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2025-55564機能性二軸延伸ポリプロピレンシート、その製造方法、及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025055564
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】機能性二軸延伸ポリプロピレンシート、その製造方法、及び成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20250401BHJP
【FI】
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023164917
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000239138
【氏名又は名称】株式会社エフピコ
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮大
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK10A
4F100AK51A
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA08C
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EC03
4F100EJ38B
4F100EJ38C
4F100HB31A
4F100HB31B
4F100JA04B
4F100JA04C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加飾性に代表される機能性付与層の接着性に優れ、かつ、剛性と靭性に優れた二軸延伸ポリプロピレン積層シート及びその成形品を提供する。
【解決手段】機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを、前記(x1)層及び(x2)層が接するように重ね合わせた多層フィルム(X)を、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)の少なくとも一方の表面に、前記前記(β)中の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが接する様に積層した積層体とし、これを加熱融着させてなることを特徴とする機能性二軸延伸ポリプロピレンシート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、
機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを、
前記(x1)層及び(x2)層が接するように重ね合わせた多層フィルム(X)を
二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)の少なくとも一方の表面に、前記前記(β)中の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが接する様に積層した積層体とし、これを加熱融着させてなることを特徴とする機能性二軸延伸ポリプロピレンシート。
【請求項2】
前記樹脂フィルム(α)が、樹脂フィルムの一方の表面に、機能発現層(x1)として加飾層を有するものであって、かつ、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)が、機能発現層(x2)として加飾層を有するものである請求項1記載の機能性二軸延伸ポリプロピレンシート。
【請求項3】
前記機能発現層(x1)が、ウレタン系インキ又はハロゲン化ポリオレフィン系インキの印刷層であり、かつ、機能発現層(x2)が、ウレタン系インキ又はハロゲン化ポリオレフィン系インキの印刷層である請求項2記載の機能性二軸延伸ポリプロピレンシート。
【請求項4】
前記樹脂フィルム(α)を構成する樹脂フィルムが、ポリプロピレンフィルムである請求項3記載の機能性二軸延伸ポリプロピレンシート。
【請求項5】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)が、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層又は酸基含有ポリオレフィン系樹脂からなるc層とから構成され、かつ、該b層又はc層上に印刷層が形成されている請求項4記載の機能性二軸延伸ポリプロピレンシート。
【請求項6】
二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)が、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層とが交互に積層された構造を有する多層シート(Y2)である請求項5記載の多層シート。
【請求項7】
前記多層シート(Y2)が、前記a層を構成する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)と、その少なくとも一方の表面に前記b層を構成する二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)が積層された多層二軸延伸フィルム(y1)を複数毎重ね熱融着することによって形成されるものであり、かつ、
該多層二軸延伸フィルム(y1)におけるMD方向の延伸倍率が2.8~8倍、TD方向の延伸倍率が2.5~12倍のものである、請求項6記載の多層シート。
【請求項8】
前記多層二軸延伸フィルム(y1)が、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の両表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を含むBAB型フィルムであり、かつ、その厚み30~400μmの2種3層フィルムであり、
前記多層シート(Y2)は、前記多層二軸延伸フィルム(y1)を2~60枚積層してなる、請求項7記載の多層シート。
【請求項9】
機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)と、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)とを、前記(x1)層及び(x2)層が接するように、かつ、前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)の少なくとも一方の表面に、前記(β)中の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが接する様に積層した積層体とし、これを加熱融着させることを特徴とする機能性二軸延伸ポリプロピレンシートの製造方法。
【請求項10】
前記機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、前記機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)と、前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)とを重ね合わせ、多層シート前駆体(pMS)を形成する準備工程と、
前記多層シート前駆体(pMS)を加熱しながら、面で加熱プレスするプレス工程と、
を含む、請求項9記載の機能性二軸延伸ポリプロピレンシートの製造方法。
【請求項11】
前記多層シート前駆体(pMS)が、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の両表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を含むBAB型フィルムであって、かつ、その厚み30~400μmの2種3層フィルム多層二軸延伸フィルム(y1)を2~60枚積層した上に、前記機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、前記機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを重ね合わせたものである請求項10記載の機能性二軸延伸ポリプロピレンシートの製造方法。
【請求項12】
請求項1~8の何れか一つに記載の機能性二軸延伸ポリプロピレンシートの成形品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性フィルムが貼合された二軸延伸ポリプロピレン積層シート、及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加飾フィルムを用いた塗装レス化の開発が進んでおり、ポリプロピレンを基材としその表面に印刷により加飾層を設けた加飾フィルムが、ポリプロピレンが安価、成形性、軽量、かつリサイクル容易である点から着目されている(例えば特許文献1参照)。かかるポリプロピレン基材を用いた加飾フィルムは、通常、基材層を金型面に設置し、加飾層側にインジェクション方式で樹脂を流し込む所謂インモールド成形品として使用されている。
【0003】
他方、インジェクションによる成形品よりもより剛性が高く、靭性に優れるポリプロピレン成形品を製造する技術として、高融点ポリプロピレンフィルムの両表層に低融点ポリプロピレンフィルムが位置する2種3層の延伸ポリプロピレンフィルムを複数枚積層し、加熱貼合することにより成形可能な積層シートとする技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、斯かる二軸延伸ポリプロピレンフィルムを複数積層しそれらを熱融着させた二軸延伸ポリプロピレン積層シートに意匠性を付与すべく、例えば、特許文献1に記載されているような加飾フィルムの印刷面を前記積層シートに接するように配して熱融着させても、印刷層と二軸延伸ポリプロピレン積層シート表面との接着性に劣ることから、塗装レスに寄与する意匠性を付与することが困難なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第677095号公報
【特許文献2】国際公開第2020/75755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明が解決しようとする課題は、加飾性に代表される機能性付与層の接着性に優れ、かつ、剛性と靭性に優れた二軸延伸ポリプロピレン積層シート及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、加飾性に代表される機能性付与層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムの2枚以上を機能性付与層同士が接するように基材を構成する複数枚の二軸延伸ポリプロピレンフィルムと積層し、熱融着させることにより機能性付与層同士の密着性が改善され、機能性付与層に起因する機能発現と、剛性、靭性とを兼備した二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを、前記(x1)層及び(x2)層が接するように重ね合わせた多層フィルム(X)を
二軸延伸ポリプロピレンシート又はその前駆体(Y)の少なくとも一方の表面に、前記前記(I-B)中のポリプロピレンフィルムが接する様に積層した積層体とし、これを加熱融着させてなることを特徴とする機能性二軸延伸ポリプロピレンシートに関する。
【0009】
本発明は、更に、前記した機能性二軸延伸ポリプロピレンシートの成形品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加飾性に代表される機能性付与層の接着性に優れ、かつ、剛性と靭性に優れた二軸延伸ポリプロピレン積層シート及びその成形品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、樹脂フィルム(α)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)、及び二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)が積層される状態を示す概念図である。
図2図2は、樹脂フィルム(α)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)、及び複数枚の多層フィルム(y1)が積層される状態を示す概念図である。
図3図3は、本発明の貼合前後の状態を示す概念図である。
図4図4は、枚葉式真空貼合装置の断面を示す概念図である。
図5図5は、連続加圧成形機構を持つ加圧装置を示す図である。
図6図6は、本開示の連続加圧成形機構の一例として、複数の熱的に区画されたゾーンを持つ平面状金型を示す図である。
図7図7は、実施例5で得られた積層シートLOP1の外観を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の機能性二軸延伸ポリプロピレンシートは、前記した通り、機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを、前記(x1)層及び(x2)層が接するように重ね合わせた多層フィルム(X)を 二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)の少なくとも一方の表面に、前記(β)中のポリプロピレンフィルムが接する様に積層した積層体とし、これを加熱融着させてなるものである。
【0013】
ここで、樹脂フィルム(α)に設けられた機能発現層(x1)及び二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)に設けられた機能発現層(x2)は、例えば、加飾層、接着層、ガスバリア層など各種の機能を発現する層であればよく、各基材に対して印刷又は塗工することによって形成することができる。即ち、樹脂フィルム(α)に機能発現層(x1)を印刷又は塗工によって形成させた後に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに貼合しようとしても二軸延伸ポリプロピレンフィルムが難接着性であるために接着強度に擦れた積層体は得られ難い。そこで、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)側にも印刷又は塗工によって機能発現層(x2)を設け、機能発現層(x1)表面と機能発現層(x2)表面とが接するように融着させることにより接着性に優れた積層体となる。
【0014】
斯かる機能発現層(x1)及び機能発現層(x2)が接着層である場合には、樹脂フィルム(α)としてポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等を用いることにより、異種基材フィルム同士を接着させることが可能となる他、樹脂フィルム(α)として紫外線カットフィルムを用いれば、機能性二軸延伸ポリプロピレンシートに対するUV光透過量を低減できる。また、例えば偏光板を用いて反射防止性能を付与させることもできる。本発明では、特に、機能発現層(x1)及び機能発現層(x2)が加飾層である場合、当該加飾層表面は表面エネルギーが小さく相互に接着させることができ、本発明の効果がより顕著なものとなる。
【0015】
加飾層を形成するには、加飾用インキをグラビア印刷、スクリーン印刷等定法により印刷するかあるいはシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の各種印刷方法等;フローコート法、ドロップキャスト法、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ディップコート法およびダイコート法等の各種塗工方法によって形成することができる。
【0016】
この際、印刷または塗工を施す前に、樹脂フィルム(α)及び/又は二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)の表面を1)コロナ処理を行う、2)アンカーコート層を設ける、または3)コロナ処理後のアンカーコート層を設けることが印刷または塗工面の密着強度が良好なものとなる点から好ましい。
【0017】
加飾用インキとしては、ポリプロピレンに対する密着性に優れたものが好ましく、例えば、ポリエーテル型ウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステル型ウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステル型ポリウレタンポリウレア、酸基含有ポリエステルポリウレタンポリウレア、スチレン-アクリル樹脂変性ポリエーテル型ウレタン樹脂等のウレタン樹脂;
塩素化ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン、アクリル酸マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレン;前記ウレタン樹脂と変性ポリプロピレンとの混合樹脂が挙げられる。
【0018】
これらのインキ用樹脂は、溶剤系であっても、水溶性乃至水分散性のものであってもよいが、特に環境負荷軽減及び安全性の点から、アルコール系モノソルベント、水性乃至水分散型のものが好ましい。
アルコール系モノソルベント用のインキ用樹脂としては、ポリエーテルポリエステル型ポリウレタンポリウレアが挙げられ、水溶性乃至水分散型のインキ用樹脂としては、ポリエーテル型ウレタン樹脂、スチレン-アクリル樹脂変性ポリエーテル型ウレタン樹脂、酸基含有ポリエステルポリウレタンポリウレア等が挙げれる。特に、ポリプロピレン基材との密着性が良好なものとなる点からポリエーテル型ウレタン樹脂、スチレン-アクリル樹脂変性ポリエーテル型ウレタン樹脂に変性ポリプロピレンを一部併用したものが好ましく、更に、固形分比率で10質量%以下の割合でエチレン-酢酸ビニル共重合を併用してもよい。
【0019】
ここで、アルコール系モノソルベントのインキを調整する際に用いられるアルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。これらの中でも、特に、速乾性、臭気などの点から、エタノール、1-プロパノール、2 - プロパノールが好ましい。
【0020】
次に、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)は、特に限定されるものではないが、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層又は酸基含有ポリオレフィン系樹脂からなるc層とから構成されたものであることが、機能発現層(x2)や二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)と該b層又はc層と接着させた際に、優れた接着性を発現する点から好ましい。とりわけ、機能発現層(x2)が加飾層であったときにインキがb層又はc層と良好に接着することとなり好ましく、特に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、その両表層に融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層を有するものであることが印刷層との密着性に優れる点から好ましい。
【0021】
ここで、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)が、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層又は酸基含有ポリオレフィン系樹脂からなるc層とから構成されたものである場合、多層二軸延伸フィルム(β)は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)と二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)とをラミネートによって、或いは、共押出法によって製造することができる。なかでも層間の密着性が良好なものとなり、また、表面平滑性も良好なものとなる点から、共押出法で製造することが好ましい。
【0022】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)は、該フィルム製造時のMD方向の延伸倍率が2.8~8倍、TD方向の延伸倍率が2.5~12倍のものであることが好ましく、一方、前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)は、MD方向の延伸倍率が2.8~8倍、TD方向の延伸倍率が2.5~12倍のものであることが、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)と貼合した後に、得られる積層シートの剛性が飛躍的に向上する他、適度な二次成形性を発現する点から好ましい。
【0023】
前記多層二軸延伸フィルム(β)を共押出法によって製造する場合には、多層二軸延伸フィルム(β)として、MD方向の延伸倍率が2.8~8倍であって、かつ、TD方向の延伸倍率が2.5~12倍であることが積層シートの剛性が良好なのとなる点から好ましく、更に、MD方向の延伸倍率が4~6倍であって、かつ、TD方向の延伸倍率が4~10倍のものが更に好ましい。
【0024】
また、前記多層二軸延伸フィルム(β)は、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の片表面のみに前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層した構造のBA型フィルム;前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)を2枚重ねて、その片表面のみに前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層した構造のBAA型フィルム;二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の両表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層した構造のBAB型フィルム;前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の片表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層、他方の表面に変性ポリプロピレン系樹脂フィルム(C)を積層したBAC型フィルム等が挙げられる。
【0025】
多層二軸延伸フィルム(β)は、さらに具体的には、例えば、厚み30μm以上100μm未満のBAB型の2種3層フィルム(β1)、或いは、厚み100~400μmのBAB型の2種3層フィルム(β2)が挙げられる。また、BAB型フィルム中のB/A/Bの厚み比率は、例えばB/A/B=2~20/96~60/2~20であること好ましいが、剛性を高める点からはできるだけA層の厚みを厚く確保することが望ましく、特にB/A/B=2~15/96~70/2~15であることが好ましい。
【0026】
また、本発明では、前記した樹脂フィルム(α)が二軸延伸ポリプロピレンフィルムである場合、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の片表面のみに前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層した構造のBA型フィルム;前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)を2枚重ねて、その片表面のみに前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層した構造のBAA型フィルム;二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の両表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層した構造のBAB型フィルム;前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の片表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を積層、他方の表面に変性ポリプロピレン系樹脂フィルム(C)を積層したBAC型フィルム等であることが好ましい。
特に、BA型フィルム、BAA型フィルムであることが機能発現層(x1)との接着性が良好であると同時に、特に加飾シートとした際の表面の光沢、平滑性、表面の剛性等が良好なものとなる点から好ましい。
また、BA型フィルム中のB/Aの厚み比率は、例えばB/A=2~20/98~80であること好ましいが、剛性を高める点からはできるだけA層の厚みを厚く確保することが望ましく、特にB/A=2~15/98~85であることが好ましい。
次に、BAA型フィルム中のB/A/Aの厚み比率は、例えばB/A/A=2~20/96~60/2~20であること、特にB/A/A=2~15/96~70/2~15であることが好ましい。
【0027】
なお、本発明では前記した、機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)の表面側に更に、樹脂フィルム(α)を一枚乃至複数枚積層してもよく、或いは後述する二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)を積層してもよい。樹脂フィルム(α)を複数枚積層する場合は、例えば2~10枚積層することが好ましい。斯かる場合、樹脂フィルム(α)はBAB型フィルムを複数枚積層し、その最表層にBA型フィルム又はBAA型フィルムをB層側が接着面となるように積層することが好ましい。この場合、樹脂フィルム(α)を構成するBAB型フィルムのB/A/Bの厚み比率は、例えばB/A/B=2~20/96~60/2~20であること、特にB/A/B=2~15/96~70/2~15であることが好ましい。
【0028】
ここで、樹脂フィルム(α)として、BA型フィルム、BAA型フィルムを用いる場合、フィルムAから構成されるa層が表層となるが、この場合、更にその表面にハードコート層を設けてもよい。
【0029】
本発明の積層シート(LOPシート)は、前記した通り、機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを、前記(x1)層及び(x2)層が接するように重ね合わせた多層フィルム(X)を二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)の少なくとも一方の表面に、前記(β)中の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが接する様に積層した構造を有するものである(図1参照)。
【0030】
ここで、樹脂フィルム(α)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを予め融着させて多層フィルム(X)を製造した後に、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)との接着に供してもよいが、樹脂フィルム(α)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)と二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)とを積層し、これらを同時に熱融着させる方法が、生産性が良好となるのみならず、得られるシートの均質性に優れ、面内の強度斑が小さくなる点から好ましい。
【0031】
多層フィルム(X)を積層させる相手となる、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)は、二軸延伸ポリプロピレンの単層シート、或いは二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層とが交互に積層された構造を有する多層フィルム(y1)を複数枚積層した多層シート(Y2)であることが多層フィルム(X)との接着性に優れる点から好ましく、特に多層シート(Y2)における層間密着性が良好なものとなる点から好ましい。
【0032】
ここで、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y2)を構成する多層フィルム(y1)は、
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層とが交互に積層された構造を有するものであることが好ましく、更に、 該多層二軸延伸フィルム(y1)におけるMD方向の延伸倍率が2.8~8倍、TD方向の延伸倍率が2.5~12倍のものである、ことが最終的に得られるシートの剛性や靭性に優れる点から好ましい。
【0033】
前記多層二軸延伸フィルム(y1)は、更に具体的には、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の両表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を含むBAB型フィルムであり、かつ、その厚み30~400μmの2種3層フィルムであることが好ましく、前記多層シート(Y2)は、前記多層二軸延伸フィルム(y1)を2~60枚積層してなるものが、やはり多層シートの層間密着性が良好であり、シート剛性に優れたものとなる点から好ましい。
【0034】
このように前記多層シート(Y2)は、目的に応じて多層二軸延伸フィルム(y1)を、適宜選択、組み合わせて用いることにができるが、本発明では、下記に示す様にBAB型フィルムを複数毎重ねて、表層にフィルム(A)が表面に位置するようにBA型フィルム、BAA型フィルムを用いることが好ましい。
【0035】
AB/BAB/BAB/BAB/・・・/BAB/BAB/BAB/BA
AAB/BAB/BAB/BAB/・・・/BAB/BAB/BAB/BAA
【0036】
かかる多層二軸延伸フィルム(y1)は、例えば、BAB型フィルムは厚み30μm以上100μm未満の2種3層フィルム(y1―1)、或いは、厚み100~400μmの2種3層フィルム(y1-2)が挙げられる。
また、BAB型フィルム中のB/A/Bの厚み比率は、例えばB/A/B=2~20/96~60/2~20であること好ましいが、剛性を高める点からはできるだけA層の厚みを確保することが望ましく、特にB/A/B=2~15/96~70/2~15であることが好ましい。
【0037】
多層二軸延伸フィルム(y1)が厚み30μm以上100μm未満の2種3層フィルム(y1-1)である場合、30~60枚積層することが好ましく、他方、多層二軸延伸フィルム(y1)が厚み100~400μmの2種3層フィルム(y1-2)である場合、2~20枚積層することが好ましい。
【0038】
〔二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)〕
本発明の積層シートの製造方法に用いる二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)は、ポリプロピレン系重合体または当該ポリプロピレン系重合体と結晶核剤その他の添加剤を含むポリプロピレン組成物を公知の方法で溶融混錬後、成膜し、次いで二軸延伸して得ることができる。
例えば、前記ポリプロピレン等を押出して無延伸シートを得て、当該シートを二軸延伸して二軸延伸フィルムを得ることができるが、前記した通り、本発明では、他の層と共に共押出法にて製膜、延伸することが好ましい。
【0039】
ここで用いるポリプロピレン系重合体は、具体的には、プロピレン単独重合体、1重量%以下のC2~C10-αオレフィン(ただしC3-αオレフィンを除く)から選択される少なくとも1種含むモノマー成分を重合してなるプロピレンランダム共重合体、及びこれらの混合物から構成されるものが挙げられる。
【0040】
これらの中でも特に、エチレンを1重量%以下で含んでなるモノマー成分を重合してなるプロピレンランダム共重合体(以下、単に「プロピレンランダム共重合体」と略記することがある。)であることが、シートに高度な剛性や靭性を保持しつつ優れた延伸性を付与できる点から好ましい。
【0041】
ここで、ポリプロピレン系重合体のMw/Mnは6~20なる比較的幅広い分子量分布を有することにより厚膜精度が良好なものとなる他、高度な剛性と高延伸性とを兼備させることができ、更に製膜が容易なものとなる点から好ましい。
【0042】
また、ポリプロピレン系重合体のキシレン不溶分の量は、96.5質量%を超え99.5質量%以下であることが好ましい。ポリプロピレンのキシレンに不溶な成分は、結晶性のあるアイソタクチック成分に相当する。これに対してポリプロピレン中に少量含まれるキシレンに可溶な成分は、結晶性のないアタクチック成分に相当し、キシレンに不溶な成分に比較して分子量も低い。また、ポリプロピレン系重合体のキシレン不溶分の量が96.5質量%を超え99.5質量%以下であるとは、ポリプロピレン系樹脂材料の結晶性成分が96.5質量%を超え99.5質量%以下であるに等しい。また、シートを熱成形して得られた(二次)成形品の剛性と耐熱性、特に剛性が良好なものとなる点からキシレン不溶分の量は97.0質量%を超え99.5質量%以下の範囲であることがとりわけ好ましい。
【0043】
また、ポリプロピレン系重合体の結晶性成分は、立体規則性(mmmm)が97.5~99.5%であることが好ましい。mmmmが97.5%未満では、特にポリプロピレン組成物からなるシートを熱成形して得られた(二次)成形品の剛性と耐熱性、特に耐熱性が低下する。
【0044】
ポリプロピレン系重合体として、前記プロピレンランダム共重合体を用いる場合、その原料モノマー成分中のエチレン含有量は、前記したシートの靭性や剛性を保持しつつも延伸性を高めることができる点から、0.1質量%以上1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%以上0.6質量%未満であることが好ましく、0.1質量%以上0.3質量%未満であることが特に好ましい。
【0045】
ここで、前記プロピレンランダム共重合体は、プロピレンにエチレンをランダム共重合させることにより透明性が向上するという特長も有する。更に、原料モノマー成分中のエチレン含有量が1質量%未満であることあら剛性に優れたものとなる。該エチレン含有量の下限は特に限定されず、0質量%超であるが、透明性の向上効果が充分に得られやすい点で0.1質量%以上が好ましい。
【0046】
ポリプロピレン系重合体のMFRは1~15g/10分であり、2~6g/10分が好ましい。該MFRが上記範囲内であるとポリプロピレン組成物をシート状に成形する際の成形性に優れる。
【0047】
本発明で用いるポリプロピレン系重合体は結晶核剤を含有することが透明性の点から好ましいが、本発明ではこの結晶核剤を通常よりも少量使用することにより、ヘイズが低く透明性を一層向上させることができる。
【0048】
ポリプロピレン組成物中のエチレン含有プロピレン系重合体の100質量部に対する結晶核剤の含有量は0.18質量部未満であることが好ましく、0.15質量部以下であることが特に好ましい。上記上限値未満であると優れた厚薄精度が得られ易く、強靭性、剛性を保持しながらも製膜性に優れたポリプロピレン組成物となる。ここで、結晶核剤の含有量の下限は特に限定されないが、透明性向上効果の点で0.01質量部以上が好ましい。
【0049】
本発明で用いるポリプロピレン組成物は、結晶化速度パラメータ(t1/2)が1秒を超えることが好ましく、2秒以上がより好ましい。結晶核剤の添加量を減少させると結晶化速度が低下して、(t1/2)が増大する傾向がある。この(t1/2)が上記下限値より大きいと、優れた厚薄精度が得られやすい。また、(t1/2)の上限は特に限定されないが、5秒以下程度であることが好ましい。
【0050】
[結晶核剤]
上記した結晶核剤の配合量は、ポリプロピレン100重量部に対して0重量部を超え1.0重量部以下、好ましくは0.05~0.5重量部である。結晶核剤とは樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して透明性を高めるために用いられる添加剤(透明結晶核剤)である。結晶核剤は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、ノニトール系結晶核剤、ソルビトール系結晶核剤、リン酸エステル系結晶核剤、トリアミノベンゼン誘導体結晶核剤、カルボン酸金属塩結晶核剤、およびキシリトール系結晶核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系結晶核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトールが挙げられる。ソルビトール系結晶核剤として、例えば、1,3:2,4-ビス-o-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトールが挙げられる。リン酸エステル系結晶核剤として、例えば、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リチウム塩系造結晶核剤が挙げられる。
【0051】
[その他の添加剤]
本発明で用いるポリプロピレン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤以外のその他の添加剤を含有させることができる。
その他の添加剤の例としては、酸化防止剤、中和剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、可塑剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料等のポリオレフィンに通常用いられる慣用の添加剤が挙げられる。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。
【0052】
[ポリプロピレン系重合体またはポリプロピレン組成物の調整]
以上詳述したポリプロピレン系重合体またはポリプロピレン組成物は、例えば特許第6845001号の製造例2乃至製造例7によって調整することができる。
【0053】
<二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)>
【0054】
本発明の積層シートの製造方法に用いる、融点110~180℃の二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)は、オレフィン系樹脂または当該オレフィン系樹脂と添加剤を含むオレフィン系樹脂組成物を公知の方法で二軸延伸して得ることができる。例えば、前記オレフィン系樹脂等を押出して無延伸シートを得て、当該シートを二軸延伸して二軸延伸フィルムを得ることができるが、前記した通り、本発明では、他の層と共に共押出法にて製膜、延伸することが好ましい。
【0055】
二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を構成するオレフィン系樹脂は、融点110~180℃のものである。ここで融点は、DSCを用いて30℃~230℃まで昇温速度10℃/分の条件にて測定された融点である。このような融点範囲であればA層を構成するポリプロピレンよりも十分に低い融点であるために、加熱プレスした際の融着性が良好なものとなる。斯かるオレフィン系樹脂は、具体的には、プロピレン単独重合体(HOMO);5重量%以下のC2~C10-αオレフィン(ただしC3-αオレフィンを除く)から選択される少なくとも1種のコモノマーを含むプロピレンランダム共重合体(RACO);あるいはHOMOまたはRACOを含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。コモノマー含有量が過度に少ないと第1の層との融着性が十分でない場合があり、過度に多いと多層シートの剛性が低下する場合がある。この観点から、コモノマー含有量は、好ましくは0重量%を超え4.5重量%以下である。コモノマーとしてはエチレン(C2-αオレフィン)が好ましい。第2の層を構成する重合体または樹脂組成物のMFR(230℃、荷重2.16kg)は限定されないが、好ましくは1~15g/10分、より好ましくは2~10g/10分、さらに好ましくは3~8g/10分である。
【0056】
上記オレフィン系樹脂等は、核剤を含んでいてもよいし、核剤を含まない樹脂組成物または重合体で構成されていてもよい。核剤を含む場合は、経済的な観点から、核剤の量は、第2の層を形成する重合体100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましい。したがって、二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)は、HOMOと核剤を含む樹脂組成物またはRACOと核剤を含む樹脂組成物で構成されることが好ましい。
【0057】
上記した二軸延伸オレフィン系樹脂フィルムの厚さは、一層あたり1~20μm、とりわけ2~10μmの範囲であることが好ましい。
【0058】
<変性オレフィン系樹脂フィルム(C)>
次に、変性オレフィン系樹脂フィルム(C)は、変性オレフィン系樹脂または当該オレフィン系樹脂と添加剤を含むオレフィン系樹脂組成物を公知の方法で、溶融混錬、成膜後、二軸延伸して得ることができる。例えば、前記変性オレフィン系樹脂等を押出して無延伸シートを得て、当該シートを二軸延伸して二軸延伸フィルムを得ることができるが、前記した通り、本発明では、他の層と共に共押出法にて製膜、延伸することが好ましい。
【0059】
二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を構成する変性オレフィン系樹脂は、例えばカルボキシル基、酸無水物基、スルフォン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、イミノ基、アミノ基などの各種官能基を分子構造中に有するポリプロピレンが挙げられ、特にカルボキシル基、酸無水物基、イミノ基を有するポリプロピレンが印刷層との接着性、或いは、その他部材との接着性に優れる点から好ましい。
【0060】
斯かる官能基含有変性オレフィンとしては、例えば、三井化学社製「アドマーフィルム QB515」、「アドマーフィルム QB550」、「アドマーフィルム QB515」、「アドマーフィルム QF500」、「アドマーフィルム QF551」、「アドマーフィルム QF580」、「アドマーフィルム QE840」、及び「アドマーフィルム QE060」などに代表される酸変性オレフィンが挙げられる。
【0061】
[機能性二軸延伸ポリプロピレンシートの製造方法]
以上詳述した機能性二軸延伸ポリプロピレンシートを製造する方法は、例えば、機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)(以下、単に「(x1)層を有する樹脂フィルム(α)」と略記することがある。)と、機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)(以下、単に「(x2)層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)」と略記することがある。)と、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)とを、前記(x1)層及び(x2)層が接するように、かつ、前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)の少なくとも一方の表面に、前記前記(β)中の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが接する様に積層した積層体とし、これを加熱融着させる、本発明の製造方法が挙げられる。
【0062】
ここで熱融着は、例えば110~170℃なる温度条件、1~40MPaの圧力条件にて融着させることができる。すなわち、斯かる温度条件および圧力条件で融着させることにより、機能発現層(x1)及び機能発現層(x2)の接着面が実質的にシームレスとなり、一体化した機能発現層を形成させることができる。更に具体的には、110~170℃、1~40MPaの温度圧力条件下に加熱溶着させた後、25~125℃、1~40MPaの温度・圧力条件、好ましくは、25~125℃、20~40MPaの温度・圧力条件にてエージング処理を行うことより(x1)層及び(x2)層の溶着による一体化及び均質性が良好なものなる点から好ましい。
【0063】
前記した本発明の製造方法は、例えば、
方法1:(x1)層を有する樹脂フィルム(α)と、(x2)層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを予め融着させて多層フィルム(X)を製造した後に、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)との接着に供する方法、
方法2:(x1)層を有する樹脂フィルム(α)と(x2)層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)と二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)とを積層し、これらを同時に熱融着させる方法、
が挙げられる。
これらの中でも、生産性が良好となるのみならず、得られるシートの均質性に優れ、面内の強度斑が小さくなる点から方法2が特に好ましい。
【0064】
ここで、方法1及び方法2において、前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)は、二軸延伸ポリプロピレンシートの単層シートであってもよいし、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるa層と、融点110~180℃のオレフィン系樹脂からなるb層とが交互に積層された構造を有する多層フィルム(y1)を複数枚積層した多層シート(Y2)であってもよい。
これらの中でも前記した通り、多層フィルム(y1)を複数枚積層した多層シート(Y2)であることが、多層フィルム(X)との接着性に優れる点から好ましく、とりわけ多層シート(Y2)における層間密着性が良好なものとなる点から好ましい。
【0065】
前記方法1における、多層フィルム(X)を製造した後に、二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)との接着させる方法としては、例えば、接着剤、ホットメルトなどの方法により接着させることができるが、多層フィルム(X)の接着面側にb層、及び二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)の接着面側にb層が位置するように構成し、110~170℃なる温度条件、1~40MPaの圧力条件にて熱融着させる方法が好ましい。
【0066】
次に、方法2としては、具体的には、前記機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)と、前記機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)と、前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)とを重ね合わせ、多層シート前駆体(pMS)を形成する準備工程と、
前記多層シート前駆体(pMS)を加熱しながら、面で加熱プレスするプレス工程と、
を必須の製造工程とする方法が挙げられる。
【0067】
ここで、前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)が、多層二軸延伸フィルム(y1)である場合には、あらかじめ該多層二軸延伸フィルム(y1)の複数枚を、面で加熱プレスするプレス工程によって融着させて二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)を一旦製造した後に、(x1)層を有する樹脂フィルム(α)及び(x2)層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)と重ね合わせて多層シート前駆体(pMS)を得て、次いで、更に、面で加熱プレスする方法(方法2-1)であってもよいが、生産性及び層間の融着性に優れシートの均一性が良好なものとなる点から、多層二軸延伸フィルム(y1)の所定枚数と、(x1)層を有する樹脂フィルム(α)と、(x2)層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを重ね合わせて多層シート前駆体(pMS)を得て、次いで、面で加熱プレスするプレス工程を行う方法(方法2-2)が好ましい。
【0068】
後者の方法2-2につき詳述するに、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の両表面に前記二軸延伸オレフィン系樹脂フィルム(B)を含むBAB型フィルムであって、かつ、その厚み30~400μmの2種3層フィルム多層二軸延伸フィルム(y1)を2~60枚積層した上に、(x1)層を有する樹脂フィルム(α)と、(x2)層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)とを重ね合わせて前記多層シート前駆体(pMS)を得、次いで、面で加熱プレスするプレス工程を行う方法が挙げられる。
【0069】
ここで、該多層二軸延伸フィルム(y1)は、MD方向の延伸倍率が2.8~8倍、TD方向の延伸倍率が2.5~12倍のものであることが最終的に得られるシートの剛性や靭性に優れる点から好ましい。
【0070】
なお、ここで本発明における多層シート前駆体(pMS)のサイズは、製造しようとする多層シートのサイズに合わせて、適宜選択することができる。
【0071】
また、多層二軸延伸フィルム(y1)を積層して多層シート前駆体(pMS)を得る際は、原料フィルムのMD方向/TD方向を揃えて積層してもよいし、互いに交差するように積層してもよいが、複数枚の多層二軸延伸フィルム(y1)をロール状態で連続加圧プレス機に取り付けてフィルム供給する場合には、MD方向/TD方向を揃えて積層することが好ましい。
【0072】
このようにして調整した多層シート前駆体(pMS)を面で加熱プレスする方法としては、
[方法2-2-A]
上下に面状の金属プレートを有する枚葉式真空貼合装置のチャンバー内の下側の金属プレート上に前記積層シート前駆体(pMS)を載置、チャンバー内を170Pa以下の真空度としつつ、加熱プレスし、プレス解放後、冷却用金属プレートで挟持する工程を経て本発明の積層シート(LOP)を製造する方法、及び
[方法2-2-B]
連続加圧装置を用いて、多層シート前駆体(pMS)を面状金型で加熱プレスし、次いで冷却する工程を有する連続加熱加圧プレス法が挙げられる。
【0073】
ここで、前記した方法2-2-Aは、具体的には、例えば、図4に模式的に示すように、枚葉式真空貼合装置(200)のチャンバー(202)内に、前記多層シート前駆体(pMS)を、チャンバー内に配設された上下1対の熱板(204,205)の間に装着し、次いでチャンバー(202)を閉蓋した後、熱板(204,205)を所定温度に加熱しつつその内部を減圧、その後油圧シリンダー(203)から加圧し、所定時間保持し、次いで、内部減圧を常圧に戻すと共に、シリンダー圧力を開放して、積層シート(LOP)を取り出し、次いで、速やかに冷却装置に移し、上下一対の冷却用金属板にて挟持し、常温下で冷却する方法が挙げられる。
【0074】
多層シート積層体(pMS)はそのまま枚葉式真空貼合装置のチャンバー内にセットしてもよいが、図4に示すようにその上下面をステンレス板(s)で挟持した状態で、加熱及び加圧に供することが得られる積層シート(LOP)の表面状態が良好となる点から好ましい。ここで、フィルム積層体を挟持するステンレス板(s)は厚み0.3~1mmであることが好ましい。更に、図4に示すように上側熱板の直下にダイヤフラム(d)を介在させてもよく、また、熱板とステンレス板(s)との間に、熱板保護の目的でポリテトラフロロエチレンシート(pt)を介在させてもよい。斯かる枚葉式真空貼合装置の熱板は、設定温度が140~155℃であることが好ましく、油圧シリンダーの圧力は0.1~10MPaであることが好ましい。
【0075】
[連続加熱加圧プレス法]
次に、前記した方法2-2-Bは、連続加圧装置を用いて、多層シート前駆体(pMS)を連続的に面状金型で加熱プレスし、次いで冷却する工程を有する連続加熱加圧プレス法である。本発明では、得られる積層シートの層間の融着性、表面状態が優れ、かつ、該積層シートの面内の強度の斑が小さくなる点から2-2-Bの連続加熱加圧プレス法が好ましい。
【0076】
ここで、前記連続加圧装置は、多段の加熱ゾーンと冷却ゾーンとを有し、前記加熱ゾーンにおいて上下の面状金型で多層シート前駆体(pMS)を加熱プレスし、引き続き連続的に、冷却ゾーンにおいて上下の面状金型で多層シート前駆体(pMS)をプレスすることにより多層シートを連続的に製造することができる。即ち、前記加熱ゾーンにおいて上下の面状金型で多層シート前駆体(pMS)を加熱プレスし、引き続き連続的に、冷却ゾーンにおいて上下の面状金型で多層シート前駆体(pMS)をプレスすることにより多層シートを連続的に製造することができる。
【0077】
ここで、連続加圧装置を用いた積層シートの製造方法は、例えば、加熱ゾーンにおいて110~170℃、1~40MPaの温度圧力条件にてプレス、次いで、プレス解放後、シートを所定進行方向に所定長さ送り出し、再度、加熱及びプレスを行い、これを繰り返すことにより、加熱ゾーンから冷却ゾーンへ連続的に移送し、引き続き、冷却ゾーンにて、25~125℃、20~40MPaの圧力条件にてプレス、次いで、プレス解放後、シートを所定進行方向に送り出し、熱融着された多層シートを連続的に取り出す方法が挙げられる。
【0078】
このような連続加圧プレス法を採用した場合、得られる積層シートの表面状態が良好となり、所謂、表面の波うちなどに現れる表面凹凸が小さくなると共に、積層シート自体の透明性にも優れたものとなる。
【0079】
斯かる連続加圧プレス法につき詳述するに、前記多層シート前駆体(pMS)を、連続加圧成形機構を持つ加圧装置(CCM:continuous compression molding、「連続加圧成形装置」ということがある。)に連続乃至断続的に、前記加熱ゾーンを構成する上下の面状金型の間隙に導入し、110~170℃に加熱しつつ、1~40MPaの圧力条件にてプレス、次いで、プレス解放後、シートを所定進行方向に所定長さ送り出し、再度、加熱及びプレスを行い、これを繰り返すことにより、加熱ゾーンから冷却ゾーンへ連続的乃至断続的に移送し、冷却ゾーンにて60~125℃の温度条件で、20~40MPaの圧力条件にてプレス、圧力開放、移送を行うことにより、上下の面状金型の間隙から熱融着された多層シートを徐々に排出させる方法が挙げられる。
【0080】
ここで、プレス開放時に多層シートを送り出すサイズ(ピッチ)は、特に限定されるものではないが、10~300mmの範囲であることが好ましい。また、プレス解放時間は貼合の均一性の点から0.5~3秒であることが好ましい。
【0081】
〔連続加圧成形装置〕
ここで、連続加圧成形機構を持つ加圧装置(連続加圧成形装置)100は、図5に示すように、平面状に形成された上下一対の金型2を有する。上下一対の金型2のそれぞれの上部と下部において、それぞれ、上下一対の熱板/冷却板モジュール4を有し、上下一対の金型2に対して加熱/冷却することができる。また、上部平板状金型は上部から油圧シリンダ6、昇降ユニット8及び昇降ガイド10によって加圧可能に構成されている。
【0082】
また、進行方向の金型ユニットの先には、MD方向(機械方向)に前後に可動することによって、積層シート(LOP)を引き出す機能を有する引き出しユニット12を有している。
【0083】
ここで、平面状に形成された上下一対の金型2は、シート進行方向(MD方向)に対して加熱ゾーンと冷却ゾーンとに熱的に区画されており、望ましくは、シート進行方向と直角をなす方向(TD方向)にも熱的に区画されていることが望ましく、例えば、図6に示すように複数の熱的に区画されたゾーンを持つ平面状金型が挙げられる。なお、ここで「熱的に区画されている」とは、必ずしも設定温度が異なることを意味するものでははく、熱源が異なるように区画されていればよい。
【0084】
一例として、例えば、図6に示すように、ゾーンH1~H3は加熱ゾーン、C1~C2は冷却ゾーンとなる。また、TD方向については熱的に5分轄された例となっている。
【0085】
本発明では、製造する積層シート(LOP)の大きさに依って、上記加熱ゾーンと冷却ゾーンのMD方向段数は適宜選択すればよいが、MD方向に加熱ゾーンが2~6段階、冷却ゾーンが1~5段階に熱的に区画されていることが、熱的なコントロールが容易となり所望の厚さに応じて面内の強度斑がより小さく、更に表面平滑性に優れた積層シートを製造できる点から好ましい。
【0086】
ここで熱的に区画されているとは、物理的に金型自体が個別のパーツに分割されていることのみならず、見かけが一様に延展された平面状金属板でありながら、各ゾーンに対応するヒータによって温度調整がなされ、多段的に熱的にコントロールされた状態にあるものであってもよい、
【0087】
各加熱ゾーンの設定温度は、多層に積層された延伸フィルムの挿入口にもっと近い第1加熱ゾーンの温度を120~160℃、第2加熱ゾーンは第1加熱ゾーンの設定温度に対して+10~+40℃、以後順次、直前ゾーンに対して+0~30℃で設定することができ、最大160℃となることが好ましい。他方、冷却ゾーンの設定温度は、最終加熱ゾーンから-5~-10℃、更に続く冷却ゾーンが存在する場合は、直前の冷却ゾーンの設定温度に対して-30~-60℃となるように設定することが好ましい。また、最終冷却ゾーンの温度は、125℃~25℃であることが好ましい。
【0088】
また、前記した通り、上下金型2間に挿入された多層シート前駆体(pMS)は、上側金型上部に配設された複数のシリンダー6によって加圧され、上下金型2によりプレスされる。この際のプレス圧力は、前記した通り、1~40MPaであることが好ましく、プレス解放時に、所定幅で積層シート(LOP)が送り出される。
【0089】
また、積層シート(LOPシート)の表面平滑性を高める為に、積層シートと平面金型2との間にシート状の離形素材を介在させることが好ましい。ここで用いられるシート状の離形素材としては、例えば紙素材、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリカーボネートシート、二軸延伸ホモポリプロピレンシート、スチール板、ステンレス板、アルミ板などが挙げられるが、なかでも積層シートの表面状態を一層高めることができる点からステンレス板、特に鏡面ステンレス板が好ましい。
【0090】
この様にして得られる多層シート(LOPシート)は、各層を構成するポリプロピレンの配向性を適度に保持しつつ、層間が充分に融着されており、全体として剛性の高い積層シートとなり、前記した通り、面内における強度の斑の小さいもの、とりわけ大面積化した際におけるTD方向において均一な強度を持つ、という特異的な性能を発現する。また、機能発現層(x1)及び機能発現層(x2)が印刷等によって形成される加飾層である場合には、優れた意匠性を発現するものとなる。
【0091】
多層シート(LOPシート)の剛性及び強度に着目すると、具体的には、前記多層シート(LOPシート)の一つの辺方向をx方向、及びこれに直交する方向をy方向としたときに、y方向の中心位置と、この中心位置を通りy方向の該中心位置から60mmの距離にある2つの位置と、を含む3つの位置におけるx方向、及びy方向の引張弾性率が、いずれも1500~5000MPaの範囲内であることが好ましく、更に、前記3つの位置において、評価した3つのy方向の引張弾性率について、その変動係数が6%以下であること、特に5%以下であること、更に4.5%以下であることがシートの剛性の均一性に優れる点から好ましい。ここで変動係数は、標準偏差を平均で除した値[(標準偏差/平均)×100(%)]で算出される値である。
【0092】
また、前記3つの位置において、評価した3つのx方向の引張弾性率について、その変動係数が3%以下であることが好ましく、2.5%以下が更に好ましく、2%以下であることがとりわけ好ましい。
【0093】
一方、曲げ弾性率についても、前記3つの位置における曲げ弾性率は、長手方向をx方向としたときに、
x方向(MD方向)の曲げ弾性率:2000~3500MPa
y方向(TD方向)の曲げ弾性率:3500~6000MPa
の範囲であることが好ましい。
【0094】
また、前記3つの位置において、評価した3つのy方向の曲げ弾性率について、その変動係数が6.5%以下であることが好ましく、5.5%以下が更に好ましく、4.8%以下であることが特に好ましい。
【0095】
ここで変動係数は、標準偏差を平均で除した値[(標準偏差/平均)×100(%)]で算出される値である。
【0096】
従って、機能発現層(x1)及び機能発現層(x2)が印刷等によって形成される加飾層である場合には、高剛性かつ高靭性な機械物性を有する加飾シートとなる。
【0097】
[積層シート]
以上詳述した熱加圧プレス法によって得られる積層シート(LOP)の一例は、図2に示す様に、機能発現層(x1)を有する樹脂フィルム(α)、機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)、及び複数の多層二軸延伸フィルム(y1)を含む積層シート前駆体(pMS)が積層され、B/Bの境界で融着された結果、融着層が一体化してb層を構成し、その結果、a層とb層とが相互に積層された構造となる。
ここで、積層シート(LOP)は、機能発現層(x1)を有する樹脂フィルム(α)及び機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)を一層づつ組み合わせたものであってもよいが、更にこのαとβとを積層してもよい。
即ち、積層シート前駆体(pMS)の組み合わせとして、
α・x1/x2・β/y1/y1(以下y1の積層)の他、
α・x1/x2・β/α・x1/x2・β/y1/y1(以下y1の積層)、
α・x1/x2・β/α・x1/x2・β/α・x1/x2・β/y1/y1(以下y1の積層)、
とX層を多層化することができる。これにより、機能発現層(x1)及び機能発現層(x2)が加飾層である場合に、色合いに深みを出したり、メタリック調、大理石調など高度な意匠性を持たせることができる。
【0098】
更に前述した通り、機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)の表面側に、更に機能発現層(x1)を有しない、樹脂フィルム(α)を一枚乃至複数枚積層されているか、或いは、前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)が積層された構造であってもよい。加えて、機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)の表面側に前記二軸延伸ポリプロピレンシート(Y)、更にその上に、(x1)を有する(α)、(x2)を有する(β)が配設されていてもよい。
従って、積層シート前駆体(pMS)の組み合わせとしては、
・・・y1/y1/α・x1/x2・β/y1/y1・・・
・・・y1/y1/α・x1/x2・β/y1/y1・・y1/α・x1/x2・β/y1/y1・・・
といった様々なバリエーションの組み合わせ採用することができる。
【0099】
[成形品]
本発明における成形品は、本発明の積層シート(LOP)を成形してなるものである。本実施形態の積層シートを成形することにより、種々の成形品を得ることができる。成形方法としては、プレス成形、延伸成形、圧延成形、絞り加工成形、圧接成形、融着成形、真空成形、圧空成形、等が挙げられる。
これらの中でも本発明では大面積積層シートを工業的に生産できる、という従来にない特長を有することからプレス形成、真空圧空成形、熱板接触式真空圧空成形によって各種成形品へ加工することが好ましい。積層シートを二次成形する際の温度条件は、形状や絞りの深さなどにより適宜選択することができるが、例えば100℃以上、かつ、積層シート(LOP)の融点未満で成形すること可能であり、特に、モビリティー外装材や住宅建材など、絞りの浅い成形品に成形する際は、120~150℃で成形することができる。
【0100】
[多層シートの用途]
以上詳述した本発明の積層シートは、プラスチック材料として優れた剛性を有するものであり、アルミニウム代替材料、CFRP代替材料、鋼板代替材料として工業的に広く利用することが可能であり、例えば自動車外装材、自動車内装材、自動車構造材、空飛ぶ自動車外装材、建築外壁材、建築内装材、太陽電池基材、ペロブスカイト太陽電池基材、ペロブスカイト太陽電池賦形用シート、量子ステルス光学材料、物流ドローンボディー材、サーフボード、風力発電ブレード、船舶外壁材、リチウムイオンバッテリーケース材、リチウムイオンバッテリーの電極基材、水素タンク構造材、食品トレー、医療用トレー等が挙げられる。とりわけ機能発現層(x1)及び機能発現層(x2)として加飾層を採用する場合には、高度な意匠性を持った積層シートとなり、自動車外装材、建築外壁材として、製造工程における所謂塗装レス化が可能となる。
【0101】
更に、ペロブスカイト太陽電池基材、ペロブスカイト太陽電池賦形用シートの場合には、機能発現層にバリア層、難燃層、紫外線吸収層を設けることにより耐久性や難燃性付与に貢献することができる。
【0102】
また、ペロブスカイト太陽電池賦形用シートは、例えばフィルム状のペロブスカイト太陽電池を前記前駆体(pMS)の層間に挟み込み加熱プレスすることによりペロブスカイト太陽電池フィルムが埋設された積層シートとなり、自動車ルーフ材、ソーラーカーポート、バルコニー腰壁、住宅屋根材など各種用途における必要な形状に賦形することができる。これにより太陽電池フィルムを貼り合わせる場合に比べ、強風や災害時などの外力に対して強靭な太陽電池構造体を得ることができる。更に、本発明の多層シート中に太陽電池セルが完全に埋設されることから、湿気や水分から完全に遮断され、水分による劣化を良好に防止することができる。
【実施例0103】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0104】
(原料)
・BAB共押出フィルム1:サントックス社製、層構成:B/A/B、厚み:50μm、B/A/Bの厚さ比:5/90/5、延伸倍率:5×9倍
A:ポリプロピレン(エチレン含有率0.2質量%、Mw/Mn=9、キシレン不溶分含有率98.2質量%、mmmm=98.3、核剤含有率0.05質量%、t1/2:2.3秒)
B:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点151℃)
・BAA共押出フィルム:サントックス社製共押出フィルム、層構成:B/A/A、厚み:50μm、B/A/Aの厚さ比:5/90/5、延伸倍率:5×9倍
A:ポリプロピレン(エチレン含有率0.2質量%、Mw/Mn=9、キシレン不溶分含有率98.2質量%、mmmm=98.3、核剤含有率0.05質量%、t1/2:2.3秒)
B:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点151℃)
・BAC共押出フィルム:サントックス社製共押出フィルム、層構成:B/A/A、厚み:50μm、B/A/Cの厚さ比:5/90/5、延伸倍率:5×9倍
A:ポリプロピレン(エチレン含有率0.2質量%、Mw/Mn=9、キシレン不溶分含有率98.2質量%、mmmm=98.3、核剤含有率0.05質量%、t1/2:2.3秒)
B:エチレン-プロピレンランダム共重合体(融点151℃)
C:酸変性ポリプロピレン
【0105】
実施例1
[機能発現層(x1)を一方の表面に有する樹脂フィルム(α)の製造]
・BAA型フィルムのB層面にダイン数38となる様にウレタン系グラビアインキをバーコーターにより渡航して樹脂フィルム(α1)を得た(塗布量2.2g/m)。
・BAA型フィルムのB層面にダイン数38となる様にコロナ処理し、次いで塩素化ポリオレフィン系印刷インキをグラビア印刷により印刷を施して樹脂フィルム(α2)を得た(塗布量1.8g/m)。
・BAC型フィルムのC層上にダイン数38となる様にウレタン系グラビアインキをバーコーターにより渡航して樹脂フィルム(α3)を得た(塗布量2.0g/m)。
・BAC型フィルムのC層上にダイン数38となる様にコロナ処理し、次いで塩素化ポリオレフィン系印刷インキをグラビア印刷により印刷を施して樹脂フィルム(α4)を得た(塗布量1.8g/m)。
【0106】
[機能発現層(x2)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β)の製造]
BAB型フィルムにダイン数38となる様にコロナ処理し、次いで塩素化ポリオレフィン系印刷インキをグラビア印刷により印刷を施して樹脂フィルム(β2)を得た(塗布量2.0g/m)。
・BAC型フィルムのC層上にダイン数38となる様にウレタン系グラビアインキをバーコーターにより渡航して樹脂フィルム(β3)を得た(塗布量2.2g/m)。
・BAC型フィルムのC層上にダイン数38となる様にコロナ処理し、次いで塩素化ポリオレフィン系印刷インキをグラビア印刷により印刷を施して樹脂フィルム(β4)を得た(塗布量2.0g/m塗布量)。
【0107】
実施例1
前記樹脂フィルム(α1)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β1)とを印刷面同士が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(x1)を得た。
【0108】
実施例2
前記樹脂フィルム(α2)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β2)とを印刷面同士が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(x2)を得た。
【0109】
実施例3
前記樹脂フィルム(α3)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β3)とを印刷面同士が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(x3)を得た。
【0110】
実施例4
前記樹脂フィルム(α4)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(β4)とを印刷面同士が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(x4)を得た。
【0111】
比較例1
前記樹脂フィルム(α1)とBAB型フィルムとを印刷面が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(cx1)を得た。
【0112】
比較例2
前記樹脂フィルム(α2)とBAB型フィルムとを印刷面同士が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(cx2)を得た。
比較例3
前記樹脂フィルム(α1)とBAB型フィルムとを印刷面が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(cx3)を得た。
【0113】
比較例4
前記樹脂フィルム(α2)とBAB型フィルムとを印刷面同士が接するように重ね合わせ、温度155℃、圧力25MPaなる条件にて張り合わせてフィルム(cx4)を得た。
【0114】
<剥離試験>
上記各フィルムの印刷層における剥離試験を、JIS K6854-1に準拠し、25mm幅×長さ150mmの試験片、ストローク50mm、試験速度500mm/分の条件で90度引張試験を実施した。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
実施例5 (加飾LOPシートの作成及び評価)
準備工程として、黒色の印刷層を有する200mm角のフィルムα1、黒色の印刷層を有するフィルムβ1、BAB共押出フィルム23枚、BAAフィルムを、α1、β1は印刷面同士が接する様に、また、最下層はA層が表面に来るように重ね合わせ、前駆体(pMS1)を得た。次いで、平面状のプレス成型機で155℃、75秒、25MPaでプレス、その後、25℃にて厚さ40mmのアルミ板で挟み、その上に5kgの錘を置いて60秒間冷却プレスを行い、積層シートLOP1を得た。
この積層シートLOP1を複数枚作製した。
【0117】
得らえた積層シートLOP1から、TD方向の中央(1)と、(1)を中心位置として、該中心から60mmの位置に(2)、前記中心から(2)と反対側に60mmの位置に(3)としたときに、(1)~(3)の位置を中心としてTD方向を長辺とするダンベル1号型試験片と、(1)~(3)の位置を中心としてMD方向を長辺とするダンベル1号型試験片を切り出し引張弾性率測定に供した。
【0118】
また、得られた積層シートLOP1を50×80mmに切り出した。得られた加飾フィルムの写真を図7に示した。ピアノブラック調の深みと光沢のある加飾シートが得られた。
【0119】
<曲げ弾性率>
前記(1)、(2)、(3)の位置を中心とする25mm×60mmの短冊状試験片を、TD方向を長辺とするもの、MD方向を長辺とするものをそれぞれ切り出し、TD方向とMD方向の曲げ弾性率をJIS K7171に準拠し測定した。
・使用機器:AUTOGRAPH AG-X plus(島津製作所製)
・下部支点間距離:20mm
・試験速度:0.43mm/分
・ストローク:1mm
・弾性率算出方法:ストローク0.05mmと0.25mmの2点の傾き
・プロット採取開始点:3N
ここで変動係数は、標準偏差を平均で除した値[(標準偏差/平均)×100(%)]で算出される値である。
【0120】
【表2】
【0121】
表2の結果から明らかなように、(1)、(2)、(3)の各位置においていずれも曲げ弾性率が高く、かつ、その差も小さく面内の強度の斑の小さいものであった。
【0122】
<引張弾性率測定>
JIS K7161に準拠し、下記の条件にて引張試験弾性率を前記(1)、(2)、(3)のそれぞれの位置におけるMD方向とTD方向の引張弾性率を測定した。
・使用機器:AUTOGRAPH AG-X plus(島津製作所製)
・試験片:ダンベル1号型
・チャック間距離:100mm
・試験速度:1mm/分
・ストローク:1mm
・弾性率算出方法:ストローク0.05mmと0.25mmの2点の傾き
・プロット採取開始点:3N
ここで変動係数は、標準偏差を平均で除した値[(標準偏差/平均)×100(%)]で算出される値である。
【0123】
【表3】

表3の結果から明らかなように、(1)、(2)、(3)の各位置においていずれも引張弾性率が高く、かつ、その差も小さく面内の強度の斑の小さいものであった。
【符号の説明】
【0124】
α:樹脂フィルム
β:二軸延伸ポリプロピレンフィルム
x1:機能発現層
x2:機能発現層
X:多層フィルム
Y:二軸延伸ポリプロピレンシート
y1:多層二軸延伸フィルム
A:ポリプロピレン
B:エチレン-プロピレンランダム共重合体
C:酸変性ポリプロピレン
2:金型
4:熱板/冷却板モジュール
6:油圧シリンダ
8:昇降ユニット
10:昇降ガイド
12:引き出しユニット
20:製品進行方向
60:積層シート前駆体(pMS)
62:多層二軸延伸フィルム(X)
64a:多層二軸延伸フィルム(X)
64b:多層二軸延伸フィルム(X)
100:連続加圧成形装置
200:枚葉式真空貼合装置
201:装置本体
202:チャンバー
203:油圧シリンダー
204:熱板
205:熱板
d:ダイヤフラム
s:ステンレス板
sl:シリコンシート
pt:ポリテトラフルオロエチレンシート
LOP:積層シート


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7