(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005585
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の制御方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H03M 1/12 20060101AFI20250109BHJP
H03M 1/46 20060101ALI20250109BHJP
H03M 1/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H03M1/12 C
H03M1/46
H03M1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105804
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松井 徹郎
(72)【発明者】
【氏名】丹後田 敦
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 圭策
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正樹
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AA14
5J022AB04
5J022BA02
(57)【要約】
【課題】干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ、精度良く動作することが可能な半導体装置、半導体装置の制御方法、及び、制御プログラムを提供すること。
【解決手段】本開示にかかる半導体装置は、逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、参照電圧を用いてアナログの差動の第1入力信号をデジタルの第1出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第1ADコンバータと、外部から前記参照電圧が供給される第1ピンと、前記第1ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第1可変インピーダンス回路と、前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第1制御回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、参照電圧を用いてアナログの差動の第1入力信号をデジタルの第1出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第1ADコンバータと、
外部から前記参照電圧が供給される第1ピンと、前記第1ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第1可変インピーダンス回路と、
前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第1制御回路と、
を備えた、半導体装置。
【請求項2】
前記第1制御回路は、前記第1ADコンバータが前記第1出力信号を表す複数のビットのうち第1所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作を実行する場合、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1インピーダンスに制御し、前記第1ADコンバータが前記第1出力信号を表す複数のビットのうち前記第1所定範囲の上位ビット以外の下位ビットの値を決めるための比較動作、及び、第1の冗長の比較動作を実行する場合、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1インピーダンスよりも低い第2インピーダンスに制御する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1ADコンバータは、前記第1の冗長の比較動作を、前記第1所定範囲の上位ビットのうち最下位ビットの値を決めるための比較動作と同等以上の分解能で実行するように構成されている、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1ADコンバータは、
複数の第1容量素子及び複数の第1スイッチを有する第1DAコンバータと、
第1コンパレータと、
第1逐次比較レジスタ回路と、
を有し、
前記第1DAコンバータにおいて、前記第1入力信号の電位と、前記参照電圧と、に基づいて前記複数の第1容量素子に蓄積された電荷を、前記複数の第1スイッチにより前記複数の第1容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、前記第1コンパレータ及び前記第1逐次比較レジスタ回路を用いて、前記第1入力信号の電位と、前記第1DAコンバータの出力と、の逐次比較を行うように構成されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1可変インピーダンス回路は、抵抗値を変更可能に構成された第1可変抵抗回路である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ADコンバータは、電源電圧によって駆動され、
前記第1可変インピーダンス回路は、前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1ピン、及び、外部から前記電源電圧が供給される第2ピン、の何れかを選択して、前記第1ADコンバータに前記参照電圧として供給する、第1選択回路である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1可変インピーダンス回路は、複数の寄生インダクタの形成経路の何れかを選択可能に構成されている、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、前記参照電圧を用いてアナログの差動の第2入力信号をデジタルの第2出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第2ADコンバータと、
外部から前記参照電圧が供給される前記第1ピンと、前記第2ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第2可変インピーダンス回路と、
前記第2ADコンバータの動作状況に応じて、前記第2可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第2制御回路と、
をさらに備えた、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1制御回路は、前記第1ADコンバータが前記第1出力信号を表す複数のビットのうち第1所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作を実行する場合、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1インピーダンスに制御し、前記第1ADコンバータが前記第1出力信号を表す複数のビットのうち前記第1所定範囲の上位ビット以外の下位ビットの値を決めるための比較動作、及び、第1の冗長の比較動作を実行する場合、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1インピーダンスよりも低い第2インピーダンスに制御し、
前記第2制御回路は、前記第2ADコンバータが前記第2出力信号を表す複数のビットのうち第2所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作を実行する場合、前記第2可変インピーダンス回路のインピーダンスを第3インピーダンスに制御し、前記第2ADコンバータが前記第2出力信号を表す複数のビットのうち前記第2所定範囲の上位ビット以外の下位ビットの値を決めるための比較動作、及び、第2の冗長の比較動作を実行する場合、前記第2可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第3インピーダンスよりも低い第4インピーダンスに制御する、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1ADコンバータは、前記第1の冗長の比較動作を、前記第1所定範囲の上位ビットのうち最下位ビットの値を決めるための比較動作と同等以上の分解能で実行するように構成され、
前記第2ADコンバータは、前記第2の冗長の比較動作を、前記第2所定範囲の上位ビットのうち最下位ビットの値を決めるための比較動作と同等以上の分解能で実行するように構成されている、
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1ADコンバータは、
複数の第1容量素子及び複数の第1スイッチを有する第1DAコンバータと、
第1コンパレータと、
第1逐次比較レジスタ回路と、
を有し、
前記第1DAコンバータにおいて、前記第1入力信号の電位と、前記参照電圧と、に基づいて前記複数の第1容量素子に蓄積された電荷を、前記複数の第1スイッチにより前記複数の第1容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、前記第1コンパレータ及び前記第1逐次比較レジスタ回路を用いて、前記第1入力信号の電位と、前記第1DAコンバータの出力と、の逐次比較を行うように構成され、
前記第2ADコンバータは、
複数の第2容量素子及び複数の第2スイッチを有する第2DAコンバータと、
第2コンパレータと、
第2逐次比較レジスタ回路と、
を有し、
前記第2DAコンバータにおいて、前記第2入力信号の電位と、前記参照電圧と、に基づいて前記複数の第2容量素子に蓄積された電荷を、前記複数の第2スイッチにより前記複数の第2容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、前記第2コンパレータ及び前記第2逐次比較レジスタ回路を用いて、前記第2入力信号の電位と、前記第2DAコンバータの出力と、の逐次比較を行うように構成されている、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1可変インピーダンス回路は、抵抗値を変更可能に構成された第1可変抵抗回路であって、
前記第2可変インピーダンス回路は、抵抗値を変更可能に構成された第2可変抵抗回路である、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1ADコンバータは、電源電圧によって駆動され、
前記第1可変インピーダンス回路は、前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1ピン、及び、外部から前記電源電圧が供給される第2ピン、の何れかを選択して、前記第1ADコンバータに前記参照電圧として供給する、第1選択回路であって、
前記第2ADコンバータは、前記電源電圧によって駆動され、
前記第2可変インピーダンス回路は、前記第2ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1ピン、及び、外部から前記電源電圧が供給される前記第2ピン、の何れかを選択して、前記第2ADコンバータに前記参照電圧として供給する、第2選択回路である、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1可変インピーダンス回路は、複数の寄生インダクタの形成経路の何れかを選択可能に構成されている、
前記第2可変インピーダンス回路は、前記複数の寄生インダクタの形成経路の何れかを選択可能に構成されている、
請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、参照電圧を用いてアナログの差動の第1入力信号をデジタルの第1出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第1ADコンバータと、
外部から前記参照電圧が供給される第1ピンと、前記第1ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第1可変インピーダンス回路と、
前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第1制御回路と、
を備えた、半導体装置の制御方法であって、
前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1インピーダンスに制御し、
前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち第1所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作を実行し、
前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1インピーダンスよりも低い第2インピーダンスに制御し、
前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち前記第1所定範囲の上位ビット以外の下位ビットの値を決めるための比較動作、及び、冗長の比較動作、を実行する、
半導体装置の制御方法。
【請求項16】
逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、参照電圧を用いてアナログの差動の第1入力信号をデジタルの第1出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第1ADコンバータと、
外部から前記参照電圧が供給される第1ピンと、前記第1ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第1可変インピーダンス回路と、
前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第1制御回路と、
を備えた、半導体装置における制御処理をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、
前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1インピーダンスに制御する処理と、
前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち第1所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作を実行する処理と、
前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1インピーダンスよりも低い第2インピーダンスに制御する処理と、
前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち前記第1所定範囲の上位ビット以外の下位ビットの値を決めるための比較動作、及び、冗長の比較動作、を実行する処理と、
をコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、半導体装置の制御方法、及び、制御プログラムに関し、例えば、干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ、精度良く動作することが可能な半導体装置、半導体装置の制御方法、及び、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、電荷再分配式の逐次比較型のADコンバータが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】松澤 昭、“アナログ・ADC開発の今後”、[online]、2013年3月15日、[令和5年5月20日検索]、インターネット<URL:http://www.ssc.pe.titech.ac.jp/publications/2013/RFanalog/matsu_open_130315.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電荷再分配式の逐次比較型のADコンバータでは、逐次比較動作時の容量の切り替えによる電荷の充放電によって、参照電圧が伝搬する信号線に当該参照電圧の乱れ(ノイズ)が発生する。特に、デジタル信号の上位ビットの値を決めるための比較動作では、大きな容量の切り替えが行われるため、電荷の充放電による電流の変化が急峻になり、参照電圧が伝搬する信号線に発生するノイズは大きくなる。それにより、参照電圧が伝搬する信号線を共用する他の回路にノイズが伝わって、当該他の回路が精度良く動作することができない、という課題があった。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる半導体装置は、逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、参照電圧を用いてアナログの差動の第1入力信号をデジタルの第1出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第1ADコンバータと、外部から前記参照電圧が供給される第1ピンと、前記第1ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第1可変インピーダンス回路と、前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第1制御回路と、を備える。
【0007】
本開示の一態様にかかる半導体装置の制御方法は、逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、参照電圧を用いてアナログの差動の第1入力信号をデジタルの第1出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第1ADコンバータと、外部から前記参照電圧が供給される第1ピンと、前記第1ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第1可変インピーダンス回路と、前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第1制御回路と、を備えた、半導体装置の制御方法であって、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1インピーダンスに制御し、前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち第1所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作を実行し、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1インピーダンスよりも低い第2インピーダンスに制御し、前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち前記第1所定範囲の上位ビット以外の下位ビットの値を決めるための比較動作、及び、冗長の比較動作、を実行する。
【0008】
本開示の一態様にかかる制御プログラムは、逐次比較動作において冗長の比較動作を含み、参照電圧を用いてアナログの差動の第1入力信号をデジタルの第1出力信号に変換して出力する、電荷再分配式の逐次比較型の第1ADコンバータと、外部から前記参照電圧が供給される第1ピンと、前記第1ADコンバータと、の間の信号線上に設けられ、インピーダンスを変更可能に構成された第1可変インピーダンス回路と、前記第1ADコンバータの動作状況に応じて、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを制御する第1制御回路と、を備えた、半導体装置における制御処理をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1インピーダンスに制御する処理と、前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち第1所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作を実行する処理と、前記第1可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1インピーダンスよりも低い第2インピーダンスに制御する処理と、前記第1ADコンバータにおいて、前記第1出力信号を表す複数のビットのうち前記第1所定範囲の上位ビット以外の下位ビットの値を決めるための比較動作、及び、冗長の比較動作、を実行する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ、精度良く動作することが可能な半導体装置、半導体装置の制御方法、及び、制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す半導体装置のうち、ADコンバータをより具体的に示した図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る半導体装置の具体例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す半導体装置において発生する干渉ノイズを説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、
図3に示す半導体装置において発生する干渉ノイズを説明するための波形図である。
【
図7】
図7は、
図3に示す半導体装置に設けられた各ADコンバータの逐次比較動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る半導体装置の構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る半導体装置の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係る半導体装置の構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3に係る半導体装置の他の構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、事前検討された半導体装置の第1の構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、
図13に示す半導体装置において発生する干渉ノイズの伝搬経路を説明するための図である。
【
図15】
図15は、
図13に示す半導体装置に設けられた各ADコンバータの動作を示すタイミングチャートである。
【
図16】
図16は、
図13に示す半導体装置において発生するノイズを説明するための波形図である。
【
図17】
図17は、事前検討された半導体装置の第2の構成例を示す図である。
【
図18】
図18は、
図17に示す半導体装置において発生する干渉ノイズの伝搬経路を説明するための図である。
【
図19】
図19は、
図17に示す半導体装置において発生するノイズを説明するための波形図である。
【
図20】
図20は、事前検討された半導体装置の第3の構成例を示す図である。
【
図21】
図21は、
図20に示す半導体装置において発生する干渉ノイズの伝搬経路を説明するための図である。
【
図22】
図22は、
図20に示す半導体装置において発生するノイズを説明するための波形図である。
【
図23】
図23は、
図20に示す半導体装置に設けられたADコンバータの理想的な逐次比較動作を説明するための図である。
【
図24】
図24は、
図20に示す半導体装置に設けられたADコンバータの逐次比較動作において発生する課題を説明するための図である。
【
図25】
図25は、事前検討された半導体装置の第4の構成例を示す図である。
【
図26】
図26は、
図25に示す半導体装置に設けられたADコンバータの理想的な逐次比較動作を説明するための図である。
【
図27】
図27は、
図25に示す半導体装置に設けられたADコンバータの逐次比較動作において発生する課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0014】
<発明者等による事前検討>
本実施の形態にかかる半導体装置について説明する前に、本発明者等が事前検討した半導体装置について説明する。
【0015】
図13は、事前検討された半導体装置5の構成例を示す図である。半導体装置5は、例えばMCU(Micro Controller Unit)であって、複数のADコンバータを備える。
図13の例では、半導体装置5が、チップ50上に、2個のADコンバータ51,52を備えている。また、半導体装置5には、チップ50と半導体装置5の外部とのインタフェースを行う複数のピンが設けられている。
【0016】
ピンAVCCには、ADコンバータ51,52に共通の高電位側の電源電圧(以下、電源電圧AVCCと称す)が半導体装置5の外部から供給される。ピンAVSSには、ADコンバータ51,52に共通の低電位側の電源電圧(以下、電源電圧AVSSと称す)が半導体装置5の外部から供給される。つまり、ADコンバータ51,52は、ピンAVCC,AVSSを共用している。
【0017】
ピンVREFHには、ADコンバータ51,52に共通の高電位側の参照電圧(以下、参照電圧VREFHと称す)が半導体装置5の外部から供給される。ピンAVSSには、ADコンバータ51,52に共通の低電位側の参照電圧(以下、参照電圧VREFLと称す)が半導体装置5の外部から供給される。つまり、ADコンバータ51,52は、ピンVREFH,VREFLを共用している。
【0018】
ここで、ピンAVCCに接続された信号線には、ボード基板、リードフレーム、ボンディングワイヤ等(何れも不図示)によって寄生インダクタL51が形成されている。同様に、ピンVREFHに接続された信号線には、寄生インダクタL52が形成されている。ピンVREFLに接続された信号線には、寄生インダクタL53が形成されている。ピンAVSSに接続された信号線には、寄生インダクタL54が形成されている。
【0019】
ピンINP1,INN1には、ADコンバータ51によってAD変換が行われるアナログの差動入力信号IN1の一方及び他方がそれぞれ半導体装置5の外部から供給される。ピンINP2,INN2には、ADコンバータ52によってAD変換が行われるアナログの差動入力信号IN2の一方及び他方がそれぞれ半導体装置5の外部から供給される。
【0020】
ピンOUT1では、ADコンバータ51によるAD変換結果であるデジタルの出力信号(以下、出力信号OUT1と称す)が半導体装置5の外部に出力される。ピンOUT2では、ADコンバータ52によるAD変換結果であるデジタルの出力信号(以下、出力信号OUT2と称す)が半導体装置5の外部に出力される。
【0021】
ADコンバータ51は、電荷再分配式の逐次比較型のADコンバータであって、2進探索アルゴリズムを用いてアナログの差動入力信号IN1をデジタルの出力信号OUT1に変換して出力する。ADコンバータ51は、差動の入力信号IN1に対して参照電圧VREFH,VREFLの差分を基準としてAD変換を行うように構成されているため、電源電圧AVCC,AVSSの変動除去比を向上させることができる。
【0022】
ADコンバータ51は、入力信号IN1の電位と、参照電圧VREFH,VREFLと、に基づいて複数の容量素子のそれぞれに蓄積された電荷を、複数のスイッチによって当該複数の容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、入力信号IN1についての逐次比較動作を行う。
【0023】
ADコンバータ51に設けられた複数の端子のうち、端子VH1には、参照電圧VREFHが供給される。端子VH2には、電源電圧AVCCが供給される。端子VL1には、参照電圧VREFLが供給される。端子VL2には、電源電圧AVSSが供給される。電源電圧AVCC,AVSSは、ADコンバータ51を駆動するのに用いられ、参照電圧VREFH,VREFLは、ADコンバータ51の逐次比較動作において用いられる。
【0024】
ADコンバータ52は、ADコンバータ51と同じく、電荷再分配式の逐次比較型のADコンバータであって、2進探索アルゴリズムを用いてアナログの差動入力信号IN2をデジタルの出力信号OUT2に変換して出力する。ADコンバータ52は、差動の入力信号IN2に対して参照電圧VREFH,VREFLの差分を基準としてAD変換を行うように構成されているため、電源電圧AVCC,AVSSの変動除去比を向上させることができる。
【0025】
ADコンバータ52は、入力信号IN2の電位と、参照電圧VREFH,VREFLと、に基づいて複数の容量素子のそれぞれに蓄積された電荷を、複数のスイッチによって当該複数の容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、入力信号IN2についての逐次比較動作を行う。
【0026】
ADコンバータ52に設けられた複数の端子のうち、端子VH1には、参照電圧VREFHが供給される。端子VH2には、電源電圧AVCCが供給される。端子VL1には、参照電圧VREFLが供給される。端子VL2には、電源電圧AVSSが供給される。電源電圧AVCC,AVSSは、ADコンバータ52を駆動するのに用いられ、参照電圧VREFH,VREFLは、ADコンバータ52の逐次比較動作において用いられる。
【0027】
図14は、半導体装置5において発生する干渉ノイズの伝搬経路を説明するための図である。
図15は、半導体装置5に設けられた各ADコンバータの動作を示すタイミングチャートである。
図16は、半導体装置5において発生するノイズを説明するための波形図である。
【0028】
一般的に、寄生インダクタL51~L54等のインダクタでは、急峻な電流の変化によってインピーダンスが大きく変化することが知られている。
【0029】
ここで、例えばADコンバータ52において、ADコンバータ51と非同期で、逐次比較動作の容量の切り替えが行われたとする(
図15参照)。このとき、ADコンバータ52の端子VH1,VL1(参照電圧VREFH,VREFLが供給される端子)では、容量の切り替えによる電荷の充放電によって電流が変化する。特に、デジタルの出力信号OUT2の上位ビットの値を決めるための比較動作では、大きな容量の切り替えが行われるため、電荷の充放電による電流の変化が急峻になる。このADコンバータ52の端子VH1,VL1における急峻な電流の変化が寄生インダクタL52,L53に伝わると、寄生インダクタL52,L53のインピーダンスは大きく変化する(
図16参照)。それにより、ADコンバータ51の端子VH1,VL1に供給される参照電圧VREFH,VREFLも大きく変化してしまう(
図16参照)。つまり、アグレッサであるADコンバータ52の端子VH1,VL1において発生したノイズは、ビクティムであるADコンバータ51の端子VH1,VL1に伝わってしまう。その結果、ADコンバータ51は、精度良く動作することができなくなってしまう。
【0030】
そこで、発明者らは、次に半導体装置6を検討した。
図17は、事前検討された半導体装置6の構成例を示す図である。半導体装置6は、半導体装置5と比較して、チップ50上にバイパスコンデンサC51をさらに備える。バイパスコンデンサC51は、チップ50内において、参照電圧VREFHが伝搬するADコンバータ51,52に共通の信号線と、参照電圧VREFLが伝搬するADコンバータ51,52に共通の信号線と、の間に設けられる。バイパスコンデンサC51の容量値は、例えば100pF~1nF程度である。半導体装置6のその他の構成については半導体装置5の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
図18は、半導体装置6において発生する干渉ノイズの伝搬経路を説明するための図である。
図19は、半導体装置6において発生するノイズを説明するための波形図である。
【0032】
半導体装置6では、半導体装置5の場合と同様に、ADコンバータ52の端子VH1,VL1において、逐次比較動作の容量の切り替えによる電荷の充放電によって電流が急峻に変化している。しかしながら、半導体装置6では、バイパスコンデンサC51によって寄生インダクタL52,L53のそれぞれに流れる電流の変化が抑制されるため、寄生インダクタL52,L53のそれぞれのインピーダンスの変化は小さくなる(
図19参照)。それにより、ADコンバータ51の端子VH1,VL1のそれぞれに供給される参照電圧VREFH,VREFLの変動は抑制される(
図19参照)。つまり、アグレッサであるADコンバータ52の端子VH1,VL1のそれぞれにおいて発生したノイズの、ビクティムであるADコンバータ51の端子VH1,VL1への伝搬は、抑制される。その結果、ADコンバータ51は、精度良く動作することができる。
【0033】
しかしながら、半導体装置6では、バイパスコンデンサC51の規模が大きいため、チップサイズが増大してしまう。
【0034】
そこで、発明者らは、次に半導体装置7を検討した。
図20は、事前検討された半導体装置7の構成例を示す図である。半導体装置7は、半導体装置6と比較して、チップ50上に、バイパスコンデンサC51の代わりに、バイパスコンデンサC51よりも規模の小さい抵抗素子R51,R52,R61,R62を備える。
【0035】
抵抗素子R51は、ピンVREFHと、ADコンバータ51の端子VH1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ52と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。抵抗素子R52は、ピンVREFLと、ADコンバータ51の端子VL1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ52と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。抵抗素子R61は、ピンVREFHと、ADコンバータ52の端子VH1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ51と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。抵抗素子R62は、ピンVREFLと、ADコンバータ52の端子VL1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ51と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。半導体装置7のその他の構成については、半導体装置6の場合と同様であるため、その説明を省略する。それにより、半導体装置7は、半導体装置6と比較して、回路規模の増大を抑制することができる。
【0036】
図21は、半導体装置7において発生する干渉ノイズの伝搬経路を説明するための図である。
図22は、半導体装置7において発生するノイズを説明するための波形図である。
【0037】
半導体装置7では、半導体装置5の場合と同様に、ADコンバータ52の端子VH1,VL1において、逐次比較動作の容量の切り替えによる電荷の充放電によって電流が急峻に変化している。しかしながら、半導体装置7では、抵抗素子R51,R52,R61,R62によって寄生インダクタL52,L53のそれぞれに流れる電流の変化が抑制されるため、寄生インダクタL52,L53のそれぞれのインピーダンスの変化は小さくなる(
図22参照)。それにより、ADコンバータ51の端子VH1,VL1のそれぞれに供給される参照電圧VREFH,VREFLの変動は抑制される(
図22参照)。つまり、アグレッサであるADコンバータ52の端子VH1,VL1のそれぞれにおいて発生したノイズの、ビクティムであるADコンバータ51の端子VH1,VL1への伝搬は、抑制される。しかしながら、抵抗素子R61,R62によるIRドロップにより、アグレッサであるADコンバータ52の端子VH1,VL1のそれぞれに供給される参照電圧VREFH,VREFLは大きく変動してしまう(
図22参照)。その結果、ADコンバータ52は、精度良く動作することができなくなってしまう。
【0038】
図23は、半導体装置7に設けられたADコンバータの理想的な逐次比較動作を説明するための図である。
図23の例では、ADコンバータ52が、アナログの入力信号IN2を4ビット幅のデジタルの出力信号OUT2に変換して出力している。
【0039】
まず、ADコンバータ52は、入力信号IN2をサンプリングし、サンプリングした入力信号IN2をホールドする。
【0040】
次に、ADコンバータ52は、入力信号IN2の電位と、参照電圧VREFH,VREFL(以下、纏めて参照電圧VREFとも称す)と、に基づいて複数の容量素子のそれぞれに蓄積された電荷を、複数のスイッチによって当該複数の容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、入力信号IN2についての逐次比較動作を行う。
【0041】
まず、ADコンバータ52は、出力信号OUT2を表す4ビットのうち最上位ビット(MSB)の値を決めるための比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ52は、サンプリングした入力信号IN2の電位と、最上位ビットが“1”に設定されたデジタル値4b’1000をDA変換値と、の比較を行う。入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1000のDA変換値以上の場合、出力信号OUT2の最上位ビットが“1”に確定し、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1000のDA変換値未満の場合、出力信号OUT2の最上位ビットが“0”に確定する。
図23の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1000のDA変換値以上であるため、出力信号OUT2の最上位ビットが“1”に確定する。
【0042】
その後、ADコンバータ52は、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、出力信号OUT2の上位第2ビット(最上位から2番目のビット)の値を決めるための比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ52は、サンプリングした入力信号IN2の電位と、上位第2ビットが“1”に設定されたデジタル値4b’1100のDA変換値と、の比較を行う。入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値以上の場合、出力信号OUT2の上位第2ビットが“1”に確定し、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値未満の場合、出力信号OUT2の上位第2ビットが“0”に確定する。
図23の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値以上であるため、出力信号OUT2の上位第2ビットが“1”に確定する。
【0043】
その後、ADコンバータ52は、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、出力信号OUT2の上位第3ビット(最上位から3番目のビット)の値を決めるための比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ52は、サンプリングした入力信号IN2の電位と、上位第3ビットが“1”に設定されたデジタル値4b’1110のDA変換値と、の比較を行う。入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1110のDA変換値以上の場合、出力信号OUT2の上位第3ビットが“1”に確定し、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1110のDA変換値未満の場合、出力信号OUT2の上位第3ビットが“0”に確定する。
図23の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1110のDA変換値未満であるため、出力信号OUT2の上位第3ビットが“0”に確定する。
【0044】
その後、ADコンバータ52は、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、出力信号OUT2の上位第4ビット(最下位ビット)の値を決めるための比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ52は、サンプリングした入力信号IN2の電位と、最下位ビットが“1”に設定されたデジタル値4b’1101のDA変換値と、の比較を行う。入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1101のDA変換値以上の場合、出力信号OUT2の最下位ビットが“1”に確定し、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1101のDA変換値未満の場合、出力信号OUT2の最下位ビットが“0”に確定する。
図23の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1101のDA変換値未満であるため、出力信号OUT2の最下位ビットが“0”に確定する。
【0045】
その結果、ADコンバータ52は、理想的には、アナログの入力信号IN2をAD変換して、デジタル値4b’1100の出力信号OUT2を出力する。
【0046】
図24は、半導体装置7に設けられたADコンバータの逐次比較動作において発生する課題を説明するための図である。
図24の例では、ADコンバータ52が、アナログの入力信号IN2を4ビット幅のデジタルの出力信号OUT2に変換して出力している。
【0047】
図24に示すように、ADコンバータ52は、出力信号OUT2の最上位ビットの確定後、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、出力信号OUT2の上位第2ビットの値を決めるための比較動作を行う。ここで、容量素子の接続の切り替えに伴う抵抗素子R61,R62によるIRドロップによって、ADコンバータ52に供給される参照電圧VREFH,VREFLは大きく変動する。それにより、ADコンバータ52は整定誤差により比較ミスしてしまう可能性がある。
図24の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値以上であるにも拘わらず、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値未満と判定されてしまっている。そのため、出力信号OUT2の上位第2ビットが誤って“0”に確定している。
【0048】
その結果、ADコンバータ52は、アナログの入力信号IN2を誤ってAD変換して、デジタル値4b’1011の出力信号OUT2を出力している。
【0049】
そこで、発明者らは、次に半導体装置8を検討した。
図25は、事前検討された半導体装置8の構成例を示す図である。半導体装置8は、半導体装置7と比較して、ADコンバータ51,52の代わりにADコンバータ61,62を備える。各ADコンバータ61,62は、逐次比較動作において冗長比較動作をさらに含むように構成されている。それにより、各ADコンバータ61,62は、抵抗素子R51,R52,R61,R62のIRドロップによる参照電圧VREFH,VREFLの変動によって、比較ミスした場合でも、冗長比較によって比較ミスをリカバリすることができる。
【0050】
図26は、半導体装置8に設けられたADコンバータの理想的な逐次比較動作を説明するための図である。
図26の例では、ADコンバータ62が、アナログの入力信号IN2を4ビット幅のデジタルの出力信号OUT2に変換して出力している。
【0051】
図26に示すように、ADコンバータ62は、出力信号OUT2の最上位ビットの確定後、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、出力信号OUT2の上位第2ビットの値を決めるための比較動作を行う。ここで、容量素子の接続の切り替えに伴う抵抗素子R61,R62によるIRドロップによって、ADコンバータ52に供給される参照電圧VREFH,VREFLは大きく変動する。それにより、ADコンバータ62は整定誤差により比較ミスしてしまう可能性がある。
図26の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値以上であるにも拘わらず、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値未満と判定されてしまっている。そのため、出力信号OUT2の上位第2ビットが誤って“0”に確定している。
【0052】
ここで、ADコンバータ62は、出力信号OUT2の上位第3ビットの値を決めるための比較動作の後、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、例えば上位第3ビットの値を決めるための比較動作と同じ分解能の冗長の比較動作を行う。
【0053】
具体的には、ADコンバータ62は、出力信号OUT2の上位第3ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位が、比較対象のデジタル値のDA変換値以上と判定した場合、次の冗長比較動作において、入力信号IN2の電位と、当該比較対象のデジタル値に4’b0010を加算したデジタル値のDA変換値と、の比較を行う。また、ADコンバータ62は、出力信号OUT2の上位第3ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位が、比較対象のデジタル値のDA変換値未満と判定した場合、次の冗長比較動作において、入力信号IN2の電位と、当該比較対象のデジタル値から4’b0010を減算したデジタル値のDA変換値と、の比較を行う。
【0054】
図26の例では、ADコンバータ62は、出力信号OUT2の上位第3ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位がデジタル値4’b1010のDA変換値以上と判定しているため、次の冗長比較動作では、入力信号IN2の電位と、デジタル値4’b1010に4’b0010を加算したデジタル値4’b1100と、の比較を行っている。
【0055】
そして、
図26の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4’b1100のDA変換値以上と判定されている。そのため、ADコンバータ62は、次の最下位ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位と、比較対象のデジタル値に4’b0001を加算したデジタル値のDA変換値と、の比較を行う。具体的には、ADコンバータ62は、最下位ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位と、デジタル値4’b1100に4’b0001を加算したデジタル値4’b1101と、の比較を行う。ADコンバータ62による最下位ビットの値を決めるための比較動作は、ADコンバータ52の場合と同様である。
【0056】
なお、入力信号IN2の電位がデジタル値4’b1100のDA変換値未満と判定された場合には、ADコンバータ62は、入力信号IN2の電位と、比較対象のデジタル値から4’b00001を減算したデジタル値のDA変換値と、比較を行う。
【0057】
このように、理想的には、ADコンバータ62は、抵抗素子R61,R62のIRドロップによる参照電圧VREFH,VREFLの変動によって、比較ミスした場合でも、冗長比較によって比較ミスをリカバリすることができる。ADコンバータ61も同様である。
【0058】
しかしながら、実際には、ADコンバータ62は、冗長比較動作においても、抵抗素子R61,R62のIRドロップによる参照電圧VREFH,VREFLの変動によって、比較ミスする可能性が高い(
図27参照)。
【0059】
そこで、干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ、精度良く動作することが可能な半導体装置1が見出された。
【0060】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置1の構成例を示すブロック図である。半導体装置1は、例えばMCUであって、複数のADコンバータを備える。本実施の形態では、半導体装置1が、チップ10上に、2個のADコンバータ11,12を備える場合を例に説明する。
【0061】
具体的には、半導体装置1は、チップ10上に、ADコンバータ11,12と、制御回路13,14と、可変インピーダンス回路Z11,Z12と、可変インピーダンス回路Z21,Z22と、を備える。また、半導体装置1には、チップ10と半導体装置1の外部とのインタフェースを行う複数のピンが設けられている。
【0062】
ピンAVCCには、ADコンバータ11,12に共通の高電位側の電源電圧(以下、電源電圧AVCCと称す)が半導体装置1の外部から供給される。ピンAVSSには、ADコンバータ11,12に共通の低電位側の電源電圧(以下、電源電圧AVSSと称す)が半導体装置1の外部から供給される。つまり、ADコンバータ11,12は、ピンAVCC,AVSSを共用している。
【0063】
ピンVREFHには、ADコンバータ11,12に共通の高電位側の参照電圧(以下、参照電圧VREFHと称す)が半導体装置1の外部から供給される。ピンVREFLには、ADコンバータ11,12に共通の低電位側の参照電圧(以下、参照電圧VREFLと称す)が半導体装置1の外部から供給される。つまり、ADコンバータ11,12は、ピンVREFH,VREFLを共用している。
【0064】
ここで、ピンAVCCに接続された信号線には、ボード基板、リードフレーム、ボンディングワイヤ等(何れも不図示)によって寄生インダクタL1が形成されている。同様に、ピンVREFHに接続された信号線には、寄生インダクタL2が形成されている。ピンVREFLに接続された信号線には、寄生インダクタL3が形成されている。ピンAVSSに接続された信号線には、寄生インダクタL4が形成されている。
【0065】
ピンINP1,INN1には、ADコンバータ11によってAD変換が行われるアナログの差動入力信号IN1の一方及び他方がそれぞれ半導体装置1の外部から供給される。ピンINP2,INN2には、ADコンバータ12によってAD変換が行われるアナログの差動入力信号IN2の一方及び他方がそれぞれ半導体装置1の外部から供給される。
【0066】
ピンOUT1では、ADコンバータ11によるAD変換結果であるデジタルの出力信号(以下、出力信号OUT1と称す)が半導体装置1の外部に出力される。ピンOUT2では、ADコンバータ12によるAD変換結果であるデジタルの出力信号(以下、出力信号OUT2と称す)が半導体装置1の外部に出力される。
【0067】
ADコンバータ11は、電荷再分配式の逐次比較型ADコンバータであって、2進探索アルゴリズムを用いてアナログの差動入力信号IN1を参照電圧VREFH,VREFLの差分を基準としたデジタルの出力信号OUT1に変換して出力する。ADコンバータ11は、差動の入力信号IN1に対して参照電圧VREFH,VREFLの差分を基準としてAD変換を行うように構成されているため、電源電圧AVCC,AVSSの変動除去比を向上させることができる。また、ADコンバータ11は、逐次比較動作において冗長比較動作をさらに含むように構成されている。
【0068】
ADコンバータ11に設けられた複数の端子のうち、端子VH1には、参照電圧VREFHが供給される。端子VH2には、電源電圧AVCCが供給される。端子VL1には、参照電圧VREFLが供給される。端子VL2には、電源電圧AVSSが供給される。電源電圧AVCC,AVSSは、ADコンバータ11を駆動するのに用いられ、参照電圧VREFH,VREFLは、ADコンバータ11の逐次比較動作の基準として用いられる。
【0069】
図2は、ADコンバータ11の具体的な構成例を示す図である。ADコンバータ11は、DAコンバータ111と、コンパレータ112と、逐次比較レジスタ回路113と、を備える。DAコンバータ111は、差動入力信号IN1の一方の入力信号INP1側に設けられたDAコンバータ111uと、差動入力信号IN1の他方の入力信号INN1側に設けられたDAコンバータ111dと、によって構成されている。DAコンバータ111uは、最小の容量値2^0・Cを示す容量素子Cu0,Cu1と、容量素子Cu1の容量値に対してバイナリ加重されたn-1(nは2以上の整数)個の容量素子Cu2~Cunと、容量素子Cuk(kは1~nの任意の何れか)と同じ容量値2^(k-1)・Cを示す冗長の容量素子Curと、容量素子Cu0,Cu1~Cun,Curのそれぞれに対応して設けられたスイッチSu0,Su1~Sun,Surと、を備える。DAコンバータ111dは、最小の容量値2^0・Cを示す容量素子Cd0,Cd1と、容量素子Cd1の容量値に対してバイナリ加重されたn-1(nは2以上の整数)個の容量素子Cd2~Cdnと、容量素子Cdk(kは1~nの任意の何れか)と同じ容量値2^(k-1)・Cを示す冗長の容量素子Cdrと、容量素子Cd0,Cd1~Cdn,Cdrのそれぞれに対応して設けられたスイッチSd0,Sd1~Sdn,Sdrと、を備える。なお、DAコンバータ111は、入力信号IN1の電位をサンプリングしてホールドする機能も有する。
【0070】
ADコンバータ11は、DAコンバータ111において、入力信号IN1の電位と、参照電圧VREFH,VREFLと、に基づいて複数の容量素子のそれぞれに蓄積された電荷を、複数のスイッチによって当該複数の容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、コンパレータ112及び逐次比較レジスタ回路113を用いて、DAコンバータ111の出力と、入力信号IN1の電位と、の逐次比較動作を行う。
【0071】
可変インピーダンス回路Z11は、ピンVREFHと、ADコンバータ11の端子VH1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ12と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。例えば、可変インピーダンス回路Z11は、インピーダンスの異なるm本の信号線Z11_1~Z11_mと、制御回路13からの制御信号に基づいてm本の信号線Z11_1~Z11_mの何れかを選択するスイッチSW11と、を有する。なお、mは2以上の整数である。
【0072】
可変インピーダンス回路Z12は、ピンVREFLと、ADコンバータ11の端子VL1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ12と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。例えば、可変インピーダンス回路Z12は、インピーダンスの異なるm本の信号線Z12_1~Z12_mと、制御回路13からの制御信号に基づいてm本の信号線Z12_1~Z12_mの何れかを選択するスイッチSW12と、を有する。
【0073】
制御回路13は、ADコンバータ11の動作を制御するとともに、可変インピーダンス回路Z11,Z12のそれぞれのインピーダンスを制御する。
【0074】
ADコンバータ12は、電荷再分配式の逐次比較型ADコンバータであって、2進探索アルゴリズムを用いてアナログの差動入力信号IN2を参照電圧VREFH,VREFLの差分を基準としたデジタルの出力信号OUT2に変換して出力する。ADコンバータ12は、差動の入力信号IN2に対して参照電圧VREFH,VREFLの差分を基準としてAD変換を行うように構成されているため、電源電圧AVCC,AVSSの変動除去比を向上させることができる。また、ADコンバータ12は、逐次比較動作において冗長比較動作をさらに含むように構成されている。
【0075】
ADコンバータ12に設けられた複数の端子のうち、端子VH1には、参照電圧VREFHが供給される。端子VH2には、電源電圧AVCCが供給される。端子VL1には、参照電圧VREFLが供給される。端子VL2には、電源電圧AVSSが供給される。電源電圧AVCC,AVSSは、ADコンバータ12を駆動するのに用いられ、参照電圧VREFH,VREFLは、ADコンバータ12の逐次比較動作の基準として用いられる。
【0076】
ADコンバータ12の具体的な構成については、ADコンバータ11の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
可変インピーダンス回路Z21は、ピンVREFHと、ADコンバータ12の端子VH1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ11と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。例えば、可変インピーダンス回路Z21は、インピーダンスの異なるm本の信号線Z21_1~Z21_mと、制御回路14からの制御信号に基づいてm本の信号線Z21_1~Z21_mの何れかを選択するスイッチSW21と、を有する。
【0078】
可変インピーダンス回路Z22は、ピンVREFLと、ADコンバータ12の端子VL1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ11と共通の信号線から分岐した信号線上に設けられている。例えば、可変インピーダンス回路Z22は、インピーダンスの異なるm本の信号線Z22_1~Z22_mと、制御回路14からの制御信号に基づいてm本の信号線Z22_1~Z22_mの何れかを選択するスイッチSW22と、を有する。
【0079】
制御回路14は、ADコンバータ12の動作を制御するとともに、可変インピーダンス回路Z21,Z22のそれぞれのインピーダンスを制御する。
【0080】
(半導体装置1の具体例)
図3は、半導体装置1の具体例を半導体装置1aとして示す図である。
図3に示すように、半導体装置1aは、半導体装置1と比較して、可変インピーダンス回路Z11,Z12,Z21,Z22の具体例として可変抵抗回路R11,R12,R21,R22を備える。
【0081】
可変抵抗回路R11は、ピンVREFHと、ADコンバータ11の端子VH1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ12と共通の信号線から分岐した信号線の抵抗値を、制御回路13からの制御信号に応じて変更可能に構成されている。可変抵抗回路R12は、ピンVREFLと、ADコンバータ11の端子VL1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ12と共通の信号線から分岐した信号線の抵抗値を、制御回路13からの制御信号に応じて変更可能に構成されている。可変抵抗回路R21は、ピンVREFHと、ADコンバータ12の端子VH1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ11と共通の信号線から分岐した信号線の抵抗値を、制御回路14からの制御信号に応じて変更可能に構成されている。可変抵抗回路R22は、ピンVREFLと、ADコンバータ12の端子VL1と、の間の信号線のうち、ADコンバータ11と共通の信号線から分岐した信号線の抵抗値を、制御回路14からの制御信号に応じて変更可能に構成されている。
【0082】
半導体装置1aのその他の構成については、半導体装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
図4は、半導体装置1aにおいて発生する干渉ノイズの伝搬経路を説明するための図である。
図5は、半導体装置1aの動作を示すタイミングチャートである。
図6は、半導体装置1aにおいて発生するノイズを説明するための波形図である。
【0084】
一般的に、寄生インダクタL1~L4等のインダクタでは、急峻な電流の変化によってインピーダンスが大きく変化することが知られている。
【0085】
ここで、例えばADコンバータ12において、ADコンバータ11と非同期で、逐次比較動作の容量の切り替えが行われたとする。このとき、ADコンバータ12の端子VH1,VL1(参照電圧VREFH,VREFLが供給される端子)では、容量の切り替えによる電荷の充放電によって電流が変化する。特に、デジタルの出力信号OUT2の上位ビットの値を決めるための比較動作では、大きな容量の切り替えが行われるため、電荷の充放電による電流の変化が急峻になる。このADコンバータ12の端子VH1,VL1における急峻な電流の変化が寄生インダクタL2,L3に伝わると、寄生インダクタL2,L3のインピーダンスは大きく変化する。それにより、ADコンバータ11の端子VH1,VL1に供給される参照電圧VREFH,VREFLも大きく変化してしまう。つまり、アグレッサであるADコンバータ12の端子VH1,VL1において発生したノイズは、ビクティムであるADコンバータ11の端子VH1,VL1に伝わってしまう。その結果、ADコンバータ11は、精度良く動作することができなくなってしまう。
【0086】
そこで、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が急峻で干渉ノイズが大きくなりやすい、出力信号OUT2の上位ビットの値を決定するための比較動作では、可変抵抗回路R21,R22のそれぞれの抵抗値を高くする。それにより、寄生インダクタL2,L3のそれぞれに流れる電流の変化が抑制されるため、寄生インダクタL2,L3のそれぞれのインピーダンスの変化は小さくなる(
図6参照)。それにより、ADコンバータ11の端子VH1,VL1のそれぞれに供給される参照電圧VREFH,VREFLの変動は抑制される(
図6参照)。つまり、アグレッサであるADコンバータ12の端子VH1,VL1のそれぞれにおいて発生したノイズの、ビクティムであるADコンバータ11の端子VH1,VL1への伝搬は、抑制される。
【0087】
但し、可変抵抗回路R21,R22のそれぞれの抵抗値が大きいため、IRドロップにより、アグレッサであるADコンバータ12の端子VH1,VL1のそれぞれに供給される参照電圧VREFH,VREFLは大きく変動する(
図6参照)。それにより、ADコンバータ12は、出力信号OUT2の上位ビットの値を決めるための比較動作において、比較ミスする可能性がある。
【0088】
そこで、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が緩やかで干渉ノイズが小さくなる、出力信号OUT2の下位ビット(所定範囲の上位ビット以外の残りのビット)の値を決定するための比較動作、及び、出力信号OUT2を表す複数ビットの何れかを再決定するための冗長比較動作では、可変抵抗回路R21,R22のそれぞれの抵抗値を、上位ビットの値を決めるための比較動作のときよりも低くする。なお、冗長比較動作では、最上位ビットを含む所定範囲の上位ビットの値を決めるための比較動作のうち、最も下位のビットの値を決めるための比較動作と同等以上の分解能(同等以下の2分探索の重み)での比較が行われる。換言すると、冗長比較動作では、可変抵抗回路R21,R22のそれぞれの抵抗値が高く設定された状態で行われた比較動作と同等以上の分解能(同等以下の2分探索の重み)での比較が行われる。
【0089】
それにより、可変抵抗回路R21,R22によるIRドロップが抑制されるため、アグレッサであるADコンバータ12の端子VH1,VL1のそれぞれに供給される参照電圧VREFH,VREFLの変動は抑制される(
図6参照)。それにより、ADコンバータ12は、下位ビットの値を決定するための比較動作、及び、冗長比較動作を、精度良く実行することができる。
【0090】
本実施の形態では、ADコンバータ12がアグレッサで、ADコンバータ11がビクティムである場合を例に説明しているが、ADコンバータ11がアグレッサで、ADコンバータ12がビクティムの場合も同様である。
【0091】
即ち、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が急峻で干渉ノイズが発生しやすい、出力信号OUT1の上位ビットの値を決定するための比較動作では、干渉ノイズを抑制するために、可変抵抗回路R11,R12のそれぞれの抵抗値を高くする。また、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が緩やかで干渉ノイズが発生しにくい、出力信号OUT1の下位ビットの値を決定するための比較動作、及び、冗長比較動作では、IRドロップを抑制するために、可変抵抗回路R11,R12のそれぞれの抵抗値を、上位ビットの値を決めるための比較動作のときよりも低くする。
【0092】
それらにより、半導体装置1aでは、各ADコンバータ11,12が、干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ精度良く動作することができる。なお、制御回路13,14は、可変抵抗回路R11,R12,R21,R22のそれぞれによって設定される抵抗値を、動作環境等に応じて適宜変更可能である。
【0093】
図7は、半導体装置1aに設けられたADコンバータの逐次比較動作を説明するための図である。
図7の例では、ADコンバータ12が、アナログの入力信号IN2を4ビット幅のデジタルの出力信号OUT2に変換して出力している。
【0094】
まず、ADコンバータ12は、入力信号IN2をサンプリングし、サンプリングした入力信号IN2をホールドする。
【0095】
次に、ADコンバータ12は、入力信号IN2の電位と、参照電圧VREFH,VREFL(以下、纏めて参照電圧VREFとも称す)と、に基づいて複数の容量素子のそれぞれに蓄積された電荷を、複数のスイッチによって当該複数の容量素子の接続を切り替えて再分配しながら、入力信号IN2についての逐次比較動作を行う。
【0096】
なお、初期状態では、容量の切り替えに伴う電流の変化が急峻であり、干渉ノイズが発生しやすいため、可変抵抗回路R11,R12,R21,R22は高い抵抗値に設定されている。それにより、干渉ノイズは抑制される。
【0097】
まず、ADコンバータ12は、出力信号OUT2を表す4ビットのうち最上位ビット(MSB)の値を決めるための比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ12は、サンプリングした入力信号IN2の電位と、最上位ビットが“1”に設定されたデジタル値4b’1000のDA変換値と、の比較を行う。入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1000のDA変換値以上の場合、出力信号OUT2の最上位ビットが“1”に確定し、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1000のDA変換値未満の場合、出力信号OUT2の最上位ビットが“0”に確定する。
図7の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1000のDA変換値以上であるため、出力信号OUT2の最上位ビットが“1”に確定する。
【0098】
その後、ADコンバータ12は、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、出力信号OUT2の上位第2ビットの値を決めるための比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ12は、サンプリングした入力信号IN2の電位と、上位第2ビットが“1”に設定されたデジタル値4b’1100のDA変換値と、の比較を行う。入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値以上の場合、出力信号OUT2の上位第2ビットが“1”に確定し、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値未満の場合、出力信号OUT2の上位第2ビットが“0”に確定する。
【0099】
しかしながら、可変抵抗回路R21,R22の抵抗値が高いため、IRドロップによって、ADコンバータ12に供給される参照電圧VREFH,VREFLは大きく変動する。それにより、ADコンバータ12は整定誤差により比較ミスしてしまう可能性がある。
図7の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値以上であるにも拘わらず、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1100のDA変換値未満と判定されてしまっている。そのため、出力信号OUT2の上位第2ビットが誤って“0”に確定している。
【0100】
その後、容量の切り替えに伴う電流の変化が緩やかになり干渉ノイズが発生しにくい状態になると、可変抵抗回路R21,R22は低い抵抗値に切り替える。それにより、可変抵抗回路R21,R22によるIRドロップが抑制されるため、ADコンバータ12に供給される参照電圧VREFH,VREFLの変動は抑制される。それにより、ADコンバータ12は、それにより、ADコンバータ12は、下位ビットの値を決定するための比較動作、及び、冗長比較動作を、精度良く実行することができる。
【0101】
その後、ADコンバータ12は、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、出力信号OUT2の上位第3ビットの値を決めるための比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ12は、サンプリングした入力信号IN2の電位と、上位第3ビットが“1”に設定されたデジタル値4b’1010のDA変換値と、の比較を行う。
【0102】
その後、ADコンバータ12は、スイッチにより容量素子の接続を切り替えて、電荷の再分配を行うことにより、上位第3ビットの値を決めるための比較動作と同じ分解能(少なくとも上位第2ビットの値を決めるための比較動作と同等以上の分解能(同等以下の2分探索の重み))での冗長比較動作を行う。具体的には、ADコンバータ12は、上位第3ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位が、比較対象のデジタル値のDA変換値以上と判定した場合、次の冗長比較動作において、入力信号IN2の電位と、当該比較対象のデジタル値に4’b0010を加算したデジタル値のDA変換値と、の比較を行う。また、ADコンバータ12は、上位第3ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位が、比較対象のデジタル値のDA変換値未満と判定した場合、次の冗長比較動作において、入力信号IN2の電位と、当該比較対象のデジタル値から4’b0010を減算したデジタル値のDA変換値と、の比較を行う。
【0103】
図7の例では、ADコンバータ12は、出力信号OUT2の上位第3ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位がデジタル値4’b1010のDA変換値以上と判定しているため、次の冗長比較動作では、入力信号IN2の電位と、デジタル値4’b1010に4’b0010を加算したデジタル値4’b1100と、の比較を行う。
【0104】
そして、
図7の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4’b1100のDA変換値以上と判定されている。そのため、ADコンバータ62は、次の最下位ビットの値を決めるための比較動作において、入力信号IN2の電位と、デジタル値4’b1100に4’b0001を加算したデジタル値4’b1101と、の比較を行う。例えば、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1101のDA変換値以上の場合、出力信号OUT2の最下位ビットが“1”に確定し、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1101のDA変換値未満の場合、出力信号OUT2の最下位ビットが“0”に確定する。
図7の例では、入力信号IN2の電位がデジタル値4b’1101のDA変換値未満であるため、出力信号OUT2の最下位ビットが“0”に確定する。
【0105】
その結果、ADコンバータ12は、アナログの入力信号IN2をAD変換して、デジタル値4b’1100の出力信号OUT2を出力する。
【0106】
このように、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が急峻で干渉ノイズが発生しやすい、出力信号OUT1の上位ビットの値を決定するための比較動作では、干渉ノイズを抑制するために、可変抵抗回路R11,R12のそれぞれの抵抗値を高くする。また、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が緩やかで干渉ノイズが発生しにくい、出力信号OUT1の下位ビットの値を決定するための比較動作、及び、冗長比較動作では、IRドロップを抑制するために、可変抵抗回路R11,R12のそれぞれの抵抗値を、上位ビットの値を決めるための比較動作のときよりも低くする。
【0107】
また、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が急峻で干渉ノイズが発生しやすい、出力信号OUT2の上位ビットの値を決定するための比較動作では、干渉ノイズを抑制するために、可変抵抗回路R21,R22のそれぞれの抵抗値を高くする。また、半導体装置1aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が緩やかで干渉ノイズが発生しにくい、出力信号OUT2の下位ビットの値を決定するための比較動作、及び、冗長比較動作では、IRドロップを抑制するために、可変抵抗回路R21,R22のそれぞれの抵抗値を、上位ビットの値を決めるための比較動作のときよりも低くする。
【0108】
それらにより、半導体装置1aでは、各ADコンバータ11,12が、干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ精度良く動作することができる。
【0109】
<実施の形態2>
図8は、実施の形態2に係る半導体装置2の構成例を示すブロック図である。半導体装置1が、2個のADコンバータ11,12を備えていたのに対し、半導体装置2は、1個のADコンバータ11を備えている。
【0110】
具体的には、半導体装置2は、チップ20上に、ADコンバータ11と、制御回路13と、可変インピーダンス回路Z11,Z12と、を備える。また、半導体装置2には、チップ20と半導体装置2の外部とのインタフェースを行うピンAVCC,AVSS,VREFH,VREFL,INP1,INP2,OUT1が少なくとも設けられている。
【0111】
ADコンバータ11、制御回路13、及び、可変インピーダンス回路Z11,Z12のそれぞれの構成については、半導体装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。また、ADコンバータ11、制御回路13、及び、可変インピーダンス回路Z11,Z12と、各ピンと、の接続関係については、半導体装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
ここで、ピンAVCCに接続された信号線には、ボード基板、リードフレーム、ボンディングワイヤ等(何れも不図示)によって寄生インダクタL1が形成されている。同様に、ピンVREFHに接続された信号線には、寄生インダクタL2が形成されている。ピンVREFLに接続された信号線には、寄生インダクタL3が形成されている。ピンAVSSに接続された信号線には、寄生インダクタL4が形成されている。
【0113】
(半導体装置2の具体例)
図9は、半導体装置2の具体例を半導体装置2aとして示す図である。
図9に示すように、半導体装置2aは、半導体装置2と比較して、可変インピーダンス回路Z11,Z12の具体例として可変抵抗回路R11,R12を備える。半導体装置2aのその他の構成については、半導体装置2の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
例えば、ADコンバータ11において、逐次比較動作の容量の切り替えが行われたとする。このとき、ADコンバータ11の端子VH1,VL1では、容量の切り替えによる電荷の充放電によって電流が変化する。特に、デジタルの出力信号OUT1の上位ビットの値を決めるための比較動作では、大きな容量の切り替えが行われるため、電荷の充放電による電流の変化が急峻になる。このADコンバータ11の端子VH1,VL1における急峻な電流の変化が寄生インダクタL2,L3に伝わると、寄生インダクタL2,L3のインピーダンスは大きく変化する。それにより、参照電圧VREFH,VREFLが伝搬する信号線に発生するノイズは大きくなる。それにより、参照電圧VREFH,VREFLが伝搬する信号線を共用する他の回路(不図示)にノイズが伝わって、当該他の回路が精度良く動作することができなくなってしまう。
【0115】
そこで、半導体装置2aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が急峻で干渉ノイズが発生しやすい、出力信号OUT1の上位ビットの値を決定するための比較動作では、干渉ノイズを抑制するために、可変抵抗回路R11,R12のそれぞれの抵抗値を高くする。また、半導体装置2aは、容量の切り替えに伴う電流の変化が緩やかで干渉ノイズが発生しにくい、出力信号OUT1の下位ビットの値を決定するための比較動作、及び、冗長比較動作では、IRドロップを抑制するために、可変抵抗回路R11,R12のそれぞれの抵抗値を、上位ビットの値を決めるための比較動作のときよりも低くする。それにより、半導体装置2aでは、ADコンバータ11が、干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ精度良く動作することができる。
【0116】
<実施の形態3>
図10は、実施の形態3に係る半導体装置3の構成例を示すブロック図である。半導体装置3は、半導体装置2と比較して、可変インピーダンス回路Z11,Z12の代わりにスイッチSW31,SW32を備える。
【0117】
スイッチSW31は、ピンVREFH及びピンAVCCと、ADコンバータ11の端子VH1と、の間に設けられ、制御回路13からの制御信号に応じてピンVREFH及びピンAVCCの何れかを選択して、ADコンバータ11の端子VH1に接続する。スイッチSW32は、ピンVREFL及びピンAVSSと、ADコンバータ11の端子VL1と、の間に設けられ、制御回路13からの制御信号に応じてピンVREFL及びピンAVSSの何れかを選択して、ADコンバータ11の端子VL1に接続する。
【0118】
図11は、半導体装置3の動作を示すタイミングチャートである。まず、半導体装置3は、容量の切り替えに伴う電流の変化が急峻で干渉ノイズが発生しやすい、出力信号OUT1の上位ビットの値を決定するための比較動作では、スイッチSW31,SW32によってピンAVCC,AVSSとADコンバータ11の端子VH1,VL1とを接続する。ここで、ADコンバータ11は差動の入力信号IN1に対して参照電圧VREFH,VREFLの差分を基準としてAD変換を行うように構成されているため、電源電圧AVCC,AVSSの変動除去比は高い。そのため、ADコンバータ11のVH1,VL1に発生したノイズの伝搬(即ち干渉ノイズ)は抑制される。
【0119】
また、半導体装置3は、容量の切り替えに伴う電流の変化が緩やかで干渉ノイズが発生しにくい、出力信号OUT1の下位ビットの値を決定するための比較動作、及び、冗長比較動作では、スイッチSW31,SW32によってピンVREFH,VREFLとADコンバータ11の端子VH1,VL1とを接続する。それにより、半導体装置3では、ADコンバータ11が、干渉ノイズの伝搬を抑制しつつ精度良く動作することができる。
【0120】
同様にして、半導体装置1は、可変インピーダンス回路Z11,Z12の代わりにスイッチSW31,SW32を備え、可変インピーダンス回路Z21,Z22の代わりにスイッチSW41,SW42を備えてもよい。
図12は、半導体装置3aの構成例を示すブロック図である。半導体装置3aは、半導体装置1と比較して、可変インピーダンス回路Z11,Z12の代わりにスイッチSW31,SW32を備え、可変インピーダンス回路Z21,Z22の代わりにスイッチSW41,SW42を備える。
【0121】
スイッチSW41は、ピンVREFH及びピンAVCCと、ADコンバータ12の端子VH1と、の間に設けられ、制御回路14からの制御信号に応じてピンVREFH及びピンAVCCの何れかを選択して、ADコンバータ12の端子VH1に接続する。スイッチSW42は、ピンVREFL及びピンAVSSと、ADコンバータ12の端子VL1と、の間に設けられ、制御回路14からの制御信号に応じてピンVREFL及びピンAVSSの何れかを選択して、ADコンバータ12の端子VL1に接続する。
【0122】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0123】
さらに本開示は、半導体装置1~3の処理の一部又は全部を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0124】
上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM(Random-Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid-State Drive)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0125】
1,1a 半導体装置
2,2a 半導体装置
3 半導体装置
10 チップ
20 チップ
11 ADコンバータ
12 ADコンバータ
13 制御回路
14 制御回路
L1~L4 寄生インダクタ
R11,R12 可変抵抗回路
R21,R22 可変抵抗回路
SW11,SW12 スイッチ
SW21,SW22 スイッチ
SW31,SW32 スイッチ
Z11,Z12 可変インピーダンス回路
Z11_1~Z11_m インピーダンス
Z12_1~Z12_m インピーダンス
Z21,Z22 可変インピーダンス回路
Z21_1~Z21_m インピーダンス
Z22_1~Z22_m インピーダンス