(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005594
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105821
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】岡井 俊介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB06
2C056EB31
2C056EC06
2C056EC30
2C056EE18
2C056FA10
2C056FB03
2C056HA07
(57)【要約】
【課題】使用環境にかかわらず筐体内の湿度を低下させる。
【解決手段】印刷装置1は、インクを吐出するノズルを有する4つのヘッド30と、ヘッド30が内部に配置される筐体8と、印刷媒体を支持可能なプラテン12と、筐体8の後方に設けられ、除湿空気を収容するチャンバーとを含む。筐体8は、チャンバーと連通する4つの第1開口81~84及び2つの第2開口85,86を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドが内部に配置される筐体と、
前記筐体の外部に設けられ、除湿機により生成された除湿空気を収容するチャンバーと、を備えており、
前記筐体は、前記チャンバーと連通する開口を有していることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記開口を介して前記チャンバー内の除湿空気が前記筐体内に供給されるように気流を生成する送風機をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記送風機は、前記開口に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
制御部を、さらに備えており、
前記制御部は、前記筐体内の湿度が第1所定値を超えていることを示す第1信号を受け取ったときに、前記開口を介して前記チャンバー内の除湿空気を前記筐体内に供給させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記筐体内の湿度が前記第1所定値以下の第2所定値以下であることを示す第2信号を受け取ったときに、前記筐体内への除湿空気の供給を停止させることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記開口を介して前記チャンバー内の除湿空気が前記筐体内に供給されるように気流を生成する送風機をさらに備えており、
前記制御部は、前記第1信号を受け取ったときに、前記送風機を駆動することを特徴とする請求項4又は5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記開口を介して前記チャンバー内の除湿空気が前記筐体内に供給されるように気流を生成する送風機をさらに備えており、
前記制御部は、前記第2信号を受け取ったときに、前記送風機の駆動を停止することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記ヘッドは、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有し、
前記開口は、前記ノズル面よりも上方にある第1開口を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記開口は、前記ノズル面よりも下方にある第2開口を有することを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第1開口に設けられた第1送風機と、
前記第2開口に設けられた第2送風機と、
制御部と、をさらに備えており、
前記制御部は、前記ヘッドから印刷媒体にインクを吐出する印刷期間において、前記第2送風機の駆動を停止することを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記筐体の内部と外部との間を第1方向に移動可能に構成され、印刷媒体を支持する支持部を、さらに備えており、
前記筐体の前記第1方向の一方の面には、前記支持部を通過させる通過口が形成されており、
前記第1開口は、前記筐体の前記第1方向の他方の面に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記筐体の内部と外部との間を第1方向に移動可能に構成され、印刷媒体を支持する支持部を、さらに備えており、
前記ヘッドは、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面を有し、
前記開口は、前記筐体の前記第1方向と交差する第2方向の面における、前記ノズル面と前記第2方向に重ならない位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記筐体の内部と外部との間を第1方向に移動可能に構成され、印刷媒体を支持する支持部を、さらに備えており、
前記筐体の前記第1方向の一方の面には、前記支持部を通過させる通過口が形成されており、
前記チャンバーは、前記筐体の前記第1方向の他方の面に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記筐体の内部と外部との間を第1方向に移動可能に構成され、印刷媒体を支持する支持部を、さらに備えており、
前記チャンバーは、前記筐体の前記第1方向と交差する第2方向の面に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記筐体の内部と外部との間を第1方向に移動可能に構成され、印刷媒体を支持する支持部と、
送風機と、をさらに備えており、
前記筐体の前記第1方向の一方の面には、前記支持部を通過させる通過口が形成されており、
前記送風機は、前記通過口を介して前記筐体の内部から外部に向かう気流を生成し、
前記開口は、前記筐体の前記第1方向の他方の面に形成され、
前記送風機は、前記第1方向において前記ヘッドに対して前記通過口とは反対側に位置することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記筐体は、加湿空気が供給される加湿空気供給口をさらに有し、
前記チャンバーに収容される除湿空気を生成する際に生じた水を貯留する除湿タンクと、
前記加湿空気供給口に供給する加湿空気を生成するための水を貯留する加湿タンクと、
前記除湿タンクと前記加湿タンクとを連通する連通流路と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に除湿空気を供給可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリントされたシート(印刷媒体)を加熱してインクを乾燥させる乾燥部を有するプリント装置(印刷装置)について記載されている。当該プリント装置においては、乾燥部は、筐体外の空気を筐体内に導入し、ヒータで昇温させた熱風を筐体内で循環させることで、筐体内の湿度を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリント装置の使用環境が多湿環境下であると、筐体外の空気を導入しても筐体内の湿度を低下させることができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、使用環境にかかわらず筐体内の湿度を低下させることが可能な印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、インクを吐出するヘッドと、前記ヘッドが内部に配置される筐体と、前記筐体の外部に設けられ、除湿空気を収容するチャンバーと、を備えており、前記筐体は、前記チャンバーと連通する開口を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の印刷装置によると、チャンバーの除湿空気が開口を介して筐体内に供給される。このため、使用環境にかかわらず、筐体内の湿度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の内部構造を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す印刷装置の内部構造を示す正面図である。
【
図4】
図3に示すIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図1に示す筐体を後方から見たときの背面図である。
【
図6】キャリッジを下方から見たときの模式図である。
【
図7】(a)は吸引機構の正面図であり、(b)は吸引機構の側面図である。
【
図8】
図4に示すVIII-VIII線に沿った要部断面図である。
【
図9】
図1に示す印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図10】
図1に示す印刷装置に印刷開始指令が入力されたときに実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】(a)はプラテンがセット位置から印刷前待機位置に搬送されたときの状況を示す図であり、(b)はプラテンが印刷前待機位置からセット位置に搬送されたときの状況を示す図である。
【
図12】
図1に示す印刷装置の除湿制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る印刷装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る印刷装置1を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、印刷装置1が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向及び前後方向(本発明の「第1方向」)が定義され、印刷装置1を前方から見て左右方向(前後方向と交差する方向:本発明の「第2方向」)が定義される。以下の説明では、左右方向を主走査方向、前後方向を副走査方向と称することもある。
【0010】
図1に示す印刷装置1はインクジェットプリンタであり、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行う。印刷装置1は、白、黒、イエロー、シアン、およびマゼンタの5色のインクを用いて、印刷媒体にカラー画像を印刷できる。印刷媒体は、インクを吐出して画像を形成することが可能であれば特に限定するものではなく、例えば、布帛、紙等である。本実施形態においては、印刷媒体として、例えば、ポリエステル繊維を含むTシャツをいう。印刷装置1が印刷媒体(Tシャツ)に印刷を実行する際は、予め前処理液が塗布された印刷媒体がプラテン12に配置される。前処理液は、前処理液上に吐出されたインクと反応することでインクの成分を凝集させ、滲みの発生を防ぐ。前処理液の揮発成分には、ギ酸などの有機酸が含まれている。
【0011】
以下では、5色のインクのうち白色のインクを「白インク」という。5色のインクのうち黒、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合「カラーインク」という。白インクとカラーインクとを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単に「インク」という。白インクは画像の白色を表す部分として、またはカラーインクの下地として印刷に用いられる。カラーインクは、白インクによる下地の上に吐出され、カラー画像の印刷に用いられる。
【0012】
図1~
図3を参照し、印刷装置1の外観構成を説明する。印刷装置1は、
図1に示すように、筐体8、プラテン12、搬送機構14、操作部15、表示画面16、チャンバー40、除湿機47(
図2参照)、及び、除湿タンク48(
図2参照)を含む。筐体8は、略直方体形状を有する。筐体8の前面8A(本発明の「一方の面」)の左右及び上下方向の略中央には、矩形状のプラテン開口(本発明の「通過口」)13が形成されている。筐体8内には、5色のインクが収容された5つのカートリッジ(不図示)が収納されている。プラテン(本発明の「支持部」)12は、
図2に示すように、略矩形平面形状を有する板状部材からなる。プラテン12の上面は、印刷媒体を支持する支持面12Aである。支持面12Aは、四角形状を有している。
【0013】
操作部15は、プラテン開口13よりも前方に位置するプラテン支持部37(後述する)を左右方向から挟む位置にそれぞれ設けられている。操作部15は、ユーザによる操作に応じた情報を後述の制御部80に出力する。ユーザは操作部15を操作することで、印刷装置1による印刷を開始するための印刷開始指令(印刷データ含む)、除湿空気の供給開始指令及び除湿空気の供給停止指令等を制御部80に入力できる。表示画面16は、筐体8の前面8Aにおいて、プラテン開口13よりも右側上部に設けられている。表示画面16は各種情報を表示する。
【0014】
搬送機構14は、印刷媒体が配置されるプラテン12を、プラテン開口13を通して筐体8の内部と外部との間において搬送する。プラテン12が
図2に示す筐体8内部の印刷搬送領域P3(
図2中二点鎖線で示す位置)に配置された際に、後述するヘッド30からインクが吐出されて印刷が行われる。
図2に示すように、搬送機構14は、プラテン支持部37、左右一対のレール38、伝達部材39、及び副走査モータ26(
図8参照)を有する。
【0015】
プラテン支持部37は、
図2及び
図3に示すように、プラテン12を下方から支持する。左右一対のレール38は、前後方向に延び、プラテン支持部37を前後方向に移動可能に支持する。伝達部材39は、プラテン支持部37と、副走査モータ26とに連結し、副走査モータ26の駆動に応じて、プラテン支持部37を前後方向、すなわち、副走査方向に移動させる。
【0016】
作業者は、プラテン12が筐体8の前面8Aよりも前側に配置された状態、即ち筐体8の外部で、プラテン12の支持面12Aに印刷媒体を配置する。
図2に示すプラテン12の位置は、プラテン12に印刷媒体を支持させるセット位置P1である。また、プラテン12は、印刷媒体に印刷する前に、セット位置P1から印刷前待機位置P2(
図2中二点鎖線で示す位置)に移動する。印刷前待機位置P2は、印刷搬送領域P3よりも後方であってプラテン12の搬送経路の後端部にある。印刷搬送領域P3は、プラテン12の搬送経路において、後述のヘッド30の主走査方向(左右方向)の移動経路と上下方向に重なる領域である。ヘッド30の主走査方向の移動経路の前後方向の幅は、最も後方のヘッド30(白ヘッド31)の後端と最も前方のヘッド30(カラーヘッド34)の前端との間である。
【0017】
図2~
図8を参照し、印刷装置1の筐体8内の構造を説明する。
図1及び
図2に示すように、筐体8は、枠体2、及び、枠体2の外周を覆い前面8A、後面8B、左側面8C、右側面8D、上面8E及び下面8Fを構成する外周パネル9を有する。
【0018】
枠体2は、
図2~
図4に示すように、シャフト57、58を含む前後方向に延びる複数のシャフト、左右方向に延びる複数のシャフト、シャフト55、56を含む上下方向に延びる複数のシャフトによって格子状に構成される。
【0019】
前面8Aには、上述のプラテン開口13が形成されている。後面8B(本発明の「他方の面」)には、
図5に示すように、4つの第1開口81~84と、2つの第2開口85,86が形成されている。これら第1開口81~84及び第2開口85,86は、外周パネル9の厚み方向に貫通しており、筐体8の内部と外部とを連通する。
【0020】
4つの第1開口81~84は、
図5に示すように、ヘッド30が主に配置される後述のメンテナンス位置B1、吐出領域B2、及び、ヘッド待機位置B3よりも上方に配置されている。つまり、これら第1開口81~84は、ヘッド30のノズル面311、321、331、341(後述する)よりも上方に位置する。また、これら第1開口81~84は、左右方向に沿って互いに離隔して配置されている。第1開口81は、左右方向において、後面8Bの中央部よりも右側に配置されている。第1開口84は、左右方向において、後面8Bの中央部よりも左側に配置されている。第1開口82,83は、左右方向において、後面8Bの中央部に配置されている。
【0021】
2つの第2開口85,86は、
図5に示すように、ヘッド30のノズル面311、321、331、341(後述する)よりも下方に位置する。また、第2開口85は、左右方向において、第1開口81,82間に配置されている。第2開口86は、左右方向において、第1開口83,84間に配置されている。
【0022】
なお、4つの第1開口81~84は、ノズル面311、321、331、341よりも上方に配置されておれば、少なくともいずれかが上下方向にずれて配置されていてもよい。また、2つの第2開口85,86も、ノズル面311、321、331、341よりも下方に配置されておれば、互いに上下方向にずれて配置されていてもよい。
【0023】
また、筐体8内には、
図2に示すように、一対の内壁71、72、仕切り板28、29(
図3参照)、ヘッド31~34、移動機構77、吸引機構73、74(
図3参照)、加湿機構60(
図3参照)、湿度センサ90、及び、送風機構95,96(
図3参照)が設けられている。移動機構77は、枠体2に固定されたガイドシャフト20及びキャリッジ6を含む。ガイドシャフト20は、前シャフト21、後シャフト22、左シャフト23、及び右シャフト24で構成される。搬送機構14は枠体2に固定される。
【0024】
一対の内壁71、72は、
図2~
図4に示すように、左右方向に沿って対向しつつ互いに離隔して配置されている。例えば、一対の内壁71、72は、
図2に示すように、平面視において、プラテン12の搬送経路を左右方向に挟んで配置されている。内壁71、72は、
図3に示すように、ガイドシャフト20よりも下方において上下方向及び前後方向に延び、枠体2に固定される。内壁71は、
図4に示すように、印刷搬送領域P3よりも左方に設けられ、シャフト57に固定される。内壁72は、印刷搬送領域P3よりも右方に設けられ、シャフト58に固定される。
【0025】
仕切り板28は、
図3及び
図4に示すように、ガイドシャフト20の下方、且つ、内壁71の左方において、枠体2に固定されている。仕切り板28は、前後方向及び左右方向に沿って延びている。仕切り板28の右端部は、内壁71の下端部と連結している。
【0026】
仕切り板29は、
図3及び
図4に示すように、ガイドシャフト20の下方、且つ、内壁72の右方において、枠体2に固定されている。仕切り板29は、前後方向及び左右方向に沿って延びている。仕切り板29の左端部は、内壁72の下端部と連結している。
【0027】
図4に示すように、仕切り板28の右前部には仕切り板28を上下方向に貫通する平面視円状の供給口75が形成されている。仕切り板29の左前部には仕切り板29を上下方向に貫通する平面視円状の供給口76が形成されている。供給口75と供給口76との位置関係は、特に制限されないが、本実施形態においては、前後方向において、供給口75は、供給口76よりも前方に形成される。これら供給口75、76には、図示しない配管が接続され、後述の加湿空気供給管61、62と接続される。
【0028】
図2に示すように、キャリッジ6は主走査方向に移動可能に前シャフト21と後シャフト22とに支持される。キャリッジ6は板状であり、前後左右方向に延びる。キャリッジ6は前シャフト21から後シャフト22まで延びる。
【0029】
キャリッジ6には、
図2及び
図6に示すように、白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34が設けられる。これら白ヘッド31、32及びカラーヘッド33、34により、本発明の「ヘッド」が構成されている。
【0030】
白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34はそれぞれ同じ構造を有し、本実施形態では直方体状を有する。以下では、白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34を総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、「ヘッド30」という。白ヘッド31、32は、
図6に示すように、キャリッジ6の後部に位置する。白ヘッド31はキャリッジ6の右後部に位置する。白ヘッド32は白ヘッド31よりも左側に位置し、白ヘッド31に対して前側にずれて配置されている。
【0031】
カラーヘッド33、34は、
図2及び
図6に示すように、白ヘッド31、32に対して副走査方向に沿って前側に位置する。カラーヘッド33、34は、それぞれ、左右方向において白ヘッド31、32と同じ位置に位置する。つまり、カラーヘッド34はカラーヘッド33よりも左側に位置し、カラーヘッド33に対して前側にずれて配置されている。
【0032】
図6に示すように、白ヘッド31の下面にはノズル面311が設けられる。ノズル面311は前後左右方向に延びる。ノズル面311には複数のノズル列312が形成される。複数のノズル列312は左右方向に並ぶ。各ノズル列312は複数のノズル313が前後方向に一列に等間隔に並んで構成される。複数のノズル313は開口であり、白インクを下方に吐出する。
【0033】
白ヘッド31の構成と同様に、白ヘッド32、カラーヘッド33、34の下面にはそれぞれノズル面321、331、341が設けられる。ノズル面321、331、341は前後左右方向に延びる。ノズル面321、331、341にはそれぞれ複数のノズル列322、332、342が形成される。複数のノズル列322、332、342はそれぞれ左右方向に並ぶ。複数のノズル列322、332、342は、それぞれ複数のノズル323、333、343が前後方向に一列に等間隔に並んで構成される。
【0034】
複数のノズル323は、白インクを下方に吐出する。複数のノズル列332にはそれぞれ異なる色のカラーインクが対応する。つまり、複数のノズル333は複数のノズル列332のそれぞれに対応する色のカラーインクを下方に吐出する。複数のノズル列342にはそれぞれ異なる色のカラーインクが対応する。複数のノズル343は複数のノズル列342のそれぞれに対応する色のカラーインクを下方に吐出する。
【0035】
移動機構77は、駆動ベルト98及び主走査モータ99を有する。キャリッジ6の後端部には、駆動ベルト98が連結する。駆動ベルト98は後シャフト22上に設けられ、左右方向に延びる。駆動ベルト98の左端部は主走査モータ99に連結する。主走査モータ99が駆動することで、駆動ベルト98は、キャリッジ6を前シャフト21及び後シャフト22に沿って左右方向に移動させる。つまり、移動機構77は、ヘッド30が搭載されたキャリッジ6を主走査方向に移動させる。
図2及び
図3は、キャリッジ6が移動範囲Rの右端に位置する状態を示す。
【0036】
図2及び
図3では、ヘッド30の移動範囲Rを、キャリッジ6が主走査方向に移動できる最大の範囲で示す。
図3に示すように、ヘッド30は、移動機構77により、主に、メンテナンス位置B1、吐出領域B2、及び、ヘッド待機位置B3の何れかに配置される。メンテナンス位置B1は、ヘッド30の移動範囲Rの左端部にあり、ヘッド30が図示しないワイパやキャップなどのメンテナンスユニットによりメンテナンスされる位置である。印刷装置1は、非印刷時にヘッド30をメンテナンス位置B1に移動し、メンテナンスユニットによるメンテナンスを行う。吐出領域B2は、主走査方向において、メンテナンス位置B1とヘッド待機位置B3との間、且つヘッド30の移動経路において、プラテン12の搬送経路(印刷搬送領域P3)と上下方向に重なる領域である。また、吐出領域B2は、ヘッド30がキャリッジ6によって通過する際に、印刷データに従ってヘッド30がインクを吐出し、プラテン12上の印刷媒体に印刷が行われる。ヘッド待機位置B3は、ヘッド30の移動範囲Rの右端にあり、作業者がヘッド30に対する清掃等の操作を行う場合に配置される位置である。印刷装置1は、例えば、ユーザの操作によって操作部15から入力された指示に基づき、ヘッド30をヘッド待機位置B3に移動させ、待機させる。
【0037】
印刷装置1は、印刷搬送領域P3において副走査モータ26の駆動によってプラテン12を副走査方向に移動させ、吐出領域B2において主走査モータ99の駆動によってキャリッジ6を主走査方向に移動させることで、印刷媒体がヘッド30に対して副走査方向及び主走査方向に相対的に移動する。
【0038】
ヘッド30を主走査方向へ移動させ、ヘッド30が印刷媒体と対向しているときに印刷媒体にインクを吐出させる動作を「吐出走査」という。印刷装置1は、吐出走査と、副走査方向へのプラテン12の移動を繰り返すことで、印刷媒体への印刷を行う。例えば、印刷装置1は吐出走査において白ヘッド31、32から白インクを吐出して印刷媒体に下地を形成する。印刷装置1は吐出走査において印刷媒体に形成された下地の上に、カラーヘッド33、34からカラーインクを吐出してカラー画像を印刷する。
【0039】
図3に示すように、吸引機構73、74は、主に印刷搬送領域P3、吐出領域B2及びこれら領域の近傍空間の空気を吸引する。主走査方向において、吸引機構73は、筐体8(
図1参照)の内部において搬送機構14の左側に設けられ、吸引機構74は、筐体8の内部において搬送機構14の右側に設けられる。吸引機構73、74は互いに左右対称の構成を有する。
【0040】
吸引機構73は、
図7に示すように、内壁71、3つのファン94、及び、フィルタユニット18を有する。内壁71の上面には、前後方向に長いスリット状の吸引口713が形成されている。
【0041】
内壁71は、
図7(a)に示すように、固定板70及び収容部19を有する。固定板70は、内壁71の上端において左右方向に延びる板状の部分である。固定板70は、
図4に示すように、前後方向に延びるシャフト57に固定される。収容部19は、箱状であり、フィルタユニット18を取外し可能に収容する。フィルタユニット18は、収容部19に収容されることで、内壁71の内部に収容される。フィルタユニット18は、前後方向に長い直方体形状を有している。また、フィルタユニット18は、フィルタと、フィルタを支持する支持体とを有する。フィルタは、例えば、複数の微小な孔が形成された樹脂製フィルタであり、空気中のミストや埃などの異物を吸着して回収する。
【0042】
3つのファン94は、
図7(a)に示すように、内壁71の左面の下部に設けられる。3つのファン94は、
図7(b)に示すように、各々前後方向に略等間隔で配置される。
図4に示すように、吸引機構73の各ファン94が駆動されると、内壁71の吸引口713から内壁71内に空気が吸い込まれる。内壁71内に吸い込まれた空気は、フィルタユニット18のフィルタを通過し、空気中の異物が回収される。異物が回収された空気は、ファン94の吸入口945から排気口946を介して、内壁71の内部の空間から排出される。即ち、ファン94が駆動された場合、
図7(a)に示すように、内壁71の内部の空間を矢印Kで示すように空気が流れる。
【0043】
吸引機構74は、
図4に示すように、吸引機構73の内壁71、3つのファン94、及びフィルタユニット18に各々対応する内壁72、3つのファン(不図示)、及びフィルタユニット(不図示)を有する。吸引機構74の上面には、吸引口713に対応する、前後方向に長いスリット状の吸引口723が形成される。吸引機構74の各ファンが駆動された場合、吸引口723から内壁72の内部の空間へと空気が流れる。その後、空気は当該空間の上方から下方へと流れる際にフィルタユニットのフィルタを通過する。そして、空間の下部からファンのある右方へと空気が流れ、空間から排出される。
【0044】
なお、吸引機構73、74は、内壁71、72及びファン94をそれぞれ有しておればよく、フィルタユニット18が設けられていなくてもよい。
【0045】
加湿機構60は、
図3に示すように、2つの加湿空気供給管61、62、加湿器66を有する。加湿器66は、吸引機構73の左側に配置された供給口75、及び、吸引機構74の右側に配置された供給口76に加湿された空気を供給する。加湿器66は、筐体8の内部、且つ、仕切り板29の下方に設けられる。また、加湿器66は、加湿タンク66A(
図4参照)、加湿駆動部661(
図9参照)、加湿器66内に空気を取り込むための吸入口69、2本のチューブ67、68及びファン662、663(
図9参照)を有する。加湿タンク66Aは、加湿に用いられる水を貯留する。なお、水以外の液体を用いて加湿してもよい。加湿タンク66Aには、
図4に示すように、配管(本発明の「連通流路」)49の一端が接続されている。配管49の他端は、除湿タンク48に接続されている。つまり、加湿タンク66Aと除湿タンク48は、配管49によって連通している。なお、加湿タンク66Aには、給水管が接続されてもよく、例えば水道、及び図示しない給水タンク等の外部装置から加湿タンク66Aに水が供給されてもよい。
【0046】
加湿駆動部661は、吸入口69を介して加湿器66内に取り込まれた空気を、加湿タンク66Aに貯留された水を使用して加湿する。加湿駆動部661は、蒸気式、気化式、超音波式、及び電気分解式等の任意の方式で空気を加湿してよい。チューブ67の一端は、加湿器66に接続され、他端は供給口75に接続される。チューブ68の一端は、加湿器66に接続され、他端は供給口76に接続される。
【0047】
ファン662は、加湿駆動部661により加湿された空気を、
図3に示すチューブ67を介して供給口75に供給する。ファン663は、加湿駆動部661により加湿された空気を、
図3に示すチューブ68を介して供給口76に供給する。供給口75に供給された加湿空気は、後述の加湿空気供給管61を介してプラテン12の支持面12A側に送られる。また、供給口76に供給された加湿空気も、後述の加湿空気供給管62を介してプラテン12の支持面12A側に送られる。つまり、加湿器66から供給された加湿空気は、プラテン12に支持された印刷媒体に向けて送られる。
【0048】
2つの加湿空気供給管61、62は、
図4及び
図8に示すように、枠体2(シャフト57,58)に固定されている。これら加湿空気供給管61、62は直管から構成されている。2つの加湿空気供給管61、62は、印刷搬送領域P3に配置されたプラテン12の周囲であって当該プラテン12の後方に配置されている。
【0049】
2つの加湿空気供給管61、62は、一方の端部に加湿空気供給口61A、62Aを有しており、他方の端部には、供給口75、76に接続された図示しない配管がそれぞれ接続されている。より詳細には、供給口75に接続された配管は、加湿空気供給管61に接続されている。供給口76に接続された配管は、加湿空気供給管62に接続されている。
【0050】
また、2つの加湿空気供給管61、62は、加湿空気供給口61A、62Aが印刷搬送領域P3に配置されたプラテン12の支持面12A側を向くように、前後方向及び左右方向に対して傾いて配置されている。2つの加湿空気供給口61A、62Aは前方を向いている。
【0051】
また、2つの加湿空気供給口61A、62Aは、
図8に示すように、上下方向において同じ位置に配置されている。より詳細には、2つの加湿空気供給口61A、62Aは、上下方向において、その中心軸(開口の中心を通る中心軸)からプラテン12の支持面12Aまでの距離が所定距離Tとなるように、プラテン12の上方に配置されている。そして、2つの加湿空気供給口61A、62Aは、印刷搬送領域P3に配置されたプラテン12の支持面12A上の空間領域(上下方向において、ヘッド30と支持面12Aとの間の領域)に向かって開口している。
【0052】
これら2つの加湿空気供給口61A、62Aから供給される加湿空気は、印刷搬送領域P3に配置されたプラテン12の後方の2つの角部近傍から、プラテン12の前方に向かって供給される。これにより、プラテン12とヘッド30の上下間の空間領域において、多くの加湿空気が供給される。
【0053】
湿度センサ90は、
図2に示すように、筐体8の内部に配置されている。より詳細には、湿度センサ90は、プラテン開口13よりも左側に配置され、筐体8の前面8Aの裏側に固定されている。また、湿度センサ90は、ヘッド30よりも上方に配置されている。そして、湿度センサ90は、筐体8の内部の湿度を検出し、制御部80に当該湿度を示す信号を出力する。
【0054】
送風機構95(本発明の「第2送風機」)は、
図3に示すように、2つのファン95A,95Bを有する。2つのファン95A,95Bは、左右方向において、一対のレール38よりも外側に配置され、且つ、一対の内壁71、72の内側に配置されている。また、2つのファン95A、95Bは、上下方向において、その中心が一対のレール38よりもやや下方に位置するように配置されている。また、送風機構95は、前後方向において、ヘッド30に対してプラテン開口13とは反対側に位置する。
【0055】
また、2つのファン95A,95Bは、筐体8の後面8Bを構成する外周パネル9に固定されている。より詳細には、ファン95Aは第2開口85に設けられており、ファン95Bは第2開口86に設けられている。ファン95Aは第2開口85を覆い、ファン95Bは第2開口86を覆っている。これら2つのファン95A,95Bが駆動された場合、後方から前方に向かって空気が流れる。つまり、送風機構95は、第2開口85,86を介して筐体8の外部(チャンバー40内)の空気を筐体8内に供給し、筐体8内の空気を後方から前方に向かって送風し、プラテン開口13を介して外部に排出する。
【0056】
また、2つのファン95A,95Bは、前後方向において、プラテン開口13と対向する位置に配置されている。このため、送風機構95によって送られた空気は、筐体8の内部からプラテン開口13を通って外部に効果的に排出される。
【0057】
送風機構96(本発明の「第1送風機」及び「送風機」)も、
図3に示すように、2つのファン96A,96Bを有する。また、送風機構96は、前後方向において、ヘッド30に対してプラテン開口13とは反対側に位置する。2つのファン96A,96Bは、筐体8の後面8Bを構成する外周パネル9に固定されている。より詳細には、ファン96Aは第1開口82に設けられており、ファン96Bは第1開口83に設けられている。ファン96Aは第1開口82を覆い、ファン96Bは第1開口83を覆っている。これら2つのファン96A,96Bが駆動された場合、上述の2つのファン95A,95Bと同様に、後方から前方に向かって空気が流れる。つまり、送風機構96も、第1開口82,83を介して筐体8の外部(チャンバー40内)の空気を筐体8内に供給し、筐体8内の空気を後方から前方に向かって送風し、プラテン開口13を介して外部に排出する。
【0058】
なお、送風機構95,96の少なくともいずれかが駆動されることで、筐体8内の空気がプラテン開口13から排出される気流が生じる。筐体8内に気流が生じることで、チャンバー40内の空気が第1開口81,84を介して筐体8内に供給される。なお、これら開口81~86が筐体8に形成されていることで、チャンバー40内の空気が筐体8内に自動的に流れる。
【0059】
チャンバー40は、筐体8の後方であって後面8Bに隣接して配置されている。チャンバー40は、枠体41と、シート42とを有し、略直方体形状を有する。枠体41は、上下方向に延びる4本の支柱41Aと、上枠41Bと、下枠41Cとを有する。上枠41Bは、左右方向に延びる2本の横枠と前後方向に延びる2本の横枠とを有し、長方形の枠状に形成されている。下枠41Cも、左右方向に延びる2本の横枠と前後方向に延びる2本の横枠とを有し、長方形の枠状に形成されている。枠体41は、上枠41Bと下枠41Cとが4本の支柱41Aによって連結されることで構成される。
【0060】
シート42は、枠体41の上方、左右の側方、及び、後方全体を覆うように配置されている。本実施形態におけるシート42は、半透明であるが、透明であってもよいし、不透明であってもよい。また、チャンバー40のシート42に代えて、板状のパネルが設けられていてもよい。要するに、チャンバー40は、内部に空気を収容する空間を有しておればよい。
【0061】
除湿機47及び除湿タンク48は、
図2及び
図4に示すように、チャンバー40内に配置されている。除湿機47は、公知のものであり、チャンバー40内の空気を吸引する吸気口47Aと、供給口47Bとを有する。除湿機47は、駆動されることで、吸気口47Aから吸引したチャンバー40内の空気から水分を除去した除湿空気を生成し、供給口47Bからチャンバー40内に除湿空気を供給する。除湿機47は、チャンバー40内の空気を除湿するものである。除湿タンク48は、除湿機47が除湿空気を生成する際に生じた水を貯留するものである。また、本実施形態における除湿タンク48は、除湿機47の上方に配置されているが、加湿タンク66Aよりも上方に配置されておればよい。これにより、除湿タンク48に貯留された水が、配管49を介して加湿タンク66Aに自動的に供給される。このため、除湿により生じた水を加湿用に利用することが可能となる。さらに除湿タンク48に貯留された水を廃棄する手間も省ける。また、除湿タンク48は、除湿機47に内蔵されていてもよい。
【0062】
図9を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。印刷装置1は制御部80を有する。制御部80にはCPU80A、ROM80B、RAM80C、およびフラッシュメモリ80Dが設けられる。CPU80Aは印刷装置1の制御を司り、ROM80B、RAM80C、およびフラッシュメモリ80Dと電気的に接続される。ROM80Bは、CPU80Aが印刷装置1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU80Aが必要な情報等を記憶する。ROM80Bは、例えば主走査モータ99の回転角度に基づいたキャリッジ6(ヘッド30)の各位置を記憶しており、副走査モータ26の回転角度に基づいたプラテン12の各位置を記憶している。RAM80Cは、制御プログラムで用いられる各種データ等を一時的に記憶する。フラッシュメモリ80Dは、不揮発性であり、印刷を行うための印刷データ等を記憶する。
【0063】
制御部80には、
図9に示すように、主走査モータ99、副走査モータ26、4つのヘッド駆動部301~304、加湿器66、除湿機47、湿度センサ90、ファン94、95A,95B,96A,96B及び操作部15が電気的に接続される。主走査モータ99、副走査モータ26、ヘッド駆動部301~304、加湿器66、除湿機47及びファン94、95A,95B,96A,96Bは、制御部80による制御によって駆動する。
【0064】
主走査モータ99と副走査モータ26には、それぞれエンコーダ991、261が設けられる。エンコーダ991は、主走査モータ99の回転角度を検出し、検出結果を制御部80に出力する。エンコーダ261は、副走査モータ26の回転角度を検出し、検出結果を制御部80に出力する。
【0065】
4つのヘッド駆動部301~304は、白ヘッド31、32及びカラーヘッド33、34に順に対応し、これらヘッド31~34に含まれている。各ヘッド駆動部301~304は、ヘッド30の複数のノズルにそれぞれ連通する複数の個別流路内のインクにエネルギーを選択的に付与可能な複数の駆動素子(圧電素子または発熱素子)によって構成される。これらヘッド駆動部301~304は、それぞれ、駆動することで白ヘッド31、32、カラーヘッド33、34内のインクにエネルギーを付与し、対応するノズル313、323、333、343から選択的にインクを吐出させる。
【0066】
<印刷時の制御>
図10を参照し、印刷媒体に画像を印刷する際の制御部80による制御を説明する。ユーザによって操作部15が操作され、印刷開始指令が印刷装置1に入力されると、制御部80がROM80Bから制御プログラムを読み出して動作することで、
図10のフローを実行する。以下、
図10のフローについて説明する。
【0067】
制御部80は、まず、印刷開始指令が入力されたか否かを判定する(S1)。ユーザは、操作部15を操作し印刷指示を入力する前に、前処理液を印刷媒体に塗布する。なお、前処理液は、印刷装置1とは別体に設けられたスプレーやヘッドなどの塗布機構から、印刷開始指令が入力されたことを契機に塗布されてもよい。そして、印刷媒体に塗布された前処理液の揮発成分が揮発し終わるまでに、印刷媒体(Tシャツ)をプラテン12の支持面12Aに配置する。つまり、前処理液が塗布された印刷媒体を特に乾燥などの特別な処理をすることなく、印刷媒体をプラテン12にすぐに配置することができる。本実施形態においては、S1が処理されるときには、前処理液が塗布された直後の印刷媒体がプラテン12に支持された状態である。このため、後述の印刷処理中においては、印刷媒体に塗布された前処理液からは有機酸が揮発する。なお、プラテン12は、非印刷時においてはセット位置P1に配置されている。印刷装置1は、非印刷時においては、通常、ヘッド30がメンテナンス位置B1に配置され、図示しないメンテナンスユニットのキャップによりヘッド30の複数のノズルが覆われるキャッピングが行われている。
【0068】
印刷開始指令が入力されていない場合(S1:NO)、印刷開始指令が入力されるまでS1が繰り返される。一方、印刷開始指令が入力された場合(S1:YES)、制御部80は、2つの加湿空気供給口61A、62Aから加湿空気の供給が開始されるように、加湿器66を制御する(S2)。つまり、制御部80は、加湿駆動部661を駆動し、加湿空気を生成する。そして、ファン662、663を駆動し、2つの加湿空気供給口61A、62Aから加湿空気を供給する。2つの加湿空気供給口61A、62Aから加湿空気が供給されることで、印刷搬送領域P3に加湿空気が供給される。
【0069】
次に、制御部80は、印刷媒体に画像を印刷する印刷処理を実行する(S3)。制御部80は、
図11(a)に示すように、エンコーダ261からの検出結果に基づいて副走査モータ26を制御し、プラテン12をセット位置P1から印刷搬送領域P3を通過させて印刷前待機位置P2に移動させる。この後、制御部80は、エンコーダ261からの検出結果に基づいて副走査モータ26を制御し、プラテン12を印刷前待機位置P2から印刷搬送領域P3に移動させる。
【0070】
そして、制御部80は、エンコーダ991からの検出結果に基づいて主走査モータ99を制御し、キャリッジ6をメンテナンス位置B1から吐出領域B2へと移動させて、ヘッド30をプラテン12に配置された印刷媒体と対向させる。
【0071】
制御部80は、プラテン12の少なくとも一部が印刷搬送領域P3に位置する状態で、且つキャリッジ6が吐出領域B2に位置する状態で、ヘッド駆動部301~304と主走査モータ99と副走査モータ26を制御し、吐出走査と、前方へのプラテン12の移動を交互に繰り返すことで、印刷媒体への印刷を行う。つまり、印刷媒体への印刷時においては、プラテン12が印刷前待機位置P2から印刷搬送領域P3へと前方に搬送されてくるため、まず、前処理液が塗布された印刷媒体上に白ヘッド31、32のノズルからインクが吐出され、下地が形成される。そして、白ヘッド31、32を通過し印刷媒体に形成された下地上にカラーヘッド33、34のノズルからインクが吐出され、画像が形成される。なお、画像の白色を表す部分については、白インクで形成された下地部分とする。このため、当該下地部分の上にはカラーインクが吐出されない。
【0072】
S1(YES)の処理後であって印刷処理が実行される前から2つの加湿空気供給口61A、62Aから加湿空気が供給されるため、プラテン12がヘッド30の下を通過するときや印刷媒体への印刷が実行されるときには、印刷媒体上に加湿空気が供給された状態となる。つまり、印刷媒体上に加湿空気層が存在する。このため、印刷媒体に塗布された前処理液の揮発成分が揮発しにくくなる。また、前処理液の揮発成分が揮発したとしても、当該揮発成分が印刷媒体と対向するヘッド30のノズル内に到達しにくくなる。
【0073】
次に、印刷データに基づく印刷媒体への印刷が終了(印刷処理の終了)すると、制御部80が、2つの加湿空気供給口61A、62Aから加湿空気の供給を停止するように、加湿器66を制御する(S4)。つまり、制御部80は、加湿駆動部661の駆動を停止し、加湿空気の生成を停止する。そして、ファン662、663を駆動も停止し、2つの加湿空気供給口61A、62Aからの加湿空気の供給を停止する。
【0074】
この後、制御部80は、
図11(b)に示すように、エンコーダ261からの検出結果に基づいて副走査モータ26を制御し、プラテン12をセット位置P1で停止させる。ユーザはセット位置P1に配置されたプラテン12から画像の形成された印刷媒体を取り外す。また、このとき、制御部80は、エンコーダ991からの検出結果に基づいて主走査モータ99を制御し、キャリッジ6を吐出領域B2から左方に移動させ、メンテナンス位置B1で停止させる。
【0075】
制御部80は、印刷データに基づく印刷媒体への印刷が終了した時点、すなわち、印刷媒体へカラーインクを吐出するカラーインク吐出期間が終了した時点で吸引機構73、74のファン94の駆動を開始する(S5)。これにより、印刷搬送領域P3、吐出領域B2及びこれら領域の近傍空間より吸引口713、723へ流れる空気の流れが形成される。これにより、空気中のインクミストや埃などの異物をフィルタユニット18で吸着して回収することができる。また、カラーインク吐出期間が終了してから吸引機構73、74が駆動されるので、吸引機構73、74の駆動により生じる気流によって印刷媒体に対するインクの着弾精度が乱れるのを抑制することができる。なお、制御部80は、所定時間経過したら、吸引機構73、74のファン94の駆動を停止させる。
【0076】
次に、制御部80は、湿度センサ90によって検出された湿度が第1閾値を超えているか否かを判定する(S6)。本実施形態においては、S5の後にS6が実行されているが、S6がS5よりも先に行われてもよい。つまり、制御部80は、印刷処理において、ヘッド30からインクを吐出する吐出期間、すなわち、印刷期間が終了した時点でS6を実行してもよい。第1閾値(本発明の「第1所定値」)は、フラッシュメモリ80Dに記憶されている。第1閾値は、加湿機構60の駆動が停止された状態において、筐体8内において結露が生じやすくなる境界値の湿度である。本実施形態における第1閾値は、例えば70%であるが、周囲の環境に応じて適宜変更してもよい。湿度が第1閾値以下の場合(S6:NO)、制御部80は、筐体8の内部の湿度が低いと判定し、送風機構95のファン96、97が駆動されず、当該印刷時のフローが終了する。
【0077】
一方、制御部80は、筐体8内の湿度が第1閾値を超えていることを示す信号(本発明の「第1信号」)を湿度センサ90から受け取ったときに、すなわち、湿度が第1閾値を超えている場合(S6:YES)、送風機構95のファン95A,95Bの駆動を開始する(S7)。これにより、
図11(b)に示すように、2つのファン95A,95Bによって、筐体8の内部において、後方から前方に向かう空気の流れ95C(図中白抜き矢印で示す)が生じる。つまり、送風機構95は、第2開口85,86を介してチャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給し、筐体8内の高湿度の空気を後方から前方に向かって送風し、プラテン開口13を介して外部に排出する。このため、筐体8の内部の湿度が効果的に低下する。
【0078】
制御部80は、ファン95A,95Bの駆動を開始してから第1所定時間経過したか否かを判定する(S8)。第1所定時間が経過していない場合(S8:NO)、S8を繰り返す。第1所定時間は、送風機構95を駆動することで筐体8の内部の湿度が第1閾値を超えていても第1閾値以下となるまでの時間に設定されている。一方、第1所定時間が経過した場合(S8:YES)、制御部80は、送風機構95のファン95A,95Bの駆動を停止する(S9)。こうして、印刷時のフローが終了する。
【0079】
変形例として、制御部80は、S8に代えて、湿度センサ90によって検出された湿度が第1閾値以下の第2閾値以下であるか否かを判定する。そして、制御部80は、筐体8内の湿度が第2閾値以下であることを示す信号(本発明の「第2信号」)を湿度センサ90から受け取ったときに、すなわち、湿度が第2閾値以下の場合、送風機構95のファン95A,95Bの駆動を停止してもよい。一方、湿度が第2閾値を超えている場合は、当該処理を繰り返せばよい。なお、本変形例における第2閾値(本発明の「第2所定値」)は、例えば60%であるが、第1閾値以下であればよく適宜変更してもよい。第2閾値は第1閾値と同じであってもよい。
【0080】
別の変形例として、制御部80は、S9の処理が行われてからS5の処理を実行してもよい。つまり、S5が、湿度センサ90によって検出される湿度が第1閾値以下となってから実行されてもよい。
【0081】
<除湿制御>
図12を参照し、筐体8内を除湿する際の制御部80による制御を説明する。印刷装置1の電源がオンにされると、制御部80がROM80Bから制御プログラムを読み出して動作することで、
図12のフローを実行する。以下、
図12のフローについて説明する。本実施形態においては、制御部80が除湿機47の駆動制御を直接的に行っているが、制御部80と除湿機47の制御部(不図示)とがインターフェース(不図示)を介して接続されていてもよい。そして、制御部80から制御指令に基づいて、除湿機47の制御部が除湿機47を駆動制御してもよい。
【0082】
制御部80は、まず、上述のS6と同様に、湿度センサ90によって検出された湿度が第1閾値を超えているか否かを判定する(S21)。湿度が第1閾値以下の場合(S21:NO)、制御部80はS21を繰り返す。
【0083】
一方、制御部80は、筐体8内の湿度が第1閾値を超えていることを示す信号を湿度センサ90から受け取ったときに、すなわち、湿度が第1閾値を超えている場合(S21:YES)、除湿機47の駆動を開始する(S22)。こうして、チャンバー40内の空気を除湿空気にする。
【0084】
次に、制御部80は、送風機構96のファン96A,96Bの駆動を開始する(S23)。これにより、
図11(b)に示すように、2つのファン96A,96Bによって、筐体8の内部において、後方から前方に向かう空気の流れ96C(図中二点鎖線の白抜き矢印で示す)が生じる。つまり、送風機構96は、第1開口82,83を介してチャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給し、筐体8内の高湿度の空気を後方から前方に向かって送風し、プラテン開口13を介して外部に排出する。このため、筐体8の内部の湿度が効果的に低下する。また、送風機構96が駆動されることで、第1開口81,84からもチャンバー40内の除湿空気が筐体8内に供給される。
【0085】
また、第1開口82,83がノズル面311、321、331、341よりも上方に位置する。このため、空気の流れ96Cが生じても、除湿空気がノズル面311、321、331、341に直接当たるのを抑制することができる。このため、ノズル313,323,333,343近傍のインクが乾燥により、増粘するのを抑制することが可能となる。また、空気の流れ96Cは、ノズル面311、321、331、341よりも上方で生じるため、送風機構96の駆動が印刷期間中に行われても、空気の流れ96Cによる気流によって印刷媒体に対するインクの着弾精度が乱れるのを抑制することができる。
【0086】
次に、制御部80は、湿度センサ90によって検出された湿度が第2閾値以下であるか否かを判定する(S24)。筐体8内の湿度が第2閾値を超えている場合(S24:NO)、S24を繰り返す。一方、制御部80は、筐体8内の湿度が第2閾値以下であることを示す信号を湿度センサ90から受け取ったときに、すなわち、湿度が第2閾値以下の場合(S24:YES)、送風機構96のファン96A,96Bの駆動及び除湿機47の駆動を停止する(S25)。こうして、除湿制御時のフローが終了する。
【0087】
変形例として、除湿機47は、印刷装置1の電源がオンにされてからオフにされるまで駆動していてもよい。また、除湿機47は、印刷装置1の電源がオンの間において、所定期間毎に定期的に駆動されてもよい。また、除湿機47の駆動及び停止は、ユーザの手動操作によって行われてもよい。これらの場合、制御部80は、
図12中のフローから、S22及びS25の除湿機47の駆動停止処理を省略する。
【0088】
別の変形例として、除湿機47は、電源がオンにされている間に自動的にチャンバー40内の空気を除湿していてもよい。この場合の制御としては、除湿機47の制御部が、除湿機47に内蔵された湿度センサが検出した湿度が所定値以上の場合に除湿機47を駆動し、所定値未満の場合に除湿機47の駆動を停止する。こうして、チャンバー40内の空気の湿度を所定値以下に保つ。このような変形例においては、制御部80の除湿制御時のフローは、S22及びS25における除湿機47の駆動停止処理が省略されるだけで、これら以外は上述の実施形態と同様である。このように除湿機47の駆動制御と、送風機構96のファン96A,96Bの駆動制御とが個別に行われていてもよい。
【0089】
以上に述べたように、本実施形態の印刷装置1によると、筐体8にはチャンバー40と連通する第1開口81~84及び第2開口85,86が形成されている。このため、チャンバー40内に収容された除湿空気が第1開口81~84及び第2開口85,86を介して筐体8内に供給される。このため、使用環境にかかわらず、筐体8内の湿度を低下させることができる。
【0090】
また、本実施形態の印刷装置1によると、筐体8の内部に加湿空気が供給可能であるため、印刷媒体に塗布された前処理液の揮発成分が揮発しにくくなり、前処理液の揮発成分自体がヘッド30のノズルに到達しにくくなる。したがって、ノズル内のインクと前処理液の揮発成分との反応による不具合が生じるのを抑制することが可能となる。また、送風機構95,96を駆動させることで、加湿機構60によって供給された筐体8の内部の加湿空気を筐体8の外部へと排出し、且つ、チャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給することが可能となる。このため、筐体8の内部において結露が生じるのを抑制することができる。例えば、筐体8の内部で、エンコーダ261、991などに結露が生じると、検出精度が低下し、印刷装置の動作不良が生じるが、本実施形態においては、筐体8内で結露が生じるのを抑制することができるため、印刷装置1に動作不良が生じるのを抑制することが可能となる。
【0091】
送風機構95,96は、第1開口81~84及び第2開口85,86を介してチャンバー40内の除湿空気が筐体8内に供給されるように気流を生成する。これにより、筐体8内の除湿空気を効果的に供給することが可能となる。
【0092】
ファン95A,95Bが第2開口85,86に設けられ、ファン96A,96Bが第1開口82,83に設けられている。これにより、ファン95A,95B,96A,96Bを駆動するとチャンバー40内の除湿空気を強制的に筐体8内に供給することが可能となる。このため、筐体8内に除湿空気をより一層効果滴に供給することが可能となる。
【0093】
変形例として、送風機構96のファン96A,96Bは、筐体8内の空気をプラテン開口13から外部に強制的に排出可能な位置(例えば、プラテン開口13近傍位置)に設けられていてもよい。この場合、ファン96A,96Bが駆動されることで、筐体8内の空気が外部に排出されて筐体8内が負圧となる。これにより、チャンバー40内の除湿空気が第1開口81~84及び第2開口85,86を介して筐体8内に供給される。つまり、ファン96A,96Bは、第1開口81~84及び第2開口85,86を介してチャンバー40内の除湿空気が筐体8内に供給されるように気流を生成することが可能であればよい。これにより、筐体8内に除湿空気を効果的に供給することが可能となる。
【0094】
制御部80は、S6でYESの場合、送風機構95の駆動を開始して、第2開口85,86からチャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給させる。また、制御部80は、S21でYESの場合、送風機構96の駆動を開始して、第1開口81~84からチャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給させる。これにより、筐体8内の湿度が第1閾値を超えているときに、当該湿度を効率的に低下させることが可能となる。
【0095】
制御部80は、S24でYESの場合、送風機構96の駆動を停止して、第1開口81~84からチャンバー40内の除湿空気を筐体8内に強制的に供給するのを停止させる。これにより、筐体8内の湿度が必要以上に低下するのを効果的に抑制することが可能となる。このため、ノズル313,323,333,343内のインクが乾燥により増粘するのを抑制することができる。
【0096】
変形例として、筐体8内の湿度が第1閾値を超えているときに、ユーザが操作部15を操作して、制御部80に除湿空気の供給開始指令を出力してもよい。この場合、制御部80は、供給開始指令(本発明の「第1信号」)を受信したときに、S22,S23の処理を実行する。これにおいても上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、湿度センサ90を設けなくてもよい。その後、筐体8内の湿度が第2閾値以下のときに、ユーザが操作部15を操作して、制御部80に除湿空気の供給停止指令を出力してもよい。この場合、制御部80は、供給停止指令(本発明の「第2信号」)を受信したときに、S25の処理を実行する。これにおいても上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0097】
別の変形例として、筐体8には、第1開口81~84のうちの少なくともいずれかの第1開口を開閉可能な扉を設けてもよい。また、ユーザが扉を手動操作することで、第1開口が閉状態から開状態を取るときに開信号を制御部80に出力し、第1開口が開状態から閉状態を取るときに閉信号を制御部80に出力する扉状態出力部を有していてもよい。筐体8内の湿度が第1閾値を超えているときに、ユーザが扉を手動操作し、扉状態出力部から制御部80に開信号を出力してもよい。この場合、制御部80は、開信号(本発明の「第1信号」)を受信したときに、S22,S23の処理を実行する。これにおいても上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、湿度センサ90を設けなくてもよい。その後、筐体8内の湿度が第2閾値以下のときに、ユーザが扉を手動操作し、扉状態出力部から制御部80に閉信号を出力してもよい。この場合、制御部80は、閉信号(本発明の「第2信号」)を受信したときに、S25の処理を実行する。これにおいても上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0098】
また、別の変形例として、筐体8には、第1開口81~84のうちの少なくともいずれかの第1開口を開閉可能な扉を設けてもよい。また、制御部80の制御により、扉の開閉を駆動する扉駆動部を有していてもよい。この場合、制御部80は、S23を実行する際に、ファン96A,96Bに代えて第1開口が閉状態から開状態を取るように扉駆動部を制御すればよい。これにより、チャンバー40内の除湿空気が開状態の第1開口を介して筐体8内に供給される。これにおいても上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、送風機構96を設けなくてもよい。また、制御部80は、S25を実行する際に、ファン96A,96Bに代えて第1開口が開状態から閉状態を取るように扉駆動部を制御すればよい。これにより、上述と実施形態と同様に、筐体8内の湿度が必要以上に低下するのを効果的に抑制することが可能となる。
【0099】
また、別の変形例として、制御部80は、S22だけ実行してS23を実行しなくてもよい。これにおいても、筐体8にはチャンバー40と連通する第1開口81~84及び第2開口85,86が形成されている。このため、チャンバー40内に収容された除湿空気が第1開口81~84及び第2開口85,86を介して筐体8内に供給される。このため、使用環境にかかわらず、筐体8内の湿度を低下させることができる。また、送風機構96を設けなくてもよい。また、制御部80は、S25を実行する際に、除湿機47の駆動を停止すればよい。これにより、上述と実施形態と同様に、筐体8内の湿度が必要以上に低下するのを効果的に抑制することが可能となる。
【0100】
筐体8には、第1開口81~84に加えて第2開口85,86を有する。これにより、筐体8内の湿度を効果的に低下させることが可能となる。
【0101】
本実施形態においては、印刷処理の印刷期間中は、送風機構95の駆動が停止されている。これにより、第2開口85,86を介して筐体8内に供給された除湿空気が印刷期間中にノズル面311、321、331、341に当たらなくなる。このため、インクの吐出方向が安定する。
【0102】
第1開口81~84が筐体8の後面8Bに形成され、プラテン開口13が筐体の前面8Aに形成されている。これにより、プラテン開口13を介して筐体8内の高湿な空気が外部に排出されると共に、プラテン開口13と反対側にある第1開口81~84を介して筐体8内に除湿空気が供給される。このため、筐体8内の湿度を効果的に低下させることができる。
【0103】
チャンバー40が筐体8の後面8Bに隣接して配置されている。これにより、印刷装置1を、左右方向に小型化することが可能となる。
【0104】
送風機構96は、前後方向においてヘッド30に対してプラテン開口13とは反対側に位置する。これにより、送風機構96により、プラテン開口13を介して筐体8内の高湿な空気が外部に排出されやすくなる。また、プラテン開口13と反対側にある第1開口81~84を介して筐体8内に除湿空気が供給される。このため、筐体8内の湿度を効果的に低下させることができる。
【0105】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る印刷装置201を、
図13を参照しつつ説明する。本実施形態における印刷装置201は、チャンバー40の設置位置、第1開口81~84に代えて設けられた2つの開口282,283の形成位置、及び、送風機構96のファン96A,96Bの設置位置が上述の第1実施形態の印刷装置1と異なるだけで、これら以外は第1実施形態の印刷装置1と同様である。なお、第1実施形態と同様な構成については同符号で示し、説明を省略する。
【0106】
本実施形態におけるチャンバー40は、筐体8の左方であって左面(本発明の「第2方向の面」)8Cに隣接して配置されている。なお、チャンバー40は枠体41とシート42とを有し、内部に除湿空気を収容する空間を有する。シート42は、枠体41の上方、前後の側方、及び、左方全体を覆うように配置されている。チャンバー40内には、除湿機47及び除湿タンク48が配置されている。
【0107】
2つの開口282,283は、筐体8の左面8Cに形成されている。これら開口282,283は、外周パネル9の厚み方向に貫通しており、筐体8の内部と外部(チャンバー40内)とを連通する。
【0108】
これら開口282,283は、前後方向において、ヘッド30よりも後方であって、ノズル面311、321、331、341よりも上方に配置されている。また、これら開口282,283は、前後方向に沿って互いに離隔して配置されている。
【0109】
送風機構96のファン96A,96Bは、筐体8の左面8Cを構成する外周パネル9に固定されている。より詳細には、ファン96Aは開口282に設けられており、ファン96Bは開口283に設けられている。ファン96Aは開口282を覆い、ファン96Bは開口283を覆っている。これら2つのファン96A,96Bが駆動された場合、左方から筐体8内の後方部分に外部の空気が流れる。つまり、本実施形態における送風機構96は、2つの開口282,283を介して筐体8の外部(チャンバー40内)の空気を筐体8内の後方部分に供給する。これにより、筐体8内の空気が後方から前方に向かって流れ、プラテン開口13を介して外部に排出される。なお、2つのファン96A,96Bは、ヘッド30と左右方向に重ならない位置に配置され、且つ、ノズル面311、321、331、341よりも上方に配置されているため、ファン96A,96Bが駆動されて筐体8内に供給された空気がノズル面311、321、331、341に直接的に当たることがない。このため、上述の第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0110】
印刷装置201においても、制御部80により、上述の第1実施形態と同様な除湿制御(S21~S23:
図12参照)が実行されることで、開口282,283を介してチャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給し、筐体8内の高湿度の空気を後方から前方に流してプラテン開口13を介して外部に排出することができる。このため、筐体8の内部の湿度が効果的に低下する。次に、制御部80が、S24,S25を実行することで、除湿制御時のフローが終了する。
【0111】
以上に述べたように、本実施形態の印刷装置201によると、筐体8にはチャンバー40と連通する開口282,283が形成されている。このため、チャンバー40内に収容された除湿空気が開口282,283を介して筐体8内に供給される。このため、使用環境にかかわらず、筐体8内の湿度を低下させることができる。なお、上述の第1実施形態と同様な構成においては同じ効果を得ることができる。
【0112】
チャンバー40が筐体8の左面8Cに隣接して配置されている。これにより、印刷装置201を、前後方向に小型化することが可能となる。
【0113】
上述の第2実施形態においては、開口282,283が左面8Cに形成されていたが、右面(本発明の「第2方向の面」)8Dにおいて、ヘッド30(ノズル面311、321、331、341)と左右方向に重ならない位置に配置されておればよい。
【0114】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0115】
上述の各実施形態及び各変形例においては、送風機構95,96(ファン95A,95B,96A,96B)が設けられていたが、送風機構95,96の少なくともいずれかが設けられていなくてもよい。
【0116】
また、筐体8には、第1開口81~84、第2開口85,86の少なくともいずれかが形成されておればよい。また、筐体8には、プラテン開口13を除く7以上の開口が形成されていてもよい。また、筐体8の上面8E、下面8F、前面8Aの少なくとも何れかに、プラテン開口13を除く開口(チャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給させる開口)が形成されていてもよい。この場合、チャンバー40内と連通する配管を開口に接続するか、開口が形成された面にチャンバー40を隣接して設け、開口を介してチャンバー40と筐体8とを連通させればよい。要するに筐体8のどこかに、チャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給する開口が形成されておればよい。これにより、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0117】
送風機構96のファンは、筐体8に形成された開口(チャンバー40内の除湿空気を筐体8内に供給させる開口)に設けられておればよい。また、送風機構96が1又は3以上のファンから構成されていてもよい。また、送風機構96によって送られた空気を、筐体8の内部からプラテン開口13以外の開口から外部に排出してもよい。送風機構96が筐体8の後方に設けられていたが、筐体8の内部から外部に向けて送風することが可能であれば、筐体8のどの場所に送風機構が設けられていてもよい。
【0118】
上述の各実施形態及び各変形例においては、除湿機47により生成された除湿空気をチャンバー40に収容していたが、除湿機47はチャンバー40の外部に設け、外部で除湿機47により生成された除湿空気をチャンバー40に供給しチャンバー40内に除湿空気を収容していてもよい。また、除湿機47としては、家庭用の小型機、業務用又は工場用の大型機等のいずれでもよく、特に限定するものではない。また、工場などに設置された除湿空気が供給されるエアラインからチャンバー40内に除湿空気を供給してもよい。
【0119】
上述の実施形態及び各変形例においては、S22の後にS23が実行されているが、S23の後にS22が実行されていてもよい。S25において、除湿機47の駆動が停止されなくてもよい。
【0120】
キャリッジ6の白ヘッド31、32と、カラーヘッド33、34との間に、印刷媒体に形成された画像をオーバーコーティングする後処理液を吐出するオーバーコートヘッドを設けていてもよい。この場合、印刷媒体へのカラーインクの吐出が終了し画像が形成された後(印刷処理終了後)に、再度、プラテン12を印刷前待機位置P2へ戻す。そして、プラテン12を印刷搬送領域P3へと搬送し、オーバーコートヘッドから後処理液を印刷媒体へ吐出させる。こうして、印刷媒体の画像をオーバーコーティングすることが可能となる。このような印刷装置においても、上述の実施形態及び各変形例のときと同様に、カラーインクの吐出が終了した印刷処理後のS7において送風機構95が駆動されることで、筐体8の内部において結露が生じにくくなる。
【0121】
上述の実施形態においては、加湿器66から供給口75、76に送られた加湿空気が2つの加湿空気供給管61、62へと送られるが、これら供給口75,76に送られた加湿空気がそのまま供給口75、76から筐体8内に供給されてもよい。つまり、2つの加湿空気供給管61、62が設けられていなくてもよい。これにおいても、筐体8内が加湿されることで、印刷媒体に塗布された前処理液の揮発成分が揮発しにくくなる。このため、ノズル内のインクと前処理液の揮発成分との反応による不具合が生じるのを抑制することが可能となる。この場合においても、上述のS7が実行されることで、筐体8の内部の加湿空気を筐体8の外部へと排出することが可能となる。このため、筐体8の内部において結露が生じるのを抑制することができる。なお、別経路において加湿器66と2つの加湿空気供給管61、62とを接続することで、2つの加湿空気供給管61、62から上述のように加湿空気が供給されてもよい。また、加湿器66とは別の加湿器を設け、当該別の加湿器と2つの加湿空気供給管61、62とをチューブなどの配管部材を介して接続することで、供給口75,76及び2つの加湿空気供給管61、62から加湿空気を供給してもよい。これにより、印刷媒体上に加湿空気層を効果的に形成しやすくなる。このため、印刷媒体に塗布された前処理液の揮発成分がより一層揮発しにくくなる。また、前処理液の揮発成分が揮発したとしても、当該揮発成分が印刷媒体と対向するヘッド30のノズル内により一層到達しにくくなる。このような変形例のいずれにおいても、上述及び各変形例と同様に加湿器66を制御してもよい。加湿機構60は、筐体8の内部に加湿空気を供給することが可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0122】
上述の実施形態おいては、湿度センサ90がプラテン開口13の左側に配置されているが、筐体8内において複数設けられていてもよい。この場合、いずれかの湿度センサ90が第1閾値を超える湿度を検出した場合、S22以降の処理を実行すればよい。また、湿度センサ90を設けず、上述のS6、S21、S24の処理を実行しなくてもよい。この場合、S2が実行された以降に、S7、S22、S23、S25を適宜実行すればよい。これにおいても、筐体8の内部の湿度を低下させることが可能となり、筐体8の内部において結露が生じにくくなる。
【0123】
また、上述の実施形態及び各変形例におけるヘッド30は、移動機構77によって主走査方向(左右方向)に沿って移動しながら複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えた印刷装置に本発明を適用した例について説明したが、これに限られない。例えば、主走査方向に印刷媒体(プラテン12)の全長にわたって延び、吐出領域B2に移動不可能に配置されたラインヘッドを備えた印刷装置に本発明を適用することも可能である。
【0124】
また、上述の実施形態及び各変形例における印刷装置は、印刷媒体に前処理液を塗布するための前処理液塗布機構を有していてもよい。前処理液体塗布機構は、例えば、印刷媒体がセット位置P1から印刷搬送領域P3に搬送されるまでの間に印刷媒体に前処理液を塗布可能な位置(筐体8の前面8A)に設けられておればよい。そして、印刷処理が実行される前に、前処理液塗布機構により印刷媒体に前処理液が塗布されればよい。また、上述のS1において、印刷開始指令が入力された後に、前処理液塗布機構により印刷媒体に前処理液を塗布してもよい。
【0125】
また、上述の実施形態及び各変形例における制御部80は、CPU80Aの代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が、プロセッサとして用いられてもよい。この場合、メイン処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。ROM80B、フラッシュメモリ80D等の非一時的な記憶媒体は、情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は、一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。制御プログラムは、例えば、図示外のネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(すなわち、伝送信号として送信され)、ROM80Bまたはフラッシュメモリ80Dに記憶されてもよい。この場合、制御プログラムは、サーバに備えられたHDD等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。上述の実施形態及び各変形例においては、前処理液の揮発成分には有機酸が含まれているがこれに限られない。すなわち、前処理液の揮発成分が、有機酸以外の成分であって、ノズル内のインクと反応して、凝集や変色を起こす成分を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1,201 印刷装置
8 筐体
8A 前面(第1方向の一方の面)
8B 後面(第1方向の他方の面)
8C 左面(第2方向の面)
8D 右面(第2方向の面)
12 プラテン(支持部)
13 プラテン開口(通過口)
30(31~34) ヘッド
40 チャンバー
48 除湿タンク
49 配管(連通流路)
61A,62A 加湿空気供給口
66A 加湿タンク
80 制御部
81~84 第1開口(開口)
85,86 第2開口(開口)
90 湿度センサ
95 送風機構(第2送風機)
96 送風機構(第1送風機)
282,283 開口
311、321、331、341 ノズル面
313,323,333,343 ノズル