(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025055366
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】建設機械の旋回装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/01 20120101AFI20250401BHJP
F16H 57/02 20120101ALI20250401BHJP
E02F 9/12 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
F16H57/01
F16H57/02
E02F9/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023164653
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 友晴
(72)【発明者】
【氏名】栗原 圭一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優太
(72)【発明者】
【氏名】大野 達也
(72)【発明者】
【氏名】山下 智彬
(72)【発明者】
【氏名】辺見 真
【テーマコード(参考)】
2D015
3J063
【Fターム(参考)】
2D015DA03
2D015DA04
2D015GA01
2D015GA03
2D015GB04
3J063AA15
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA07
3J063BB23
3J063BB31
3J063BB37
3J063CA01
3J063CD41
(57)【要約】
【課題】歯車装置内で発生した異物の発生量を正確に把握可能な建設機械の旋回装置を提供する。
【解決手段】旋回装置7は、旋回モータ21の回転駆動力を伝達して旋回輪6へ出力する歯車機構24及び出力軸25とそれらを収容するケーシング26とを有する減速装置22と、ケーシング26内に堆積した異物を検出するセンサ71とを備える。歯車機構24及び出力軸25は回転軸線が上下方向に延びるように配置される。ケーシング26は、内壁面45aにおける歯車機構24の噛合部より下側の位置に周方向の全周に亘って延在する周溝60を有する。周溝60は、上方向に開口し下方向が深さ方向の溝である。周溝60は、周方向の第1位置601が最浅部、第2位置602が最深部であり、第1位置601から第2位置602に向かって徐々に深くなる傾斜面の底面60aを有する。センサ71は、周溝60の第2位置602に対応する位置に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の旋回体を旋回させる回転駆動力を発生させる旋回駆動源と、
前記旋回駆動源の回転駆動力を伝達する歯車機構、前記歯車機構に伝達された回転駆動力を前記建設機械の旋回輪へ出力する出力軸、前記歯車機構及び前記出力軸を収容すると共に前記歯車機構を潤滑する潤滑油を貯留するケーシングを有する歯車装置と、
前記ケーシング内に堆積した異物を検出するセンサとを備え、
前記歯車機構及び前記出力軸の回転軸線が前記旋回体の上下方向に延びるように前記歯車装置が配置される建設機械の旋回装置において、
前記ケーシングは、内壁面における前記歯車機構の噛合い部よりも下側の位置に、前記内壁面の周方向の全周に亘って延在する周溝を有し、
前記周溝は、前記上下方向における上方向に開口して下方向が深さ方向となる溝であり、
前記周溝は、前記周方向の第1位置が最浅部であると共に前記周方向の前記第1位置とは異なる第2位置が最深部であり、前記第1位置から前記第2位置に向かって徐々に深くなるような傾斜面の底面を有し、
前記センサは、前記周溝の前記第2位置に対応する位置に配置されている
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の旋回装置において、
前記周溝は、前記第1位置から前記周方向の一方側に延在して前記第2位置に至る第1溝部の底面と前記第1位置から前記周方向の他方側に延在して前記第2位置に至る第2溝部の底面とが段差なく接続される環状の溝である
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の旋回装置において、
前記周溝は、前記第1位置と前記第2位置とが隣接する螺旋状の溝である
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の旋回装置において、
前記ケーシングは、
前記周溝の前記第2位置における下側に設けられ、前記内壁面から外壁面まで延在して貫通するドレン孔と、
前記周溝の前記最深部と前記ドレン孔とを連通させる連通孔とを有し、
前記歯車装置は、前記連通孔を開閉可能な平板状の弁体を有している
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械の旋回装置において、
前記周溝は、撥油処理が施された表面を有している、
又は、
前記周溝の表面に撥油性を有する樹脂部材が配設されている
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械の旋回装置において、
前記ケーシングは、前記周溝の前記第2位置に前記周溝の前記底面よりも前記下方向に凹んだ凹部を有している
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項7】
請求項1に記載の建設機械の旋回装置において、
前記歯車装置は、
前記ケーシングにおける前記周溝よりも径方向内側の位置に固定され、前記出力軸を回転可能に支持する軸受と、
前記周溝よりも上側かつ径方向内側に位置し、前記軸受の上側を遮蔽するように設置された環状の遮蔽板とを有し、
前記遮蔽板は、径方向内側の基端から径方向外側の先端に向かって前記下方向に傾斜している
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項8】
請求項2に記載の建設機械の旋回装置において、
前記周溝は、前記第1位置と前記第2位置とを結ぶ線分に対して線対称な溝である
ことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の旋回装置に係り、さらに詳しくは、旋回駆動源の回転駆動力を伝達する歯車装置を備えた建設機械の旋回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回体を備えた油圧ショベルなどの建設機械は、旋回体を旋回させる旋回装置を搭載している。旋回装置は、油圧モータや電動モータ等の旋回駆動源の回転駆動力を伝達する歯車装置を備えている。旋回装置の歯車装置は、歯車や軸受等の構成部品をケーシング内に収容しており、ケーシング内に構成部品を潤滑するための潤滑油を封入している。歯車装置では、歯車等の構成部品の摩耗により生じた金属粉や破損片等の異物が潤滑油に混入することがある。潤滑油中に異物が混入すると、歯車や軸受、オイルシール等に損傷を与えることが懸念される。
【0003】
そのような懸念に対して、歯車装置のケーシング内に封入されている潤滑油中に混入した異物を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の減速機においては、ケース内に収容されている入力軸や減速機構のキャリア又はケース上に堆積したスラッジ(異物)を検知するようにセンサが所定の位置に取り付けられている。当該センサによって検知されたスラッジ(異物)の堆積量に基づいて減速機の寿命を見積もることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の減速機において、回転部材である入力軸やキャリアに堆積するスラッジは減速機で発生したスラッジの一部に過ぎない。また、当該減速機の構造では、ケース上に堆積しているスラッジをセンサによって検出することが可能な領域は限られてしまう。すなわち、特許文献1に記載の減速機において発生したスラッジの大部分をセンサにより検知することは困難である。このため、センサによって検出されたスラッジの堆積量から、減速機の寿命やメンテナンスの適切な時期を正確に推定することは難しい。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、歯車装置内で発生した異物の発生量を正確に把握することが可能な建設機械の旋回装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいる。その一例を挙げるならば、建設機械の旋回体を旋回させる回転駆動力を発生させる旋回駆動源と、前記旋回駆動源の回転駆動力を伝達する歯車機構、前記歯車機構に伝達された回転駆動力を前記建設機械の旋回輪へ出力する出力軸、前記歯車機構及び前記出力軸を収容すると共に前記歯車機構を潤滑する潤滑油を貯留するケーシングを有する歯車装置と、前記ケーシング内に堆積した異物を検出するセンサとを備え、前記歯車機構及び前記出力軸の回転軸線が前記旋回体の上下方向に延びるように前記歯車装置が配置される建設機械の旋回装置において、前記ケーシングは、内壁面における前記歯車機構の噛合い部よりも下側の位置に、前記内壁面の周方向の全周に亘って延在する周溝を有し、前記周溝は、前記上下方向における上方向に開口して下方向が深さ方向となる溝であり、前記周溝は、前記周方向の第1位置が最浅部であると共に前記周方向の前記第1位置とは異なる第2位置が最深部であり、前記第1位置から前記第2位置に向かって徐々に深くなるような傾斜面の底面を有し、前記センサは、前記周溝の前記第2位置に対応する位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一例によれば、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝をケーシングの内壁面の全周に設けることで、歯車機構で発生した異物の多くを周溝のいずれかの位置に沈降させることができる。さらに、周溝の底面を最浅部から最深部まで傾斜させることで、周溝に沈降した異物を周溝の最深部に集積することができる。周溝の最深部に集積された異物をセンサが検出するので、歯車装置内で発生した異物の発生量を正確に把握することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置を備える油圧ショベルを示す外観図である。
【
図2】第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置を示す縦断面図である。
【
図3】
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝の構造を示す概略斜視図である。
【
図4】
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝の構造を示す概略横断面図である。
【
図5】
図4に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝の構造をV-V矢視から見た断面図である。
【
図6】
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの構成及び構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図7】第1の実施形態の第1変形例に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略斜視図である。
【
図8】
図7に示す第1の実施形態の第1変形例に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの配置位置の周溝の構造を示す拡大断面図である。
【
図9】第1の実施形態の第2変形例に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略断面図である。
【
図10】
図9に示す第1の実施形態の第2変形例に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの配置位置の周溝の構造を示す拡大断面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略断面図である。
【
図12】
図11に示す第2の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの配置位置の周溝の構造を示す拡大断面図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係る建設機械の旋回装置を示す縦断面図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を透視状態で示す概略斜視図である。
【
図15】
図14に示す第4の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略断面図である。
【
図16】本発明の第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置を示す縦断面図である。
【
図17】
図16に示す第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニット及び弁機構の配置関係を示す概略断面図である。
【
図18】
図17に示す第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置における弁機構の動作及び作用を示す説明図である。
【
図19】本発明の第6の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサの検出データを利用する複数のコンピュータのネットワークを示す構成図である。
【
図20】
図19に示すネットワークのサーバが行う旋回装置の潤滑油の診断処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図21】第6の実施形態に係る建設機械の旋回装置における稼働時間に対する異物の高さ(堆積量)の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による建設機械の旋回装置の実施形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、建設機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。本明細書で述べる前後左右は、建設機械に搭乗したオペレータから見た方向を示している。
【0011】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置を備える建設機械の一例としての油圧ショベルの概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置を備える油圧ショベルを示す外観図である。
【0012】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能な走行体2と、走行体2上に旋回可能に搭載された旋回体3と、旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とを備えている。旋回体3は、走行体2に対して旋回輪6を介して旋回可能に支持されている。油圧ショベル1は、旋回体3の旋回動作及び作業装置4の動作を組み合わせることで土砂の掘削積込作業などを行うように構成されている。旋回輪6の構成については、後述する。
【0013】
走行体2は、例えば、無限軌道(クローラ)式の走行装置11を左右に有している。走行体2の上端には、旋回輪6の後述の内輪6a(後述の
図2参照)が取り付けられて固定されている。
【0014】
旋回体3は、支持構造体としての旋回フレーム12と、旋回フレーム12の前部左側に設置されオペレータが搭乗するキャブ13と、旋回フレーム12上の後側に形成された機械室14と、旋回フレーム12の後端に取り付けられたカウンタウェイト15とを含んで構成されている。キャブ13には、油圧ショベル1を操作するための各種の操作装置(図示せず)が配置されている。機械室14には、例えば、油圧ショベル1を駆動する油圧システムを構成する各種の油圧機器が収容されている。カウンタウェイト15は、作業装置4とのバランスを行うものである。
【0015】
旋回体3は、旋回装置7の回転駆動力が旋回輪6に伝達されることで、走行体2に対して旋回するように構成されている。旋回フレーム12には、旋回輪6の後述の外輪6b(後述の
図2参照)が取り付けられて固定されている。旋回装置7の構成及び構造の詳細については後述する。
【0016】
旋回体3には、旋回装置7の異常を診断する処理を行うコントローラ8、及び、コントローラ8により処理されるデータを外部端末と相互通信するための無線通信装置9とが搭載されている。コントローラ8は、プロセッサ(例えばCPU)及び記憶装置(例えばメモリ)を備え、当該記憶装置に記憶されたプログラムに基づいてプロセッサが各種処理を実行する。
【0017】
作業装置4は、複数の被駆動部材を回動可能に連結することで構成された多関節型の作業装置である。複数の被駆動部材は、例えば、ブーム16、アーム17、作業具(アタッチメント)としてのバケット18とで構成されている。アタッチメントは、グラップル、ブレーカ、リフティングマグネットなど種々のものに付け替え可能である。
【0018】
次に、第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置の構成及び構造について
図2を用いて説明する。
図2は第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置を示す縦断面図である。
【0019】
図2において、旋回装置7は、旋回体3(
図1参照)を旋回させる回転駆動力を旋回輪6に出力することで、旋回体3を走行体2(
図1参照)に対して旋回させるものである。
【0020】
旋回輪6は、走行体2の上端部(図示しない丸胴)に取り付けられる内輪6aと、旋回体3の旋回フレーム12の下面側に取り付けられる外輪6bと、内輪6aと外輪6bとの間に配設された複数の転動体6c(
図2中、1つのみ図示)とを有している。内輪6aの内周側には、全周に亘って内歯6dが形成されている。旋回輪6は、旋回装置7の回転駆動力によって、旋回フレーム12に固定された外輪6bが走行体2に固定された内輪6aの外周側を回転する。これにより、旋回体3が走行体2上で旋回する。
【0021】
旋回装置7は、旋回体3を旋回させる回転駆動力を発生させる旋回駆動源としての旋回モータ21と、旋回モータ21の回転駆動力を旋回輪6に伝達する歯車装置22とを備えている。
【0022】
旋回モータ21は、歯車装置22に対して回転駆動力を出力するモータ軸21aを有している。旋回モータ21のモータ軸21aは、建設機械1(旋回体3)の上下方向に延びている。旋回モータ21のモータ軸21aには、軸スプライン(図示せず)が形成されている。旋回モータ21は、歯車装置22の後述のケーシング26の上端に取り付けられており、モータ軸21aが当該ケーシング26内に延在するように構成されている。旋回モータ21は、油圧式又は電動式のモータにより構成することが可能である。
【0023】
歯車装置22は、例えば、旋回モータ21の回転駆動力を減速して伝達する減速装置として構成されている。減速装置22は、旋回モータ21の回転駆動力を減速して伝達する歯車機構24と、歯車機構24に伝達された回転駆動力を旋回輪6へ出力する出力軸25と、歯車機構24及び出力軸25を収容するケーシング26とを備えている。歯車機構24及び出力軸25は回転軸線が上下方向に延びるように配置されていると共に、歯車機構24が出力軸25の上側に位置するように配置されている。ケーシング26は、歯車機構24及び出力軸25を収容する筒状部分が上下方向に延びるように旋回フレーム12上に設置されている。
【0024】
歯車機構24は、例えば、遊星歯車機構によって構成されている。遊星歯車機構24は、旋回モータ21のモータ軸21aに結合された太陽歯車31と、太陽歯車31とケーシング26の後述の内歯36とに噛合する複数(例えば、3つ)の遊星歯車32(
図2中、1つのみ図示)と、遊星歯車32を支持ピン34により回転可能に支持するキャリア33とを有している。太陽歯車31は、旋回モータ21のモータ軸21aと一体に回転するものであり、例えば、旋回モータ21のモータ軸21aとスプライン結合により結合している。各遊星歯車32は、太陽歯車31とケーシング26の内歯36との間において、太陽歯車31の回転に伴って自転しつつ太陽歯車31の周囲を公転するものである。支持ピン34は、遊星歯車32の回転中心部に挿入された状態でキャリア33に固定されている。キャリア33は、支持ピン34を介して支持する遊星歯車32が公転することで、遊星歯車32の公転速度で回転するように構成されている。キャリア33は、出力軸25の軸方向一端部(上端部)と結合されるボス部35を下端側に有しており、出力軸25と一体に回転するように構成されている。キャリア33のボス部35は、例えば、内周面側に内歯を有する構成又は穴スプラインを有する構成である。
【0025】
出力軸25は、軸方向一端部(上端部)がキャリア33のボス部35に結合されるように構成されている。出力軸25の上端部は、キャリア33のボス部35の内歯に噛合する外歯を外周面に有する構成又はキャリア33のボス部35の穴スプラインに結合する軸スプライン25aを有する構成である。出力軸25の軸方向他端部(下端部)には、ピニオン25bが一体に設けられている。ピニオン25bは、ケーシング26の下端から下方に突出して旋回輪6の内輪6aに設けられた内歯6dに噛合している。出力軸25は、下側軸受27及び上側軸受28を介してケーシング26に回転可能に支持されている。下側軸受27は、出力軸25におけるピニオン25bから間隔をあけて上側に取り付けられている。上側軸受28は、出力軸25における上端部(キャリア33のボス部35との結合部分)よりも下側かつ下側軸受27から間隔をあけて上側に取り付けられている。出力軸25におけるピニオン25bと下側軸受27との間の位置にスリーブ29が圧入されている。
【0026】
ケーシング26は、旋回フレーム12に取り付けられた下側ケース41と、下側ケース41の上端部に取り付けられた上側ケース42と、上側ケース42の上側開口を塞ぐように取り付けられたカバー43とを有している。カバー43は、例えば、旋回モータ21のハウジングの一部として構成されたものである。
【0027】
下側ケース41は、上下方向に延びる筒状の周壁45と、周壁45の下端部に設けられた環状の取付フランジ46とを有している。下側ケース41は、出力軸25のピニオン25bが周壁45の下側から外部へ突出した状態で出力軸25を周壁45内に収容している。下側ケース41の周壁45の内壁面45aにおける下端部及び上側部分にそれぞれ下側軸受27及び上側軸受28が固定されている。下側ケース41は、取付フランジ46がボルト(図示せず)により旋回フレーム12に締結されることで固定されている。
【0028】
上側ケース42は、上下方向に延びる筒状の周壁47を有しており、遊星歯車機構24の大部分を収容するように構成されている。上側ケース42の周壁47の内周面には、遊星歯車機構24の遊星歯車32と噛合する内歯36が全周に亘って設けられている。すなわち、上側ケース42は、遊星歯車機構24のリングギアとして機能するものである。上側ケース42の周壁47及び上側ケース42の上端部に固定されるカバー43には、上下方向に貫通するボルト穴(図示せず)が複数設けられている。上側ケース42及びカバー43は、各ボルト穴に挿通されたボルト44(
図2中、1つのみ図示)によって下側ケース41の上端部に締結されている。
【0029】
ケーシング26は、遊星歯車機構24の構成部品を潤滑する潤滑油を貯留する機能も有している。下側ケース41の下端には、出力軸25に圧入されたスリーブ29の外周側にリング51がボルト(図示せず)により固定されている。下側ケース41の下端に位置するリング51とスリーブ29との間には、オイルシール52が配設されている。これより、ケーシング26内に貯留された潤滑油が封止されている。潤滑油の油面Fは、例えば、太陽歯車31や遊星歯車32の高さに達する位置にある。下側ケース41における下側軸受27と上側軸受28との間に位置する壁部(後述の膨出部48)には、ケーシング26内に封入されている潤滑油をケーシング26の外部へ排出するためのドレン孔49が下側ケース41の周壁45の内壁面45aから外壁面45bに延在して貫通するように設けられている。ドレン孔49の外部開口は、ドレン栓53によって閉塞されている。
【0030】
本実施の形態に係るケーシング26は、遊星歯車機構24で発生した摩耗粉や破損片などの異物を集積する構造部を有していることを特徴している。ケーシング26内には、当該構造部に集積した異物を検出するセンサユニット70が配置されている。
【0031】
次に、第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置における異物集積の構造部及び異物検出ユニットの詳細について
図2~
図6を用いて説明する。
図3は
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝の構造を示す概略斜視図である。
図4は
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝の構造を示す概略横断面図である。
図5は
図4に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝の構造をV-V矢視から見た断面図である。
図6は
図2に示す第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの構成及び構造を模式的に示す概略断面図である。
【0032】
ケーシング26は、
図2に示すように、遊星歯車機構24の噛合い部(太陽歯車31と遊星歯車32とが噛み合う部分や遊星歯車32と上側ケース42の内歯36とが噛み合う部分)よりも下側の位置(下側ケース41)に、周壁45の内壁面45a側が径方向内側に膨出する膨出部48(厚肉部)を有している。すなわち、ケーシング26の下側ケース41は、
図2及び
図3に示すように、内壁面45aが段付き形状となっており、上方向を向く環状の段差面48aを内壁面45a側に有している。
【0033】
下側ケース41における膨出部48の上端である段差面48aには、
図3及び
図4に示すように、段差面48a(周壁45)の周方向の全周に亘って延在する周溝60が形成されている。周溝60は、上方向に開口して下方向が深さ方向となる溝である。周溝60は、環状の段差面48aにおける周方向の或る第1位置601(
図3中、左端位置)が最浅部となると共に、周方向の第1位置601とは異なる位置である第1位置601から180°の位置にある第2位置602(
図3中、右端位置)が最深部となるように形成されている。周溝60は、
図3及び
図5に示すように、第1位置601(最浅部)から第2位置602(最深部)に向かって徐々に深くなるような傾斜面の底面60aを有している。周溝60は、
図4に示すように、第1位置601から周方向の一方側に延在して第2位置602に至る第1溝部61の底面61aと第1位置601から周方向の他方側に延在して第2位置602に至る第2溝部62の底面62aとが段差なく接続される環状の溝として形成されている。周溝60は、最浅部の位置である第1位置601と最深部の位置である第2位置602とを結ぶ線分に対して線対称の溝として形成されている。周溝60は、遊星歯車機構24で発生した摩耗粉や破損片などの異物を集積する機能を有するものである。
【0034】
周溝60の第2位置602(最深部)には、
図3及び
図6に示すように、周溝60の底面60aよりも下方向に凹んだ凹部64が形成されている。凹部64は、例えば
図3及び
図4に示すように、横断面が円形状である有底の穴である。凹部64は、周溝60の第2位置602(最深部)に集積された異物を捕捉して異物の拡散を防止する機能を有している。
【0035】
図2に示すように、下側ケース41における膨出部48の上端部には、上側軸受28が固定されている。すなわち、上側軸受28は、周溝60よりも径方向内側に位置している。上側軸受28の上方には、上側軸受28の上側を遮蔽する環状の遮蔽板56が配置されている。遮蔽板56は、例えば、遊星歯車機構24のキャリア33のボス部35の外周面に取り付けられている。遮蔽板56は、ボス部35側(径方向内側)の基端から径方向外側の先端56aに向かって下方向に傾斜する斜板として構成されている。遮蔽板56は、径方向外側の先端56aが環状の段差面48a(周溝60の開口位置)よりも僅かに上側かつ周溝60における径方向内側の開口縁よりも僅かに径方向内側に位置するように延在している。すなわち、遮蔽板56は、下側ケース41の段差面48aに接触しないように配置されており、段差面48aとの接触による遮蔽板56の摩耗粉などの異物の発生を防止している。遮蔽板56は、遊星歯車機構24の噛合い部で発生した異物が潤滑油中を沈降したときに、異物が上側軸受28に侵入すること防止する侵入防止機能及び当該異物を周溝60に導くガイド機能を有している。
【0036】
周溝60における最深部に対応する周方向の第2位置602には、
図2及び
図6に示すように、センサユニット70が配置されている。センサユニット70は、堆積した異物の高さ(堆積量)を検出するセンサ71を含んでおり、センサ面71aが凹部64の底面64aに対向するように配置されている。センサ71は、例えば、レーザーや渦電流、静電容量式のものが用いられる。センサ71は、堆積した異物の高さに応じた検出信号を出力する回路を備えている。センサ71は、コントローラ8(
図1参照)に電気的に接続されており、検出信号(異物の高さ)をコントローラ8へ出力する。
【0037】
センサユニット70は、センサ71を保持する保持部材72と、センサ71を保持部材72を介して下側ケース41に取り付ける取付部材73とを備えている。取付部材73は、下側ケース41の周壁45の外周面に固定される固定部75と、固定部75から立設されて先端部が保持部材72に接続された支持部76とで構成されている。取付部材73は、支持部76が下側ケース41の周壁45を貫通するように取りけられている。支持部76の外周面には、シール部材74(例えば、Oリング)が取り付けられている。シール部材74は、下側ケース41の周壁45の外周面45bと取付部材73の固定部75との間に挟み込まれており、取付部材73の支持部76と下側ケース41の周壁45との隙間からケーシング26内の潤滑油の漏洩を阻止するものである。取付部材73は、センサ71の信号線(図示せず)を取り出すための取出部(図示せず)を有している。取付部材73は、取出部がケーシング26内に連通する第1空間76aとケーシング26外に連通する第2空間76bとに仕切られており、第1空間76aと第2空間76bとの仕切り76cによりケーシング26内の潤滑油の外部への漏洩を防止するように構成されている。取付部材73は、第1空間76aに位置する第1端子(図示せず)及び第2空間76bに位置する第2端子(図示せず)を両側端部に有する接続線が仕切り76cを貫通するように設けられている。潤滑油が侵入する取付部材73の第1空間76a側の第1端子にはセンサ71の信号線が接続される一方、潤滑油が侵入不能な取付部材73の第2空間76b側の第2端子にはコントローラ8に接続される信号線(図示せず)が接続される。
【0038】
次に、第1の実施形態に係る建設機械の旋回装置の動作及び効果について
図2を用いて説明する。
図2中、破線の矢印は、潤滑油中の異物の移動方向を示している。
【0039】
油圧ショベル1のオペレータが旋回操作を行うと、
図2に示す旋回装置7の旋回モータ21が回転駆動する。旋回モータ21のモータ軸21aの回転は、減速装置22の遊星歯車機構24により減速されて出力軸25を介して大きなトルクをもって旋回輪6の外輪6bを内輪6aに対して回転させる。これにより、
図1に示す油圧ショベル1の旋回体3が走行体2に対して旋回動作する。
【0040】
図2に示す旋回装置7が駆動すると、ケーシング26内に貯留されている潤滑油が遊星歯車機構24の構成部品31、32、33、34、36の潤滑に利用される。遊星歯車機構24を構成する部品(太陽歯車31、遊星歯車32、キャリア33、内歯36(リングギア))が噛み合い回転すると、運転時間の経過とともに各歯車31、32、33、36が摩耗して摩耗粉が発生して潤滑油中を沈降していく。発生した摩耗粉うちの一部は、潤滑油中を自重により鉛直方向に移動することで、また、遊星歯車機構24の回転により発生する潤滑油の旋回流によって径方向外側に流されつつ沈降することで、ケーシング26の内壁面45aにおける段差面48aに形成された周溝60内に直接的に沈降する。また、摩耗粉の残りは、周溝60よりも径方向内側に位置する遮蔽板56の上面56bに沈降する。遮蔽板56上に沈降した摩耗粉は、潤滑油の旋回流及び遮蔽板56の傾斜によって径方向外側の先端56aに向かって遮蔽板56上を伝って遮蔽板56の先端56aから周溝60内に沈降する。周溝60内に沈降した摩耗粉は、周溝60の傾斜する底面60a上に沿って最深部まで滑り落ちていく。これにより、遊星歯車機構24の噛合いにより発生した摩耗粉の大部分が周溝60の最深部(第2位置602)に集積される。
【0041】
周溝60の最深部(第2位置602)に集積されて堆積した摩耗粉の高さHがセンサ71によって検出される。センサ71は、検出した摩耗粉の高さHに応じた検出信号を
図1に示すコントローラ8へ出力する。コントローラ8は、センサ71から出力された検出データを記憶装置に記憶する。
【0042】
センサ71によって検出されたデータは、例えば、旋回装置7の異常診断や旋回装置7のメンテナンス時期の判定に利用される。センサ71の検出データに基づく旋回装置7の異常診断や旋回装置7のメンテナンス時期の判定は、油圧ショベル1のコントローラ8が実行する構成や、外部のコンピュータ等の端末が実行する構成が可能である。外部のコンピュータ等の端末がセンサ71の検出データを利用する場合には、例えば、油圧ショベル1に搭載された無線通信装置9によって検出データが外部端末に逐次送信される構成やセンサ71の検出データを定期的にサービスマン等が記録メディアに複製や移動を行うように構成することも可能である。
【0043】
本実施の形態においては、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝60)をケーシング26の内壁面45aにおける遊星歯車機構24の噛合い部よりも下側の位置に周方向の全周に亘って形成している。これにより、遊星歯車機構24の構成部品の噛合いで発生した異物の多くを周溝60のいずれかの位置に沈降させることが可能となる。
【0044】
さらに、本実施の形態においては、周方向の第1位置601が最浅部かつ第1位置601とは異なる第2位置602が最深部になるように周溝60を形成し、周溝60が第1位置601から第2位置602に向かって徐々に深くなるように周溝60の底面60aを傾斜させている。これにより、周溝60のいずれかの位置に沈降した異物は、傾斜面の底面60aを滑り落ちて周溝60の最深部に到達するので、異物を周溝の最深部に集積することができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、遊星歯車機構24の下側に設置した遮蔽板56によって上側軸受28の上側を遮蔽するように構成されている。これにより、遊星歯車機構24の噛合いで発生した異物が上側軸受28内に侵入することを防止している。加えて、遮蔽板56を径方向内側の基端から径方向外側の先端56aに向かって下方向に傾斜させている。これにより、発生した異物が遮蔽板56に沈降しても、遮蔽板56上に沈降した異物を遮蔽板56よりも径方向外側に位置する周溝60に案内することができる。
【0046】
また、本実施の形態においては、ケーシング26の下側ケース41が周溝60の最深部である第2位置602に周溝60の底面60aよりも下方向に凹んだ凹部64を有している。これにより、凹部64に集積された異物が潤滑油の流れによって拡散することを防止することができる。
【0047】
上述したように、第1の実施形態に係る油圧ショベル1(建設機械)の旋回装置7は、油圧ショベル1(建設機械)の旋回体3を旋回させる回転駆動力を発生させる旋回駆動源である旋回モータ21と、旋回モータ21(旋回駆動源)の回転駆動力を伝達する歯車機構としての遊星歯車機構24、遊星歯車機構24(歯車機構)に伝達された回転駆動力を油圧ショベル1(建設機械)の旋回輪6へ出力する出力軸25、遊星歯車機構24(歯車機構)及び出力軸25を収容すると共に遊星歯車機構24(歯車機構)を潤滑する潤滑油を貯留するケーシング26を有する歯車装置としての減速装置22と、減速装置22(歯車装置)のケーシング26内に堆積した異物を検出するセンサ71とを備える。遊星歯車機構24(歯車機構)及び出力軸25の回転軸線が旋回体3の上下方向に延びるように減速装置22(歯車装置)が配置される。ケーシング26は、内壁面45aにおける遊星歯車機構24(歯車機構)の噛合い部よりも下側の位置に、内壁面45aの周方向の全周に亘って延在する周溝60を有している。周溝60は、上方向に開口して下方向が深さ方向となる溝である。さらに、周溝60は、周方向の第1位置601が最浅部であると共に周方向の第1位置601とは異なる第2位置602が最深部であり、第1位置601から第2位置602に向かって徐々に深くなるような傾斜面の底面60aを有している。センサ71は、周溝60の第2位置602(最深部)に対応する位置に配置されている。
【0048】
この構成によれば、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝60をケーシング26の内壁面45aに設けることで、遊星歯車機構24(歯車機構)で発生した異物の多くを周溝60のいずれかの位置に沈降させることができる。さらに、周溝60の底面60aを最浅部から最深部まで傾斜させることで、周溝60のいずれかの位置に沈降した異物を周溝60の最深部に集積することができる。周溝60の最深部に集積された異物をセンサ71が検出するので、減速装置22(歯車装置)内で発生した異物の発生量を正確に把握することができる。
【0049】
また、本実施の形態においては、周溝60が第1位置601から周方向の一方側に延在して第2位置602に至る第1溝部61の底面61aと第1位置601から周方向の他方側に延在して第2位置602に至る第2溝部62の底面62aとが段差なく接続される環状の溝である。
【0050】
この構成によれば、異物の滑りを可能とする周溝60底面60aの傾斜を確保しつつ周溝60の最深部の深さを抑制することができる。
【0051】
また、本実施の形態においては、周溝60が第1位置601(最浅部)と前記第2位置602(最深部)とを結ぶ線分に対して線対称な溝として形成されている。
【0052】
この構成によれば、周溝60を対称形とすることで、ケーシング26に対する溝加工が容易となる。
【0053】
[第1の実施形態の第1変形例及び第2変形例]
次に、第1の実施形態の第1変形例に係る建設機械の旋回装置を
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は第1の実施形態の第1変形例に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略斜視図である。
図8は
図7に示す第1の実施形態の第1変形例に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの配置位置の周溝の構造を示す拡大断面図である。なお、
図7及び
図8において、
図1~
図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図7及び
図8に示す第1の実施形態の第1変形例に係る建設機械の旋回装置が第1の実施形態と相違する点は、減速装置22の下側ケース41Aにおける周溝60Aを形成する表面(底面60a及び両側面)に撥油処理を施したこと及び周溝60Aの第2位置602(最深部)に設けた凹部64Aを形成する表面に撥油処理を施したことである。第1の実施形態の第1変形例のそれ以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0055】
図7及び
図8中、周溝60A及び凹部64Aの撥油処理の領域をパターンで示している。撥油処理は、例えば、フッ素系シランカップリング剤を周溝60Aの表面(底面60a及び両側面)及び凹部64Aの表面に塗布して乾燥させるものである。なお、周溝60A及び凹部64Aの表面に対して撥油機能の付与が可能であれば、処理剤は特に限定されない。周溝60Aの表面が撥油性を有することで、周溝60内に沈降した異物が第2位置602の最深部へと滑り落ち易くなる。
【0056】
次に、第1の実施形態の第2変形例に係る建設機械の旋回装置を
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は第1の実施形態の第2変形例に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略断面図である。
図10は
図9に示す第1の実施形態の第2変形例に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの配置位置の周溝の構造を示す拡大断面図である。なお、
図9及び
図10において、
図1~
図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図9及び
図10に示す第1の実施形態の第2変形例に係る建設機械の旋回装置が第1の実施形態と相違する点は、減速装置22の下側ケース41Bにおける周溝60を形成する表面(底面60a及び両側面)に撥油性を有する樹脂部材65を設けたこと及び周溝60の第2位置602(最深部)に設けた凹部64を形成する表面に撥油性を有する樹脂部材66を設けたことである。第1の実施形態の第2変形例のそれ以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0058】
図9及び
図10中、撥油性を有する樹脂部材65、66を他の線よりも太い線で示している。撥油性を有する樹脂部材65、66としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂材料を周溝60に対応した形状に成形したものである。樹脂部材65は、例えば、ボルトにより周溝60に固定されている。なお、当該樹脂部材65、66の樹脂材料は、撥油性を有する材料であれば特に限定されない。また、樹脂部材65、66の周溝60に対する固定方法は特に限定されることはなく、貼り付ける方法なども可能である。撥油性を有する樹脂部材65、66が周溝60の表面を覆うことで、周溝60内に沈降した異物が最深部である第2位置602へと滑り落ち易くなる。
【0059】
上述した第1の実施形態の第1変形例及び第2変形例によれば、前述した第1の実施形態と同様に、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝60、60Aをケーシング26の内壁面45aに設けることで、遊星歯車機構24(歯車機構)で発生した異物の多くを周溝60、60Aのいずれかの位置に沈降させることができる。さらに、周溝60、60Aの底面60aを最浅部から最深部まで傾斜させることで、周溝60、60Aのいずれかの位置に沈降した異物を周溝60、60Aの最深部に集積することができる。周溝60、60Aの最深部に集積された異物をセンサ71が検出するので、減速装置22(歯車装置)内で発生した異物の発生量を正確に把握することができる。
【0060】
また、本第1変形例及び第2変形例においては、周溝60Aは撥油処理が施された表面を有しているか、又は、周溝60の表面に撥油性を有する樹脂部材65が配設されている。
【0061】
この構成によれば、周溝60、60A内に沈降した異物が最深部へと滑り落ち易くなる。これにより、異物を周溝60、60Aの最深部に確実に集積することができるので、旋回装置7の異常診断やメンテナンス時期の判断精度を高めることができる。
【0062】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る建設機械の旋回装置について
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は第2の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略断面図である。
図12は
図11に示す第2の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニットの配置位置の周溝の構造を示す拡大断面図である。なお、
図11及び
図12において、
図1~
図10に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0063】
図11及び
図12に示す第2の実施形態に係る建設機械の旋回装置が第1の実施形態と相違する点は、減速装置22の下側ケース41Cが周溝60の最深部に設けた凹部64(
図3~
図6を参照)を含まないこと及びセンサ面71aが凹部64の底面64aでなく周溝60の第2位置602(最深部)の底面60aに対向するようにセンサ71が配置されていることである。第2の実施形態のそれ以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0064】
センサ71は、周溝60の最深部に対応する第2位置602に配置されており、周溝60の最深部の底面60aに堆積した異物の高さ(堆積量)を検出する。センサ71の検出位置である周溝60の最深部は、周溝60が形成される段差面48aに対してある程度の深さがある。このため、潤滑油の流れが周溝60の最深部に及ぼす影響は比較的軽微であり、周溝60の最深部の底面60aに堆積した異物が潤滑油の流れによって周溝60の外部へ拡散され難くなっている。
【0065】
このように、本実施の形態においては、下側ケース41Cにおける周溝60の最深部に凹部64を設けずに、周溝60の最深部の底面60aに対応する位置にセンサ71を配置する。この構成により、下側ケース41Cに凹部64を加工する工数を削減することができる、
上述した第2の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝60をケーシング26の内壁面45aに設けることで、遊星歯車機構24(歯車機構)で発生した異物の多くを周溝60のいずれかの位置に沈降させることができる。さらに、周溝60の底面60aを最浅部から最深部まで傾斜させることで、周溝60のいずれかの位置に沈降した異物を周溝60の最深部に集積することができる。周溝60の最深部に集積された異物をセンサ71が検出するので、歯車装置22内で発生した異物の発生量を正確に把握することができる。
【0066】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る建設機械の旋回装置について
図13を用いて説明する。
図13は第3の実施形態に係る建設機械の旋回装置を示す縦断面図である。なお、
図13において、
図1~
図12に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図13に示す第3の実施形態に係る建設機械の旋回装置が第1の実施形態と相違する点は、減速装置22Dが上側軸受28の上側を遮蔽する遮蔽板56(
図2を参照)を備えていないことである。第3の実施形態のそれ以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0068】
本実施の形態においては、遮蔽板56がないことで摩耗粉の一部が上側軸受28に侵入してしまう。しかし、摩耗粉の多くは潤滑油の旋回流により生じる遠心力によって径方向外側に位置する周溝60側に流されて周溝60内に沈降する。このため、減速装置22D内で発生した異物の多くを周溝60内に集積させることが可能であり、第1の実施形態の構成に近い効果が得られ、かつ、遮蔽板56の分だけ部品点数を削減することができる。
【0069】
上述した第3の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝60をケーシング26の内壁面45aに設けることで、遊星歯車機構24(歯車機構)で発生した異物の多くを周溝60のいずれかの位置に沈降させることができる。さらに、周溝60の底面60aを最浅部から最深部まで傾斜させることで、周溝60のいずれかの位置に沈降した異物を周溝60の最深部に集積することができる。周溝60の最深部に集積された異物をセンサ71が検出するので、減速装置22D(歯車装置)内で発生した異物の発生量を正確に把握することができる。
【0070】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る建設機械の旋回装置について
図14及び
図15を用いて説明する。
図14は第4の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を透視状態で示す概略斜視図である。
図15は
図14に示す第4の実施形態に係る建設機械の旋回装置における減速装置のケーシングの周溝を示す概略断面図である。なお、
図14及び
図15において、
図1~
図13に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0071】
図14及び
図15に示す第4の実施形態に係る建設機械の旋回装置が第1の実施形態と相違する点は、減速装置22の下側ケース41Eに形成された周溝60Eが環状の溝ではなく螺旋状の溝として構成されていることである。第4の実施形態のそれ以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0072】
具体的には、下側ケース41Eにおける環状の段差面48a(周壁45)に形成された周溝60Eは、環状の段差面48aにおける周方向の或る第1位置601が最浅部となると共に、周方向の第1位置601に隣接する第2位置602(
図14及び
図15中、第1位置601の左隣り)が最深部となるように形成されている。周溝60Eは、
図14に示すように、第1位置601(最浅部)から第2位置602(最深部)に向かって図中の時計回りに徐々に深くなるような傾斜面の底面60aを有している。周溝60Eは、
図14及び
図15に示すように、最浅部の第1位置601の底面60aと最深部の第2位置602の底面60aとが連続せずに断絶し、第1位置601の底面60aと第2位置602の底面60aとが垂直面60cによって繋がるように形成されている。
【0073】
本実施の形態においては、遊星歯車機構24の噛合いにより発生した摩耗粉などの異物の大部分は、第1の実施形態の場合と同様に、周溝60Eのいずれかの位置に沈降する。周溝60E内に沈降した摩耗粉は、周溝60Eが螺旋状の溝であっても傾斜する底面60a上に沿って最深部の第2位置602まで滑り落ちていく。これにより、摩耗粉の大部分が螺旋状の周溝60Eにおける最深部に集積される。したがって、螺旋状の周溝60Eの最深部に対応した位置にセンサ71を配置することで、減速装置22内で発生した異物の発生量を正確に把握することが可能となる。
【0074】
上述した第4の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝60Eをケーシング26の内壁面45aに設けることで、遊星歯車機構24(歯車機構)で発生した異物の多くを周溝60Eのいずれかの位置に沈降させることができる。さらに、周溝60Eの底面60aを最浅部から最深部まで傾斜させることで、周溝60Eのいずれかの位置に沈降した異物を周溝60Eの最深部に集積することができる。周溝60の最深部に集積された異物をセンサ71が検出するので、減速装置22(歯車装置)内で発生した異物の発生量を正確に把握することができる。
【0075】
また、本実施の形態においては、減速装置22のケーシング26の下側ケース41Eに形成した周溝60Eは、最浅部の第1位置601と最深部の第2位置602とが隣接する螺旋状の溝として構成されている。この構成によれば、隣接する最浅部と最深部との境界に直立する垂直面60cが形成されるので、周溝60Eの最深部に堆積した異物の潤滑油の流れによる拡散を周溝60Eの垂直面60cによって防ぐことができる。
【0076】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置を
図16~
図18を用いて説明する。
図16は第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置を示す縦断面図である。
図17は
図16に示す第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサユニット及び弁機構の配置関係を示す概略断面図である。
図18は
図17に示す第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置における弁機構の動作及び作用を示す説明図である。なお、
図16~
図18において、
図1~
図15に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0077】
図16に示す第5の実施形態に係る建設機械の旋回装置7が第1の実施形態と相違する点は、減速装置22Fの下側ケース41Fにおいて周溝60の最深部とドレン孔49とを連通させる連通孔67を設けたこと、及び、連通孔67を開閉可能な弁装置80を下側ケース41Fに配設したことである。第5の実施形態のそれ以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0078】
具体的には、ケーシング26の下側ケース41Fに形成された周溝60は、第2位置602(最深部)が下側ケース41Fの膨出部48のドレン孔49の真上に位置するように構成されている。連通孔67は、下側ケース41Fの膨出部48(厚肉部)において上下方向に延在するものであり、一方側(上側)が周溝60の最深部の位置に開口すると共に他方側(下側)がドレン孔49に開口している。
【0079】
図17に示すように、連通孔67における周溝60の最深部の底面60aの近傍位置に、連通孔67を開閉する弁装置80の弁体81が配置されている。弁体81は、例えば、連通孔67を閉塞可能な平板状の部材であり、周溝60の最深部に滑り落ちた異物が更に連通孔67を流下して堆積する堆積領域となる部分である。弁体81は、周溝60の最深部の第2位置602に対応した位置に配置されたセンサ71が検出可能な範囲内の位置に設置される。
【0080】
弁装置80は、弁体81を下側ケース41Fに対して径方向に移動可能に操作する操作部材82を有している。操作部材82は、作業者が弁体81を移動させるために操作する操作部83と、操作部83から延びて弁体81に接続された支持部84とで構成されている。支持部84の外周面にはシール部材85(例えば、Oリング)が取り付けられている。シール部材85は、弁体81の操作部材82と下側ケース41Fとの隙間からケーシング26内の潤滑油の漏洩を阻止するものである。操作部材82の操作部83を下側ケース41Fの径方向外側に引き出すことで、弁体81が連通孔67を閉塞する閉位置から連通孔67の閉塞が解除される開位置へ変位する。連通孔67における下側ケース41Fの径方向外側の位置には、弁体81の上面に接触させた掻取部材86が配設されている。掻取部材86は、弁体81を開位置に変位させたときに弁体81上に堆積した異物Pを掻き取る機能を有している。
【0081】
本実施の形態においては、
図16に示す遊星歯車機構24の噛合いにより発生した摩耗粉などの異物の大部分は、第1の実施形態の場合と同様に、周溝60のいずれかの位置に沈降する。周溝60内に沈降した摩耗粉は、周溝60の傾斜する底面60a上に沿って最深部の第2位置602まで滑り落ちていく。周溝60の最深部の第2位置602に移動した異物は更に連通孔67内を沈降し、
図17に示すように、連通孔67を閉塞する平板状の弁体81上に堆積する。これにより、摩耗粉の大部分が連通孔67内の弁体81上に集積される。したがって、連通孔67(周溝60の最深部)に対応した位置にセンサ71を配置することで、減速装置22内で発生した異物の発生量を正確に検出することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態においては、
図17に示す操作部材82により弁体81を下側ケース41Fの径方向外側に変位させることで、連通孔67を開状態にする。このとき、
図18に示すように、弁体81の上面に接触する掻取部材86により、弁体81上に堆積した異物Pが掻き取られる。これにより、弁体81上に堆積した異物Pが連通孔67を介して
図16に示すドレン孔49に移動する。ドレン栓53を開くことで、ドレン孔49内に移動した異物をケーシング26の外部へ排出することができる。
【0083】
上述した第5の実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、上方向に開口して下方向が深さ方向となる周溝60を下側ケース41Fの内壁面45aに設けることで、遊星歯車機構24(歯車機構)で発生した異物の多くを周溝60のいずれかの位置に沈降させることができる。さらに、周溝60の底面60aを最浅部から最深部まで傾斜させることで、周溝60のいずれかの位置に沈降した異物を周溝60の最深部に集積させることができる。周溝60の最深部に集積された異物をセンサ71が検出するので、減速装置22(歯車装置)内で発生した異物の発生量を正確に把握することができる。
【0084】
また、本実施の形態に係る旋回装置7においては、減速装置22(歯車装置)のケーシング26(下側ケース41F)が、周溝60の第2位置602における下側に設けられ内壁面45aから外壁面45bまで延在して貫通するドレン孔49と、周溝60の最深部とドレン孔49とを連通させる連通孔67とを有している。減速装置22(歯車装置)は、連通孔67を開閉する平板状の弁体81を有している。
【0085】
この構成によれば、弁体81を適宜開位置に変位させることで、減速装置22(歯車装置)内で発生した異物Pを容易にケーシング26の外部へ排出可能なので、旋回装置7のメンテナンス性を向上させることができる。
【0086】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係る建設機械を
図19~
図21を用いて説明する。
図19~
図21において、
図1~
図18に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図19は第6の実施形態に係る建設機械の旋回装置におけるセンサの検出データを利用する複数のコンピュータのネットワークを示す構成図である。
【0087】
本実施の形態は、
図19に示すように、コントローラ8の他に、サーバ用コンピュータ101とサービス用コンピュータ111と管理者用コンピュータ112とが利用される。
図19中の矢印はデータの流れを示している。なお、各コンピュータ101、111、112は、コントローラ8と同様に、プロセッサ(例えばCPU)と記憶装置(例えばメモリ)を備え、当該記憶装置に記憶されたプログラムに基づいてプロセッサが各種処理を実行可能に構成されている。
【0088】
油圧ショベル1のコントローラ8が収集したセンサ71の検出データを無線通信装置9などによってサーバ用コンピュータ101(以下、サーバと称する)に送信し、当該データに基づいてサーバ101で旋回装置7の潤滑油の診断を行い、その診断結果をサービス用コンピュータ111や管理者用コンピュータ112に送信している。
【0089】
ここでは、サーバ101で行われる旋回装置7の診断のフローについて
図20を用いて説明する。
図20は
図19に示すネットワークのサーバが行う旋回装置の潤滑油の診断処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0090】
図20に示すフローは繰り返し処理であり、油圧ショベル1の動作後に処理を開始して、タイマー等で設定された所定の時間間隔、例えば1時間ごとにセンサ71により検出されたデータがサーバ101に送信され、当該データに基づいてサーバ101で診断処理が行われる。
【0091】
先ず、サーバ101(プロセッサ(以下の処理についても同様))は、旋回装置7のセンサ71からの検出データを取得する(ステップS10)。
【0092】
次に、サーバ101は、センサ71の検出データに基づいて得られる周溝60の最深部に堆積した異物の高さが閾値を超えるか否かを判定する(ステップS20)。センサ71による異物測定の一例を
図21に示す。
図21は第6の実施形態に係る建設機械の旋回装置における稼働時間に対する異物の高さ(堆積量)の変化の一例を示す図である。
図21に示す例では、稼働時間Tの増加により、異物高さHが増加傾向である。さらに、ある稼働時間を境に高さの傾きが大きく変化している。
【0093】
本実施形態においては、サーバ101は、異物高さHが閾値を超えた場合には、ステップS30に処理を進める。一方、異物高さHが閾値以下の場合には、サーバ101は旋回装置7の状態が正常である(遊星歯車機構24の損傷は無い)と判断してステップS40に処理を進める。
【0094】
ステップS30において、サーバ101は、サービス用コンピュータ111と管理者用コンピュータ112に旋回装置7に異常が発生したことを通知する。これにより、油圧ショベル1の稼働が停止される。旋回装置7を分解して歯車の状態確認を行う。
【0095】
一方、ステップS40においては、サーバ101が異物の計測値(高さH)を保存し、次の処理開始タイミングまで待機する。
【0096】
以上のように、サーバ101で異常診断を行うと旋回装置7の異常を早期に発見することができ、油圧ショベル1のダウンタイムの増加を抑制できる。
【0097】
なお、
図21のフローに係る処理は、コントローラ8でも実行可能である。また、
図21のフローに係る処理は、センサ71内にマイクロコンピュータを搭載し当該マイクロコンピュータで実行することも可能である。
【0098】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上述した第1~6の実施形態及びそれらの変形例に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0099】
例えば、上述した実施形態においては、減速装置22の歯車機構が遊星歯車機構である構成の例を示した。しかし、減速装置22の歯車機構は、回転駆動力を減速して伝達可能であれば、遊星歯車機構以外の機構で構成することも可能である。
【0100】
また、上述した第1の実施形態及びその変形例においては、周溝60、60Aが最浅部となる第1位置と最深部となる第2位置が180°の位置にあるように形成された構成の例を示した。しかし、周溝60、60Aは、最浅部である第1位置と最深部である第2位置とが異なる位置であれば、最浅部と最深部の位置は任意である。
【0101】
また、上述した第4の実施形態においては、周溝60Eの最深部となる第2位置に凹部が無い構成の例を示した。しかし、第1の実施形態と同様に、周溝60Eの最深部に凹部を設ける構成も可能である。
【0102】
また、上述した実施形態のコントローラ8及びサーバ101に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。
【符号の説明】
【0103】
1…油圧ショベル(建設機械)、 6…旋回輪、 7…旋回装置、 21…旋回モータ(旋回駆動源)、 22、22D、22F…減速装置(歯車装置)、 24…遊星歯車機構(歯車機構)、 25…出力軸、 26…ケーシング、 28…上側軸受、 45a…内壁面、 45b…外壁面、 49…ドレン孔、 56…遮蔽板、 56a…先端、 60、60A、60E…周溝、 60a…底面、 61…第1溝部、 61a…底面、 62…第2溝部、 62a…底面、 64…凹部、 65…樹脂部材、 67…連通孔、 71…センサ、 81…弁体、 601…第1位置、 602…第2位置