特開 2025-5604 カラオケ装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025005604

(43)【公開日】2025-01-17

(54)【発明の名称】カラオケ装置

(51)【国際特許分類】

   G10K 15/04 20060101AFI20250109BHJP

【ＦＩ】

G10K15/04 302D

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023105832

(22)【出願日】2023-06-28

(71)【出願人】

【識別番号】390004710

【氏名又は名称】株式会社第一興商

(74)【代理人】

【識別番号】110000176

【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】橘 聡

(72)【発明者】

【氏名】保宮 彩音

【テーマコード（参考）】

5D208

【Ｆターム（参考）】

5D208CF03

(57)【要約】

【課題】カラオケ歌唱にノート末尾ハンマリング・オン歌唱が含まれるかどうかを判定することが可能なカラオケ装置を提供する。
【解決手段】カラオケ楽曲のリファレンスデータに含まれる一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチの中に水平区間と上昇区間とが存在し、上昇区間の終了時の歌唱ピッチが一のノートの基準ピッチと基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、水平区間の歌唱ピッチに対し、上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する歌唱技法判定部を有するカラオケ装置。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

カラオケ楽曲の歌唱により得られた歌唱音声信号から、所定区間毎に歌唱ピッチを検出する歌唱ピッチ検出部と、
前記カラオケ楽曲のリファレンスデータに含まれる一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された前記歌唱ピッチの中に、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差が、所定範囲内であり且つ第１の所定数以上連続する水平区間と、当該水平区間よりも後において連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差がプラスとなる上昇区間とが存在し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが当該一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、当該水平区間の歌唱ピッチに対し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、当該一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する歌唱技法判定部と、
を有するカラオケ装置。

【請求項2】

前記歌唱技法判定部は、
前記一のノートを特定し、
特定された前記一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチを時系列に抽出し、
抽出した先頭のピッチから順に、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差を算出し、
前記一のノートの発音期間の末尾付近から前記発音終了タイミングまでの期間に含まれるピッチ差のうちプラスとなるピッチ差が前記第２の所定数以上連続している場合、当該プラスとなる複数のピッチ差を算出する際に用いた最も先頭に近い歌唱ピッチを前記上昇区間の開始時の歌唱ピッチとし、
前記上昇区間の開始時の歌唱ピッチ以降の期間において、０またはマイナスとなるピッチ差があり、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭から遠い方の歌唱ピッチが０であり、当該０である歌唱ピッチよりも後に０である歌唱ピッチが第３の所定数以上連続しており、且つ当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチが前記一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも前記第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれている場合、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチを前記上昇区間の終了時の歌唱ピッチとすることで前記上昇区間を特定し、
特定された前記上昇区間以前の期間において、算出された前記ピッチ差を前記一のノートの先頭に向かって確認し、前記所定範囲内であるピッチ差が前記第１の所定数以上連続している場合、複数の当該ピッチ差を算出する際に用いた最も先頭から遠い歌唱ピッチを前記水平区間の終了時の歌唱ピッチとし、
前記水平区間の終了時の歌唱ピッチ以前の期間において、所定範囲外にあるピッチ差があった場合、当該所定範囲外にあるピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチを前記水平区間の開始時の歌唱ピッチとすることで前記水平区間を特定し、
特定された前記水平区間の歌唱ピッチに対し、特定された前記上昇区間の終了時の歌唱ピッチが前記第２の所定値以上である場合、特定された前記一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定することを特徴とする請求項１記載のカラオケ装置。

【請求項3】

前記歌唱技法判定部は、
特定された前記水平区間及び特定された前記上昇区間において発声された音声が同じ母音であった場合、前記ノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定することを特徴とする請求項２記載のカラオケ装置。

【請求項4】

前記一のノートの採点結果が不合格と判定された場合、且つ当該一のノートに対する前記ノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていた場合、当該一のノートの採点結果を合格と判定する採点処理部を有することを特徴とする請求項１から３のいずれか一項に記載のカラオケ装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、カラオケ装置に関する。

【背景技術】

【0002】

カラオケ装置は、マイクにより入力された歌唱音声から抽出した歌唱音声データと、カラオケ演奏された楽曲の主旋律を示すリファレンスデータとを比較することにより、カラオケ歌唱の巧拙を採点する採点機能が搭載されている。

【0003】

カラオケ歌唱を行う歌唱者の中にはプロ歌手の歌唱を真似て、しゃくり、フォール、こぶし、シャウトなどの特殊な歌唱技法を用いて歌唱を行う者もいる。ここで、特許文献１には、所謂「ハンマリング・オン歌唱」を特定可能な技術が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特許第７１９４０１６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明の目的は、カラオケ歌唱にノート末尾ハンマリング・オン歌唱（後述）が含まれるかどうかを判定することが可能なカラオケ装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明者は、聴感上特殊な歌唱と判断される歌唱音声信号に含まれる歌唱ピッチを解析したところ、一のノートにおいて、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差が、所定範囲内であり且つ第１の所定数以上連続する水平区間と、当該水平区間よりも後において連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差がプラスとなる上昇区間とが存在し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが、当該一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、当該水平区間の歌唱ピッチに対し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上であることを見出した。本発明は、この発見に基づき、完成されたものであって、この歌唱独特のピッチの変化を検出することにより、この歌唱を判定することができる技術である。

【0007】

なお、このような歌唱は、特許文献１に記載されたハンマリング・オン歌唱と類似する歌唱ピッチの推移（水平区間、上昇区間）を示しつつ、一のノートの末尾付近における歌唱ピッチが独特の推移を示すため、以下「ノート末尾ハンマリング・オン歌唱」という。

【0008】

具体的に、上記目的を達成するための発明は、カラオケ楽曲の歌唱により得られた歌唱音声信号から、所定区間毎に歌唱ピッチを検出する歌唱ピッチ検出部と、前記カラオケ楽曲のリファレンスデータに含まれる一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された前記歌唱ピッチの中に、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差が、所定範囲内であり且つ第１の所定数以上連続する水平区間と、当該水平区間よりも後において連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差がプラスとなる上昇区間とが存在し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが当該一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、当該水平区間の歌唱ピッチに対し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、当該一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する歌唱技法判定部と、を有するカラオケ装置である。
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。

【発明の効果】

【0009】

本発明によれば、カラオケ歌唱にノート末尾ハンマリング・オン歌唱が含まれるかどうかを判定することができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】実施形態に係るカラオケ装置のハードウェア構成例を示す図である。

【図2】実施形態に係るカラオケ本体のソフトウェア構成例を示す図である。

【図3】実施形態に係るノート末尾ハンマリング・オン歌唱の判定処理を示すフローチャートである。

【図4】実施形態に係る歌唱ピッチ及びピッチ差を示した図である。

【図5】実施形態に係る一のノートと歌唱ピッチの関係を示した図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

＜実施形態＞
図１～図５を参照して、実施形態に係るカラオケ装置１について説明する。

【0012】

＝＝カラオケ装置＝＝
カラオケ装置１は、カラオケ演奏及び歌唱者がカラオケ歌唱を行うための装置である。カラオケ装置１は、歌唱者が選曲したカラオケ楽曲を予約待ち行列に登録し、順番にカラオケ演奏を行う。図１に示すように、カラオケ装置１は、カラオケ本体１０、スピーカ２０、表示装置３０、マイク４０、及びリモコン装置５０を備える。

【0013】

スピーカ２０はカラオケ本体１０からの放音信号に基づいて放音するための構成である。表示装置３０はカラオケ本体１０からの信号に基づいて映像や画像を画面に表示するための構成である。マイク４０は歌唱者の歌唱音声（マイク４０への入力音声）をアナログの歌唱音声信号に変換してカラオケ本体１０に入力するための構成である。リモコン装置５０は、カラオケ本体１０に対する各種操作をおこなうための装置である。歌唱者はリモコン装置５０を用いて歌唱を希望するカラオケ楽曲の選曲等を行うことができる。リモコン装置５０の表示画面には各種操作の指示入力を行うためのアイコン等が表示される。

【0014】

カラオケ本体１０は、選曲されたカラオケ楽曲の演奏制御、歌詞や背景映像等の表示制御、マイク４０を通じて入力された歌唱音声信号の処理といった、カラオケ歌唱に関する各種の制御を行う。図１に示すように、カラオケ本体１０は、制御部１１、通信部１２、記憶部１３、音響処理部１４、表示処理部１５及び操作部１６を備える。各構成はインターフェース（図示なし）を介してバスＢに接続されている。

【0015】

制御部１１は、ＣＰＵ１１ａおよびメモリ１１ｂを備える。ＣＰＵ１１ａは、メモリ１１ｂに記憶された動作プログラムを実行することにより各種の制御機能を実現する。メモリ１１ｂは、ＣＰＵ１１ａに実行されるプログラムを記憶したり、プログラムの実行時に各種情報を一時的に記憶したりする記憶装置である。

【0016】

通信部１２は、ルーター（図示なし）を介してカラオケ本体１０を通信回線に接続するためのインターフェースを提供する。

【0017】

記憶部１３は、各種のデータを記憶する大容量の記憶装置であり、たとえばハードディスクドライブなどである。記憶部１３は、カラオケ装置１によりカラオケ演奏を行うための複数の楽曲データを記憶する。

【0018】

楽曲データは、個々のカラオケ楽曲を特定するための楽曲ＩＤが付与されている。楽曲データは、伴奏データ、リファレンスデータ等を含む。伴奏データは、カラオケ演奏音の元となるデータである。伴奏データはカラオケ演奏をする際のテンポを示す情報を含む。テンポは、楽曲毎に所定の値が設定されている。リファレンスデータは、歌唱者によるカラオケ歌唱を採点する際の基準として用いられるデータである。リファレンスデータは、複数のノート（音符）から構成され、ノート毎に所定のピッチ（すなわち基準ピッチ）が設定されている。

【0019】

また、記憶部１３は、各カラオケ楽曲に対応する歌詞を表示装置３０等に表示させるための歌詞テロップデータ、カラオケ演奏時に表示装置３０等に表示される背景画像等の背景画像データ、楽曲毎のカラオケ演奏時間を示す演奏時間データ及び楽曲の属性情報（歌手名、作詞・作曲者名、ジャンル等の当該楽曲に関する情報）を記憶する。

【0020】

音響処理部１４は、制御部１１の制御に基づき、カラオケ楽曲に対する演奏の制御およびマイク４０を通じて入力された歌唱音声信号の処理を行う。表示処理部１５は、制御部１１の制御に基づき、表示装置３０やリモコン装置５０における各種表示に関する処理を行う。たとえば、表示処理部１５は、カラオケ楽曲の演奏時における背景映像に歌詞テロップや各種アイコンが重ねられた映像を表示装置３０に表示させる制御を行う。或いは、表示処理部１５は、リモコン装置５０の表示画面に操作入力用の各種アイコンを表示させる。操作部１６は、パネルスイッチおよびリモコン受信回路などからなり、歌唱者によるカラオケ装置１のパネルスイッチあるいはリモコン装置５０の操作に応じて選曲信号、演奏中止信号などの操作信号を制御部１１に対して出力する。制御部１１は、操作部１６からの操作信号を検出し、対応する処理を実行する。

【0021】

（ソフトウェア構成）
図２はカラオケ本体１０のソフトウェア構成例を示す図である。カラオケ本体１０は、歌唱ピッチ検出部１００、歌唱技法判定部２００、提示部３００、及び採点処理部４００を備える。歌唱ピッチ検出部１００、歌唱技法判定部２００、提示部３００、及び採点処理部４００は、ＣＰＵ１１ａがメモリ１１ｂに記憶されるプログラムを実行することにより実現される。

【0022】

［歌唱ピッチ検出部］
歌唱ピッチ検出部１００は、カラオケ楽曲の歌唱により得られた歌唱音声信号から、所定区間毎に歌唱ピッチを検出する。

【0023】

具体的に、歌唱ピッチ検出部１００は、歌唱音声信号を解析し、歌唱ピッチを検出する。歌唱ピッチは、所定時間長（たとえば２０ｍｓｅｃ）のフレーム単位で１サンプルずつ時系列に検出する。歌唱ピッチ検出部１００は、検出した歌唱ピッチを、歌唱技法判定部２００に順次出力する。なお、歌唱ピッチの検出は、カラオケ楽曲の歌唱に伴って順次行ってもよいし、一のカラオケ楽曲の歌唱が全て終了した後にまとめて行ってもよい。すなわち本実施形態においては、時間長２０ｍｓｅｃのフレームが、歌唱ピッチ検出における所定区間に相当する。

【0024】

［歌唱技法判定部］
歌唱技法判定部２００は、カラオケ楽曲のリファレンスデータに含まれる一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチの中に、水平区間と上昇区間とが存在し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが当該一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、当該水平区間の歌唱ピッチに対し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、当該一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する。

【0025】

水平区間は、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差が、所定範囲内であり且つ第１の所定数以上連続する区間である。所定範囲は、水平区間を特定するにあたり、許容可能な連続する２つの歌唱ピッチのずれの幅である。第１の所定数は、水平区間を特定するにあたり、所定範囲内に含まれるピッチ差が連続する最低限の数である。所定範囲及び第１の所定数は、判定するノート末尾ハンマリング・オン歌唱の程度に応じて、予め任意の値が設定されている。たとえば、所定範囲は±１ｃｅｎｔ～±１０ｃｅｎｔであり、第１の所定数は３～８である。

【0026】

上昇区間は、水平区間よりも後において連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差がプラスとなる区間である。上昇区間においては、開始時の歌唱ピッチから終了時の歌唱ピッチに至るまで歌唱ピッチが上昇する（すなわち歌唱ピッチの値が大きくなる）。

【0027】

第１の所定値は、一のノートの基準ピッチに対して、上昇区間の終了時の歌唱ピッチがノート末尾ハンマリング・オン歌唱の歌唱ピッチであるかどうかを判断するための値である。第２の所定値は、水平区間の歌唱ピッチ（たとえば、水平区間の歌唱ピッチの平均値等の統計量、水平区間の終了時の歌唱ピッチ、水平区間における最も高いまたは最も低い歌唱ピッチ）に対して、上昇区間の終了時の歌唱ピッチがノート末尾ハンマリング・オン歌唱の歌唱ピッチであるかどうかを判断するための値である。第１の所定値及び第２の所定値は、判定するノート末尾ハンマリング・オン歌唱の程度に応じて、予め任意の値が設定されている。たとえば第１の所定値は、一のノートの基準ピッチに対して－１００ｃｅｎｔ～－１５０ｃｅｎｔである。また第２の所定値は、水平区間の歌唱ピッチの平均値に対して＋７５ｃｅｎｔ以上である。

【0028】

ここで、図３及び図４を参照して、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱の判定処理について詳細に説明を行う。図３は、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱の判定処理を示すフローチャートである。図４は、カラオケ楽曲Ｘの歌唱により得られた歌唱音声信号を解析して検出された所定区間毎の歌唱ピッチと、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差を示した図である。図４の例において、ピッチ差はｃｅｎｔ値で示す。

【0029】

＝＝＝ノートの特定＝
まず、歌唱技法判定部２００は、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱の判定を行うための一のノートを特定する（一のノートを特定。ステップ１０）。ノート末尾ハンマリング・オン歌唱の判定は一のノート毎に行う。ノートの特定は、カラオケＸのリファレンスデータを参照することにより行うことができる。この例では一のノートとしてノートＮを特定したとする。

【0030】

＝＝歌唱ピッチの抽出＝＝
次に、歌唱技法判定部２００は、特定された一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチを時系列に抽出する（一のノートにおける歌唱ピッチの抽出。ステップ１１）。歌唱ピッチの検出は、歌唱ピッチ検出部１００により行われる。

【0031】

発音開始タイミングは、ノートを歌唱する際に発音を開始すべき時刻を示す。ノートの発音開始タイミングは、カラオケ楽曲の演奏開始時点を０とした場合の、当該ノートまでの経過時間に相当する。発音終了タイミングは、ノートを歌唱する際に発音を終了すべき時刻を示す。この例では、ノートＮの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチＰ（１）からＰ（ｎ）を抽出したとする。また、この例ではノートＮの発音終了タイミングまでに歌唱ピッチＰ（ｎ＋１）からＰ（ｎ＋３）が検出できなかった所定区間（すなわち、０ｃｅｎｔの区間）が３つあったとする。

【0032】

＝＝＝ピッチ差の算出＝
次に、歌唱技法判定部２００は、ステップ１１で抽出した先頭のピッチから順に、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差を算出する（ピッチ差を算出。ステップ１２）。

【0033】

具体的に、歌唱技法判定部２００は、ピッチＰ（１）から順に連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差を算出する。たとえば、歌唱技法判定部２００は、歌唱ピッチＰ（１）と歌唱ピッチＰ（２）とのピッチ差Ｐｄ（１）を求める。ここで、ピッチＰｄ（ｘ）は、Ｐ（ｘ＋１）－Ｐ（ｘ）で算出するものとし、以下も同様である。

【0034】

＝＝上昇区間の特定＝＝
次に、歌唱技法判定部２００は上昇区間を特定する。

【0035】

まず、歌唱技法判定部２００は、一のノートの発音期間の末尾付近から発音終了タイミングまでの期間に含まれるピッチ差のうちプラスとなるピッチ差が第２の所定数以上連続している場合、当該プラスとなる複数のピッチ差を算出する際に用いた最も先頭に近い歌唱ピッチを上昇区間の開始時の歌唱ピッチとする（上昇区間の開始時の歌唱ピッチを決定。ステップ１３）。

【0036】

そして、歌唱技法判定部２００は、上昇区間の開始時の歌唱ピッチ以降の期間において、０またはマイナスとなるピッチ差があり、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭から遠い方の歌唱ピッチが０であり、当該０である歌唱ピッチよりも後に０である歌唱ピッチが第３の所定数以上連続しており、且つ当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチが一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれている場合、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチを上昇区間の終了時の歌唱ピッチとすることで前記上昇区間を特定する（上昇区間の終了時の歌唱ピッチを決定することで上昇区間を特定。ステップ１４）。

【0037】

一のノートの発音期間の末尾は、発音終了タイミングを基準とする一の範囲が予め設定される。一の範囲は、たとえばノートＮを時系列に１０分割（ノートｎ１～ノートｎ１０）した場合における最後のノートｎ１０のように、ノートの長さを基準として設定できる。一の範囲内には複数の歌唱ピッチが含まれる。

【0038】

第２の所定数は、上昇区間を特定するにあたり、プラスとなるピッチ差が連続する最低限の数である。第３の所定数は、上昇区間を特定するにあたり、０である歌唱ピッチが連続する最低限の数である。第２の所定数及び第３の所定数は、判定するノート末尾ハンマリング・オン歌唱の程度に応じて、予め任意の値が設定されている。たとえば、第２の所定数は３～５であり、第３の所定数は２～４である。

【0039】

具体的に、歌唱技法判定部２００は、ノートＮの発音期間の末尾付近から発音終了タイミングまでの期間に含まれるピッチ差Ｐｄ（ｎ－２０）から順に、プラスとなるピッチ差が所定数以上連続しているかどうかを確認する。この例では、ノートＮの発音期間の末尾付近から発音終了タイミングまでの期間には、歌唱ピッチＰ（ｎ－２０）からＰ（ｎ）が含まれているとする。また第２の所定数は「３」とする。

【0040】

たとえば、図４に示した通り、ピッチ差Ｐｄ（ｎ－１７）及びピッチ差Ｐｄ（ｎ－１６）はプラスの値を示しているが、ピッチ差Ｐｄ（ｎ－１５）はマイナスの値を示している。この場合、歌唱技法判定部２００は、カウントをリセットし、ピッチ差Ｐｄ（ｎ－１４）から改めてプラスとなるピッチ差が所定数以上連続しているかどうかの確認を行う。

【0041】

一方、図４に示した通り、ピッチ差Ｐｄ（ｎ－６）からピッチ差Ｐｄ（ｎ）まではプラスの値が７個連続している。この場合、歌唱技法判定部２００は、プラスとなるピッチ差が第２の所定数以上連続していると判断する。なおこの例のように、歌唱技法判定部２００は、プラスの値が連続している場合には第２の所定数に関わらずカウントを行う。

【0042】

歌唱技法判定部２００は、プラスとなる複数のピッチ差を算出する際に用いた最も先頭に近い歌唱ピッチ（すなわち、歌唱ピッチＰ（ｎ－７））を上昇区間ＲＺの開始時の歌唱ピッチとする。

【0043】

次に、歌唱技法判定部２００は、上昇区間ＲＺの開始時の歌唱ピッチＰ（ｎ－７）以降の期間において、０またはマイナスとなるピッチ差があるかどうかを確認する。この例では、図４に示した通りピッチ差Ｐｄ（ｎ＋１）の値がマイナスとなっている。

【0044】

この場合、歌唱技法判定部２００は、ピッチ差Ｐｄ（ｎ＋１）を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチ（Ｐ（ｎ）及びＰ（ｎ＋１））のうち、ノートＮの先頭から遠い方の歌唱ピッチＰ（ｎ＋１）が０であるかどうかを確認する。図４に示した通り、Ｐ（ｎ＋１）は０となっている。

【0045】

次に、歌唱技法判定部２００は、０である歌唱ピッチＰ（ｎ＋１）よりも後に、０である歌唱ピッチが第３の所定数以上連続しているかどうかを確認する。この例では、第３の所定数は「２」とする。

【0046】

図４に示した通り、歌唱ピッチＰ（ｎ＋１）よりも後に、０である歌唱ピッチＰ（ｎ＋２）及び歌唱ピッチＰ（ｎ＋３）が連続している。

【0047】

更に、歌唱技法判定部２００は、ピッチ差Ｐｄ（ｎ＋１）を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチ（Ｐ（ｎ）及びＰ（ｎ＋１））のうちノートＮの先頭に近い方の歌唱ピッチＰ（ｎ）がノートＮの基準ピッチＰｎと基準ピッチＰｎよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれているかどうかを確認する。この例では、ノートＮの基準ピッチＰｎは「６０００ｃｅｎｔ」であり、第１の所定値は「－１５０ｃｅｎｔ」とする。

【0048】

ここで図４に示した通り、歌唱ピッチＰ（ｎ）の値は５９９７ｃｅｎｔである。よって、歌唱技法判定部２００は、歌唱ピッチＰ（ｎ）がノートＮの基準ピッチＰｎ「６０００ｃｅｎｔ」と基準ピッチＰｎよりも「－１５０ｃｅｎｔ」低い歌唱ピッチである「５８５０ｃｅｎｔ」との間に含まれていると判断する。

【0049】

この場合、歌唱技法判定部２００は、ピッチ差Ｐｄ（ｎ＋１）を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチＰ（ｎ）を上昇区間ＲＺの終了時の歌唱ピッチとすることで上昇区間ＲＺを特定する。

【0050】

＝＝水平区間の特定＝＝
次に、歌唱技法判定部２００は水平区間を特定する。

【0051】

まず、歌唱技法判定部２００は、特定された上昇区間以前の期間において、算出されたピッチ差を一のノートの先頭に向かって確認し、所定範囲内であるピッチ差が第１の所定数以上連続している場合、複数の当該ピッチ差を算出する際に用いた最も先頭から遠い歌唱ピッチを水平区間の終了時の歌唱ピッチとする（水平区間の終了時の歌唱ピッチを決定。ステップ１５）。

【0052】

そして、歌唱技法判定部２００は、水平区間の終了時の歌唱ピッチ以前の期間において、所定範囲外にあるピッチ差があった場合、当該所定範囲外にあるピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチを水平区間の開始時の歌唱ピッチとすることで水平区間を特定する（水平区間の開始時の歌唱ピッチを決定することで水平区間を特定。ステップ１６）。

【0053】

具体的に、歌唱技法判定部２００は、特定された上昇区間ＲＺ以前の期間において、算出されたピッチ差をノートＮの先頭に向かって確認し、所定範囲内であるピッチ差が第１の所定数以上連続しているかどうかを判断する。この例では所定範囲が「±５ｃｅｎｔ」であるとし、第１の所定数が「６」であるとする。

【0054】

図４に示した通り、所定範囲（±５ｃｅｎｔ）内にあるピッチ差は、特定された上昇区間ＲＺ以前の期間において、最初に所定範囲内にあると判断されたピッチ差Ｐｄ（ｎ－７）からピッチ差Ｐｄ（ｎ－１７）まで１１個連続している。また、この例において上昇区間ＲＺと水平区間ＨＺは連続している。この場合、歌唱技法判定部２００は、ピッチ差Ｐｄ（ｎ－７）からピッチ差Ｐｄ（ｎ－１７）を算出する際に用いた最もノートＮの先頭から遠い歌唱ピッチＰ（ｎ－７）よりも一つ手前の歌唱ピッチＰ（ｎ－８）を水平区間ＨＺの終了時の歌唱ピッチとすることができる。

【0055】

次に、歌唱技法判定部２００は、水平区間ＨＺの終了時の歌唱ピッチＰ（ｎ－８）以前の期間において、所定範囲外にあるピッチ差があるかどうかを確認する。

【0056】

この例においては、図４に示した通り、歌唱ピッチＰ（ｎ－８）以前の期間において、ピッチ差Ｐｄ（ｎ－１８）が所定範囲外となっている。この場合、歌唱技法判定部２００は、ピッチ差Ｐｄ（ｎ－１８）を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチＰ（ｎ－１８）及びＰ（ｎ－１９）のうちノートＮの先頭に近い方の歌唱ピッチＰ（ｎ－１９）を水平区間ＨＺの開始時の歌唱ピッチとすることで水平区間ＨＺを特定する。なお、水平区間に含まれるピッチ差の最大値と最小値が所定範囲（たとえば±１０ｃｅｎｔ）内であった場合にのみ水平区間として特定することとすれば、たとえばピッチ差が所定範囲内であっても徐々に上昇、または下降するような区間については水平区間としないことでノート末尾ハンマリング・オン歌唱の誤検出を防止できる。

【0057】

＝＝ノート末尾ハンマリング・オン歌唱の判定＝＝
歌唱技法判定部２００は、特定された水平区間の歌唱ピッチに対し、特定された上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、特定された一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する（ノート末尾ハンマリング・オン歌唱を判定。ステップ１７）。

【0058】

具体的に、歌唱技法判定部２００は、特定された水平区間ＨＺの歌唱ピッチの平均値に対し、特定された上昇区間ＲＺの終了時の歌唱ピッチＰ（ｎ）が第２の所定値以上であるかどうかを確認する。この例では第２の所定値が「＋７５ｃｅｎｔ」であるとする。

【0059】

ここで、図４の例において、特定された水平区間ＨＺの歌唱ピッチの平均値は約「５９０８ｃｅｎｔ」であり、特定された上昇区間ＲＺの終了時の歌唱ピッチＰ（ｎ）の値は「５９９７ｃｅｎｔ」である。すなわち、特定された水平区間の歌唱ピッチの平均値に対し、特定された上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値（＋７５ｃｅｎｔ）以上となっている。

【0060】

よって、歌唱技法判定部２００は、特定されたノートＮにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する。

【0061】

図５は、ノートＮと歌唱ピッチの関係を示した図である。図５において、ノートＮのピッチ（基準ピッチ）をピッチＰｎで示す。また、開始時刻ＴｓはノートＮの発音開始タイミングであり、終了時刻ＴｅはノートＮの発音終了タイミングである。図５における縦軸は歌唱ピッチを示し、横軸は時刻を示す。

【0062】

図５に示したように、ノートＮの開始時刻Ｔｓから終了時刻Ｔｅまでの間に水平区間ＨＺの全部及び上昇区間ＲＺの全部が含まれており、上昇区間ＲＺの終了時の歌唱ピッチがノートＮの基準ピッチＰｎと基準ピッチＰｎよりも－１５０ｃｅｎｔだけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、且つ水平区間ＨＺの歌唱ピッチに対し、上昇区間ＲＺの終了時の歌唱ピッチが＋７５ｃｅｎｔ以上となっている。すなわち、ノートＮにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われているといえる。なお、ノートＮに対するノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われたと判定するためには、水平区間の一部（所定範囲内であるピッチ差が所定数以上連続している区間）が含まれていればよい。

【0063】

［提示部］
提示部３００は、歌唱技法判定部２００による判定結果を歌唱者に提示する。たとえば、ノートＮに対するノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われたとの判定結果が入力された場合、提示部３００は、たとえば、表示装置３０に表示されるノートＮに対応するガイドメロディ画像近傍にノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われた旨のアイコンを表示させることができる。ガイドメロディ画像は、歌唱者のカラオケ歌唱を支援するために、カラオケ楽曲のメロディを画像として表示させたものである。ガイドメロディ画像の表示については公知の手法を用いることが可能である（たとえば特開２００４－２０５８１７号公報参照）。

【0064】

なお、提示部３００は、ガイドメロディ画像と関係なく、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われた旨のアイコンのみを表示させることもできる。或いは、提示部３００は、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われた旨のアイコンを表示させる代わりにスピーカ２０を介して音声（拍手、歓声等）でノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われた旨を報知することでもよい。

【0065】

［採点処理部］
採点処理部４００は、カラオケ楽曲の歌唱により得られる歌唱音声信号を当該カラオケ楽曲のリファレンスデータと比較し、採点値を算出する。採点値を算出する処理は公知の手法を用いることができる。たとえば、採点処理部４００は、マイク４０から入力された歌唱音声信号に基づく歌唱ピッチと、リファレンスデータに基づく基準ピッチにより、歌唱音程の正確さについての採点処理を行う。

【0066】

ここで、本実施形態に係る採点処理部４００は、一のノートの採点結果が不合格と判定された場合、且つ当該一のノートに対するノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていた場合、当該一のノートの採点結果を合格と判定する。

【0067】

図５に示すように、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱は、ノートの基準ピッチと歌唱ピッチとのずれが大きくなるため、一般的な採点処理によれば不合格となる可能性が高い。そこで、採点処理部４００は、一のノートの採点結果が不合格となった場合であっても、歌唱技法判定部２００により、当該一のノートに対してノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われたと判定された場合には、当該一のノートを合格として判定する。

【0068】

以上から明らかなように、本実施形態に係るカラオケ装置１は、カラオケ楽曲の歌唱により得られた歌唱音声信号から、所定区間毎に歌唱ピッチを検出する歌唱ピッチ検出部１００と、カラオケ楽曲のリファレンスデータに含まれる一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチの中に、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差が、所定範囲内であり且つ第１の所定数以上連続する水平区間と、当該水平区間よりも後において連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差がプラスとなる上昇区間とが存在し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが当該一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、当該水平区間の歌唱ピッチに対し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、当該一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する歌唱技法判定部２００とを有する。このようなカラオケ装置１によれば、カラオケ歌唱にノート末尾ハンマリング・オン歌唱が含まれるかどうかを判定することができる。

【0069】

より、具体的に、歌唱技法判定部２００は、一のノートを特定し、特定された一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチを時系列に抽出し、抽出した先頭のピッチから順に、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差を算出し、一のノートの発音期間の末尾付近から発音終了タイミングまでの期間に含まれるピッチ差のうちプラスとなるピッチ差が第１の所定数以上連続している場合、当該プラスとなる複数のピッチ差を算出する際に用いた最も先頭に近い歌唱ピッチを上昇区間の開始時の歌唱ピッチとし、上昇区間の開始時の歌唱ピッチ以降の期間において、０またはマイナスとなるピッチ差があり、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭から遠い方の歌唱ピッチが０であり、当該０である歌唱ピッチよりも後に０である歌唱ピッチが第２の所定数以上連続しており、且つ当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチが一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれている場合、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチを上昇区間の終了時の歌唱ピッチとすることで上昇区間を特定し、特定された上昇区間以前の期間において、算出されたピッチ差を一のノートの先頭に向かって確認し、所定範囲内であるピッチ差が第１の所定数以上連続している場合、複数の当該ピッチ差を算出する際に用いた最も先頭から遠い歌唱ピッチを水平区間の終了時の歌唱ピッチとし、水平区間の終了時の歌唱ピッチ以前の期間において、所定範囲外にあるピッチ差があった場合、当該所定範囲外にあるピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチを水平区間の開始時の歌唱ピッチとすることで水平区間を特定し、特定された水平区間の歌唱ピッチに対し、特定された上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、特定された一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する。歌唱技法判定部２００がこのような処理を実行することにより、カラオケ歌唱にノート末尾ハンマリング・オン歌唱が含まれるかどうかを判定することができる。

【0070】

更に、本実施形態に係るカラオケ装置１は、一のノートの採点結果が不合格と判定された場合、且つ当該一のノートに対するノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていた場合、当該一のノートの採点結果を合格と判定する採点処理部４００を有する。このようなカラオケ装置によれば、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱という歌唱技法が用いられたにも関わらず、それが反映されない採点結果となることを回避できる。

【0071】

＜変形例＞
上記実施形態で説明した歌唱技法判定部２００は、特定された水平区間及び特定された上昇区間において発声された音声が同じ母音であった場合、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定することができる。

【0072】

音声に母音が含まれるか否かは公知の音声認識技術を用いて判別することができる。

【0073】

たとえば、歌唱技法判定部２００は、マイク４０を介し、歌唱者がノートＮのカラオケ歌唱を行った際に得られた歌唱音声に対応する歌唱音声信号を取得する。歌唱技法判定部２００は、特定された水平区間に対応する歌唱音声信号を解析し、歌唱音声に含まれる母音を判別する。同様に、歌唱技法判定部２００は、特定された上昇区間に対応する歌唱音声信号を解析し、歌唱音声に含まれる母音を判別する。

【0074】

歌唱技法判定部２００は、実施形態で述べた条件に加え、特定された水平区間及び特定された上昇区間において発声された音声が同じ母音であった場合にノートＮにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定する。ノート末尾ハンマリング・オン歌唱は母音を発音しながらノートの末尾でピッチを上昇させるため、このような判定処理を行うことにより、水平区間と上昇区間において異なる母音や上昇区間に子音が含まれるような通常の歌唱行った場合と区別することができる。すなわち、このようなカラオケ装置によれば、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱の誤検出を防止できる。

【0075】

＜その他＞
上記実施形態では、水平区間と上昇区間が連続している例について述べた。一方、ノート末尾ハンマリング・オン歌唱においては、水平区間と上昇区間とは必ずしも連続している必要はない。

【0076】

また、上記実施形態では、水平区間を特定する際、特定された上昇区間以前の期間において、算出されたピッチ差を一のノートの先頭に向かって確認する例について述べたがこれに限られない。

【0077】

たとえば、上昇区間が特定された場合、歌唱技法判定部２００は、特定された上昇区間以前の期間において、算出されたピッチ差を一のノートの先頭から順に確認し、所定範囲内であるピッチ差が第１の所定数以上連続している場合、複数の当該ピッチ差を算出する際に用いた最も先頭に近い歌唱ピッチを水平区間の開始時の歌唱ピッチとする。また、歌唱技法判定部２００は、水平区間の開始時の歌唱ピッチ以降の期間において、所定範囲外にあるピッチ差があった場合、当該所定範囲外にあるピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭から遠い方の歌唱ピッチを水平区間の終了時の歌唱ピッチとすることで水平区間を特定することができる。

【0078】

或いは、歌唱技法判定部２００は、先に水平区間を特定した後、上昇区間を特定することでもよい。

【0079】

具体的に、歌唱技法判定部２００は、算出されたピッチ差を一のノートの先頭から順に確認し、所定範囲内であるピッチ差が第１の所定数以上連続している場合、複数の当該ピッチ差を算出する際に用いた最も先頭に近い歌唱ピッチを水平区間の開始時の歌唱ピッチとする。また、歌唱技法判定部２００は、水平区間の開始時の歌唱ピッチ以降の期間において、所定範囲外にあるピッチ差があった場合、当該所定範囲外にあるピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭から遠い方の歌唱ピッチを水平区間の終了時の歌唱ピッチとすることで水平区間を特定する。

【0080】

歌唱技法判定部２００は、特定された水平区間以降の期間において、一のノートの発音期間の末尾付近から発音終了タイミングまでの期間に含まれるピッチ差のうちプラスとなるピッチ差が第２の所定数以上連続している場合、当該プラスとなる複数のピッチ差を算出する際に用いた最も先頭に近い歌唱ピッチを上昇区間の開始時の歌唱ピッチとし、上昇区間の開始時の歌唱ピッチ以降の期間において、０またはマイナスとなるピッチ差があり、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭から遠い方の歌唱ピッチが０であり、当該０である歌唱ピッチよりも後に０である歌唱ピッチが第３の所定数以上連続しており、且つ当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチが一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれている場合、当該ピッチ差を算出する際に用いた２つの歌唱ピッチのうち先頭に近い方の歌唱ピッチを上昇区間の終了時の歌唱ピッチとすることで上昇区間を特定することができる。

【0081】

また、上記実施形態で説明したノート末尾ハンマリング・オン歌唱の特定処理や判定処理等をプログラムとして提供することも可能である。たとえば、当該プログラムは、コンピューター（たとえば、カラオケ装置）に、カラオケ楽曲の歌唱により得られた歌唱音声信号から、所定区間毎に歌唱ピッチを検出させ、カラオケ楽曲のリファレンスデータに含まれる一のノートの発音開始タイミングから発音終了タイミングまでの期間において検出された歌唱ピッチの中に、連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差が、所定範囲内であり且つ第１の所定数以上連続する水平区間と、当該水平区間よりも後において連続する２つの歌唱ピッチのピッチ差がプラスとなる上昇区間とが存在し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが当該一のノートの基準ピッチと当該基準ピッチよりも第１の所定値だけ低い歌唱ピッチとの間に含まれており、当該水平区間の歌唱ピッチに対し、当該上昇区間の終了時の歌唱ピッチが第２の所定値以上である場合、当該一のノートにおいてノート末尾ハンマリング・オン歌唱が行われていると判定させる。

【0082】

また、上記プログラムが記憶された非一時的なコンピューター可読媒体（non-transitory computer readable medium with an executable program thereon）を用いて、コンピューターにプログラムを供給することも可能である。なお、非一時的なコンピューターの可読媒体の例は、磁気記録媒体（例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ）、ＣＤ－ＲＯＭ（Read Only Memory）等がある。

【0083】

上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【符号の説明】

【0084】

１ カラオケ装置
１０ カラオケ本体
１１ 制御部
１００ 歌唱ピッチ検出部
２００ 歌唱技法判定部
３００ 提示部
４００ 採点処理部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】