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特開2025-55878撮影システム、撮影方法、及び飛散防止部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025055878
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】撮影システム、撮影方法、及び飛散防止部材
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20250401BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20250401BHJP
   B28C 5/00 20060101ALI20250401BHJP
   B28C 5/32 20060101ALI20250401BHJP
   B28C 7/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N21/17 A
B28C5/00
B28C5/32
B28C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023165294
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立岩 華英
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正智
【テーマコード(参考)】
2G059
4G056
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059FF01
2G059HH02
2G059KK04
2G059LL04
2G059NN05
4G056AA06
4G056AA08
4G056CB23
4G056CC04
4G056CD01
4G056DA08
4G056DA09
(57)【要約】
【課題】混練装置からの混練体の飛散が抑制された撮影システム、撮影方法、及び撮影システムに好適に用いられる飛散防止部材を提供する。
【解決手段】内部で混練体を混練する混練装置と、前記混練装置の壁面の一部箇所に設けられた開口部と、相互に対向する第一開口及び第二開口を有する筒体と、前記筒体の内側で前記第一開口側の空間と前記第二開口側の空間とを区画するように設けられた、可視光を透過する第一透光部と、前記筒体の側面に設けられた、可視光を透過する第二透光部とを有し、前記第二開口が前記混練装置の前記開口部と連絡するように配置された飛散防止部材と、前記飛散防止部材の外側から前記混練装置内を照明する照明ユニットと、前記飛散防止部材の外側から前記混練装置内の前記混練体を撮影して画像データを取得するカメラと、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で混練体を混練する混練装置と、
前記混練装置の壁面の一部箇所に設けられた開口部と、
相互に対向する第一開口及び第二開口を有する筒体と、前記筒体の内側で前記第一開口側の空間と前記第二開口側の空間とを区画するように設けられた、可視光を透過する第一透光部と、前記筒体の側面に設けられた、可視光を透過する第二透光部とを有し、前記第二開口が前記混練装置の前記開口部と連絡するように配置された飛散防止部材と、
前記飛散防止部材の外側から前記混練装置内を照明する照明ユニットと、
前記飛散防止部材の外側から前記混練装置内の前記混練体を撮影して画像データを取得するカメラと、を備える撮影システム。
【請求項2】
前記照明ユニットは、前記第一透光部を介して前記混練装置内を照明し、
前記カメラは、前記第二透光部を介して前記混練体を撮影することを特徴とする、請求項1に記載の撮影システム。
【請求項3】
前記筒体は角筒状を呈し、
前記第二透光部は前記筒体の一側面であることを特徴とする、請求項1に記載の撮影システム。
【請求項4】
前記第一透光部及び前記第二透光部は板状の部材からなり、
前記筒体は、前記第二透光部とU字状を呈する枠体で構成され、
前記第一透光部及び前記第二透光部は前記枠体に対して着脱自在であることを特徴とする、請求項3に記載の撮影システム。
【請求項5】
前記筒体の前記第二透光部とは異なる内側面は、可視光の反射が抑制された材料で構成されたことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮影システム。
【請求項6】
前記第一透光部は、前記混練装置の前記開口部に対する位置を変更可能に構成されたことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮影システム。
【請求項7】
前記混練装置の壁面に固定された二つの支柱部と
前記支柱部を連絡する連絡部材を有し、
前記カメラは、前記連絡部材に配置されたことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮影システム。
【請求項8】
壁面の一部箇所に開口部を有する混練装置内の混練体の画像データを取得する撮影方法であって、
可視光を透過する透光部を有する飛散防止部材で前記開口部を覆った後に、前記混練体の混練を開始して、前記飛散防止部材の外側から前記混練体の画像データを取得することを特徴とする、撮影方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の撮影システムに用いられる、飛散防止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練装置内の混練体の画像データを取得する撮影システム、及び撮影方法に関する。また、本発明は、上記撮影システムに用いられる飛散防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、「混練体」とは、水等の液体と、粉体と、必要に応じて砂利や砂等の骨材等を混ぜ合わせたものであり、例えば、水と、セメント、フライアッシュ、高炉スラグ等の建設用建材と、骨材とを混ぜ合わせたものを指す。具体的な混練体としては、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタル、ジオポリマー、フレッシュペースト等が挙げられる。
【0003】
フレッシュコンクリート等の混練体は、目的とする用途や品質に合わせて調整された配合に基づいて、混練装置内で所定の時間混練されることで製造される。この際、配合や混練時間が同じであっても、材料の含水率や外気温等が変動することで、製造された混練体の品質が変動してしまう場合がある。
【0004】
従来、混練装置内で混練される混練体の品質の予測は、主に熟練した作業者の目視による確認で行われていた。より詳細には、混練装置には開閉可能な覗き穴が設けられるのが典型的であり、作業者は当該覗き穴から混練体を目視で観察していた。そして、作業者が感覚と経験に基づいて、所望の品質を有する混練体を製造できるか否かを判断して、適宜加水等の作業が行われ、製造条件が調整されていた。しかし、上記判断は人間が行うものであるため、作業者によって判断が異なる場合がある。
【0005】
これに対し、本出願人は、混練装置内の混練体の画像データを含む入力データと、混練体の品質に関する出力データとの組み合わせを複数用いた機械学習によって予測モデルを作成し、当該予測モデルに混練体の画像データを含む入力データを入力して得られた出力データを用いて、フレッシュコンクリート等の混練体の品質を予測する方法(以下、便宜上、「品質予測方法」という。)の開発を進めている(例えば下記特許文献1参照)。上記品質予測方法は、人間の感覚や経験によらなくても、短時間かつ高精度での混練体の品質予測に資する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6782867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
混練装置内の混練体の画像データを取得するに際しては、混練装置内からの混練体の飛散を抑制しながら、混練体を撮影することが好ましい。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、混練装置からの混練体の飛散が抑制された撮影システム、及び撮影方法を提供することを目的とする。また、本発明は上記撮影システムに好適に用いられる飛散防止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撮影システムは、
内部で混練体を混練する混練装置と、
前記混練装置の壁面の一部箇所に設けられた開口部と、
相互に対向する第一開口及び第二開口を有する筒体と、前記筒体の内側で前記第一開口側の空間と前記第二開口側の空間とを区画するように設けられた、可視光を透過する第一透光部と、前記筒体の側面に設けられた、可視光を透過する第二透光部とを有し、前記第二開口が前記混練装置の前記開口部と連絡するように配置された飛散防止部材と、
前記飛散防止部材の外側から前記混練装置内を照明する照明ユニットと、
前記飛散防止部材の外側から前記混練装置内の前記混練体を撮影して画像データを取得するカメラと、を備える。
【0010】
本発明者らは、混練体が外部に飛散することを抑制しながら、混練体の画像データを取得するために、筒体であって、当該筒体の一対の開口の間に配置された透光部(「第一透光部」に対応する。)を有する飛散防止部材を配置することを検討した。しかし、この場合では、飛散防止部材の内部が暗くなりやすく鮮明な画像データを取得しにくい、又は、照明ユニットとカメラの位置関係の調整がしにくい等の問題があった。
【0011】
これに対し、本発明者らは鋭意検討の結果、飛散防止部材の側面に、可視光を透過する透光部(「第二透光部」に対応する。)を設けることで、混練体の飛散を抑制しつつ、好適に混練体を撮影できることを見出し、上記構成を案出した。
【0012】
上記構成によれば、第一透光部及び第二透光部の両者を利用して、混練体の画像データを取得することが可能である。第二透光部は、例えばカメラが混練体を撮影するための窓として利用できる。具体的には、第一透光部を介して混練装置内を照明するように照明ユニットを配置しつつ、第二透光部から混練体の写真を撮影できる。特に、この場合、照明ユニットが対向する第一透光部と、カメラが対向する第二透光部とを互いに異ならせることで、第一透光部でわずかに反射される可視光がカメラに取り込まれにくくなり、カメラが取得する画像内に照明ユニットが写りこむことが抑制される。
【0013】
また、第二透光部は、飛散防止部材の内部を点検するための窓としても利用できる。例えば、照明ユニットとカメラの両者を第一透光部に対向して配置した場合には、第二透光部は当該窓として機能する。飛散防止部材の内部では、混練体に含まれる材料由来の粉塵や、スラリー状の混練体が付着することが想定される。特に、粉塵の付着状態は、スラリー状の混練体の付着状態よりも確認が難しいが、側面に設けられた第二透光部からの視認できることで、確認が容易になる。
【0014】
さらに、飛散防止部材が、第一透光部に加えて第二透光部を有することで、飛散防止部材の外部から混練装置内に取り込まれる可視光を増加させやすくなるという効果も期待できる。
【0015】
飛散防止部材により、混練装置の開口部が覆われるため、混練体が外部に飛散することが抑制される。また、飛散防止部材は混練装置とは独立した部材であるため、当該飛散防止部材の清掃又は交換が容易である。
【0016】
上記撮影システムにおいて、
前記照明ユニットは、前記第一透光部を介して前記混練装置内を照明し、
前記カメラは、前記第二透光部を介して前記混練体を撮影しても構わない。
【0017】
前述の通り、上記構成によれば、第一透光部によって反射された一部の可視光がカメラに入射されにくく、カメラに照明ユニットが写りこむことが抑制できる。
【0018】
上記撮影システムにおいて、
前記筒体は角筒状を呈し、
前記第二透光部は前記筒体の一側面であっても構わない。
【0019】
上記構成によれば、飛散防止部材の一側面が第二透光部とされることで、開口部に対する照明ユニット及びカメラの位置関係の調整が容易になる。具体的には、照明ユニットをカメラよりも第二透光部の近くに配置しても、照明ユニットが発する可視光が遮られにくくなる。また、第二透光部を介して混練体を撮影する場合、カメラを混練装置の開口部に対して近づけやすくなるため、上記構成は好適である。
【0020】
上記撮影システムにおいて、
前記第一透光部及び前記第二透光部は板状の部材からなり、
前記筒体は、前記第二透光部とU字状を呈する枠体で構成され、
前記第一透光部及び前記第二透光部は前記枠体に対して着脱自在であっても構わない。
【0021】
上記構成によれば、第一透光部が枠体に対して着脱自在であるため、第一透光部の清掃や交換作業が容易となり、第一透光部の清掃や交換に要する時間が短縮される。なお、第二透光部に対しても同様である。
【0022】
上記撮影システムにおいて、
前記筒体の前記第二透光部とは異なる内側面は、可視光の反射が抑制された材料で構成されても構わない。
【0023】
仮に、第二透光部とは異なる内側面が可視光を反射する場合には、当該内側面で反射された可視光がカメラに入射することで、カメラに照明ユニットの像が写りこむことが考えられる。これに対し、上記構成によれば、第二透光部とは異なる内側面に入射した可視光は、当該内側面で反射されにくくなる。これにより、照明ユニットの像がカメラに写り込むことが抑制される。
【0024】
可視光の反射が抑制された材料としては、木材、中密度繊維(MDF)材、顔料等の添加剤を含む樹脂材料等の材料が挙げられる。これらの材料は加工が容易であり、好適である。なお、可視光の反射を抑制する観点から、上記内側面を構成する部材の表面に対して、反射防止剤や例えば黒色の塗料が塗布されても構わない。
【0025】
また、上記撮影システムにおいて、
前記第一透光部は、前記混練装置の前記開口部に対する位置を変更可能に構成されても構わない。
【0026】
混練体の品質をより高精度に予測するためには、品質を予測する予測モデルの作成に供された画像データの照明条件や撮影条件となるべく近い条件で、混練体を撮影することが好ましい。上記構成は、目標とする照明条件や撮影条件を実現しやすくなるため、好適である。例えば照明ユニットを第一透光部に対向して配置しつつ、第一透光部の開口部に対する位置を変更することで、可視光の照明条件を容易に変更できる。同様に、カメラを第一透光部に対向して配置した場合には、カメラと混練体との位置関係等の撮影条件を容易に変更できる。
【0027】
また、予測モデルを作成する観点からは、上記構成は、混練体の照明の仕方や、カメラと混練体との位置関係を異ならせた複数の画像データを取得しやすくなるため、好適である。
【0028】
上記撮影システムは、
前記混練装置の壁面に固定された二つの支柱部と
前記支柱部を連絡する連絡部材を有し、
前記カメラは、前記連絡部材に配置されても構わない。
【0029】
上記撮影システムにおいて、カメラの設置方法は任意であるが、システムの配置に要するスペースを低減する観点から、混練装置の壁面に接続された状態で配置されても構わない。ここで、仮に、混練装置の壁面に設けられた一つの支柱の先端部分にカメラが設置された場合には、混練装置の振動によりカメラの振動が大きくなると考えられる。これに対し、上記構成によれば、カメラを支持する支持部は、二つの支柱部及び連絡部材から構成されるため、カメラの振動が小さくなる。
【0030】
本発明に係る撮影方法は、
壁面の一部箇所に開口部を有する混練装置内の混練体の画像データを取得する撮影方法であって、
可視光を透過する透光部を有する飛散防止部材で前記開口部を覆った後に、前記混練体の混練を開始して、前記飛散防止部材の外側から前記混練体の画像データを取得することを特徴とする。
【0031】
上記方法によれば、混練体の混練を開始する前に、開口部に対して飛散防止部材が配置される。これにより、混練体の外部への飛散を抑制しつつ、混練体の画像データを取得することが可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、混練装置からの混練体の飛散が抑制された撮影システム、及び撮影方法が提供される。また、本発明によれば、上記撮影システムに好適に用いられる飛散防止部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】撮影システムの構成例を示す斜視図である。
図2】撮影システムの模式的な断面図である。
図3A】飛散防止部材の斜視図である。
図3B図3Aに係る飛散防止部材から、透光部を取り外した状態の図面である。
図3C図3Aの飛散防止部材におけるC-C断面図である。
図3D】飛散防止部材をZ方向から見た時の図面である。
図4図2の飛散防止部材の周囲の拡大図である。
図5】カメラを支持する支持部の別例を示す図面である。
図6】照明ユニットとカメラとの配置関係の別例を示す図面である。
図7】飛散防止部材の別例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る混練体の撮影システム(以下、単に「撮影システム」という。)、及び混練体の撮影方法の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致していない。また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0035】
[撮影システムの全体構成]
図1は、撮影システムの構成例を示す斜視図である。また、図2は、撮影システムの模式的な断面図である。以下の各図では、Z方向を鉛直方向とし、Z方向に直交する平面をXY平面とする、X-Y-Z座標系が適宜参照される。
【0036】
また、以下の説明では、方向を表現する際に正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0037】
図1及び図2に示すように、撮影システム1は、混練装置2と、飛散防止部材3と、照明ユニット4と、カメラ6とを備える。撮影システム1は、混練装置2の内部で混練される混練体W1の画像データを取得するためのシステムである。
【0038】
撮影システム1によって取得した混練体W1の画像データは、例えば混練体W1の品質を予測する予測モデルの作成に供することができる。また、混練体W1の画像データは、作成済みの予測モデルに対する入力データとしても利用される。
【0039】
以下、撮影システム1の構成を説明した後、撮影システム1で実行可能な混練体W1の撮影方法について説明する。
【0040】
[混練装置]
混練装置2は、混練体W1を混練するための装置である。図2に示すように、混練装置2は、内部で混練体W1を混練する攪拌羽根20と、混練体W1を構成する材料が投入される投入口22と、内部で発生する粉塵を含む空気を排気する排気部24を備える。投入口22から所定の材料が投入され、攪拌羽根20によって、混練体W1が混練される。図2では、攪拌羽根20の回転軸20aが模式的に図示されている。
【0041】
また、混練装置2は、図2に示すように、+Z側に係る壁面2aに混練体W1を視認できる開口部26を有する。開口部26は、混練体W1を視認できればよく、ドリル等で壁面2aに設けられても構わない。また、開口部26は、複数種類の材料を投入するために予め設けられたものであっても構わないし、排気用に設けられた予備の開口であっても構わない。
【0042】
飛散防止部材3の設置を容易にする観点から、図2に示すように、開口部26は+Z側の壁面2aに位置することが好ましい。また、開口部26が壁面2aに位置することで、混練装置2内において、攪拌羽根20がなるべく写り込まない箇所を撮影するようにカメラ6を調整しやすい。
【0043】
[飛散防止部材]
図3Aは、飛散防止部材3の斜視図であり、図3Bは、図3Aに係る飛散防止部材3から、後述する透光部(11,12)を取り外した状態の図面である。また、図3Cは、図3Aの飛散防止部材3におけるC-C断面図である。さらに、図3Dは、飛散防止部材3をZ方向から見た時の図面である。図3Dでは、図示の便宜上、後述する透光部11が省略されて示されている。
【0044】
図3A図3Dに示すように、飛散防止部材3は、Z方向から見た時に角筒状を呈する筒体10と、透光部11とを有する。透光部11は、筒体10の+Z側に係る第一開口10aと-Z側に係る第二開口10bの間に設けられ、筒体10の内側で、第一開口10a側の空間と第二開口10b側の空間とを区画する。透光部11は可視光を透過する材料からなる板状の部材で構成される。
【0045】
筒体10は、図3Dに示すように、Z方向から見た時にU字状を呈する枠体13と、Y方向に関して対向する枠体13の内側面(15,16)を連絡する透光部12とから構成される。透光部12は可視光を透過する材料からなる板状の部材で構成される。
【0046】
可視光を透過する材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料やガラス材料等の無色透明な材料が挙げられる。透光部11が「第一透光部」に対応し、透光部12が「第二透光部」に対応する。
【0047】
枠体13は、可視光の反射が抑制された材料からなる板状の部材で構成される。これにより、枠体13の内側面14~16は、可視光を反射しにくくなる。可視光の反射が抑制された材料としては、木材や、中密度繊維(MDF)材、顔料等の添加剤を含む樹脂材料等が挙げられる。当該樹脂材料としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等が適宜採用できる。なお、枠体13を任意の材料で構成した上で、内側面14~16に対して反射防止剤や例えば黒色の塗料を塗布することで、内側面14~16における可視光の反射を抑制しても構わない。
【0048】
図3B及び図3Cに示すように、内側面15には、X方向に延伸する複数の溝部15aが設けられる。また、内側面16には、X方向に延伸する複数の溝部16aが設けられる。溝部15aと溝部16aは、Y方向に関して互いに対向する。内側面16における溝部16aの構造は、内側面15における溝部15aの構造と同様である。
【0049】
透光部11は、溝部15a及び溝部16aに差し込んだり、引き抜いたりすることで、枠体13に対して着脱自在に構成される。図3A及び図3Cでは、透光部11が+Z側に位置する溝部15a及び溝部16aに差し込まれた状態が図示されている。
【0050】
透光部11が差し込まれる溝部(15a,16a)を変更することで、開口部26に対する透光部11の位置を変更することができる。
【0051】
また、図3B及び図3Dに示すように、内側面15及び内側面16には、Z方向に延伸する一対の溝部(15b,16b)が設けられる。溝部15bと溝部16bはY方向に関して互いに対向し、内側面16における溝部16bの構造は、内側面15における溝部15bの構造と同様である。透光部12は、溝部15b及び溝部16bに差し込んだり、引き抜いたりすることで、枠体13に対して着脱自在に構成される。
【0052】
図3Dに示すように、飛散防止部材3の筒体10は、Z方向から見た時に混練装置2の開口部26を囲むように配置され、筒体10の-Z側に係る第二開口10bが開口部26と連絡される。これにより、開口部26から混練体W1の一部が飛散しても、当該混練体W1が外部に飛散することが抑制される。
【0053】
[照明ユニット]
図4は、図2の飛散防止部材3の周囲の拡大図である。照明ユニット4は、図4に示すように、飛散防止部材3の外側から混練装置2内に可視光L1を照射して混練体W1を照明する。より詳細には、照明ユニット4は透光部11を基準に、飛散防止部材3の内部空間とは反対側に配置され、透光部11を介して混練装置2内の混練体W1を照明する。
【0054】
照明ユニット4の構成は、混練体W1を照明できる限りにおいて任意である。一例として、照明ユニット4は、白熱電球やLEDを光源とする投光器である。
【0055】
[カメラ]
カメラ6は、図4に示すように、飛散防止部材3の外側から混練装置2内の混練体W1を撮影する。より詳細には、カメラ6は透光部12を基準に、飛散防止部材3の内部空間とは反対側に配置され、透光部12を介して混練体W1を撮影する。
【0056】
カメラ6は、図1及び図2に示すように、混練装置2が配置された工場内の天井又は壁等(不図示)に接続された支持部7に固定される。混練装置2が混練体W1を混練する振動により、カメラ6が振動するのを抑制する観点から、支持部7は混練装置2の壁面とは異なる面に接続されるのが好ましい。
【0057】
なお、支持部7は混練装置2の壁面2aに配置されてもよい。図5は、カメラ6を支持する支持部7の別例を示す図面である。図5に示すように、支持部7は、壁面2aに固定された二つの支柱部(7a,7b)と、二つの支柱部(7a,7b)を連絡する連絡部材7cを有しても構わない。連絡部材7cは自由端を有さないため、支持部7が混練装置2の壁面2aに接続される場合でも、混練装置2の振動によるカメラ6の振動が小さくなる。
【0058】
また、カメラ6の角度の調整を容易にする観点から、カメラ6は、角度調整部8aを介して連絡部材7cに固定されるのが好ましい。
【0059】
なお、図5に示すように、カメラ6と照明ユニット4が、共通の支持部7に配置されても構わない。図5では、照明ユニット4が角度調整部8bを介して、二つの支柱部(7a,7b)を連絡する連絡部材7dに配置される。
【0060】
以下、撮影システム1を用いて、混練体W1の画像データを取得する撮影方法の手順について説明する。
【0061】
[飛散防止部材の設置]
まず、図3Dを参照して述べたように、混練装置2の開口部26と筒体10の第二開口10bとが連絡するように、飛散防止部材3を配置する。この際、透光部11及び透光部12が枠体13に対して設置された状態で、飛散防止部材3を混練装置2の壁面2aに配置しても構わないし、枠体13が混練装置2の壁面2aに設置された後に、透光部11及び透光部12を枠体13に対して設置しても構わない。
【0062】
飛散防止部材3は、位置ズレ等を防ぐ観点から、壁面2aに固定されるのが好ましい。飛散防止部材3の固定方法は任意である。例えばL型の金具とネジを介して壁面2aに飛散防止部材3の枠体13が固定されても構わない。なお、混練装置2のいずれの壁面に開口部26が設けられ、飛散防止部材3が配置されるかは、混練装置2の構成に応じて適宜選択可能である。
【0063】
[照明ユニットとカメラの設置]
次に、図4を参照して述べたように、照明ユニット4とカメラ6が配置される。図4では、照明ユニット4が発する可視光L1の進行の態様が模式的に示されている。図4に示すように、透光部11に入射した可視光L1の大部分は透光部11を透過するものの、可視光L1の一部は透光部11で反射される。なお、以下では、可視光L1と区別する観点で、透光部11で反射された可視光L1を「可視光L2」と称する。
【0064】
可視光L2が、カメラ6に入射して、カメラ6が取得した画像データに照明ユニット4が写りこむことを抑制する観点から、照明ユニット4が透光部11の+Z側に配置された場合には、カメラ6を透光部12の-X側に配置するのが好ましい。この場合、透光部11が照明用の窓として機能し、透光部12が混練体W1の撮影用の窓として機能する。
【0065】
また、枠体13の内側面14は、可視光L1の反射が抑制された材料で構成されるのが好ましい。これにより、内側面14に対して入射された可視光L1が、カメラ6側に進行することが抑制され、カメラ6に照明ユニット4が写りこむことが抑制される。図4では、内側面14のみが図示されているが、内側面15及び内側面16に対しても同様である。
【0066】
さらに、カメラ6の光軸A1と、透光部12とがなす角度θ1は、0°~30°の範囲とされるのが好ましい。ここで、カメラ6の光軸A1とは、カメラ6に内蔵され、入射された可視光L1を撮像素子に集光するレンズ(不図示)の光軸であるものとして構わない。これにより、カメラ6が、開口部26を介して混練装置2内からより多くの可視光L1を受光できる。なお、角度θ1は、支持部7におけるカメラ6の角度を変更することで適宜調整可能である。
【0067】
[混練の開始]
そして、所定の材料が、混練装置2の投入口22から投入されて、混練装置2内で混練が開始される。
【0068】
当該材料は例えばセメント等の水硬性を示す材料を含むことが典型的であるため、投入後、なるべく早期に混練が開始されるのが好ましい。これに鑑みると、上記の通り、材料の投入前に、飛散防止部材3、照明ユニット4、及びカメラ6の設置が完了していることが好適である。
【0069】
[画像データの取得]
カメラ6が、開口部26を介して混練体W1を撮影することで、混練体W1の画像データが取得される。
【0070】
なお、混練体W1の混練が開始された後に、照明ユニット4の点灯及びカメラ6の撮影が開始されても構わないし、照明ユニット4が点灯状態とされ、かつ、カメラ6の撮影が開始された状態で、混練が開始されても構わない。
【0071】
また、材料の投入後、及び混練開始の直後は、混練装置2内で粉塵が発生しやすい。これに鑑みて、材料の混練を開始してから所定の時間が経過した後に、カメラ6の撮影を開始しても構わない。混練を開始してからカメラ6の撮影を開始するまでの時間は30秒以上が好ましく、1分以上がより好ましい。
【0072】
[後工程]
開口部26に対して、飛散防止部材3が配置されることで、外部に混練体W1が飛散することが抑制される。しかし、飛散防止部材3の内部には、開口部26から飛散した混練体W1が付着することが想定される。混練体W1の付着が蓄積して、透光部11及び透光部12の内面が汚れると、照明ユニット4が発する可視光L1が遮られたり、カメラ6の視野が遮られたりすることで、混練体W1の撮影が困難になる。
【0073】
したがって、混練体W1の撮影の実行後に、透光部11及び透光部12の内面は適宜清掃又は交換されることが好ましい。ここで、透光部11及び透光部12が、枠体13に対して着脱自在に構成されることで、清掃や交換の作業が容易に行える。なお、当該作業は、飛散防止部材3の設置の際に行っても構わない。
【0074】
透光部11を取り外す際は、透光部12を溝部(15b,16b)から引き抜いた後に、透光部11が溝部(15a,16a)から引き抜かれると想定される。ここで、透光部11及び透光部12を枠体13から取り外した状態では、開口部26から異物が混練装置2内に落下するおそれがある。当該異物としては、例えば作業者が所持する工具等が挙げられる。
【0075】
これに対し、図3Cを参照して述べたように、内側面(15,16)は、複数の溝部(15a,16a)を有するため、透光部11が設置されていたのよりも-Z側の溝部(15a,16a)を利用してもよい。具体的には、透光部12を引き抜く際に、-Z側に配置された溝部(15a,16a)に対して、透光部11と同様のサイズの板を差し込むことができる。これにより、透光部11を引き抜く際に、仮に異物が落下しても、当該板があることで当該異物が混練装置2内に落下しにくくなる。
【0076】
なお、上記においては、透光部11及び透光部12を清掃するものとして説明したが、例えば、枠体13に対する混練体W1の付着が蓄積した場合には、枠体13を壁面2aから取り外すことも可能である。
【0077】
上記の通り、撮影システム1及び上記撮影方法は、混練装置2とは別体の飛散防止部材3を用いることで、混練体W1の飛散を抑制しながら、混練体W1の画像データを取得できる。撮影システム1及び上記撮影方法は、種々の混練装置に対して適用が可能である。
【0078】
[変形例]
以下、撮影システム1の変形例について説明する。
【0079】
〈1〉 図6は、照明ユニット4とカメラ6との配置関係の別例を示す図面である。上記においては、照明ユニット4が透光部11の+Z側に配置され、カメラ6が透光部12の-X側に配置されるものとして説明したが、図6に示すように、照明ユニット4及びカメラ6の両者を、透光部11の+Z側に配置しても構わない。
【0080】
飛散防止部材3が、透光部11に加えて、透光部12を有することで、照明ユニット4とカメラ6の位置関係の調整が容易である。より詳細には、カメラ6よりも照明ユニット4を透光部12の近くに配置しても、透光部12は可視光L1を透過するため、可視光L1の進行が遮られにくくなり、開口部26を介して混練装置2内に可視光L1を好適に照射できる。
【0081】
図6の場合では、カメラ6が混練装置2内からより多くの可視光L1を受光する観点から、カメラ6の光軸A1と、透光部11とがなす角度θ2は、70°~90°の範囲とされるのが好ましい。
【0082】
また、図6では、透光部12から、飛散防止部材3の内部に対する混練体W1の付着状態が確認できる。つまり、図6では、透光部12は飛散防止部材3の点検用の窓としても機能する。
【0083】
〈2〉 また、カメラ6が透光部11の+Z側に配置され、照明ユニット4が透光部12の-X側に配置されても構わない。この場合、透光部11が混練体W1の撮影用の窓として機能し、透光部12が照明用の窓として機能する。
【0084】
〈3〉 上記においては、枠体13の内側面(15,16)に溝部(15a,16a)を設けることで、透光部11が枠体13に対して着脱自在とされた。しかし、透光部11を枠体13に対して着脱自在とする手段は任意である。例えば、透光部11は、着脱自在のネジ等を介して枠体13に固定されても構わない。透光部12に対しても同様である。
【0085】
〈4〉 図7は、飛散防止部材3の別例を示す斜視図である。上記においては、飛散防止部材3がZ方向から見た時に角筒状を呈し、一側面が透光部12で構成される例が示された。しかし、例えば図7に示すように、飛散防止部材3の筒体10は円筒状を呈し、側面の一部に透光部12が形成されても構わない。
【0086】
図7に示すように、筒体10の側面に透光部12を有することで、透光部12から混練体W1を撮影したり、飛散防止部材3の内部を点検したりすることが可能である。
【0087】
〈5〉 また、図示は省略するが、飛散防止部材3は、Z方向から見た時に、例えば三角筒状を呈し、その一側面が可視光L1を透過する透光部12とされても構わない。
【0088】
〈6〉 仮に透光部11及び透光部12の着脱ができない場合であっても、飛散防止部材3を混練装置2から取り外して、清掃又は交換しても構わない。本発明において、透光部11及び透光部12が着脱可能とされるかは任意である。
【符号の説明】
【0089】
1 : 撮影システム
2 : 混練装置
2a : 壁面
3 : 飛散防止部材
4 : 照明ユニット
6 : カメラ
7 : 支持部
7a,7b : 支柱部
7c,7d : 連絡部材
8a,8b : 角度調整部
10 : 筒体
10a : 第一開口
10b : 第二開口
11,12 : 透光部
13 : 枠体
14,15,16 : 内側面
15a,15b,16a,16b :溝部
20 : 攪拌羽根
20a : 回転軸
22 : 投入口
24 : 排気部
26 : 開口部
W1 : 混練体
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7