(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005486
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置
(51)【国際特許分類】
B61B 9/00 20060101AFI20250109BHJP
B61B 12/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B61B9/00 A
B61B12/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105646
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉本 渉
(57)【要約】
【課題】索条牽引式傾斜輸送設備において車両を牽引する索条に作用する荷重を良好に監視することのできる、索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置を提供することにある。
【解決手段】高低差を有する停留場10、11間にレール12を敷設し、このレール12上を走行する車両14を索条13で牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備において、索条13を巻き回しこの索条13の端部を掛止する索条ドラム22を車両14に回転自在に備え、索条ドラム14には外周側に膨出して荷重検出部30を形成し、荷重検出部30が回動して当接する位置にロードセル31を固着して荷重検出部30の当接荷重を計測するようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差を有する停留場間にレールを敷設し、該レール上を走行する車両を索条で牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備において、前期索条を巻き回し該索条の端部を掛止する索条ドラムを前期車両に回転自在に備え、該索条ドラムには外周側に膨出して荷重検出部を形成し、該荷重検出部が回動して当接する位置にロードセルを固着して前期荷重検出部の当接荷重を計測することを特徴とする索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置。
【請求項2】
前期ロードセルの信号を前期車両の運行を制御する制御装置に送信し、前期ロードセルの信号が前期制御装置に設定された荷重値を超過したときに、前期車両の運行ができないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置。
【請求項3】
前期ロードセルの信号を前期車両の運行を制御する制御装置に送信し、前期ロードセルの信号が前期制御装置に設定された荷重値を超過したときに、前期車両の扉が閉まらないようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地において索条により車両を牽引して乗客や物資を輸送する索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜地において索条により客車や台車(以下、これらをまとめて車両という)を牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備は、旅客設備として人員の輸送を行うケーブルカーや、産業用設備として物資の輸送を行うインクライン等として知られている。索条牽引式傾斜輸送設備の一般的な構成としては、敷設されたレール上に車両を移動可能に設置し、この車両に接続された索条をウインチや滑車によって巻き掛け駆動することにより、車両がレールに沿って移動するように構成している。
【0003】
索条牽引式傾斜輸送設備の一般的な構成としては、山頂側の停留場に索条駆動用の滑車を配設してこの滑車に索条を巻き掛けて索条の両端に車両を連結するか、または索条の一端に車両を連結し他端にはカウンターウエイトを連結して、いわゆるつるべ式に運行を行う方式が多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。また、このようなつるべ方式によらず、索条の端部に車両を連結し、山頂側の停留場に備えたウインチにより索条を巻き取り、または繰り出して運行を行う方式もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記の索条駆動用の滑車やウインチドラムは、減速機を介して電動機に連結されており、電動機の回転数を制御することにより滑車を回転させ、索条により車両を牽引して運行が行われる。減速機の入力軸あるいは電動軸の出力軸には、ドラム式やディスク式の制動装置を備えており、車両が停留場に到着すると制動装置が動作するとともに、この制動装置の動作を検知して電動機への電力供給が遮断され、制動機の制動力によって索条ないし車両の停止状態が保持される(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-219131号公報
【特許文献2】特開2007-190962号公報
【特許文献3】特開2008-201390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、索条牽引式傾斜輸送設備においては車両を索条により牽引して人員等の輸送を行う設備であることから、索条に過度な荷重(張力)が作用すると索条素線の断線や索条そのものの破断を引き起こす恐れがあり、索条の破断に至った場合には車両が逸走してしまう危険がある。したがって、索条牽引式傾斜輸送設備においては、索条に作用する荷重(張力)を監視して過大な荷重(張力)が索条に負荷されることなく運行が行われる必要がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、索条牽引式傾斜輸送設備において車両を牽引する索条に作用する荷重を良好に監視することのできる、索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、高低差を有する停留場間にレールを敷設し、該レール上を走行する車両を索条で牽引して輸送を行う索条牽引式傾斜輸送設備において、前期索条を巻き回し該索条の端部を掛止する索条ドラムを前期車両に回転自在に備え、該索条ドラムには外周側に膨出して荷重検出部を形成し、該荷重検出部が回動して当接する位置にロードセルを固着して前期荷重検出部の当接荷重を計測することを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置において、前期ロードセルの信号を前期車両の運行を制御する制御装置に送信し、前期ロードセルの信号が前期制御装置に設定された荷重値を超過したときに、前期車両の運行ができないようにしたことを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の索条牽引式傾斜輸送車両の過荷重検出装置において、前期ロードセルの信号を前期車両の運行を制御する制御装置に送信し、前期ロードセルの信号が前期制御装置に設定された荷重値を超過したときに、前期車両の扉が閉まらないようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両に備えたロードセルで索条に作用する荷重を計測するようにしたことにより、車両に搭載する荷重の重量が変化しても、これに追従して索条に作用する荷重を良好に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、索条牽引式傾斜輸送設備の線路の一例を示した線路縦断面図である。図に示すように線路は、標高の低い位置にある山麓停留場10と標高の高い位置にある山頂停留場11とを結んで形成されており、両停留場10、11を結んで2本のレール12が平面方向に平行して敷設され、このレール12に沿って索条13が延線されている。索条13の一端は、車両14に連結されており、他端部を山頂停留場11に備えた原動装置15の滑車16に巻き掛けて、この滑車16を駆動することにより車両14が両停留場10、11間を移動する。
【0014】
図2は、車両14の側面図であり、
図3は、
図2におけるA-A矢視図である。車両14は、乗客が搭乗する客車18と、この客車18を支持してレール12上を移動する台車17とを備えている。客車18は鋼板溶接構造であって、内部には座席や手摺、つり革等を備えている。台車17は、鋼材溶接構造の下部フレーム19と上部フレーム20とからなっている。下部フレーム19は、レール12と平行となるように配置され、この下部フレーム19の上方に備えた上部フレーム20は、その上部が水平となるように形成されており、客車18の床面が水平な状態となるように客車18を支持している。
【0015】
下部フレーム19の傾斜上方側には、索条13を車両14に罫止するための掛止装置21を備えている。掛止装置21は、索条13を巻き回すための索条ドラム22と、索条13の端部を挟み込んで索条13に取り付けられるクランプ23とを備えている。
【0016】
図4は、罫止装置21の平面図、
図5は掛止装置21の側面視断面図である。台車17の下部フレーム19には、支持ブラケット24を固着しており、この支持ブラケット24の端部に備えた支持ピン25を介して索条ドラム22が回転自在に支持されている。索条ドラム22は、円筒形状の輪芯26と、この輪芯26の上下端面に固着した円盤形状のフランジ27とを備えている。輪芯26の外周面には、ウレタンなどの弾性材からなるライニング28を備えており、線路上方から導かれた索条13がライニング28の外周に複数回巻き掛けられている。索条13の端部は、線路下方側へ延出しており、この延出した部分をクランプ23により狭持している。索条ドラム22のフランジ27には、外周側へ膨出して罫止部29が形成されており、ここにクランプ23が当接することにより索条13が索条ドラム22に掛止される。
【0017】
フランジ27において罫止部29の対称位置には、掛止部29と略同様に荷重検出部30が形成されている。一方、下部フレーム19において荷重検出部30と対向する位置にはロードセル31を備え、索条ドラム22が回動することにより荷重検出部30とロードセル31が当接するようになっており、この当接荷重をロードセル31により検出する。すなわち、車両14を牽引する索条13に作用する矢印B方向の荷重は、索条ドラム22が回転する矢印C方向の荷重に変換され、さらには荷重検出部30がロードセル31に当接する矢印D方向の荷重に変換されて、ロードセル31がこの荷重を検出する。したがって、索条13に作用する荷重は所定の値で変換算出することにより、ロードセル31で検出した荷重の値として検出される。
【0018】
ロードセル31で検出された荷重の信号は、車両14運行を制御する制御装置へ送信される。制御装置には、索条13に最大許容荷重が作用したときのロードセル31の検出荷重が設定されており、車両14が停留場10、11に停止しているときには、ロードセル31の検出荷重と制御装置の設定荷重とが比較される。停留場10、11で傾斜したレール12上に停止した車両14は、扉が開かれて乗客の乗降や物品の積み下ろしが行われ、これにともなって車両14に搭載する荷重が変化するとともに、索条13に作用する荷重が変化する。そして、車両14に搭載する荷重が規定の荷重以上、すなわち過荷重となった場合には、ロードセル31で検出した荷重が制御装置での設定荷重を超過し、これにより制御装置は車両14の扉が閉まらないように制御するとともに、車両14の運行を開始することができないにように制御する。またこのときには、警告音や音声を発して車両14の搭載荷重が過荷重となったことを警告するようにしてもよい。
【0019】
以上の構成によれば、車両14に備えたロードセル31で索条13に作用する荷重を計測するようにしたことにより、車両14に搭載する荷重の重量が変化しても、これに追従して索条13に作用する荷重を良好に計測することができる。また、設定荷重を超過した荷重が計測された場合には、車両14の扉が閉ることがなく車両14が停留場を出発することがないので索条13に対する安全性が確保できる。また、このことから車両14が線路を走行しているときは、ロードセル31で荷重を計測する必要がないので経済的である。
【符号の説明】
【0020】
10 山麓停留場
11 山頂停留場
12 レール
13 索条
14 車両
15 原動装置
16 滑車
17 台車
18 客車
19 下部フレーム
20 上部フレーム
21 掛止装置
22 索条ドラム
23 クランプ
24 支持ブラケット
25 支持ピン
26 輪芯
27 フランジ
28 ライニング
29 掛止部
30 荷重検出部
31 ロードセル
A、B、C、D 矢印