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特開2025-5491高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法
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  • 特開-高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005491
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20250109BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20250109BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105658
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬込 俊之
(72)【発明者】
【氏名】矢野 千隆
(72)【発明者】
【氏名】稲場 宣之
【テーマコード(参考)】
2G014
2G036
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA03
2G014AA06
2G014AB34
2G036BB20
2G036CA09
(57)【要約】
【課題】通信線を検査する際の作業性を向上させ、かつ、検査品質の低下を抑制することができる高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法を提供する。
【解決手段】高速通信線評価用ドラム治具100は、本体部10と、本体部に対して互いに間隔を空けて取り付けられ、それぞれが本体部の高さ方向に沿って延在する複数のレール部11と、複数のレール部に対して取り付けられ、高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて配置された複数のフック部12と、を備え、複数のフック部12は、中心軸回りに螺旋状に巻き回された通信線LNを支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の本体部と、
前記本体部に対して前記本体部の周方向に沿って互いに間隔を空けて取り付けられ、それぞれが前記本体部の高さ方向に沿って延在する複数のレール部と、
前記複数のレール部に対して取り付けられ、前記本体部における前記高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて配置された複数のフック部と、
を備え、
前記複数のフック部は、前記中心軸回りに螺旋状に巻き回された通信線を支持する、
ことを特徴とする高速通信線評価用ドラム治具。
【請求項2】
前記複数のレール部のそれぞれは、前記フック部を前記周方向に挟んで保持可能な第1レール部と第2レール部とを含み、
前記第1レール部及び前記第2レール部のうちの少なくとも一方は、それぞれが他方の前記第1レール部又は前記第2レール部に向けて突出して前記高さ方向に沿って間隔を空けて並べて配置された複数の凸部を有し、かつ、外力によって前記第1レール部と前記第2レール部との間の間隔が広がるように変形可能な板バネ状に構成されており、
前記フック部に対して前記高さ方向の外力が加えられた場合、前記フック部は、前記第1レール部及び前記第2レール部の間の間隔を押し広げて前記凸部を乗り越えて前記高さ方向に沿って移動可能に構成されている、
請求項1に記載の高速通信線評価用ドラム治具。
【請求項3】
前記複数のレール部及び前記複数のフック部における比誘電率の値は、0よりも大きく1.4以下である、
請求項1又は2に記載の高速通信線評価用ドラム治具。
【請求項4】
円柱状の本体部に対して、前記本体部の高さ方向に延在する複数のレール部を、前記本体部の周方向に沿って間隔を空けて並べて取り付ける第1工程と、
前記レール部のそれぞれに対して、複数のフック部を前記本体部における前記高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて取り付ける第2工程と、
通信線を前記本体部の外周面に対して前記中心軸回りに螺旋状に巻き回して前記フック部に支持させる第3工程と、
を含むことを特徴とする高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多対ケーブルの両端にコネクタを接続した通信ケーブル(通信線)を検査する際に用いられる通信ケーブルの試験装置が開示されている。従来、通信線の検査(試験)をする場合、円柱状のドラム治具に対して、通信線をドラム治具の外周面に螺旋状に巻き付けてテープで固定していた。このとき、通信線は、ドラム治具の高さ方向において一定の間隔を空けて巻き付けられる。このような構成においては、ドラム治具への通信線の巻き付け工程の際、通信線がテープで固定される前に、自重によって、通信線がドラム治具からずれ落ちることで、ドラム治具に螺旋状に巻き付けられた通信線の間隔が場所によって変わってしまうことがあった。ドラム治具に螺旋状に巻き付けられた通信線の間隔が変わることで、検査品質が低下することがあった。また、ずれ落ちた通信線の位置を適正な位置に戻す場合は、追加の作業が必要となり巻き付け工程の作業性が低下することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-201174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信線の検査に用いるドラム治具において、通信線を検査する際の作業性を向上させ、かつ、検査品質の低下を抑制することについて、なお改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、通信線を検査する際の作業性を向上させ、かつ、検査品質の低下を抑制することができる高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高速通信線評価用ドラム治具は、円柱状の本体部と、本体部に対して本体部の周方向に沿って互いに間隔を空けて取り付けられ、それぞれが本体部の高さ方向に沿って延在する複数のレール部と、複数のレール部に対して取り付けられ、本体部における高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて配置された複数のフック部と、を備え、複数のフック部は、中心軸回りに螺旋状に巻き回された通信線を支持することを特徴とする。
【0007】
本発明の高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法は、円柱状の本体部に対して、本体部の高さ方向に延在する複数のレール部を、本体部の周方向に沿って間隔を空けて並べて取り付ける第1工程と、レール部のそれぞれに対して、複数のフック部を本体部における高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて取り付ける第2工程と、通信線を本体部の外周面に対して中心軸回りに螺旋状に巻き回してフック部に支持させる第3工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法は、通信線を検査する際の作業性を向上させ、かつ、検査品質の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具のレール部とフック部を示す拡大斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具のレール部とフック部を示す拡大斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具のレール部とフック部を示す拡大斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具におけるフック部の移動を示す平面図である。
図6図6は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から図6を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、高速通信線評価用ドラム治具、及び、高速通信線評価用ドラム治具に関する。図1は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具を示す斜視図、図2は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具のレール部とフック部を示す拡大斜視図、図3は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具のレール部とフック部を示す拡大斜視図、図4は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具のレール部とフック部を示す拡大斜視図、図5は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具におけるフック部の移動を示す平面図、図6は、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具を用いた通信線の巻付方法を示すフローチャート図である。
【0012】
実施形態の高速通信線評価用ドラム治具100は、通信線LNの検査(試験)を行うために用いる装置である。高速通信線評価用ドラム治具100は、例えば、シールド電線等の高速通信線の検査(試験)に利用することができる。また、高速通信線評価用ドラム治具100は、電線を2本対で撚り合わせた多対ケーブル(ツイストペア電線)の検査(試験)に利用することもできる。図1に示すように、高速通信線評価用ドラム治具100は、本体部10、レール部11、フック部12を含む。
【0013】
本明細書では、円柱状の本体部10の下面(底面)から上面に向かう方向を上方向と称し、上方向とは逆向きの方向を下方向と称する。また、上方向及び下方向に沿う方向を高さ方向と称する。また、本体部10の中心軸線は、円柱状の本体部10における下面の中心と上面の中心とを通る直線である。また、本体部10の中心軸線周りに沿う方向を周方向と称する。
【0014】
本体部10は、円柱状に形成されている。実施形態の本体部10は、内部が空洞状であり、本体部10の内部には、通信線LNの両端に一定の電圧かけて、通信線LNに流れる電流の電流値を測定することで通信線LNの検査(試験)を行うことができる試験装置が設けられている。本体部10の高さ方向における上面には、通信線LNの一端と試験装置とを接続するための第1のコネクタ(図示せず)が設けられている。第1のコネクタは、通信線LNの一端に設けられたコネクタと接続するように構成されている。本体部10の高さ方向における下部の外周面には、通信線LNの他端と試験装置とを接続するための第2のコネクタ(図示せず)が設けられている。第2のコネクタは、通信線LNの他端に設けられたコネクタと接続するように構成されている。
【0015】
試験装置は、例えば、第1コネクタと第2コネクタとの間に一定の電圧を発生させる電圧発生手段と、第1コネクタと第2コネクタとの間を流れる電流の電流値を測定する電流値測定手段を有している。試験装置は、電圧発生手段によって、第1コネクタと第2コネクタとの間に電圧を発生させ、電流値測定手段によって、第1コネクタと第2コネクタとの間を流れる電流の電流値等を測定することで、通信線LNの検査を行う。この検査(試験)により、高速通信線評価用ドラム治具100は、例えば、通信線LNの断線、混線、短絡等を検出することができる。
【0016】
実施形態において、レール部11は、本体部10の外周面に対して、複数取り付けられている。複数のレール部11は、本体部10の周方向に沿って互いに間隔を空けて取り付けられ、それぞれが本体部10の高さ方向に沿って延在している。例えば、レール部11には、ビス等によって、レール部11を本体部10に固定するための固定部が設けられる。この場合、レール部11の固定部には、ビスを挿通するための貫通孔が設けられ、本体部10には、貫通孔と対応する位置に螺合孔が設けられる。レール部11の固定部の貫通孔にビスを挿通し、本体部10の螺合孔に螺合させることで、レール部11は、本体部10に固定される。
【0017】
ここで、レール部11の比誘電率の値は、通信線LNの信号伝送性能に影響を与えるため、なるべく小さい値であることが好ましい。実施形態においては、レール部11は、比誘電率の値が0よりも大きく1.4以下になるように形成されている。
【0018】
例えば、レール部11は、比誘電率の値が1.38であるフェロシリコンを用いて形成される。また、例えば、レール部11は、ポリスチレンを用いて比誘電率が1.05程度になるように形成されてもよい。
【0019】
複数のレール部11は、フック部12を取り付け可能に構成されている。図2に示すように、実施形態における複数のレール部11のそれぞれは、第1レール部11aと第2レール部11bとを含む。また、複数のレール部11は、第1レール部11aと第2レール部11bとを繋ぐ底壁部11cを含んでいる。第1レール部11a及び第2レール部11bのそれぞれは、本体部10に固定された状態において、高さ方向に沿って延在する四角柱状に形成されている。
【0020】
1つのレール部11において、第1レール部11aと第2レール部11bとは、間隔G1を空けて配置されている。周方向における第1レール部11aと第2レール部11bとの間の間隔G1は、フック部12を保持できる大きさに設定されている。そして、実施形態における第1レール部11aと第2レール部11bとは、底壁部11cによって周方向に繋がっている。
【0021】
底壁部11cは、レール部11が本体部10に取り付けられた状態において、第1レール部11a及び第2レール部11bに対して本体部10の外周面側に配置される。このとき、レール部11における第1レール部11aと第2レール部11bとの間には、本体部10の外周面に向かって凹むU字状の溝が形成される。第1レール部11a及び第2レール部11bは、レール部11の溝の側壁を構成し、底壁部11cは、レール部11の溝の底壁を構成する。フック部12は、レール部11の溝に嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0022】
第1レール部11a及び第2レール部11bのうちの少なくとも一方は、それぞれが他方のレール部(第2レール部11b又は第1レール部11a)に向けて突出し、高さ方向に沿って間隔を空けて並べて配置された複数の凸部P1を有する。実施形態においては、複数の凸部P1は、第2レール部11bにのみ設けられている。第2レール部11bにおいて、高さ方向に隣り合う凸部P1の間には、凹部R1が形成されている。凹部R1は、凸部P1に対して、他方のレール部側(第1レール部11a側)とは反対側に向けて弧状に凹んでいる。
【0023】
第1レール部11a及び第2レール部11bのうちの少なくとも一方は、外力によって第1レール部11aと第2レール部11bとの間の間隔G1が広がるように変形可能な板バネ状に構成されている。実施形態においては、第2レール部11bが、外力によって第1レール部11aと第2レール部11bとの間の間隔G1が広がるように変形可能な板バネ状に構成されている。
【0024】
フック部12は、レール部11に対して取り付け可能に構成されている。ここで、フック部12の比誘電率の値は、レール部11と同様、通信線LNの信号伝送性能に影響を与えるため、なるべく小さい値であることが好ましい。実施形態において、フック部12は、比誘電率の値が、0よりも大きく1.4以下になるように形成されている。
【0025】
例えば、フック部12は、比誘電率の値が1.38であるフェロシリコンを用いて形成される。また、例えば、フック部12は、ポリスチレンを用いて比誘電率が1.05程度になるように形成されてもよい。
【0026】
フック部12は、係合部12a、支持部12b、及び、係止部12cを含む。係合部12aは、レール部11における第1レール部11aと第2レール部11bとの間に挟まれて保持される部分である。
【0027】
係合部12aは、基部12aa、接続部12ab、突出部12acを含む。フック部12がレール部11に取り付けられた状態において、基部12aaは、高さ方向及び周方向に沿って広がる平板形状に形成されている。ここでは、基部12aaは、高さ方向を長手方向とする長方形板状である。基部12aaにおける本体部10側とは反対側に位置する面(表面)からは、円柱状の支持部12bが本体部10側とは反対側に向けて突出している。
【0028】
支持部12bは、フック部12において、通信線LNを支持する部分である。支持部12bにおいて、基部12aaと繋がる端部とは反対側の端部には、係止部12cが設けられている。係止部12cは、通信線LNが支持部12bからずれ落ちないように通信線LNを側方から係止する部分である。実施形態において、係止部12cは、支持部12bの端部から上方向に向けて突出する円柱形状に形成されており、支持部12bと係止部12cとはL字形状を成している。
【0029】
基部12aaにおける本体部10側に位置する面(裏面)からは接続部12abが突出している。接続部12abの高さ方向の幅は、基部12aaの高さ方向の幅と実質的に等しく、接続部12abの周方向の幅は、基部12aaの周方向の幅よりも短く形成されている。接続部12abにおける基部12aa側の端部とは反対側の端部には、板状の突出部12acが形成されている。突出部12acの高さ方向の幅は、接続部12abの高さ方向の幅と実質的に等しい。また、突出部12acの周方向の幅は、基部12aaの周方向の幅よりも短く、接続部12abの周方向の幅よりも長く形成されている。
【0030】
突出部12acは、第1レール部11aと第2レール部11bとの間に挟まれて保持される部分である。突出部12acは、円弧形状の凸部P2を有している。凸部P2は、突出部12acがレール部11に取り付けられた状態において、第2レール部11bに向けて突出しており、第2レール部11bの凹部R1と係合するように形成されている。突出部12acが第1レール部11aと第2レール部11bとの間に挟まれた状態で、凸部P2が凹部R1と係合することにより、フック部12は、第1レール部11aと第2レール部11bとの間で保持され、フック部12の高さ位置が固定される。
【0031】
図1図3に示すように、フック部12は、各レール部11に複数取り付けられている。図3に示すように、フック部12は、各レール部11において、高さ方向に一定の間隔を空けて取り付けられる。レール部11及びフック部12は、図4に示すように、フック部12に対して、高さ方向の外力を加えることで、フック部12の高さ位置を変更できるように構成されている。
【0032】
図5は、フック部12の移動の態様を説明するための平面図であり、説明のためフック部12における突出部12ac以外の部分を省略した図である。図5に示すように、フック部12に対して高さ方向の外力が加えられた場合、突出部12acが、第1レール部11a及び第2レール部11bの間の間隔を押し広げて、フック部12の凸部P2が第2レール部11bの凸部P1を乗り越えて高さ方向に沿って移動する。そして、フック部12は、凸部P2を任意の高さ位置の凹部R1と係合させることで、フック部12の高さ位置を変更することができる。なお、図4図5では、下方向に向けてフック部12を移動させる例を示しているが、フック部12は、この方向とは逆方向(下方向から上方向)に移動させることもできる。
【0033】
図1に示すように、複数のフック部12は、本体部10の中心軸回りに螺旋状に並べて配置される。図1においては、複数のフック部12は、本体部10の中心軸に対して、左回りの螺旋状に並べて配置されている。
【0034】
実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100においては、通信線LNの検査(試験)を行う場合、各フック部12の支持部12b上に通信線LNを掛けるようにして、本体部10の中心軸回りに螺旋状に巻き回し、通信線LNの端部を高速通信線評価用ドラム治具100のコネクタに接続する。フック部12によって通信線LNを支持することで、通信線LNが、自重によって本体部10からずれ落ちることを抑制することができる。また、本体部10の中心軸回りに螺旋状に巻き回された通信線LNの位置が変わることによって生じる通信線の検査品質の低下を抑制することができる。
【0035】
次に、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100を用いた通信線LNの巻付方法について説明する。実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100を用いた通信線LNの巻付方法は、第1工程S1と、第2工程S2と、第3工程S3とを含む。
【0036】
図6に示すように、第1工程S1は、円柱状の本体部10に対して、レール部11を取り付ける工程である。実施形態の第1工程S1では、円柱状の本体部10に対して、本体部10の高さ方向に延在する複数のレール部11を、本体部10の周方向に沿って間隔を空けて並べて取り付ける。レール部11は、例えば、ビス等で本体部10に対して固定される。
【0037】
第2工程S2は、レール部11に対してフック部12を取り付ける工程である。実施形態の第2工程S2では、複数のレール部11のそれぞれに対して、複数のフック部12を本体部10における高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて取り付ける。第2工程において、フック部12は、図4に示すように、レール部11の端部(ここでは、レール部11の上端)から、突出部12acを第1レール部11aと第2レール部11bとの間に差し入れて、高さ方向に沿って、所定の高さ位置まで下方に移動させることで、レール部11に取り付けられる。このとき、高さ方向における下方に向けてフック部12に外力が加えることで、フック部12における突出部12acの凸部P2は、第2レール部11bの凸部P1を乗り越えて移動することができる。フック部12が所定の高さ位置に到達するまで、フック部12に対して外力を加えることで、フック部12をレール部11に取り付けることができる。
【0038】
ここで、各レール部11に取り付けられた複数のフック部12における高さ方向の間隔は、高速通信線評価用ドラム治具100に巻き付けられる通信線LNにおける高さ方向の間隔と実質的に等しくなる。各レール部11に取り付けられた複数のフック部12における高さ方向の間隔は、高さ方向における通信線LNの間隔が、通信線LNの検査(試験)を行ううえで好ましい間隔となるように設定される。
【0039】
第3工程S3は、通信線LNを本体部10に対して、本体部10の中心軸回りに螺旋状に巻き回す工程である。第3工程S3においては、通信線LNを本体部10の外周面に対して、本体部10の中心軸回りに螺旋状に巻き回してフック部12に支持させる。第3工程により、通信線LNが高速通信線評価用ドラム治具100に巻き付けられる。
【0040】
実施形態においては、通信線LNの両端には、コネクタが設けられており、一方のコネクタが本体部10の第1コネクタに接続され、他方のコネクタが本体部10の第2コネクタに接続される。例えば、通信線LNは、一方のコネクタが本体部10の第1コネクタに接続された状態で、第3工程を行い、第3工程を完了した後、通信線LNの他方のコネクタを第2コネクタに接続することで、通信線LNが本体部10の試験装置に接続される。
【0041】
以上の作業を行った後、本体部10の試験装置を起動させることで、通信線LNの検査(試験)を行うことができる。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態の高速通信線評価用ドラム治具100は、円柱状の本体部10と、本体部10に対して本体部10の周方向に沿って互いに間隔を空けて取り付けられ、それぞれが本体部10の高さ方向に沿って延在する複数のレール部11と、複数のレール部11に対して取り付けられ、本体部10における高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて配置された複数のフック部12と、を備え、複数のフック部(12)は、中心軸回りに螺旋状に巻き回された通信線LNを支持することを特徴とする。
【0043】
実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100は、フック部12によって通信線LNを支持することで、通信線LNが本体部10からずれ落ちることを抑制することができる。この構成によって、通信線LNが本体部10からずれ落ちた場合に生じる追加の修正作業(通信線を所定の高さ位置に戻す作業)の発生を抑制できるため、通信線LNを検査する際の作業性が向上する。また、本体部10の中心軸回りに螺旋状に巻き回された通信線LNの位置が変わることによって生じる通信線の検査品質の低下を抑制することができる。
【0044】
また、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100においては、複数のレール部11のそれぞれは、フック部12を周方向に挟んで保持可能な第1レール部11aと第2レール部11bとを含み、第1レール部11a及び第2レール部11bのうちの少なくとも一方は、それぞれが他方の第1レール部11a又は第2レール部11bに向けて突出して高さ方向に沿って間隔を空けて並べて配置された複数の凸部P1を有し、かつ、外力によって第1レール部11aと第2レール部11bとの間の間隔G1が広がるように変形可能な板バネ状に構成されており、フック部12に対して高さ方向の外力が加えられた場合、フック部12は、第1レール部11a及び第2レール部11bの間の間隔G1を押し広げて凸部P1を乗り越えて高さ方向に沿って移動可能に構成されている。
【0045】
実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100においては、レール部11に対してフック部12の高さ位置を変化させることができ、高さ方向における通信線LNの間隔を容易に設定することができる。
【0046】
また、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100において、複数のレール部11及び複数のフック部12における比誘電率の値は、0よりも大きく1.4以下である。
【0047】
実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100において、通信線LNの周囲に配置されるレール部11やフック部12の比誘電率を1.4以下にすることで、通信線の信号伝送性能に与える影響を小さくすることができ、比誘電率1.4を超える材料でレール部11やフック部12を形成した場合と比較して、通信線LNの検査品質を向上させることができる。
【0048】
また、説明したように、実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100を用いた通信線LNの巻付方法は、円柱状の本体部10に対して、本体部10の高さ方向に延在する複数のレール部11を、本体部10の周方向に沿って間隔を空けて並べて取り付ける第1工程S1と、レール部11のそれぞれに対して、複数のフック部12を本体部10における高さ方向に沿った中心軸回りに螺旋状に並べて取り付ける第2工程S2と、通信線LNを本体部10の外周面に対して中心軸回りに螺旋状に巻き回してフック部12に支持させる第3工程S3と、を含むことを特徴とする。
【0049】
実施形態に係る高速通信線評価用ドラム治具100を用いた通信線LNの巻付方法においては、フック部12によって通信線LNを支持することで、通信線LNが本体部10からずれ落ちることを抑制することができる。この構成によって、通信線LNが本体部10からずれ落ちた場合に生じる追加の修正作業(通信線を所定の高さ位置に戻す作業)の発生を抑制できるため、通信線LNを検査する際の作業性が向上する。また、本体部10の中心軸回りに螺旋状に巻き回された通信線LNの位置が変わることによって生じる通信線の検査品質の低下を抑制することができる。
【0050】
[変形例]
上述の実施形態においては、第2レール部11bに凸部P1が設けられている構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、凸部P1は、第1レール部11a及び第2レール部11bの双方に設けられていてもよい。具体的には、第1レール部11a及び第2レール部11bは、他方のレール部(第2レール部11b又は第1レール部11a)に向けて突出し、高さ方向において間隔を空けて並ぶ複数の凸部を有していてもよい。第1レール部11a及び第2レール部11bにおいて、それぞれの凸部は、第1レール部11aと第2レール部11bとで、実質的に同じ高さ位置に設けられ、第1レール部11aと第2レール部11bとは、第1レール部11aと第2レール部11bとの間において高さ方向に沿って延在する中心線に対して、線対称の形状となるように形成される。
【0051】
この場合、突出部12acの円弧形状の凸部P2は、第1レール部11a側と第2レール部11b側の双方に突出させて設けられる。突出部12acにおける第1レール部11a側に突出した凸部P2は、第1レール部11aにおける凸部の間の凹部と係合するように設けられ、突出部12acにおける第2レール部11b側に突出した凸部P2は、第2レール部11bにおける凸部の間の凹部と係合するように設けられる。第1レール部11a及び第2レール部11bは、第1レール部11aと第2レール部11bとの間の間隔G1を広げるように変形可能な板バネ状に形成され、フック部12に高さ方向の外力が加えられたときに、フック部12の凸部P2が第1レール部11aの凸部及び第2レール部11bの凸部を乗り越えることで、フック部12を高さ方向に沿って移動させることができる。
【0052】
上記の実施形態及び変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:本体部、11:レール部、11a:第1レール部、11b:第2レール部
11c:底壁部、12:フック部、12a:係合部、12b:支持部、12c:係止部
12aa:基部、12ab:接続部、12ac:突出部
100:高速通信線評価用ドラム治具
LN:通信線、P1、P2:凸部、R1:凹部
S1:第1工程、S2:第2工程、S3:第3工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6