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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005552
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20250109BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20250109BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20250109BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60C11/03 100C
B60C11/13 B
B60C11/12 D
B60C11/12 A
B60C9/22 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105764
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】則竹 将志
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC34
3D131BC37
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA52
3D131EA08U
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131EB18V
3D131EB19V
3D131EB20V
3D131EB22V
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB28V
3D131EB83V
3D131EB85V
3D131EB86V
3D131EB91V
3D131EB94V
3D131EC01X
3D131EC02V
3D131HA37
(57)【要約】
【課題】低燃費性能とウェット制動性能を両立すること。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って連続して延びタイヤ幅方向に隣接される複数の周方向溝22と、複数の周方向溝22によってタイヤ幅方向で区画されてタイヤ周方向に沿って連続して延びる3列以上のリブ状陸部311,312と、を備え、周方向溝22は、いずれかの溝壁22a,22bから溝内側に突出してリブ状陸部311,312と踏面15Aが連続し、タイヤ周方向において各溝壁22a,22bから交互に突出する凸状陸部220と、凸状陸部220の突出端220aと溝壁22a,22bとの間に形成されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向細溝221、および各凸状陸部220の間に形成されてタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向細溝222からなる踏面細溝と、を有し、周方向細溝221の開口溝幅WLが、0.5mm以上3.0mm以下の範囲である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、
タイヤ周方向に沿って連続して延びタイヤ幅方向に隣接される複数の周方向溝と、
複数の前記周方向溝によってタイヤ幅方向で区画されてタイヤ周方向に沿って連続して延びる3列以上のリブ状陸部と、
を備え、
前記周方向溝は、
溝壁から溝内側に突出して前記リブ状陸部と踏面が連続し、タイヤ周方向において各前記溝壁から交互に突出する凸状陸部と、
前記凸状陸部の突出端と前記溝壁との間に形成されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向細溝、および各前記凸状陸部の間に形成されてタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向細溝からなる踏面細溝と、
を有し、
前記周方向細溝の開口溝幅WLが、0.5mm以上3.0mm以下の範囲である、
タイヤ。
【請求項2】
前記幅方向細溝の開口溝幅WSが、0.5mm以上7.0mm以下の範囲である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記周方向溝の間で形成される前記リブ状陸部が、タイヤ赤道面上に位置する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
タイヤ接地時に少なくとも前記周方向細溝が閉口し、前記周方向溝を境に隣り合う各前記リブ状陸部が前記踏面において連なる、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記踏面細溝は、長尺の前記周方向細溝と短尺の前記幅方向細溝とが交互に連なったジグザグ形状を有し、
前記周方向細溝の開口溝幅WLと、前記幅方向細溝の開口溝幅WSとが、0.1≦WL/WS<1.0の関係を満たし、タイヤ接地時に前記周方向細溝のみが閉口する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記周方向溝は、溝底からの溝深さの30%以上70%以下の範囲においてタイヤ周方向視で貫通して形成される空隙部を有する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記周方向溝の溝壁の仮想線と、当該溝壁から突出する前記凸状陸部の前記踏面とのなす角度が鋭角であり、
前記溝壁の仮想線から前記凸状陸部の前記突出端までの前記踏面でのタイヤ幅方向距離Waと、前記周方向溝の溝深さ50%の位置での前記凸状陸部のタイヤ幅方向距離Wbとが、0.1<Wb/Wa<0.6の関係を満たす、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記周方向溝は、溝底からの所定溝深さの範囲においてタイヤ周方向視で貫通して形成される空隙部を有し、
前記周方向溝の溝壁の仮想線から突出する前記凸状陸部の前記突出端までの前記踏面でのタイヤ幅方向距離Waと、前記空隙部における最大タイヤ幅方向距離Wcとが、0.6<Wc/Wa<0.9の関係を満たす、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記周方向溝は、前記凸状陸部の前記突出端に対向する溝壁と踏面との交差部分に面取部を有する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
複数の前記周方向溝のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延び、摩耗進行に従って直線状から波状に変化する周方向主溝を有し、
前記周方向細溝の開口溝幅WLと、前記周方向主溝の開口溝幅W1とが、0.1<WL/W1<0.4の関係を満たす、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記トレッド部に、
複数の前記周方向溝のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝と、
前記幅方向細溝と前記周方向主溝とを接続する第一幅方向溝と、
を有する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記トレッド部に、
タイヤ幅方向で隣り合う各前記周方向溝において、互いの前記幅方向細溝を接続する第二幅方向溝を有する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記周方向溝は、タイヤ赤道面上から外れた位置に設けられ、
前記周方向細溝は、前記タイヤ赤道面に向かって凸となる円弧形状を有する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記トレッド部に、
複数の前記周方向溝のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝と、
3枚以下の構造のベルト部材を有し、
前記周方向溝の溝底からタイヤ径方向最外側のベルトまでのタイヤ径方向距離Dと、前記周方向主溝の溝底からタイヤ径方向最外側のベルトまでのタイヤ径方向距離dとが、0.8<D/d<1.3の関係を満たす、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記トレッド部に、
タイヤ周方向に対して0°以上2°以下の角度の線材を有するベルトを有する、
請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、周溝の底部に、当該周溝を境に隣り合う陸部を連結するタイバーを設け、このタイバーをタイヤ周方向に貫通するスリットを設けることで、タイヤの低転がり抵抗性能とウェット性能とを両立できるタイヤの発明が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、リブ状陸部の内部にタイヤ周方向に沿って延びる空洞部と、リブ状陸部の表面に空洞部に対してタイヤ幅方向の一方側から連なる第一スリット部と、リブ状陸部の表面に空洞部に対してタイヤ幅方向の他方側から連なる第二スリット部と、リブ状陸部の表面に第一スリット部と第二スリット部とを繋げて空洞部に連なる第三スリットと、を備えることで、排水性能を向上可能であると共に転がり抵抗の増大を抑制可能なタイヤの発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-126525号公報
【特許文献2】特開2021-091374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、重荷重用車両であるトラックやバスに用いられるタイヤでは、トレッド部においてタイヤ周方向に延びるリブ状の陸部を主とするリブパターンを基調としたトレッドパターンを有するものがある。このリブパターンを基調としたタイヤは、低燃費性能とウェット制動性能とが背反する。従って、リブパターンを基調としたタイヤにおいて、低燃費性能とウェット制動性能との両立を図ることが求められている。
【0006】
この発明は、低燃費性能とウェット制動性能を両立することのできるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るタイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って連続して延びタイヤ幅方向に隣接される複数の周方向溝と、複数の前記周方向溝によってタイヤ幅方向で区画されてタイヤ周方向に沿って連続して延びる3列以上のリブ状陸部と、を備え、前記周方向溝は、溝壁から溝内側に突出して前記リブ状陸部と踏面が連続し、タイヤ周方向において各前記溝壁から交互に突出する凸状陸部と、前記凸状陸部の突出端と前記溝壁との間に形成されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向細溝、および各前記凸状陸部の間に形成されてタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向細溝からなる踏面細溝と、を有し、前記周方向細溝の開口溝幅WLが、0.5mm以上3.0mm以下の範囲である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、低燃費性能とウェット制動性能を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
図2図2は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
図3図3は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面部分拡大図である。
図4図4は、実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ接地時のトレッドの平面図である。
図5図5は、実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ接地時の子午断面部分拡大図である。
図6図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図7図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図8図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0011】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、実施形態の空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、タイヤ子午線方向の断面(子午断面図)とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
【0012】
図1は、実施形態の空気入りタイヤ1の子午断面である。本実施形態では、一例として、トラック、バスなどの重荷重車両に装着される重荷重用空気入りラジアルタイヤについて説明する。本実施形態の空気入りタイヤ1は、特に、重荷重車両の操舵軸および駆動軸に装着されるタイヤに適している。
【0013】
空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLを境にタイヤ幅方向で対称に形成される。このため、図1では、タイヤ赤道面CLを境にしたタイヤ幅方向の片側の一部を示している。また、空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を境にしたタイヤ径方向で対称に形成される。このため、図1では、タイヤ回転軸を境に下タイヤ径方向の片側領域の一部を示している。
【0014】
実施形態の空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、図1に示すように、一対のビードコア(図示せず)と、一対のビードフィラー(図示せず)と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16と、一対のリムクッションゴム(図示せず)とを備える。
【0015】
一対のビードコアは、図に明示しないが、スチールからなる1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されてタイヤ幅方向両側のビード部のコアを構成する。
【0016】
一対のビードフィラーは、図に明示しないが、ローアーフィラーおよびアッパーフィラーから成り、一対のビードコアのタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0017】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライからなる単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層してなる多層構造を有する。カーカス層13は、両ビードコア間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13は、その両端部が、ビードコアおよびビードフィラーを包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13は、そのカーカスプライが、スチールからなる複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、ラジアルタイヤであれば絶対値で80°以上90°以下、バイアスタイヤであれば30°以上45°以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0018】
ベルト層14は、ベルト部材とも言い、複数のベルトプライ(ベルトとも言う)141~143を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。これらのベルトプライ141~143は、0度ベルト142と、0度ベルト142を挟む一対の交差ベルト141,143と、を含む。0度ベルト142は、スチールから成る複数のベルトコード(線材とも言う)をコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で0°以上2°以下のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。一対の交差ベルト141,143は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10°以上55°以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト141,143は、相互に異符号のコード角度を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造を有する)。
【0019】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されて空気入りタイヤ1のトレッド部を構成する。トレッドゴム15は、トレッド部において、走行時に路面と接触する外周表面に、踏面(トレッド面とも言う)15Aを構成する。
【0020】
一対のサイドウォールゴム16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されてタイヤ幅方向両側のサイドウォール部を構成する。
【0021】
一対のリムクッションゴムは、図に明示しないが、各ビードコアおよびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0022】
実施形態の空気入りタイヤ1は、図2に示すように、踏面15Aにトレッドパターンを有する。ここで、トレッドパターンにおける各寸法は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて測定される。
【0023】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「MEASURING RIM」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0024】
溝幅(開口溝幅とも言う)は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面における溝開口部の対向する溝壁間の距離の最大値として測定される。また、溝幅は、溝開口部に切欠部あるいは面取部を有する構成では、タイヤ幅方向およびタイヤ径方向に平行な断面においてトレッド踏面の延長線と溝壁の延長線との交点を端点として測定される。
【0025】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝深さは、部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して測定される。
【0026】
実施形態の空気入りタイヤ1は、図2に示すように、踏面15Aに、周方向主溝21と、周方向溝22と、幅方向溝23,24と、を有する。
【0027】
周方向主溝21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ全周に亘って連続的に設けられた環状構造を有する。周方向主溝21は、タイヤ赤道面CLを間に挟むようにしてタイヤ幅方向に2本並列して設けられる。周方向主溝21は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝として定義される。周方向主溝21は、実施形態では、図1に示すように、溝幅W1が10.0mm以上20.0mm以下、溝深さD1が10.0mm以上25.0mm以下とされる。また、周方向主溝21は、その溝底からタイヤ径方向最外側のベルト(ベルトプライ143)までの距離(トレッドゴム15の溝底厚さ)をdとする。
【0028】
周方向主溝21は、新品時において開口がタイヤ周方向に沿って直線状に形成されているが、その溝壁から溝底がタイヤ周方向に沿って波状(蛇行状)に形成されていることで、摩耗進行に従って直線状から波状に変化する。
【0029】
空気入りタイヤ1は、2本の周方向主溝21により、トレッド部に、タイヤ周方向に沿いタイヤ幅方向に3列並ぶ陸部31,32が形成される。具体的に、空気入りタイヤ1は、2本の周方向主溝21の間に区画されるセンター陸部31と、各周方向主溝21のタイヤ幅方向外側にそれぞれ区画される2つのショルダー陸部32と、を有する。センター陸部31は、タイヤ赤道面CLを含み配置される。ショルダー陸部32は、トレッド部のタイヤ幅方向の両最外側にそれぞれ配置される。
【0030】
空気入りタイヤ1は、踏面15Aのタイヤ幅方向の両最外側の各端部であって、各ショルダー陸部32のタイヤ幅方向外側端に接地端Tを有する。そして、空気入りタイヤ1は、各接地端Tの間のタイヤ幅方向における直線距離を踏面15Aのトレッド展開幅TWとする。そして、実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド展開幅TWに対するセンター陸部31のタイヤ幅方向寸法CWの比率が0.4以上0.7以下の範囲とされる。
【0031】
周方向溝22は、センター陸部31において、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ全周に亘って連続的に設けられた環状構造を有する。周方向溝22は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有しない溝であって、このことにより周方向主溝21と区別できる。周方向溝22は、タイヤ赤道面CLを間に挟むようにしてタイヤ幅方向に複数(実施形態では2本)が隣接して並んで設けられる。隣接(または隣り合う)とは、タイヤ周方向に沿って連続する溝のタイヤ幅方向の間にタイヤ周方向に沿って連続する他の溝が存在しないことを言う。周方向溝22は、実施形態では、図1に示すように、溝幅W2が5.0mm以上15.0mm以下、溝深さD2が10.0mm以上25.0mm以下とされる。また、周方向溝22は、その溝底22cからタイヤ径方向最外側のベルト(ベルトプライ143)までの距離(トレッドゴム15の溝底厚さ)をDとする。
【0032】
空気入りタイヤ1は、複数(2本)の周方向溝22により、センター陸部31に、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ全周に亘って連続的に設けられる、リブ状陸部311,312が形成される。リブ状陸部311,312は、タイヤ幅方向に3列以上並んで配置される。具体的に、実施形態の空気入りタイヤ1は、2本の周方向溝22の間に区画されるセンターリブ状陸部311と、各周方向溝22のタイヤ幅方向外側でそれぞれ周方向主溝21との間に区画される2つのサイドリブ状陸部312と、を有する。センターリブ状陸部311は、2本の周方向溝22により区画されるセンター領域に位置しており、タイヤ赤道面CLを含み配置される。
【0033】
周方向溝22は、図3に示すように、トレッド部において、両側の溝壁22a,22bが踏面15Aから溝底22cに至り形成されている。即ち、周方向溝22は、溝壁22a,22bの間にて踏面15A側が開口し、溝底22cに向かって閉じている。溝壁22a,22bは溝底22cが狭く踏面15Aに向かって漸次広がるように形成される。周方向溝22は、タイヤ幅方向において溝壁22a,22bが略対称形状に形成される。この周方向溝22は、図2および図3に示すように、凸状陸部220と、踏面細溝221,222と、を有する。
【0034】
凸状陸部220は、いずれかの溝壁22a,22bからタイヤ幅方向で溝内側に突出し、リブ状陸部311(またはリブ状陸部312)から踏面15Aを連続し、突出端220aが他方の溝壁22bと離れて設けられる。凸状陸部220は、他方の溝壁22bからタイヤ幅方向で溝内側に突出し、リブ状陸部311(またはリブ状陸部312)から踏面15Aを連続し、突出端220aが一方の溝壁22bと離れて設けられる。一方の溝壁22aから突出する凸状陸部220は、図3に示すように、周方向溝22の溝底22cの近傍から開口へタイヤ径方向に向かうに連れて突出端220aが溝壁22bに漸次近づくように形成される。また、他方の溝壁22bから突出する凸状陸部220は、図3に示すように、周方向溝22の溝底22cの近傍から開口へタイヤ径方向に向かうに連れて突出端220aが溝壁22aに漸次近づくように形成される。一方の溝壁22aから突出する凸状陸部220と、他方の溝壁22bから突出する凸状陸部220は、タイヤ幅方向において略対称形状に形成される。一方の溝壁22aから突出する凸状陸部220と、他方の溝壁22bから突出する凸状陸部220は、周方向溝22の延びるタイヤ周方向において交互に溝壁22a,22bから突出する。
【0035】
凸状陸部220は、図3に示すように、タイヤ周方向視の子午断面において、一方の溝壁22aから突出する凸状陸部220と、他方の溝壁22bから突出する凸状陸部220とが重なる。凸状陸部220は、図3では、他方の溝壁22bから突出する凸状陸部220が手前側に見え、一方の溝壁22aから突出する凸状陸部220の一部が奥側に重なって見える形態を示している。従って、子午断面において、他方の溝壁22bは、線として表れず、図3では、仮想線として破線で示している。
【0036】
周方向溝22は、一方の溝壁22aから突出する凸状陸部220と、他方の溝壁22bから突出する凸状陸部220との相互が重ならない部分が、タイヤ周方向視で貫通する空隙部22dを有するシースルー形状として形成される。実施形態の空気入りタイヤ1では、空隙部22dは、溝底22cからの溝深さD2の30%以上70%以下の範囲に形成される。
【0037】
また、周方向溝22は、図3に示すように、溝壁22bの仮想線から突出する凸状陸部220の突出端220aまでの踏面15Aでのタイヤ幅方向距離をWaとしている。また、周方向溝22は、図3に示すように、溝壁22bの仮想線から突出する凸状陸部220の突出端220aまでの溝深さD2の50%の位置でのタイヤ幅方向距離をWbとしている。また、周方向溝22は、図3に示すように、空隙部22dにおける最大タイヤ幅方向距離をWcとしている。また、周方向溝22は、図3に示すように、溝壁22bの仮想線と、当該溝壁22bから突出する凸状陸部220の踏面15Aとのなす角度θが鋭角である。上記のタイヤ幅方向距離Wa,Wbは、凸状陸部220の踏面15Aと平行な距離にて示される。
【0038】
また、周方向溝22は、図3に示すように、踏面15Aと溝壁22a,22bとの交差部分において面取部22eを有する。面取部22eは、例えば、C面取で構成され、寸法は、タイヤ幅方向の幅0.5mm以上4.5mm以下、タイヤ径方向の深さ1.5mm以上5.0mm以下が好ましい。
【0039】
踏面細溝221,222は、図1に示すように、周方向溝22に凸状陸部220が形成されることにより、凸状陸部220と溝壁22a,22bとの間に形成されて踏面15Aにて開口する溝である。踏面細溝221,222は、上述したように、一方の溝壁22aから突出する凸状陸部220と、他方の溝壁22bから突出する凸状陸部220とが、周方向溝22の延びるタイヤ周方向において交互に溝壁22a,22bから突出することで、ジグザグ形状に形成される。具体的に、踏面細溝221,222は、凸状陸部220の突出端220aと各溝壁22a,22bとの間に形成されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向細溝221と、タイヤ周方向で隣接する各凸状陸部220のタイヤ周方向に向く側端220bの間に形成されてタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向細溝222と、を有する。周方向細溝221は比較して長尺であり、幅方向細溝222は比較して短尺である。各周方向細溝221は、タイヤ周方向で同等の長さであり、その間の幅方向細溝222は、タイヤ周方向において略等間隔で配置される。
【0040】
また、周方向溝22は、周方向細溝221の踏面15Aに開口する開口溝幅をWLとする。周方向溝22は、幅方向細溝222の踏面15Aに開口する開口溝幅をWSとする。
【0041】
また、周方向溝22は、図2に示すように、タイヤ赤道面CL上から外れた位置に設けられる。そして、周方向溝22は、周方向細溝221をなす凸状陸部220の突出端220aおよび各溝壁22a,22bが、タイヤ赤道面CLに向かって凸となる円弧形状に形成される。従って、周方向細溝221は、タイヤ赤道面CLに向かって凸となる円弧形状を有する。
【0042】
幅方向溝23,24は、タイヤ幅方向で隣接する周方向溝22と周方向主溝21を接続する溝や、タイヤ幅方向で隣接する周方向溝22を接続する溝である。周方向溝22と周方向主溝21を接続する溝を第一幅方向溝23と言い、周方向溝22同士を接続する溝を、第二幅方向溝24と言う。幅方向溝23,24は、実施形態では、溝幅が0.5mm以上1.4mm以下、溝深さが6.0mm以上15.0mm以下とされる。
【0043】
第二幅方向溝24は、周方向溝22の短尺の幅方向細溝222同士を接続するようにタイヤ幅方向に沿って延びて形成される。ここで、タイヤ幅方向で隣接する各周方向溝22は、タイヤ周方向に延びる直線(例えば、タイヤ赤道面CL)を基に対称な形状をしており、かつ幅方向細溝222のタイヤ幅方向の位置がタイヤ周方向でずれて配置される。従って、幅方向細溝222同士を接続する第二幅方向溝24は、タイヤ幅方向に対して傾斜するように配置される。また、第二幅方向溝24は、その延在方向に沿って波状に形成される。また、第二幅方向溝24は、タイヤ周方向で1つ置きの幅方向細溝222に連通する。なお、周方向溝22が、例えば3本がタイヤ幅方向で隣接する場合、タイヤ幅方向中央の周方向溝22とタイヤ幅方向の一方の周方向溝22とを接続する第二幅方向溝24と、タイヤ幅方向中央の周方向溝22とタイヤ幅方向の他方の周方向溝22とを接続する第二幅方向溝24とは、タイヤ幅方向に対する傾斜が逆向きに配置するように構成される。
【0044】
第一幅方向溝23は、周方向溝22の短尺の幅方向細溝222と周方向主溝21を接続するようにタイヤ幅方向に沿って延びて形成される。第一幅方向溝23は、タイヤ幅方向に対して傾斜するように配置される。また、第一幅方向溝23は、その延在方向に沿って波状に形成される。第一幅方向溝23は、自身が連通する周方向溝22に連通した第二幅方向溝24に対してタイヤ幅方向に対する傾斜が逆向きに配置するように構成される。
【0045】
また、第一幅方向溝23および第二幅方向溝24が連通する幅方向細溝222は、第一幅方向溝23および第二幅方向溝24が連通する端部が、周方向細溝221よりも突出する突出端222aを有する。即ち、第一幅方向溝23および第二幅方向溝24は、幅方向細溝222の突出端222aに連通する。
【0046】
上述した実施形態の空気入りタイヤ1は、その特徴として、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って連続して延びタイヤ幅方向に隣接される複数の周方向溝22と、複数の周方向溝22によってタイヤ幅方向で区画されてタイヤ周方向に沿って連続して延びる3列以上のリブ状陸部311,312と、を備え、周方向溝22は、いずれかの溝壁22a,22bから溝内側に突出してリブ状陸部311,312と踏面15Aが連続し、タイヤ周方向において各溝壁22a,22bから交互に突出する凸状陸部220と、凸状陸部220の突出端220aと溝壁22a,22bとの間に形成されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向細溝221、および各凸状陸部220の間に形成されてタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向細溝222からなる踏面細溝と、を有し、周方向細溝221の開口溝幅WLが、0.5mm以上3.0mm以下の範囲である。
【0047】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ幅方向に隣接する複数の周方向溝22について、各溝壁22a,22bからタイヤ周方向で交互に突出し、リブ状陸部311,312と踏面15Aが連続する凸状陸部220を備えることで、タイヤ接地時に各溝壁22a,22bと凸状陸部220とが共に支え合い、リブ状陸部311,312の剛性を向上して転がり抵抗を抑えられるため、低燃費性能の向上が期待できる。この空気入りタイヤ1は、踏面細溝をなす凸状陸部220の突出端220aと溝壁22a,22bとの間の周方向細溝221の開口溝幅WLを0.5mm以上3.0mm以下の範囲とすること、リブ状陸部311,312の剛性を向上できる。その一方で、この空気入りタイヤ1は、踏面細溝をなす周方向細溝221および幅方向細溝222を有することで、排水性能を確保できる。この結果、実施形態の空気入りタイヤ1は、低燃費性能とウェット制動性能を両立できる。
【0048】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、幅方向細溝222の開口溝幅WSが、0.5mm以上7.0mm以下の範囲である。
【0049】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向において各溝壁22a,22bから交互に突出する凸状陸部220のタイヤ周方向の間の幅方向細溝222の開口溝幅WSを、周方向細溝221の開口溝幅WL以上とすることで、排水性能を向上でき、低燃費性能とウェット制動性能をより顕著に両立できる。
【0050】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向溝22の間で形成されるリブ状陸部311が、タイヤ赤道面CL上に位置する。
【0051】
この空気入りタイヤ1によれば、リブ状陸部311をタイヤ赤道面CL上に位置する、つまり、凸状陸部220および踏面細溝221,222を有する周方向溝22をタイヤ赤道面CLから外してそのタイヤ幅方向両側に配置することで、タイヤ赤道面CLに対して対称な配置とし、偏摩耗の抑制を図ることができる。
【0052】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、図4および図5に示すように、タイヤ接地時に少なくとも周方向細溝221が閉口し、周方向溝22を境に隣り合う各リブ状陸部311,312が踏面15Aにおいて連なる。
【0053】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ接地時の溝面積を減らし、周方向溝22を有する部分を陸部の集合体の接地面とすることで、転がり抵抗を抑え、低燃費性能を向上できる。
【0054】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、踏面細溝は、長尺の周方向細溝221と短尺の幅方向細溝222とが交互に連なったジグザグ形状を有し、周方向細溝221の開口溝幅WLと、幅方向細溝222の開口溝幅WSとが、0.1≦WL/WS<1.0の関係を満たし、図4および図5に示すように、タイヤ接地時に周方向細溝221のみが閉口する。
【0055】
この空気入りタイヤ1によれば、周方向細溝221を長尺とし、幅方向細溝222を短尺とすることで、幅方向成分の溝面積を減らし、低燃費性能を向上できる。しかも、この空気入りタイヤ1によれば、幅方向細溝222の開口溝幅WSを周方向細溝221の開口溝幅WLよりも大きくし、タイヤ接地時に短尺の幅方向細溝222が閉じないため、低燃費性能を維持しつつ、接地時の排水性を確保することができる。
【0056】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向溝22は、溝底22cからの溝深さD2の30%以上70%以下の範囲においてタイヤ周方向視で貫通して形成される空隙部22dを有する。
【0057】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向視で重なり合う凸状陸部220の重なりが途切れる空隙部22dを摩耗の中期に設定することで、摩耗中期以降のウェット制動性を確保できる。
【0058】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向溝22の溝壁22a,22bの仮想線と、溝壁22a,22bから突出する凸状陸部220の踏面15Aとのなす角度θが鋭角であり、溝壁22a,22bの仮想線から凸状陸部220の突出端220aまでの踏面15Aでのタイヤ幅方向距離Waと、周方向溝22の溝深さD2の50%の位置でのタイヤ幅方向距離Wbとが、0.1<Wb/Wa<0.6の関係を満たす。
【0059】
この空気入りタイヤ1によれば、溝壁22a,22bから突出する凸状陸部220の踏面15Aとのなす角度θを鋭角とし、タイヤ幅方向距離Wa,Wbの比率を規定することで、凸状陸部220の剛性を摩耗中期まで効果的に保つことができる。
【0060】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向溝22は、溝底22cからの所定溝深さの範囲においてタイヤ周方向視で貫通して形成される空隙部22dを有し、周方向溝22の溝壁22a,22bの仮想線から突出する凸状陸部220の突出端220aまでの踏面15Aでのタイヤ幅方向距離Waと、空隙部22dにおける最大タイヤ幅方向距離Wcとが、0.6<Wc/Wa<0.9の関係を満たす。
【0061】
この空気入りタイヤ1によれば、溝底22c側の空隙部22dのタイヤ幅方向距離Wc幅を、踏面15Aでの凸状陸部220のタイヤ幅方向距離Waに対して上記関係とすることで、摩耗後のウェット制動性能が確保できる。
【0062】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向溝22は、凸状陸部220の突出端220aに対向する溝壁22a,22bと踏面15Aとの交差部分に面取部22eを有する。
【0063】
この空気入りタイヤ1によれば、面取部22eを設けることで、陸部剛性を確保しつつ、ウェット制動性の向上が期待できる。
【0064】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、複数の周方向溝22のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延び、摩耗進行に従って直線状から波状に変化する周方向主溝21を有し、周方向細溝221の開口溝幅WLと、周方向主溝21の開口溝幅W1とが、0.1<WL/W1<0.4の関係を満たす。
【0065】
この空気入りタイヤ1によれば、周方向細溝221の開口溝幅WLと上記の関係を満たす周方向主溝21を設けることで、ウェット制動性能が確保できる。しかも、この空気入りタイヤ1によれば、摩耗進行に従って周方向主溝21の平面視溝形状が波状となるように変化させることで、陸部の剛性を高め、低燃費性能の向上が期待できる。
【0066】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部に、複数の周方向溝22のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝21と、幅方向細溝222と周方向主溝21とを接続する第一幅方向溝23と、を有する。
【0067】
この空気入りタイヤ1によれば、周方向溝22とそのタイヤ幅方向外側の周方向主溝21とを繋ぐ第一幅方向溝23を設けることで、さらなるウェット制動性の向上が期待できる。
【0068】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部に、タイヤ幅方向で隣り合う各周方向溝22において、互いの幅方向細溝222を接続する第二幅方向溝24を有する。
【0069】
この空気入りタイヤ1によれば、周方向溝22同士を繋ぐ第二幅方向溝24を設けることで、さらなるウェット制動性の向上が期待できる。
【0070】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向溝22は、タイヤ赤道面CL上から外れた位置に設けられ、周方向細溝221は、タイヤ赤道面CLに向かって凸となる円弧形状を有する。
【0071】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ赤道面CLを境にした周方向溝22同士の周方向細溝221を円弧形状として互いに凸を沿わせることで、周方向溝22同士の間のリブ状陸部311の剛性を高めることができ、低燃費性能の向上が期待できる。
【0072】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部に、複数の周方向溝22のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝21と、3枚以下の構造のベルト部材14を有し、周方向溝22の溝底22cからタイヤ径方向最外側のベルト143までのタイヤ径方向距離Dと、周方向主溝21の溝底からタイヤ径方向最外側のベルト143までのタイヤ径方向距離dとが、0.8<D/d<1.3の関係を満たす。
【0073】
この空気入りタイヤ1によれば、凸状陸部220により、周方向溝22の溝内への石の侵入、およびストンドリリング防止が期待でき、このため、ベルト部材14において保護層のベルト材が不要となり、タイヤの軽量化が期待できる。しかも、この空気入りタイヤ1によれば、溝底からベルト部材までの距離D,dを同等とすることで、トレッド部のタイヤ幅方向の歪差を低減し、耐偏摩耗性能の向上が期待できる。
【0074】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド部に、タイヤ周方向に対して0°以上2°以下の角度の線材を有するベルト142を有する。
【0075】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ周方向に対する角度が0°以上2°以下の線材を有するベルト142によってタイヤ周方向の剛性を効果的に高め、ベルト枚数を減らしても(例えば3枚以下)タイヤ強度を確保することができる。
【0076】
ところで、本実施形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤ1について説明した。この空気入りタイヤ1は、空気、窒素などの不活性ガス、およびその他の気体を充填することができる。しかし、本実施形態に記載された空気入りタイヤ1のトレッドパターンの構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤ、ソリッドタイヤなどが挙げられる。
【実施例0077】
図6から図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、従来例の空気入りタイヤと、実施形態に係る実施例の空気入りタイヤと、について行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、低燃費性能、耐石噛み性能、ウェット制動性能、および耐偏摩耗性能についての試験を行った。
【0078】
低燃費性能の評価試験は、11R22.5のタイヤサイズの空気入りタイヤ(試験タイヤ)を重荷重車両(2-DD(トラクターヘッド))に装着し、ECE R117-02(ECE Regulation No.117 Revision 2)に準拠した試験条件下にて、新品時の転がり抵抗係数(試験タイヤへの荷重に対する転がり抵抗の比率)が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0079】
耐石噛み性能の評価試験は、上記タイヤサイズの試験タイヤを上記重荷重車両に装着し、ダート路面を20km/hの速度で40km走行後、溝に挟んだ石の数が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0080】
ウェット制動性能の評価試験は、上記タイヤサイズの試験タイヤを上記重荷重車両に装着し、水深1mmのウェット路面で40km/hの速度で走行しブレーキ後の制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が95以上であるほど好ましい。
【0081】
耐偏摩耗性能の評価試験は、上記タイヤサイズの試験タイヤを上記重荷重車両に装着し、乾燥したアスファルト舗装路面を80000km走行後に偏摩耗の発生度合いが測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0082】
従来例の空気入りタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に延びてタイヤ幅方向に2本並ぶ周方向溝を有し、当該周方向溝に実施形態の凸状陸部に相当する構成を有するが、周方向細溝に相当する溝や幅方向細溝に相当する規定を満たしていない。
【0083】
実施例の空気入りタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に延びてタイヤ幅方向に2本並ぶ周方向溝を有し、当該周方向溝に実施形態の凸状陸部に相当する構成を有し、周方向細溝や幅方向細溝の規定を満たしている。
【0084】
実施例の空気入りタイヤの具体的な規定を満たす各寸法は、金型寸法において以下のとおりである。
・周方向溝の溝深さD2は、16.7mmであり、溝幅W2は、9.1mmである。
・周方向細溝の溝幅WLは、1.5mmである。
・幅方向細溝の溝幅WSは、2.8mmである。
・WL/WSは、0.53である。
・Wb/Waは、0.28である。
・Wc/Waは、0.68である。
・周方向主溝の溝深さD1は、16.7mmであり、溝幅W1は、13.0mmである。
・WL/W1は、0.12である。
・D/dは、1.00である。
【0085】
そして、試験結果に示すように、本実施例の空気入りタイヤは、従来例に対して低燃費性能、耐石噛み性能、ウェット制動性能、および耐偏摩耗性能が改善されていることが分かる。
【0086】
本開示は、以下の発明を含む。
[発明1]
トレッド部に、
タイヤ周方向に沿って連続して延びタイヤ幅方向に隣接される複数の周方向溝と、
複数の前記周方向溝によってタイヤ幅方向で区画されてタイヤ周方向に沿って連続して延びる3列以上のリブ状陸部と、
を備え、
前記周方向溝は、
溝壁から溝内側に突出して前記リブ状陸部と踏面が連続し、タイヤ周方向において各前記溝壁から交互に突出する凸状陸部と、
前記凸状陸部の突出端と前記溝壁との間に形成されてタイヤ周方向に沿って延びる周方向細溝、および各前記凸状陸部の間に形成されてタイヤ幅方向に沿って延びる幅方向細溝からなる踏面細溝と、
を有し、
前記周方向細溝の開口溝幅WLが、0.5mm以上3.0mm以下の範囲である、
タイヤ。
[発明2]
前記幅方向細溝の開口溝幅WSが、0.5mm以上7.0mm以下の範囲である、
発明1に記載のタイヤ。
[発明3]
前記周方向溝の間で形成される前記リブ状陸部が、タイヤ赤道面上に位置する、
発明1または2に記載のタイヤ。
[発明4]
タイヤ接地時に少なくとも前記周方向細溝が閉口し、前記周方向溝を境に隣り合う各前記リブ状陸部が前記踏面において連なる、
発明1から3のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明5]
前記踏面細溝は、長尺の前記周方向細溝と短尺の前記幅方向細溝とが交互に連なったジグザグ形状を有し、
前記周方向細溝の開口溝幅WLと、前記幅方向細溝の開口溝幅WSとが、0.1≦WL/WS<1.0の関係を満たし、タイヤ接地時に前記周方向細溝のみが閉口する、
発明1から4のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明6]
前記周方向溝は、溝底からの溝深さの30%以上70%以下の範囲においてタイヤ周方向視で貫通して形成される空隙部を有する、
発明1から5のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明7]
前記周方向溝の溝壁の仮想線と、当該溝壁から突出する前記凸状陸部の前記踏面とのなす角度が鋭角であり、
前記溝壁の仮想線から前記凸状陸部の前記突出端までの前記踏面でのタイヤ幅方向距離Waと、前記周方向溝の溝深さ50%の位置での前記凸状陸部のタイヤ幅方向距離Wbとが、0.1<Wb/Wa<0.6の関係を満たす、
発明1から6のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明8]
前記周方向溝は、溝底からの所定溝深さの範囲においてタイヤ周方向視で貫通して形成される空隙部を有し、
前記周方向溝の溝壁の仮想線から突出する前記凸状陸部の前記突出端までの前記踏面でのタイヤ幅方向距離Waと、前記空隙部における最大タイヤ幅方向距離Wcとが、0.6<Wc/Wa<0.9の関係を満たす、
発明1から7のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明9]
前記周方向溝は、前記凸状陸部の前記突出端に対向する溝壁と踏面との交差部分に面取部を有する、
発明1から8のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明10]
複数の前記周方向溝のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延び、摩耗進行に従って直線状から波状に変化する周方向主溝を有し、
前記周方向細溝の開口溝幅WLと、前記周方向主溝の開口溝幅W1とが、0.1<WL/W1<0.4の関係を満たす、
発明1から9のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明11]
前記トレッド部に、
複数の前記周方向溝のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝と、
前記幅方向細溝と前記周方向主溝とを接続する第一幅方向溝と、
を有する、
発明1から10のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明12]
前記トレッド部に、
タイヤ幅方向で隣り合う各前記周方向溝において、互いの前記幅方向細溝を接続する第二幅方向溝を有する、
発明1から11のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明13]
前記周方向溝は、タイヤ赤道面上から外れた位置に設けられ、
前記周方向細溝は、前記タイヤ赤道面に向かって凸となる円弧形状を有する、
発明1から12のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明14]
前記トレッド部に、
複数の前記周方向溝のタイヤ幅方向両外側にてタイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝と、
3枚以下の構造のベルト部材を有し、
前記周方向溝の溝底からタイヤ径方向最外側のベルトまでのタイヤ径方向距離Dと、前記周方向主溝の溝底からタイヤ径方向最外側のベルトまでのタイヤ径方向距離dとが、0.8<D/d<1.3の関係を満たす、
発明1から13のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明15]
前記トレッド部に、
タイヤ周方向に対して0°以上2°以下の角度の線材を有するベルトを有する、
発明1から14のいずれか1つに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0087】
1 空気入りタイヤ(タイヤ)
14 ベルト部材
15 トレッドゴム(トレッド部)
15A 踏面
21 周方向主溝
22 周方向溝
22a,22b 溝壁
22c 溝底
22d 空隙部
22e 面取部
23 第一幅方向溝
24 第二幅方向溝
142 0度ベルト(ベルト)
220 凸状陸部
220a 突出端
221 周方向細溝
222 幅方向細溝
311,312 リブ状陸部
CL タイヤ赤道面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8