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特開2025-5535フォトレジスト用樹脂、フォトレジスト組成物および硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005535
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】フォトレジスト用樹脂、フォトレジスト組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20250109BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20250109BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F220/06
C08L33/06
G03F7/033
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105737
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸之輔
(72)【発明者】
【氏名】田上 安宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 竜也
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AD02
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AM38P
2H225AM94P
2H225AN38P
2H225CA11
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J002BG021
4J002EH070
4J002EV010
4J002FD140
4J002FD150
4J002GP03
4J100AJ02Q
4J100AL03R
4J100AL08P
4J100AL08S
4J100AL09P
4J100BA34P
4J100BC26S
4J100CA06
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】銅配線などの金属基板に対し硬化後に良好な密着力を示し、レジスト剥離時には室温下で一般的な有機溶剤を用いて剥離でき、且つ例えば露光量100mJ/cmのような低露光量で硬化するフォトレジスト用樹脂を提供すること。
【解決手段】所定の一般式で示されるモノマー(a)に由来する構成単位を3~40質量%、(メタ)アクリル酸(b)に由来する構成単位を5~40質量%、所定の一般式で示されるモノマー(c)に由来する構成単位を30~92質量%含有し、重量平均分子量が3,000~300,000であることを特徴とするフォトレジスト用樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるモノマー(a)に由来する構成単位を3~40質量%、(メタ)アクリル酸(b)に由来する構成単位を5~40質量%、下記式(2)で示されるモノマー(c)に由来する構成単位を30~92質量%含有し、重量平均分子量が3,000~300,000であることを特徴とするフォトレジスト用樹脂。
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1~6の直鎖のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素数1~23のアルキル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは、単結合又はエステル結合を示し、Rは、炭素数1~18の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載のフォトレジスト用樹脂、光重合開始剤及び多官能モノマーを含むフォトレジスト組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のフォトレジスト組成物から形成される硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト用樹脂、フォトレジスト組成物および硬化物に関するものである。
ここで、本明細書において、「フォトレジスト」とは、現像液に対する溶解性が光照射によって変化する組成物を意味し、フォトレジスト組成物とも称する。「フォトレジスト用樹脂」とは、フォトレジストを製造するために用いられる樹脂を意味する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは、各種部品の製造に広く応用されており、例えばテレビ等の画像表示装置やデジタルカメラ等に使用される撮像素子をはじめとする電子部品等の製造工程又は加工工程に不可欠な微細加工材料となっている。
【0003】
近年、電子製品の小型化に伴い、モジュールや回路基板の小型化がより一層求められている。回路基板の小型化にはさらなる配線の微細化が必要であり、従来以上にエッチング用フォトレジストの細線のパターニングの形成が必要不可欠となる。そのためフォトレジスト用樹脂は露光光源に対して、低い露光量で硬化する低露光量化が要求されている。
【0004】
また配線の微細化に伴い、硬化したフォトレジストのレジストパターンが現像時やエッチング時に剥離するといった問題がある。これは、銅基板に対して密着力が足りないためにおこると考えられており、レジスト硬化膜に対してさらなる密着性向上が要求されている。しかし密着性を単純に上げると硬化膜剥離時に剥離時間が極端に伸びたり、剥離時未剥離部分が生じるといった問題が発生する。その解決策として剥離離時の温度を上げることが知られているが、温度を上げた場合、剥離液中の有機溶剤が揮発しやすくなり臭気問題や作業環境に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため硬化物が剥離液に対し、低温で溶解することも要求されている。
【0005】
特許文献1には、アルカリ可溶性高分子、光重合開始剤、エチレン性二重結合を有する化合物を所定の比率で含有する感光性樹脂組成物であって、所定の条件でダイレクトイメージング露光及び現像を行って得られるレジストパターンのレジスト裾幅が所定範囲になるものが開示されている。そして、このような感光性樹脂組成物は、メッキ後の銅配線などの導体の密着性に優れるなどされている。
【0006】
特許文献2には、アルカリに可溶であるフェノール性水酸基を有する樹脂或いはアルカリ可溶性アクリル樹脂、感放射線性ラジカル重合開始剤、酸発生剤、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、所定の連結基を有する化合物を含有するネガ型感放射線性樹脂組成物が開示されている。そして、このようなネガ型感放射線性樹脂組成物を用いると、アルカリ条件下でもメッキできるだけでなく、レジストのパターニングを剥離する際も一般的な有機溶剤で剥離可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-223993号公報
【特許文献2】国際公開第2008/093507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に具体的に開示されているアルカリ可溶性高分子を用いた場合、剥離工程において強アルカリ性の剥離液を使用する必要があり銅配線などを腐食するリスクがあった。また、特許文献2に開示されているネガ型感放射線性樹脂組成物は、銅配線などの金属板に対する密着性を上げるため長時間の硬化が必要であった。また剥離時は、50~70度と高温で剥離する必要があった。
【0009】
本発明の目的は、銅配線などの金属基板に対し硬化後に良好な密着力を示し、レジスト剥離時には室温下で一般的な有機溶剤を用いて剥離でき、且つ例えば露光量100mJ/cmのような低露光量で硬化するフォトレジスト用樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前述の課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、上記目的を達成し得るフォトレジスト用樹脂を見出し、本発明を完成するに至った。本発明の要旨は、以下の通りである。
【0011】
[1]下記式(1)で示されるモノマー(a)に由来する構成単位を3~40質量%、(メタ)アクリル酸(b)に由来する構成単位を5~40質量%、下記式(2)で示されるモノマー(c)に由来する構成単位を30~92質量%含有し、重量平均分子量が3,000~300,000であることを特徴とするフォトレジスト用樹脂。
【0012】
【化1】
【0013】
(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1~6の直鎖のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素数1~23のアルキル基を示す。)
【0014】
【化2】
【0015】
(式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Xは、単結合又はエステル結合を示し、Rは、炭素数1~18の炭化水素基を示す。)
【0016】
[2]前項[1]に記載のフォトレジスト用樹脂、光重合開始剤及び多官能モノマーを含むフォトレジスト組成物。
[3]前項[2]に記載のフォトレジスト組成物から形成される硬化物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、銅配線などの金属基板に対し硬化後に良好な密着力を示し、レジスト剥離時には室温下で一般的な有機溶剤を用いて剥離でき、且つ例えば露光量100mJ/cmのような低露光量で硬化するフォトレジスト用樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は、「~」の両端(上限及び下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は、2以上、4以下を表す。更に、濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
【0019】
また、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを表す。ここで、(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。そのため、2種以上の(メタ)アクリレートが存在し得る場合、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。「(メタ)アクリロイル基」等の用語も、「(メタ)アクリレート」と同様の意味である。
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
[フォトレジスト用樹脂]
本発明の実施形態に係るフォトレジスト用樹脂は、後述する式(1)で示されるモノマー(a)に由来する構成単位を3~40質量%、後述する(メタ)アクリル酸(b)に由来する構成単位を5~40質量%、後述する式(2)で示されるモノマー(c)に由来する構成単位を30~92質量%含有し、重量平均分子量が3,000~300,000である。以下、各モノマー成分などについて説明する。
【0022】
<モノマー(a)>
本発明の実施形態で用いるモノマー(a)は、下記式(1)で示される。
【0023】
【化3】
【0024】
(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1~6の直鎖のアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素数1~23のアルキル基を示す。)
【0025】
式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、硬化のし易さの観点からは水素原子が好ましい。
【0026】
式(1)中、Rは、炭素数1~6の直鎖のアルキレン基であればよい。アルキレン基の炭素数は、1~6であればよいが、金属に対する密着性と原料の入手のしやすさの観点から、炭素数が1~3であるのが好ましく、炭素数が2のものが特に好ましい。
【0027】
式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。密着性、低露光量での硬化性(感度)の観点からは、水素原子が好ましい。
【0028】
式(1)中、Rは、炭素数1~23のアルキル基である。剥離液に対する溶解性(剥離性)と原料の入手のしやすさの観点から、炭素数は1~18が好ましく、炭素数1~10のものがより好ましく、炭素数1~2のものが特に好ましい。アルキル基は、直鎖でも良いし、分岐を有するものであってもよい。
【0029】
モノマー(a)は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組合わせて用いてもよい。
フォトレジスト用樹脂におけるモノマー(a)に由来する構成単位の含有割合としては、全モノマー(単量体)に由来する構成単位に対して、3質量%~40質量%である。より好ましくは10質量%~35質量%、特に好ましくは10質量%~30質量%である。これらの範囲にすることで、低露光量で硬化し(即ち、感度が良好)かつ銅基板に対し良好な密着性を有する硬化物を得ることができる。尚、構成単位の含有割合は、下記に示す条件にて行うGC/MS分析により測定、算出することができる。また、全モノマーの配合比に基づいて算出することもできる。ここで、GC/MS分析に基づく含有割合は、配合比に基づく含有割合に対して1割程度ずれが生じ得るため、GC/MS分析に基づく値を用いる場合は、この点を考慮して構成単位の含有割合を決定し得るものとする。以上の点は、後述するモノマー(b)、(c)についても同様である。
(GC/MS分析方法)
GC/MS装置を用いて、以下に示す条件により測定を行い、構成単位の割合を算出できる。
装置名:JEОL製JMS-Q1500GC
カラム:Agilent製DB-1(膜圧0.25mm)
キャリア:He 1.5mL/min Split 1/30
インジェクション温度:300℃
オーブン温度:100℃(2min)-310℃(37min)10℃/min昇温
イオン化電流:70eV
イオン化:EI
サンプルインジェクション:1μL
パイロホイル:590℃(日本分析工業株式会社製)
【0030】
モノマー(a)は、例えば、(1)酸触媒存在下で、(メタ)アクリル酸とアルカノールアミドとを脱水エステル化反応させる、(2)エステル交換触媒存在下で、(メタ)アクリル酸エステルとアルカノールアミドとをエステル交換反応させる、(3)アクリル酸クロライドとアルカノールアミドとを反応させる、ことによって製造することができる。各種条件は、定法に従い、使用する触媒の種類、合成原料の種類などに応じて適宜選択することができる。
【0031】
<(メタ)アクリル酸(b)>
本発明の実施形態で用いる(メタ)アクリル酸(b)(以下、「モノマー(b)」と称する場合がある。)は、アクリル酸及びメタクリル酸から選択される少なくとも一種であるが、共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性及び入手の容易性から、メタクリル酸が好ましい。フォトレジスト用樹脂における(メタ)アクリル酸(b)に由来する構成単位の含有割合としては、全モノマー(単量体)に由来する構成単位に対して5~40質量%であり、好ましくは5~30質量%、より好ましくは8~20質量%である。これら範囲にすることで、銅等の基板に対する密着性と剥離液に対する溶解性(剥離性)が良好なフォトレジスト用樹脂を得ることができる。
【0032】
<モノマー(c)>
本発明の実施形態で用いるモノマー(c)は、下記式(2)で示されるモノマーである。
【0033】
【化4】
【0034】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは、単結合又はエステル結合を示し、Rは、炭素数1~18の炭化水素基を示す。)
【0035】
式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、特に限定はないが、銅基板に対する密着性の観点からは、メチル基が好ましい。
【0036】
式(2)中、Xは、単結合又はエステル結合であり、特に限定はないが、感度の観点からは、エステル結合であるのが好ましい。
【0037】
式(2)中、Rは、炭素数1~18の炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。炭素数1~18の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ジシクロペンタニル基などが挙げられる。銅基板に対する密着性と剥離液に対する溶解性(剥離性)の観点から、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、ジシクロペンタニル基、フェニル基から選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0038】
モノマー(c)に由来する構成単位は、1種単独で含有しても良いし、2種以上組み合わせて含有しても良い。2種以上組み合わせる場合は、例えば、炭素数1~18の飽和脂肪族炭化水素基を有するものに由来する構成単位と脂環式炭化水素基を有するものに由来する構成単位とを組合わせるのが好ましい。
【0039】
モノマー(c)に由来する構成単位の含有割合としては、全モノマー(単量体)に由来する構成単位に対して30~92質量%であり、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~80質量%である。このような範囲とすることで、後述するモノマー組成物の基板に対する塗布性、及び、フォトレジスト用樹脂の銅基板に対する優れた密着性を両立することができる。また、モノマー(c)に由来する構成単位を2種以上組み合わせる場合、その比率は特に限定はなく、構成単位の種類などに応じて適宜決定することができる。例えば、炭素数1~18の飽和脂肪族炭化水素基を有するものに由来する構成単位(A)と脂環式炭化水素基を有するものに由来する構成単位(B)とを組合わせる場合、AとBの混合比(A/B)は、質量基準で80/20~55/45とすることができる。
【0040】
モノマー(c)は、市販のものを用いることができる。
【0041】
実施形態に係るフォトレジスト用樹脂では、前述の構成単位となるモノマー(a)、(b)及び(c)以外に、これらと共重合可能な他のモノマーに由来する構成単位を含んでもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、芳香族ビニル化合物、マレイミドモノマーなどが挙げられる。これらの他のモノマーに由来する構成単位は、1種単独で含まれてもよいし、2種以上組み合わせて含まれてもよい。もっとも、金属板との密着性、剥離性、低露光量での硬化性などの観点からは、これらの他のモノマーに由来する構成単位を含まないのが好ましい。つまり、前述のモノマー(a)、(メタ)アクリル酸(b)及びモノマー(c)に由来する構成単位の合計が、全モノマーに由来する構成単位中100質量%となるのが好ましい。
【0042】
<フォトレジスト用樹脂の重量平均分子量(Mw)>
本発明の実施形態に係るフォトレジスト用樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~300,000であり、好ましくは5,000~100,000であり、さらに好ましくは5,000~50,000である。前記Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。前記Mwが3,000より低いと、フォトレジスト用樹脂を含むフォトレジスト組成物から形成される硬化物の銅基板に対する密着性が不足するおそれがあり、前記Mwが300,000より高いと、前記フォトレジストの剥離性などが悪化するおそれがある。
【0043】
<フォトレジスト用樹脂の製造方法>
本発明の実施形態に係るフォトレジスト用樹脂は、例えば、前述のモノマー(a)、(メタ)アクリル酸(b)、前述のモノマー(c)(必要に応じて前述の他のモノマーを含み得る)をラジカル重合させることにより製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。これらの中で、フォトレジスト用樹脂の重量平均分子量を、上述の所定範囲内に調整しやすいという点から、溶液重合が好ましい。溶液重合では、例えば、前述のモノマー(a)、(b)、(c)(必要に応じて前述の他のモノマーを含み得る)、重合開始剤、溶媒を含むモノマー組成物を調製し、所定の条件でモノマーを重合反応させることで得ることができる。前述のラジカル重合において使用可能な重合開始剤は、公知のものを使用することができる。重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0044】
有機過酸化物としては、例えば、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0045】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0046】
重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。重合開始剤およびモノマーを反応器に添加する方法に特に限定はない。例えば、重合開始剤およびモノマーの全量を一括で反応器に添加してもよく、重合開始剤およびモノマーを、分割して(例えば滴下して)反応器に添加してもよい。
【0047】
溶液重合に使用する溶媒は、モノマーおよび重合開始剤を溶解できるものであり、フォトレジストの分野で公知のものを使用することができる。溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
モノマー組成物中の各モノマー濃度の合計は、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~50質量%である。前記濃度の合計が低すぎると、重合後にモノマーが残存しやすく、得られるフォトレジスト用樹脂の重量平均分子量が低下するおそれがあり、前記濃度の合計が高すぎると、重合時の発熱を制御し難くなるおそれがある。
【0049】
重合温度は、モノマーの種類、重合開始剤の種類、溶媒の種類等に応じて、適宜設定でき、例えば、50℃~120℃とすることができる。重合時間は、重合開始剤の種類、重合温度等に応じて、適宜設定できる。例えば、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を使用し、重合温度が75℃である場合、重合時間は、例えば4時間程度である。
【0050】
溶液重合によって得られたフォトレジスト用樹脂を含む溶液を、そのまま、フォトレジスト組成物の製造に用いてもよい。また、得られたフォトレジスト用樹脂を含む溶液から、公知の手段(例えば、溶媒留去、固液分離等)によってフォトレジスト用樹脂を単離し、単離した樹脂を、フォトレジスト組成物の製造に用いてもよい。
【0051】
[フォトレジスト組成物]
本発明の実施形態に係るフォトレジスト組成物は、前述のフォトレジスト用樹脂、光重合開始剤及び多官能モノマーを含む。このフォトレジスト組成物は、光照射によって現像液に対する溶解性が低下する組成物、即ち、露光後に現像部分が残るネガ型フォトレジスト組成物である。本発明の実施形態に係るフォトレジスト組成物に含まれるフォトレジスト用樹脂は、上述の通りであるが、フォトレジスト組成物中のフォトレジスト用樹脂の含有量は、特に限定はなく、適宜決定することができ、例えば固形分換算で1~5質量%とすることができる。尚、固形分換算とは、フォトレジスト用樹脂を溶剤で希釈して樹脂溶液として用いる場合に樹脂溶液に含まれる溶剤成分を除いた値を意味する。
【0052】
以下では、光重合開始剤、多官能モノマー、必要に応じて含まれる他の成分について説明する。
【0053】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、特に限定はなく、フォトレジストの分野で公知の光重合開始剤を使用することができる。このような光重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン、キノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、グリシン化合物、アクリジン誘導体、オキシムエステル、クマリン化合物、チオキサントン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0054】
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0055】
キノン化合物としては、例えば、アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等が挙げられる。
【0056】
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等が挙げられる。
【0057】
ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等が挙げられる。
【0058】
ベンジル誘導体としては、例えば、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0059】
グリシン化合物としては、例えば、N-フェニルグリシン等が挙げられる。
【0060】
アクリジン誘導体としては、例えば、9-フェニルアクリジン等が挙げられる。
【0061】
オキシムエステルとしては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-(O-ベンゾイルオキシム)等が挙げられる。
【0062】
クマリン化合物としては、例えば、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等が挙げられる。
【0063】
チオキサントン化合物としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0064】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0065】
光重合開始剤は、好ましくは芳香族ケトン、キノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、グリシン化合物、アクリジン誘導体、オキシムエステル、クマリン化合物、チオキサントン化合物、およびアシルホスフィンオキサイド化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは芳香族ケトン、キノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、グリシン化合物、アクリジン誘導体、オキシムエステル、クマリン化合物、チオキサントン化合物、またはアシルホスフィンオキサイド化合物であり、さらに好ましくは芳香族ケトンであり、特に好ましくは2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノンである。
【0066】
フォトレジスト組成物の硬化性の観点から、光重合開始剤の含有量は、フォトレジスト用樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~50質量部、より好ましくは1~40質量部、さらに好ましくは10~35質量部である。尚、フォトレジスト用樹脂100質量部とは、前述のように固形分換算での値である。
【0067】
<多官能モノマー>
多官能モノマーとは、2個以上の重合性官能基を有する化合物を意味する。多官能モノマーは、好ましくは2個以上のオレフィン性二重結合を有する化合物であり、より好ましくは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。多官能モノマーとしては、例えば、下記の2~6官能モノマーが挙げられる。また、多官能モノマーは、例えば、これらの2~6官能モノマーから選択される1種を単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0068】
2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
3官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
4官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられ、5官能モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられ、6官能モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
これらの多官能モノマーの中でも、4官能モノマー、5官能モノマー、6官能モノマーが好ましく、6官能モノマーが特に好ましい。6官能モノマーの中でも、より好ましくはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
【0070】
フォトレジスト組成物の硬化性の観点から、多官能モノマーの含有量は、フォトレジスト用樹脂100質量部に対して、好ましくは10~500質量部、より好ましくは50~400質量部、さらに好ましくは100~350質量部である。尚、フォトレジスト用樹脂100質量部とは、前述のように固形分換算での値である。
【0071】
<他の成分>
本発明の実施形態に係るフォトレジスト組成物には、フォトレジスト用樹脂、光重合開始剤及び多官能モノマー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば溶剤などが挙げられる。
【0072】
溶剤は、フォトレジストの分野で公知のものを使用することができる。溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0073】
溶剤の含有量は、フォトレジスト組成物の塗布性の観点から、フォトレジスト組成物全体に対して、好ましくは40~95質量%、より好ましくは55~90質量%である。尚、他の成分に溶剤が含まれる場合は、これを考慮した含有量である。
【0074】
[硬化物]
本発明の実施形態に係る硬化物は、前述のフォトレジスト組成物から形成される。例えば、前述のフォトレジスト組成物を、所望の厚みになるように回路基板上に塗布し、所定の加熱条件で乾燥して(プリベーク)、乾燥物(塗膜)を形成する。その後、この乾燥物に対して、所定のマスクを介して、紫外線などの活性エネルギー線を所定条件で照射することで、硬化物(硬化膜)を得ることができる。この際、前述のフォトレジスト用樹脂が含まれることで、従来よりも低い活性エネルギー線量(即ち、露光量)で硬化させることができる。このような低露光量による硬化性は、後述する実施例の欄に記載の方法で評価することができる。
【0075】
このようにして得られる硬化物は、前述のフォトレジスト用樹脂が含まれることで、銅配線などの金属板との密着性が良好であり、硬化物を金属板から剥離する時には室温下で一般的な有機溶剤にて剥離が可能である(良好な剥離性を有する)。このような硬化物の金属板との密着性、硬化物の金属板からの剥離性は、後述する実施例の欄に記載の方法で評価することができる。
【実施例0076】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0077】
(重合例1:フォトレジスト用樹脂A1)
300mLビーカーを用い、メタクリル酸(b)(製品名:MAA、株式会社クラレ製)16.5g、モノマー(c)として、n-メタクリル酸ブチル(製品名:モノマーn-BMA、株式会社クラレ製)84.0g及びジシクロペンタニルメタクリレート(製品名:FA―513M、日立化成株式会社製)42.0g、モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-1の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-1)22.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(製品名:PM、ダイセル株式会社製)125gを混合した後氷冷し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65、富士フィルム和光純薬工業株式会社製)7.5gを加え、モノマー組成物を得た。 続いて撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gを仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。フラスコ内を75℃まで昇温し、上記組成物を3時間かけて滴下し、その後75℃で4時間反応させることでフォトレジスト用樹脂A1を得た。
【0078】
(重合例2:フォトレジスト用樹脂A2)
2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の添加量を3.5g変更したこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A2を得た。
【0079】
(重合例3:フォトレジスト用樹脂A3)
2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の添加量を20.0gに変更したこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A3を得た。
【0080】
(重合例4:フォトレジスト用樹脂A4)
モノマー(a)-1の使用量を45g、メタクリル酸を12.0g、n-メタクリル酸ブチルを63.0g、ジシクロペンタニルメタクリレートを30.0gに変更したこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A4を得た。
【0081】
(重合例5:フォトレジスト用樹脂A5)
メタクリル酸を5.0g、n-メタクリル酸ブチルを53.0g、ジシクロペンタニルメタクリレートを27.0gに変更したこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A5を得た。
【0082】
(重合例6:フォトレジスト用樹脂A6)
メタクリル酸を30.0g、n-メタクリル酸ブチルを37.0g、ジシクロペンタニルメタクリレートを18.0g、に変更したこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A6を得た。
【0083】
(重合例7:フォトレジスト用樹脂A7)
メタクリル酸に替えてアクリル酸を用いたこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A7を得た。
【0084】
(重合例8:フォトレジスト用樹脂A8)
モノマー(a)-1を7.5g、メタクリル酸を18.2g、n-メタクリル酸ブチルを94.1g、ジシクロペンタニルメタクリレートを47.0gに変更したこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A8を得た。
【0085】
(重合例9:フォトレジスト用樹脂A9)
モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-2の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-2)を用いた以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A9を得た。
【0086】
(重合例10:フォトレジスト用樹脂A10)
モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-3の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-3)を用いた以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A10を得た。
【0087】
(重合例11:フォトレジスト用樹脂A11)
モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-4の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-4)を用いた以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A11を得た。
【0088】
(重合例12:フォトレジスト用樹脂A12)
モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-5の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-5)を用いた以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A12を得た。
【0089】
(重合例13:フォトレジスト用樹脂A13)
モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-6の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-6)を用いた以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A13を得た。
【0090】
(重合例14:フォトレジスト用樹脂A14)
モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-7の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-7)を用いた以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A14を得た。
【0091】
(重合例15:フォトレジスト用樹脂A15)
モノマー(a)として式(1)中のR~Rが表1の(a)-8の欄に示すものである化合物(モノマー(a)-8)を用いた以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂A15を得た。
【0092】
(重合例16:フォトレジスト用樹脂B1)
モノマー(a)を用いず、4-ヒドロキシメタクリレートを用いたこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂B1を得た。
【0093】
(重合例17:フォトレジスト用樹脂B2)
モノマー(a)を用いず、ステアリルアクリレートを用いたこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂B2を得た。
【0094】
(重合例18:フォトレジスト用樹脂B3)
モノマー(a)を用いず、N-プロピルアクリルアミドを用いたこと以外は重合例1と同様にしてフォトレジスト用樹脂B3を得た。
【0095】
(重合例19:フォトレジスト用樹脂B4)
モノマー(a)-1の使用量を90g、メタクリル酸を7.5g、n-メタクリル酸ブチルを36g、ジシクロペンタニルメタクリレートを16.5gに変更したこと以外は重合例3と同様にしてフォトレジスト用樹脂B4を得た。
【0096】
(重量平均分子量の測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、フォトレジスト用樹脂A1~15、B1~4の重量平均分子量を求めた。測定結果を表2、3に示す。また、重合例1~19の配合比を併せて表2、3に示す。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0097】
(各モノマーに由来する構成単位の含有割合の測定)
GC/MS装置を用いて、以下に示す条件により測定を行い、構成単位の割合を算出した。その結果、各製造例の各モノマーに由来する構成単位の含有割合は、配合比に基づく含有割合に対して1割以内の値であることを確認した。
装置名:JEОL製JMS-Q1500GC
カラム:Agilent製DB-1(膜圧0.25mm)
キャリア:He 1.5mL/min Split 1/30
インジェクション温度:300℃
オーブン温度:100℃(2min)-310℃(37min)10℃/min昇温
イオン化電流:70eV
イオン化:EI
サンプルインジェクション:1μL
パイロホイル:590℃(日本分析工業株式会社製)
【0098】
<実施例1~15、比較例1~4>
〔フォトレジスト組成物の調製〕
各フォトレジスト用樹脂A1~15、B1~4(固形分15質量%の溶液として)を10g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートDPE-6A」)を5.0g、光重合開始剤(ビーエーエスエフ社製、イルガキュア907、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン)を0.5g、プレピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを40g混合し、孔径0.5μmのフィルターを通過させ、フォトレジスト組成物を調製した。
【0099】
〔密着性の評価〕
調製したフォトレジスト組成物を銅基板上にスピンコートにより塗布し、90℃で2分間乾燥して(プリベ―ク)、厚み10μmの塗膜を形成した。得られた塗膜を超高圧水銀ランプにてマスクを介して500mJ/cm、200mJ/cm、100mJ/cmの強度で紫外線を照射して、硬化膜を形成した。
得られた硬化膜に対してクロスカット試験(旧JIS K5400に準拠)を行い、密着性を評価した。10×10マス(100マス)の内、剥離せず残存したマスの数に応じて、以下の基準で評価した。なお、マスの一部にカケが見られた場合も、剥離したものと判断した。
◎:残存が100マス
○:残存が99マス
△:残存が90~98マス
×:残存が89マス以下
「△」、「○」又は「◎」の場合に実用上許容可能な密着性を有すると評価できる。
【0100】
〔剥離性の評価〕
前述の〔密着性の評価〕において、100mJ/cmで硬化する条件にて得られた硬化膜を室温にてアセトン中に10分間浸した後、60度で2分間乾燥し、硬化膜の重量変化を確認した。剥離後の硬化膜の残存重量に応じて、次の基準で評価した。
◎:10%以下
○:10%を超え30%以下
△:30%を超え50%以下
×:50%超
【0101】
以上の評価結果及び実施例1~15、比較例1~4のフォトレジスト組成物の配合比を表4、5に示す。
【0102】
表4、5に示すように、所定のフォトレジスト用樹脂を含むフォトレジスト組成物は、露光量100mJ/cmのような低露光量で硬化させることができ、銅配線などの金属板に対し硬化後に良好な密着力を示し、その硬化物は金属板から室温下で一般的な有機溶剤を用いて剥離できることが分かる。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】