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特開2025-5485物体移動推定装置、システム、方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005485
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】物体移動推定装置、システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20250109BHJP
   G06T 7/73 20170101ALI20250109BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20250109BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20250109BHJP
【FI】
A01K29/00 A
G06T7/73
G06T7/20
G06T7/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105642
(22)【出願日】2023-06-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、農林水産省委託プロジェクト研究、「鶏及び豚の快適性により配慮した飼養管理技術の開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000232254
【氏名又は名称】日本電気通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】金田 真和
(72)【発明者】
【氏名】高岡 真則
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA52
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA30
5L096GA55
5L096HA04
5L096HA05
(57)【要約】
【課題】観測装置を少なくしつつ移動経路データを自動的に取得することに貢献することができる物体移動推定装置等を提供すること。
【解決手段】物体移動推定装置は、測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置の観測データを取得するデータ取得部と、観測データを用いて、圏内での物体の移動経路を測定して圏内測定移動経路データを生成する圏内移動測定部と、圏内測定移動経路データを用いて、圏外での物体の移動経路を推定して圏外推定移動経路データを生成する圏外移動推定部と、圏内測定移動経路データ及び圏外推定移動経路データに基づいて全体移動経路データを生成する移動経路データ生成部と、を備える。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得するように構成されたデータ取得部と、
前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成するように構成された圏内移動測定部と、
前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成するように構成された圏外移動推定部と、
前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成するように構成された移動経路データ生成部と、
を備える、物体移動経路推定装置。
【請求項2】
前記圏内移動測定部は、前記観測データを用いて、前記圏内での前記物体の個体を識別して前記個体の圏内における測定位置を測定し、複数の前記測定位置に基づいて、前記個体の前記圏内における、前記測定位置間を接続する測定動線を測定し、前記測定位置及び前記測定動線に基づいて、前記圏内での前記個体の前記移動経路を測定するように構成されている、請求項1記載の物体移動経路推定装置。
【請求項3】
前記圏外移動推定部は、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記個体の圏外における推定位置を推定し、前記圏内測定移動経路データ、及び、1又は複数の前記推定位置に基づいて、前記個体の圏外における、前記測定位置と前記推定位置との間、又は、推定位置間を接続する推定動線を推定し、前記測定位置、前記推定位置及び前記推定動線に基づいて、前記圏外での前記個体の前記移動経路を推定するように構成されている、請求項2記載の物体移動経路推定装置。
【請求項4】
前記圏外移動推定部は、前記物体の個体ごとの特徴を定義した個体特徴データを用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、請求項3記載の物体移動経路推定装置。
【請求項5】
前記圏外移動推定部は、他の前記個体の前記圏外推定移動経路データを用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、請求項4記載の物体移動経路推定装置。
【請求項6】
前記全体移動経路データを可視化するように構成された可視化部を備える、
請求項3記載の物体移動経路推定装置。
【請求項7】
前記全体移動経路データに基づいて前記物体又は前記測位対象エリアの状態を推定するように構成された状態推定部を備える、
請求項1記載の物体移動経路推定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載の物体移動経路推定装置と、
前記物体移動経路推定装置と通信可能に接続されるとともに、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置と、
を備える、物体移動経路推定システム。
【請求項9】
ハードウェア資源が、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得するステップと、
前記ハードウェア資源が、前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成するステップと、
前記ハードウェア資源が、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成するステップと、
前記ハードウェア資源が、前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成するステップと、
を含む、物体移動経路推定方法。
【請求項10】
物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得する処理と、
前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成する処理と、
前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成する処理と、
前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成する処理と、
をハードウェア資源に実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体移動推定装置、システム、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
流通業における倉庫、作業場所等の商品の管理、畜産業の牧場、畜舎等における家畜動物の管理、オフィス、工場、工事現場、商業施設、公共空間等における人と物の管理等において、商品、家畜動物、人、物等の物体に関する情報の記録や分析を行って業務改善する目的から、物体の位置の履歴、当該位置から求められる物体の動線、物体の移動量等に関する移動経路データを得ることが必要とされている。
【0003】
例えば、畜産業界では、畜産加工品の品質向上のため、また、感受性を持つ生き物としてとらえ、快適な環境の中でストレスを減らし、人も動物も幸せな関係を築こうという「アニマルウェルフェア」(以降、「AW」という)の取り組みの中で健康状態を知るため、家畜動物個体の運動量(移動量)を把握する必要がある。家畜動物個体の運動量を把握するため、現在は、家畜動物の筋肉の状態等を一頭づつ、人の手で確かめており、時間と労力を要する。また、家畜動物は数年に渡って飼養されるため、家畜動物個体の運動量の把握を自動化することが求められている。
【0004】
このような背景から、物体の移動経路データの取得を自動的に行えるようにした方法として、特許文献1には、方向を検出するセンサを用いて物体の移動方向を判定して、道路での物体の移動経路を推定する方法が開示されている。特許文献1の方法によれば、全ての交差点にセンサを設置しないようにすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-151669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本願発明者により与えられる。
【0007】
特許文献1の方法では、予め経路が規定された道路での物体の移動経路を推定しているため、物体がどの方向にも移動可能な場所においてセンサを間引して設置すると、物体の移動経路データを取得することができなくなることが多くなる。
【0008】
本発明の主な課題は、観測装置を少なくしつつ、物体の移動経路データを自動的に取得することに貢献することができる物体移動推定装置、システム、方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の視点に係る物体移動推定装置は、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得するように構成されたデータ取得部と、前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成するように構成された圏内移動測定部と、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成するように構成された圏外移動推定部と、前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成するように構成された移動経路データ生成部と、を備える。
【0010】
第2の視点に係る物体移動推定システムは、前記第1の視点に係る物体移動推定装置と、前記物体移動推定装置と通信可能に接続されるとともに、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置と、を備える。
【0011】
第3の視点に係る物体移動推定方法は、ハードウェア資源が、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得するステップと、前記ハードウェア資源が、前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成するステップと、前記ハードウェア資源が、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成するステップと、前記ハードウェア資源が、前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成するステップと、を含む。
【0012】
第4の視点に係るプログラムは、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得する処理と、前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成する処理と、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成する処理と、前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成する処理と、をハードウェア資源に実行させる。
【0013】
なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。また、本開示では、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。プログラムは、コンピュータ装置に入力装置又は外部から通信インタフェイスを介して入力され、記憶装置に記憶されて、プロセッサを所定のステップないし処理に従って駆動させ、必要に応じ中間状態を含めその処理結果を段階毎に表示装置を介して表示することができ、あるいは通信インタフェイスを介して、外部と交信することができる。そのためのコンピュータ装置は、一例として、典型的には互いにバスによって接続可能なプロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェイス、及び必要に応じ表示装置を備える。
【発明の効果】
【0014】
前記第1~第4の視点によれば、観測装置を少なくしつつ、物体の移動経路データを自動的に取得することに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示に係る物体移動推定システムの構成の第1例を模式的に示したブロック図である。
図2】本開示に係る物体移動推定システムで用いられるエリアデータの一例を模式的に示した表である。
図3】本開示に係る物体移動推定システムで用いられる個体特徴データの一例を模式的に示した表である。
図4】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作の一例を模式的に示したフローチャートである。
図5】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作におけるステップA3の詳細の一例を模式的に示したフローチャートである。
図6】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作におけるステップA4の詳細の一例を模式的に示したフローチャートである。
図7】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-1を模式的に示したイメージ図である。
図8】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-2を模式的に示したイメージ図である。
図9】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-3を模式的に示したイメージ図である。
図10】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-4を模式的に示したイメージ図である。
図11】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-5を模式的に示したイメージ図である。
図12】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-6を模式的に示したイメージ図である。
図13】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアBからCへの移動例2-1を模式的に示したイメージ図である。
図14】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアBからCへの移動例2-2を模式的に示したイメージ図である。
図15】本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからCへの移動例3を模式的に示したイメージ図である。
図16】本開示に係る物体移動推定システムの構成の第2例を模式的に示したブロック図である。
図17】本開示に係る物体移動推定システムにおける可視化の一例を模式的に示した測定位置、推定位置、測定動線及び推定動線のイメージ図である。
図18】本開示に係る物体移動推定システムにおける動線を可視化したときの(A)直線状の動線、(B)曲線状の動線、(C)折線状の動線の例を模式的に示したイメージ図である。
図19】本開示に係る物体移動推定システムにおける測定位置及び推定位置を可視化したときの一例を模式的に示したイメージ図である。
図20】本開示に係る物体移動推定システムの構成の第3例を模式的に示したブロック図である。
図21】本開示に係る物体移動推定システムにおけるブロックエリアの状態を可視化したときの一例を模式的に示したイメージ図である。
図22】本開示に係る物体移動推定装置の構成を模式的に示したブロック図である。
図23】ハードウェア資源の構成を模式的に示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示について図面を参照しつつ説明する。なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。また、下記の形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。さらに、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インタフェイスも同様である。プログラムはコンピュータ装置を介して実行され、コンピュータ装置は、例えば、プロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェイス、及び必要に応じ表示装置を備え、コンピュータ装置は、通信インタフェイスを介して装置内又は外部の機器(コンピュータを含む)と、有線、無線を問わず、交信可能に構成される。
【0017】
[形態1]
形態1に係る物体移動推定システムについて図面を用いて説明する。図1は、本開示に係る物体移動推定システムの構成の第1例を模式的に示したブロック図である。図2は、本開示に係る物体移動推定システムで用いられるエリアデータの一例を模式的に示した表である。図3は、本開示に係る物体移動推定システムで用いられる個体特徴データの一例を模式的に示した表である。
【0018】
物体移動推定システム1は、観測装置20A~20Eを用いて、物体2の移動経路を推定するシステムである(図1参照)。物体2として、例えば、家畜動物、人、商品、物等に適用することができる。形態1では物体2として家畜動物を例に説明する。物体移動推定システム1は、少ないハードウェア資源で物体2の移動情報を推定するように構成されている。物体移動推定システム1では、測位対象エリア10において、測位対象エリア10の全てを観測しないように(疎に)間引きして所定の位置に観測装置20A~20Eが設置されている。ここで、測位対象エリア10のうち、観測装置20A~20Eで物体2を観測できる範囲を圏内とし、観測装置20A~20Eで物体2を観測できない範囲を圏外とする。測位対象エリア10は、物体2の位置を測定及び推定する対象となるエリアである。測位対象エリア10は、図1では複数のブロックエリア11がマトリックス状に配置されている。測位対象エリア10は、例えば、牧場、畜舎、倉庫、作業場所、オフィス、工場、工事現場、商業施設、公共空間、道路等のエリアとすることができる。形態1では測位対象エリア10として牧場を例に説明する。物体移動推定システム1は、圏内で観測(測定)された物体2の位置(測定位置)に基づいて、圏外に移動した当該物体2の位置(推定位置)を推定して、測位対象エリア10における圏外での物体2の移動経路を補完する機能を備える。物体移動推定システム1は、観測装置20A~20Eと、物体移動推定装置30と、ユーザ端末50と、ネットワーク60と、を備える。
【0019】
観測装置20A~20Eは、測位対象エリア10の所定の位置における物体2を観測する装置である(図1参照)。観測装置20A~20Eは、測位対象エリア10の全てを観測しないように(疎に)間引きして設置されている。どれだけ間引くかは、観測装置20A~20Eの性能や用途に応じて決めてよく、限定しない。また、間引く間隔も、等間隔でもよいし、等間隔でなくてもよい。なお、この間引きにより、観測装置20A~20Eで観測可能な圏内と観測不能な圏外とに分かれることになる。図1の測位対象エリア10の圏内では、観測装置20Aが1行3列目の圏内ブロックエリア11Aを観測するように配置され、観測装置20Bが3行3列目の圏内ブロックエリア11Bを観測するように配置され、観測装置20Cが5行3列目の圏内ブロックエリア11Cを観測するように配置され、観測装置20Dが3行5列目の圏内ブロックエリア11Dを観測するように配置され、観測装置20Eが3行1列目の圏内ブロックエリア11Eを観測するように配置されている。図1の測位対象エリア10の圏外は、圏内ブロックエリア11A~11E以外のエリアであり、そのうち、左下の4つのブロックエリアが、建物、障害物等がある進入不能な圏外進入不能エリア12であり、右下の2つのブロックエリアが、草、食べ物等がある立ち寄りやすい圏外立ち寄りエリア13である。観測装置20A~20Eとして、観測装置20A~20E自身から物体2までの距離、物体2の移動、物体2の特徴を観測することが可能な装置、例えば、カメラ、センサ等を用いることができる。観測装置20A~20Eは、物体2が無線タグ(図示せず;例えば、RFIDタグ)やマーカ(例えば、2次元コード)を付けている場合には、無線タグやマーカを読み取って物体2の識別情報を取得する機能を備えていてもよい。観測装置20A~20Eは、ネットワーク60を介して物体移動推定装置30と通信可能に接続されている。観測装置20A~20Eは、物体2を観測した観測データ(識別情報を含んでいても可)を物体移動推定装置30に送信する。観測データとして、例えば、画像データ、検出データ等を用いることができ、観測地点を特定するための位置情報や、観測時刻を特定するための時刻情報を含んでもよい。
【0020】
物体移動推定装置30は、観測装置20A~20Eからの観測データを用いて、物体2の移動経路を推定する装置である(図1参照)。物体移動推定装置30は、観測データを用いて、圏内ブロックエリア11A~11Eでの物体2の移動経路を測定し、測定された物体2の移動経路に基づいて圏外(測位対象エリア10における圏内ブロックエリア11A~11E以外のエリア)での物体2の移動経路を推定する機能を備える。物体移動推定装置30として、例えば、コンピュータ機能を備える物理サーバや、クラウド上で仮想的に実現された仮想サーバを用いることができる。物体移動推定装置30は、ネットワーク60を介して観測装置20A~20E及びユーザ端末50と通信可能に接続されている。物体移動推定装置30は、記憶された所定のプログラムを実行することにより、仮想的に、エリアデータ蓄積部31と、個体特徴データ蓄積部32と、データ取得部33と、観測データ蓄積部34と、圏内移動測定部35と、圏外移動推定部36と、移動経路データ生成部37と、移動経路データ蓄積部38と、データ提供部39と、を備えた構成とすることができる。
【0021】
エリアデータ蓄積部31は、エリアデータ(図2参照)を蓄積する機能部である(図1参照)。エリアデータは、測位対象エリア10を複数のブロックエリア11に区画したときのブロックエリア11ごとに特徴を定義したデータであり、例えば、図2のようにブロックエリアごとに圏内、圏外、進入不能エリア、立ち寄りエリア等の特徴を定義したものとすることができる。エリアデータは、ユーザがユーザ端末50から設定又は変更することができるようにしてもよい。エリアデータは、圏外移動推定部36で用いることができる。
【0022】
個体特徴データ蓄積部32は、個体特徴データを蓄積する機能部である(図1参照)。個体特徴データは、各物体2の個体の特徴を定義したデータであり、例えば、図3のように、識別情報、リーダ、状態、性質、行動パターン等の特徴を定義したものとすることができる。個体特徴データは、ユーザがユーザ端末50から設定又は変更することができるようにしてもよい。個体特徴データは、圏外移動推定部36で用いることができる。
【0023】
データ取得部33は、物体移動推定装置30の外部からデータを取得する機能部である(図1参照)。データ取得部33は、観測装置20A~20Eからの観測データを取得し、取得した観測データを観測データ蓄積部34に記憶させる。
【0024】
観測データ蓄積部34は、観測データを蓄積する機能部である(図1参照)。観測データ蓄積部34は、観測時刻の順に整理して観測データを蓄積するようにしてもよく、観測地点ごとに整理して観測データを蓄積するようにしてもよく、観測データに識別情報が含まれている場合は識別情報ごとに整理して観測データを蓄積するようにしてもよい。観測データは、圏内移動測定部35や圏外移動推定部36で用いることができる。
【0025】
圏内移動測定部35は、観測データを用いて、圏内での物体2の移動経路を測定する機能部である(図1参照)。圏内移動測定部35は、観測データを用いて、圏内での物体2の個体を識別する。物体2の個体の識別は、観測データに含まれた識別情報を用いて行ったり、観測データが画像データである場合は物体2の個体の外観の特徴(例えば、牛の模様)を画像認識して行うようにしてもよい。圏内移動測定部35は、観測データを用いて、識別された物体2の個体の圏内における位置(測定位置)を測定する。圏内移動測定部35は、測定された複数の測定位置に基づいて、時刻順に、識別された物体2の個体の圏内における、測定位置間を接続する線分である動線(測定動線)を測定する。圏内移動測定部35は、複数の測定位置、及び、1又は複数の測定動線に基づいて、識別された物体2の個体の圏内における移動経路を測定する。圏内移動測定部35は、測定された移動経路に基づいて、識別された物体2の個体の圏内における移動経路をデータ化した移動経路データ(圏内測定移動経路データ)を生成して移動経路データ蓄積部38に蓄積させる。圏内測定移動経路データは、対応する、識別情報、測定位置及び測定動線を含む。
【0026】
圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、圏外での物体2の移動経路を推定する機能部である(図1参照)。圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、物体2の個体の圏外における位置(推定位置)を推定する。推定位置は、物体2の個体が圏外にいるときの所定の時間間隔ごとの位置を推定したものとすることができる。推定位置の推定方法については、後述する。圏外移動推定部36は、複数の圏内測定移動経路データ(測定位置を含む)、及び、推定された1又は複数の推定位置に基づいて、時刻順に、物体2の個体の圏外における、測定位置と推定位置との間又は推定位置間を接続する線分である動線(推定動線)を推定する。圏外移動推定部36は、1又は複数の測定位置、1又は複数の推定位置及び、1又は複数の推定動線に基づいて、物体2の個体の圏外における移動経路を推定する。圏外移動推定部36は、推定された移動経路に基づいて、物体2の個体の圏外における移動経路をデータ化した移動経路データ(圏外推定移動経路データ)を生成して移動経路データ蓄積部38に蓄積させる。圏外推定移動経路データは、対応する、識別情報、推定位置及び推定動線を含み、下記の推定位置の推定方法において算出された圏外滞在時間、移動方向及び移動速度を含むようにしてもよい。
【0027】
ここで、推定位置の推定方法として、例えば、以下の(a)~(g)の推定方法が挙げられる。(a)~(g)の推定方法はいずれか1つでもよく、複数を組み合わせてもよい。(a)~(g)の推定方法は、ユーザがユーザ端末50を用いて選択できるようにしてもよい。
【0028】
(a)圏外滞在時間(不検出時間)を用いた推定。圏外滞在時間は、圏内から圏外になる最後の圏内の測定位置での時刻と、その後の当該圏外から圏内になる最初の圏内の測定位置での時刻と、に基づいて算出することができる。また、圏外滞在時間は、圏内から圏外になる最後の圏内の測定位置での時刻と、その後の当該圏外における最新時刻(現在時刻)と、に基づいて算出することもできる。圏外滞在時間を用いることで、物体2がどの圏外を移動したのかのおおよその位置の範囲を推定するのに役立つ。また、圏外滞在時間は、物体2の圏外での移動時間として用いることができる。
【0029】
(b)圏内から圏外になる当該圏内での最後の第1測定位置と、その後の当該圏外から他の圏内になる当該他の圏内での最初の第2測定位置との位置関係を用いた推定。このような位置関係を用いることで物体2がどの圏外を移動したのかのおおよその位置の推移を推定するのに役立つ。
【0030】
(c)圏内から圏外になる当該圏内の最後の第1測定位置での物体2の第1移動方向と、その後の当該圏外から他の圏内になる当該他の圏内の最初の第2測定位置での第2移動方向と、に基づいた推定。測定位置での移動方向は、ある測定位置と、その直前又は直後の測定位置とに基づいて算出することができる。測定位置での移動方向を織り込むことにより、推定位置のマルチパスの排除に役立つ。
【0031】
(d)圏内から圏外になる当該圏内の最後の第1測定位置での物体2の第1移動速度と、その後の当該圏外から他の圏内になる当該他の圏内の第2測定位置での物体2の第2移動速度と、に基づいた推定。測定位置での移動速度は、ある測定位置及び時刻と、その直前又は直後の測定位置及び時刻とに基づいて算出することができる。測定位置での移動速度を織り込むことにより、物体2がどの圏外を移動したのか位置の推定精度を高めるのに役立つ。また、測定位置での移動速度、及び、圏外滞在時間を用いることで、物体2の圏外での移動距離又は移動量(運動量)を推定することができる。さらに、物体2の移動速度の限界と圏外滞在時間から、ありえない位置や移動距離を排除するのに役立つ。
【0032】
(e)諸条件や物理法則などから論理的に推論した結果(例えば、図2のエリアデータの進入不能エリア)を用いた推定。論理的に推論した結果は、エリアデータ蓄積部31や個体特徴データ蓄積部32で予め設定することができる。このような推論結果を織り込むことにより、推定位置のマルチパスの排除や、動物の習性、場所の構造、誤検知、エラー等によるありえない推定位置の排除に役立つ。
【0033】
(f)物体2の性質、行動パターン(例えば、図2のエリアデータの立ち寄りエリア)を用いた推定。このような性質、行動パターンを織り込むことにより、推定位置のマルチパスの排除に役立つ。
【0034】
(g)ある個体と、他の個体(例えば、群れのリーダ等)との関係(例えば、図3の個体特徴データの特徴(1)を参照)を用いた推定。ある個体と、他の個体との関係を予め定義しておき、他の個体の圏外推定移動経路データを用いて、圏外におけるある個体の移動経路を推定する。これにより、他の個体の移動経路データをある個体に適用して推定負荷を軽減することができる。
【0035】
移動経路データ生成部37は、圏内測定移動経路データ及び圏外推定移動経路データを用いて、測位対象エリア10における物体2の個体の全体の移動経路データ(全体移動経路データ)を生成する機能部である(図1参照)。移動経路データ生成部37は、生成された全体移動経路データを移動経路データ蓄積部38に蓄積させる。
【0036】
移動経路データ蓄積部38は、移動経路データを蓄積する機能部である(図1参照)。移動経路データ蓄積部38は、圏内移動測定部35からの圏内測定移動経路データ、圏外移動推定部36からの圏外推定移動経路データ、及び、移動経路データ生成部37からの全体移動経路データを、識別情報ごと、エリアごと、又は、時系列で整理して蓄積するようにしてもよい。
【0037】
データ提供部39は、ユーザ端末50にデータを提供する機能部である(図1参照)。データ提供部39は、移動経路データ蓄積部38に蓄積された移動経路データをユーザ端末50に送信する。
【0038】
ユーザ端末50は、ユーザが使用する情報端末である(図1参照)。ユーザ端末50は、物体移動推定システム1内において複数あってもよい。ユーザ端末50は、ネットワーク60を介して物体移動推定装置30と通信可能に接続されている。ユーザ端末50は、ユーザの操作によって入力されたデータを物体移動推定装置30に送信することができる。ユーザ端末50は、物体移動推定装置30からのデータを出力(表示、音声出力等)することができる。
【0039】
ネットワーク60は、観測装置20A~20E、物体移動推定装置30、ユーザ端末50間を通信可能に接続する情報通信網である。ネットワーク60として、例えば、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)等の通信網を用いることができる。
【0040】
次に、形態1に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作について図面を用いて説明する。図4は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作の一例を模式的に示したフローチャートである。なお、物体移動推定システム及び物体移動推定装置の構成については、図1を参照されたい。
【0041】
まず。物体移動推定装置30のデータ取得部33は、観測装置20A~20Eからの観測データを取得し、取得した観測データを観測データ蓄積部34に記憶させる(ステップA1)。観測データの取得は、定期的に行ってもよく、観測装置20A~20Eのいずれかが対応する圏内において物体2を観測したときに行ってもよい。
【0042】
次に、物体移動推定装置30の圏内移動測定部35は、取得した観測データを用いて、圏内での物体2の個体を識別する(ステップA2)。
【0043】
次に、物体移動推定装置30の圏内移動測定部35は、取得した観測データを用いて、識別された物体2の個体の圏内における移動経路を測定し、測定された移動経路に基づいて、識別された物体2の個体の圏内における移動経路データ(圏内測定移動経路データ)を生成して移動経路データ蓄積部38に蓄積させる(ステップA3)。なお、ステップA3の詳細については、後述する。
【0044】
次に、物体移動推定装置30の圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、物体2の個体の圏外における位置(推定位置)を推定し、複数の圏内測定移動経路データ(測定位置を含む)、及び、推定された1又は複数の推定位置に基づいて、物体2の個体の圏外における、時刻順に測定位置と推定位置との間又は推定位置間を接続する動線(推定動線)を推定し、測定位置、推定位置及び推定動線に基づいて、物体2の個体の圏外における移動経路を推定し、推定された移動経路に基づいて、物体2の個体の圏外における移動経路データ(圏外推定移動経路データ)を生成して移動経路データ蓄積部38に蓄積させる(ステップA4)。なお、ステップA4の詳細については、後述する。
【0045】
次に、物体移動推定装置30の移動経路データ生成部37は、圏内測定移動経路データ及び圏外推定移動経路データを用いて、測位対象エリア10における物体2の個体の全体の移動経路データを生成し、生成された移動経路データを移動経路データ蓄積部38に蓄積させる(ステップA5)。
【0046】
最後に、物体移動推定装置30のデータ提供部39は、移動経路データ蓄積部38に蓄積された移動経路データをユーザ端末50に提供(送信)し(ステップA6)、その後、終了する。
【0047】
次に、形態1に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作におけるステップA3の詳細について図面を用いて説明する。図5は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作におけるステップA3の詳細の一例を模式的に示したフローチャートである。
【0048】
図4のステップA2の後、物体移動推定装置30の圏内移動測定部35は、取得した観測データを用いて、識別された物体2の個体の圏内における位置(測定位置)を測定する(ステップB1)。
【0049】
次に、圏内移動測定部35は、測定された複数の測定位置に基づいて、識別された物体2の個体の圏内における、時刻順に測定位置間を接続する動線(測定動線)を測定する(ステップB2)。
【0050】
次に、圏内移動測定部35は、測定位置及び測定動線に基づいて、識別された物体2の個体の圏内における移動経路を測定する(ステップB3)。
【0051】
次に、圏内移動測定部35は、測定された移動経路に基づいて、識別された物体2の個体の圏内における移動経路データ(圏内測定移動経路データ)を生成する(ステップB4)。
【0052】
次に、圏内移動測定部35は、圏内測定移動経路データを移動経路データ蓄積部38に蓄積させ(ステップB5)、その後、図4のステップA4(図6のステップC1)に進む。
【0053】
次に、形態1に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作におけるステップA4の詳細について図面を用いて説明する。図6は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の動作におけるステップA4の詳細の一例を模式的に示したフローチャートである。
【0054】
図4のステップA3(図5のステップB5)の後、物体移動推定装置30の圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、物体2の圏外滞在を検出する(ステップC1)。物体2の圏外滞在の検出は、例えば、圏内測定移動経路データにおける物体2の測定位置のうち前後の片側のみにしか測定動線が接続されていない測定位置があるか否かを検索することにより行うことができる。なお、物体2の圏外滞在を検出することができないときは、物体2が圏内のみに滞在していると判断して、終了する。
【0055】
次に、圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、物体2の圏外滞在時の直前及び直後の一方又は両方の圏内ブロックエリアを特定する(ステップC2)。物体2の圏外滞在時の直前及び直後の圏内ブロックエリアは、圏内測定移動経路データに含まれた観測地点を特定するための位置情報を用いて特定することができる。
【0056】
次に、圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、物体2の圏外滞在時間を算出する(ステップC3)。
【0057】
次に、圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、圏外滞在時の直前及び直後の一方又は両方の圏内ブロックエリアでの物体の移動方向を算出する(ステップC4)。
【0058】
次に、圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、圏外滞在時の直前及び直後の一方又は両方の圏内ブロックエリアでの物体の移動速度を算出する(ステップC5)。
【0059】
次に、圏外移動推定部36は、エリアデータ蓄積部31から、対応する圏内ブロックエリアのエリアデータを取得する(ステップC6)。
【0060】
次に、圏外移動推定部36は、個体特徴データ蓄積部32から、対応する物体2の個体特徴データを取得する(ステップC7)。
【0061】
次に、圏外移動推定部36は、算出された圏外滞在時間、移動方向及び移動速度、並びに、取得したエリアデータ及び個体特徴データを用いて、物体2の個体の圏外における位置(推定位置)を推定する(ステップC8)。
【0062】
次に、圏外移動推定部36は、複数の圏内測定移動経路データ(測定位置を含む)、及び、推定された1又は複数の推定位置に基づいて、物体2の個体の圏外における、時刻順に測定位置と推定位置との間又は推定位置間を接続する動線(推定動線)を推定する(ステップC9)。
【0063】
次に、圏外移動推定部36は、測定位置、推定位置及び推定動線に基づいて、物体2の個体の圏外における移動経路を推定する(ステップC10)。
【0064】
次に、圏外移動推定部36は、推定された移動経路に基づいて、物体2の個体の圏外における移動経路データ(圏外推定移動経路データ)を生成する(ステップC11)。
【0065】
次に、圏外移動推定部36は、圏外推定移動経路データを移動経路データ蓄積部38に蓄積させ(ステップC12)、その後、図4のステップA5に進む。
【0066】
次に、形態1に係る物体移動推定システムにおける物体移動推定装置の物体2の個体の圏外における移動経路の推定について図面を用いて説明する。図7は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-1を模式的に示したイメージ図である。図8は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-2を模式的に示したイメージ図である。図9は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-3を模式的に示したイメージ図である。図10は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-4を模式的に示したイメージ図である。図11は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-5を模式的に示したイメージ図である。図12は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからBへの移動例1-6を模式的に示したイメージ図である。図13は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアBからCへの移動例2-1を模式的に示したイメージ図である。図14は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアBからCへの移動例2-2を模式的に示したイメージ図である。図15は、本開示に係る物体移動推定システムにおける物体のブロックエリアAからCへの移動例3を模式的に示したイメージ図である。
【0067】
(移動例1-1)
図7のようにブロックエリアAからブロックエリアBの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアA、Bの位置関係のみが分かる場合、物体2の移動経路は、ブロックエリアAからブロックエリアBへの直線経路、当該直線経路よりも外側に迂回した迂回経路、ブロックエリアAとブロックエリアBとの間で反復を伴った反復移動等であると推定することができる。
【0068】
(移動例1-2)
図8のようにブロックエリアAからブロックエリアBの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアA、Bの位置関係、及び、圏外滞在時間が分かり、圏外滞在時間が短い場合、物体2の移動経路は、ブロックエリアAからブロックエリアBへの直線経路であると推定することができる。
【0069】
(移動例1-3)
図9のようにブロックエリアAからブロックエリアBの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアA、Bの位置関係、及び、圏外滞在時間が分かり、圏外滞在時間が長い場合、物体2の移動経路は、左右どちらから迂回したか、どれだけ迂回したかまでは分からないが、直線経路よりも外側に迂回した迂回経路、ブロックエリアAとブロックエリアBとの間で反復を伴った反復移動等であると推定することができる。
【0070】
(移動例1-4)
図10のようにブロックエリアAからブロックエリアBの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアA、Bの位置関係、圏外滞在時間、及び、移動方向が分かり、圏外滞在時間が長い場合、物体2の移動経路は、移動速度が分からないので移動距離にバラツキがあるが、S字状の移動であると推定することができる。
【0071】
(移動例1-5)
図11のようにブロックエリアAからブロックエリアBの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアA、Bの位置関係、圏外滞在時間、移動方向、及び、移動速度が分かり、圏外滞在時間が長く、移動速度が早い場合、物体2の移動経路は、S字状の移動であると推定することができ、移動速度が分かることで移動距離を推定することができ、移動経路を絞ることができる。
【0072】
(移動例1-6)
図12のようにブロックエリアAからブロックエリアBの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアA、Bの位置関係、圏外滞在時間、移動方向、及び、移動速度が分かり、圏外滞在時間が長く、移動速度が遅い場合、物体2の移動経路は、S字状の移動であると推定することができ、移動速度が遅いので、移動経路の長さが短くなることが分かり、さらに移動経路を絞ることができる。
【0073】
(移動例2-1)
図13のようにブロックエリアBからブロックエリアCの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアB、Cの位置関係、圏外滞在時間、移動方向、移動速度、及び、圏外進入不能エリア12が有ることが分かり、圏外滞在時間が長く、移動速度が遅い場合、物体2の移動経路は、ブロックエリアBから、圏外進入不能エリア12を通らないようにブロックエリアA、B間を迂回してブロックエリアCに移動すると推定することができる。
【0074】
(移動例2-2)
図14のようにブロックエリアBからブロックエリアCの順に物体2を測定した場合において、ブロックエリアB、Cの位置関係、圏外滞在時間、移動方向、移動速度、及び、圏外進入不能エリア12及び圏外立ち寄りエリア13が有ることが分かり、圏外滞在時間が長く、移動速度が早い場合、物体2の移動経路は、ブロックエリアBから、圏外進入不能エリア12を通らないようにブロックエリアA、B間を通過して、圏外立ち寄りエリア13を立ち寄って、ブロックエリアCに移動すると推定することができる。また、圏外立ち寄りエリア13では立ち止まることを想定して、圏外立ち寄りエリア13に入らない場合よりも移動距離を短めに推定することもできる。
【0075】
(移動例3)
図15のようにブロックエリアAからブロックエリアCの順に物体2を測定した場合において、個体特徴データ(図3参照)によって物体2が群れのリーダに従属することが分かる場合、物体2の移動経路は、物体2の群れのリーダの移動経路と同等のものと推定することができる。
【0076】
形態1によれば、観測装置20A~20Eで観測可能な圏内で測定された物体2の移動経路データを用いて、観測装置20A~20Eで観測不能な圏外での物体2の移動経路を推定することで、物体2がどの方向にも移動可能な場所でも、観測装置20A~20Eを少なくしつつ、物体2の移動経路データを自動的に取得することに貢献することができる。これにより、省電力化して、屋内観測等あらゆる環境でも、物体2の移動経路データを低コストで取得することができる。
【0077】
なお、物体の移動経路データの取得を自動的に行う方法として、例えば、受信機、読取装置、カメラ、3次元センサ等の観測機器を用いて物体の外から物体の位置を観測する方法がある。この方法では、物体に、無線通信機(例えば、BLE(Bluetooth Low Energy;登録商標)ビーコン、UWB(Ultra Wide Band)モジュール内蔵機器等)、無線タグ(例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグ)、マーカ(例えば、2次元コード)を取り付けたり、物体の外観に特徴(例えば、牛の模様)がある場合は何も取り付けずに、物体の移動経路を管理したいエリアに、全エリアをカバーするように受信機、読取装置、カメラ、3次元センサ等の観測機器を設置して、物体の情報(例えば、識別情報や位置を特定する手掛かりとなる情報(例えば、受信信号強度データ、画像データ、点群データ、検出データ等))を取得して物体の位置を観測する。しかしながら、上記のように観測機器を用いて物体の外から物体の位置を観測する方法では、観測したいエリアの全てを測定するためには、観測機器を多数設置する必要があり、コスト増、景観悪化を招くだけでなく、多くの観測機器や配線などの施工、維持管理の手間がかかる。また、この方法では、設置場所の都合(例えば、地形、業務との兼ね合い、動物にいたずらされる等)で、測位対象エリアの全てを観測するように観測機器を設置できない場合には、物体の移動経路データを取得することができない。さらに、この方法では、測位対象エリアの全てを観測しないと観測不能エリア(圏外)が生じ、圏外においては、位置の履歴やそこから求められる物体の移動経路データを取得することができない可能性がある。
【0078】
また、物体の移動経路データの取得を自動的に行う方法として、対象物にGPS(Global Positioning System)ロガーなどの測位装置を付けて定期的に測位装置から情報を取得する方法がある。この方法では、測位装置の消費電力が比較的多く、電池交換の頻度が増えて手間になる可能性がある。また、GPSロガー等の測位装置は比較的高価で、使い捨てはできないので、回収に手間がかかる。高価であると出荷の際に取り外す必要があり、測位装置の回収や、回収後の管理の手間がかかる。また、GPSロガー等の測位装置では単独でリアルタイムに位置、経路、移動量を得ることができないため、監視を行えるようにリアルタイムに情報を収集しようとすると、GPSの情報を収集して送信するための通信装置を追加して対象物に付ける必要があり、電池交換の頻度がさらに増え、手間が増加する。
【0079】
[形態2]
形態2に係る物体移動推定システムについて図面を用いて説明する。図16は、本開示に係る物体移動推定システムの構成の第2例を模式的に示したブロック図である。図17は、本開示に係る物体移動推定システムにおける可視化の一例を模式的に示した測定位置、推定位置、測定動線及び推定動線のイメージ図である。図18は、本開示に係る物体移動推定システムにおける動線を可視化したときの(A)直線状の動線、(B)曲線状の動線、(C)折線状の動線の例を模式的に示したイメージ図である。図19は、本開示に係る物体移動推定システムにおける測定位置及び推定位置を可視化したときの一例を模式的に示したイメージ図である。
【0080】
形態2は、形態1の変形例であり、物体移動推定装置30において、物体2の移動経路データを可視化する機能を追加したものである。物体移動推定装置30は、形態1に係る構成に加えて、移動経路データを可視化する機能を備える。物体移動推定装置30は、記憶された所定のプログラムを実行することにより、仮想的に、エリアデータ蓄積部31、個体特徴データ蓄積部32、データ取得部33、観測データ蓄積部34、圏内移動測定部35、圏外移動推定部36、移動経路データ生成部37、移動経路データ蓄積部38、及び、データ提供部39に加え、確信度推定部40及び可視化部41を備えた構成とすることができる。
【0081】
確信度推定部40は、移動経路データ生成部37で生成された移動経路データにおける測定位置、測定動線、推定位置及び推定動線の各確信度を推定する機能部である(図16参照)。確信度は、物体2が存在した位置又は動線として測定位置、測定動線、推定位置又は推定動線がどのくらい確実であるかの尺度である。物体2が測定位置、測定動線、推定位置又は推定動線に存在した可能性が高くなれば確信度が高くなり、物体2が測定位置、測定動線、推定位置又は推定動線に存在した可能性が低くなれば確信度が低くなる。確信度は、例えば、観測データ(又は圏内測定移動経路データ)を用いて、位置(又は動線)の測定(又は推定)を複数回行い、同じ位置(又は動線)になった回数を、測定した回数で割ることで推定することができる。測定位置、測定動線、推定位置及び推定動線の各確信度には、確信度が最も高いものを選択して用いることができる。確信度推定部40は、推定した確信度を可視化部41に向けて出力する。推定した確信度は、移動経路データ蓄積部38に蓄積するようにしてもよい。
【0082】
可視化部41は、全体移動経路データを可視化する機能部である(図16参照)。可視化部41は、ユーザ端末50からの全体移動経路データの可視化の要求を受けたときに全体移動経路データの可視化を行うようにしてもよい。可視化部41は、移動経路データ蓄積部38に蓄積された全体移動経路データにおける構成データ(測定位置、測定動線、推定位置、推定動線)、及び、確信度推定部40で推定された測定位置、測定動線、推定位置及び推定動線の各確信度に基づいて全体移動経路データを可視化する。可視化部41は、可視化した全体移動経路データをデータ提供部39に向けて出力する。可視化した全体移動経路データは、移動経路データ蓄積部38に蓄積するようにしてもよい。
【0083】
全体移動経路データの可視化方法の例として、図17のように、測定位置71、72、76、77、測定動線81、85、推定位置73、75及び推定動線82、83、84の区分に応じて可視化方法を変えるようにしてもよい。位置又は動線の可視化方法として、例えば、アイコンの種類や形による区別、色(色相・彩度・明度・透明度)による区別等が挙げられる。また、確信度の数値に応じて可視化方法を変えるようにしてもよい。確信度の可視化方法として、例えば、確信度が高いほど丸や線を小さく(細く)し、確信度が低いほど丸や線を大きく(太く)するようにしてもよく、確信度の数値に応じて色の濃度を変えるようにしてもよい。また、第1~第3候補の位置が得られた場合、第1候補のみをプロットしたり、第1~第3候補の3つを確信度に応じて色を変えてプロットするようにしてもよい。さらに、複数種類の物体2が存在する場合、種類に応じて可視化方法を変えたり追加してもよい。
【0084】
また、動線の可視化方法として、図18(A)のように位置91、92(測定位置、推定位置)間の動線を直線で繋げたり、図18(B)のように曲線(例えば、ベジェ曲線、スプライン曲線等)で繋げたり、図18(C)のように折線で繋げたりして可視化するようにしてもよい。また、動線の端点の位置が、測定位置か推定位置かに応じて、動線を区別して可視化するようにしてもよい。また、線の種類(実線、点線、二重線等)、線の太さ、線の色(色相・彩度・明度・透明度)、グラデーション等によって動線を区別できるようにしてもよい。また、動線の端点が測定位置である場合、不検出時間(圏外滞在時間)に応じて、動線の可視化を変更するようにしてもよい。例えば、不検出時間が短い場合は濃い線とし、長く不検出の場合は薄い線として、直感的に動線の確信度が伝わるようにしてもよい。さらに、動線の確信度に応じて、動線の可視化を変更してもよい。
【0085】
また、測定位置又は推定位置において移動方向や移動速度が得られた場合、移動方向や移動速度に応じて、可視化方法を変えたり追加してもよい。例えば、移動速度及び移動方向の値に応じて長さや大きさを調整した矢印アイコンを追加で表示し、直感的な伝わりやすさを出すようにしてもよい。また。移動方向に応じて動線の制御点の位置を変え、移動速度が遅ければ動線の制御点の間隔を短くし、速ければ動線の制御点の間隔を長くすることで、動線の曲がり具合を調製するようにしてもよい。
【0086】
さらに、推定位置の可視化方法として、測定位置から推定位置までの距離に応じて可視化方法を変えるようにしてもよい。例えば、図19のように測定位置72、76間の推定位置73、74、75について、測定位置72、76から近くて位置の正確性が高い推定位置73、75についてはアイコンが小さくなるように可視化し、測定位置72、76から遠くて位置の正確性が低い推定位置74についてはアイコンが大きくなるように可視化してもよい。
【0087】
その他の構成及び動作については、形態1と同様である。
【0088】
形態2によれば、形態1と同様に、物体2がどの方向にも移動可能な場所でも、観測装置20A~20Eを少なくしつつ、物体2の移動経路データを自動的に取得することに貢献することができるとともに、移動経路データを可視化することで、移動経路データの利便性を高めることができる。
【0089】
[形態3]
形態3に係る物体移動推定システムについて図面を用いて説明する。図20は、本開示に係る物体移動推定システムの構成の第3例を模式的に示したブロック図である。図21は、本開示に係る物体移動推定システムにおけるブロックエリアの状態を可視化したときの一例を模式的に示したイメージ図である。
【0090】
形態3は、形態2の変形例であり、移動経路データに基づいて物体2やブロックエリアの状態を推定して情報提供するようにしたものである。物体移動推定装置30は、形態1に係る構成に加えて、移動経路データに基づいて物体2やブロックエリアの状態を推定する機能を備える。物体移動推定装置30は、記憶された所定のプログラムを実行することにより、仮想的に、エリアデータ蓄積部31、個体特徴データ蓄積部32、データ取得部33、観測データ蓄積部34、圏内移動測定部35、圏外移動推定部36、移動経路データ生成部37、移動経路データ蓄積部38、及び、データ提供部39に加え、状態推定部42及び状態データ蓄積部43を備えた構成とすることができる。
【0091】
状態推定部42は、全体移動経路データに基づいて物体2や測位対象エリア10の状態を推定する機能部である(図20参照)。状態推定部42は、移動経路データ蓄積部38から全体移動経路データを取得する。状態推定部42は、全体移動経路データに基づいて物体2の状態を推定する。推定される物体2の状態として、例えば、歩行中、食事中、休息中、移動時間、移動速度、運動量、食事時間、食事量等が挙げられる。また、状態推定部42は、全体移動経路データに基づいて測位対象エリア10(各ブロックエリアでも可)の状態を推定する。測位対象エリア10の状態として、例えば、測位対象エリア10における各ブロックエリアでの物体2の頭数等が挙げられる。推定する物体2や測位対象エリア10の各状態については、任意に設定することができ、ユーザがユーザ端末50から設定することができるようにしてもよい。状態推定部42は、圏内については、観測データに基づいて物体2やブロックエリアの状態を推定するようにしてもよい。状態推定部42は、推定された物体2やブロックエリアの状態のデータ(状態データ)をデータ提供部39に向けて出力する。状態データは、状態データ蓄積部43に蓄積される。
【0092】
物体2の状態の推定方法としては、以下のような例が挙げられる。
【0093】
物体2(家畜動物)の状態として休息の推定については、休息時間に係る閾値を定義し、全体移動経路データにおいて物体2が動いていない時間が休息時間に係る閾値を超える場合、物体2が休息状態と推定することができる。
【0094】
物体2(家畜動物)の状態として歩行の推定については、歩行速度に係る数値範囲を定義し、全体移動経路データに基づいて推定された物体2の移動速度(歩行速度)が歩行速度に係る数値範囲内に該当する場合、物体2が歩行状態と推定することができる。また、移動速度が歩行速度に係る数値範囲外で遅い場合、物体2が移動で疲れた可能性があると推定することができる。また、食事中か否かは、全体移動経路データにおける最新の位置が圏外立ち寄りエリア13にあるか否かによって推定することができる。運動量については、全体移動経路データに基づいて移動距離を算出することによって推定することができる。食事量については、全体移動経路データに基づいて圏外立ち寄りエリア13での滞在時間を算出することによって推定することができる。
【0095】
物体2(家畜動物)の状態として食事の推定については、圏外立ち寄りエリア13を餌エリアと定義し、全体移動経路データにおいて物体2の位置が圏外立ち寄りエリア13内にある場合、物体2が食事状態と推定することができる。このとき誤検知を防ぐべく、一定時間以上の滞在や、物体2の頭の動きの測定など、複数の条件や他のセンサの検出データを組み合わせてもよい。条件や他センサの組み合わせは、食事以外の推定に用いてもよい。
【0096】
物体2(家畜動物)の状態として食事量の推定については、食事中の時間と、任意に設定した基準食事速度パラメータとに基づいて推定することができる。なお、食事量を何らかのセンサで直接測定できる場合はその測定データに基づいて推定してもよい。
【0097】
状態データ蓄積部43は、状態データを蓄積する機能部である(図20参照)。状態データ蓄積部43は、状態推定部42からの状態データを、識別情報ごと、ブロックエリアごとに整理して蓄積するようにしてもよい。
【0098】
可視化部41は、全体移動経路データを可視化するだけでなく、状態データを可視化するようにしてもよい。例えば、時刻及びブロックエリアごとに物体2の頭数の推移を、図21(A)のように表にしたり、図21(B)のようにグラフにしてもよい。可視化した状態データは、地図の該当する位置に吹き出し表示するようにしてもよい。また、状態データは、測定値と推定値を分けて集計してもよく、確信度に応じて分けて集計してもよい。例えば、ブロックエリアごとの物体2の滞在頭数の可視化でも、滞在頭数を、諸条件や物理法則などから論理的に推論することも考えられる。例えば、あるエリアが囲われており、それにも拘らず当該エリアで測定された滞在頭数が減ってしまった場合、そのエリア内には測定値より多い物体2が滞在していると推定して可視化することができる。可視化部41は、可視化に用いた情報源を、可視化した位置や動線に、それらの情報源への参照場所(例えば、ハイパーリンク)を付与してもよく、情報源のデータを直接表示してもよい。また、物体2(動物)の種類に応じて移動モデル(例:エリア間の確率的な移動を表すマルコフ状態遷移モデルや、パーティクルフィルタによるモンテカルロ位置推定モデル、等)を定義している場合、そのモデルのパラメータを一緒に可視化してもよい。
【0099】
その他の構成及び動作については、形態2と同様である。
【0100】
形態3によれば、形態2と同様に、物体2がどの方向にも移動可能な場所でも、観測装置20A~20Eを少なくしつつ、物体2の移動経路データを自動的に取得することに貢献することができるとともに、物体2やブロックエリアの状態を推定して可視化することにより移動経路データの利便性を高めることができる。
【0101】
[形態4]
形態4に係る物体移動推定装置について図面を用いて説明する。図22は、本開示に係る物体移動推定装置の構成を模式的に示したブロック図である。
【0102】
物体移動推定装置30は、物体2の移動経路18a、18bを推定する装置である。物体移動推定装置30は、データ取得部33と、圏内移動測定部35と、圏外移動推定部36と、移動経路データ生成部37と、を備える。
【0103】
データ取得部33は、物体2の測位の対象となる測位対象エリア10の全てを観測しないように(間引きして)設置された複数の観測装置20A~20Eのいずれかからの観測データを取得するように構成されている。圏内移動測定部35は、観測データを用いて、観測装置20A~20Eで物体2を観測可能な範囲である圏内15での物体2の移動経路17a、17bを測定して、圏内15で測定された物体2の移動経路17a、17bに係る圏内測定移動経路データを生成するように構成されている。圏外移動推定部36は、圏内測定移動経路データを用いて、観測装置20A~20Eで物体2を観測不能な範囲である圏外16での物体2の移動経路18a、18bを推定して、圏外16で推定された物体2の移動経路18a、18bに係る圏外推定移動経路データを生成するように構成されている。移動経路データ生成部37は、圏内測定移動経路データ及び圏外推定移動経路データに基づいて、測位対象エリア10の全体での物体の移動経路17a、18a、18b、17bに係る全体移動経路データを生成するように構成されている。
【0104】
形態4によれば、圏内15で測定された物体2の移動経路17a、17bを用いて、圏外16での物体2の移動経路18a、18bを推定することで、物体2がどの方向にも移動可能な場所でも、観測装置20A~20Eを少なくしつつ、物体2の移動経路データを自動的に取得することに貢献することができる。
【0105】
なお、形態1~4に係る物体移動推定装置は、いわゆるハードウェア資源(情報処理装置、コンピュータ)により構成することができ、図23に例示する構成を備えたものを用いることができる。例えば、ハードウェア資源100は、内部バス104により相互に接続される、プロセッサ101、メモリ102、ネットワークインタフェイス103等を備える。
【0106】
なお、図23に示す構成は、ハードウェア資源100のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。ハードウェア資源100は、図示しないハードウェア(例えば、入出力インタフェイス)を含んでもよい。あるいは、装置に含まれるプロセッサ101等のユニットの数も図23の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のプロセッサ101がハードウェア資源100に含まれていてもよい。プロセッサ101には、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いることができる。
【0107】
メモリ102には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いることができる。
【0108】
ネットワークインタフェイス103には、例えば、LAN(Local Area Network)カード、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェイスカード等を用いることができる。
【0109】
ハードウェア資源100の機能は、上述の処理モジュールにより実現される。当該処理モジュールは、例えば、メモリ102に格納されたプログラムをプロセッサ101が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能は、何らかのハードウェアにおいてソフトウェアが実行されることによって実現できればよい。
【0110】
上記形態の一部または全部は以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0111】
[付記1]
物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得するように構成されたデータ取得部と、
前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成するように構成された圏内移動測定部と、
前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成するように構成された圏外移動推定部と、
前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成するように構成された移動経路データ生成部と、
を備える、物体移動推定装置。
[付記2]
前記圏内移動測定部は、前記観測データを用いて、前記圏内での前記物体の個体を識別して前記個体の圏内における測定位置を測定し、複数の前記測定位置に基づいて、前記個体の前記圏内における、前記測定位置間を接続する測定動線を測定し、前記測定位置及び前記測定動線に基づいて、前記圏内での前記個体の前記移動経路を測定するように構成されている、付記1記載の物体移動推定装置。
[付記3]
前記観測データは、画像データであり、
前記圏内移動測定部は、前記画像データに基づいて、前記物体の外観の特徴を画像認識して前記物体の前記個体を識別するように構成されている、
付記2記載の物体移動推定装置。
[付記4]
前記観測データは、前記物体の前記個体を識別した識別情報を含み、
前記圏内移動測定部は、前記観測データに含まれた前記識別情報に基づいて前記物体の前記個体を識別するように構成されている、
付記2記載の物体移動推定装置。
[付記5]
前記圏外移動推定部は、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記個体の圏外における推定位置を推定し、前記圏内測定移動経路データ、及び、1又は複数の前記推定位置に基づいて、前記個体の圏外における、前記測定位置と前記推定位置との間、又は、推定位置間を接続する推定動線を推定し、前記測定位置、前記推定位置及び前記推定動線に基づいて、前記圏外での前記個体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記2乃至4のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記6]
前記圏外移動推定部は、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記物体が前記圏外に滞在した時間である圏外滞在時間を算出し、前記圏外滞在時間を用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記5記載の物体移動推定装置。
[付記7]
前記圏外移動推定部は、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記圏内から前記圏外になる前記圏内での最後の第1測定位置と、その後の前記圏外から他の前記圏内になる当該他の圏内での最初の第2測定位置とを特定し、前記第1測定位置と前記第2測定位置との位置関係を用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記5又は6記載の物体移動推定装置。
[付記8]
前記圏外移動推定部は、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記圏内から前記圏外になる当該圏内の最後の第1測定位置での前記物体の第1移動方向と、その後の当該圏外から他の前記圏内になる当該他の圏内の最初の第2測定位置での前記物体の第2移動方向とを算出し、前記第1移動方向及び前記第2移動方向を用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記5乃至7のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記9]
前記圏外移動推定部は、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記圏内から前記圏外になる当該圏内の最後の第1測定位置での前記物体の第1移動速度と、その後の当該圏外から他の前記圏内になる当該他の圏内の最初の第2測定位置での前記物体の第2移動速度とを算出し、前記第1移動速度及び前記第2移動速度を用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記5乃至8のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記10]
前記圏外移動推定部は、前記測位対象エリアを区画したブロックエリアごとの特徴を定義したエリアデータを用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記5乃至9のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記11]
前記圏外移動推定部は、前記物体の個体ごとの特徴を定義した個体特徴データを用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記5乃至10のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記12]
前記圏外移動推定部は、他の前記個体の前記圏外推定移動経路データを用いて、前記圏外での前記物体の前記移動経路を推定するように構成されている、付記11記載の物体移動推定装置。
[付記13]
前記全体移動経路データを可視化するように構成された可視化部を備える、
付記5乃至12のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記14]
前記全体移動経路データにおける前記測定位置、前記測定動線、前記推定位置及び前記推定動線の各確信度を推定するように構成された確信度推定部を備え、
前記可視化部は、前記確信度に基づいて前記全体移動経路データを可視化するように構成されている、
付記13記載の物体移動推定装置。
[付記15]
前記可視化部は、前記測定位置、前記測定動線、前記推定位置及び前記推定動線の区分に応じて前記全体移動経路データを可視化するように構成されている、
付記13又は14記載の物体移動推定装置。
[付記16]
前記可視化部は、圏外滞在時間、移動方向及び移動速度のいずれかに応じて前記全体移動経路データを可視化するように構成されている、
付記13乃至15のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記17]
前記全体移動経路データに基づいて前記物体又は前記測位対象エリアの状態を推定するように構成された状態推定部を備える、
付記1乃至16のいずれか一に記載の物体移動推定装置。
[付記18]
付記1乃至17のいずれか一に記載の物体移動推定装置と、
前記物体移動推定装置と通信可能に接続されるとともに、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置と、
を備える、物体移動推定システム。
[付記19]
ハードウェア資源が、物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得するステップと、
前記ハードウェア資源が、前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成するステップと、
前記ハードウェア資源が、前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成するステップと、
前記ハードウェア資源が、前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成するステップと、
を含む、物体移動推定方法。
[付記20]
物体の測位の対象となる測位対象エリアの全てを観測しないように設置された複数の観測装置のいずれかからの観測データを取得する処理と、
前記観測データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測可能な範囲である圏内での前記物体の移動経路を測定して、前記圏内で測定された前記物体の前記移動経路に係る圏内測定移動経路データを生成する処理と、
前記圏内測定移動経路データを用いて、前記観測装置で前記物体を観測不能な範囲である圏外での前記物体の移動経路を推定して、前記圏外で推定された前記物体の前記移動経路に係る圏外推定移動経路データを生成する処理と、
前記圏内測定移動経路データ及び前記圏外推定移動経路データに基づいて、前記測位対象エリアの全体での前記物体の移動経路に係る全体移動経路データを生成する処理と、
をハードウェア資源に実行させる、プログラム。
【0112】
なお、上記の特許文献の開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(必要により不選択)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本願発明の趣旨に則り、本願発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれる(属する)ものと、みなされる。
【符号の説明】
【0113】
1 物体移動推定システム
2 物体
2A リーダ
2B 非リーダ
10 測位対象エリア
11 ブロックエリア
11A~11E 圏内ブロックエリアA~E
12 圏外進入不能エリア
13 圏外立ち寄りエリア
14 圏外ブロックエリア
15 圏内
16 圏外
17a、17b、18a、18b 移動経路
20A~20E 観測装置
30 物体移動推定装置
31 エリアデータ蓄積部
32 個体特徴データ蓄積部
33 データ取得部
34 観測データ蓄積部
35 圏内移動測定部
36 圏外移動推定部
37 移動経路データ生成部
38 移動経路データ蓄積部
39 データ提供部
40 確信度推定部
41 可視化部
42 状態推定部
43 状態データ蓄積部
50 ユーザ端末
60 ネットワーク
71、72、76、77 測定位置
73、74、75 推定位置
81、85 測定動線
82、83、84 推定動線
91、92 位置
100 ハードウェア資源
101 プロセッサ
102 メモリ
103 ネットワークインタフェイス
104 内部バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23