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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005544
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F16K1/32 Z
F16K1/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105753
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 潤一
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA21
3H052CB23
3H052CD02
3H052CD09
3H052EA01
3H052EA16
(57)【要約】
【課題】ストローク量を拡大することが可能な流体制御弁を提供すること。
【解決手段】ダイアフラム部材34は、中心が操作ロッド9の軸心CLの延長線上に位置し、かつ、操作ロッド9の側に膨出する球冠状に形成され、その頂点部で、操作ロッド9の側からダイアフラム部材34に接する第1挟持片93と、弁体32の側からダイアフラム部材34に接する第2挟持片323と、により軸心CLと平行な方向において両側から挟持されていること、第1挟持片93と第2挟持片323とは、操作ロッド9と同軸に位置する円形状に形成され、第1挟持片93の直径D11は、第2挟持片323の直径Dより大きいこと、第1挟持片93の、ダイアフラム部材34に対向する面は、ダイアフラム部材34の側に膨出して形成され、かつ、操作ロッド9の軸心CL上に中心を有する凸球面94であること。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ロッドと、前記操作ロッドに連結される弁体と、前記弁体が当接離間をする弁座と、前記操作ロッドと前記弁体の間に位置するダイアフラム部材と、を備え、前記操作ロッドにより駆動される前記弁体が、前記操作ロッドの軸心の方向に沿って前記当接離間を行うことで、制御流体の制御を行う流体制御弁において、
前記ダイアフラム部材は、中心が前記軸心の延長線上に位置し、かつ、前記操作ロッドの側に膨出する球冠状に形成され、その頂点部で、前記操作ロッドの側から前記ダイアフラム部材に接する第1挟持片と、前記弁体の側から前記ダイアフラム部材に接する第2挟持片と、により前記軸心と平行な方向において両側から挟持されていること、
前記第1挟持片と前記第2挟持片とは、前記操作ロッドと同軸に位置する円形状に形成され、前記第1挟持片の直径は、前記第2挟持片の直径より大きいこと、
前記第1挟持片の、前記ダイアフラム部材に対向する面は、前記ダイアフラム部材の側に膨出して形成され、かつ、前記軸心上に中心を有する凸球面であること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流体制御弁において、
前記凸球面の半径である第1半径は、前記ダイアフラム部材の前記凸球面に対向する球面の半径である第2半径よりも小さいこと、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載の流体制御弁において、
前記第1半径は、前記第2半径の50~65%であること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の流体制御弁において、
前記第1挟持片の直径は、前記ダイアフラム部材の前記軸心に直交する平面に投影した場合の直径の35%を超える値であること、
を特徴とする流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ロッドと、操作ロッドに連結される弁体と、弁体が当接離間をする弁座と、操作ロッドと弁体の間に位置するダイアフラムと、を備え、操作ロッドにより駆動される弁体が、操作ロッドの軸心の方向に沿って当接離間を行うことで、制御流体の制御を行う流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程における成膜処理には複数種のプロセスガスが用いられる。このプロセスガスの流量を制御するために、流体制御弁が用いられる。流体制御弁としては、例えば、特許文献1や特許文献2に開示される流体制御弁が知られている。特許文献1に開示される流体制御弁は、エアオペレイト式開閉弁であり、ダイアフラム部材を弁座に当接離間させて、プロセスガスの流量制御を行うものである。
【0003】
より具体的には、球冠状に形成されたダイアフラム部材の頂点部にステム(ダイアフラム押え)が当接されており、アクチュエータの動作によってステムでダイアフラム部材を押圧し、変形させて、弁座に当接させる。ダイアフラム部材が弁座に当接した状態が、流体制御弁の弁閉状態である。そして、ステムによるダイアフラム部材の押圧を解除すると、ダイアフラム部材の自己復帰力で、元の球冠状の形状に戻り、ダイアフラム部材が弁座から離間する。ダイアフラム部材が弁座から離間した状態が、流体制御弁の弁開状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-180490号公報
【特許文献2】特開2017-223318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年普及している成膜技術である原子層堆積法(ALD)に用いられるプロセスガスは高温(200度程度)であるため、その高温下では、ダイアフラム部材の自己復帰力が低下してしまい、流体制御弁を弁閉状態から弁開状態にするときに、元の球冠状に戻りにくくなるおそれがある。ダイアフラム部材が元の球冠状に戻らなくなると、弁開状態におけるダイアフラム部材と弁座との距離が小さくなるため、Cv値の低下が懸念される。半導体の成膜プロセスを可能な限り短くし、生産性を向上するために、流体制御弁の高Cv値化(つまり、一度に流せるガスの量を増やすこと)が望まれている中、上記のようなダイアフラム部材の自己復帰力の低下によるCv値の低下は好ましくない。
【0006】
そこで、本願発明者は、高温下でダイアフラム部材の自己復帰力が低下する問題の対応策として、例えば、図5に示すような流体制御弁100を用いることを考えた。
【0007】
流体制御弁100は、アクチュエータ部4を備えており、当該アクチュエータ部4は、空圧駆動のエアシリンダ6を備えている。エアシリンダ6の内部には、ピストン(不図示)が図5中の上下方向に摺動可能に装填されている。当該ピストンが上下動することにより、操作ロッド11が上下動されるようになっている。さらに、操作ロッド11の先端には、操作ロッド11が上下動されるに従って弁座33に対して当接離間をする弁体32が結合されている。そして、ダイアフラム部材34は、円盤状に形成されており、その外周部が流体制御弁100内で挟持固定されるとともに、中央部が操作ロッド11の挟持部111と弁体32とにより図5中の上下方向から挟持されている。
【0008】
以上のような流体制御弁100では、弁体32が弁座33に対して当接離間する際に、図6に示すようにダイアフラム部材34に変形が生じる。図6は、図5に示す流体制御弁100が弁開状態から弁閉状態になる際のダイアフラム部材34の変形の様子を示す図であり、(a)は弁開状態を表し、(b)は弁体が当接方向に移動を開始した直後を表し、(c)は弁閉状態を表している。
【0009】
流体制御弁100が弁開状態にあるとき、ダイアフラム部材34は、変形をしていない自然の状態に近い状態である(図6(a))。そして、操作ロッド11を当接方向に駆動し、弁体32を弁座33に対して当接しようとすると、ダイアフラム部材34は、操作ロッド11(挟持部111)と弁体32により挟持されている中央部から、弁座33(図5参照)に向かって押し下げられるようにして変形していく(図6(b))。そして、弁体32が弁座33に対して当接したとき、すなわち流体制御弁100が弁閉状態になったときが、ダイアフラム部材34が最も変形した状態である(図6(c))。
【0010】
また、弁閉状態から弁開状態とするには、操作ロッド11を図中の上方向に駆動する。これにより、操作ロッド11および弁体32が同方向に移動するため、弁体32が弁座33から離間し、流体制御弁100は、弁開状態となる。このとき、ダイアフラム部材34は、操作ロッド11(挟持部111)と弁体32とにより挟持されているため、中央部が弁座33から離間する方向に引張り上げられて、図6(a)に示すような元の形状に確実に戻ることができる。したがって、高温のプロセスガスを制御流体とする場合など、高温環境下であってもダイアフラム部材34が元の形状に戻らなくなることを防止することができる。
【0011】
しかしながら、上記のような流体制御弁100には、以下のような問題があった。本願発明者は、図6に示すようにダイアフラム部材34が変形される際、ダイアフラム部材34の挟持されている部分P21に応力が集中することを発見した。このようにダイアフラム部材34の応力が集中する箇所が常に一定であると、流体制御弁100の弁体32が弁座33に対して当接離間を繰り返したとき、その応力が集中する部分P21で、ダイアフラム部材34が破損するおそれがある。
【0012】
また、近年、流体制御弁の高Cv値化が望まれていることから、弁体の弁開状態の位置と弁閉状態の位置との距離(ストローク量)を従来よりも増大させることが望まれているが、ストローク量を増大させると、ダイアフラム弁体の変形量が大きくなる。変形量が大きくなると、上記した部分P21における応力の集中により、ダイアフラム部材34の破損がより生じやすくなってしまう。ダイアフラム部材34に生じる応力集中が、ストローク量の増大を達成できない要因となっている。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ストローク量を拡大することが可能な流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における流体制御弁は、次のような構成を有している。
【0015】
(1)操作ロッドと、前記操作ロッドに連結される弁体と、前記弁体が当接離間をする弁座と、前記操作ロッドと前記弁体の間に位置するダイアフラム部材と、を備え、前記操作ロッドにより駆動される前記弁体が、前記操作ロッドの軸心の方向に沿って前記当接離間を行うことで、制御流体の制御を行う流体制御弁において、前記ダイアフラム部材は、中心が前記軸心の延長線上に位置し、かつ、前記操作ロッドの側に膨出する球冠状に形成され、その頂点部で、前記操作ロッドの側から前記ダイアフラム部材に接する第1挟持片と、前記弁体の側から前記ダイアフラム部材に接する第2挟持片と、により前記軸心と平行な方向において両側から挟持されていること、前記第1挟持片と前記第2挟持片とは、前記操作ロッドと同軸に位置する円形状に形成され、前記第1挟持片の直径は、前記第2挟持片の直径より大きいこと、前記第1挟持片の、前記ダイアフラム部材に対向する面は、前記ダイアフラム部材の側に膨出して形成され、かつ、前記軸心上に中心を有する凸球面であること、を特徴とする。
【0016】
(2)(1)に記載の流体制御弁において、前記凸球面の半径である第1半径は、前記ダイアフラム部材の前記凸球面に対向する球面の半径である第2半径よりも小さいこと、が好ましい。
【0017】
(3)(2)に記載の流体制御弁において、前記第1半径は、前記第2半径の50~65%であること、が好ましい。
【0018】
(4)(1)乃至(3)にいずれか1つに記載の流体制御弁において、前記第1挟持片の直径は、前記ダイアフラム部材の前記軸心に直交する平面に投影した場合の直径の35%を超える値であること、が好ましい。
【0019】
上記の流体制御弁によれば、弁体を弁座に対して当接しようとすると、ダイアフラム部材は、第1挟持片と第2挟持片により挟持されている頂点部から、弁座に向かって押し下げられるようにして変形していく。この変形が行われる際、ダイアフラム部材は、第1挟持片の凸球面の形状に沿って変形するため、凸球面と、ダイアフラム部材との接触範囲が、弁体が弁座に近づくにつれて、ダイアフラム部材の中央部から外周の側へ広がっていく。このとき、ダイアフラム部材において、応力が集中する箇所は接触範囲の最外周部であることを、本願発明者は有限要素法解析により確認した。つまり、弁開状態から弁閉状態とする際に、ダイアフラム部材において応力の集中する箇所が、接触範囲の変動に合わせて移動し、一定ではないため、弁体の当接離間の動作を繰り返しても、ダイアフラム部材が破損しにくい。このようにダイアフラム部材を破損しにくくすることで、弁体の弁開状態の位置と弁閉状態の位置との距離(ストローク量)を従来よりも増大させることが可能になる。ストローク量を増大させることができれば、弁開状態において、弁体と弁座の距離が大きくなるため、流体制御弁のCv値が大きくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の流体制御弁によれば、ストローク量を拡大することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
図2図1の部分Aの部分拡大図である。
図3】ダイアフラム部材の斜視図である。
図4】本実施形態に係る流体制御弁が弁開状態から弁閉状態になる際のダイアフラム部材の変形の様子を示す図であり、(a)は弁開状態を表し、(b)は弁体が当接方向に移動を開始した直後を表し、(c)は弁閉状態を表している。
図5】本願発明者が、高温下でダイアフラム部材の自己復帰力が低下する問題の対応策として発明した流体制御弁の断面図である。
図6図5に示す流体制御弁が弁開状態から弁閉状態になる際のダイアフラム部材の変形の様子を示す図であり、(a)は弁開状態を表し、(b)は弁体が当接方向に移動を開始した直後を表し、(c)は弁閉状態を表している。
図7】弁体の、弁開状態における位置から当接方向への移動量と、ダイアフラム部材に生じる応力との関係を表すグラフである。
図8】弁体の高温時のストローク量とCv値の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る流体制御弁の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明に用いる図面は、説明のために簡略化しており、形状や寸法等を正確に表すものではない。
【0023】
(流体制御弁の構成について)
本実施形態に係る流体制御弁1の構成について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る流体制御弁1の断面図である。図2は、図1の部分Aの部分拡大図である。図3は、ダイアフラム部材34の斜視図である。
【0024】
流体制御弁1は、半導体製造装置のガス供給系に配設される空圧駆動のガスバルブであり、図1に示すように、駆動部2と、弁部3とからなっている。さらに、駆動部2は、アクチュエータ部4と、スプリング部5とからなっている。
【0025】
まず、アクチュエータ部4について説明する。アクチュエータ部4は、空圧駆動のエアシリンダ6と、エアシリンダ6とスプリング部5とを接続するための接続ブラケット7と、を備えている。
【0026】
エアシリンダ6は、円筒状のケース61と、ケース61の内部に装填されるピストン(不図示)と、ピストンに結合された円柱状の駆動軸(不図示)と、を備えている。ピストンは、ケース61内において図1中の上下方向に摺動可能とされており、ピストンの上下動に従って、駆動軸が、駆動軸の軸方向に沿って進退される。駆動軸の軸方向は、図1中の上下方向と平行な方向であり、後述する弁体32が弁座33に対して当接離間をする方向と一致されている。なお、図中の上側が離間方向であり、下側が当接方向である。
【0027】
エアシリンダ6の駆動軸の弁部3側の先端部は、ケース61から突出し、駆動軸と同軸上に位置する円柱状の操作ロッド9に連結している。よって、エアシリンダ6の駆動軸が進退するに伴い、操作ロッド9もその軸心CL(図2参照)に沿って進退する。
【0028】
操作ロッド9は、スプリング部5に挿通されており、接続ブラケット7内から弁部3まで延在している。操作ロッド9は、図2に示すように、弁部3に挿入されている部分に、接続ブラケット7に挿通されている部分およびスプリング部5内に挿通されている部分よりも径の大きい拡径部91を備えており、これにより段差部92が形成されている。さらに、操作ロッド9は、拡径部91の段差部92とは反対側の端部に、第1挟持片93を備えている。第1挟持片93は、後述する第2挟持片323とともに、後述するダイアフラム部材34を挟持するために用いられる。第1挟持片93は、操作ロッド9の軸心CLに直交する方向が半径方向とされた円形状で、軸心CLと同軸上に位置している。第1挟持片93の直径D11は、拡径部91の直径よりも大きくされている。また、第1挟持片93の、ダイアフラム部材34に対向する面は、ダイアフラム部材34の側に膨出して形成される凸球面94である。凸球面94は、中心が操作ロッド9の軸心CL上に位置しており、半径(第1半径)が、例えば約70mmに設定されている。また、凸球面94の外周縁は、R面取り処理がなされている。
【0029】
また、操作ロッド9の弁部3側の端面には、雌ねじ部95が穿設されており、後述する弁体32を螺合可能となっている。
【0030】
次にスプリング部5について説明する。スプリング部5は、内部空間51に、操作ロッド9と同軸上に位置した圧縮コイルばね52を備えている。圧縮コイルばね52は、内部空間51のアクチュエータ部4側の端面53と操作ロッド9の段差部92とに圧縮されている。このため、圧縮コイルばね52は、操作ロッド9を、常に当接方向(図中の下方向)に付勢している。
【0031】
次に弁部3について説明する。弁部3は、ボディ31と、弁体32と、弁座33と、ダイアフラム部材34を備えている。ボディ31は、スプリング部5と接続する筒状部315を備えている。また、ボディ31には、該筒状部315の内側に、弁室311が穿設されている。
【0032】
弁室311は、底部の中央で、弁口312を介して、入力流路313と連通している。この入力流路313は、プロセスガスを弁室311に入力するために用いられる。また、弁室311の底面には、弁口312の外周側かつ弁口312と同軸上に、円環状の弁座33が固定されている。この弁座33は、例えば、耐熱性の優れたPI(ポリイミド)、または、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を材質とする。さらに、弁室311は、弁座33の半径方向外側において、出力流路314と連通している。この出力流路314は、プロセスガスを弁室311から出力するために用いられる。
【0033】
弁体32は、例えばステンレス鋼を材質とする。弁体32は、円柱状の本体部321を備え、さらに、本体部321の操作ロッド9側に、雄ねじ部322を備えている。雄ねじ部322を、操作ロッド9の雌ねじ部95に螺合することで、弁体32が操作ロッド9に連結される。
【0034】
また、弁体32は、本体部321の雄ねじ部322の側とは反対側に、第2挟持片323を備えている。第2挟持片323は、操作ロッド9の軸心CLに直交する方向が半径方向とされた円形状で、軸心CLと同軸上に位置している。第2挟持片323の直径D12は、第1挟持片93の直径D11よりも小さくされている。第2挟持片323は、弁体32が操作ロッド9に連結されることで、第1挟持片93とともに、ダイアフラム部材34を図2中の上下方向から挟持する。第2挟持片323のダイアフラム部材34に対向する面は平面であり、その平面の外周縁はR面取り処理されている。
【0035】
また、弁体32は、第2挟持片323の本体部321の側とは反対側に、弁座33に対して当接離間をする当接部324を備えている。この当接部324も操作ロッド9の軸心CLと同軸に位置する円形状である。弁体32が操作ロッド9に連結されているため、操作ロッド9が進退するに伴って、当接部324が、軸心CLの方向に沿って、弁座33に対して当接離間の動作を行う。
【0036】
ダイアフラム部材34は、例えば、Ni合金を材質とする。また、ダイアフラム部材34は、中心が軸心CLの延長線上に位置し、かつ、操作ロッド9の側に膨出する球冠状に形成されている。したがって、ダイアフラム部材34の凸球面94に対向する対向面341は球面である。対向面341の球の半径(第2半径)は、例えば約140mmに設定されている。なお、対向面341の裏側の面を裏面342とする。ダイアフラム部材34(対向面341)の頂点部には、切り口343が設けられている。この切り口343は、軸心CLに直交する方向が半径方向とされた円形状であり、軸心CLと同軸に位置している。また、対向面341の外周部には、軸心CLに直交する平面状の縁部344を備えている。この縁部344は、軸心CLに直交する方向が半径方向とされた円形状である。
【0037】
以上のようなダイアフラム部材34は、以下のように、流体制御弁1の内部に固定される。ダイアフラム部材34の切り口343に、対向面341とは反対側から、弁体32の雄ねじ部322を挿通させ、ダイアフラム部材34の裏面342が弁体32の第2挟持片323に接触した状態で、ダイアフラム部材34と弁体32とが同軸に位置するよう位置決めをする。そして、雄ねじ部322を操作ロッド9の雌ねじ部95に対して、第1挟持片93の凸球面94がダイアフラム部材34の球面341に接触するまで螺合していく。これにより、ダイアフラム部材34は、図1または図2に示すように、切り口343の縁部で、第1挟持片93と第2挟持片323とによって、軸心CLの方向(図中の上下方向)において両側から挟持される。すなわち、操作ロッド9とダイアフラム部材34が結合される。さらに、ダイアフラム部材34の縁部344は、図1または図2に示すように、弁部3内で上下方向から挟持固定されている。ダイアフラム部材34は、以上のように流体制御弁1の内部に固定されることで、ボディ31の筒状部315の内部を、弁室311とその上部とに区画するとともに、弁体32が当接離間の方向に動作されるに合わせて弾性変形を繰り返すようになっている。
【0038】
(流体制御弁の動作について)
流体制御弁1を弁開状態から弁閉状態とする動作について説明する。エアシリンダ6に対して操作エアの送給をすると、図1に示すように、流体制御弁1は弁開状態となる。上述の通り、操作ロッド9が常に圧縮コイルばね52に当接方向に付勢されているため、弁開状態とは、アクチュエータ部4が圧縮コイルばね52の付勢力に抗して、操作ロッド9を図中の上方に引き上げている状態である。この状態から弁閉状態とするには、エアシリンダ6に対する操作エアの送給を停止する。すると、圧縮コイルばね52の付勢力により、操作ロッド9および弁体32が弁座33の側に押し下げられ、弁体32の当接部324が弁座33に当接される。
【0039】
次に、以上のように弁開状態から弁閉状態とする際に、ダイアフラム部材34に生じる変形について図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る流体制御弁1が弁開状態から弁閉状態になる際のダイアフラム部材34の変形の様子を示す図であり、(a)は弁開状態を表し、(b)は弁体32が当接方向に移動を開始した直後を表し、(c)は弁閉状態を表している。
【0040】
流体制御弁1が弁開状態にあるとき、ダイアフラム部材34は、変形をしていない自然の状態に近い状態である(図4(a))。そして、操作ロッド9が当接方向に駆動され、弁体32が弁座33に対して当接しようすると、ダイアフラム部材34は、第1挟持片93と第2挟持片323により挟持されている中央部から、弁座33(図2参照)に向かって押し下げられるようにして変形していく(図4(b))。そして、弁体32が弁座33に対して当接したとき、すなわち流体制御弁1が弁閉状態になったときが、ダイアフラム部材34が最も変形した状態である(図4(c))。この変形が行われる際、ダイアフラム部材34は、凸球面94の形状に沿って変形するため、第1挟持片93の凸球面94と、ダイアフラム部材34の対向面341との接触範囲A11が、弁体32が弁座33に近づくにつれて、中央部から外周の側へ広がっていく(図4(b),(c))。
【0041】
本願発明者は、以上のようにダイアフラム部材34が変形する際に、応力が集中する箇所が、接触範囲A11の最外周部P11であることを有限要素法解析により確認した。つまり、弁開状態から弁閉状態とする際に、ダイアフラム部材34において応力の集中する箇所が、接触範囲A11の変動に合わせて移動し、一定ではないため、弁体32の当接離間の動作を繰り返しても、ダイアフラム部材34が破損しにくい。このようにダイアフラム部材34を破損しにくくすることで、弁体32の弁開状態の位置と弁閉状態の位置との距離(ストローク量)を従来よりも増大させることが可能になる。ストローク量を増大させることができれば、弁開状態において、弁体32と弁座33の距離が大きくなるため、流体制御弁1のCv値が大きくなる。
【0042】
ここで、図4(b),(c)に示すように、ダイアフラム部材34を凸球面94の形状に沿って変形させるためには、凸球面94の半径が、球面341の半径の50~65%となるようにすることが望ましい。なお、本実施形態においては、凸球面94の半径(第1半径)が、約70mmであるのに対し、ダイアフラム部材34の対向面341の半径(第2半径)は、約140mmとされている。
【0043】
さらに、第1挟持片93の直径D11を可能な限り大きくすることで、ストローク量をより大きく確保できる。具体的には、第1挟持片93の直径D11(図2参照)が、ダイアフラム部材34の直径D21(図3参照)の35%を超える値であることが望ましい。なお、ダイアフラム部材34の直径D21とは、ダイアフラム部材34を操作ロッド9の軸心CLに直交する平面に投影した場合の直径、すなわち、本実施形態においては縁部344の直径である。
【0044】
具体的には図7および図8を用いて説明する。図7は、弁体32の、弁開状態における位置(以下、弁開位置という)から当接方向への移動量(ストローク量)と、ダイアフラム部材に生じる応力との関係を表すグラフであり、第1挟持片93の直径D11について、ダイアフラム部材34の直径D21の35%とした場合と、直径D21の65%とした場合と、直径D21の85%とした場合と、を比較するものである。図7中の一点鎖線による波形が、直径D11を直径D21の35%とした場合の波形である。なお、直径D11を直径D21の35%とするのは、図5に示す流体制御弁100における挟持部111の直径とダイアフラム部材34の直径との関係と同一である。図7中の実線による波形が、直径D11を直径D21の65%とした場合の波形である。図7中の破線による波形が、直径D11を直径D21の85%とした場合の波形である。そして、各波形が立ち上がっている部分は、ダイアフラム部材34に破壊が生じるほどの応力集中が発生していることを表している。また、図8は、弁体32の高温時のストローク量とCv値の関係を表すグラフである。ストローク量が増大するにつれ、Cv値が増大することが示されている。
【0045】
第1挟持片93の直径D11を、ダイアフラム部材34の直径D21の直径の35%としたところ、弁体32の移動量がS1に達したところで、波形の立ち上がりが見られる(図7参照)。つまり、弁体32の移動量がS1に達したところで、ダイアフラム部材34に破壊が生じるほどの応力集中が発生した。よって、ストローク量は最大でS1だけ確保することができる。ストローク量をS1だけ確保した場合の、流体制御弁1(流体制御弁100)のCv値はC1である(図8参照)。
【0046】
例えば、第1挟持片93の直径D11を、ダイアフラム部材34の直径D21の直径の約65%とした場合、弁体32の移動量がS2に達したところで、波形の立ち上がりが見られる(図7参照)。つまり、弁体32の移動量がS2に達したところで、ダイアフラム部材34に破壊が生じるほどの応力集中が発生した。よって、ストローク量は最大でS2だけ確保することができる。このストローク量は、直径D11を直径D21の35%とした場合におけるストローク量の約1.8倍である。ストローク量をS2とした場合の流体制御弁1のCv値はC2である(図8参照)。これは、直径D11を直径D21の35%とした場合におけるCv値の約1.5倍である。
【0047】
また例えば、第1挟持片93の直径D11を、ダイアフラム部材34の直径D21の直径の約85%とした場合、弁体32の移動量がS3に達したところで、波形の立ち上がりが見られる(図7参照)。つまり、弁体32の移動量がS3に達したところで、ダイアフラム部材34に破壊が生じるほどの応力が発生した。よって、ストローク量は最大でS3だけ確保することができる。このストローク量は、直径D11を直径D21の35%とした場合におけるストローク量の約2.5倍である。ストローク量をS3とした場合の流体制御弁1のCv値はC3である(図8参照)。これは、直径D11を直径D21の35%とした場合におけるCv値の約1.65倍である。
【0048】
以上のように、第1挟持片93の直径D11が、ダイアフラム部材34の直径D21の35%を超える値であれば、図7に示すように、直径D11を直径D21の35%とした場合よりも波形の立ち上がりを遅らせることが可能である。つまり、弁体32をより大きく移動させることが可能、すなわち、ストローク量を増大させることが可能である。なお、第1挟持片93の直径D11は、流体制御弁1の構造が許す限り、大きいことが望ましいが、現実的には、ダイアフラム部材34の直径D21よりも小さくなる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る流体制御弁1は、(1)操作ロッド9と、操作ロッド9に連結される弁体32と、弁体32が当接離間をする弁座33と、操作ロッド9と弁体32の間に位置するダイアフラム部材34と、を備え、操作ロッド9により駆動される弁体32が、操作ロッド9の軸心CLの方向に沿って当接離間を行うことで、制御流体の制御を行う流体制御弁1において、ダイアフラム部材34は、中心が軸心CLの延長線上に位置し、かつ、操作ロッド9の側に膨出する球冠状に形成され、その頂点部(切り口343)で、操作ロッド9の側からダイアフラム部材34に接する第1挟持片93と、弁体32の側からダイアフラム部材34に接する第2挟持片323と、により軸心CLと平行な方向において両側から挟持されていること、第1挟持片93と第2挟持片323とは、操作ロッド9と同軸に位置する円形状に形成され、第1挟持片93の直径D11は、第2挟持片323の直径Dより大きいこと、第1挟持片93の、ダイアフラム部材34に対向する面は、ダイアフラム部材34の側に膨出して形成され、かつ、操作ロッド9の軸心CL上に中心を有する凸球面94であること、を特徴とする。
【0050】
(2)(1)に記載の流体制御弁1において、凸球面94の半径である第1半径は、ダイアフラム部材34の凸球面94に対向する球面(対向面341)の半径である第2半径よりも小さいこと、が好ましい。
【0051】
(3)(2)に記載の流体制御弁1において、前記第1半径は、前記第2半径の50~65%であること、が好ましい。
【0052】
(4)(1)乃至(3)にいずれか1つに記載の流体制御弁1において、第1挟持片93の直径D11は、ダイアフラム部材34の軸心CLに直交する平面に投影した場合の直径D21の35%を超える値であること、が好ましい。
【0053】
上記の流体制御弁1によれば、弁体32を弁座33に対して当接しようすると、ダイアフラム部材34は、第1挟持片93と第2挟持片323により挟持されている頂点部から、弁座33に向かって押し下げられるようにして変形していく。この変形が行われる際、ダイアフラム部材34は、第1挟持片93の凸球面94の形状に沿って変形するため、凸球面94と、ダイアフラム部材34との接触範囲A11が、弁体32が弁座33に近づくにつれて、ダイアフラム部材34の中央部から外周の側へ広がっていく。このとき、ダイアフラム部材34において、応力が集中する箇所は接触範囲A11の最外周部P11であることを、本願発明者は有限要素法解析により確認した。つまり、弁開状態から弁閉状態とする際に、ダイアフラム部材34において応力の集中する箇所が、接触範囲A11の変動に合わせて移動し、一定ではないため、弁体32の当接離間の動作を繰り返しても、ダイアフラム部材34が破損しにくい。このようにダイアフラム部材34を破損しにくくすることで、弁体32の弁開状態の位置と弁閉状態の位置との距離(ストローク量)を従来よりも増大させることが可能になる。ストローク量を増大させることができれば、弁開状態において、弁体32と弁座33の距離が大きくなるため、流体制御弁1のCv値が大きくなる。
【0054】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、本実施形態に係る流体制御弁1の駆動部2は、駆動源として空圧駆動のエアシリンダ6を用いているが、例えば電動の直動型モータを用いる等、その他の駆動源を用いても良い。また、本実施形態においては、第1挟持片93と操作ロッド9とが同一部材として一体に形成されているが、第1挟持片と操作ロッド9とを別部材としても良い。同様に、第2挟持片323と弁体32とが同一部材として一体に形成されているが、第2挟持片323と弁体32とを別部材としても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 流体制御弁
9 操作ロッド
32 弁体
33 弁座
34 ダイアフラム部材
93 第1挟持片
94 凸球面
323 第2挟持片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8