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特開2025-5531光学素子の周辺構造、光学装置および樹脂成形用型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005531
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光学素子の周辺構造、光学装置および樹脂成形用型
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20250109BHJP
【FI】
G02B7/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105732
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000149907
【氏名又は名称】株式会社棚澤八光社
(74)【代理人】
【識別番号】110003915
【氏名又は名称】弁理士法人岡田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚澤 雄介
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AD01
2H044AD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造の手間を省き低コストでレンズその他の光学素子の表面およびその周辺の汚損を低減する。
【解決手段】カメラレンズ120の周囲に延在する周縁部としての端面110を有する筐体100に設けられる、カメラレンズ120としての光学素子の周辺構造であって、端面110の表面に、シボ加工が施されたシボ面が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の周囲に延在する周縁部を有する、光学素子の周辺構造であって、
前記周縁部の表面に、シボ加工が施されたシボ面が形成されている、
光学素子の周辺構造。
【請求項2】
前記シボ面は、親水性を有する親水シボ面、撥水性を有する撥水シボ面または排水性を有する溝が刻まれた排水シボ面のいずれかである、
請求項1に記載の光学素子の周辺構造。
【請求項3】
前記シボ面は、親水性を有する親水シボ面、撥水性を有する撥水シボ面および排水性を有する溝が刻まれた排水シボ面の少なくともいずれか2つを含んでおり、
前記シボ面が前記親水シボ面および前記撥水シボ面を含んでいる場合、前記親水シボ面および前記撥水シボ面は、前記周縁部の表面上に並列的に配置されている、
請求項1に記載の光学素子の周辺構造。
【請求項4】
前記シボ面は、親水性を有する親水シボ面、撥水性を有する撥水シボ面および排水性を有する溝が刻まれた排水シボ面の少なくともいずれか2つを含んでおり、
前記シボ面が前記排水シボ面を含んでいる場合、前記排水シボ面は、残りのシボ面に重なり合って形成されている、
請求項1に記載の光学素子の周辺構造。
【請求項5】
前記シボ面は、前記周縁部の位置に応じて、前記周縁部の表面にて選択的に形成されている、
請求項2から請求項4のいずれかに記載の光学素子の周辺構造。
【請求項6】
前記光学素子の周縁であって、前記周縁部に隣接する部分に、排水性を有する溝が刻まれた排水シボ面が形成されている、
請求項2から請求項4のいずれかに記載の光学素子の周辺構造。
【請求項7】
前記親水シボ面を構成する複数の凹凸のうち、複数の凸部の各々は、1.5mm以下の間隔で隣接している、
請求項2から請求項4のいずれかに記載の光学素子の周辺構造。
【請求項8】
前記親水シボ面を構成する複数の凹凸のうち、複数の凸部の各々は、1.0mm以下の間隔で隣接している、
前記請求項7に記載の光学素子の周辺構造。
【請求項9】
前記親水シボ面または前記撥水シボ面を構成する複数の凹凸のうち、複数の凸部の各々は、平面視で一様に分布している、
請求項2から請求項4のいずれかに記載の光学素子の周辺構造。
【請求項10】
光学素子と、
前記光学素子を収容する筐体とを備え、
前記筐体の表面を前記周縁部として、請求項1に記載の光学素子の周辺構造が形成されている光学装置。
【請求項11】
前記筐体は、
前記周縁部を底面とする略円柱状の形状を有し、
前記周縁部は、前記光学素子の光軸に沿った方向視にて、前記光学素子に隣接する内周面および前記内周面の外側に隣接する外周面の二重の同心円状に形成されている、
請求項10に記載の光学装置。
【請求項12】
光学素子の周囲に延在する周縁部を有する、光学素子の周辺構造の前記周縁部を樹脂成形品として形成するための樹脂成形用型であって、
成形型と、
前記成形型の表面に形成されるシボ転写面とを含み、
前記シボ転写面は、前記樹脂成形品の表面にシボが形成されたシボ面を転写させる、
樹脂成形用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学素子の周辺構造およびそれを備えた光学装置ならびに光学素子の周辺構造を得るための樹脂成形用型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載カメラや防犯カメラのように屋外で使用されるカメラにおいては、雨天時等における水滴からレンズ表面を保護するために、当該レンズの表面にコーティング等による親水膜あるいは撥水膜を形成することが行われている(例えば、特許文献1)。親水膜を形成することは乾燥を促進し、撥水膜を形成することは水滴付着を防止することで、レンズ表面の汚損を低減して、そのようなレンズを通して鮮明な画像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-34101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術によるコーティングは、親水膜あるいは撥水膜を別途形成するための手間やコストがかかってしまう。また、親水膜あるいは撥水膜はレンズの表面に形成されるところ、水滴がカメラの筐体であるレンズの周囲に付着し乾燥した場合は、輪染みを生じてレンズの周囲を汚損し、美観を損ねてしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、製造の手間を省き低コストでレンズその他の光学素子の表面および周辺の汚損を低減することが可能な光学素子の周辺構造およびそれを備えた光学装置ならびに樹脂成形用型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる光学素子の周辺構造は、光学素子の周囲に延在する周縁部を有する、光学素子の周辺構造であって、前記周縁部の表面に、シボ加工が施されたシボ面が形成されている、光学素子の周辺構造である。
【0007】
この発明にかかる光学装置は、光学素子と、前記光学素子を収容する筐体とを備え、前記筐体の表面を前記周縁部として、この発明にかかる光学素子の周辺構造が形成されている光学装置である。
【0008】
この発明にかかる樹脂成形用型は、光学素子の周囲に延在する周縁部を有する、光学素子の周辺構造の前記周縁部を樹脂成形品として形成するための樹脂成形用型であって、成形型と、前記成形型の表面に形成されるシボ転写面とを含み、前記シボ転写面は、前記樹脂成形品の表面にシボが形成されたシボ面を転写させる、樹脂成形用型である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、製造の手間を省き低コストでレンズその他の光学素子の表面および周辺の汚損を低減することが可能となる。
【0010】
この発明の上記の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造を示す要部斜視図である。
図2】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造を示す平面図である。
図3図2にかかる線III-IIIにおける断面模式図である。
図4】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造における親水シボ面を説明するための模式図である。
図5】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造における撥水シボ面を説明するための模式図である。
図6】(A)は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造における親水シボ面の作用を説明するための写真による説明図であり、(B)は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造における親水シボ面の作用を説明するための写真による説明図である。
図7】(A)は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造における撥水シボ面の作用を説明するための写真による説明図であり、(B)は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造における撥水シボ面の作用を説明するための写真による説明図である。
図8図2における領域112R1の拡大模式図である。
図9】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造における溝を有する排水シボ面の模様の一例を示す図である。
図10】(A)~(F)は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造のシボ面の例を説明するための図である。
図11図3における領域112R2の拡大模式図である。
図12】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造の断面模式図である。
図13】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造の構成を示す要部模式図である。
図14】(A)は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造の作用効果を説明するための図であり、(B)は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造の作用効果を説明するための図である。
図15】この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造を得るための樹脂成形用型の構成を示す断面模式図である。
図16】(A)は、この発明の実施例および比較例にかかるカメラレンズの周辺構造を得るための樹脂成形用型の構成を示す模式的斜視図であり、(B)は、この発明の実施例および比較例にかかるカメラレンズの周辺構造に対応する樹脂成形品の構成を示す模式的斜視図であり、(C)は、この発明の実施例および比較例にかかるカメラレンズの周辺構造に対応する樹脂成形品による試験の状態を説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一例としてカメラレンズの周辺構造について本実施の形態にて説明する。
1.カメラレンズの周辺構造
この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造の一例であるカメラレンズの周辺構造10について説明する。図1は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造を示す要部斜視図である。図2は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造を示す平面図である。図3は、図2の線III-IIIにおける断面模式図である。
【0013】
(筐体)
カメラレンズの周辺構造10は、カメラレンズ120が固定される筐体100を有するカメラ本体に設けられる。筐体100は、略円柱形状の外形を有し、例えば射出成型により製造される樹脂成形品である。筐体100は、円柱の底面に相当する端面110の中央にカメラレンズ120が嵌め込まれることにより、カメラ本体の鏡筒を構成している。すなわち、筐体100とカメラレンズ120とは、一体的で不可分な完成品であるカメラ本体として流通する構成を有する。
【0014】
ただし、筐体100は、カメラカバーその他カメラを内蔵した電気製品の外装のように、カメラ本体とは独立して構成され、あるいは流通する部品として構成されていてもよい。この場合、カメラレンズ120は筐体100内に配置されたカメラ本体に内蔵され、筐体100に対しては独立した別体の部品となる。すなわち、カメラレンズの周辺構造は、カメラ本体ではなく、カメラ本体を覆う外装に設けられる構成としてもよい。
【0015】
なお、カメラ本体の例としては、車両に組み込まれる車載カメラや屋外で使用されるインターホンに組み込まれるカメラ、防犯カメラ等が挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
筐体100の端面110は、カメラレンズ120を中心とした周縁部の表面を形成する。筐体100の端面110は、二重の同心円状に形成された内周面111および外周面112を有する。図3に示すように、内周面111は、カメラレンズ120に隣接し、内周面111は、カメラレンズ120の光軸Aを含む断面視にてカメラレンズ120に向かって俯角をなすすり鉢状の外形を有する。外周面112は、内周面111の外周側に隣接し、カメラレンズ120の光軸Aに対して直交する円環状の外形を有する。内周面111と外周面112とは、輪状の境界110Dによって区画される。
【0017】
したがって、筐体100において、カメラレンズ120は、外周面112に対し光軸Aに沿って後退した位置に配置され、外周面112および内周面111は、カメラレンズ120の外周を取り囲む庇(フード)を形成する。これにより、筐体100においては、カメラレンズ120に入射する迷光が低減されるとともに、カメラレンズ120に直接水滴等が付着する恐れが軽減される。
【0018】
ただし、端面110の平面形状および断面形状はこれに限定されない。カメラレンズ120の周囲に延在する周縁部を有するものであれば、平面形状矩形、断面形状平板状等、その他任意の形状をとることができる。また、筐体100の形状も、端面110の平面形状によって限定されず、六面体、錐台形等、その他任意の立体形状をとることができる。
【0019】
筐体100の材料、すなわち端面110の材料としては、たとえば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合合成樹脂であるABS樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等を用いることができるが、これに限定されない。
【0020】
(シボ面)
この実施の形態のカメラレンズの周辺構造10において、筐体100の端面110の内周面111および外周面112は、後述するように、微細な凹凸(シボ)を有するようにシボ加工されたシボ面として形成される。シボ面は、親水シボ面もしくは撥水シボ面のいずれか、または両方である。
【0021】
まず、親水シボ面について、説明する。親水シボ面とは、シボ加工にて得られた模様により親水性を有する面である。以下、内周面111を例にとり説明するが、外周面112も同様の構成を有する。図4の断面拡大図に模式的に示すように、親水シボ面としての内周面111は、表面111aと複数の凸部111bとがなすシボの凹部111xに水分Mが溜まることで、端面110に水が馴染んでいるように見えるという効果を持つ。
【0022】
これにより、図6(A)に示すように、内周面111に滴下した水滴WDは、ひとまとまりになったまま内周面111上を流れることが妨げられる。水滴WDは、形状を崩しながら内周面111上に拡散した染みSを形成することで、乾燥しやすくなっている。
【0023】
凹部111xの具体的な寸法の例として、平面視の内寸は1μm以上、深さは1μm以上であることが好ましい。これにより、毛細管現象で凹部111xに水が引き込まれるため、水滴WDが溜まることができる。
【0024】
次に、撥水シボ面について、説明する。撥水シボ面とは、シボ加工にて得られた模様により撥水性を有する面である。図5の断面拡大図に模式的に示すように、撥水シボ面である内周面111は、表面111aと複数の凸部111bとがなすシボの凹部111xが十分小さく、そこに水滴WDが入り込めないことで、端面110に水滴が付着し難いという効果を持つ。
【0025】
これにより、図6(B)に示すように、内周面111に滴下した水滴WDは、表面張力でひとまとまりになったまま内周面111上に滞留する。水滴WDはひとまとまりの水滴であるため、容易に除去することができる。
【0026】
凹部111xの具体的な寸法の例として、平面視の内寸は500μm以下、深さは500μm以下であることが好ましい。これにより、毛細管現象による水分Mの凹部111xへの引き込みが妨げられ、内周面111への水滴の付着を抑える、または付着した場合でも、手で払うだけで容易に除去できることができる。
【0027】
なお、図8に示すように、親水シボ面または撥水シボ面としての内周面111は、表面111a上に複数の凸部111bが平面視で一様なパターンで分布することにより梨地状の外観を有する。ここで図8は、図2における領域112R1の拡大模式図である。
【0028】
この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10においては、筐体100の端面110を構成する内周面111および外周面112の各々で、シボ面の種類を共通にすることが好ましい。
【0029】
また、内周面111および外周面112の各々で、シボ面の種類を異ならせることが好ましい。この場合、シボ面の種類は、親水シボ面および撥水シボ面を含んでいることが好ましい。
【0030】
具体的には、内周面111と外周面112とでは、内周面111を撥水シボ面、外周面112を親水シボ面として形成できる。また、内周面111を親水シボ面、外周面112を撥水シボ面として形成できる。
【0031】
なお、内周面111および外周面112の各々でシボ面の種類を異ならせることは、この発明の、複数のシボ面の全部または一部の模様は、周縁部の表面上に並列的に配置されていること、の例である。
【0032】
さらに、端面110の内周面111および外周面112は、親水シボ面または撥水シボ面の他、溝が刻まれた排水シボ面として構成することができる。ここで排水シボ面とは、シボ加工により複数の溝が形成されたことにより、排水性、すなわち水を排出する性質が与えられた面である。以下、内周面111を例にとり説明するが、外周面112も同様の構成を有する。
【0033】
図9に模式的に示すように、排水シボ面である内周面111は、面上に分布した溝Gが、水の流れる流路の役割を果たすことで、筐体100の端面110から水を排出させるという効果を持つ。溝Gは端面110の面上の一定の方向(図中上下方向)に延出して一様に形成される、いわゆるヘアライン模様と呼ばれる研磨目状のシボ模様となるように形成され、指向性の強い排水性を備える。
【0034】
溝Gの具体的な寸法の例として、幅は1μm以上、深さは1μm以上であることが好ましい。これにより、毛細管現象で溝Gに水が引き込まれるため、排水シボ面上の水は排水され、端面110上に水滴が出来にくくなる。
【0035】
さらに、排水シボ面は、端面110上において、内周面111および外周面112の平面形状に依存することなく、それらの表面にて、筐体100の利用状態、すなわち端面110の位置に応じた所望のパターンで選択的に形成することが好ましい。
【0036】
具体的には、図10(A)に示すように、内周面111および外周面112において、光軸Aを通る略水平方向に延びる線に対して下側の領域を、排水シボ面113として形成できる。排水シボ面113において、溝は図中上下方向に沿って形成される。溝の方向を鉛直方向と略一致させることで、端面110の排水能力を高めることができる。
【0037】
この構成は、特に筐体100をインターホンの筐体として用いる場合に好適である。なお、図10(A)においては、排水シボ面113は内周面111および外周面112の直径を基準としたが、これはカメラレンズ120のような光学素子の光軸Aを基準とすることの例である。すなわち、端面110が、長円、矩形その他任意の平面形状をとる場合であっても、カメラレンズ120の光軸Aを基準とすることにより、端面110上の適切な位置に排水シボ面113を形成することができる。
【0038】
また、図10(B)に示すように、内周面111および外周面112の全面の領域を、排水シボ面113として形成できる。図10(A)の例と同様、排水シボ面113において、溝は図中上下方向に沿って形成される。筐体100において溝の方向を鉛直方向と略一致させることで、端面110の排水能力を高めることができる。
【0039】
また、図10(C)に示すように、内周面111および外周面112の各々を、端面110の中心に対して市松模様状に分割して得られる領域を、排水シボ面113として形成できる。図10(A)の例と同様、排水シボ面113において、溝は図中上下方向に沿って形成される。筐体100において溝の方向を鉛直方向と略一致させることで、端面110の排水能力を高めることができる。
【0040】
以上のように、排水シボ面を、端面110の位置に応じて、端面110上において選択的に形成することで、端面110の排水能力を高めることが可能となる。
【0041】
なお、内周面111および外周面112の両方または一方をシボ面とするときは、カメラレンズ120の画角を遮らない範囲で寸法や形状を定めることが好ましい。
【0042】
図11は、図3における領域112R2の拡大模式図である。図11に示すように、筐体100の端面110は、筐体100の他の部分である筐体本体部130と内周面111とが一体化している。外周面112も同様に筐体本体部130と一体化している。これにより、シボ面としての端面110は、筐体100の表面形状として、筐体本体部130と一体的に形成される。
【0043】
親水シボ面としての内周面111において、複数の凸部111bの各々は、1.5mm以下の間隔で隣接していることが好ましい。これにより、複数の凸部111bにより形成される凹部111xが、親水性を損なわない程度の水滴を吸い上げる一方、吸い上げられない水滴は、重力や風や振動といった外的要因により内周面111上を滴下して除去されるため、内周面111は親水シボ面の機能を維持できる。
【0044】
さらに、複数の凸部111bの各々は、1.0mm以下の間隔で隣接していてもよい。これにより、凹部111xが一定量の水滴を吸い上げて親水性が良好に発揮される一方、吸い上げられない余剰の水滴は、重力や風や振動といった外的要因により内周面111から除去されるため、内周面111は親水シボ面の機能をさらに良好に維持できる。
【0045】
さらに、複数の凸部111bの各々は、0.3mm以下の間隔で隣接していることが最も好ましい。これにより、複数の凸部111bにより形成される凹部111xが十分に水滴を吸い上げ、内周面111上に水滴が溜まることが妨げられて、内周面111は親水シボ面の機能がもっとも良好に発揮される。
【0046】
さらに、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10においては、筐体100の端面110に加えて、カメラレンズ120にもシボ面を設けることが好ましい。
【0047】
すなわち、図12に示すように、カメラレンズ120は、筐体100の端面110に隣接する周縁121がシボ面を形成している。この場合において、周縁121のシボ面および端面110の両方が、溝が刻まれた排水シボ面であることが好ましい。
【0048】
具体的には、図10(D)に示すように、内周面111および外周面112において、光軸Aを通る略水平方向に延びる線に対して下側の領域を、溝が上下方向に沿った排水シボ面113として形成した場合に、カメラレンズ120の周縁121において、光軸Aを通る略水平方向に延びる線に対して下側の半周部分121aを、排水シボ面として形成できる。
【0049】
また、図10(E)に示すように、内周面111および外周面112の全面を、溝が上下方向に沿った排水シボ面113として形成した場合において、カメラレンズ120の周縁121の全周部分121bを、排水シボ面として形成できる。なお、この場合においては、図10(F)に示すように、内周面111および外周面112の全面は、溝が図中上下左右方向に交差した格子状の模様を有する排水シボ面113として形成されていてもよい。
【0050】
上述した図10(D)、図10(E)および図10(F)において、周縁121の半周部分121aおよび全周部分121bの排水シボ面は、溝がカメラレンズ120の中心から放射状に広がるパターンを有するものとして示したが、端面110上の排水シボ面113と同様、溝が図中上下方向または図中上下左右方向に沿って刻まれるものであってもよい。ただし、いずれの場合であっても、カメラレンズ120と内周面111との境界においては、カメラレンズ120の周縁121の排水シボ面の溝の端と端面110上の排水シボ面113の溝の端とが略一致することが好ましい。
【0051】
これにより、図13および図14(A)に示すように、カメラレンズ120の周縁121および端面110の両方の排水シボ面の溝を連通する経路G1が形成される。カメラレンズ120の表面120aに滴下した水滴WDは、経路G1に引き込まれ、経路G1を伝ってスムーズに端面110から外部へ排出される。なお、図13および図14(B)に示す経路G2は、比較用に示した、端面110の排水シボ面113の溝のみによって形成される経路である。経路G1を経由する場合、経路G2を経由する場合よりも水滴WDの排出をより効率的に行うことができる。
【0052】
カメラレンズ120の周縁121における排水シボ面の寸法は、カメラレンズ120の周縁から光軸Aに向かって、カメラレンズ120の画角を遮らない範囲内とすることが好ましい。
【0053】
カメラレンズ120の周縁121における排水シボ面の形成は、レーザー加工によることが好ましい。これにより、加工箇所を精度よく仕上げることができる。
【0054】
この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10は、筐体100の端面110が、シボ面として、親水シボ面もしくは撥水シボ面または排水シボ面を形成していることにより、以下の作用効果を奏する。
【0055】
すなわち、端面110が親水シボ面である場合、外界から端面110に滴下した水滴は、ひとまとまりになって端面110上を流れずに、形状を崩して端面110上に拡散し、乾燥しやすくなっている。これにより、筐体100に付着した水滴の排水や乾燥が促進される。
【0056】
また、端面110が撥水シボ面である場合、外界から端面110に滴下した水滴は、表面張力でひとまとまりになったまま端面110上に滞留するため、容易に除去することができる。これにより、筐体100に付着した水滴の排水や乾燥が促進される。
【0057】
また、端面110が排水シボ面である場合、外界から端面110に滴下した水滴は、毛細管現象によりヘアライン模様の溝の凹部に引き込まれ、溝に沿って移動することで、端面110から外界への排出が容易になっている。これにより、筐体100に付着した水滴の排水や乾燥が促進される。
【0058】
このように、端面110がシボ面を形成していることにより、水滴は、カメラレンズ120に向かって流れたり、カメラレンズ120と端面110との境界に滞留したりする恐れが低減される。その結果、カメラレンズ120の表面に輪染みが生じて汚損する恐れが低減される。また、水滴の乾燥後にカメラレンズ120の周辺である端面110に輪染みを生じて汚損する恐れが低減される。
【0059】
また、シボ面としての端面110は、筐体100の表面形状として、筐体100の筐体本体部130と一体的に形成される。これにより、親水膜あるいは撥水膜を別途形成するといった手間やコストが省かれる。
【0060】
したがって、製造の手間を省き低コストでカメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損を低減することが可能となる。
【0061】
また、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10において、筐体100の端面110が特に親水シボ面である場合、シボ面を構成する複数の凸部111b他の凸部の各々は、1.5mm以下の間隔で隣接していることが好ましい。これにより、内周面111は親水シボ面の機能を維持できる。さらに、複数の凸部111bの各々は、1.0mm以下の間隔で隣接していることが好ましい。これにより、内周面111は親水シボ面の機能をさらに良好に維持できる。さらに、複数の凸部111bの各々は、0.3mm以下の間隔で隣接していることが好ましい。これにより、端面110の親水シボ面の機能をもっとも良好に発揮させて、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損をさらに効果的に低減することが可能となる。
【0062】
また、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10において、筐体100の端面110が特に親水シボ面または撥水シボ面である場合、シボ面を構成する複数の凸部111b他の凸部の各々は、平面視で一様に分布していることが好ましい。これにより、端面110の親水性または撥水性を向上させて、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損をさらに効果的に低減することが可能となる。
【0063】
また、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10において、端面110の内周面111および外周面112の各々で、シボ面の種類を親水シボ面および撥水シボ面のいずれかとして、互いに異ならせることが好ましい。これにより、カメラ本体またはカメラ本体を覆う外装が設置される環境に応じて、外部からの水分の付着の影響を低減して、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損を低減することが可能となる。
【0064】
また、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10において、端面110の内周面111および外周面112の各々に対して、シボ面の種類の溝が刻まれた排水シボ面113とすることが好ましい。これにより、端面110の排水能力を高めて、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損を低減することが可能となる。さらに、この場合において、排水シボ面113は、内周面111および外周面112の形状に依存することなく選択的に形成することが好ましい。これにより、端面110の排水能力を高めて、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損を低減することが可能となる。さらに、この場合において、カメラレンズ120の周縁121も溝が刻まれた排水シボ面として形成することが好ましい。これにより、カメラレンズ120の排水能力を直接高めて、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損を効果的に低減することが可能となる。
【0065】
また、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10において、筐体100とカメラレンズ120とは、一体的で不可分なカメラ本体として流通する構成を有することが好ましい。これにより、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損を低減するカメラ本体が得られる。
【0066】
また、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10は、カメラ本体ではなく、カメラ本体を覆う外装に設けられる構成であることが好ましい。これにより、この発明のカメラレンズの周辺構造を有さない既存のカメラ本体に対しても、後付けでカメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損を低減させることが可能となる。
【0067】
2.変形例
なお、この実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10において、端面110の内周面111および外周面112の各々に対して、複数のシボ面の組み合わせとして形成されていてもよい。この場合、複数のシボ面は、親水シボ面、撥水シボ面および排水シボ面の少なくともいずれか2つを含んでいることが好ましい。さらに、複数のシボ面が排水シボ面を含んでいる場合、排水シボ面が、残りのシボ面である親水シボ面および撥水シボ面のいずれか一方または両方に重なり合って形成されていることが好ましい。
【0068】
具体的には、内周面111および外周面112の各々に、撥水シボ面または親水シボ面のいずれかが形成されている場合において、図10(A)に示す構成のように、内周面111および外周面112において、光軸Aを通る略水平方向に延びる線に対して下側の領域で、排水シボ面113が重なるように形成されていてもよい。同様に、図10(D)に示す構成が適用されてもよい。
【0069】
内周面111および外周面112の各々に、撥水シボ面または親水シボ面のいずれかが形成されている場合において、図10(B)に示す構成のように、内周面111および外周面112の全面の領域で、排水シボ面113が重なるように形成されていてもよい。同様に、図10(E)に示す構成が適用されてもよい。
【0070】
内周面111および外周面112の各々に、撥水シボ面または親水シボ面のいずれかが形成されている場合において、図10(C)に示す構成のように、内周面111および外周面112の各々を端面110の中心に対して市松模様状に分割した領域で、排水シボ面113が重なるように形成されていてもよい。
【0071】
内周面111および外周面112の各々に、撥水シボ面または親水シボ面のいずれかが形成されている場合において、図10(F)に示す構成のように、内周面111および外周面112の全面に溝が上下左右方向に交差した排水シボ面113が重なるように形成されてもよい。
【0072】
これらの変形例によれば、端面110に、撥水シボ面または親水シボ面のいずれかが有する撥水性または親水性と溝状の排水シボ面が有する排水性との両方が備わり、カメラレンズ120の表面およびその周囲の汚損をさらに効果的に低減することが可能となる。
【0073】
3.樹脂成形用型
この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10を得るための樹脂成形用型について説明する。図15は、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10を得るための樹脂成形用型を示す要部断面図である。なお、図15の断面は、図11に示すカメラレンズの周辺構造10の断面に対応している(図2および図3を参照)。したがって、以下の説明は内周面111を対象とするが、外周面112にも同様に当てはまる。
【0074】
図15に示すように、樹脂成形用型20は、本発明の成形型の例であって、型材である枠本体部200aと、枠本体部200aの表面部分であるシボ転写面200bとを含む。すなわち、シボ転写面200bは、枠本体部200aと一体的に形成される。
【0075】
樹脂成形用型20は、射出成形用型、圧縮成形用型、圧空成形用型等として実施することができる。すなわち、樹脂成形用型20は、樹脂成形品に後述するシボ面を形成することができれば、それが用いられる成形の方法によって限定されない。なお、樹脂成形用型20が射出成形用型である場合は、枠本体部200aの図示しない縁部には、射出成形のための抜き勾配が設けられることが好ましい。
【0076】
枠本体部200aの材料としては、樹脂成形品に後述するシボ面を形成することができれば、スチールやZAS等の金属材料、金属部分と樹脂部分を併せ持つようなハイブリッド材料、または樹脂や木材等の非金属製材料であってもよい。すなわち、型材の材質に制限は無い。ひいては、型面(樹脂成形品)の材質にも制限は無い。
【0077】
シボ転写面200bは、一様な平面である表面210と、表面210に穿たれた複数の凹部211とがなすシボにより形成される面である。シボ転写面200bは、カメラレンズの周辺構造10の筐体100の内周面111の平面視による形状に対応する。これより、樹脂成形用型20により作成された筐体100の端面110は、シボ転写面200bの反転形状としての、凹部111xを有する内周面111を形成する。
【0078】
シボ転写面200bの寸法および形状を適宜異ならせることによって、カメラレンズの周辺構造10におけるシボ面である、撥水シボ面、親水シボ面または排水シボ面113のいずれかまたはこれらの組み合わせを得ることができる。例えば、親水シボ面を得る場合は、複数の凹部211が、平面視で一様なパターンで分布することにより梨地状の外観を有し、複数の凹部211の各々の間隔D2は、1.5mm以下であることが好ましい。さらに、間隔D2は、1.0mm以下であることが好ましい。さらに、間隔D2は、0.3mm以下であることが好ましい。
【0079】
複数の凹部211のような、シボ転写面200bのシボ面を得るための形状は、表面210において対応する部分、すなわち、凹部211の内側となる部位を除去することによって形成することができる。具体的には、化学エッチング法、サンドブラスト法、NCマシン等による機械加工、またはレーザー加工機による加工等のうち、シボ面を加工する加工対象面の材質によって、加工法を適宜選択して形成することができる。
【0080】
複数の凹部211のような、シボ転写面200bのシボ面を得るための形状は、表面210において必要な部分、すなわち、凹部211の周囲となる部位を形成することによって形成することができる。具体的には、例えば、複数の凹部211に対する熱硬化性樹脂、或いは紫外線硬化樹脂などの合成樹脂のコーティングや積層膜の形成によるコーティング積層法、電気鋳造法、樹脂粉末や液体を接着や融着することで形作る3Dプリント法、または金属粉末を接着や融着することで形作るアディティブ法等のうち、シボ面を加工する加工対象面の材質によって、手作業なのか、装置を使用するのか、といった加工法を適宜選択して、形成することができる。
【0081】
このような樹脂成形用型20は、一様な平面である表面210と、表面111aに穿たれた複数の凹部211とがなすシボにより形成されるシボ転写面200bを有することにより、成型の成果物である樹脂成形品として、この発明の実施の形態にかかるカメラレンズの周辺構造10の筐体100の端面110を得ることができる。
【0082】
4.実験例
(4-1)金型を模した比較実験(加工対象面が金属製の場合)
まず、図16(A)に示すように、加工対象面を金属製としたテスト成形用型300を準備した。テスト成形用型300は、テストピース300a(材質:S50C、サイズ:100mm×150mm)を含む。このテストピース300aの主面側において、その一方側の半面に対して、実施例1としての親水シボ面、実施例2としての撥水シボ面および実施例3としての溝が刻まれた排水シボ面の各々に対応するシボ転写面200bをそれぞれエッチング加工によって加工した。また、残りの他方側の半面に対して、比較例として凹凸が一様でない一般的な皮シボ転写面200xを加工した。そして、このテスト成形用型300を用いた射出成型により、図16(B)に示す、本比較実験に用いられる樹脂成形品30を得た。従って、得られた樹脂成形品30は、その表面の一方側の半面にシボ転写面200bにより得られたテスト用シボ面110Tを有し、残りの他方側の半面に皮シボ転写面200xにより得られた比較用の皮シボ面110xを有する。
【0083】
次いで、図16(C)に示すように、樹脂成形品30をθ=45°である所定角θだけ傾斜させて、テスト用シボ面110Tおよび比較用の皮シボ面110xの各々に0.5mlの水を滴下し、テスト用シボ面110Tに滴下した水滴WD1および比較用の皮シボ面110xに滴下した水滴WD2の挙動を観察した。実験結果は表1に示される。
【0084】
【表1】
【0085】
表1によれば、比較例では、皮シボであるため乾燥後に輪染みが観察された。一方、実施例1ないし実施例3のテスト用シボ面110Tでは、輪染みが観察されず、良好な結果が得られることが確認された。
【0086】
(4-2)樹脂型を模した比較実験(加工対象面が樹脂製の場合)
まず、図16(A)に示すように、加工対象面を樹脂製としたテスト成形用型300を準備した。テスト成形用型300は、テストピース300a(材質:S50Cの鉄板の上に合成樹脂から成る樹脂層(厚さ0.5mm)を設けたもの。サイズ:100mm×150mm)を含む。このテストピース300aの主面側において、その一方側の半面に、(4-1)と同様の実施例1、実施例2および実施例3を含むシボ転写面200bをレーザー加工によって加工し、残りの他方側の半面に、(4-1)と同様の皮シボ転写面200xを加工した。そして、このテスト成形用型300を用いた射出成型により、図16(B)に示す、本比較実験に用いられる樹脂成形品30を得た。
【0087】
そして、(4-1)と同様の条件で、テスト用シボ面110Tおよび比較用の皮シボ面110xにおける、滴下した水滴WD1およびWD2の挙動を観察した。実験結果は表2に示される。
【0088】
【表2】
【0089】
表2によれば、比較例では、皮シボであるため乾燥後に輪染みが観察された。一方、実施例4ないし実施例6のテスト用シボ面110Tでは、輪染みが観察されず、良好な結果が得られることが確認された。
【0090】
なお、以上のように、この発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、この発明は、これに限定されるものではない。
【0091】
たとえば、この発明の光学素子は、上述したカメラレンズ120のほか、光透過性フード、光学フィルター、ガラス窓等、光を透過させる受動素子であればよく、その構成や機能、目的に限定されない。この発明は、それらの光学素子を備えた任意の光学装置と組み合わせて実施することができる。
【0092】
また、この発明の光学装置は、上述したカメラレンズ120を有するカメラ本体のほか、上述した光学素子を備えた任意の光学装置であってもよい。
【0093】
また、この発明の光学素子の周辺構造は、上述したカメラ本体の外装のほか、上述した光学装置を覆う外装となるカバー、筐体他の任意の部品に設けられる構成として実施してもよい。
【0094】
また、シボ面は、親水性を有する親水シボ面、撥水性を有する撥水シボ面または排水性を有する溝が刻まれた排水シボ面のいずれを問わず、筐体100の端面110の全面に形成されていなくともよい。周縁部として、カメラレンズ120その他光学素子の周囲に延在する部分の任意の部分に、任意の形状、寸法にて形成されていてもよい。
【0095】
すなわち、この発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態および各変形例に対し、機序、形状、材質、数量、位置または配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、この発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0096】
10 カメラレンズの周辺構造
20 樹脂成形用型
30 樹脂成形品
100 筐体
110 端面
110D 境界
110T テスト用シボ面
110x 比較用の皮シボ面
111 内周面
111a、120a、210 表面
111b 凸部
111x、211 凹部
112 外周面
112R1、112R2 領域
113 排水シボ面
120 カメラレンズ
121 周縁
121a 半周部分
121b 全周部分
130 筐体本体部
200a 枠本体部
200b シボ転写面
200x 皮シボ転写面
300 テスト成形用型
300a テストピース
A 光軸
D1、D2 間隔
G 溝
G1、G2 経路
M 水分
WD、WD1、WD2 水滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16