)に弁体13を60度回転制御した状態で、弁体13の第二流路17aを、ハウジング1の第一流路11bと11fとにわたって連通し、第二流路17bを、ハウジング1の第一流路11cと11eとにわたって連通して流路を構成している状態を示す。
【0019】
密封部材19は、前記ハウジング1と前記弁体13との間に配置され、前記第一流路11と前記第二流路17との間を密封するシール部材である。密封部材19は、シール性を有するものであればその材質はゴム材・樹脂材等特に限定解釈されず、適宜流通する流体(液体・気体)や粉体(粒体を含む)などにより適宜最良のものを選択使用可能である。
本実施形態において密封部材19は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)やNBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)やH-NBR(水素ニトリルゴム)などの合成ゴムから形成されていることを想定している。
また、密封部材19の厚みは、例えば、2mm~6mmを想定している。
【0020】
密封部材19は、例えば、ハウジング1の弁体収容部7の内周面全域に沿う(覆う)大きさで、全体形状を薄肉の無端帯状(円筒状)に形成すると共に、ハウジング1に形成されているそれぞれの第一流路11に対応する複数の通孔21を有する。
通孔21は、外方(密封部材の外周面側)から内方(密封部材の内周面側)に向けて凹状に形成されている(
図3、
図4及び
図6参照)。
そして、密封部材19は、ハウジング1の内面に対し、弁体13の回転動作に供回りしないように装着されている。
【0021】
密封部材19における通孔21の周囲には通孔21を囲むように環状の突起(シールリップ)23が突出形成されている。
突起23は、密封部材19の内周面側と外周面側にそれぞれ形成されており、この内外周面に突設した環状の突起23により確実な密封を図り、流体の漏れを阻止するものとしている。
【0022】
本実施形態において、内周面側の突起(弁体13と接する側の突起)23aは、通孔21の外側で1環突設されており、外周面側の突起(ハウジング1と接する側の突起)23bは、通孔21の外側で同心円状に大径小径2環突設されている。
このように外周面側に2環の突起23b,23b、内周面側に1環の突起23aとした理由は、外周面側はハウジング1と密着し密封度を高めるため2環とするが、内周面側は弁体13と摺接するため、密封性を確保しつつ回転抵抗を低減するため1環としている。
【0023】
また、本実施形態において、内周面側の突起23aは、外周面側の大径小径2環の突起23b,23bの間に位置するように構成されている(
図7参照)。
このように構成したことにより応力分散により適度な密着圧で密封することができる。
【0024】
なお、突起23a,23bの本数は本実施形態に限定解釈されるものではなく適宜設計変更可能である。
さらに、突起23a,23bの突出形状は図示形状に限定解釈されるものではなく、適宜設計変更可能である。本実施形態では、断面視で略正三角形状に突出成形しているが、例えば、それぞれの突起23a,23bのリップ先端が内方(通孔21の方向)に向けて傾斜するように形成することも可能である。このようにリップ先端を内方に向けて傾斜状に形成することにより、流体等の外方への漏洩防止を向上させることができる。
また、2環とした突起23b,23bの外側の突起23b(大径の突起23b)を外方に向けて傾斜するように形成することも可能である。このように形成することで、内側の突起23b(小径の突起23b)が流体等の漏洩防止を図りつつ、外側の突起23b(大径の突起23b)で外方からのダスト侵入防止を図ることができる。
【0025】
密封部材19は、弁体13と摺接する内周面側の全域にわたり、滑性薄膜25が被着されている。滑性薄膜25を設けた理由は、摩擦抵抗を減らし、弁体13の回転抵抗を低減するためである(
図7参照)。
本実施形態において滑性薄膜25は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂にて薄膜円筒状に形成されている。
また、密封部材19の内周面への被着方法は、例えば、別途薄肉円筒状に成形した滑性薄膜25を、金型内に配置した状態で、密封部材19を成形する合成ゴム材を注入して密封部材19と滑性薄膜25を加硫接着させる工法を想定している。なお、滑性薄膜25を別途成形し、密封部材19の内周面へ接着することも可能で本発明の範囲内である。
滑性薄膜25の被着厚みは、例えば0.1mm~0.3mmを想定している。滑性薄膜25の厚みは特に限定解釈されるものではないが、密封部材19と比して、密封部材:滑性薄膜=20:1の厚み比とするのが好ましい。
【0026】
密封部材19のハウジング1に対する固定方法として、例えば、本実施形態では次の構成を採用している(
図1、
図2及び
図8参照)。
密封部材19は、外周面の相対向する位置に、外周面の高さ方向全域にわたって所定幅で突出する平面視矩形状(角柱状)の突条27,27を設けている。
他方、ハウジング1は、その相対向する2つの側面における内周面において、内周面の高さ方向全域、すなわち頂面3から底面5にわたり突き抜ける角溝29,29を凹設している。この角溝29は密封部材19の突条27が係合する形状に形成されている。
【0027】
このように構成することにより、密封部材19がハウジング1に対し固定状態で係合されるため、密封部材19における弁体13の回転動作との供回りを阻止している。
また、突条27と角溝29との関係により、ハウジング1への密封部材19の組込時において、密封部材19を確実に所定位置に組み込むことができる。さらに、本実施形態では、角溝29は、ハウジング1の頂面3を突き抜けて形成されているため、密封部材19の取付け時において突条27の案内が容易となり、密封部材19の位置決めが容易かつ確実に行える。
【0028】
供回りを抑制する構造は本実施形態の構造に限定解釈されるものではなく任意に設計変更可能である。
例えば、本実施形態では、ハウジング1に凹設した溝を角溝29とし、密封部材19に突設した突条27形状を角柱状に突設しているが、角溝を、内周面側に開口する側を狭く形成したアリ溝とし、突条をそのアリ溝に嵌合する形状とすることも可能で、このように構成することにより、さらなる供回りの阻止効果が向上する。
【0029】
なお、密封部材は、ハウジングの円筒状内面に対して接着等により固定する形態であってもよく本発明の範囲内である。
【0030】
本実施形態によれば、ハウジング1と弁体13との間の密封を図るために配設する密封部材19を、ハウジング1の各第一流路11(11a~11f)に適合する複数の通孔21を設けた円筒状の一体物としたため、部品点数の軽減を図ることができた。また、組立作業者及び部品管理者の労力も軽減でき、作業時間の短縮などともなり、結果的にコスト低廉化を図ることができた。
【0031】
ハウジング1に設けられる第一流路11と弁体13に設けられる第二流路17は、本実施形態に限定解釈されるものではなく、その流路形態・流路本数・流路選択形態などは仕様に応じて適宜設計変更可能である。
「密封部材の製造方法」
【0032】
図10A乃至
図10Iは、ロータリーバルブに用いられる密封部材の製造方法に関する工程の実施の一形態を示す概略断面図である。
上述した実施の形態では、薄肉円筒状に成形した滑性薄膜25を、金型内に配置した状態で、密封部材19を成形する合成ゴム材を注入して合成ゴム材と滑性薄膜25を加硫接着させる工法を一例として説明したが、より効率的に密封部材19を製造するための工法として、以下のような製造方法が提案される。なお、本実施形態で示す工程は本発明製造方法の一実施の形態であって何等これに限定解釈されるものではない。
【0033】
本実施形態における密封部材の製造工程は次の通り、第一工程~第七工程によって構成されている。
(1)管状治具31内に滑性薄膜25をセットする工程(第一工程
図10A)
↓
(2)真空引きにより滑性薄膜25を拡径する工程(第二工程
図10B)
↓
(3)中型外周に滑性薄膜25を密着させる工程(第三工程
図10C及び
図10D)
↓
(4)滑性薄膜25の外周に未加硫ゴムを配する工程(第四工程
図10E及び
図10F)
↓
(5)圧縮成型する工程(第五工程
図10G)
↓
(6)カットして密封部材を成形する工程(第六工程
図10H及び
図10I)
↓
(7)カットした密封部材の所定位置に通孔を設ける工程(第七工程 図示省略)
【0034】
「第一工程(滑性薄膜25をセットする工程)」
図10Aは本発明製造方法の第一工程を示す。
まず、円筒状に成形された滑性薄膜25を、管状治具31内にセット(挿入)する。滑性薄膜25は、押出成形により薄肉の円筒状に成形されたものである。ここで滑性薄膜25は、管状治具31の内周面との間に、空間S1が形成されるように管状治具31の内径よりも小径の円筒状に成形される。
また、滑性薄膜25は、管状治具31の治具本体32の筒長さと同一の長さをもって成形されている。
滑性薄膜25は、第一実施形態で説明した通り、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)などのフッ素樹脂を想定している。ここで、環状薄膜25の厚さは上述した実施形態の通りである。
なお、滑性薄膜25の外周面には予め、後述する成型工程においてゴムと接着するための接着剤を塗布し、乾燥させておく。
【0035】
管状治具31は、所望内径・所望長さをもって左右両端開放の円管状に形成された治具本体32と、治具本体32の左右両端の開放領域に配設される第一蓋部35及び第二蓋部37と、を含んで構成されている(
図10A乃至
図10D参照。)。
治具本体32には、治具本体32の内部と連通する真空引き管33が所望位置に配設され、真空引き管33は、図示しない真空引き装置と接続されている。
【0036】
「第二工程(滑性薄膜を拡径する工程)」
図10Bは本発明製造方法の第二工程を示す。
第一工程後、管状治具31の左右両端開放領域に、それぞれ第一蓋部35及び第二蓋部37を取り付けて、管状治具31と滑性薄膜25との間の空間S1を緊密状態に密閉する。
【0037】
そして、図示しない真空引き装置により、真空引き管33を介して管状治具31と滑性薄膜25との間の空間S1を真空引きする(
図10B参照。)。
このように、空間S1を真空引きをすることにより、滑性薄膜25が管状治具31の内周面方向に拡径され、管状治具31と滑性薄膜25との間の空間S1がなくなる。
【0038】
第一蓋部35は、
図10Cに示すように、治具本体32の一方の開放領域(
図10Aで向かって左側の領域)を密閉すべく配設される短尺円板状に形成されている。
図10Cにて符号35aは、中型39の小径軸部39aを緊密に差し込み保持可能な位置決め孔部である。第一蓋部35と治具本体32の端部との間、および中型39の小径軸部39aと第一蓋部35の位置決め孔部35aとの間はシールされて密閉されている。
【0039】
第二蓋部37は、
図10Bに示すように、治具本体32の他方の開放領域(
図10Aで向かって右側の領域)を密閉すべく配設される短尺円板状に形成されている。第二蓋部37には、
図10Bに示すように、大径の開口領域37aを備えている。この大径の開口領域37aは、中型39を治具本体32内にて拡径されている滑性薄膜25の内部空間に差し込み可能な開口径としている。第二蓋部37と治具本体32の端部との間はシールされて密閉されている。
中型39は、円筒状の滑性薄膜25の内径と略同径あるいは僅かに大径の円柱状に形成されている。
【0040】
第一蓋部35及び第二蓋部37のいずれもが、
図10Aにて符号S1で示す空間(管状治具31の治具本体32の内周面と滑性薄膜25の外周面との間で形成される空間)を密閉できる構成を有していればよく本発明の範囲内で設計変更可能である。
第一の蓋部35と第二の蓋部37をそれぞれ閉蓋した際には、第一の蓋部35の内面35b側及び第二の蓋部37の内面37b側が、それぞれ滑性薄膜25の左右両端面と密着するため、空間S1は、滑性薄膜25の左右両端面と第一蓋部35の内面35a及び第二蓋部37の内面37aとによって密閉される。
【0041】
「第三工程(滑性薄膜を縮径する工程)」
図10C及び
図10Dは、本発明製造方法の第三工程を示す。
次に、管状治具31内で真空引きして拡径されている状態の滑性薄膜25内に中型39を挿入する(
図10C参照。)。このとき、中型39の外周面と滑性薄膜25の内周面との間には、空間S2が形成されている。このように、滑性薄膜25が拡径されて中型39との間に空間S2が形成されているため、中型39は容易に滑性薄膜25の内部空間に挿入可能となる。
本実施形態によれば、
図10Bに示すように、第二蓋部37の開口領域37aから中型39を滑性薄膜25の内部空間に挿入することが可能であるため作業容易である。
【0042】
そして、その後、真空引き状態を解除する。
真空引き状態を解除すると、真空引きにより拡径されていた滑性薄膜25は元の径に復元するように縮径し、中型39の外周に密着される。
これにより、空間S2がなくなり、縮径された滑性薄膜25の外周面と管状治具31との間に空間S3が形成される(
図10D参照。)。
【0043】
「第四工程(滑性薄膜の外周に未加硫ゴムを配設する工程)」
図10E及び
図10Fは、本発明製造方法の第四工程を示す。
第三工程の終了後、第二蓋部37の開口領域37aを介して、管状治具31内から滑性薄膜25が密着された状態の中型39を取り出す(
図10E参照。)。この取り出しは、中型39の小径軸部39bを持って管状治具31から引き出すようにして行われる。
そして、次に、滑性薄膜25の外周全域にわたり、未加硫のゴム(合成ゴム)20を巻き付けるようにして配設する。ゴム材20の巻き付け量(巻き付け厚み)は、圧縮工程後に成形されるゴム20と滑性薄膜25との積層厚み(密封部材19の完成品厚み)を想定して決定され、本発明の範囲内で任意であり、例えば、本実施形態では、上述の実施形態にて説明したゴム20(密封部材19)の厚みと同程度を想定している。
ここで未加硫のゴム20は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)やNBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)やH-NBR(水素ニトリルゴム)などの合成ゴムを想定している。
【0044】
「第五工程(圧縮成形して管状部材を成形する工程)」
図10Gは、本発明製造方法の第五工程を示す。
第四工程の終了後、滑性薄膜25の外周に未加硫ゴム20を配した状態の中型39を金型41のキャビティ内に配置して、図示しない圧縮成型機を介して圧縮成型(コンプレッション成形)し、滑性薄膜25と、滑性薄膜25の外側に一体に設けられるゴム20とで構成された管状部材43を成型する。
この場合、金型41はゴムの加硫温度まで加熱され、これによって未加硫ゴムが加硫(架橋)されて所望の弾性を有するゴム20となると共に、滑性薄膜25とゴム20とが加硫接着される。さらに、滑性薄膜25の外周面に予め塗布された接着剤により、滑性薄膜25とゴム20とが確実に接着される。
ここで、ゴム20からなる外側層の厚さは上述した実施形態の通りである。圧縮成型の諸条件は、本発明の範囲内において任意であり、かつ適宜設計変更可能である。
【0045】
「第六工程(管状部材をカットして密封部材を成形する工程)」
図10H及び
図10Iは、本発明製造方法の第六工程を示す。
第五工程にて圧縮成型した後、滑性薄膜25とゴム20にて多層状に成形された管状部材43を、中型39と共に金型41から離型する(取り出す)。
そして、さらに、中型39を管状部材43内から引き抜く。
次に、管状部材43を所定幅毎にカットして無端帯状の密封部材19を複数個成形する。本実施形態では、5個取りを想定している。
【0046】
「第七工程(カットした密封部材に通孔を設ける工程) 図示は省略」
第六工程により、無端帯状に形成(カット)された密封部材19における所定箇所に、内面と外面とに連通する通孔(上述した実施形態における通孔21)を打ち抜きにより設ける(
図2乃至
図6参照。)。
本実施形態における通孔21は、打ち抜きにより設ける一形態を説明したが、通孔21は他の方法により設けられるものであってもよく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0047】
なお、本実施形態において製造工程を示す
図10A~Iは概略説明図であって、実際は中型39の外周面には、滑性薄膜25の内周面側の突起23aを成形する凹部が形成され、また金型41のキャビティの内周面には、滑性薄膜25の外周面側の突起23bを成形する凹部が形成されるものであるが、本実施形態では何れも図示は省略している。
【0048】
以上に説明した本発明の製造方法によれば、ロータリーバルブに用いられる密封部材を簡単かつ効率的に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ロータリーバルブ全般に有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ハウジング
3 頂面
5 底面
7 弁体収容部
9(9a~9d) 側面
11(11a~11f) 第一流路
13 弁体
15 外周面
17(17a,17b) 第二流路
19 密封部材
20 未加硫のゴム(ゴム材)
21 通孔
23(23a,23b) 突起
25 滑性薄膜
27 突条
29 角溝
31 管状治具
39 中型
41 金型
43 管状部材