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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005599
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】車両用収容物保持装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/10 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B60N3/10 Z
B60N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105826
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】309018445
【氏名又は名称】明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 明広
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
【テーマコード(参考)】
3B088
【Fターム(参考)】
3B088LA01
3B088LB05
(57)【要約】
【課題】アームで側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物をトレイ上に置くときに、アームが邪魔になることを抑制できる車両用収容物保持装置の提供。
【解決手段】アーム40をアーム収納位置40aにてトレイ30にロックするロック機構70が設けられている。そのため、アーム40で側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物Cをトレイ30上に置く際に、ロック機構70によってアーム40をアーム収納位置40aにてロックしておくことができる。よって、アーム40で側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物をトレイ30上に置く際に、アーム40が邪魔になることを抑制できる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物の底面を支持する底面支持部を備えるトレイと、
前記トレイに収納されるアーム収納位置と該アーム収納位置から上方に回動し前記収容物の側面を支持可能なアーム使用位置とに、前記トレイに上下方向に回動可能に支持されるアームと、
前記アームを前記トレイに対して上方に回動付勢するアーム付勢スプリングと、
を有する、車両用収容物保持装置であって、
前記アームを前記アーム収納位置にて前記トレイにロックするロック機構が設けられている、車両用収容物保持装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記トレイと前記アームのうち前記アーム側に設けられるロック部と、前記トレイと前記アームのうち前記トレイ側に設けられ前記ロック部が係脱可能なロック受け部と、前記ロック部を前記ロック受け部に係合する方向に付勢するロック付勢スプリングと、を有しており、
前記ロック部は、車両用収容物保持装置のユーザが操作可能な操作部と、前記ロック受け部に係脱するフック部と、を有しており、車両用収容物保持装置のユーザによって操作されていないときに位置する通常位置と、車両用収容物保持装置のユーザによって操作されて前記ロック付勢スプリングの付勢力に抗して前記通常位置から変位された操作位置とに、前記アームに対して可動とされており、車両用収容物保持装置のユーザによって操作されて前記操作位置にある状態で前記アームを前記アーム収納位置以外の位置から前記アーム収納位置に移動させて前記アームが前記アーム収納位置に達した状態でユーザによる操作が解除されたときにのみ、前記ロック付勢スプリングの付勢力で前記操作位置から前記通常位置側に変位して前記ロック受け部に係合する、請求項1記載の車両用収容物保持装置。
【請求項3】
前記ロック部は、前記ロック受け部に係合している状態から車両用収容物保持装置のユーザによって操作されて前記ロック付勢スプリングの付勢力に抗して前記操作位置まで変位されたときにのみ、前記ロック受け部との係合が解除される、請求項2記載の車両用収容物保持装置。
【請求項4】
前記アームは、一対の側方アーム部と該一対の側方アーム部の先端部同士を連結する先端アーム部とを有するコ字形状部を有しており、前記収容物が該コ字形状部の内側のスペースに挿入されるとともに前記トレイの底面支持部で底面が支持されているとき、前記収容物の側面を支持可能となっており、
前記ロック部は、前記アームの前記先端アーム部の延び方向の一部のみに配置されている、請求項2記載の車両用収容物保持装置。
【請求項5】
前記ロック部の操作部は、前記先端アーム部の延び方向から見たときに該先端アーム部からはみ出しておらず前記先端アーム部の内側に位置している、請求項4記載の車両用収容物保持装置。
【請求項6】
前記収容物の側面を前記アームのコ字形状部と協働して支持するサポートを、さらに有しており、
前記アームのコ字形状部と前記サポートとで、前記収容部の側面をそれぞれ直交する4方向から支持可能とされている、請求項4記載の車両用収容物保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用カップホルダなどの車両用収容物保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、図23、24に示すように、飲料容器等の収容物の底面を支持するトレイ2と、トレイ2に収納されるアーム収納位置3aと該アーム収納位置3aから上方に回動し収容物の側面を支持可能なアーム使用位置3bとに、トレイ2に上下方向に回動可能に支持されるアーム3と、を有する車両用収容物保持装置1を開示している。アーム3がアーム収納位置3aからアーム使用位置3bに上方に回動することで、アーム3にて収容物の側面を支持して、収容物の倒れ、脱落を抑制している。
【0003】
しかし、上記公報開示の技術には、つぎの問題点がある。
アーム3がアーム収納位置3aからアーム使用位置3bに上方に回動している状態では、アーム3が邪魔になり、平置き状態のスマートフォン、カード、小物等の、アーム3で側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物C1を、トレイ2上に置き難くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-120821号公報
【特許文献2】特開2016-124317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アームで側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物をトレイ上に置くときに、アームが邪魔になることを抑制できる車両用収容物保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 収容物の底面を支持する底面支持部を備えるトレイと、
前記トレイに収納されるアーム収納位置と該アーム収納位置から上方に回動し前記収容物の側面を支持可能なアーム使用位置とに、前記トレイに上下方向に回動可能に支持されるアームと、
前記アームを前記トレイに対して上方に回動付勢するアーム付勢スプリングと、
を有する、車両用収容物保持装置であって、
前記アームを前記アーム収納位置にて前記トレイにロックするロック機構が設けられている、車両用収容物保持装置。
(2) 前記ロック機構は、前記トレイと前記アームのうち前記アーム側に設けられるロック部と、前記トレイと前記アームのうち前記トレイ側に設けられ前記ロック部が係脱可能なロック受け部と、前記ロック部を前記ロック受け部に係合する方向に付勢するロック付勢スプリングと、を有しており、
前記ロック部は、車両用収容物保持装置のユーザが操作可能な操作部と、前記ロック受け部に係脱するフック部と、を有しており、車両用収容物保持装置のユーザによって操作されていないときに位置する通常位置と、車両用収容物保持装置のユーザによって操作されて前記ロック付勢スプリングの付勢力に抗して前記通常位置から変位された操作位置とに、前記アームに対して可動とされており、車両用収容物保持装置のユーザによって操作されて前記操作位置にある状態で前記アームを前記アーム収納位置以外の位置から前記アーム収納位置に移動させて前記アームが前記アーム収納位置に達した状態でユーザによる操作が解除されたときにのみ、前記ロック付勢スプリングの付勢力で前記操作位置から前記通常位置側に変位して前記ロック受け部に係合する、(1)記載の車両用収容物保持装置。
(3) 前記ロック部は、前記ロック受け部に係合している状態から車両用収容物保持装置のユーザによって操作されて前記ロック付勢スプリングの付勢力に抗して前記操作位置まで変位されたときにのみ、前記ロック受け部との係合が解除される、(2)記載の車両用収容物保持装置。
(4) 前記アームは、一対の側方アーム部と該一対の側方アーム部の先端部同士を連結する先端アーム部とを有するコ字形状部を有しており、前記収容物が該コ字形状部の内側のスペースに挿入されるとともに前記トレイの底面支持部で底面が支持されているとき、前記収容物の側面を支持可能となっており、
前記ロック部は、前記アームの前記先端アーム部の延び方向の一部のみに配置されている、(2)記載の車両用収容物保持装置。
(5) 前記ロック部の操作部は、前記先端アーム部の延び方向から見たときに該先端アーム部からはみ出しておらず前記先端アーム部の内側に位置している、(4)記載の車両用収容物保持装置。
(6) 前記収容物の側面を前記アームのコ字形状部と協働して支持するサポートを、さらに有しており、
前記アームのコ字形状部と前記サポートとで、前記収容部の側面をそれぞれ直交する4方向から支持可能とされている、(4)記載の車両用収容物保持装置。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の車両用収容物保持装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
アームをアーム収納位置にてトレイにロックするロック機構が設けられているため、アームで側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物をトレイ上に置く際に、ロック機構によってアームをアーム収納位置にてロックしておくことができる。よって、アームで側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物をトレイ上に置く際に、アームが邪魔になることを抑制できる。
【0008】
上記(2)の車両用収容物保持装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
単純にロック機構を設けると、アーム使用位置にあるアームで側面が支持されている飲料容器などの収容物が倒れた場合や装置のユーザが不用意にアームを押し下げてしまったときに、アームがアーム収納位置に達してアーム収納位置でロック状態となり、ロック解除してアームをアーム使用位置に復帰させないと、飲料容器などの収容物の側面をアームで支持できなくなってしまう。
しかし、本発明では、ロック部が、操作位置にある状態でアームをアーム収納位置以外の位置からアーム収納位置に移動させてアームがアーム収納位置に達した状態でユーザによる操作が解除されたときにのみ、ロック付勢スプリングの付勢力で操作位置から通常位置側に変位してロック受け部に係合するため、アーム使用位置にあるアームで収容物の側面を支持しているときに収容物が倒れたり不用意にユーザがアームを押下げてしまったとき等、ユーザが意図しないときに、ロック機構のロックが掛かってしまうことを抑制できる。よって、ユーザがアームをアーム収納位置にてロックさせる意思を持ったときにのみ、ロック機構のロックが掛かる構造にでき、ユーザの目的によるはっきりした区分け製品とすることができる。
【0009】
上記(3)の車両用収容物保持装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
ロック部が、ロック受け部に係合している状態から車両用収容物保持装置のユーザによって操作されてロック付勢スプリングの付勢力に抗して操作位置まで変位されたときにのみ、ロック受け部との係合が解除されるため、ユーザが意図しないときに、ロック機構のロックが解除されてしまうことを抑制できる。
【0010】
上記(4)の車両用収容物保持装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
アームがコ字形状部を有するため、コ字形状部の内側のスペースに挿入される収容物の側面をコ字形状部でそれぞれ直交する3方向から支持できる。
また、ロック部がアームの先端アーム部に配置されているため、ロック部がアームの側方アーム部等、先端アーム部以外の部位に配置される場合に比べて、ロック機構によるロック状態を確保するためのロック付勢スプリングの付勢力を弱めることができる。よって、ロック部を操作するユーザの操作力を軽減させることができ、ロック部の操作性上で有利である。
【0011】
上記(5)の車両用収容物保持装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
ロック部の操作部が、先端アーム部の延び方向から見たときに該先端アームからはみ出しておらず先端アーム部の内側に位置しているため、ロック部の操作部が先端アーム部からはみ出している場合に比べて、ロック部が誤操作されてロック機構のロックがかかってしまうことを抑制できる。
【0012】
上記(6)の車両用収容物保持装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
サポートをさらに有しており、アームのコ字形状部とサポートとで、収容物の側面をそれぞれ直交する4方向から支持可能とされているため、サポートが設けられていない場合に比べて収容物の側面支持性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の分解斜視図である。
図2】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、アームがアーム使用位置にあるときにおける斜視図である。
図3図2のA-A線部位の部分拡大断面図である。
図4】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、アームがアーム収納位置にあるときにおける斜視図である。
図5図4のB-B線部位の部分拡大断面図である。
図6】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、アーム使用位置にあるアームで飲料容器(収容物)を支持しているときにおける斜視図である。
図7図6のC-C線部位の部分拡大断面図である。
図8】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、アーム使用位置にあるアームで縦置き状態にあるスマートフォン(収容物)を支持しているときにおける斜視図である。
図9図8のD-D線部位の部分拡大断面図である。
図10】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、アームがアーム収納位置にある状態で平置き状態にあるスマートフォン(収容物)をトレイに置いているときにおける斜視図である。
図11図10のE-E線部位の部分拡大断面図である。
図12】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、アームがアーム収納位置にあるときにおける、部分拡大斜視図である。
図13】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、ロック部が通常位置にある状態でアームがアーム収納位置にあるときにおける、部分拡大断面図である。
図14】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、ロック部が通常位置にある状態でアームをアーム使用位置からアーム収納位置に回動させるときの断面図である。
図15】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、ロック部を操作位置に変位させた状態でアームをアーム使用位置からアーム収納位置に回動させるときの断面図である。
図16】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、ロック部がユーザによって操作されて操作位置にある状態でアームをアーム使用位置からアーム収納位置に移動させた後、ユーザによるロック部の操作が解除されるときの拡大断面図である。
図17】本発明実施例の車両用収容物保持装置の、ロック部がロック受け部に係合している状態からユーザによって操作されて操作位置まで変位されるときの拡大断面図である。
図18】本発明実施例1の車両用収容物保持装置の、ロック部を操作位置に変位させた状態でアームをアーム収納位置からアーム使用位置に移動させるときの断面図である。
図19】本発明実施例2の車両用収容物保持装置の、ロック部が通常位置にある状態でアームがアーム収納位置にあるときにおける、部分拡大断面図である。
図20】本発明実施例2の車両用収容物保持装置の、ロック部が通常位置にある状態でアームをアーム使用位置からアーム収納位置に回動させるときの断面図である。
図21】本発明実施例2の車両用収容物保持装置の、ロック部を操作位置に変位させた状態でアームをアーム使用位置からアーム収納位置に回動させるときの断面図である。
図22】本発明実施例2の車両用収容物保持装置の、ロック部がユーザによって操作されて操作位置にある状態でアームをアーム使用位置からアーム収納位置に移動させた後、ユーザによるロック部の操作が解除されるときの拡大断面図である。
図23】従来の車両用収容物保持装置の、アームがアーム使用位置にあるときにおける斜視図である。
図24】従来の車両用収容物保持装置の、アームがアーム収納位置にあるときにおける斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の車両用収容物保持装置(以下、単に保持装置または装置ともいう)10について説明する。なお、図中UPは上方を示し、FRは車両前方を示す。
【0015】
図1図18は、本発明実施例1の車両用収容物保持装置を示しており、図19図22は、本発明実施例2の車両用収容物保持装置を示している。本発明全実施例にわたって共通する部分には、本発明全実施例にわたって共通する符号を付してある。まず、本発明全実施例にわたって共通する部分を説明する。
【0016】
装置10は、特に限定されるものではないが、たとえば、車両の内装部材であるインストルメントパネルに配置される。ただし、装置10は、インストルメントパネル以外の車両の内装パネル(意匠パネル)に配置されていてもよい。なお、本発明実施例および図示例では、装置10がインストルメントパネルに配置される場合を説明する。
【0017】
装置10は、飲料容器(図6図7)を収容保持可能なカップホルダとして使用可能なだけでなく、スマートフォンなどの小物類(図8図11)を保持可能な小物置きとしても使用可能である。装置10は、図1に示すように、リテーナ20と、トレイ30と、アーム40と、アーム付勢スプリング50と、サポート60と、ロック機構70と、を有している。
【0018】
リテーナ20は、たとえば樹脂製である。リテーナ20は、リテーナアッパ21とリテーナロア22の2部品構成である。リテーナアッパ21とリテーナロア22とは、爪嵌合、ビス締め、カシメ等により互いに固定されている。リテーナ20は、装置10が配置されるインストルメントパネルに固定されている。リテーナ20は、車両後方(車室側)のみに開放する。
【0019】
トレイ30は、たとえば樹脂製である。トレイ30は、リテーナ20に全体または略全体が収納される図示略のトレイ収納位置と、該トレイ収納位置から車両後方に移動したトレイ使用位置30aとに、リテーナ20にスライド可能に支持されている。トレイ30は、リテーナ20に対して、トレイ収納位置からトレイ使用位置30a側にコンストンスプリング等の付勢部材31により常時付勢されている。トレイ30が付勢部材31の付勢力によりトレイ収納位置からトレイ使用位置30aまで移動したとき、トレイ30に設けられる図示略のストッパ突起がリテーナ20に設けられるストッパ受け部に当接し、それ以上トレイ30がリテーナ20に対して車両後方に移動することが防止される。トレイ30は、付勢部材31の付勢力に抗してトレイ使用位置30aからトレイ収納位置側に押し込まれることで、公知のハートカム機構等からなるトレイロック32のロックが掛かり、リテーナ20に対してトレイ収納位置に保持される。トレイロック32は、ハートカム機構からなる場合、ハートカム32aと、ロックピン32bと、を備える。
【0020】
トレイ30は、底面支持部33を有している。底面支持部33は、図7に示すように、装置10に収容されて保持される収容物Cの底面を支持する。図1に戻って、トレイ30には、車両後方側端部に意匠性向上の為に、トレイ30とは別体のドア部材34が取付けられていてもよい。また、トレイ30には、トレイ30に組付けられておりリテーナロア22に設けられるギア部22aと噛み合って付勢部材31のトルクを減衰させるダンパ35が設けられていてもよい。
【0021】
アーム40は、たとえば樹脂製である。アーム40は、一部品構成であってもよく、複数部品構成であってもよい。アーム40は、アーム回動軸部41を有しており、トレイ30に収納されるアーム収納位置40a(図4,5)と該アーム収納位置40aから上方に回動し収容物Cの側面を支持可能なアーム使用位置40b(図2図3)とに、トレイ30に上下方向に回動可能に支持されている。
【0022】
アーム40は、図1に示すように、一対の側方アーム部42aと該一対の側方アーム部42aの先端部(アーム使用位置40bにあるときにおける上端部、車両後方端部)同士を連結する先端アーム部42bとを有するコ字(U字であってもよい)形状部42cを有しており、収容物Cがコ字形状部42cの内側のスペースSに挿入されるとともにトレイ30の底面支持部33で底面が支持されているとき、収容物Cの側面を支持可能となっている。
【0023】
アーム40には、アーム回動軸部41に対してコ字形状部42cと反対側の位置にあるアーム突起43が設けられている。アーム突起43は、リテーナロア22に設けられるリテーナガイド面23にアーム付勢スプリング50により押し付けられている。リテーナガイド面23は、トレイ30のリテーナ20に対する移動方向と平行な方向に延びる平行面23aと、平行面23aの車両後方側端に滑らかに連なり該車両後方側端から車両後方かつ下方に傾斜する傾斜面23bと、を備える。
【0024】
このリテーナガイド面23にアーム突起43が押し付けられるため、ロック機構70のロックが掛かっていないときには、トレイ30がリテーナ20に対してトレイ収納位置からトレイ使用位置30a側に(車両後方に)移動するとき、アーム突起43が平行面23aから傾斜面23b側に移動し、アーム40がアーム収納位置40aからアーム使用位置40bに回動する。逆に、トレイ30がリテーナ20に対してトレイ使用位置30bからトレイ収納位置側に(車両前方に)移動するとき、アーム突起43は傾斜面23bから平行面23a側に移動し、アーム40がアーム使用位置40bからアーム収納位置40aに回動する。
【0025】
アーム付勢スプリング50は、たとえばトーションスプリングからなる。アーム付勢スプリング50は、アーム40のコ字形状部42cを、トレイ30に対して上方に回動付勢する。すなわち、アーム付勢スプリング50は、アーム40を、アーム収納位置40aからアーム使用位置40b側に回動付勢している。
【0026】
サポート60は、たとえば樹脂製である。サポート60は、一部品構成であってもよく、複数部品構成であってもよい。サポート60は、収容物Cの側面をアーム40のコ字形状部42cと協働して支持するサポート本体部61と、サポート本体部の側面視における一端部(下端部)に設けられるサポート回動軸部62と、を有する。サポート60は、図2図12に示すように、トレイ30に収納されるサポート収納位置60a(図12)とサポート収納位置60aから上方に略鉛直状態となるまで回動したサポート使用位置60b(図2)とに、サポート回動軸部62にてトレイ30に回動可能に支持されている。サポート60の回動軸芯は、アーム40の回動軸芯と一致していてもよく異なっていてもよい。なお、図示例では、一致している場合を示している。
【0027】
図1に戻って、サポート60は、サポート付勢スプリング64によって、トレイ30に対して、サポート収納位置60aからサポート使用位置60b側に常時回動付勢されている。なお、トレイ30には、サポート60の可動トルクを減衰させる軸ダンパ65が設けられていてもよい。なお、図中の符号66は、軸ダンパ65をトレイ30に取付けるためのブラケットである。
【0028】
サポート60は、リンク63を用いてリテーナ20に連結されている。このリンク63により、サポート60は、トレイ30がリテーナ20に対してトレイ収納位置からトレイ使用位置30a側に(車両後方に)移動するとき、サポート収納位置60aからサポート使用位置60b側にサポート付勢スプリング64の付勢力で連動して回動するようになっている。逆に、トレイ30がリテーナ20に対してトレイ使用位置30aからトレイ収納位置側に(車両前方に)移動するとき、サポート付勢スプリング64の付勢力に抗してサポート使用位置60bからサポート収納位置60a側に連動して回動するようになっている。
【0029】
サポート60は、サポート使用位置60bにあるとき、収容物Cの側面を車両前方側から支持する。アーム40のコ字形状部42cとサポート60とで、収容物Cの側面をそれぞれ直交する4方向(車両前後方向および車両左右方向)から支持可能となっている。
【0030】
ロック機構70は、アーム40をアーム収納位置40aにてトレイ30にロックするために設けられる。ロック機構70は、トレイ30とアーム40のうちアーム40側に設けられるロック部71と、トレイ30とアーム40のうちトレイ30側に設けられロック部71が係脱可能なロック受け部74と、ロック部71をロック受け部74に係合する方向に付勢するロック付勢スプリング75と、を有する。
【0031】
図14図15に示すように、ロック部71は、装置10のユーザが操作可能な操作部72と、ロック受け部74に係脱するフック部73と、を有している。ロック部71は、装置10のユーザによって操作されていないときに位置する通常位置71a(図14)と、装置10のユーザによって操作されてロック付勢スプリング75の付勢力に抗して通常位置71aから変位された操作位置71b(図15)とに、アーム40に対して可動とされている。
【0032】
ロック部71は、図15図16に示すように、装置10のユーザによってロック付勢スプリング75の付勢力に抗して操作されて操作位置71bにある状態で、アーム40をアーム収納位置40a以外の位置からアーム収納位置40aに移動させてアーム40がアーム収納位置40aに達した後、ユーザによる操作が解除されたときにのみ、ロック付勢スプリング75の付勢力で操作位置71bから通常位置71a側に変位してロック受け部74に係合する(ロック機構70によるロックが掛かる)。すなわち、ロック部71は、装置10のユーザによって操作されて操作位置71bにある状態を維持したまま、アーム40をアーム収納位置40a以外の位置からアーム収納位置40aまで移動させたときのみ、ロック受け部74に係合可能(ロック機構70によるロックが可能)である。
【0033】
ロック部71とロック受け部74との係合を解除するとき(ロック機構70によるロックを解除するとき)は、図17に示すように、ロック部71は、ロック受け部74に係合している状態から装置10のユーザによって操作されてロック付勢スプリング75の付勢力に抗して操作位置71bまで変位されたときにのみ、ロック受け部74との係合が解除(ロック機構70によるロックが解除)される。
【0034】
図1に戻って、ロック部71は、アーム40の先端アーム部42bの延び方向の一部(中央部)のみに配置されている。ロック部71の操作部72は、先端アーム部42bの延び方向から見たときに該先端アーム部42bからはみ出しておらず全体または略全体が先端アーム部42b内に位置している(内包されている)ことが望ましい。ロック部71の誤操作を抑制できるからである。
【0035】
ここで、本発明実施例の作動を説明する。
(A)トレイ30がリテーナ20に収納されるトレイ収納位置にあるとき
トレイロック32のロックが掛かっており、トレイ30はトレイ収納位置に保持される。アーム40は、ロック機構70によるロックが掛かっているといないとにかかわらず、アーム突起43がリテーナガイド面23の平行面23aに当接しており、アーム収納位置40aに位置する。サポート60は、リンク63の作用によりサポート収納位置60aに位置する。
【0036】
(B)トレイ30をトレイ収納位置からトレイ使用位置30aに移動させるとき
トレイロック32のロックを解除すると、トレイ30が付勢部材31の付勢力によりリテーナ20に対してトレイ収納位置からトレイ使用位置30aに移動する。アーム40とサポート60も、トレイ30と共に、トレイ収納位置からトレイ使用位置30aに移動する。
【0037】
アーム40は、ロック機構70によるロックが掛かっているときには、ロック機構70によってアーム収納位置40aにロックされているため、トレイ使用位置30aに移動してもアーム収納位置40aにある(図4図5)。一方、ロック機構70によるロックが掛かっていないときには、トレイ収納位置からトレイ使用位置30aへの移動に伴い、アーム突起43がリテーナガイド面23の平行面23aから傾斜面23bに移動し、アーム40がトレイ30に対してアーム収納位置40aからアーム使用位置40bに回動する(図2図3)。また、サポー60は、リンク63とサポート付勢スプリング64の作用により、サポート収納位置60aからサポート使用位置60bに回動する。
【0038】
(C)トレイ30がトレイ使用位置30aにあり、ロック部71が通常位置71aにありロック機構70によるロックが掛かっていないとき
(C1)アーム40がアーム使用位置40bにあり、サポート60がサポート使用位置60bにある(図6)。このため、飲料容器や縦置き状態にあるスマートフォン等の収容物Cの底面をトレイ30で支持し側面をアーム40とサポート60で支持できる(図6図9)。
【0039】
(C2)上記(C1)の状態から、ロック部71が通常位置71aにある状態のまま、アーム40をアーム使用位置40aからアーム収納位置40bに回動させるとき(図13図14)には、ロック部71が通常位置71aにあるため、ロック部71はロック受け部74のおもて側にありロック受け部74に係合する際に通る通路Pを通らず、ロック受け部74の背面側にあるだけである。そのため、ロック部71はロック受け部74に係合せず、ロック機構70によるロックは掛からない。
【0040】
(C3)一方、上記(C1)の状態から、ロック部71が装置10のユーザによってロック付勢スプリング75の付勢力に抗して操作されて操作位置71bにある状態で、アーム40をアーム収納位置40a以外の位置からアーム収納位置40aに移動させるとき(図15図16)には、ロック部71のフック部73が通路Pを通りロック受け部74より下方にまで移動する。そして、アーム40がアーム収納位置40aに達した後、ユーザによるロック部71の操作が解除されると、ロック部71がロック付勢スプリング75の付勢力で操作位置71bから通常位置71a側に変位してロック受け部74に係合する(ロック機構70によるロックが掛かる)。これにより、アーム40がアーム収納位置40aにてロックされる。
【0041】
(C4)上記(C3)の状態から、ロック部71が装置10のユーザによって操作されてロック付勢スプリング75の付勢力に抗して操作位置71bまで変位されたとき(図17図18)には、ロック受け部74との係合が解除(ロック機構70によるロックが解除)される。この状態を維持したまま、アーム40を、ユーザの力および/またはアーム付勢スプリング50の付勢力でアーム収納位置40aからアーム使用位置40b側に移動させ、ユーザによるロック部71の操作が解除されることで、上記(C1)の状態に復帰する。
【0042】
(D)トレイ30がトレイ使用位置30aにあり、ロック機構70によるロックが掛かっているとき(図4図5
(D1)アーム40がアーム収納位置40aにある。このため、アーム40が邪魔になることなく、平置き状態のスマートフォン、カード、小物等の、アーム40で側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物Cを、トレイ2上に置くことができる(図10図11)。
(D2)上記(D1)の状態から、ロック部71が装置10のユーザによって操作されてロック付勢スプリング75の付勢力に抗して操作位置71bまで変位されたとき(図17図18)には、上記(C4)と同様である。
【0043】
(E)トレイ30をトレイ使用位置30aからトレイ収納位置に移動させるとき
付勢部材31の付勢力に抗してトレイ30をリテーナ20に対してトレイ収納位置側に押し込むと、トレイ30がトレイ使用位置30aからトレイ収納位置側に移動する。アーム40とサポート60も、トレイ30と共に、トレイ使用位置30aからトレイ収納位置側に移動する。
【0044】
アーム40は、ロック機構70によるロックが掛かっているときには、ロック機構70によってアーム収納位置40aにロックされているため、トレイ収納位置に移動してもアーム収納位置40aにある。一方、ロック機構70によるロックが掛かっていないときには、トレイ使用位置30aからトレイ収納位置への移動に伴い、アーム突起43がリテーナガイド面23の傾斜面23bから平行面23aに移動し、アーム40がトレイ30に対してアーム使用位置40bからアーム収納位置40aに回動する。また、サポート60は、リンク63の作用により、サポート使用位置60bからサポート収納位置60aに回動する。
【0045】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
(あ)アーム40をアーム収納位置40aにてトレイ30にロックするロック機構70が設けられているため、アーム40で側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物Cをトレイ30上に置く際に、ロック機構70によってアーム40をアーム収納位置40aにてロックしておくことができる。よって、アーム40で側面を支持する必要の無い(または少ない)収容物をトレイ30上に置く際に、アーム40が邪魔になることを抑制できる。
【0046】
(い)単純にロック機構を設けると、アーム使用位置40bにあるアーム40で側面が支持されている飲料容器などの収容物Cが倒れた場合や装置10のユーザが不用意にアーム40を押し下げてしまったときに、アーム40がアーム収納位置40aに達してアーム収納位置40aでロック状態となり、ロック解除してアーム40をアーム使用位置40bに復帰させないと、飲料容器などの収容物Cの側面をアーム40で支持できなくなってしまう。
しかし、本発明では、ロック部71が、操作位置71bにある状態でアーム40をアーム収納位置40a以外の位置からアーム収納位置40aに移動させてアーム40がアーム収納位置40aに達した状態でユーザによる操作が解除されたときにのみ、ロック付勢スプリング75の付勢力で操作位置71bから通常位置71a側に変位してロック受け部74に係合するため、アーム使用位置40bにあるアーム40で収容物Cの側面を支持しているときに収容物Cが倒れたり不用意にユーザがアーム40を押下げてしまったとき等、ユーザが意図しないときに、ロック機構70のロックが掛かってしまうことを抑制できる。よって、ユーザがアーム40をアーム収納位置40aにてロックさせる意思を持ったときにのみ、ロック機構70のロックが掛かる構造にでき、ユーザの目的によるはっきりした区分け製品とすることができる。
【0047】
(う)ロック部71が、ロック受け部74に係合している状態から装置10のユーザによって操作されてロック付勢スプリング75の付勢力に抗して操作位置71bまで変位されたときにのみ、ロック受け部74との係合が解除されるため、ユーザが意図しないときに、ロック機構70のロックが解除されてしまうことを抑制できる。
【0048】
(え)アーム40がコ字形状部42cを有するため、コ字形状部42cの内側のスペースSに挿入される収容物Cの側面をコ字形状部42cでそれぞれ直交する3方向から支持できる。
また、ロック部71がアーム40の先端アーム部42bに配置されているため、ロック部71がアーム40の側方アーム部42a等、先端アーム部42b以外の部位に配置される場合に比べて、ロック機構70によるロック状態を確保するためのロック付勢スプリング75の付勢力を弱めることができる。よって、ロック部71を操作するユーザの操作力を軽減させることができ、ロック部71の操作性上で有利である。
【0049】
(お)ロック部71の操作部72が、先端アーム部42bの延び方向から見たときに該先端アーム部42bからはみ出しておらず全体または略全体が先端アーム部42bの内側に位置しているため、ロック部71の操作部72が先端アーム部42bからはみ出している場合に比べて、ロック部71が誤操作されてロック機構70のロックがかかってしまうことを抑制できる。
【0050】
(か)サポート60を有しており、アーム40のコ字形状部42cとサポート60とで、収容物Cの側面をそれぞれ直交する4方向から支持可能とされているため、サポート60が設けられていない場合に比べて収容物Cの側面支持性能を向上させることができる。
【0051】
(き)リテーナ20を有しており、トレイ30が、リテーナ20に収納されるトレイ収納位置と該トレイ収納位置から車室側に移動したトレイ使用位置30aとにリテーナ20にスライド可能に支持されているため、上記(あ)~(か)で得られる効果と同様の効果を、トレイ30がリテーナ20に対してスライド可能とされている場合であっても得ることができる。
【0052】
上記本発明実施例では、トレイ30、アーム40、アーム付勢スプリング50およびロック機構70が設けられる装置10がカップホルダとして使用可能な場合を説明したが、トレイ30、アーム40、アーム付勢スプリング50およびロック機構70が設けられる装置10は、トレイ30に回動可能に支持されるアーム40がトレイ30に設けられる収容部を仕切る仕切り板として機能しており、ロック機構70がアーム40をトレイ30に対して倒れ込んだ状態(アーム収納位置40a)にロックするものであってもよい。
【0053】
つぎに、本発明各実施例に特有な部分を説明する。
〔実施例1〕(図~図18
本発明実施例1は、ロック機構70のロック部71がアーム40の先端アーム部42bに対して回動可能とされている場合を示している。なお、ロック部71は、先端アーム部42bに直接支持されていてもよく、ロックカバー76を用いて先端アーム部42bに支持されていてもよい。
【0054】
〔実施例2〕(図19図22
本発明実施例2は、ロック機構70のロック部71がアーム40の先端アーム部42bに対してスライド可能とされている場合を示している。なお、ロック部71は、先端アーム部42bに直接支持されていてもよく、ロックカバー76を用いて先端アーム部42bに支持されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 車両用収容物保持装置
20 リテーナ
23 リテーナガイド面
23a 平行面
23b 傾斜面
30 トレイ
30a トレイ使用位置
33 底面支持部
40 アーム
40a アーム収納位置
40b アーム使用位置
41 アーム回動軸部
42a 側方アーム部
42b 先端アーム部
42c コ字形状部
43 アーム突起
50 アーム付勢スプリング
60 サポート
60a サポート収納位置
60b サポート使用位置
70 ロック機構
71 ロック部
71a 通常位置
71b 操作位置
72 操作部
73 フック部
74 ロック受け部
75 ロック付勢スプリング
C 収容物
P 通路
S コ字形状部の内側スペース
図1
図2
図3
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図5
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