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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025054830
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/044 20060101AFI20250331BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20250331BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20250331BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20250331BHJP
   F15B 21/14 20060101ALI20250331BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
F15B11/044
F15B11/16 Z
F15B11/02 Z
F15B11/028 G
F15B21/14 A
F15B11/02 D
E02F9/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163997
(22)【出願日】2023-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】土方 聖二
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】古川 翔
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 遼
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA05
2D003CA02
2D003DA04
2D003FA02
3H089AA24
3H089BB02
3H089BB04
3H089BB15
3H089BB28
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC12
3H089DA03
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF07
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アクチュエータの戻り油を切換弁により別アクチュエータの管路に分流させて圧損低減を図る技術において、戻り油を分流させない位置の切換弁での圧損発生を回避かつ戻り油を分流させたときの別アクチュエータの不意の駆動を回避可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、一対の第1アクチュエータ管路43、44の第1管路と一対の第2アクチュエータ管路45、46の第2管路を接続する接続管路48上に配置した開閉可能な第1切換弁38、第1管路とタンク34を接続するタンク管路49上に配置した開閉可能な第2切換弁39、第1管路の圧力を検出する圧力センサ51、第1~第2切換弁を制御する制御装置60を備える。制御装置は、第1操作装置56の駆動指示が無く第2操作装置57の駆動指示が有る場合に、圧力センサの検出値に基づく第1油圧アクチュエータの負荷指標が所定条件を満たすとき第1~第2切換弁を開状態に制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動する第1油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動する第2油圧アクチュエータと、
前記第1油圧アクチュエータ及び第2油圧アクチュエータから排出される戻り油を貯留するタンクと、
前記油圧ポンプから前記第1油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れ及び前記第1油圧アクチュエータから前記タンクへ排出される戻り油の流れを制御する第1制御弁と、
前記油圧ポンプから前記第2油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れ及び前記第2油圧アクチュエータから前記タンクへ排出される戻り油の流れを制御する第2制御弁と、
前記第1油圧アクチュエータと前記第1制御弁とを接続する一対の第1アクチュエータ管路と、
前記第2油圧アクチュエータと前記第2制御弁とを接続する一対の第2アクチュエータ管路と、
前記第1制御弁及び前記第2制御弁を前記タンクに接続する戻り管路と、
前記第1油圧アクチュエータの駆動を指示する第1操作装置と、
前記第2油圧アクチュエータの駆動を指示する第2操作装置と、を備えた作業機械において、
前記一対の第1アクチュエータ管路のうちのいずれか一方である第1管路と前記一対の第2アクチュエータ管路のうちのいずれか一方である第2管路とを接続する接続管路と、
前記第1管路から分岐して前記タンクに接続されるタンク管路と、
前記接続管路上に配置され、前記接続管路を遮断状態又は連通状態に切換可能な第1切換弁と、
前記タンク管路上に配置され、前記タンク管路を遮断状態又は連通状態に切換可能な第2切換弁と、
前記一対の第1アクチュエータ管路のうちの少なくとも前記第1管路の圧力を検出する圧力検出装置と、
前記第1切換弁及び前記第2切換弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1操作装置からの駆動の指示が無く、且つ、前記第2操作装置が前記第2管路へ戻り油を排出させるような前記第2油圧アクチュエータの駆動を指示する場合において、前記圧力検出装置の検出値を基に得られる前記第1油圧アクチュエータに作用する負荷の指標が所定条件を満たすとき、前記接続管路が連通状態になるように前記第1切換弁を制御すると共に、前記タンク管路が連通状態になるように前記第2切換弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記負荷の指標は、前記圧力検出装置により検出された前記第1管路の圧力であり、
前記所定条件は、前記圧力検出装置により検出された前記第1管路の圧力が予め設定された正の閾値よりも低い場合である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記圧力検出装置は、
前記第1管路の圧力を検出する第1圧力センサと、
前記一対の第1アクチュエータ管路のうちの前記第1管路とは異なる他方の管路の圧力を検出する第2圧力センサとを有し、
前記負荷の指標は、前記第1圧力センサの検出値と前記第2圧力センサの検出値とを用いて算出されるものである
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記第1油圧アクチュエータは、油圧シリンダであり、
前記負荷の指標は、前記第1圧力センサの検出値と前記第2圧力センサの検出値とを用いて算出される前記油圧シリンダの推力である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項3に記載の作業機械において、
前記第1油圧アクチュエータは、油圧モータであり、
前記負荷の指標は、前記第2圧力センサの検出値と前記第1圧力センサの検出値の差分から算出される圧力差である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記接続管路は、前記第1管路との接続部が前記第1制御弁よりも前記第1油圧アクチュエータに接近した位置にあると共に、前記第2管路との接続部が前記第2制御弁よりも前記第2油圧アクチュエータに接近した位置にある
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に係り、更に詳しくは、被駆動体を作動させる各油圧アクチュエータから排出された戻り油が作動油タンクに戻るように構成された作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやクレーンなどの作業機械においては、作業装置などを作動させる複数の油圧アクチュエータから排出された戻り油を作動油タンクに戻すように構成された油圧システム(開回路)を備えたものがある。各油圧アクチュエータは、方向制御弁を介して油圧ポンプ及びタンクに接続される。方向制御弁は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れを制御すると共に、油圧アクチュエータからタンクへ排出される戻り油の流れを制御する。各方向制御弁は、一対の管路により油圧アクチュエータと接続されると共に、1つの管路によりタンクと接続される。油圧アクチュエータから排出された戻り油がタンクへ戻る際に、油圧アクチュエータから制御弁を介してタンクまでを接続する管路が長くなると、その分、戻り油に生じる圧力損失が大きくなる。
【0003】
油圧アクチュエータから排出される戻り油の圧損低下を図る技術として、例えば、特許文献1に記載の油圧回路制御システムが提案されている。この油圧回路制御システムにおいては、第1アクチュエータと第1方向切換弁とを接続する第1管路上かつ第2アクチュエータと第2方向切換弁とを接続する第2管路上に共通の切換弁が設置されていると共に、第2管路とタンクとを接続する副管路上に副切換弁が設置されている。第1アクチュエータに操作があり、第2アクチュエータに操作がない場合又はこれと同等の場合、切換弁によって第1管路と第2管路の両管路同士の遮断状態が連通状態へと切り換えられると共に、副切換弁によって第2管路とタンクの遮断状態が連通状態へと切り換えられる。第1アクチュエータから排出された戻り油は、切換弁によって第1管路と第2管路とに分流して第1方向切換弁又は副切換弁を経てタンクへ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-219118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の油圧回路制御システムにおいては、第1アクチュエータと第1方向切換弁を接続する第1管路及び第2アクチュエータと第2方向切換弁を接続する第2管路の両管路上に切換弁が設置されている。切換弁が両管路同士を遮断状態にする位置のとき、両管路上に位置する切換弁では各管路を連通状態にすることから、第1アクチュエータ又は第2アクチュエータに供給される圧油や第1アクチュエータ又は第2アクチュエータから排出される戻り油が切換弁を通過することで余分な圧力損失が発生する懸念がある。
【0006】
これに対して、切換弁が両管路同士を遮断状態にする位置のときに圧油が切換弁を通過することによる圧損の発生を回避する構成として、切換弁を両管路上に配置しないことが考えられる。しかし、この構成の場合、第1アクチュエータの戻り油の一部を第2管路からタンクへ排出させるために、副切換弁により第2管路をタンクに連通状態に切り換えると、第2アクチュエータも同時に第2管路から副管路を介してタンクに連通してしまうことが想定される。この場合、第2アクチュエータが操作装置の操作によらずに自重により不意に駆動する懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、一のアクチュエータの戻り油の一部を切換弁により別のアクチュエータの管路に分流させて戻り油の圧損低減を図る技術において、戻り油を分流させない位置の切換弁による圧損発生を回避しつつ、戻り油を分流させるときに別のアクチュエータの意図しない駆動を回避可能な作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいる。その一例は、圧油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動する第1油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動する第2油圧アクチュエータと、前記第1油圧アクチュエータ及び第2油圧アクチュエータから排出される戻り油を貯留するタンクと、前記油圧ポンプから前記第1油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れ及び前記第1油圧アクチュエータから前記タンクへ排出される戻り油の流れを制御する第1制御弁と、前記油圧ポンプから前記第2油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れ及び前記第2油圧アクチュエータから前記タンクへ排出される戻り油の流れを制御する第2制御弁と、前記第1油圧アクチュエータと前記第1制御弁とを接続する一対の第1アクチュエータ管路と、前記第2油圧アクチュエータと前記第2制御弁とを接続する一対の第2アクチュエータ管路と、前記第1制御弁及び前記第2制御弁を前記タンクに接続する戻り管路と、前記第1油圧アクチュエータの駆動を指示する第1操作装置と、前記第2油圧アクチュエータの駆動を指示する第2操作装置と、を備えた作業機械において、前記一対の第1アクチュエータ管路のうちのいずれか一方である第1管路と前記一対の第2アクチュエータ管路のうちのいずれか一方である第2管路とを接続する接続管路と、前記第1管路から分岐して前記タンクに接続されるタンク管路と、前記接続管路上に配置され、前記接続管路を遮断状態又は連通状態に切換可能な第1切換弁と、前記タンク管路上に配置され、前記タンク管路を遮断状態又は連通状態に切換可能な第2切換弁と、前記一対の第1アクチュエータ管路のうちの少なくとも前記第1管路の圧力を検出する圧力検出装置と、前記第1切換弁及び前記第2切換弁を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記第1操作装置からの駆動の指示が無く、且つ、前記第2操作装置が前記第2管路へ戻り油を排出させるような前記第2油圧アクチュエータの駆動を指示する場合において、前記圧力検出装置の検出値を基に得られる前記第1油圧アクチュエータに作用する負荷の指標が所定条件を満たすとき、前記接続管路が連通状態になるように前記第1切換弁を制御すると共に、前記タンク管路が連通状態になるように前記第2切換弁を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1切換弁を接続管路上に配置することで、一対の第1アクチュエータ管路及び一対の第2アクチュエータ管路上への第1切換弁の配置が回避されるので、戻り油を分流させない位置のときの第1切換弁による圧損発生を回避することができる。また、第1油圧アクチュエータの負荷の指標が所定条件を満たすときに限って、第2切換弁よりタンク管路を連通状態にするので、このときに第1アクチュエータの意図しない駆動が生じることはない。すなわち、第2アクチュエータの戻り油の一部を第1切換弁により第1アクチュエータの管路に分流させて戻り油の圧損低減を図る技術において、戻り油を分流させない位置の第1切換弁による圧損発生を回避しつつ、戻り油を分流させるときに第1アクチュエータの意図しない駆動を回避することが可能である。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る作業機械としての油圧ショベルを示す側面図である。
図2】第1の実施形態に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
図3図2に示す第1の実施形態に係る作業機械の油圧システムにおける各油圧シリンダに接続されたアクチュエータ管路の全長及び両アクチュエータ管路に接続される接続管路の接続位置を示す模式図である。
図4図2に示す第1の実施形態に係る作業機械の油圧システムにおいて戻り油を分流させるときの第1切換弁及び第2切換弁の切換位置を示す油圧回路図である。
図5図2に示す第1の実施形態に係る作業機械の制御装置におけるバケット操作時の第1切換弁及び第2切換弁の制御ロジックの一例を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
図7図6に示す第2の実施形態に係る作業機械の制御装置におけるバケット操作時の第1切換弁及び第2切換弁の制御ロジックの一例を示すブロック図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
図9図8に示す第3の実施形態に係る作業機械の制御装置におけるバケット操作時の第1切換弁及び第2切換弁の制御ロジックの一例を示すブロック図である。
図10】本発明のその他の実施形態の第1例に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
図11】その他の実施形態の第2例に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
図12】その他の実施形態の第3例に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の作業機械の実施形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、作業機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る作業機械としての油圧ショベルの概略構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る作業機械としての油圧ショベルを示す側面図である。ここでは、運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
【0013】
図1において、作業機械としての油圧ショベルは、自走可能な走行体1と、走行体1上に旋回可能に搭載された旋回体2と、旋回体2の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置3とを備えている。旋回体2は、油圧アクチュエータである旋回油圧モータ5によって走行体1に対して旋回動作するように構成されている。
【0014】
走行体1は、例えば、左右両側にクローラ式の走行装置11(図1中、左側のみ図示)を有している。左右の走行装置11はそれぞれ油圧アクチュエータである走行油圧モータ(図示せず)によって走行動作する。
【0015】
旋回体2は、走行体1上に旋回可能に搭載された支持構造体としての旋回フレーム13と、旋回フレーム13上の左前側に設置されたキャブ14と、旋回フレーム13の後端部に設けられたカウンタウェイト15と、キャブ14とカウンタウェイト15の間に設けられた機械室16とを含んで構成されている。キャブ14内には、オペレータが着座する運転席(図示せず)や後述の操作装置56、57(後述の図2参照)などが配置されている。カウンタウェイト15は、作業装置3と重量バランスをとるためのものである。機械室16は、原動機(図示せず)や後述の油圧ポンプ31、複数の制御弁35、36(後述の図2参照)の集合体など、各種機器を収容している。
【0016】
作業装置3は、掘削作業等の各種作業を行うためのものであり、例えば、複数のリンク部材を垂直方向に回動可能に連結することで構成された多関節型の装置である。複数のリンク部材は、例えば、ブーム18、アーム19、作業具としてのバケット20とで構成されている。ブーム18は、その基端部が旋回体2の旋回フレーム13の前部に上下方向に回動可能に支持されている。ブーム18の先端部には、アーム19の基端部が上下方向に回動可能に支持されている。アーム19の先端部には、バケット20の基端部が上下方向に回動可能に支持されている。ブーム18、アーム19、バケット20はそれぞれ、油圧アクチュエータであるブームシリンダ21、アームシリンダ32、バケットシリンダ33(図2も参照)によって駆動される。
【0017】
次に、第1の実施形態に係る作業機械が備える油圧システムの構成について図2及び図3を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。図3図2に示す第1の実施形態に係る作業機械の油圧システムにおける各油圧シリンダに接続されたアクチュエータ管路の全長及び両アクチュエータ管路に接続される接続管路の接続位置を示す模式図である。
【0018】
油圧ショベルは、走行体1、旋回体2、作業装置3(共に図1を参照)を油圧により動作させる油圧システム30を備えている。図2に示す油圧システム30は、本発明を端的に説明可能な油圧回路として、作業装置3のアーム19及びバケット20を動作させるための油圧回路のみを示している。それ以外の油圧回路は、省略されている。
【0019】
図2において、油圧システム30は、圧油を吐出する油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から供給される圧油により駆動する複数の油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ32及びバケットシリンダ33と、アームシリンダ32及びバケットシリンダ33から排出される戻り油を貯留するタンク34とを備えている。油圧システム30は、制御装置60によって制御されるように構成されている。
【0020】
油圧ポンプ31は、図示しない他の油圧アクチュエータに対しても圧油を供給するものである。油圧ポンプ31は、例えば、可変容量式のポンプであり、ポンプ容積を調整するレギュレータ(図示せず)を有している。油圧ポンプ31は、制御装置60からの指令に応じてポンプ容積(吐出流量)が調整されるように構成されている。
【0021】
アームシリンダ32及びバケットシリンダ33はそれぞれ、ボトム側油室32b、33b(以下、ボトム室と称する)及びロッド側油室32r、33r(以下、ロッド室と称する)を有している。第1油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ32は、第1方向制御弁35を介して、油圧ポンプ31及びタンク34と接続されている。第2油圧アクチュエータとしてのバケットシリンダ33は、第2方向制御弁36を介して、油圧ポンプ31及びタンク34と接続されている。第1方向制御弁35及び第2方向制御弁36、その他の油圧アクチュエータ用の図示しない方向制御弁は、機械室16(図1参照)に収容されている。
【0022】
第1方向制御弁35は、油圧ポンプ31からアームシリンダ32へ供給される圧油の流れ及びアームシリンダ32からタンク34へ排出される戻り油の流れを制御するものであり、例えば、3位置の制御弁である。第1方向制御弁35は、中立位置(N)のときには、油圧ポンプ31からアームシリンダ32への圧油の供給を遮断すると共に、アームシリンダ32からタンク34への戻り油の排出を遮断する。また、第1位置(A)のときには、油圧ポンプ31からの圧油をアームシリンダ32のボトム室32bに供給すると共に、アームシリンダ32のロッド室32rから排出された戻り油をタンク34へ導く。また、第2位置(B)のときには、油圧ポンプ31からの圧油をアームシリンダ32のロッド室32rに供給すると共に、アームシリンダ32のボトム室32bから排出された戻り油をタンク34へ導く。第1方向制御弁35は、制御装置60からの駆動指令(電気信号)に応じて、位置(流れ方向)及びストローク(流量)が制御されるように構成されている。
【0023】
第1方向制御弁35は、ポンプポートが吐出管路41を介して油圧ポンプ31に接続されていると共に、タンクポートが戻り管路42を介してタンク34に接続されている。第1方向制御弁35は、また、一対のアクチュエータポートが一対の第1アクチュエータ管路43、44を介してアームシリンダ32に接続されている。一対の第1アクチュエータ管路のうちの一方の管路43(以下、ボトム側管路)がアームシリンダ32のボトム室32bに接続されていると共に、他方の管路44(以下、ロッド側管路)がアームシリンダ32のロッド室32rに接続されている。
【0024】
第2方向制御弁36は、油圧ポンプ31からバケットシリンダ33へ供給される圧油の流れ及びバケットシリンダ33からタンク34へ排出される戻り油の流れを制御するものであり、例えば、3位置の制御弁である。第2方向制御弁36は、中立位置(N)のときには、油圧ポンプ31からバケットシリンダ33への圧油の供給を遮断すると共に、バケットシリンダ33からタンク34への戻り油の排出を遮断する。また、第1位置(A)のときには、油圧ポンプ31からの圧油をバケットシリンダ33のボトム室33bに供給すると共に、バケットシリンダ33のロッド室33rから排出された戻り油をタンク34へ導く。また、第2位置(B)のときには、油圧ポンプ31からの圧油をバケットシリンダ33のロッド室33rに供給すると共に、バケットシリンダ33のボトム室33bから排出された戻り油をタンク34へ導く。第2方向制御弁36は、制御装置60からの指令Cd2(電気信号)に応じて、位置(流れ方向)及びストローク(流量)が制御されるように構成されている。
【0025】
第2方向制御弁36は、ポンプポートが吐出管路41を介して油圧ポンプ31に接続されていると共に、タンクポートが戻り管路42を介してタンク34に接続されている。第2方向制御弁36は、また、一対のアクチュエータポートが一対の第2アクチュエータ管路45、46を介してバケットシリンダ33に接続されている。一対の第2アクチュエータ管路のうちの一方の管路45(以下、ボトム側管路)がバケットシリンダ33のボトム室33bに接続されていると共に、他方の管路46(以下、ロッド側管路)がバケットシリンダ33のロッド室33rに接続されている。
【0026】
一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのボトム側管路45は、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのボトム側管路43に対して、接続管路48を介して接続されている。すなわち、接続管路48は、一方端48aが第2アクチュエータ管路のボトム側管路45に接続されていると共に、他方端48bが第1アクチュエータ管路のボトム側管路43に接続されている。接続管路48は、図3に示すように、機械室16(図1参照)に収容されている制御弁の集合体の一部を構成する第1方向制御弁35及び第2方向制御弁36よりもアームシリンダ32及びバケットシリンダ33に近い位置で第1アクチュエータ管路のボトム側管路43及び第2アクチュエータ管路のボトム側管路45に接続されている。これは、第2アクチュエータ管路のボトム側管路45におけるバケットシリンダ33のボトム室33bから接続管路48との接続部48aまでの距離を極力短くすることを意図したものである。
【0027】
接続管路48上には、接続管路48を遮断状態又は連通状態に切換可能な第1切換弁38が配置されている。第1切換弁38は、例えば、2位置の電磁比例弁であり、ノーマル位置が遮断状態の閉位置(S)となるノーマルクローズ式として構成されている。第1切換弁38は、例えば、連通状態の開位置(C)のときにストロークに応じて開口面積が可変に構成されており、制御装置60からの指令Cs1(電気信号)に応じて開閉状態及びストロークが制御される。
【0028】
一対の第1アクチュエータ管路43、44のうち、接続管路48の他方端48bと接続されているボトム側管路43は、ボトム側管路43から分岐したタンク管路49を介してタンク34に接続されている。すなわち、タンク管路49は、第1方向制御弁35を介さずにボトム側管路43をタンク34に接続するものである。タンク管路49の一方端49aは、第1アクチュエータ管路のボトム側管路43における接続管路48との接続部48bよりも第1方向制御弁35に近い位置に接続されている。
【0029】
タンク管路49上には、タンク管路49を遮断状態又は連通状態に切換可能な第2切換弁39が配置されている。第2切換弁39は、例えば、2位置の電磁比例弁であり、ノーマル位置が遮断状態の閉位置(S)となるノーマルクローズ式として構成されている。第2切換弁39は、例えば、連通状態の開位置(C)のときにストロークに応じて開口面積が可変に構成されており、制御装置60からの指令Cs2(電気信号)に応じて開閉状態及びストロークが制御される。
【0030】
接続管路48の他方端48b及びタンク管路49の一方端49aが接続されている第1アクチュエータ管路のボトム側管路43には、当該ボトム側管路43の圧力を検出する圧力センサ51が設置されている。圧力センサ51は、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちの少なくとも、接続管路48及びタンク管路49が接続されたボトム側管路43の圧力を検出する圧力検出装置を構成するものである。ボトム側管路43の圧力は、アームシリンダ32のボトム室32bの圧力(以下、ボトム圧と称することがある)に相当するものである。圧力センサ51は、検出した圧力値に応じた検出信号を制御装置60へ出力する。
【0031】
制御装置60は、アーム用操作装置56及びバケット用操作装置57に電気的に接続されており、当該操作装置56、57の操作に応じて油圧システム30を制御するものである。アーム用操作装置56及びバケット用操作装置57はそれぞれ、アームシリンダ32(アーム19)及びバケットシリンダ33(バケット20)の駆動(動作)を指示するものであり、操作装置56、57の操作(操作方向及び操作量)に応じた操作信号を制御装置60へ出力する。
【0032】
制御装置60は、第1方向制御弁35及び第2方向制御弁36に電気的に接続されており、操作装置56、57の操作に応じて第1方向制御弁35及び第2方向制御弁36の位置及びストロークを制御する。また、制御装置60は、第1切換弁38及び第2切換弁39に電気的に接続されており、操作装置56、57の操作及び圧力センサ51の検出値に基づき第1切換弁38及び第2切換弁39を制御する。
【0033】
制御装置60は、ハード構成として例えば、RAMやROM等からなる記憶装置60aと、CPUやMPU等からなる処理装置60bとを備えている。記憶装置60aには、油圧システム30における第1方向制御弁35及び第2方向制御弁36と第1切換弁38及び第2切換弁39の駆動を制御するために必要なプラグラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置60bは、記憶装置60aからプログラムや各種情報を適宜読み込むと共に、操作装置56、57の操作信号及び圧力センサ51の検出信号を取り込み、当該プログラムに従って処理を実行することで各種機能を実現する。制御装置60による第2方向制御弁36と第1切換弁38と第2切換弁39の制御の詳細については後述する。
【0034】
次に、第1の実施形態に係る作業機械の油圧システムの動作について図2図4を用いて説明する。図4は、図2に示す第1の実施形態に係る作業機械の油圧システムにおいて戻り油を分流させるときの第1切換弁及び第2切換弁の切換位置を示す油圧回路図である。
【0035】
第1に、アーム19(図1参照)のダンプ操作が単独でなされた場合の油圧システム30の動作について説明する。図2に示すアーム用操作装置56がアームダンプ操作されると、制御装置60からの指令によって第1方向制御弁35が第2位置(B)側に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ31から吐出された圧油は、吐出管路41から第1方向制御弁35を介して一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのロッド側管路44を通過してアームシリンダ32のロッド室32rに供給される。これにより、アームシリンダ32が収縮することで、アーム19がダンプ動作を行う。このとき、アームシリンダ32のボトム室32bから第1アクチュエータ管路のボトム側管路43へ戻り油が排出される。ボトム側管路43へ排出される戻り油の流量は、ボトム室32bがロッド室32rよりもシリンダ断面積が大きい分、アームシリンダ32に供給された圧油の流量よりも大流量になる。そのため、ボトム側管路43を通過する相対的に大流量の戻り油には、相対的に大きな圧力損失が発生する傾向にある。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、制御装置60からの指令によって第2切換弁39が図2に示す閉位置(S)から開位置(C)側へ切り換えられる。これにより、アームシリンダ32のボトム室32bが第1アクチュエータ管路のボトム側管路43及びタンク管路49を介してタンク34に連通する。このため、ボトム側管路43へ流出した戻り油の一部は、タンク管路49から第2切換弁39を経由してタンク34に排出される。また、ボトム側管路43へ流出した戻り油の残りは、第1方向制御弁35を介して戻り管路42を通過してタンク34へ排出される。このように、アームシリンダ32のボトム室32bから第1アクチュエータ管路のボトム側管路43へ排出された戻り油は、ボトム側管路43とタンク管路49との接続部49aを起点に第1方向制御弁35側と第2切換弁39側とに分流してタンク34へ排出される。したがって、戻り油が分流する分、接続部49aよりも下流側の各管路を通過する流量が減少するので、戻り油に生じる圧損を低減することができる。
【0037】
第2に、バケット20(図1参照)のダンプ操作が単独でなされた場合の油圧システム30の動作について説明する。図2に示すバケット用操作装置57がバケットダンプ操作されると、図4に示すように、制御装置60からの指令によって第2方向制御弁36は第2位置(B)側に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ31から吐出された圧油は、吐出管路41から第2方向制御弁36を介して一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのロッド側管路46を通過してバケットシリンダ33のロッド室33rに供給される。これにより、バケットシリンダ33が収縮することで、バケット20がダンプ動作を行う。このとき、バケットシリンダ33のボトム室33bから第2アクチュエータ管路のボトム側管路45へ戻り油が排出される。ボトム側管路45へ排出される戻り油の流量は、ボトム室33bがロッド室33rよりもシリンダ断面積が大きい分、バケットシリンダ33に供給された圧油の流量よりも大流量になる。そのため、ボトム側管路45を通過する相対的に大流量の戻り油には、相対的に大きな圧力損失が発生する傾向にある。
【0038】
そこで、本実施の形態においては、図4に示すように、制御装置60からの指令によって第1切換弁38及び第2切換弁39の両方を図2に示す閉位置(S)から開位置(C)側へ切り換える。これにより、バケットシリンダ33のボトム室33bは、第2アクチュエータ管路のボトム側管路45から接続管路48及び第1アクチュエータ管路のボトム側管路43を介してタンク管路49を通じてタンク34に連通する。このため、ボトム側管路45へ排出された戻り油の一部は、接続管路48から開状態の第1切換弁38を経由して第1アクチュエータ管路のボトム側管路43に流入しタンク管路49から開状態の第2切換弁39を経由してタンク34へ排出される。また、ボトム側管路45へ排出された戻り油の残りは、第2方向制御弁36を介して戻り管路42を通過してタンク34へ排出される。このように、バケットシリンダ33のボトム室33bから第2アクチュエータ管路のボトム側管路45へ排出された戻り油は、ボトム側管路45と接続管路48との接続部48aを起点に分流してタンク34へ排出される。したがって、戻り油が分流する分、接続部48aよりも下流側の各管路を通過する流量が減少するので、戻り油に生じる圧損を低減することができる。
【0039】
本実施の形態においては、アームシリンダ32のボトム室32bに接続されている第1アクチュエータ管路のボトム側管路43がタンク管路49を介してタンク34に接続されていることに加えて、バケットシリンダ33のボトム室33bに接続されている第2アクチュエータ管路のボトム側管路45が接続管路48を介して第1アクチュエータ管路のボトム側管路43に接続されている。さらに、接続管路48及びタンク管路49はそれぞれ、第1切換弁38及び第2切換弁39によって遮断状態又は連通状態に切り換えることが可能である。したがって、アームシリンダ32のボトム室32bからの戻り油だけでなく、バケットシリンダ33のボトム室33bからの戻り油も、2つの流路に分流させてタンク34へ排出することが可能となっている。これにより、アームシリンダ32のボトム室32bからの戻り油及びバケットシリンダ33のボトム室33bからの戻り油に生じる圧損を低減することができる。
【0040】
本実施の形態においては、図3に示すように、第1切換弁38を配置した接続管路48における第2アクチュエータ管路のボトム側管路45側の接続部48aを第2方向制御弁36よりもバケットシリンダ33側に接近させた位置とすると共に第1アクチュエータ管路のボトム側管路43側の接続部48bを第1方向制御弁35よりもアームシリンダ32側に接近させた位置としている。油圧ショベルは、一般的に、作業装置を駆動する油圧シリンダから方向制御弁までの管路が長くなっている。このため、バケットシリンダ33のボトム室33bからの戻り油の分流点を戻り油の流れ方向の上流側に位置させることで、その分、圧損の低減効果が特に大きくなる。
【0041】
また、本実施の形態においては、第2アクチュエータ管路のボトム側管路45と第1アクチュエータ管路のボトム側管路43とに接続された接続管路48上に第1切換弁38を配置している。すなわち、第1切換弁38は、アームシリンダ32に接続される一対の第1アクチュエータ管路43、44上に配置されていないと共に、バケットシリンダ33に接続される一対の第2アクチュエータ管路45、46上に配置されていない。このため、第1切換弁38が接続管路48を遮断状態にする閉位置(S)にあるときに、油圧ポンプ31の圧油をアームシリンダ32又はバケットシリンダ33に供給しても、第1切換弁38による圧力損失が発生することはない。
【0042】
ただし、本実施の形態に係る油圧システム30の構成の場合、バケットシリンダ33のボトム室33bからの戻り油の一部を接続管路48から第1アクチュエータ管路のボトム側管路43及びタンク管路49を介してタンク34に排出させるときに、アームシリンダ32のボトム室33bがボトム側管路43及びタンク管路49を介してタンク34に連通してしまう。このとき、アームシリンダ32に対してロッド室32r側からボトム室32b側に向かうような荷重、例えば自重が作用する状態では、アーム用操作装置56の操作入力が無くとも、アームシリンダ32が意図せずに自重落下する懸念がある。そこで、本実施の形態においては、制御装置60がこのようなアームシリンダ32の意図しない駆動を回避することができるような第1切換弁38及び第2切換弁39の制御を行うように構成される。
【0043】
次に、第1の実施形態に係る作業機械の制御装置によるバケットシリンダの制御について図4及び図5を用いて説明する。図5は、図2に示す第1の実施形態に係る作業機械の制御装置におけるバケット操作時の第1切換弁及び第2切換弁の制御ロジックの一例を示すブロック図である。
【0044】
ここでは、バケット20(図1参照)にダンプ動作を実行させるときの制御装置60の制御について説明する。すなわち、バケット用操作装置57が一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのボトム側管路45へ戻り油を排出させるようなバケットシリンダ33の駆動を指示する場合の制御について説明するものである。本実施の形態の制御装置60は、概略すると、次の制御を行う。
【0045】
制御装置60は、図4に示すように、第2方向制御弁36を第2位置(B)側に切換制御することで、油圧ポンプ31からの圧油を第2方向制御弁36を介してバケットシリンダ33のロッド室33rに供給すると共に、バケットシリンダ33のボトム室33bから排出される戻り油の一部を第2アクチュエータ管路のボトム側管路45から第2方向制御弁36を経由して戻り管路42を通過させてタンク34に排出させる。さらに、第1切換弁38及び第2切換弁39の両方を開位置(C)側に切換制御することで、バケットシリンダ33のボトム室33bから排出される戻り油の残りを第2方向制御弁36を経由させずに接続管路48から第1アクチュエータ管路のボトム側管路43及びタンク管路49を介してタンク34へ排出させる。
【0046】
制御装置60は、上述の制御を実現するために、バケット用操作装置57の操作信号Ibk及びアーム用操作装置56の操作信号Iamの入力、並びに、圧力センサ51の検出信号Pam_bの入力に対して、例えば、図5に示す制御ロジックを実行する。これにより、制御装置60は、第2方向制御弁36の駆動を指令する第2制御弁指令Cd2、第1切換弁38の駆動を指令する第1切換弁指令Cs1、第2切換弁39の駆動を指令する第2切換弁指令Cs2を出力する。
【0047】
具体的には、図5において、制御装置60は、バケット用操作装置57の操作信号Ibk(バケット操作信号)、アーム用操作装置56の操作信号Iam(アーム操作信号)、圧力センサ51の検出信号Pam_b(アームシリンダ32のボトム圧に応じた検出信号)がそれぞれ入力される関数発生器61、関数発生器62、関数発生器63と、関数発生器61の出力と関数発生器62の出力を積算する積算器64と、関数発生器63の出力と積算器64の出力を積算する積算器65と、制御対象の第2方向制御弁、第1切換弁38、第2切換弁39にそれぞれ指令を出力する出力変換部66、出力変換部67、出力変換部68とを有している。
【0048】
関数発生器61は、バケット用操作装置57から入力された操作信号Ibk(バケット用操作装置57の操作量)に応じた第2方向制御弁36(図4参照)の開度を演算する。関数発生器61は、演算結果の第2方向制御弁36の開度を積算器64及び出力変換部66へ出力する。なお、ここでは、第2管路へ戻り油を排出させるようなバケットシリンダ33の駆動を指示する場合の関数発生器である。
【0049】
関数発生器62は、アーム用操作装置56から入力された操作信号Iam(アーム用操作装置56の操作量)がアーム用操作装置56の不感帯の上限nよりも小さい場合には「1」を演算する。不感帯は、操作量が予め設定した範囲より小さいときにその操作を無効とする領域である。また、操作信号Iamが不感帯の上限n以上の場合に「0」を演算する。すなわち、演算結果の「1」は、アームシリンダ32に対する駆動の指示が無い場合に相当する一方、演算結果の「0」は、アームシリンダ32に対する駆動の指示が有る場合に相当する。これは、アーム用操作装置56からの駆動指示に応じてアームシリンダ32を駆動させる制御を行う場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39によるバケットシリンダ33の戻り油の第1アクチュエータ管路のボトム側管路43への分流の実行を阻止するものである。このように、関数発生器62は、アーム用操作装置56の操作信号Iamに基づきアームシリンダ32への駆動指示の有無を判定する機能を有し、アームシリンダ32への駆動指示が有る場合には第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容しない又は禁止する「0」を出力する一方、アームシリンダ32の駆動指示が無い場合には第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容する「1」を出力する。関数発生器62は、演算結果の「0」又は「1」を積算器64へ出力する。
【0050】
関数発生器63は、圧力センサ51から入力された検出信号Pam_b(アームシリンダボトム圧検出信号)が0より幾分大きな正の閾値α以上である場合には「0」を演算する。また、圧力センサ51の検出信号Pam_bが閾値αよりも小さい場合には「1」を演算する。
【0051】
圧力センサ51により検出された第1アクチュエータ管路のボトム側管路43の圧力、すなわち、アームシリンダ32のボトム室32bの圧力がロッド室32rの圧力よりも相対的に高い場合、前述したように、第2切換弁39の開位置(C)側への切換によりアームシリンダ32に自重などによる意図しない駆動が生じる虞がある。アームシリンダ32の意図しない駆動の虞がある場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の切換制御によるバケットシリンダ33の戻り油の分流を実行させないようにする必要がある。このことから、圧力センサ51により検出される第1アクチュエータ管路のボトム側管路43の圧力は、アームシリンダ32に作用する自重などの負荷の指標として有用であり、アームシリンダ32に自重などによる意図しない駆動が生じる可能性の有無の判定材料として利用可能である。
【0052】
そこで、関数発生器63に対して、圧力センサ51のアームシリンダボトム圧検出信号Pam_bに基づくアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性の有無の判定を行う機能を持たせている。関数発生器63は、圧力センサ51の検出信号Pam_bと閾値αの比較から、アームシリンダ32の意図しない駆動の可能性が有ると判定する場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を禁止する「0」を出力する。一方、圧力センサ51の検出信号Pam_bと閾値αの比較から、アームシリンダ32の意図しない駆動の可能性が低いと判定する場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容する「1」を出力する。関数発生器62は、演算結果の「0」又は「1」を積算器65へ出力する。
【0053】
積算器64は、関数発生器61から出力された演算結果の第2方向制御弁36の開度に対して、関数発生器62から出力された演算結果の「0」又は「1」を積算する。関数発生器62の出力が「0」である場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容しない又は禁止する「0」を演算する。一方、関数発生器62の出力が「1」である場合には、関数発生器61の出力である第2方向制御弁36の開度を演算する。すなわち、積算器64は、アームシリンダ32への駆動指示が有る場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)への切換制御を実行させないようにするものである。積算器64は、演算結果の「0」又は第2方向制御弁36の開度を積算器65へ出力する。
【0054】
積算器65は、積算器64から出力された演算結果の「0」又は第2方向制御弁36の開度に対して、関数発生器63から出力された演算結果の「0」又は「1」を積算する。積算器64の出力が「0」である場合又は関数発生器63の出力が「0」である場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換制御を許容しない又は禁止する「0」を演算する。一方、関数発生器63の出力が「1」の場合かつ積算器64の出力が第2方向制御弁36の開度である場合には、第2方向制御弁36の開度を演算する。すなわち、積算器65は、アームシリンダ32の駆動指示が無い場合であっても、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性がある場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の切換制御によるバケットシリンダ33の戻り油の分流を実施させないようにするものである。したがって、積算器65は、アームシリンダ32の駆動指示が無く且つアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が低い場合に限って、バケット用操作装置57の操作に応じた第2方向制御弁36の開度を出力する。積算器65は、演算結果の「0」又は第2方向制御弁36の開度を出力変換部67、68へ出力する。
【0055】
出力変換部66は、関数発生器61からの出力(第2方向制御弁36の開度)を第2方向制御弁36に入力する指令(電気信号)に変換するものである。出力変換部66は、変換した指令(電気信号)を第2制御弁指令Cd2として第2方向制御弁36へ出力する。これにより、図4に示すように、第2方向制御弁36がバケット用操作装置57の操作(第2方向制御弁36の開度)に応じて第2位置(B)側へ切換制御される。
【0056】
出力変換部67は、積算器65からの出力を第1切換弁38に入力する指令(電気信号)に変換するものである。出力変換部67は、変換した指令(電気信号)を第1切換弁指令Cs1として第1切換弁38へ出力する。積算器65は、アームシリンダ32の駆動指示が無く且つアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が低い場合に限ってバケット用操作装置57の操作に応じた第2方向制御弁36の開度を出力する。このため、第1切換弁38は、図4に示すように、アームシリンダ32の駆動指示が無く且つアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が低い場合に限ってバケット用操作装置57の操作に応じて開位置(C)側へ切り換えられる。それ以外の場合には、第1切換弁38はノーマル位置の閉位置(S)に維持される。
【0057】
出力変換部68は、積算器65からの出力を第2切換弁39に入力する指令(電気信号)に変換するものである。出力変換部68は、変換した指令(電気信号)を第2切換弁指令Cs2として第2切換弁39へ出力する。積算器65は、アームシリンダ32の駆動指示が無く且つアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が低い場合に限ってバケット用操作装置57の操作に応じた第2方向制御弁36の開度を出力する。このため、第2切換弁39は、図4に示すように、アームシリンダ32の駆動指示が無く且つアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が低い場合に限ってバケット用操作装置57の操作に応じて開位置(C)側へ切り換えられる。それ以外の場合には、第2切換弁39はノーマル位置の閉位置(S)に維持される。
【0058】
このように構成された本実施の形態に係る御装置60は、圧力センサ51により検出された第1アクチュエータ管路のボトム側管路43の圧力(アームシリンダ32のボトム圧)が所定の正の閾値α以上である場合には、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)への切換を行わない。これにより、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)への切換によるアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動を回避することができる。
【0059】
上述した第1の実施形態に係る油圧ショベル(作業機械)は、圧油を吐出する油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から供給される圧油により駆動する第1油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ32と、油圧ポンプ31から供給される圧油により駆動する第2油圧アクチュエータとしてのバケットシリンダ33と、アームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)及びバケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)から排出される戻り油を貯留するタンク34と、油圧ポンプ31からアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)へ供給される圧油の流れ及びアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)からタンク34へ排出される戻り油の流れを制御する第1方向制御弁35(第1制御弁)と、油圧ポンプ31からバケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)へ供給される圧油の流れ及びバケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)からタンク34へ排出される戻り油の流れを制御する第2方向制御弁36(第2制御弁)と、アームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)と第1方向制御弁35(第1制御弁)とを接続する一対の第1アクチュエータ管路43、44と、バケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)と第2方向制御弁36(第2制御弁)とを接続する一対の第2アクチュエータ管路45、46と、第1方向制御弁35(第1制御弁)及び第2方向制御弁36(第2制御弁)をタンク34に接続する戻り管路42と、アームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の駆動を指示するアーム用操作装置56(第1操作装置)と、バケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)の駆動を指示するバケット用操作装置57(第2操作装置)とを備える。さらに、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのボトム側管路43(いずれか一方である第1管路)と一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのボトム側管路45(いずれか一方である第2管路)とを接続する接続管路48と、ボトム側管路43(第1管路)から分岐してタンク34に接続されるタンク管路49と、接続管路48上に配置され、接続管路48を遮断状態又は連通状態に切換可能な第1切換弁38と、タンク管路49上に配置され、タンク管路49を遮断状態又は連通状態に切換可能な第2切換弁39と、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちの少なくともボトム側管路43(第1管路)の圧力を検出する圧力検出装置としての圧力センサ51と、第1切換弁38及び第2切換弁39を制御する制御装置60とを備える。制御装置60は、アーム用操作装置56(第1操作装置)からの駆動の指示が無く、且つ、バケット用操作装置57(第2操作装置)がボトム側管路45(第2管路)へ戻り油を排出させるようなバケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)の駆動を指示する場合において、圧力センサ51(圧力検出装置)の検出値を基に得られるアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)に作用する負荷の指標が所定条件を満たすとき、接続管路48が連通状態になるように第1切換弁38を制御すると共に、タンク管路49が連通状態になるように第2切換弁39を制御するように構成されている。
【0060】
この構成によれば、第1切換弁38を接続管路48上に配置することで、一対の第1アクチュエータ管路43、44及び一対の第2アクチュエータ管路45、46上への第1切換弁38の配置が回避されるので、戻り油を分流させない位置のときの第1切換弁38による圧損発生を回避することができる。また、アームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の負荷の指標が所定条件を満たすときに限って、第2切換弁39よりタンク管路49を連通状態にするので、このときにアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の意図しない駆動が生じることはない。すなわち、バケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)の戻り油の一部を第1切換弁38によりアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の第1アクチュエータ管路43に分流させて戻り油の圧損低減を図る技術において、戻り油を分流させない位置の第1切換弁38による圧損発生を回避しつつ、戻り油を分流させるときにアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の意図しない駆動を回避することが可能である。
【0061】
また、本実施の形態においては、アームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)に作用する負荷の指標が圧力センサ51(圧力検出装置)により検出されたボトム側管路43(第1管路)の圧力であり、所定条件が圧力センサ51(圧力検出装置)により検出されたボトム側管路43(第1管路)の圧力が予め設定された正の閾値αよりも低い場合である。
【0062】
この構成によれば、第1アクチュエータ管路43、44のうちのボトム側管路43(第1管路)の圧力のみを用いてアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の負荷の指標を演算するので、アームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の負荷の指標を演算するために必要な圧力検出装置の構成が圧力センサ51のみで済むので、圧力検出装置を簡素化することができる。
【0063】
本実施の形態においては、接続管路48は、ボトム側管路43(第1管路)との接続部48bが第1方向制御弁35(第1制御弁)よりもアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)に接近した位置にあると共に、ボトム側管路45(第2管路)との接続部48aが第2方向制御弁36(第2制御弁)よりもバケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)に接近した位置にある。
【0064】
この構成によれば、バケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)からの戻り油を分流させる地点を戻り油の流れ方向の上流側に位置させることで、分流地点から下流側の管路の長さが長くなるので、戻り油の圧損低減の効果を高めることができる。
【0065】
[第2の実施形態]
次に、本発明の作業機械の第2の実施形態について図6及び図7を用いて説明する。なお、図6及び図7において、図1図5に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。図6は、第2の実施形態に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
【0066】
第2の実施形態に係る作業機械が第1の実施形態に対して相違する点は、図6に示す油圧システム30Aが一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのボトム側管路43に設置された圧力センサ51に加えてロッド側管路44に設置された圧力センサ52を更に備えていること、および、制御装置60Aが圧力センサ51の検出値に加えて追加の圧力センサ52の検出値も用いて第1切換弁38及び第2切換弁39の制御を実行することである。第2の実施形態に係る作業機械のそれ以外の構成は、第1の実施形態に係る作業機械の構成と同様なものであり、その説明を省略する。
【0067】
圧力センサ52は、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのロッド側管路44の圧力を検出するものである。圧力センサ52は圧力センサ51と共に、アームシリンダ32に接続されている一対の第1アクチュエータ管路43、44の圧力を検出する圧力検出装置を構成するものである。ロッド側管路44の圧力は、ロッド側管路44が接続されているアームシリンダ32のロッド室32rの圧力(以下、ロッド圧と称することがある)に相当するものである。圧力センサ52は、検出した圧力値(ロッド圧に相当)に応じた検出信号を制御装置60Aへ出力する。
【0068】
次に、第2の実施形態に係る作業機械の制御装置によるバケットシリンダの制御について図6及び図7を用いて説明する。図7は、図6に示す第2の実施形態に係る作業機械の制御装置におけるバケット操作時の第1切換弁及び第2切換弁の制御ロジックの一例を示すブロック図である。
【0069】
ここでも、バケット20(図1参照)にダンプ動作を実行させるときの制御装置60Aの制御について説明する。すなわち、図6に示すバケット用操作装置57が一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのボトム側管路45へ戻り油を排出させるようなバケットシリンダ33の駆動を指示する場合の制御について説明するものである。
【0070】
図7に示す第2の実施形態に係る作業機械の制御装置60Aの制御が第1の実施形態に係る作業機械の制御装置60の制御と異なる点は、圧力センサ51の検出値に加えて圧力センサ52の検出値を用いてアームシリンダ32に作用する新たな負荷の指標を算出し、算出結果の新たな負荷の指標に基づきアームシリンダ32に自重などによる意図しない駆動が生じる可能性が有るか否かを判定することである。圧力センサ51により検出されるボトム側管路43の圧力はアームシリンダ32のボトム圧に相当する一方、圧力センサ52により検出されるロッド側管路44の圧力はアームシリンダ32のロッド圧力に相当する。アームシリンダ32のボトム圧及びロッド圧からアームシリンダ32の推力を推定することが可能である。演算結果のアームシリンダ32の推力が自重の作用方向とは逆方向(アームシリンダ32が伸長する方向)である場合には、アームシリンダ32に自重などによる意図しない駆動が生じる可能性が低いと判定することが可能である。アームシリンダ32の推力に基づきアームシリンダ32の意図しない駆動の有無を判定するので、圧力センサ51の検出圧力のみで判定する第1の実施形態よりも正確な判定が可能である。
【0071】
具体的には、制御装置60Aは、第1の実施形態に係る制御装置60の関数発生器63(図5参照)の代わりに、圧力センサ51及び圧力センサ52の検出信号がそれぞれ入力されるゲイン演算器63b及びゲイン演算器63cと、ゲイン演算器63cの出力からゲイン演算器63bの出力を減算する減算器63dと、減算器63dの演算結果が入力される関数発生器63eとを備えている。ゲイン演算器63b及びゲイン演算器63cと減算器63dと関数発生器63eは、圧力センサ51及び圧力センサ52の検出値に基づき、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換制御を許容する「1」又は禁止する「0」を設定する切換判定器63Aを構成する。
【0072】
ゲイン演算器63bは、圧力センサ51から入力された検出信号Pam_b(アームシリンダ32のボトム圧に相当する圧力)に対してアームシリンダ32のボトム室32b側の受圧面積Kbを積算する。この演算は、ボトム室32b側に作用する力を算出するものである。ゲイン演算器63bの演算結果は、減算器63dへ出力される。
【0073】
ゲイン演算器63cは、圧力センサ52から入力された検出信号Pam_r(アームシリンダ32のロッド圧に相当する圧力)に対してアームシリンダ32のロッド室32rの受圧面積Krを積算する。この演算は、ロッド室32r側に作用する力を算出するものである。ゲイン演算器63cの演算結果は、減算器63dへ出力される。
【0074】
減算器63dは、ゲイン演算器63cの演算結果であるロッド室32r側の推力からゲイン演算器63bの演算結果であるボトム室32b側の推力を差し引いた差分を算出してアームシリンダ32の推力(アームシリンダ32の伸長する方向が正方向)を演算する。減算器63dの演算結果の差分であるアームシリンダ32の推力は、関数発生器63eへ出力される。
【0075】
関数発生器63eは、減算器63dの演算結果であるアームシリンダ32の推力に基づき、第2切換弁39の開位置(C)側への切換によってアームシリンダ32が自重などによる意図しない駆動の可能性があるか否か判定し、判定結果に応じて第1切換弁38及び第2切換弁39の切換を許容する「1」又は禁止する「0」を出力する。詳細には、減算器63dの演算結果であるアームシリンダ32の推力が正の閾値βよりも大きい場合には、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が無いと判定して第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容する「1」を演算する。一方、減算器63dの演算結果であるアームシリンダ32の推力が負である場合又は当該推力が正であっても閾値β以下の場合にはアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が有ると判定して第1切換弁38及び第2切換弁39の切換を禁止する「0」を演算する。アームシリンダ32の推力が正であっても極めて小さい場合には、外乱などによる瞬間的な力の作用によるアームシリンダ32の不意の駆動の可能性が否定できない状況を考慮している。関数発生器63eは、演算結果の「0」又は「1」を積算器65へ出力する。
【0076】
このように、本実施の形態に係る制御装置60Aは、ゲイン演算器63b及びゲイン演算器63cと減算器63dと関数発生器63eとで構成された切換判定器63Aを有する。切換判定器63Aは、圧力センサ51の検出値と圧力センサ52の検出値とを用いて、アームシリンダ32に作用する負荷の指標として、アームシリンダ32の推力を演算する。演算結果のアームシリンダ32の推力が所定条件を満たす場合(正の閾値βよりも大きい場合)、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性が無いと判定し、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容する「1」を演算する。一方、演算結果のアームシリンダ32の推力が所定条件を満たさない場合(正の閾値β以下である場合)、アームシリンダ32の意図しない駆動の可能性が有ると判定し、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を禁止する「0」を演算する。
【0077】
なお、第2の実施形態に係る制御装置60Aのそれ以外の機能部は、第1の実施形態に係る制御装置60の機能部と同様なものであり、その説明を省略する。
【0078】
上述した第2の実施形態に係る油圧ショベル(作業機械)によれば、第1の実施形態の場合と同様に、バケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)の戻り油の一部を第1切換弁38によりアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の第1アクチュエータ管路43に分流させて戻り油の圧損低減を図る技術において、戻り油を分流させない位置の第1切換弁38による圧損発生を回避しつつ、戻り油を分流させるときにアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の意図しない駆動を回避することが可能である。
【0079】
また、本実施の形態においては、圧力検出装置が、第1アクチュエータ管路43のボトム側管路43(第1管路)の圧力を検出する圧力センサ51(第1圧力センサ)と、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのボトム側管路43(第1管路)とは異なるロッド側管路(他方の管路)の圧力を検出する圧力センサ52(第2圧力センサ)とを有する。また、アームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)に作用する負荷の指標は、圧力センサ51(第1圧力センサ)の検出値と圧力センサ52(第2圧力センサ)の検出値とを用いて算出されるものである。
【0080】
この構成によれば、圧力センサ51の検出値に加えて圧力センサ52の検出値を用いてアームシリンダ32に作用する負荷の指標を算出してアームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動の可能性を判定するので、圧力センサ51の検出値のみで当該判定を行う第1の実施形態よりも、正確な判定が可能である。
【0081】
また、本実施の形態においては、第1油圧アクチュエータがアームシリンダ32(油圧シリンダ)であり、第1油圧アクチュエータの負荷の指標は圧力センサ51(第1圧力センサ)の検出値と圧力センサ52(第2圧力センサ)の検出値とを用いて算出されるアームシリンダ32(油圧シリンダ)の推力である。
【0082】
この構成によれば、第1油圧アクチュエータがアームシリンダ32(油圧シリンダ)の場合に、第1油圧アクチュエータの負荷の指標としてアームシリンダ32(油圧シリンダ)の推力を用いることで、アームシリンダ32(油圧シリンダ)の意図しない駆動の可能性について正確な判定を行うことが可能である。
【0083】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る作業機械について図8及び図9を用いて説明する。なお、図8及び図9において、図1図7に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。図8は、第3の実施形態に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。
【0084】
第3の実施形態に係る作業機械が第2の実施形態に対して相違する点は、図8に示す油圧システム30Bが図6に示す油圧システム30Aのアームシリンダ32を旋回油圧モータ5に変更していること、及び、制御装置60Bがアームシリンダ32から旋回油圧モータ5への変更に応じて第1切換弁38及び第2切換弁39の切換制御の方法が一部変更されていることである。第3の実施形態に係る作業機械のそれ以外の構成は、第2の実施形態に係る作業機械の構成と同様なものであり、その説明を省略する。
【0085】
具体的には、旋回油圧モータ5は、第1ポート5f及び第2ポート5sを有している。旋回油圧モータ5においては、漏れ量を無視すると、第1ポート5fに対する流入出の流量と第2ポート5sに対する流入出の流量とが同じ流量となる。すなわち、第1ポート5fの容積と第2ポート5sの容積が同じである。これは、受圧面積が異なるボトム室32b及びロッド室32rを有する油圧シリンダ(アームシリンダ32)とは異なる部分である。旋回油圧モータ5の第1ポート5f及び第2ポート5sにはそれぞれ、第1アクチュエータ管路43、44のうちの一方側管路43及び他方側管路44に接続されている。旋回油圧モータ5の駆動は、制御装置60Bによって第1方向制御弁35Bを介して制御される。第1方向制御弁35Bは、旋回用操作装置56Bの操作に応じて制御装置60Bによって制御される。圧力センサ51により検出される第1アクチュエータ管路の一方側管路43の圧力は、旋回油圧モータ5の第1ポート5f側の圧力に相当する。圧力センサ52により検出される第1アクチュエータ管路の他方側管路44の圧力は、、旋回油圧モータ5の第2ポート5s側の圧力に相当する。
【0086】
油圧ショベル(図1参照)が傾斜地にあるとき、旋回油圧モータ5は傾斜方向の一方側で旋回体2の自重を支えるので、旋回油圧モータ5には旋回体2の自重を含む負荷が作用する。このため、第2切換弁39の開位置(C)側への切換によって旋回体2の自重によって旋回油圧モータ5が操作装置56Bの操作によらずに意図しない回転駆動が生じる虞があり、このような旋回体2の不意の旋回動作の発生を回避する必要がある。
【0087】
そこで、本実施の形態に係る制御装置60Bは、第2の実施形態の場合と同様に、圧力センサ51の検出値と圧力センサ52の検出値を用いて旋回油圧モータ5に作用する負荷の指標を算出し、算出結果の負荷の指標に基づき旋回油圧モータ5に自重などによる意図しない回転駆動が生じる可能性が有るか否かを判定する。
【0088】
次に、第3の実施形態に係る作業機械の制御装置によるバケットシリンダの制御について図8及び図9を用いて説明する。図9は、図8に示す第3の実施形態に係る作業機械の制御装置におけるバケット操作時の第1切換弁及び第2切換弁の制御ロジックの一例を示すブロック図である。
【0089】
ここでも、バケット20(図1参照)にダンプ動作を実行させるときの制御装置60Bの制御について説明する。すなわち、図8に示すバケット用操作装置57が一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのボトム側管路45へ戻り油を排出させるようなバケットシリンダ33の駆動を指示する場合の制御について説明するものである。
【0090】
図9に示す第2の実施形態に係る作業機械の制御装置60Bの制御が第2の実施形態に係る作業機械の制御装置60Aの制御と異なる主な点は、圧力センサ51の検出値と圧力センサ52の検出値を用いて旋回油圧モータ5に作用する負荷の指標を算出し、算出結果の負荷の指標に基づき旋回油圧モータ5に自重などによる意図しない駆動が生じる可能性が有るか否かを判定することである。圧力センサ51により検出されるボトム側管路43の圧力は旋回油圧モータ5の第1ポート5fに作用する圧力(以下、第1ポート圧と称することがある)に相当する一方、圧力センサ52により検出されるロッド側管路44の圧力は旋回油圧モータ5の第2ポート5sに作用する圧力(以下、第2ポート圧と称することがある)に相当する。旋回油圧モータ5の第1ポート圧及び第2ポート圧から、旋回油圧モータ5に作用するトルクに対応する負荷の指標を演算可能である。演算結果の負荷の指標の向きが自重の作用方向とは逆方向(旋回油圧モータ5の戻り油が第2ポート5sから流出するような回転が生じる方向)である場合には、旋回油圧モータ5の自重などによる意図しない駆動の可能性が無いと判定することが可能である。なお、本実施の形態においては、当該判定を圧力センサ51及び圧力センサ52の両方の検出値に基づき行っているが、第1の実施形態と同様に、圧力センサ51の検出値のみを用いて当該判定を行うことも可能である。このように、油圧シリンダでなく油圧モータに対応した判定を行うことが可能である。
【0091】
具体的には、制御装置60Bの切換判定部63Bは、図7に示す第2の実施形態に係る制御装置60Aの切換判定部63Aにおけるゲイン演算器63b及びゲイン演算器63cが不要となり、切換判定部63Aの減算器63dに代わりに、圧力センサ51及び圧力センサ52の検出信号が入力される減算器63gと、切換判定部63Aの関数発生器63eの代わりに、減算器63gの演算結果が入力される関数発生器63hとを有している。減算器63gと関数発生器63hとで構成された切換判定部63Bは、旋回油圧モータ5に作用する負荷の指標として圧力センサ51の検出値と圧力センサ52の検出値との差分(圧力差)用いて旋回油圧モータ5の意図しない駆動の可能性の有無を判定するものであり、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換制御を許容する「1」又は禁止する「0」を設定する。
【0092】
制御装置60Bの減算器63gは、圧力センサ52の検出値である旋回油圧モータ5の第2ポート圧(他方側管路44の圧力)から圧力センサ51の検出値である旋回油圧モータ5の第1ポート圧(一方側管路43の圧力)を減算するものである。圧力センサ52の検出値から圧力センサ51の検出値を差し引いた差分である旋回油圧モータ5の第2ポート圧と第1ポート圧の圧力差は、旋回油圧モータ5に作用するトルク(負荷)に対応するものであり、旋回油圧モータ5に作用する負荷の指標として利用可能である。減算器63gの演算結果は、関数発生器63hへ出力される。
【0093】
関数発生器63hは、減算器63gの演算結果である旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差に基づき、第2切換弁39の開位置(C)側への切換によって旋回油圧モータ5が自重などによる意図しない回転駆動の可能性があるか否か判定し、判定結果に応じて第1切換弁38及び第2切換弁39の切換を許容する「1」又は禁止する「0」を出力する。詳細には、減算器63gの演算結果である旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差が正の閾値γよりも大きい場合には、旋回油圧モータ5の自重などによる意図しない駆動の可能性が無いと判定して第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容する「1」を演算する。一方、減算器63gの演算結果である旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差が負である場合又は当該圧力差が正であっても閾値γ以下の場合には、旋回油圧モータ5の自重などによる意図しない駆動の可能性が有ると判定して第1切換弁38及び第2切換弁39の切換を禁止する「0」を演算する。旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差が正であっても極めて小さい場合には、外乱などによる瞬間的な力の作用による旋回油圧モータ5の不意の駆動の可能性が否定できない状況を考慮している。関数発生器63hは、演算結果の「0」又は「1」を積算器65へ出力する。
【0094】
このように、本実施の形態に係る制御装置60Bは、減算器63gと関数発生器63hとで構成された切換判定器63Bを有する。切換判定器63Bは、圧力センサ51の検出値と圧力センサ52の検出値とを用いて、旋回油圧モータ5に作用する負荷の指標として、旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差を演算する。演算結果の旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差が所定条件を満たす場合(正の閾値γよりも大きい場合)、旋回油圧モータ5の自重などによる意図しない駆動の可能性が無いと判定し、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を許容する「1」を演算する。一方、演算結果の旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差が所定条件を満たさない場合(正の閾値γ以下である場合)、旋回油圧モータ5の意図しない駆動の可能性が有ると判定し、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換を禁止する「0」を演算する。
【0095】
なお、第3の実施形態に係る制御装置60Bのそれ以外の機能部は、第2の実施形態に係る制御装置60Aの機能部(図7参照)と同様なものであり、その説明を省略する。
【0096】
上述した第3の実施形態に係る油圧ショベル(作業機械)によれば、第2の実施形態の場合と同様に、バケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)の戻り油の一部を第1切換弁38によりアームシリンダ32(第1油圧アクチュエータ)の第1アクチュエータ管路43に分流させて戻り油の圧損低減を図る技術において、戻り油を分流させない位置の第1切換弁38による圧損発生を回避しつつ、戻り油を分流させるときに旋回油圧モータ5(第1油圧アクチュエータ)の意図しない駆動を回避することが可能である。
【0097】
また、本実施の形態においては、第1油圧アクチュエータが旋回油圧モータ5(油圧モータ)であり、第1油圧アクチュエータの負荷の指標は圧力センサ51(第1圧力センサ)の検出値と圧力センサ52(第2圧力センサ)の検出値との差分から算出される旋回油圧モータ5の両ポート5f、5s間の圧力差である。
【0098】
この構成によれば、第1油圧アクチュエータが旋回油圧モータ5(油圧モータ)の場合に、第1油圧アクチュエータの負荷の指標として旋回油圧モータ5(油圧モータ)の両ポート5f、5s間の圧力差を用いることで、旋回油圧モータ5(油圧モータ)の意図しない駆動の可能性について正確な判定を行うことが可能である。
【0099】
[その他の実施の形態]
なお、上述した第1~第3の実施形態においては、本発明を油圧ショベルに適用した例を示した。しかし、本発明は、各油圧アクチュエータ21、32、33、5から排出された戻り油がタンク34に戻るように構成された各種の作業機械に広く適用することが可能である。
【0100】
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0101】
例えば、上述した実施形態においては、油圧システム30、30A、30Bの第1方向制御弁35及び第2方向制御弁36が制御装置60、60A、60Bからの指令(電気信号)により駆動する構成の例を示した。しかし、第1方向制御弁35及び第2方向制御弁36は、操作装置56、56B及び操作装置57により生成されるパイロット圧によって駆動する油圧パイロット式の制御弁として構成することも可能である。
【0102】
また、上述した実施形態に係る制御装置60、60A、60Bは、処理装置60bがプログラムを解釈して実行することで各機能部を実現する構成を示した。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、記憶装置60aの他に、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことが可能である。しかし、ソフトウェアの一部又は全部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアで実現する構成も可能である。
【0103】
また、上述した実施の形態においては、油圧システム30、30A、30Bの接続管路48が、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのボトム側管路43に接続されていると共に、一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのボトム側管路45に接続された構成の例を示した。しかし、接続管路は、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのいずれか一方である第1管路と一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのいずれか一方である第2管路とを接続するものであればよい。このとき、タンク管路は、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちの第1管路から分岐するように構成される。このような構成の接続管路及びタンク管路の組み合わせを図10図12を用いて説明する。
【0104】
図10は、本発明のその他の実施形態の第1例に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。図10に示す油圧システム30Cにおいては、接続管路48Cが、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのロッド側管路44に接続されていると共に、一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのロッド側管路46に接続されている。この場合、タンク管路49Cの一方端49aは、接続管路48Cの他方端48bが接続されている第1アクチュエータ管路のロッド側管路44に接続される。これにより、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換によって、バケットシリンダ33のロッド室33rからロッド側管路46へ排出された戻り油の一部を、接続管路48Cから第1アクチュエータ管路のロッド側管路44を介してタンク管路49Cを通過してタンク34へ排出することが可能である。
【0105】
この場合、制御装置60Cは、第1の実施形態と同様に、圧力センサ52の検出値(アームシリンダ32のロッド圧)のみを用いてアームシリンダ32の負荷の指標を演算し、演算結果に基づき第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換の許容を設定する構成が可能である。これにより、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動を回避することが可能である。また、制御装置60Cは、第2の実施形態と同様に、圧力センサ52の検出値(アームシリンダ32のロッド圧)と圧力センサ51の検出値(アームシリンダ32のボトム圧)とを用いてアームシリンダ32の推力を演算し、演算結果の推力に基づいて第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換の許容を設定する構成が可能である。ただし、アームシリンダ32の推力の正の向きを第2の実施形態とは逆方向に設定する。これにより、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動を確実に回避することが可能である。
【0106】
また、図11は、その他の実施形態の第2例に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。図11に示す油圧システム30Dにおいては、接続管路48Dが、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのロッド側管路44に接続されていると共に、一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのボトム側管路45に接続されている。この場合、タンク管路49Dの一方端49aは、接続管路48Dの他方端48bが接続されている第1アクチュエータ管路のロッド側管路44に接続される。これにより、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換によって、バケットシリンダ33のボトム室33bからボトム側管路45へ排出された戻り油の一部を、接続管路48Dから第1アクチュエータ管路のロッド側管路44を介してタンク管路49Dを通過してタンク34へ排出することが可能である。
【0107】
この場合、制御装置60Dは、第1の実施形態と同様に、圧力センサ52の検出値(アームシリンダ32のロッド圧)のみを用いてアームシリンダ32の負荷の指標を演算し、演算結果に基づき第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換の許容を設定する構成が可能である。これにより、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動を回避することが可能である。また、制御装置60Dは、第2の実施形態と同様に、圧力センサ52の検出値(アームシリンダ32のロッド圧)と圧力センサ51の検出値(アームシリンダ32のボトム圧)とを用いてアームシリンダ32の推力を演算し、演算結果の推力に基づいて第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換の許容を設定する構成が可能である。ただし、アームシリンダ32の推力の正の向きを第2の実施形態とは逆方向に設定する。これにより、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動を確実に回避することが可能である。
【0108】
また、図12は、その他の実施形態の第3例に係る作業機械が備える油圧システムの構成を示す油圧回路図である。図12に示す油圧システム30Eにおいては、接続管路48Eが、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのボトム側管路43に接続されていると共に、一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのロッド側管路46に接続されている。この場合、タンク管路49の一方端49aは、接続管路48Dの他方端48bが接続されている第1アクチュエータ管路のボトム側管路43に接続される。これにより、第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換によって、バケットシリンダ33のロッド室33rからロッド側管路46へ排出された戻り油の一部を、接続管路48Eから第1アクチュエータ管路のボトム側管路43を介してタンク管路49を通過してタンク34へ排出することが可能である。
【0109】
この場合、制御装置60Eは、第1の実施形態と同様に、圧力センサ51の検出値(アームシリンダ32のボトム圧)のみを用いてアームシリンダ32の負荷の指標を演算し、演算結果に基づき第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換の許容を設定する構成が可能である。これにより、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動を回避することが可能である。また、制御装置60Eは、第2の実施形態と同様に、圧力センサ52の検出値(アームシリンダ32のロッド圧)と圧力センサ51の検出値(アームシリンダ32のボトム圧)とを用いてアームシリンダ32の推力を演算し、演算結果の推力に基づいて第1切換弁38及び第2切換弁39の開位置(C)側への切換の許容を設定する構成が可能である。この場合、アームシリンダ32の推力の正の向きを第2の実施形態と同じ方向に設定する。これにより、アームシリンダ32の自重などによる意図しない駆動を確実に回避することが可能である。
【0110】
上述したように、第1~第3の実施形態及びその他の実施形態の第1例~第3例に係る作業機械は、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのいずれか一方である第1管路と一対の第2アクチュエータ管路45、46のうちのいずれか一方である第2管路とを接続する接続管路48、48C、48D、48Eと、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちのいずれか一方である第1管路43又は44から分岐してタンク34に接続されるタンク管路49、49C、49Dと、接続管路48、48C、48D、48E上に配置された第1切換弁38と、タンク管路49、49C、49D上に配置された第2切換弁39と、一対の第1アクチュエータ管路43、44のうちの少なくとも第1管路43又は44の圧力を検出する圧力検出装置を構成する圧力センサ51又は圧力センサ52と、第1切換弁38及び第2切換弁39を制御する制御装置60、60A、60B、60C、60D、60Eとを備える。制御装置60、60A、60B、60C、60D、60Eは、操作装置56、56B(第1操作装置)からの駆動の指示が無く、且つ、バケット用操作装置57(第2操作装置)が第2管路45又は46へ戻り油を排出させるようなバケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)の駆動を指示する場合において、圧力センサ51又は52(圧力検出装置)の検出値を基に得られる第1油圧アクチュエータ32、5に作用する負荷の指標が所定条件を満たすとき、接続管路48、48C、48D、48Eが連通状態になるように第1切換弁38を制御すると共に、タンク管路49、49C、49Dが連通状態になるように第2切換弁39を制御するように構成されている。
【0111】
この構成によれば、第1切換弁38を接続管路48、48C、48D、48E上に配置することで、一対の第1アクチュエータ管路43、44及び一対の第2アクチュエータ管路45、46上への第1切換弁38の配置が回避されるので、戻り油を分流させない位置のときの第1切換弁38による圧損発生を回避することができる。また、第1油圧アクチュエータ32、5の負荷の指標が所定条件を満たすときに限って、第2切換弁39よりタンク管路49、49C、49Dを連通状態にするので、このときに第1油圧アクチュエータ32、5の意図しない駆動が生じることはない。すなわち、バケットシリンダ33(第2油圧アクチュエータ)の戻り油の一部を第1切換弁38により第1油圧アクチュエータ32、5の第1アクチュエータ管路43又は44に分流させて戻り油の圧損低減を図る技術において、戻り油を分流させない位置の第1切換弁38による圧損発生を回避しつつ、戻り油を分流させるときに第1油圧アクチュエータ32、5の意図しない駆動を回避することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
5…旋回油圧モータ(第1油圧アクチュエータ)、 31…油圧ポンプ、 32…アームシリンダ(第1油圧アクチュエータ)、 33…バケットシリンダ(第2油圧アクチュエータ)、 34…タンク、 35…第1方向制御弁(第1制御弁)、 36…第2方向制御弁(第2制御弁)、 38…第1切換弁、 39…第2切換弁、 42…戻り管路、 43…第1アクチュエータ管路(第1管路、他方の管路)、 44…第1アクチュエータ管路(他方の管路、第1管路)、 45、46…一対の第2アクチュエータ管路(第2管路)、 48、48C、48D、48E…接続管路、 48a…一方端(接続部)、 48b…他方端(接続部)、 49、49C、49D…タンク管路、 51…圧力センサ(圧力検出装置、第1圧力センサ、第2圧力センサ)、 52…圧力センサ(圧力検出装置、第2圧力センサ、第1圧力センサ)、 56…アーム用操作装置(第1操作装置)、 57…バケット用操作装置(第2操作装置)、 60、60A、60B、60C、60D、60E…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12