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特開2025-5561ラッシュアジャスタへのオイル供給構造
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  • 特開-ラッシュアジャスタへのオイル供給構造 図1
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  • 特開-ラッシュアジャスタへのオイル供給構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005561
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ラッシュアジャスタへのオイル供給構造
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/24 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F01L1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105777
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】川上 岳臣
(72)【発明者】
【氏名】浜田 範明
(72)【発明者】
【氏名】梨田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】吉武 真吾
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016AA06
3G016AA19
3G016BA18
3G016BA47
3G016BB02
3G016BB30
3G016BB39
3G016CA10
3G016CA11
3G016GA03
(57)【要約】
【課題】給油路において気泡の滞留が生じた場合でもラッシュアジャスタへのオイル供給を確保し、ラッシュアジャスタの機能を維持する。
【解決手段】シリンダヘッド90に組み込まれるラッシュアジャスタ10に対してオイルを供給する構造であって、シリンダヘッド90は、ラッシュアジャスタ10が取り付けられる取付凹部93と、取付凹部93に連通する給油路94と、を備え、ラッシュアジャスタ10は、取付凹部93に内嵌されるボディ11と、ボディ11内に配置されるプランジャ12と、を備え、ボディ11は、周壁14と、周壁14を貫通してボディ周回溝15の奥面に開口する複数のボディ孔16と、を有し、複数のボディ孔16は、複数のボディ孔16のうちの1つがボディ11の外周面側において給油路94内に滞留する気泡によって覆われた状態において他のボディ孔16がオイルを受け入れ可能に、それぞれ配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに組み込まれるラッシュアジャスタに対してオイルを供給する構造であって、
前記シリンダヘッドは、前記ラッシュアジャスタが取り付けられる取付凹部と、前記取付凹部に連通する給油路と、を備え、
前記ラッシュアジャスタは、前記取付凹部に内嵌される筒状のボディと、前記ボディに対して往復摺動可能に前記ボディ内に配置される筒状のプランジャと、を備え、
前記ボディは、前記取付凹部の内周面に外周面が接触する周壁と、前記周壁の外周面の全周に亘って凹設されるボディ周回溝と、前記周壁を貫通して前記ボディ周回溝の奥面に開口する複数のボディ孔と、を有し、
複数の前記ボディ孔は、複数の前記ボディ孔のうちの1つが前記ボディの外周面側において前記給油路内に滞留する気泡によって覆われた状態において他の前記ボディ孔がオイルを受け入れ可能に、それぞれ配置されている、ラッシュアジャスタへのオイル供給構造。
【請求項2】
前記給油路における前記取付凹部よりも下流側は、袋小路状をなしている、請求項1に記載のラッシュアジャスタへのオイル供給構造。
【請求項3】
複数の前記ボディ孔は、前記周壁の周方向において180°の間隔を置いて2つ設けられている、請求項1又は請求項2に記載のラッシュアジャスタへのオイル供給構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラッシュアジャスタへのオイル供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筒状のボディと、このボディ内に往復摺動可能に配置されるプランジャと、を備えたラッシュアジャスタを開示している。ボディは、シリンダヘッドの表面に開口する取付凹部に内嵌される。ボディの周壁には、ボディ孔が貫通して形成されている。プランジャの周壁には、プランジャ孔が貫通して形成されている。ボディが取付凹部に内嵌された状態で、ボディ孔及びプランジャ孔を通してシリンダヘッドの給油路を流れる作動油(オイル)がラッシュアジャスタ内に供給される。プランジャは、ボディからの突出量を変化させる。プランジャによって支持されるロッカアームは、プランジャの突出量の変動に応じて揺動支点位置を変化させ、押圧する弁のバルブクリアランスを自動的に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-222007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給油路内のオイルには気泡が混入していることがある。気泡は、オイルとともに給油路内を流通する。気泡は、給油路における流れの緩やかな場所等において滞留し、大きな気泡の塊を形成することがある。ラッシュアジャスタは、このように滞留した気泡によってボディ孔が閉塞されると、オイルを内部に導入できなってしまう。この場合、ラッシュアジャスタによるバルブクリアランスの調整が適正に実行されなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、給油路において気泡の滞留が生じた場合でもラッシュアジャスタへのオイル供給を確保し、ラッシュアジャスタの機能を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のラッシュアジャスタへのオイル供給構造は、シリンダヘッドに組み込まれるラッシュアジャスタに対してオイルを供給する構造であって、前記シリンダヘッドは、前記ラッシュアジャスタが取り付けられる取付凹部と、前記取付凹部に連通する給油路と、を備え、前記ラッシュアジャスタは、前記取付凹部に内嵌される筒状のボディと、前記ボディに対して往復摺動可能に前記ボディ内に配置される筒状のプランジャと、を備え、前記ボディは、前記取付凹部の内周面に外周面が接触する周壁と、前記周壁の外周面の全周に亘って凹設されるボディ周回溝と、前記周壁を貫通して前記ボディ周回溝の奥面に開口する複数のボディ孔と、を有し、複数の前記ボディ孔は、複数の前記ボディ孔のうちの1つが前記ボディの外周面側において前記給油路内に滞留する気泡によって覆われた状態において他の前記ボディ孔がオイルを受け入れ可能に、それぞれ配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、給油路において気泡の滞留が生じた場合でもラッシュアジャスタへのオイル供給を確保し、ラッシュアジャスタの機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態1のラッシュアジャスタを含む動弁装置の断面図である。
図2図2は、実施形態1の動弁装置の要部拡大断面図である。
図3図3は、図2のIII-III線相当断面を示す動弁装置の要部拡大断面図である。
図4図4は、実施形態1のラッシュアジャスタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のラッシュアジャスタへのオイル供給構造は、
(1)シリンダヘッドに組み込まれるラッシュアジャスタに対してオイルを供給する構造であって、前記シリンダヘッドは、前記ラッシュアジャスタが取り付けられる取付凹部と、前記取付凹部に連通する給油路と、を備え、前記ラッシュアジャスタは、前記取付凹部に内嵌される筒状のボディと、前記ボディに対して往復摺動可能に前記ボディ内に配置される筒状のプランジャと、を備え、前記ボディは、前記取付凹部の内周面に外周面が接触する周壁と、前記周壁の外周面の全周に亘って凹設されるボディ周回溝と、前記周壁を貫通して前記ボディ周回溝の奥面に開口する複数のボディ孔と、を有し、複数の前記ボディ孔は、複数の前記ボディ孔のうちの1つが前記ボディの外周面側において前記給油路内に滞留する気泡によって覆われた状態において他の前記ボディ孔がオイルを受け入れ可能に、それぞれ配置されている。
【0010】
上記構成によれば、1つのボディ孔が気泡によって閉塞状態になったとしても、他のボディ孔がオイルを受け入れ可能な状態になり得る。このように、給油路において気泡の滞留が生じた場合でもラッシュアジャスタへのオイル供給を確保し、ラッシュアジャスタの機能を維持することができる。
【0011】
(2)前記給油路における前記取付凹部よりも下流側は、袋小路状をなしている。
【0012】
上記構成によれば、袋小路状をなす給油路はオイルの流れが殆ど生じず、気泡の滞留が生じ易い。このため、ラッシュアジャスタへのオイル供給を確保し、ラッシュアジャスタの機能を維持することができる本開示の構造を設ける意義は大きい。
【0013】
(3)複数の前記ボディ孔は、前記周壁の周方向において180°間隔を置いて2つ設けられている。
【0014】
上記構成によれば、2つのボディ孔同士が最も間隔の離れた位置となる配置であるため、より大きな気泡の滞留を許容できる。例えば、2つのボディ孔をより近接させて配置した場合、比較的小さな気泡であっても、2つのボディ孔を覆ってしまうおそれがある。これに対し、2つのボディ孔をより離して配置することによって、より大きな気泡が生じた場合でも、気泡によって1つのボディ孔が覆われ、他のボディ孔がオイルを受け入れ可能な状態を維持できる。また、上記構成によれば、必要最小限の複数のボディ孔を極めて容易に形成できる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
<実施形態1>
本開示の実施形態1のラッシュアジャスタへのオイル供給構造は、図1から図3に示すように、内燃機関の動弁装置に設けられるラッシュアジャスタ10へオイルを供給する構造である。ラッシュアジャスタ10は、シリンダヘッド90に形成された取付凹部93に取り付けられる。
【0017】
動弁装置は、図1に示すように、内燃機関と同期して回転するカムシャフト70に設けられたカム71と、バルブ本体80に設けられたバルブステム81と、カム71の回転に応じて揺動することでバルブステム81を押圧するロッカアーム60と、ロッカアーム60の一端部を揺動可能に支持するラッシュアジャスタ10とを備えている。
【0018】
バルブステム81は、シリンダヘッド90の吸気又は排気ポート91に連なる貫通孔92に挿入され、コイルスプリング82によってバルブ本体80を閉弁させる方向に付勢されている。カム71が回転すると、ロッカアーム60が揺動するとともに、バルブステム81が貫通孔92内を往復移動し、これによってバルブ本体80が吸気又は排気ポート91を開閉するようになっている。
【0019】
ロッカアーム60は、一端部がラッシュアジャスタ10に支持され、他端部がバルブステム81に当接させられ、一端部と他端部との間に設けられたローラ61にカム71が回転可能に接触して配置されている。
【0020】
図1から図3に示すように、シリンダヘッド90は、給油路94及び取付凹部93を有している。給油路94は、シリンダヘッド90の内部に形成されている。給油路94は、内燃機関の各部にオイルを供給する。給油路94は、上流側(図3の右側)において図示しないオイルポンプに連通している。給油路94内のオイルには、このオイルポンプによる圧力が作用する。オイルは、圧力差に応じて給油路94内を流通する。
【0021】
取付凹部93は、シリンダヘッド90の表面に開口する断面円形状の有底孔である。図1から図3に示すように、取付凹部93は、その内部の空間の一部が給油路94内の空間の一部に重なるように形成され、給油路94と連通している。図2に示すように、取付凹部93は、給油路94に上方に位置している。取付凹部93の軸線Lは、鉛直軸に対して傾斜している。本実施形態の場合、鉛直軸に対する軸線Lの傾斜角度θは、約57.6°である。
【0022】
図3に示すように、取付凹部93は、給油路94における下流端の近傍に形成されている。詳細には、給油路94は、取付凹部93から下流側が袋小路状(dead end)をなし、行き止まりになっている。換言すると、給油路94において、プラグPと取付凹部93との間には、他のラッシュアジャスタ等の他のオイル被供給部位や、排出口、開口等のオイル流出部位は存在しない。本実施形態の場合、給油路94は、下流端においてプラグPによって閉塞されている。
【0023】
図1から図3に示すように、ラッシュアジャスタ10は取付凹部93に内嵌されている。ラッシュアジャスタ10は、その軸線L1を取付凹部93の軸線Lに沿わせて取付凹部93内に挿入されている。取付凹部93に内嵌された状態のラッシュアジャスタ10は、給油路94の斜め上方から給油路94内に張り出している。図2に示すように、ラッシュアジャスタ10は、給油路94の内径の中心を越える位置まで、給油路94内に張り出している。ラッシュアジャスタ10は、取付凹部93の内周面に沿って回転可能である。ラッシュアジャスタ10は、内燃機関の振動やロッカアーム60から受ける力の大きさの変化、給油路94内の油圧の変動等によって、取付凹部93内を回転する。
【0024】
図4に示すように、ラッシュアジャスタ10は、有底円筒状のボディ11と、ボディ11内に上下方向に往復摺動可能に収容される有底円筒状のプランジャ12とを備えている。プランジャ12は、円板状の底壁17と、底壁17の外周から立ち上がって上端部が略半球状に絞られた周壁18とからなる。プランジャ12の周壁18の上端部は支承部19とされ、支承部19の半球面状の外周面に、ロッカアーム60の一端部が支持されている(図1を参照)。支承部19の上端部には、頂孔21が上下方向に貫通して設けられている。
【0025】
プランジャ12の周壁18の外周面には、プランジャ周回溝24が全周に亘って凹設されている。プランジャ12の周壁18には、この周壁18を厚み方向に貫通してプランジャ周回溝24の奥面に開口するプランジャ油孔25が設けられている。プランジャ12の底壁17の径方向中央部には、円形の弁孔26が上下方向に貫通して設けられている。
【0026】
ボディ11は、プランジャ12の底壁17よりも一回り大きい円板状の底壁13と、底壁13の外周から立ち上がる周壁14とからなる。周壁14は、ラッシュアジャスタ10が取付凹部93に取り付けられた状態において、取付凹部93の内周面に外周面が接触する。周壁14には、ボディ周回溝15と、ボディ孔16とが形成されている。
【0027】
ボディ周回溝15は、周壁14の外周面において周方向の全周に亘って凹設されている。ボディ周回溝15は、ラッシュアジャスタ10が取付凹部93に内嵌された状態において、取付凹部93内から給油路94に臨む位置に配置される。ボディ周回溝15は、その奥面と取付凹部93の内周面との間に、オイルが流通可能な隙間Gを形成する。ボディ孔16は、周壁14を貫通してボディ周回溝15の奥面に開口している。ボディ孔16は複数設けられている。本実施形態の場合、複数のボディ孔16は、周壁14の周方向において等間隔に配置されている。具体的には、複数のボディ孔16は、周壁14の周方向において180°の間隔を置いて2つ設けられている。ボディ11の周壁14の上端部には、プランジャ12の上方への抜け出しを規制するリテーナ50が取り付けられる。
【0028】
図4に示すように、ボディ11内の下部には、プランジャ12の底壁17との間に、高圧室27が設けられている。プランジャ12内は、底壁17の上方に、低圧室22を区画している。高圧室27には、上下方向に移動して弁孔26を開閉可能な球状の弁体28と、弁体28を保持するケージ29と、ケージ29内に収容されて弁体28を弁孔26に向けて付勢する圧縮コイルばねからなる第1スプリング31と、ケージ29の外周縁部とボディ11の底壁13との間に介設されてプランジャ12を上方に付勢する圧縮コイルばねからなる第2スプリング32と、が収容されている。弁体28は、第1スプリング31によって弁孔26を閉じる上方に付勢されている。
【0029】
上述のように、本実施形態の動弁装置におけるラッシュアジャスタ10は、シリンダヘッド90の取付凹部93に内嵌される。取付凹部93に内嵌されたラッシュアジャスタ10は、プランジャ12の上端部がシリンダヘッド90の表面上に突出して配置される。プランジャ12の上端部は、ロッカアーム60の一端部を支持する。ボディ11は、ボディ周回溝15において給油路94に臨んでいる。
【0030】
シリンダヘッド90の給油路94を流れるオイルは、給油路94に臨んだボディ周回溝15から、ボディ孔16、プランジャ周回溝24及びプランジャ油孔25を経て低圧室22に供給される。また、弁体28が第1スプリング31の付勢力に抗して下降し、弁孔26が開いた状態で、低圧室22から弁孔26を通して高圧室27にオイルが充填される。
【0031】
内燃機関の駆動時にカム71が回転し、ロッカアーム60がローラ61を介して上方から押圧されると、プランジャ12がロッカアーム60の一端部に押圧されてボディ11に対して下方に移動し、高圧室27のオイルが圧縮させられる。高圧室27の圧力が上昇するのに伴い、高圧室27のオイルがプランジャ12とボディ11の両周壁14,18間を通してプランジャ周回溝24側に流出する。このため、ラッシュアジャスタ10の全長が高圧室27からのオイルの流出分だけ短縮させられる。また、高圧室27の圧力上昇によってオイル(ボディ11及びプランジャ12)が剛体化し、ロッカアーム60に対するラッシュアジャスタ10の支持位置が規定される。
【0032】
さらにカム71が回転し、ロッカアーム60に作用するカム71からの押圧力が減退すると、高圧室27の圧力と第2スプリング32の付勢力とを受けたプランジャ12が上昇し、プランジャ12の上端部がボディ11から大きく突出する。高圧室27の圧力下降によって弁体28が弁孔26から離れて弁孔26を開き、低圧室22から高圧室27にオイルが流れ、ラッシュアジャスタ10の全長が伸長する。こうしてラッシュアジャスタ10がロッカアーム60を適正な位置で支持することにより、カム71とロッカアーム60とのバルブクリアランスが実質的にゼロとなるように調整される。
【0033】
給油路94内のオイルには気泡が混入している場合がある。オイルに混入した気泡は、オイルの流れに乗って給油路94内を流通する。上述のように、本実施形態の場合、給油路94は、取付凹部93よりも下流側において袋小路状になっており、ラッシュアジャスタ10よりも下流側には他のラッシュアジャスタ等は存在しない。このため、給油路94は、取付凹部93近傍におけるオイルの流れが比較的緩やかになっている。詳細には、給油路94は、取付凹部93近傍において、取付凹部93内のラッシュアジャスタ10において消費されるオイルの量に応じた流量のオイルの流れしか生じない。このため、給油路94は、取付凹部93近傍において、気泡の滞留が生じ易い。また、ラッシュアジャスタ10は、給油路94の上方に形成された取付凹部93に取り付けられ、給油路94の上面から下方に張り出している。このように配置されたラッシュアジャスタ10は、給油路94内の気泡を堰き止め、気泡溜まりAを形成させ易い。
【0034】
このようにして生じた気泡溜まりAに対して、取付凹部93内で回転するラッシュアジャスタ10は、ボディ孔16が気泡溜まりAに臨んで位置し得る。この場合、ボディ孔16は、気泡溜まりAによって覆われた閉塞状態とされてしまう(図2及び図3を参照)。しかし、ボディ孔16は、周壁14の周方向に間隔を置いて複数設けられている。このため、1つのボディ孔16が気泡溜まりAによって閉塞状態になったとしても、他のボディ孔16はオイルを受け入れ可能な状態になり得る。本実施形態の場合、ボディ孔16は、周壁14の周方向に180°の間隔を置いて2つ設けられている。ラッシュアジャスタ10は、1つのボディ孔16が給油路94に臨んだ位置において気泡溜まりAに覆われた場合でも、他の1つのボディ孔16が隙間Gを流通するオイルを受け入れ可能な状態になっている。このため、ラッシュアジャスタ10は、内部へのオイル供給を継続できる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るラッシュアジャスタ10へのオイル供給構造では、給油路94において気泡の滞留が生じた場合でもラッシュアジャスタ10へのオイル供給を確保でき、ラッシュアジャスタ10の機能を維持することができる。その結果、本実施形態のラッシュアジャスタ10へのオイル供給構造では、ラッシュアジャスタ10によるバルブクリアランスの調整機能が適正に維持される。
【0036】
また、ボディ孔16は、周壁14の周方向に180°の間隔を置いて2つ設けられている。このため、より大きな気泡溜まりAの滞留を許容できる。また、必要最小限の複数のボディ孔を極めて容易に形成できる。すなわち、2つのボディ孔16は、ドリル等を用いた穴明けによって形成する場合において、1回の工程で両方のボディ孔16を形成することができるため、製造が容易である。
【0037】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態の場合、ボディ孔は、周壁の周方向において180°の間隔を置いて2つ設けられていた。これに対し、他の実施形態の場合、ボディ孔は、3つ以上設けられていてもよい。ボディ孔は、例えば、周壁の周方向において不等間隔に、又は等間隔に3つ以上設けられていてもよい。
上記実施形態の場合、取付凹部は、給油路の上方に、軸線を鉛直軸に対して傾斜させて形成されていた。これに対し、他の実施形態の場合、取付凹部は、例えば、給油路の側方に、軸線を鉛直軸に対して平行にして形成されてもよい。取付凹部が軸線を鉛直軸に対して傾斜させて形成される場合、その傾斜角度は特に限定されない。鉛直軸に対する取付凹部の軸線の角度としては、例えば、40°から70°であることができる。本開示に係るラッシュアジャスタへのオイル供給構造は、給油路におけるオイルの流れが比較的緩やかな場所や構造的に気泡の流れを阻害する場所等、気泡の滞留が生じ易い種々の場所に対して適用できる。
【符号の説明】
【0038】
10…ラッシュアジャスタ
11…ボディ
12…プランジャ
13…底壁
14…周壁
15…ボディ周回溝
16…ボディ孔
17…底壁
18…周壁
19…支承部
21…頂孔
22…低圧室
24…プランジャ周回溝
25…プランジャ油孔
26…弁孔
27…高圧室
28…弁体
29…ケージ
31…第1スプリング
32…第2スプリング
50…リテーナ
60…ロッカアーム
61…ローラ
70…カムシャフト
71…カム
80…バルブ本体
81…バルブステム
82…コイルスプリング
90…シリンダヘッド
91…排気ポート
92…貫通孔
93…取付凹部
94…給油路
A…気泡溜まり
G…ボディ周回溝の奥面と取付凹部の内周面との間の隙間
L…取付凹部の軸線
L1…ラッシュアジャスタの軸線
P…プラグ
θ…取付凹部の傾斜角度
図1
図2
図3
図4