(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025054615
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】運搬車両
(51)【国際特許分類】
B60K 13/04 20060101AFI20250331BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
B60K13/04 Z
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163744
(22)【出願日】2023-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩城 毅
【テーマコード(参考)】
3D038
3G091
【Fターム(参考)】
3D038BA09
3D038BB09
3D038BC03
3D038BC17
3G091AA05
3G091CA17
(57)【要約】
【課題】還元剤タンクを搭載した運搬車両において、左右の重量バランスを良好に保つ。
【解決手段】車体と、エンジンと、燃料タンクと、作動油タンクと、を備えた運搬車両において、排気ガス浄化装置(35)と、還元剤を貯留する第1還元剤タンク(25L)及び第2還元剤タンク(25R)と、コントローラ(13)と、を有し、作動油タンク及び第1還元剤タンクは、車体の左右の一方側に設けられ、燃料タンク及び第2還元剤タンクは、車体の左右の他方側に設けられ、コントローラは、センサ(23,26,27)によって検出された作動油タンク内の作動油の貯留量、1還元剤タンク内の還元剤の貯留量、燃料タンク内の燃料の貯留量、及び第2還元剤タンク内の還元剤の貯留量に基づいて、第1還元剤タンクに貯留されている還元剤及び第2還元剤タンクに貯留されている還元剤のいずれかを排気ガス浄化装置に供給する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体を走行駆動するエンジンと、前記エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンクと、前記車体に設けられる被駆動体と、前記被駆動体を駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給される作動油を貯留する作動油タンクと、を備えた運搬車両において、
前記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、
前記排気ガス浄化装置に供給する還元剤を貯留する第1還元剤タンク及び第2還元剤タンクと、
前記燃料タンク内の燃料の貯留量、前記作動油タンク内の作動油の貯留量、前記第1還元剤タンク内の還元剤の貯留量、及び前記第2還元剤タンク内の還元剤の貯留量をそれぞれ検出するセンサと、
前記排気ガス浄化装置を制御するコントローラと、を有し、
前記作動油タンク及び前記第1還元剤タンクは、前記車体の左右の一方側に設けられ、
前記燃料タンク及び前記第2還元剤タンクは、前記車体の左右の他方側に設けられ、
前記コントローラは、
前記センサによって検出された前記作動油タンク内の作動油の貯留量、前記第1還元剤タンク内の還元剤の貯留量、前記燃料タンク内の燃料の貯留量、及び前記第2還元剤タンク内の還元剤の貯留量に基づいて、前記第1還元剤タンクに貯留されている還元剤及び前記第2還元剤タンクに貯留されている還元剤のいずれかを前記排気ガス浄化装置に供給する、
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記第2還元剤タンクは、前記還元剤を補給するための第2補給口を有し、
前記第1還元剤タンクは、前記第2補給口の近傍に設けられ、前記還元剤を補給するための第1補給口と、前記第1還元剤タンクと前記第1補給口とを接続する補給管路と、を有する、
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項3】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記第1還元剤タンクと前記第2還元剤タンクとを連通する連通管路と、
前記連通管路に設けられる電磁弁と、を備え、
前記コントローラは、
前記排気ガス浄化装置の運転中は、前記電磁弁を閉じ、
前記排気ガス浄化装置の停止中は、前記電磁弁を開けるよう制御する、
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項4】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記第1還元剤タンクと前記第2還元剤タンクとを連通する連通管路と、
前記連通管路に設けられるチェック弁と、を有し、
前記チェック弁は、前記還元剤の前記第2還元剤タンクから前記第1還元剤タンク側への流れを許容する一方、前記還元剤の前記第1還元剤タンクから前記第2還元剤タンク側への流れを阻止する、
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項5】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記コントローラは、
前記作動油タンクと前記第1還元剤タンクの現在の重量の合計である第1合計値と、前記燃料タンクと前記第2還元剤タンクの現在の重量の合計である第2合計値とを比較し、
前記第1合計値と前記第2合計値との差分が予め定められた範囲内にある場合、
前記第1還元剤タンク及び前記第2還元剤タンクのそれぞれから前記還元剤を前記排気ガス浄化装置に供給する、
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項6】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記燃料タンクの重量が前記作動油タンクの重量より重い場合に、前記第1還元剤タンクの容積を前記第2還元剤タンクの容積より大きくし、
前記作動油タンクの重量が前記燃料タンクの重量より重い場合に、前記第2還元剤タンクの容積を前記第1還元剤タンクの容積より大きくする、
ことを特徴とする運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車両に関し、特に大型の鉱山用ダンプトラックに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、例えば特許文献1には、「メインフレームの左右の一方に作動油タンクを取り付け、他方に主燃料タンクを取り付け、主燃料タンクよりも小さな容積の補助燃料タンクを作動油タンクの上面に配置し、補助燃料タンクと主燃料タンクとを連通管で連結し、主燃料タンク及び補助燃料タンクのそれぞれに空気を出し入れするブリーザベントと、主燃料タンクに燃料の吸出し口を形成するサクションパイプを備え、さらに、主燃料タンクの上面と補助燃料タンクの上面とが略同じ高さ位置となるように、これらの主燃料タンクと補助燃料タンクとを配置したダンプトラック」が開示されている(要約参照)。
【0003】
この従来技術によれば、多量の燃料を確保できるとともに、燃料が消費された際にも車体の左右の重量のバランスを良好に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ダンプトラック等の運搬車両のエンジンにはディーゼルエンジンが用いられている。ディーゼルエンジンの排気ガスは、窒素酸化物(以下、NOxという)等を多く含むため、NOxを浄化するためのNOx浄化装置(排気ガス浄化装置)を設ける場合がある。NOx浄化装置は、例えばエンジンの排気管に設けられ排気ガス中のNOxを除去する尿素選択還元触媒等から構成されている。また、NOx浄化装置に付随して還元剤タンクが設けられ、該還元剤タンク内には、還元剤としての尿素水(尿素水溶液)が貯えられている。
【0006】
例えば、鉱山等の作業現場では、尿素水を給水するための設備が整っていないことが多い。そのため、還元剤タンクには、尿素水の給水回数を少なくできるように容量の拡大が望まれる。しかしながら、還元剤タンクを大型化すれば、その分、還元剤タンクが搭載された車両の左右の重量バランスが崩れるといった課題がある。
【0007】
なお、特許文献1には、左右の重量バランスを保つための燃料タンクの構成について言及しているが、還元剤タンクについて何ら言及されていない。
【0008】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたもので、その目的は、還元剤タンクを搭載した運搬車両において、左右の重量バランスを良好に保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、車体と、前記車体を走行駆動するエンジンと、前記エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンクと、前記車体に設けられる被駆動体と、前記被駆動体を駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給される作動油を貯留する作動油タンクと、を備えた運搬車両において、前記エンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置と、前記排気ガス浄化装置に供給する還元剤を貯留する第1還元剤タンク及び第2還元剤タンクと、前記燃料タンク内の燃料の貯留量、前記作動油タンク内の作動油の貯留量、前記第1還元剤タンク内の還元剤の貯留量、及び前記第2還元剤タンク内の還元剤の貯留量をそれぞれ検出するセンサと、前記排気ガス浄化装置を制御するコントローラと、を有し、前記作動油タンク及び前記第1還元剤タンクは、前記車体の左右の一方側に設けられ、前記燃料タンク及び前記第2還元剤タンクは、前記車体の左右の他方側に設けられ、前記コントローラは、前記センサによって検出された前記作動油タンク内の作動油の貯留量、前記第1還元剤タンク内の還元剤の貯留量、前記燃料タンク内の燃料の貯留量、及び前記第2還元剤タンク内の還元剤の貯留量に基づいて、前記第1還元剤タンクに貯留されている還元剤及び前記第2還元剤タンクに貯留されている還元剤のいずれかを前記排気ガス浄化装置に供給する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、還元剤タンクを搭載した運搬車両において、左右の重量バランスを良好に保つことができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るダンプトラックの車体要部の上面図である。
【
図2】第1実施形態に係るダンプトラックを上方から見た俯瞰図である。
【
図3】第1実施形態に係るダンプトラックの車体要部を上方から見た俯瞰図である。
【
図4】第1実施形態に係るダンプトラックの尿素水タンクの構造を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る尿素水供給システムの構成図である。
【
図6】第1実施形態に係る尿素水供給切り替え制御のフローチャートである。
【
図7】車体重量差の変化を第1実施形態と従来技術とで比較したグラフである。
【
図8】第2実施形態に係る尿素水供給システムの構成図である。
【
図9】第2実施形態に係る尿素水供給切り替え制御のフローチャートである。
【
図10】変形例1に係る尿素水タンクの構造を示す模式図である。
【
図11】変形例2に係る尿素水タンクの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る運搬車両の実施形態について、ダンプトラックを例に挙げて説明する。なお、以下に示すダンプトラックは、鉱山等の作業現場において用いられる、大型の電気駆動ダンプトラックであるが、本発明は、鉱山用の大型ダンプトラックに限定されるものではない。また、本発明は、ダンプトラック以外の運搬車両、例えばホイールローダ等に適用することもできる。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係るダンプトラックの車体要部の上面図、
図2は、第1実施形態に係るダンプトラックを上方から見た俯瞰図、
図3は、第1実施形態に係るダンプトラックの車体要部を上方から見た俯瞰図である。なお、説明の便宜上、
図1及び
図3において、ダンプトラックの荷台31の図示は省略している。
【0014】
図1~
図3に示すように、ダンプトラック100は、車体フレーム(車体)30と、車体フレーム30に設けられた前輪5L,5R及び後輪3L,3Rと、車体フレーム30を走行駆動するエンジン1と、エンジン1に供給される燃料を貯留する燃料タンク20と、車体フレーム30に設けられる荷台(被駆動体)31と、荷台31を駆動する一対のホイストシリンダ(油圧アクチュエータ)32と、一対のホイストシリンダ32に供給される作動油を貯留する作動油タンク19と、を備えている。
【0015】
図1に示すように、エンジン1は車体フレーム30に設けられる。エンジン1は、発電機2と機械的に接続されている。また、エンジン1は、ポンプユニット7と機械的に接続されている。エンジン1が駆動することで、ポンプユニット7が作動油タンク19に貯留された作動油を吸入して、一対のホイストシリンダ32に向けて吐出する(供給する)。後輪3L,3Rは、走行モータ4L,4Rと機械的に接続されており、発電機2にて発電した電力により駆動する。つまり、ダンプトラック100は、エンジン1が駆動することで発電機2が発電し、その電力により走行モータ4L,4Rが回転駆動することで、走行する。また、作動油タンク19の側部には第1尿素水タンク(第1還元剤タンク)25Lが、燃料タンク20の側部には第2尿素水タンク(第2還元剤タンク)25Rが、それぞれ設けられている。即ち、本実施形態では、作動油タンク19と第1尿素水タンク25Lとが車体フレーム30の左側に設けられ、燃料タンク20と第2尿素水タンク25Rとが車体フレーム30の右側に設けられている。
【0016】
ここで、第1尿素水タンク25Lの第1補給口25L1は、補給管路25L2を介して第2尿素水タンク25Rの近傍に設けられている(
図3参照)。即ち、本実施形態では、第1尿素水タンク25Lの第1補給口25L1と第2尿素水タンク25Rの第2補給口25R1は、車体フレーム30の右側部に集約されている。これにより、作業者は、燃料タンク20に燃料を補給する際に、その場所を移動することなく、両方の尿素水タンク25L,25Rに尿素水を補給できる。
【0017】
勿論、第1尿素水タンク25Lの第1補給口25L1を、補給管路25L2を介して車体フレーム30の右側部まで引き延ばす構成とせず、車体フレーム30の左右の両側にそれぞれの補給口25L1,25R1を設ける構成としても良い。
【0018】
また、
図2に示すように、ダンプトラック100は、発電機2または回生ブレーキによって発電した電力を熱に変換して大気放出する抵抗器8と、ダンプトラック100の各種制御を行う制御ユニット9と、NOx選択還元触媒装置35(
図5参照)を内包するSCRマフラー10と、作業者が搭乗するキャブ11と、を備える。
【0019】
図3に示すように、SCRマフラー10は、エンジン1から排出される排気ガスが流れる排気配管15と接続されており、排気ガスがSCRマフラー10を通過する際、尿素水(還元剤)を排気ガスに噴射することで、排気ガスを浄化する。作動油タンク19及び燃料タンク20は、車体フレーム30にボルトで締結されている。作動油タンク19及び燃料タンク20は、タンク内の液面を検知するためのレベルセンサ26,27を備えている(
図5参照)。
【0020】
ここで、作動油は、作動油タンク19とホイストシリンダ32との間で循環するだけであるため、作動油タンク19やホースから油漏れがない限り、減少することはない。一方、燃料は、エンジン1が稼働していれば消費される。つまり、燃料タンク20の総重量(燃料を含む重量)はダンプトラック100の走行中に変化するが、作動油タンク19の総重量(作動油を含む重量)は変化しない。そのため、ダンプトラック100の走行中に、車体重量の左右のバランスが変化してしまう。そこで、このような重量バランスの変化を抑制するために、本実施形態では、使用する尿素水タンク25L,25Rを切り替える制御を行っている(詳細後述)。
【0021】
次に、第1尿素水タンク25L及び第2尿素水タンク25Rの構造について説明するが、両者の構造は基本的に同じであるため、以下では、第1尿素水タンク25Lについて詳細に説明し、第2尿素水タンク25Rの説明は省略する。
【0022】
図4は、第1実施形態に係るダンプトラックの尿素水タンクの構造を示す図である。第1尿素水タンク25Lには、内部の尿素水24の液面レベル、濃度、温度を検知するための尿素水センサ23を備えている。尿素水24は-11℃以下になると凍結してしまい、尿素水24をSCRマフラー10に供給できなくなってしまう。
【0023】
そのため、第1尿素水タンク25Lは、低温時に尿素水24を加熱するためのヒータ機能を備えている。具体的には、ヒータ機能として、エンジン1の冷却水が熱媒体として用いられ、エンジン冷却水配管16を介して、エンジン1の冷却水が第1尿素水タンク25L内の尿素水24と熱交換される。即ち、尿素水24がエンジン1の冷却水により加熱される。なお、
図4において、符号16Sは、エンジン冷却水供給配管であり、符号16Rは、エンジン冷却水戻り配管である。
【0024】
さらに、第1尿素水タンク25Lには、第1尿素水タンク25LからSCRマフラー10に尿素水24を送り出すための尿素水供給配管20Sと、SCRマフラー10で噴射されなかった尿素水24を第1尿素水タンク25L内に戻す尿素水戻り配管20Rとが設けられている。
【0025】
詳しくは後述するが、
図5に示すように、尿素水供給配管20Sには、尿素水ポンプ18Lが設けられており、尿素水ポンプ18Lを駆動することで、第1尿素水タンク25L内の尿素水24が、尿素水供給配管20Sを通過して、SCRマフラー10まで送り出される。そして、SCRマフラー10まで送り出された尿素水24は、尿素水噴射弁22から排気ガス33に噴射され、排気ガス33が浄化される。噴射されなかった尿素水24は、尿素水戻り配管20Rを通って第1尿素水タンク25L内に戻される。第2尿素水タンク25Rについても同様である(ただし、
図5において、第2尿素水タンク25Rへの尿素水戻り配管20Rの図示は省略している)。
【0026】
なお、低温環境下で使用される場合、尿素水供給配管20S及び尿素水戻り配管20Rの長さが比較的長いと、配管内で尿素水24が凍結する虞がある。そこで、凍結を防止するために、電熱線を組み込んだヒータ機能付きのホースを用いるのが望ましい。
【0027】
次に、ダンプトラック100に適用される尿素水供給システムについて説明する。
図5は、第1実施形態に係る尿素水供給システムの構成図である。
【0028】
図5に示すように、尿素水供給システム40は、SCRマフラー10に内包されるNOx選択還元触媒装置(SCR Catalyst/排気ガス浄化装置)35と、左右に設けられる一対の尿素水タンク25L,25Rと、尿素水ポンプ18L,18Rと、尿素水切替弁21と、尿素水噴射弁22と、キャブ11内に設けられたコントローラ13と、を備える。
【0029】
NOx選択還元触媒装置35は、尿素水24を利用して、エンジン1から排出された排気ガス33に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元浄化する還元触媒を備えた装置である。
【0030】
尿素水噴射弁22は、NOx選択還元触媒装置35の上流側に配置され、排気ガス33に対して尿素水を噴射する。尿素水噴射弁22は、尿素水供給配管20Sを介して、尿素水タンク25L,25Rに接続されている。
【0031】
尿素水ポンプ18L,18Rは、電動式のポンプであり、エンジン1の始動に伴って、コントローラ13を介して電力が供給され、駆動される。尿素水ポンプ18L,18Rが駆動されると、尿素水タンク25L,25R内の尿素水24が吸い上げられ、尿素水供給配管20Sを介して尿素水噴射弁22に供給され、加圧される。なお、尿素水切替弁21が尿素水噴射弁22と尿素水ポンプ18L,18Rとの間に設けられており、尿素水切替弁21の位置に応じて、第1尿素水タンク25Lまたは第2尿素水タンク25Rに貯留されている尿素水24が選択的に尿素水噴射弁22に供給される。なお、尿素水切替弁21の位置の切替制御については、後述する。
【0032】
尿素水噴射弁22は、コントローラ13からの制御信号に応じて、排気配管15を流れる排気ガス33に対して尿素水を噴射する。尿素水が噴射される(供給される)と、NOx選択還元触媒装置35により尿素水からアンモニアが生成され、アンモニアにより排気ガス33中のNOxが還元反応して、水と窒素に分解される。
【0033】
さらに、
図5に示すように、コントローラ13は、作動油タンク19に設けられたレベルセンサ26及び燃料タンク20に設けられたレベルセンサ27から検知された液面レベルの情報を取得する。液面レベルの情報は、作動油タンク19の総重量及び燃料タンク20の総重量の演算に用いされる。
【0034】
また、キャブ11内には暖房用室内機12が設けられている。暖房用室内機12は、エンジン冷却水を熱媒体として室内を加熱している。エンジン1から送出されるエンジン冷却水はエンジン冷却水分岐弁17を通過し、暖房用室内機12に供給される。
【0035】
エンジンコントロールユニット(ECU)14は、エンジン冷却水分岐弁17の開閉動作を制御して、第1尿素水タンク25L及び第2尿素水タンク25Rへのエンジン冷却水の供給を調整している。具体的には、ECU14は、尿素水タンク25L,25R内にそれぞれ設けられた尿素水センサ23から検知されたタンク内の温度に基づいて、エンジン冷却水分岐弁17の開閉切り替えを制御している。
【0036】
より詳細に説明すると、ECU14は、尿素水センサ23が検知した尿素水タンク25L,25R内の温度値を取得する。ECU14は、取得した温度値と、予めECU14内で設定した尿素ヒータ開始閾値温度とを比較し、尿素水センサ23から取得した温度値が尿素ヒータ開始閾値温度よりも低い場合には、エンジン冷却水を尿素水タンク25L,25Rへ供給するためにエンジン冷却水分岐弁17を開くように制御する。一方、ECU14は、尿素水センサ23から取得した温度値が尿素ヒータ開始閾値温度よりも高い場合は、エンジン冷却水分岐弁17を閉めて、エンジン冷却水が尿素水タンク25L,25Rに送出されないように制御する。
【0037】
次に、尿素水供給システムの制御処理について説明する。
図6は、第1実施形態に係る尿素水供給切り替え制御のフローチャートである。エンジン1の始動により、尿素水供給切り替え制御が開始される(処理S1)。次に、処理S2において、尿素水センサ23により検知された尿素水タンク25L,25Rの各液面レベルの値は、エンジン1に設けられたECU14を経由し、車体のコントローラ13に送られる。また、作動油タンク19、燃料タンク20にそれぞれ設けられたレベルセンサ26,27から各タンク19,20の液面レベルの情報をコントローラ13が取得する。
【0038】
次に、処理S3において、コントローラ13は、処理S2で取得した各液面レベルの情報に基づいて、各タンク19,20,25L,25Rの液体容量を算出する。そして、予め設定(記憶)された作動油タンク19、燃料タンク20、尿素水タンク25L,25Rの空の重量と、算出された各タンク19,20,25L,25Rの液体容量とから、各タンク19,20,25L,25Rの現在の総重量を算出する。
【0039】
そして、コントローラ13は、車体左側に設けられたタンク、即ち、作動油タンク19及び第1尿素水タンク25Lの総重量MLを第1合計値として算出し、車体右側に設けられたタンク、即ち、燃料タンク20及び第2尿素水タンク25Rの総重量MRを第2合計値として算出する。
【0040】
次に、処理S4において、コントローラ13は、処理S3で求めた総重量ML(第1合計値)と総重量MR(第2合計値)の大小比較を行う。具体的には、コントローラ13は、総重量MRから総重量MLを減算し、その値(差分)の正負で車体左右のどちらが重いのか判定する。総重量MRから総重量MLを減算した値が正の場合(処理S4/Yes)、コントローラ13は、車体右側に設けられたタンク(燃料タンク20、第2尿素水タンク25R)の総重量MRの方が重いと判定し、第2尿素水タンク25Rから尿素水24をSCRマフラー10に供給するよう、尿素水切替弁21を位置Aに切り替える(処理S5)。第2尿素水タンク25Rに貯留された尿素水24が消費される結果、車体右側に設けられたタンクの総重量MRが徐々に軽くなる。
【0041】
一方、処理S4において、MRからMLを減算した値がゼロまたは負の場合、コントローラ13は、車体左側に設けられたタンク(作動油タンク19、第1尿素水タンク25L)の総重量MLの方が重いと判定し、第1尿素水タンク25Lから尿素水24をSCRマフラー10に10供給するよう、尿素水切替弁21を位置Bに切り替える(処理S6)。第1尿素水タンク25Lに貯留された尿素水24が消費される結果、車体左側に設けられたタンクの総重量MLが徐々に軽くなる。
【0042】
なお、処理S4において、MRからMLを減算した値がゼロの場合に、S5に進む処理としても良い。
【0043】
次に、本実施形態の効果について
図7を用いて説明する。
図7は、車体重量差の変化を第1実施形態と従来技術とで比較して示すグラフである。
図7において、縦軸は車体左右の重量差M
R-M
L(kg)、横軸は時間t(秒)である。ここで、従来技術は、作動油タンクと燃料タンクとが左右に離れて設けられ、尿素水タンクが燃料タンクの側部に1つ設けられている構成を想定している。また、
図7に示すグラフは、燃料タンクの方が作動油タンクに比べて重い場合のグラフであり、作動油タンクの方が重い場合は、上下反転したグラフになる。
【0044】
図7に示すように、従来技術では、時間の経過に伴い、燃料タンク内の燃料及び尿素水タンク内の尿素水が消費されるため、重量バランスが右側に偏っていたものが、徐々に解消されていき、時間t2にて左右バランスの偏りが解消される。その後、さらに燃料及び尿素水が消費されるが、作動油は減少しないため、重量バランスは、徐々に左側に偏っていくことが分かる。
【0045】
一方、本実施形態では、始めは車体左右で重い方の尿素水タンク25Rから尿素水を供給するため、徐々に車体左右の重量差がゼロになるように変化する(時間t1)。車体左右の重量差がゼロになったところで、車体左側の方が重くなるため、車体左側の尿素水タンク25Lから尿素水を供給するように制御が切り替わる。そのタイミングからは、車体右側においては、燃料が消費された分のみ質量が減少することになるため、従来技術と比べて、車体左右の重量差の減少の傾きとしては緩くなる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、コントローラ13が、各センサ23,26,27によって検出された作動油タンク19内の作動油の貯留量、第1尿素水タンク25L内の尿素水の貯留量、燃料タンク20内の燃料の貯留量、及び第2尿素水タンク25R内の尿素水の貯留量に基づいて、第1尿素水タンク25Lに貯留されている尿素水及び第2尿素水タンク25Rに貯留されている尿素水のいずれかをNOx選択還元触媒装置35に供給する。より詳細に言えば、コントローラ13は、車体左右の重量の大きい方の尿素水タンクから優先的に尿素水を供給するように尿素水切替弁21を切り替えて、各尿素水タンク25L,25R内の尿素水量を調整する。これにより、車体左右の重量バランスの偏りを軽減することが可能になる。また、尿素水タンクを第1尿素水タンク25Lと第2尿素水タンク25Rとに2つに分けることで、車体フレーム30の燃料タンク取付け部周辺の設計強度を緩和することが可能となる。そのため、フレーム構造の適正化を図ることができ、設計の自由度も高まる。
【0047】
さらに、車体左右の重量バランスを良好に保つことができるので、尿素水タンク25L,25Rの総容量を拡大することも容易である。尿素水タンクの容量を容易に拡大できれば、尿素水の補給回数を少なくすることができる。また、本実施形態では、第1尿素水タンク25Lの第1補給口25L1と、第2尿素水タンク25Rの第2補給口25R1とを、燃料タンク20の近傍に集約しているため、メンテナンス作業の効率が高まる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、第2実施形態に係る尿素水供給システムの構成図、
図9は、第2実施形態に係る尿素水供給切り替え制御のフローチャートである。なお、第1実施形態と共通する構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図8に示すように、第2実施形態に係る尿素水供給システム40-1は、尿素水切替弁21-1を備えている。尿素水切替弁21-1は、3つの位置A,B,Cに切り替え可能である。具体的には、尿素水切替弁21-1が位置Aに切り替わると、第2尿素水タンク25Rに貯留されている尿素水24が尿素水噴射弁22に供給され、位置Bに切り替わると、第1尿素水タンク25Lに貯留されている尿素水24が尿素水噴射弁22に供給され、位置Cに切り替わると、両方の尿素水タンク25L,25Rに貯留されている尿素水24が尿素水噴射弁22に供給される。
【0050】
次に、第2実施形態に係る尿素水供給システムの制御処理について説明する。
図9に示すように、第2実施形態では、第1実施形態と比べて、処理S4-1及び処理S76が追加されている。
【0051】
具体的には、処理S4-1及び処理S4-2において、コントローラ13は、総重量ML(第1合計値)と総重量MR(第2合計値)の差ΔMの絶対値を基準値(予め定めた範囲)と比較する。本実施形態では、基準値として、例えば総重量MLと総重量MRの合計の10%の値を定めているが、この値は任意である。
【0052】
そして、処理S4-1及び処理S4-2において、それぞれコントローラ13がYesと判断した場合、第1実施形態と同様に処理S5または処理S6を実行する。一方、処理S4-1及び処理S-2においてコントローラ13がNoと判断した場合には、コントローラ13は、尿素水切替弁21-1を位置Cに切り替えて、第1尿素水タンク25L及び第2尿素水タンク25Rからそれぞれ尿素水24をSCRマフラー10に供給する。
【0053】
このように構成された第2実施形態によれば、車体左右の重量バランスの変化をより一層抑制できる。より具体的に説明すると、ΔMの絶対値が基準値を超えている場合には、車体左右の重量の重い側の尿素水タンクから尿素水が消費されていくため、車体左右の重量バランスの偏重が解消される。そして、ΔMの絶対値が基準値(両タンク重量の10%)以内になると、左右の両方の尿素水タンクから尿素水が消費されていくため、車体左右の重量バランスの逆転が生じ難くなり、その結果、良好な重量バランスが維持され易くなる。
【0054】
次に、第1尿素水タンク25Lと第2尿素水タンク25Rの変形例について説明する。
【0055】
(変形例1)
図10は、変形例1に係る尿素水タンクの構造を示す模式図である。
図10に示すように、変形例1は、第1尿素水タンク25Lと第2尿素水タンク25Rとを連通管路50で接続し、連通管路50に電磁弁51を設けた構成となっている。そして、ダンプトラックの走行中(即ち、尿素水供給システム40,40-1が駆動中)は、コントローラ13が電磁弁51を位置Dに切り替えることで、連通管路50を遮断している。これにより、車体左右の重量バランスは良好に保たれる。
【0056】
そして、ダンプトラックが停止し(即ち、尿素水供給システム40,40-1が停止し)、尿素水を補給する際には、コントローラ13が電磁弁51を位置Eに切り替えることで、連通管路50が開通する。そのため、例えば第2尿素水タンク25Rの第2補給口25R1から尿素水を補給すれば、尿素水は、連通管路50を介して第1尿素水タンク25Lにも補給される。よって、変形例1によれば、尿素水の補給作業が簡便である。
【0057】
(変形例2)
図11は、変形例2に係る尿素水タンクの構造を示す模式図である。
図10に示すように、変形例2は、第1尿素水タンク25Lと第2尿素水タンク25Rとを連通管路50で接続し、連通管路50にチェック弁52を設けた構成となっている。チェック弁52は、尿素水の第2尿素水タンク25Rから第1尿素水タンク25L側(即ち、
図11の左方向)への流れを許容する一方、尿素水の第1尿素水タンク25Lから第2尿素水タンク25R側(即ち、
図11の左方向)への流れを阻止する。
【0058】
ダンプトラックの走行中は、コントローラ13がSCRマフラー10に供給される尿素水タンク25L,25Rを切り替えることで、車体左右の重量バランスは良好に保たれる。
【0059】
そして、ダンプトラックが停止し、尿素水を補給する際には、第2尿素水タンク25Rに尿素水を供給すると、第1尿素水タンク25Lと第2尿素水タンク25Rの液面差及び尿素水充填ポンプ(図示せず)からの吐出圧により、尿素水はチェック弁52を介して第1尿素水タンク25L側へと流通する。よって、変形例2によれば、尿素水の補給作業が簡便である。
【0060】
なお、上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0061】
例えば、上記した各実施形態では、第1尿素水タンク25Lと第2尿素水タンク25Rの容量とを同一の構成としたが、作動油タンク19と燃料タンク20の大きさに応じて異なる構成としても良い。例えば、作動油タンク19より燃料タンク20の重量が重い場合(作動油タンク19の重量<燃料タンク20の重量)、第1尿素水タンク25Lの容量を第2尿素水タンク25Rの容量より大きくするのが望ましい。こうすることで、ダンプトラック100の左右の重量バランスがより均一に保たれる。反対に、燃料タンク20より作動油タンク19の重量が重い場合、第1尿素水タンク25Lの容量より第2尿素水タンク25Rの容量を大きくすると良い。
【符号の説明】
【0062】
1 エンジン
2 発電機
3L,3R 後輪(車輪)
4L,4R 走行モータ
5L,5R 前輪(車輪)
7 ポンプユニット
8 抵抗器
9 制御ユニット
10 SCRマフラー
11 キャブ
12 暖房用室内機
13 コントローラ
14 ECU
15 排気配管
16S エンジン冷却水供給配管
16R エンジン冷却水戻り配管
17 エンジン冷却水分岐弁
18L,18R 尿素水ポンプ
19 作動油タンク
20 燃料タンク
20S 尿素水供給配管
20R 尿素水戻り配管
21,21-1 尿素水切替弁
22 尿素水噴射弁
23 尿素水センサ(センサ)
24 尿素水(還元剤)
25L 第1尿素水タンク(第1還元剤タンク)
25L1 第1補給口
25L2 補給管路
25R 第2尿素水タンク(第2還元剤タンク)
25R1 第2補給口
26,27 レベルセンサ(センサ)
30 車体フレーム(車体)
31 荷台(被駆動体)
32 ホイストシリンダ(油圧アクチュエータ)
33 排気ガス
35 NOx選択還元触媒装置(排気ガス浄化装置)
40,40-1 尿素水供給システム
50 連通管路
51 電磁弁
52 チェック弁
100 ダンプトラック(運搬車両)