(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005489
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】位置特定システムおよび位置特定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01S5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105656
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】304014143
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】黄川田 功
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062CC18
(57)【要約】
【課題】基地局が2つの場合であっても短い時間で無線端末の存在位置を精度よく特定する。
【解決手段】本発明の位置特定システム10では、距離計算装置11が、基地局A,Bから送信された電波の受信電波強度に基づいて、基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離を計算し、位置推定装置12が、これら距離と基地局A,Bの設置位置とに基づいて、無線端末Tが存在する2つの候補位置を推定し、位置特定装置13が、基地局Aまたは基地局Bから、これら推定位置の方向へ指向性のある電波を個別に送信し、無線端末Tにおけるその電波の受信可否に基づいて、2つの候補位置のいずれか一方を無線端末Tの存在位置として特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位置に設置されているとともにその設置位置が既知である第1および第2の基地局と、前記第1および第2の基地局と無線通信するとともに前記第1および第2の基地局から送信された電波の受信電波強度を測定する無線端末とを備える無線システムにおける前記無線端末の位置を特定する位置特定システムであって、
前記無線端末で測定された第1および第2の基地局からの電波の受信電波強度に基づいて、前記第1の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第1の距離と、前記第2の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第2の距離とを計算する距離計算装置と、
前記距離計算装置で計算した前記第1および第2の距離と、前記第1および第2の基地局の設置位置を示す位置情報とに基づいて、前記無線端末が存在する2つの候補位置を推定する位置推定装置と、
前記第1の基地局および前記第2の基地局の少なくとも何れか一方に対して、前記位置推定装置で推定された2つの候補位置の方向へ、指向性を有する電波を送信するように指示し、前記無線端末における前記指向性を有する電波の受信可否に基づいて、前記2つの候補位置のいずれかを前記無線端末の存在位置として特定する位置特定装置と
を備える位置特定システム。
【請求項2】
前記位置特定装置は、
前記第1の基地局および前記第2の基地局のうち前記無線端末に近い基地局に対して、前記指向性を有する電波の送信を指示するように構成されている
請求項1に記載の位置特定システム。
【請求項3】
前記位置特定装置は、
前記第1の基地局に対して、前記2つの候補位置のうち一つの候補位置の方向に前記指向性を有する電波の送信を指示し、前記第2の基地局に対して、前記2つの候補位置のうち他の候補位置の方向に前記指向性を有する電波の送信を指示するように構成されている
請求項1に記載の位置特定システム。
【請求項4】
異なる位置に設置されているとともにその設置位置が既知である第1および第2の基地局と、前記第1および第2の基地局と無線通信するとともに前記第1および第2の基地局から送信された電波の受信電波強度を測定する無線端末とを備える無線システムにおいて実行される位置特定方法であって、
前記無線端末で測定された第1および第2の基地局からの電波の受信電波強度に基づいて、前記第1の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第1の距離と、前記第2の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第2の距離とを計算する距離計算ステップと、
前記距離計算ステップで計算した前記第1および第2の距離と、前記第1および第2の基地局の設置位置を示す位置情報とに基づいて、前記無線端末が存在する2つの候補位置を推定する位置推定ステップと、
前記第1の基地局および前記第2の基地局の少なくとも何れか一方に対して、前記位置推定ステップで推定された2つの候補位置の方向へ、指向性を有する電波を送信するように指示し、前記無線端末における前記指向性を有する電波の受信可否に基づいて、前記2つの候補位置のいずれかを前記無線端末の存在位置として特定する位置特定ステップと
を含む位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いて無線端末の存在位置を特定する位置特定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波を用いて無線端末が存在する位置を特定する技術として、それぞれ異なる位置に設置された複数の基地局の各々から送信された電波を無線端末で受信し、その電波の受信電波強度に基づいて無線端末の位置を特定する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、設置位置が既知である3つの発信機(基地局)から送信された電波を受信機(無線端末)で受信して、その受信電波強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を測定し、予め設定されている受信電波強度と距離との関係に基づいて、得られた受信電波強度に基づいて受信機から3つの発信機のそれぞれまでの3つの距離を計算し、既知である3つの発信機の設置位置に基づいて受信機の存在位置を3点測位法により特定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、電波を用いて受信機(無線端末)の存在位置を特定する際、少なくとも3つの発信機(基地局)が必要となるため、受信機の周囲に発信機が2つしか存在しない場合には、受信機の存在位置を特定できないという問題点があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の従来技術とは別個に、いわゆるビームフォーミングの技術を用いて、送信方向を変化させながら指向性を高めた電波すなわちビーム信号を1つの基地局から送信し、そのビーム信号を無線端末で受信できた送信方向と、そのとき無線端末で検出された受信電界強度から求めた基地局との距離とに基づいて、既知である基地局の設置位置から無線端末の存在位置を特定する方法も考えられる。
【0007】
しかしこの方法では、送信方向を順次変更する必要があるため、無線端末の存在位置を特定できるまでにある程度時間を要し、存在位置の特定精度を向上するために指向性を高くするほどビーム信号の送信回数が増加して、存在位置の特定までに要する所要時間が増加するという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、基地局が2つの場合であっても短い時間で無線端末の存在位置を精度よく特定できる位置特定技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる位置特定システムは、異なる位置に設置されているとともにその設置位置が既知である第1および第2の基地局と、前記第1および第2の基地局と無線通信するとともに前記第1および第2の基地局から送信された電波の受信電波強度を測定する無線端末とを備える無線システムにおける前記無線端末の位置を特定する位置特定システムであって、前記無線端末で測定された第1および第2の基地局からの電波の受信電波強度に基づいて、前記第1の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第1の距離と、前記第2の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第2の距離とを計算する距離計算装置と、前記距離計算装置で計算した前記第1および第2の距離と、前記第1および第2の基地局の設置位置を示す位置情報とに基づいて、前記無線端末が存在する2つの候補位置を推定する位置推定装置と、前記第1の基地局および前記第2の基地局の少なくとも何れか一方に対して、前記位置推定装置で推定された2つの候補位置の方向へ、指向性を有する電波を送信するように指示し、前記無線端末における前記指向性を有する電波の受信可否に基づいて、前記2つの候補位置のいずれかを前記無線端末の存在位置として特定する位置特定装置とを備える。
【0010】
また、本発明にかかる上記位置特定システムの一構成例では、前記位置特定装置は、
前記第1の基地局および前記第2の基地局のうち前記無線端末に近い基地局に対して、前記指向性を有する電波の送信を指示するように構成されている。
【0011】
また、本発明にかかる上記位置特定システムの一構成例では、 前記位置特定装置は、前記第1の基地局に対して、前記2つの候補位置のうち一つの候補位置の方向に前記指向性を有する電波の送信を指示し、前記第2の基地局に対して、前記2つの候補位置のうち他の候補位置の方向に前記指向性を有する電波の送信を指示するように構成されている。
【0012】
本発明にかかる位置特定方法は、異なる位置に設置されているとともにその設置位置が既知である第1および第2の基地局と、前記第1および第2の基地局と無線通信するとともに前記第1および第2の基地局から送信された電波の受信電波強度を測定する無線端末とを備える無線システムにおいて実行される位置特定方法であって、
前記無線端末で測定された第1および第2の基地局からの電波の受信電波強度に基づいて、前記第1の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第1の距離と、前記第2の基地局と前記無線端末との間の距離を示す第2の距離とを計算する距離計算ステップと、前記距離計算ステップで計算した前記第1および第2の距離と、前記第1および第2の基地局の設置位置を示す位置情報とに基づいて、前記無線端末が存在する2つの候補位置を推定する位置推定ステップと、前記第1の基地局および前記第2の基地局の少なくとも何れか一方に対して、前記位置推定ステップで推定された2つの候補位置の方向へ、指向性を有する電波を送信するように指示し、前記無線端末における前記指向性を有する電波の受信可否に基づいて、前記2つの候補位置のいずれかを前記無線端末の存在位置として特定する位置特定ステップとを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基地局が2つの場合であっても短い時間で無線端末の存在位置を精度よく特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる位置特定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、基地局と無線端末との間の距離の計算方法を示す説明図である。
【
図3】
図3は、無線端末が存在する2つの候補位置の推定方法を示す説明図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態にかかる位置特定システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[位置特定システム]
まず、
図1を参照して、本実施の形態にかかる位置特定システム10について説明する。この位置特定システム10は、無線システム1とインターネットなどの通信網NWを介して接続されて、無線システム1内の基地局A,B(第1の基地局、第2の基地局)および無線端末Tで得られたデータに基づいて、無線端末Tの存在位置を特定するように構成されている。
【0016】
無線システム1は、一般的な無線LANや移動通信システムなどの無線通信システムからなり、異なる既知の設置位置に設置されている少なくとも2つの基地局A,Bと、基地局A,Bのそれぞれと無線回線LA,LBを介して無線通信を行う少なくとも1つの無線端末Tを備えている。
【0017】
本発明は、位置特定システム10が、基地局A,Bから送信された電波の受信電波強度に基づいて、基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離を計算し、これら距離と基地局A,Bの設置位置とに基づいて、無線端末Tが存在する2つの候補位置を推定し、基地局Aまたは基地局Bから、これら推定位置の方向へ指向性のある電波を個別に送信し、無線端末Tにおけるその電波の受信可否に基づいて、2つの候補位置のいずれか一方を無線端末Tの存在位置として特定するように構成したものである。
【0018】
[位置特定システムの構成]
次に、
図1を参照して、本実施の形態にかかる位置特定システム10の構成について説明する。
図1に示すように、位置特定システム10は、主な構成として、距離計算装置11、位置推定装置12、および位置特定装置13を備えている。これら距離計算装置11、位置推定装置12、および位置特定装置13は、互いにデータ通信可能に接続された、サーバ装置などのコンピュータでそれぞれ構成されている。この際、これら装置のいずれか2つあるいは全部を1つのコンピュータで兼用して構成してもよい。
【0019】
[距離計算装置]
距離計算装置11は、無線端末Tで測定された基地局A,Bからの電波の受信電波強度に基づいて、基地局Aと無線端末Tとの間の距離と、基地局Bと無線端末Tとの間の距離を計算するように構成されている。受信電波強度の測定には、基地局A,Bから無指向性放射パターンで定期的に送信される、例えばビーコン信号など電波を用いればよい。これにより、基地局A,Bと無線端末Tとの位置関係や測定タイミングに関する制約を排除できる。
【0020】
ここで、基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離の計算方法について、
図2を参照して詳細に説明する。
基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離DA,DB(第1の距離、第2の距離)については、電波が距離の2乗に比例して減衰するという性質を用いて計算すればよい。基地局A,Bから送信する電波SA,SBに関する基準距離1mにおける受信電波強度を示す基準電波強度をR1とすると、基地局Aから送信された電波SAの無線端末Tにおける受信電界強度RAと距離DAとの関係は、次の式(1)で表される。
RA=R1-2×10×log
10DA …(1)
【0021】
同じく、基地局Bから送信された電波SBの無線端末Tにおける受信電界強度RBと距離DBとの関係は、次の式(2)で表される。
RB=R1-2×10×log10DB …(2)
したがって、無線端末Tで受信電界強度RA,RBが測定されれば、上記式(1),(2)に基づいて基地局A,Bから無線端末Tまでの距離DA,DBが計算できる。
【0022】
[位置推定装置]
位置推定装置12は、距離計算装置11で計算した2つの距離と、基地局A,Bの設置位置を示す位置情報とに基づいて、無線端末Tが存在する2つの候補位置を推定するように構成されている。基地局A,Bの位置情報については、位置推定装置12の記憶装置に予め登録しておいてもよく、基地局A,Bや外部データベースから通信網NWを介して取得するようにしてもよい。
【0023】
ここで、無線端末Tが存在する2つの候補位置の推定方法について、
図3を参照して詳細に説明する。
距離計算装置11で計算された、基地局A,Bから無線端末Tまでの距離DA,DBに基づけば、無線端末Tは、基地局Aから距離DAだけ離れた位置であって、かつ,基地局Bから距離DBだけ離れた位置に存在していることになる。したがって、距離DA,DBを半径として基地局A,Bをそれぞれ中心とする2つの円CA,CBの交点に無線端末Tが存在していることになる。
【0024】
距離DA,DBが等しくない場合、円CA,CBは2つの交点P1,P2で交差するため、そのいずれか一方に無線端末Tが存在していることになるが、距離DA,DBだけでは、交点P1,P2のいずれに無線端末Tが存在するか特定することはできない。このため、これら交点P1,P2を無線端末Tの候補位置P1,P2として推定する。この際、基地局A,Bの設置位置PA,PBは、例えばGPS(Global Positioning System)などの基準座標系における座標データとして既知であるから、基地局A,Bを中心とした半径DA,DBの円CA,CBを示す2つの式を連立方程式として、その解を求めれば、候補位置P1,P2の座標データが求められる。
【0025】
[位置特定装置]
位置特定装置13は、基地局Aまたは基地局Bから、位置推定装置12で推定された2つの候補位置P1,P2の方向へ、指向性を有する電波すなわちビームフォーミングパターンでビーム信号S1,S2を個別に送信し、無線端末Tにおけるビーム信号S1,S2の受信可否に基づいて、2つの候補位置P1,P2のいずれかを無線端末Tの存在位置Pとして特定するように構成されている。
【0026】
ビームフォーミングパターンでビーム信号S1,S2を送信する技術については、例えば無線LANや第5世代移動通信システム(5G:5th Generation Mobile Communication System)で実用化されている技術、例えばフェーズドアレイアンテナ(Phased Array Antenna)を用いた周知の技術を利用すればよい。
【0027】
ここで、候補位置P1,P2に基づく無線端末Tの存在位置Pの特定方法について、前述した
図3を参照して詳細に説明する。以下では、基地局Aからビーム信号S1,S2を送信する場合を例として説明するが、ビーム信号S1,S2を送信する基地局については、基地局A,Bのいずれを選択してもよい。基地局Aと基地局Bの両方からビーム信号S1,S2を送信して、一方の基地局から送信されたビーム信号S1,S2の受信可否に基づいて、無線端末Tの存在位置を特定することもできる。
【0028】
位置推定装置12で推定された無線端末Tの候補位置P1,P2の方向に、基地局Aからビーム信号S1,S2を送信する場合、送信する方向を特定する必要がある。この際、基地局A,Bの設置場所PA,PBが既知であるため、基準座標系における設置場所PA,PBと候補位置P1,P2とから、基地局Aにおける、基地局B方向から候補位置P1,P2までの送信角度Θ1,Θ2を計算できる。
【0029】
これら送信角度Θ1,Θ2に基づいて基地局Aから候補位置P1,P2に向けて個別にビーム信号S1,S2が送信され、これら無線端末Tにおけるビーム信号S1,S2の受信可否に基づいて、無線端末Tの存在位置が特定される。
図3の例では、無線端末Tが候補位置P1に存在しているため、無線端末Tにおいてビーム信号S1は受信可となるものの、ビーム信号S2は受信不可となる。これにより、無線端末Tの存在位置はP1に特定される。
【0030】
以上では、位置特定システム10を構成する距離計算装置11、位置推定装置12、および位置特定装置13を、基地局A,Bおよび無線端末Tとは、別個の装置で構成した場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。これら装置のいずれか1つ以上を基地局A,Bや無線端末Tに搭載されている制御回路で構成してもよく、例えば、距離計算装置11を基地局A,Bや無線端末Tの制御回路で構成してもよい。
【0031】
この際、距離DAを計算する距離計算装置11を基地局Aの制御回路で実現し、距離DBを計算する距離計算装置11を基地局Bの制御回路で実現すれば、それぞれの基地局A,Bに固有のパラメータ、例えば基準電界強度R1を、基地局A,Bのそれぞれで記憶しておくだけでよくなり、距離計算に要するパラメータ管理負担を軽減しつつ、距離計算精度を高めることができる。
【0032】
[本実施の形態の動作]
次に、
図4を参照して、本実施の形態にかかる位置特定システム10の動作について説明する。
【0033】
無線端末Tは、基地局Aから送信された電波SAを受信した場合(ステップ100)、その受信電波強度RAを測定し(ステップ101)、得られた受信電波強度RAを示す測定結果を、電波SAから抽出した送信元情報に基づいて、無線回線LAを介して基地局Aへ通知する(ステップ102)。基地局Aは、無線端末Tからの測定結果を、通信網NWを介して距離計算装置11へ通知する(ステップ103)。
【0034】
距離計算装置11は、基地局Aからの測定結果に含まれる無線端末Tで得られた受信電波強度RAと、基地局Aの設置位置PAを示す位置情報とに基づいて、前述の
図2に示した、基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離DA,DBの計算方法により、基地局Aと無線端末Tの距離DAを計算し(ステップ104)、得られた距離DAを位置推定装置12へ通知する(ステップ105)。
【0035】
また、無線端末Tは、基地局Bから送信された電波SBを受信した場合(ステップ110)、その受信電波強度RBを測定し(ステップ111)、得られた受信電波強度RBを示す測定結果を、電波SBから抽出した送信元情報に基づいて、無線回線LBを介して基地局Bへ通知する(ステップ112)。基地局Bは、無線端末Tからの測定結果を、通信網NWを介して距離計算装置11へ通知する(ステップ113)。
【0036】
距離計算装置11は、基地局Bからの測定結果に含まれる無線端末Tで得られた受信電波強度RBと、基地局Bの設置位置PBを示す位置情報とに基づいて、前述の
図2に示した、基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離DA,DBの計算方法により、基地局Bと無線端末Tの距離DBを計算し(ステップ114)、得られた距離DBを計算結果として位置推定装置12へ通知する(ステップ115)。
【0037】
位置推定装置12は、距離計算装置11から通知された距離DA,DBと、基地局A,Bの設置位置PA,PBを示す位置情報に基づいて、前述の
図3に示した、無線端末Tが存在する2つの候補位置の推定方法により、無線端末Tが存在する2つの候補位置P1,P2を推定し(ステップ120)、得られた候補位置P1,P2を推定結果として位置特定装置13へ通知する(ステップ121)。
【0038】
位置特定装置13は、位置推定装置12から通知された推定位置P1,P2と、基地局Aの設置位置PAを示す位置情報に基づいて、前述の
図3に示した、候補位置P1,P2に基づく無線端末Tの存在位置Pの特定方法により、基地局Aにおける、候補位置P1,P2の方向を示す送信角度Θ1,Θ2を計算する(ステップ122)。
続いて、位置特定装置13は、得られた送信角度Θ1,Θ2を含むビーム送信指示を、通信網NWを介して基地局Aへ通知する(ステップ123)。
【0039】
基地局Aは、位置特定装置13からのビーム送信指示に応じて、指示された送信角度Θ1の方向へ、指向性を有する電波すなわちビームフォーミングパターンでビーム信号S1を送信する(ステップ124)。また、基地局Aは、指示された送信角度Θ2の方向へ、指向性を有する電波すなわちビームフォーミングパターンでビーム信号S2を送信する(ステップ125)。
【0040】
無線端末Tは、基地局Aから送信されたビーム信号S1,S2のいずれかを受信した場合、受信したビーム信号S1,S2を示す受信結果を、ビーム信号S1,S2から抽出した送信元情報に基づいて、無線回線LAを介して基地局Aへ通知する(ステップ126)。基地局Aは、無線端末Tからの受信結果を、通信網NWを介して位置特定装置13へ通知する(ステップ127)。
【0041】
位置特定装置13は、ビーム信号S1,S2に関する無線端末Tからの受信結果に基づいて、候補位置P1,P2のいずれか一方を無線端末Tの存在位置Pとして特定し(ステップ128)、一連の位置特定処理を終了する。
【0042】
したがって、例えば無線端末Tが候補位置P1に存在していた場合、無線端末Tではビーム信号S1が受信できるもののビーム信号S2は受信できないことになる。これにより、無線端末Tから基地局Aを介して位置特定装置13に、ビーム信号S1の受信可を示す受信結果が通知され、位置特定装置13でビーム信号S1に対応する候補位置P1が無線端末Tの存在位置Pとして特定される。
【0043】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態にかかる位置特定システム10は、距離計算装置11が、基地局A,Bから送信された電波SA,SBの受信電波強度RA,RBに基づいて、基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離DA,DBを計算し、位置推定装置12が、これら距離DA,DBと基地局A,Bの設置位置PA,PBとに基づいて、無線端末Tが存在する2つの候補位置P1,P2を推定し、位置特定装置13が、基地局Aまたは基地局Bから、これら推定位置P1,P2の方向へ指向性のある電波すなわちビーム信号S1,S2を個別に送信し、無線端末Tにおけるこれらビーム信号S1,S2の受信可否に基づいて、2つの候補位置P1,P2のいずれか一方を無線端末Tの存在位置Pとして特定するように構成したものである。
【0044】
これにより、無線端末Tと無線通信可能な基地局A,Bが2つの場合には、基地局A,Bと無線端末Tとの間の距離DA,DBから無線端末Tの候補位置P1,P2しか推定できないが、指向性のあるビーム信号S1,S2に基づいて、候補位置P1,P2のいずれかが無線端末Tの存在位置Pとして特定されることになる。
【0045】
したがって、無線端末Tと無線通信可能な基地局A,Bが2つの場合であっても、無線端末Tの存在位置Pを精度よく特定することができる。また、ビーム信号S1,S2は、2つの候補位置P1,P2のそれぞれに向けて送信するだけでよいため、例えば基地局Aから全周にわたってビーム信号を送信する場合と比較して、短い時間で無線端末Tの存在位置Pを特定することができる。
【0046】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0047】
前述の実施形態では、ビーム信号S1,S2を送信する基地局については、基地局A,Bのいずれを選択してもよいと説明したが、これに限定されるものではなく、基地局A,Bのうち無線端末Tに近い基地局からビーム信号S1,S2を送信するようにしてもよい。
【0048】
例えば、位置特定装置13が、基地局A,Bのうち無線端末Tとの距離DA,DBのうち、距離が短いほうの基地局を選択し、その基地局における候補位置P1,P2への送信角度Θ1,Θ2を計算し、これら送信角度Θ1,Θ2を含むビーム送信指示をその基地局へ通知すればよい。
【0049】
これにより、より無線端末Tに近い基地局からビーム信号S1,S2が送信されるため、ビーム信号S1,S2を無線端末Tでより確実に受信することができる。
【0050】
また、前述の実施形態では、ビーム信号S1,S2を基地局A,Bのうちいずれ一方の基地局から送信する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、ビーム信号S1,S2をそれぞれ別個に基地局A,Bから送信するようにしてもよい。
【0051】
例えば、位置特定装置13が、基地局Aにおける候補位置P1への送信角度Θ1を計算し、送信角度Θ1を含むビーム送信指示を基地局Aへ通知し、基地局Bにおける候補位置P2への送信角度Θ2を計算し、送信角度Θ2を含むビーム送信指示を基地局Bへ通知するようにしてもよい。
【0052】
これにより、基地局Aから候補位置P1の方向へビーム信号S1が送信されるとともに、基地局Bから候補位置P2の方向へビーム信号S2が送信されることになる。無線端末Tは、基地局Aから送信されたビーム信号S1を受信した場合、受信したビーム信号S1を示す受信結果を、ビーム信号S1から抽出した送信元情報に基づいて、無線回線LAを介して基地局Aへ通知する。基地局Aは、無線端末Tからの受信結果を、通信網NWを介して位置特定装置13へ通知する。
【0053】
また、無線端末Tは、基地局Bから送信されたビーム信号S2を受信した場合、受信したビーム信号S2を示す受信結果を、ビーム信号S2から抽出した送信元情報に基づいて、無線回線LBを介して基地局Bへ通知する。基地局Bは、無線端末Tからの受信結果を、通信網NWを介して位置特定装置13へ通知する。
【0054】
これにより、位置特定装置13には、ビーム信号S1,S2の受信可を示す受信結果が基地局A,Bのいずれか一方から通知されることになり、その受信結果に基づいて、候補位置P1,P2のいずれか一方が無線端末Tの存在位置Pとして特定される。
【0055】
したがって、無線端末Tに向けてビーム信号を送信する処理動作を、1つの基地局に集中せず、複数の基地局に分散することができる。これにより、無線システム1においてリソースを効率よく利用することができ、リソースの偏りによる無線システム1での無線通信への影響を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
10…位置特定システム、11…距離計算装置、12…位置推定装置、13…位置特定装置、1…無線システム、A…基地局、B…基地局、T…無線端末、W…通信網、SA,SB…電波、RA,RB…受信電界強度、DA,DB…距離、PA,PB…設置位置、P…存在位置、Θ1,Θ2…送信角度、S1,S2…ビーム信号。