(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005470
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ソーラーパネルの支持装置
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20250109BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20250109BHJP
【FI】
E04D13/18 ETD
H02S20/23 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105607
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】觸澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】須藤 孝一
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108KS05
2E108MM05
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】ソーラーパネルの架台を金属屋根に容易に設置できるソーラーパネルの支持装置を提供する。
【解決手段】ソーラーパネルの支持装置は、建物の屋根に敷設される鋼製のルーフ材の上面に設置される断熱材と、前記断熱材の上面に設置される第1の防水層と、前記断熱材と前記第1の防水層を貫通して前記ルーフ材の上面に下端を当接させる中空筒状の複数のスペーサと、前記スペーサの上端により支持される基板と、ソーラーパネルを保持する本体とを備えた架台と、前記スペーサ内を通過して、前記基板と前記ルーフ材とを連結する締結部材と、前記締結部材を覆うとともに、前記第1の防水層と前記基板とにわたって配設される第2の防水層と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根に敷設される鋼製のルーフ材の上面に設置される断熱材と、
前記断熱材の上面に設置される第1の防水層と、
前記断熱材と前記第1の防水層を貫通して前記ルーフ材の上面に下端を当接させる中空筒状の複数のスペーサと、
前記スペーサの上端により支持される基板と、ソーラーパネルを保持する本体とを備えた架台と、
前記スペーサ内を通過して、前記基板と前記ルーフ材とを連結する締結部材と、
前記締結部材を覆うとともに、前記第1の防水層と前記基板とにわたって配設される第2の防水層と、を有することを特徴とするソーラーパネルの支持装置。
【請求項2】
前記ルーフ材は、交互に折り返されて山谷形状が形成されるデッキプレート又は離間して配設された複数の角形状断面を有する鋼材であり、前記デッキプレート又前記鋼材の各最上面に掛け渡されるようにして前記断熱材が配設され、
前記スペーサは、同一の前記最上面に当接する少なくとも第1のスペーサ、第2のスペーサ、および第3のスペーサを含み、前記基板の法線方向に沿って見たときに、前記第1のスペーサと前記第2のスペーサの中心を結ぶ第1の直線と、前記第1のスペーサと前記第3のスペーサの中心を結ぶ第2の直線とは交差する、ことを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルの支持装置。
【請求項3】
前記スペーサは、前記第1のスペーサ、前記第2のスペーサ、および前記第3のスペーサとともに同一の前記最上面に当接する第4のスペーサをさらに含み、
前記基板の法線方向に沿って見たときに、前記第1のスペーサ、前記第2のスペーサ、前記第3のスペーサ、および前記第4のスペーサの中心は、長方形の頂点にそれぞれ配置され、また前記本体の中心は前記長方形の中心に配置される、ことを特徴とする請求項2に記載のソーラーパネルの支持装置。
【請求項4】
前記ルーフ材は、離間して配設された複数のC字形状断面を有する鋼材であり、複数の前記鋼材の最上面に掛け渡されるようにして前記断熱材が配設され、
3つ以上の前記スペーサが同一の前記鋼材に当接し、前記基板の法線方向に沿って見たときに、前記スペーサの中心は前記ルーフ材の長手方向に沿うライン上に整列する、ことを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルの支持装置。
【請求項5】
前記スペーサは、前記本体を挟んで両側に2つずつ配置される、ことを特徴とする請求項4に記載のソーラーパネルの支持装置。
【請求項6】
前記締結部材は、頭部と、前記頭部より小径の雄ねじ部とを有するねじ部材であって、前記雄ねじ部が前記基板に形成された開口を通して前記スペーサ内に挿入され、前記ルーフ材の雌ねじに前記雄ねじ部が螺合する、ことを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルの支持装置。
【請求項7】
前記締結部材は、前記雄ねじ部の先端にタップ部を有し、前記タップ部は回転することにより前記ルーフ材の下穴内周を螺旋状に切削し、前記雌ねじ孔を形成可能である、ことを特徴とする請求項6に記載のソーラーパネルの支持装置。
【請求項8】
前記スペーサは、中空円筒状であって、内径が5.5~12mm、外径が10.5~17mm、長さが10~60mmである、ことを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルの支持装置。
【請求項9】
前記スペーサの少なくとも一端に、天然樹脂又は合成樹脂が被覆されている、ことを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルの支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネルの支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デッキプレート等の金属製屋根下地材を用いた所謂金属屋根は、RC或いはALC等のコンクリート構造物の陸屋根に比べて軽量であり、また工期が短くて済むというメリットを有することから、工場や倉庫、大型商業施設等を中心に広く普及している。一方で、金属屋根においては、陸屋根に比べて熱伝導性が高いこと、また錆などの対策のため、断熱材および防水層が金属製屋根下地材に積層された断熱防水構造が適用されている。
【0003】
ところで、近年、再生可能エネルギーの利用が要請され、その一環として太陽光により発電可能なソーラー発電システムが注目されており、デッドスペースの有効活用を図るために、建物の屋上などにもソーラーパネル等の設置が推進されている。しかしながら、例えば金属屋根にソーラーパネルを設置する際には、設置上の課題がある。
【0004】
例えば、金属製屋根下地材としてのデッキプレートには、フラットな表面のデッキプレートもあるが、山谷部がある溝形のデッキプレートが使用されることが多い。溝形のデッキプレートは山部と谷部が交互に繰り返されるため、ソーラーパネルの架台を該デッキプレートに適切に固定するためには何らかの工夫が必要である。また、C字形状断面をもつC形鋼材等を複数本並べて設置して形成した屋根下地材においても、同様な課題が指摘される。
【0005】
これに対し特許文献1においては、デッキプレートの山頂面と隣接する山頂面とに掛け渡されて下部部材が固定され、該下部部材に、ソーラーパネルの架台が取り付けられた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の構造に対し、部品点数をより削減し、また敷設のコストを抑制したいという要請がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ソーラーパネルの架台を金属屋根に容易に設置できるソーラーパネルの支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のソーラーパネルの支持装置は、
建物の屋根に敷設される鋼製のルーフ材の上面に設置される断熱材と、
前記断熱材の上面に設置される第1の防水層と、
前記断熱材と前記第1の防水層を貫通して前記ルーフ材の上面に下端を当接させる中空筒状の複数のスペーサと、
前記スペーサの上端により支持される基板と、ソーラーパネルを保持する本体とを備えた架台と、
前記スペーサ内を通過して、前記基板と前記ルーフ材とを連結する締結部材と、
前記締結部材を覆うとともに、前記第1の防水層と前記基板とにわたって配設される第2の防水層と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ソーラーパネルの架台を金属屋根に容易に設置できるソーラーパネルの支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、デッキプレート上に設置される、第1実施形態にかかるソーラーパネルの支持装置の断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のソーラーパネルの架台の上面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のソーラーパネルの架台を矢印A方向から見た側面図である。
【
図4】
図4は、C形鋼材上に設置される、第2実施形態にかかるソーラーパネルの支持装置の断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のソーラーパネルの架台の上面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態のソーラーパネルの架台を矢印B方向から見た側面図である。
【
図7】
図7は、角形鋼材上に設置される、第3実施形態にかかるソーラーパネルの支持装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、デッキプレート1上に設置される、第1実施形態にかかるソーラーパネルの支持装置の断面図である。
【0014】
建物の屋上に設置される鋼製のルーフ材としてのデッキプレート1は、凸部1aと凹部1bとが一方向(
図1で左右方向)に繰り返されるように、鋼板を周期的に折り曲げてなる。凸部1aは、頂面(最上面)1cが平坦である。頂面1cの幅をWとする。
【0015】
頂面1cに挟まれる凹部1bに掛け渡されるようにして、均一な厚さを有する板状の断熱材2が頂面1c上に配置される。本実施形態の断熱材2は、例えば硬質のポリウレタンフォームやポリスチレンフォームからなる。
【0016】
中空円筒状のスペーサ3が、第1防水シート(第1の防水層)4と断熱材2を上下に貫通して、その下端を頂面1cに突き当てるようにして配置される。スペーサ3の上端は、ソーラーパネルの架台5の基板5aの下面に当接する。
【0017】
断熱材2の上面を覆うようにして、第1防水シート4が敷設される。第1防水シート4は、例えば合成樹脂系シートやアスファルト系シート等であってよい。第1防水シート4上に、ソーラーパネルの架台5が設置され、スペーサ3を貫通するビス(締結部材ともいう)6によりデッキプレート1に固定される。また、基板5aの開口5fおよびビス6を覆うようにして、ソーラーパネルの架台5の基板5aから第1防水シート4にわたって、第2防水シート(第2の防水層)7が敷設されている。
【0018】
図2は、ソーラーパネルの架台5の上面図であり、
図3は、ソーラーパネルの架台5を矢印A方向から見た側面図である。
【0019】
ソーラーパネルの架台5は、基板5aと、基板5aの中央に立設された本体5bとを有する。本体5bは、長方形状の第1側壁5c及び第2側壁5dと、正方形状の頂壁5eとを有する。例えばアングル材から切り出されて形成される第1側壁5c及び第2側壁5dの下端は、基板5aに対して溶接にて固定されている。本実施形態では、第1側壁5c及び第2側壁5dは、基板5aの直交する2辺にそれぞれ平行である。
【0020】
第1側壁5c及び第2側壁5dの上端は、頂壁5eの2辺に溶接にて固定され、頂壁5eは基板5aに対して平行に保持されている。頂壁5eの中央には、開口5sが形成されており、頂壁5eの下方から開口5sを介して、ボルト5gの軸部5hが挿通されている。ボルト5gの頭部5iは、頂壁5eの下面に溶接にて固定されている。
【0021】
軸部5hは、頂壁5eから上方に突出しており、この軸部5hを用いて不図示のソーラーパネルを支持することが可能となっている。
【0022】
略正方形状の基板5aは、均一な板厚の金属板から形成されており、板厚方向に貫通する6つの開口5fを、本体5bの周囲に2列×3行で備える。より具体的に、開口5fの列間ピッチはP1であり、行間ピッチはP2であって、P1>P2である。ここで、列間ピッチP1は、デッキプレート1の頂面1cの幅Wより小さく、例えばP1=2W/3であると好ましい。
【0023】
各開口5fの内周は、下方に向かうにしたがって縮径するテーパ面である上部側の座繰り面と、下部側の円筒面を有する。
【0024】
スペーサ3は、例えば鋼管からなり、大荷重を支持することができる。スペーサ3の内径は、ビス6の軸部6bの外径よりも大径である。スペーサ3の内径が5.5~12mm、外径が10.5~17mm、長さが10~60mmであると好ましい。ビス6は、頭部6aより小径の雄ねじ部である軸部6bの先端にタップ部6cがついた、いわゆるタッピンねじである。
【0025】
敷設した状態で、同一の頂面1cに当接するスペーサ3は、各開口5fと軸線が整列する。基板5aの法線方向に沿って見た
図2に点線で示すように、1列1行目の開口5fに整列するスペーサを第1のスペーサ3(1)とし、1列3行目の開口5fに整列するスペーサを第2のスペーサ3(2)とし、2列1行目の開口5fに整列するスペーサを第3のスペーサ3(3)とする。このとき、第1のスペーサ3(1)の中心と、第2のスペーサ3(2)の中心を結ぶ第1の直線L1と、第1のスペーサ3(1)の中心と、第3のスペーサ3(3)の中心を結ぶ第2の直線L2とは直交する。
【0026】
また、基板5aの法線方向に沿って見た
図2に点線で示すように、第1のスペーサ3(1)、第2のスペーサ3(2)、および第3のスペーサ3(3)とともに同一の頂面1cに当接する2列3行目の開口5fに整列するスペーサを、第4のスペーサ3(4)とする。このとき、第1のスペーサ3(1)、第2のスペーサ3(2)、第3のスペーサ3(3)、および第4のスペーサ3(4)の中心は、長方形(正方形を含む)RCの頂点にそれぞれ配置され、また本体5b(開口5s)の中心は長方形RCの中心に配置される。これにより、複数のスペーサ3を用いて架台5を安定して支持できる。
【0027】
(架台の設置方法)
架台5の設置方法について、
図1を参照して説明する。架台5は、工場等であらかじめ形成されている。まず作業者は、建物の屋上にあるデッキプレート1の頂面1cに、接着材を用いて断熱材2を敷設し、その上に接着剤(又は予め裏面にコーティングされた粘着材)を用いて第1防水シート4を固着する。
【0028】
断熱材2および第1防水シート4を敷設することで、作業者は頂面1cを視認できなくなる。そこで作業者は探索針(細い鉄棒)を第1防水シート4と断熱材2に突き刺すことで、頂面1cの位置を探る。第1防水シート4と断熱材2は、比較的柔軟な素材からなり、探索針は容易に貫通する。探索針が断熱材2を突き抜けて下方に至れば、突き刺した断熱材2の下がデッキプレート1の凹部1bであることがわかる。一方、探索針が突き当たれば、突き刺した断熱材2の下が頂面1cであることがわかる。
【0029】
作業者が探索針を断熱材2に複数回突き刺すことで、頂面1cの位置を凡そ把握できる。また、デッキプレート1の凹凸の周期は既知であるので、1か所の頂面1cがわかれば、別の箇所の頂面1cもわかる。そこで、把握できた頂面1cに架台5を設置することとする。
【0030】
作業者は、頂面1cの目標となる位置に対して、断熱材2および第1防水シート4を貫通させるようにしてスペーサ3を2列×3行で挿入し、その下端を頂面1cに当接させ、その後、スペーサ3の上端に架台5の基板5aを載置して、各開口5fをスペーサ3に整列させる(
図2参照)。
【0031】
その後、作業者は、基板5aの上方から開口5f内にビス6の軸部6bを挿入し、スペーサ3を貫通させ、その先端のタップ部6cを頂面1cに当接させる。
【0032】
さらに不図示の工具を用いて、作業者がビス6を回転させると、先端のタップ部6cが切削することで下穴1dが形成され、さらに切削することで下穴1dに雌ねじが形成され、続いてビス6の軸部6bに設けた雄ねじが該雌ねじに螺合する。なお、ビス6以外の工具で、予め下穴1dを頂面1cに形成してもよい。
【0033】
そのまま、ビス6を回転させると、雄ねじと雌ねじとが相対螺動して、ビス6が頂面1cに向かって進行し、ビス6の頭部6aが開口5fの座繰り面に当接して、ビス6の推力を基板5aに伝達する。これにより、基板5aが下降して断熱材2および第1防水シート4を圧縮押圧するが、基板5aの下面がスペーサ3の上端に当接した時点で、基板5aの下降が停止し、基板5aがスペーサ3を介してデッキプレート1に固定される。
【0034】
ここで、開口5fが露出した状態では、開口5fとビス6との隙間から雨水が漏れる恐れがある。そこで、作業者は、第1防水シート4から少なくとも基板5aの縁を跨いで、開口5fを覆う位置まで、接着剤(又は予め裏面にコーティングされた粘着材)を用いて第2防水シート7を固着する。第2防水シート7の縁と第1防水シート4との間に、シール材11を付与すると好ましい。
【0035】
以上により、架台5の設置が完了するので、軸部5hを用いてソーラーパネルの設置が可能になる。このとき、ソーラーパネルの荷重は、架台5から6本のスペーサ3を介してデッキプレート1により支持されるため、断熱材2は圧縮されず、長期間にわたって断熱性能を確保できる。また、スペーサ3を用いることで、ビス6の過度な締め付けによる断熱材2の圧縮を防止することができる。仮にスペーサ3がないと架台5の荷重やビス6の過度な締め付けで断熱材2が座屈してしまうが、本実施形態ではかかる不具合を防止することができる。
【0036】
仮に金属製である架台5をデッキプレート1に直接設置した場合、いずれも熱伝導性が高いため、いわゆる熱橋現象が生じ、外気温の変化により結露などの不具合が生じやすい。これに対し、本実施形態によれば、基板5aはスペーサ3およびビス6を介してデッキプレート1に連結されるため、両者を直接連結する場合に比して、金属面同士が接する面積が小さく熱伝導が制限され、それにより熱橋現象を抑制して、結露を防止することができる。すなわち、本実施形態によれば、デッキプレート1と接触するのはビス6およびスペーサ3の接触面だけであり、架台5をデッキプレート1に直付けしたときよりも、熱橋現象に影響を及ぼす金属接触面積を大幅に低減できる。
【0037】
またデッキプレート1を下地とした場合、デッキプレート1上に直に第1防水シート4が施工されるわけではなく、デッキプレート1の上には断熱材2が施工され、その上に第1防水シート4が施工される。よって、架台5とデッキプレート1の間には距離が生じる。両者間に距離が生じているため、仮にスペーサ3がないとすると、ビス6が頂面1cに対して垂直方向にまっすぐ施工できず、斜めに固定される恐れがある。
【0038】
これに対し本実施形態によれば、ビス6をねじ込む前にスペーサ3を配置するので、スペーサ3にビス6を挿入した際に、スペーサ3の内周がガイドとなって、ビス6が頂面1cに対してほぼ垂直にねじ込まれるように姿勢が矯正されるため、適切な施工を行うことができる。すなわち、スペーサ3を挿入することでビス6のガイドとなり斜めにビス6が固定される恐れを低減している。特に、スペーサ3の内径をビス6の山径に近づけるほど、ビス6が斜めに固定される恐れは低減する。
【0039】
(第2実施形態)
図4は、C形鋼材1A上に設置される、第2実施形態にかかるソーラーパネルの支持装置の断面図であり、紙面垂直方向がC形鋼材1Aの長手方向となる。
【0040】
建物の屋上に設置される、断面がC字形状(またはコ字形状)を有する鋼製のルーフ材としてのC形鋼材1Aは、
図4の紙面垂直方向に延在してなり、
図4の左右方向に延在する複数の横梁8Aに、所定間隔でアングル材9Aを介して溶接により固定されている。C形鋼材1Aは、平坦な頂面(最上面)1Acを有する。
【0041】
図5は、第2実施形態のソーラーパネルの架台5Aの上面図であり、
図6は、ソーラーパネルの架台5Aを矢印B方向から見た側面図である。なお、
図5において、矢印C方向に見た架台5Aが、
図4に示された状態である。
【0042】
ソーラーパネルの架台5Aは、基板5Aaと、基板5Aaの中央に立設された本体5bとを有する。基板5Aaに溶接される本体5bは、上述した実施形態と同様な構成を有するため、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
ただし、本体5bは、
図5に示すように、第1側壁5c及び第2側壁5dが、基板5Aaの直交する2辺に対し45度で傾いている。
【0044】
略正方形状の基板5Aaは、均一な板厚の金属板から形成されており、板厚方向に貫通する4つの開口5Akを、本体5bを挟んで2つずつ基板5Aaの対角線に沿って備える。
【0045】
各開口5Akの内周は、下方に向かうにつれて縮径する上部側の座繰り面と、下部側の円筒面とからなる。
【0046】
本実施形態においては、断熱材2Aは、板状の硬質のポリウレタンフォームやポリスチレンフォームの両面を一対の金属板2Aaで挟持した、いわゆるサンドイッチ型断熱材である。スペーサ3、第1防水シート4、ビス6、第2防水シート7は、第1実施形態と共通するため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0047】
敷設した状態で、同一の頂面1Acに当接するスペーサ3は、各開口5Akと軸線が整列する。基板の法線方向に沿って見た
図5にて、スペーサ3を点線で示す。スペーサ3の中心はC形鋼材1Aの長手方向(
図3の矢印C方向)に沿うラインL3上に整列する。ここでは、スペーサ3は、本体5bを挟んで両側に2つずつ配置される。これにより、バランスよく架台5Aを支持できる。
【0048】
(架台の設置方法)
架台5Aの設置方法について、
図4を参照して説明する。架台5Aは、工場等であらかじめ形成されている。まず、作業者は、建物の屋上にある隣接するC形鋼材1Aの頂面1Acにわたって掛け渡すようにし、さらに不図示の専用ビスを断熱材2Aを貫いてC形鋼材1Aに締結することにより断熱材2Aを固定し、その上に接着剤(又は予め裏面にコーティングされた粘着材)を用いて第1防水シート4を固着する。本実施形態では、隣接するC形鋼材1Aの間は空間が存在するため、C形鋼材1A間に、サンドイッチ型断熱材としての断熱材2Aを配置することで、屋根の機能を持たせる。断熱材2Aは、それ自体が防水機能を有するため、第1防水シート4は、接着剤(又は裏面の粘着材)を使用して架台5Aの近傍まで敷設する。したがって、架台5Aの基板5Aaの下面は、断熱材2Aの上面に当接する。なお、架台5Aの下方に防水シートを敷設する場合もある。
【0049】
第1防水シート4を敷設することによりC形鋼材1Aを直接視認できなくなるが、第1防水シート4上に露出する専用ビスの頭部により頂面1Acの位置を凡そ把握できる。そこで、作業者は、把握できた頂面1Acの幅方向中心に向かって、断熱材2Aおよび第1防水シート4を貫通させたドリルで頂面1Acに下穴1Adを形成する。ここでは、開口5Akに対応して、4つの下穴1Adを1列に形成する。
【0050】
さらに作業者は、各下穴1Adの周囲に、工具で断熱材2Aおよび第1防水シート4を貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔にスペーサ3を挿入し、その下端を頂面1Acに当接させ、その後、スペーサ3の上端に架台5Aの基板5Aaを載置して、開口5Akをスペーサ3に整列させる。
【0051】
その後、作業者は、基板5Aaの上方から開口5Ak内にビス6の軸部6bを挿入し、スペーサ3を貫通させ、その先端のタップ部6cを頂面1Acの下穴1Adに係合させて雌ねじを形成し、第1実施形態と同様に、スペーサ3を介してビス6により基板5AaとC形鋼材1Aとを連結する。
【0052】
さらに作業者は、第1防水シート4から少なくとも基板5Aaの縁を跨いで、開口5Akおよびビス6を覆う位置まで、第2防水シート7を接着剤(又は予め裏面にコーティングされた粘着材)を用いて固着する。第2防水シート7の縁と第1防水シート4との間に、シール材11を付与すると好ましい。これにより第2防水シート7の縁から内方に雨水が進入することを阻止できる。以上により、架台5Aの設置が完了する。
【0053】
本実施の形態のように、サンドイッチ型断熱材としての断熱材2Aを使用する場合、両面の金属板2Aaを支える下地材としてのC形鋼材1Aがその固定箇所となるため、断熱材2Aを固定する箇所が限定されてしまう。本実施の形態によれば、4本のビス6およびスペーサ3を一列に並べることで(
図5参照)、架台5Aを確実に固定することができる。また、スペーサ3を用いることで、サンドイッチ型断熱材としての断熱材2Aの変形を防止することができる。仮にスペーサ3がないと架台5Aの荷重で断熱材2Aが座屈してしまうが、本実施形態ではかかる不具合を防止する。
【0054】
また、サンドイッチ型断熱材としての断熱材2Aを使用する場合、架台5AとC形鋼材1Aとの間には距離が生じる。両者間に距離が生じているため、仮にスペーサ3がないとすると、ビス6が頂面1Acに対して垂直方向にまっすぐ施工できず、斜めに固定される恐れがある。
【0055】
これに対し本実施形態によれば、ビス6をねじ込む前にスペーサ3を配置するので、スペーサ3にビス6を挿入した際に、スペーサ3の内周がガイドとなって、ビス6が頂面1Acに対してほぼ垂直にねじ込まれるように姿勢が矯正されるため、適切な施工を行うことができる。
【0056】
また、サンドイッチ型断熱材としての断熱材2Aを使用する場合、下方の金属板2AaはC形鋼材1Aに接するが、架台5Aに接する上方の金属板2Aaに対し、熱伝導的に遮断されている。すなわち、一対の金属板2Aaはスペーサ3とビス6のみに接するため、金属面同士が接する面積が小さく熱伝導が制限され、それにより熱橋現象を抑制して、結露を防止することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図7は、角形鋼材1B上に設置される、第3実施形態にかかるソーラーパネルの支持装置の断面図であり、紙面垂直方向が角形鋼材1Bの長手方向となる。
【0058】
建物の屋上に設置される、断面が中空の角形状を有する鋼製のルーフ材としての角形鋼材1Bは、
図7の紙面垂直方向に延在してなり、第2実施形態と同様に、
図7の左右方向に延在する複数の横梁8Aに、所定間隔でアングル材9Aを介して溶接により固定されている。角形鋼材1Bは、平坦な頂面(最上面)1Bcを有する。
【0059】
本実施形態の架台5Bも、基板5Baと、基板5Baの中央に立設された本体5bとを有する。基板5Baに溶接される本体5bは、上述した実施形態と同様な構成を有するため、同じ符号を付して重複する説明を省略する。また、基板5Baは、第1実施形態の基板5aに対して開口5Bfの位置のみが異なるため、共通する構成については重複する説明を省略する。開口5Bfは、本体5bの周囲に4つ(2列×2行で)設けることができる。かかる場合、各開口5Bfに対応して設けられるスペーサ3は、上述した第1のスペーサ、第2のスペーサ、第3のスペーサ、および第4のスペーサに相当する。
【0060】
本実施の形態においても、角形鋼材1Bと架台5Bとの間に、サンドイッチ型断熱材としての断熱材2Aが配置され、架台5Bの基板5Baが、スペーサ3およびビス6を用いて角形鋼材1Bに連結される。角形鋼材1Bは、C形鋼材1Aに対して並び方向(
図7で左右方向)の幅が広いため、第1実施形態と同様に、幅方向に2つの開口5Bfを設けて、スペーサ3およびビス6を用いて基板5Baを連結できる。
【0061】
第3実施形態の施工方法は、第2実施形態と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0062】
なお、熱橋現象をさらに抑制するために、例えばスペーサ3の少なくとも一端側、好ましくはスペーサ3全体を天然樹脂又は合成樹脂の皮膜で覆ったり、あるいはスペーサ3の少なくとも一端に天然樹脂又は合成樹脂のキャップを嵌合させたり、さらにはスペーサ3を合成樹脂製などとして、スペーサ3と金属下地又は架台とにおいて金属面同士の接触を制限するようにしてもよい。
【0063】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の態様)
建物の屋根に敷設される鋼製のルーフ材の上面に設置される断熱材と、
前記断熱材の上面に設置される第1の防水層と、
前記断熱材と前記第1の防水層を貫通して前記ルーフ材の上面に下端を当接させる中空筒状の複数のスペーサと、
前記スペーサの上端により支持される基板と、ソーラーパネルを保持する本体とを備えた架台と、
前記スペーサ内を通過して、前記基板と前記ルーフ材とを連結する締結部材と、
前記締結部材を覆うとともに、前記第1の防水層と前記基板とにわたって配設される第2の防水層と、を有することを特徴とするソーラーパネルの支持装置。
【0064】
(第2の態様)
前記ルーフ材は、交互に折り返されて山谷形状が形成されるデッキプレート又は離間して配設された複数の角形状断面を有する鋼材であり、前記デッキプレート又前記鋼材の各最上面に掛け渡されるようにして前記断熱材が配設され、
前記スペーサは、同一の前記最上面に当接する少なくとも第1のスペーサ、第2のスペーサ、および第3のスペーサを含み、前記基板の法線方向に沿って見たときに、前記第1のスペーサと前記第2のスペーサの中心を結ぶ第1の直線と、前記第1のスペーサと前記第3のスペーサの中心を結ぶ第2の直線とは交差する、ことを特徴とする第1の態様のソーラーパネルの支持装置。
【0065】
(第3の態様)
前記スペーサは、前記第1のスペーサ、前記第2のスペーサ、および前記第3のスペーサとともに同一の前記最上面に当接する第4のスペーサをさらに含み、
前記基板の法線方向に沿って見たときに、前記第1のスペーサ、前記第2のスペーサ、前記第3のスペーサ、および前記第4のスペーサの中心は、長方形の頂点にそれぞれ配置され、また前記本体の中心は前記長方形の中心に配置される、ことを特徴とする第2の態様のソーラーパネルの支持装置。
【0066】
(第4の態様)
前記ルーフ材は、離間して配設された複数のC字形状断面を有する鋼材であり、複数の前記鋼材の最上面に掛け渡されるようにして前記断熱材が配設され、
3つ以上の前記スペーサが同一の前記鋼材に当接し、前記基板の法線方向に沿って見たときに、前記スペーサの中心は前記ルーフ材の長手方向に沿うライン上に整列する、ことを特徴とする第1の態様のソーラーパネルの支持装置。
【0067】
(第5の態様)
前記スペーサは、前記本体を挟んで両側に2つずつ配置される、ことを特徴とする第4の態様のソーラーパネルの支持装置。
【0068】
(第6の態様)
前記締結部材は、頭部と、前記頭部より小径の雄ねじ部とを有するねじ部材であって、前記雄ねじ部が前記基板に形成された開口を通して前記スペーサ内に挿入され、前記ルーフ材の雌ねじに前記雄ねじ部が螺合する、ことを特徴とする第1の態様~第5の態様のいずれかのソーラーパネルの支持装置。
【0069】
(第7の態様)
前記締結部材は、前記雄ねじ部の先端にタップ部を有し、前記タップ部は回転することにより前記ルーフ材の下穴内周を螺旋状に切削し、前記雌ねじ孔を形成可能である、ことを特徴とする第6の態様のソーラーパネルの支持装置。
【0070】
(第8の態様)
前記スペーサは、中空円筒状であって、内径が5.5~12mm、外径が10.5~17mm、長さが10~60mmである、ことを特徴とする第1の態様~第7の態様のいずれかのソーラーパネルの支持装置。
【0071】
(第9の態様)
前記スペーサの少なくとも一端に、天然樹脂又は合成樹脂が被覆されている、ことを特徴とする第1の態様~第8の態様のいずれかのソーラーパネルの支持装置。
【符号の説明】
【0072】
1 デッキプレート
1c、1Ac、1Bc 頂面
2、2A 断熱材
3 スペーサ
4 第1防水シート
5、5A、5B ソーラーパネルの架台
6 ビス
7 第2防水シート
8A 横梁
9A アングル材