(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005607
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20250109BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105839
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優生
(72)【発明者】
【氏名】寺田 翔
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊佑
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087BD03
(57)【要約】
【課題】 操作レバーにて解除機能を実行することが可能な乗物用シートにおいて、簡素な構成で当該機能を実現可能な乗物用シートの一例を開示する。
【解決手段】 乗物用シートは、解除ピン8と一体的に回転する第1解除レバー91と、第1解除レバー91に連結された第1操作ケーブル11であって、解除ピン8の回転を第2リクライナに伝達して当該第2リクライナを解除作動させる第1操作ケーブル11と、シート幅方向において第1リクライナ61に対して第1解除レバー91と同一側に配置された第2解除レバー92であって、解除ピン8と一体的に回転する第2解除レバー92と、第2解除レバー92に連結された第2操作ケーブル12であって、第2操作レバー72の操作を当該第2解除レバー92に伝達する第2操作ケーブル12とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
シートバックの骨格を構成するバックフレームと、
シートクッションの骨格を構成するクッションフレームと、
前記バックフレームと前記クッションフレームとを連結するとともに、当該クッションフレームに対する当該バックフレームの角度を調節可能な第1リクライナ及び第2リクライナと、
前記バックフレームを前方側に倒伏させる解除作動時に利用者により回転操作される第1操作レバー及び第2操作レバーと、
前記解除作動時に前記第1操作レバーの回転と機械的に連動して回転する解除ピンであって、回転することにより前記第1リクライナを解除作動させる解除ピンと、
前記解除ピンと一体的に回転する第1解除レバーと、
前記第1解除レバーに連結された第1操作ケーブルであって、前記解除ピンの回転を前記第2リクライナに伝達して当該第2リクライナを解除作動させる第1操作ケーブルと、
シート幅方向において前記第1リクライナに対して前記第1解除レバーと同一側に配置された第2解除レバーであって、前記解除ピンと一体的に回転する第2解除レバーと、
前記第2解除レバーに連結された第2操作ケーブルであって、前記第2操作レバーの操作を当該第2解除レバーに伝達する第2操作ケーブルと
を備ええる乗物用シート。
【請求項2】
前記第1解除レバーは、前記解除ピンを挟んで前記第2解除レバーと反対側に配置されている請求項1に乗物用シート。
【請求項3】
前記第1解除レバー及び前記第2解除レバーは、前記第1リクライナに対してシート幅方向外側に配置されている請求項2に乗物用シート。
【請求項4】
前記解除作動時に、前記第1操作ケーブル及び前記第2操作ケーブルが、当該第1操作ケーブル及び当該第2操作ケーブルの配索方向と交差する方向に変位することを規制する規制部を備え、
前記規制部は、前記第1操作ケーブルが一方の向きに変位することを規制するとともに、他方の向きに変位することを許容し、かつ、前記第2操作ケーブルが他方の向きに変位することを規制するとともに、一方の向きに変位することを許容する構成である請求項3に乗物用シート。
【請求項5】
前記第1解除レバーと前記第2解除レバーとは一体品であり、
前記第1解除レバーと前記第2解除レバーとは、前記解除ピンに対して対称な形状である請求項1ないし4のいずれか1項に乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バックフレームを前方側に倒伏させる機能(以下、解除機能又はフォールドダウン機能ともいう。)を有する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の乗物用シートでは、2つ操作レバーのうちいずれか一方のレバーが操作されたときに、解除機能が作動してシートバックがフォールドダウンする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、2つ操作レバーにて解除機能を実行することが可能な乗物用シートにおいて、簡素な構成で当該機能を実現可能な乗物用シートの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物に搭載される乗物用シートは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、シートバック(5)の骨格を構成するバックフレーム(51)と、シートクッション(3)の骨格を構成するクッションフレーム(31)と、バックフレーム(51)とクッションフレーム(31)とを連結するとともに、当該クッションフレーム(31)に対する当該バックフレーム(51)の角度を調節可能な第1リクライナ(61)及び第2リクライナ(62)と、バックフレーム(51)を前方側に倒伏させる解除作動時に利用者により回転操作される第1操作レバー(71)及び第2操作レバー(72)と、解除作動時に第1操作レバー(71)の回転と機械的に連動して回転する解除ピン(8)であって、回転することにより第1リクライナ(61)を解除作動させる解除ピン(8)と、解除ピン(8)と一体的に回転する第1解除レバー(91)と、第1解除レバー(91)に連結された第1操作ケーブル(11)であって、解除ピン(8)の回転を第2リクライナ(62)に伝達して当該第2リクライナ(62)を解除作動させる第1操作ケーブル(11)と、シート幅方向において第1リクライナ(61)に対して第1解除レバー(91)と同一側に配置された第2解除レバー(92)であって、解除ピン(8)と一体的に回転する第2解除レバー(92)と、第2解除レバー(92)に連結された第2操作ケーブル(12)であって、第2操作レバー(72)の操作を当該第2解除レバー(92)に伝達する第2操作ケーブル(12)とである。
【0006】
これにより、当該乗物用シートでは、第1操作レバー(71)が操作されると、解除ピン(8)が回転して第1リクライナ(61)が解除されるとともに、第1解除レバー(91)が回転して第1操作ケーブル(11)を介して第2リクライナ(62)も解除される。したがって、第1操作レバー(71)の操作により第1リクライナ(61)及び第2リクライナ(62)が解除されるので、解除作動が実現される。
【0007】
また、第2操作レバー(72)が操作されると、第2操作レバー(72)の操作が第2操作ケーブル(12)を介して第2解除レバー(92)に伝達されるので、解除ピン(8)が回転して第1リクライナ(61)が解除される。
【0008】
このとき、解除ピン(8)の回転に伴って第1解除レバー(91)が回転するので、第1操作ケーブル(11)を介して第2リクライナ(62)も解除される。したがって、第2操作レバー(72)の操作により第1リクライナ(61)及び第2リクライナ(62)が解除されるので、解除作動が実現される。以上により、簡素な構成にて解除機能を実行することできる。
【0009】
また、第1解除レバー(91)と第2解除レバー(92)とが第1リクライナ(61)に対して同一側に配置されているので、第1リクライナ(61)を挟んで第1解除レバー(91)と反対側の構成が簡素構造になり得る。延いては、当該反対側に新たな機構を容易に設けることも可能となり得る。
【0010】
なお、当該乗物用シートは、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、第1解除レバー(91)は、解除ピン(8)を挟んで第2解除レバー(92)と反対側に配置されていることが望ましい。これにより、当該乗物用シートでは、第1解除レバー(91)又は第2解除レバー(92)が長くなってしまうことが抑制され得る。
【0011】
すなわち、第1解除レバー(91)が解除ピン(8)に対して第2解除レバー(92)と同一側に配置され、かつ、第1寸法と第2寸法とが同一寸法である構成では、第1操作ケーブル(11)と第2操作ケーブル(12)とが干渉してしまう。
【0012】
なお、第1寸法とは、解除ピン(8)から第1操作ケーブル(11)と第1解除レバー(91)との連結部までの寸法をいう。第2寸法とは、解除ピン(8)から第2操作ケーブル(12)と第2解除レバー(92)との連結部までの寸法をいう。
【0013】
したがって、第1解除レバー(91)が解除ピン(8)に対して第2解除レバー(92)と同一側に配置された構成では、第1寸法と第2寸法とが異なる寸法にならざるを得なく、第1解除レバー(91)又は第2解除レバー(92)が長くなってしまう。
【0014】
これに対して、当該乗物用シートでは、第1解除レバー(91)は、解除ピン(8)を挟んで第2解除レバー(92)と反対側に配置されているので、第1操作ケーブル(11)と第2操作ケーブル(12)との干渉が生じない。
【0015】
したがって、当該乗物用シートでは、第1寸法と第2寸法とを同一寸法とすることができるので、第1解除レバー(91)又は第2解除レバー(92)が長くなってしまうことが抑制され得る。
【0016】
第1解除レバー(91)及び第2解除レバー(92)は、第1リクライナ(61)に対してシート幅方向外側に配置されていることが望ましい。これにより、外側にシールド等のカバーを配置すれば、第1解除レバー(91)及び第2解除レバー(92)を隠すことができるので、乗物用シートの意匠性を向上させることができる。
【0017】
また、当該乗物用シートは、解除作動時に、第1操作ケーブル(11)及び第2操作ケーブル(12)が、当該第1操作ケーブル(11)及び当該第2操作ケーブル(12)の配索方向と交差する方向に変位することを規制する規制部(14)を備える。
【0018】
そして、当該規制部(14)は、第1操作ケーブル(11)が一方の向きに変位することを規制するとともに、他方の向きに変位することを許容し、かつ、第2操作ケーブル(12)が他方の向きに変位することを規制するとともに、一方の向きに変位することを許容する構成であることが望ましい。これにより、第1操作ケーブル(11)及び第2操作ケーブル(12)の変位を効果的に規制でき得る。
【0019】
さらに、第1解除レバー(91)と第2解除レバー(92)とは一体品であり、第1解除レバー(91)と第2解除レバー(92)とは、解除ピン(8)に対して対称な形状であることが望ましい。これにより、当該一体品であれば、乗物用シートの右側及び左側のいずれに対しても装着可能な構成となる。
【0020】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る解除のため構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る解除のため構成を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る解除のため構成を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る操作ケーブルの配索構成を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る解除のため構成を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0023】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る乗物用シートが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0024】
したがって、当該乗物用シートは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0025】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0026】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
乗物用シート1は、
図1に示されるように、シートクッション3及びシートバック5等を少なくとも備える。シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。
【0027】
シートクッション3は、クッションフレーム31及びクッションパッド(図示せず。)等を少なくとも有して構成されている。クッションフレーム31は、シートクッション3の骨格を構成する。クッションパッドは、発泡ウレタン等の弾性部材である。
【0028】
本実施形態に係るクッションフレーム31は、2つのクッションサイドフレーム32、33及び連結部材34~36等を少なくとも有する枠状のフレームである。クッションサイドフレーム32は、シート幅方向一端側に配置されてシート前後方向に延びている。
【0029】
クッションサイドフレーム33は、シート幅方向他端側に配置されてシート前後方向に延びている。連結部材34~36は、シート幅方向に延びて2つのクッションサイドフレーム32、33を連結している。
【0030】
シートバック5は、バックフレーム51及びクッションパッド(図示せず。)等を少なくとも有して構成されている。バックフレーム51は、シートバック5の骨格を構成する。クッションパッドは、発泡ウレタン等の弾性部材である。
【0031】
本実施形態に係るバックフレーム51は、2つのバックサイドフレーム52、53及び連結部材54、55等を少なくとも有する枠状のフレームである。バックサイドフレーム52は、シート幅方向一端側に配置されて略上下方向に延びている。
【0032】
バックサイドフレーム53は、シート幅方向他端側に配置されて略上下方向に延びている。連結部材54、55は、シート幅方向に延びて2つのバックサイドフレーム52、53を連結している。
【0033】
そして、クッションフレーム31とバックフレーム51とは、
図3に示されるように、第1リクライナ61及び第2リクライナ62を介して連結されている。具体的には、第1リクライナ61は、クッションサイドフレーム32とバックサイドフレーム52とを連結する。
【0034】
第2リクライナ62は、クッションサイドフレーム33とバックサイドフレーム53とを連結する。第1リクライナ61及び第2リクライナ62は、クッションフレーム31に対するバックフレーム51の角度を調節するための機構である。
【0035】
第1リクライナ61及び第2リクライナ62は、内歯歯車を有するラチェット、及び当該内歯歯車に係合する外歯を有するポール等を有して構成されている。なお、当該構成は、例えば、特開2000-102440号公報のリクライナと同様な構成である。
【0036】
なお、クッションサイドフレーム32、33の後端側は、
図2に示されるように、略円弧状に湾曲している。このため、クッションサイドフレーム32、33は、後端側が立ち上がったような形状となっている。
【0037】
<2.解除機能のための構成>
解除機能(フォールドダウン機能ともいう。)とは、シートバック5をシートクッション3に近接するように、当該バックフレーム51を前方側に倒伏させる機能である。当該解除機能を実現するための構成要素として、本実施形態では、以下の構成要素を少なくとも備える。
【0038】
すなわち、当該乗物用シート1は、
図1~
図3に示されるように、第1操作レバー71、第2操作レバー72、解除ピン8、第1解除レバー91、第2解除レバー92、第1操作ケーブル11及び第2操作ケーブル12等を備える。
【0039】
<2.1 操作レバー>
第1操作レバー71及び第2操作レバー72は、解除機能を作動させる際に、利用者により回転操作される操作部である。第1操作レバー71は、
図1に示されるように、第1リクライナ61に近接した位置に設けられている。第2操作レバー72は、シートバック5の背面側に設けられている。
【0040】
<2.2 解除ピン>
解除ピン8は、解除機能を作動させる際(以下、解除作動時という。)に第1操作レバー71の回転と機械的に連動して回転する軸部材である。当該解除ピン8が回転すると、第1リクライナ61は、バックフレーム51を前方側に倒伏させる作動(以下、解除作動ともいう。)する。
【0041】
具体的には、解除ピン8が回転すると、第1リクライナ61のラチェットとポールとの係合が解除される。このため、渦巻きバネ(図示せず。)の弾性力により、バックフレーム51が前方側に倒伏する。
【0042】
本実施形態では、
図3に示されるように、第1操作レバー71は、解除ピン8に直接的に連結されている。このため、利用者が第1操作レバー71を回転操作すると、解除ピン8が第1操作レバー71に連動して回転する。
【0043】
<2.3 第1解除レバー、第2解除レバー及び操作ケーブル>
第1解除レバー91及び第2解除レバー92は、
図2に示されるように、解除ピン8と一体的に回転するレバーである。すなわち、本実施形態では、第1解除レバー91と第2解除レバー92とは一体品であり、当該一体品が解除ピン8に連結されている。
【0044】
そして、第1解除レバー91は、
図4に示されるように、解除ピン8を挟んで第2解除レバー92と反対側に配置され、かつ、第1解除レバー91と第2解除レバー92との一体品は、解除ピン8に対して対称な形状に構成されている。
【0045】
さらに、第2解除レバー92は、シート幅方向において第1リクライナ61に対して第1解除レバー91と同一側に配置されている。具体的には、第1解除レバー91及び第2解除レバー92は、第1リクライナ61に対してシート幅方向外側に配置されている。
【0046】
第1リクライナ61に対してシート幅方向外側とは、シート幅方向において、第1リクライナ61を挟んで第2リクライナ62と反対側をいう。このため、本実施形態に係る第1解除レバー91及び第2解除レバー92は、
図2に示されるように、第1リクライナ61の左側に配置されている。
【0047】
第1操作ケーブル11は、
図4に示されるように、第1解除レバー91に連結されたコントロールケーブルである。当該第1操作ケーブル11は、解除ピン8の回転を第2リクライナ62に伝達して当該第2リクライナ62を解除作動させる。
【0048】
具体的には、第1操作ケーブル11は、
図3に示されるように、ケーブルジョイント13を介して第1操作レバー71と第2リクライナ62とを連結する。したがって、解除ピン8が回転し、第1リクライナ61が解除作動すると、第2リクライナ62は、第1リクライナ61の解除作動と連動して解除作動する。
【0049】
第2操作ケーブル12は、
図4に示されるように、第2解除レバー92に連結されたコントロールケーブルである。当該第2操作ケーブル12は、第2操作レバー72の操作を第2解除レバー92に伝達する。
【0050】
なお、第1操作ケーブル11及び第2操作ケーブル12は、引っ張り力のみを伝達可能なプルタイプのコントロールケーブルである。そして、第2操作ケーブル12のインナーケーブル12Aは、第2操作レバー72が操作されたときのみ第2解除レバー92に係止される。
【0051】
つまり、第1操作レバー71が回転操作され、解除ピン8及び第1解除レバー91が
図4の矢印で示される向き(以下、解除の向きという。)に回転したときには、インナーケーブル12Aは、第2解除レバー92に係止されない。
【0052】
このため、第2解除レバー92のみが解除の向きに回転する。つまり、第1操作レバー71が回転操作されると、第1解除レバー91及び第2解除レバー92は、解除の向きに回転する。
【0053】
このとき、第1操作ケーブル11のインナーケーブル11Aには張力が作用するため、当該第1操作ケーブル11を介して第2リクライナ62に操作力が伝達される。このときインナーケーブル12Aは第2解除レバー92に係止されないため、第2解除レバー92のみが解除の向きに回転し、第2操作レバー72には、第1操作レバー71の操作力が伝達されない。
【0054】
図5に示されるように、第1解除レバー91及び第2解除レバー92が配置されたクッションサイドフレーム32には、規制部14が設けられている。規制部14は、解除作動時に、第1操作ケーブル11及び第2操作ケーブル12が、それらケーブル11、12配索方向と交差する方向(本実施形態では、上下方向)に変位することを規制する。
【0055】
具体的には、規制部14は、
図6に示されるように、第1操作ケーブル11が一方の向き(本実施形態では、上向き)に変位することを規制するとともに、他方の向き(本実施形態では、下向き)に変位することを許容する。
【0056】
さらに、規制部14は、第2操作ケーブル12が他方の向き(本実施形態では、下向き)に変位することを規制するとともに、一方の向き(本実施形態では、上向き)に変位することを許容する。
【0057】
すなわち、規制部14は、少なくとも仕切部14Aを有している。仕切部14Aは、配索方向と交差する方向(本実施形態では、上下方向)と略直交する部材である。
そして、第1操作ケーブル11は、仕切部14Aに対して上記他方の向き側(本実施形態では、下側)に配索されている。第2操作ケーブル12は、仕切部14Aに対して上記一方の向き側(本実施形態では、上側)に配索されている。
【0058】
なお、仕切部14Aの位置は、
図5に示されるように、少なくとも第1操作ケーブル11と第1解除レバー91との連結部及び第2操作ケーブル12と第2解除レバー92との連結部の位置に対して、前方側及び下方側にずれた位置である。
【0059】
<2.4 第1解除レバー及び第2解除レバー等の作動>
シートバック5が倒伏していない状態、つまり解除作動前において、第1操作レバー71が
図1に示される矢印の向き操作されると、
図4に示されるように、解除ピン8が解除の向きに回転するとともに、第1解除レバー91も解除の向きに回転する。
【0060】
これにより、第1リクライナ61が解除作動するとともに、第1操作ケーブル11が第1解除レバー91により引かれるように操作されるため、第2リクライナ62も解除作動する。
【0061】
したがって、
図7に示されるように、シートバック5が倒伏する。なお、このとき、インナーケーブル12Aは第2解除レバー92に係止されないため、第2解除レバー92のみが解除の向きに回転する。
【0062】
シートバック5が倒伏していない状態、つまり解除作動前において、第2操作レバー72が操作されると、インナーケーブル12Aが引かれるため、第2解除レバー92が解除の向きに回転する。
【0063】
これにより、解除ピン8及び第1解除レバー91も解除の向き回転するため、第1リクライナ61が解除作動するとともに、第1操作ケーブル11が第1解除レバー91により引かれるように操作されるため、第2リクライナ62も解除作動する。
【0064】
<3.本実施形態に係る乗物用シート(特に、解除機能関する構成)の特徴>
本実施形態に係る乗物用シート1では、第1操作レバー71が操作されると、解除ピン8が回転して第1リクライナ61が解除されるとともに、第1解除レバー91が回転して第1操作ケーブル11を介して第2リクライナ62も解除される。したがって、第1操作レバー71の操作により第1リクライナ61及び第2リクライナ62が解除されるので、解除作動が実現される。
【0065】
また、第2操作レバー72が操作されると、第2操作レバー72の操作が第2操作ケーブル12を介して第2解除レバー92に伝達されるので、解除ピン8が回転して第1リクライナ61が解除される。
【0066】
このとき、解除ピン8の回転に伴って第1解除レバー91が回転するので、第1操作ケーブル11を介して第2リクライナ62も解除される。したがって、第2操作レバー72の操作により第1リクライナ61及び第2リクライナ62が解除されるので、解除作動が実現される。以上により、簡素な構成にて解除機能を実行することできる。
【0067】
また、第1解除レバー91と第2解除レバー92とが第1リクライナ61に対して同一側に配置されているので、第1リクライナ61を挟んで第1解除レバー91と反対側の構成を簡素構造になり得る。延いては、当該反対側に新たな機構を容易に設けることも可能となり得る。
【0068】
第1解除レバー91は、解除ピン8を挟んで第2解除レバー92と反対側に配置されている。これにより、当該乗物用シート1では、第1解除レバー91又は第2解除レバー92が長くなってしまうことが抑制され得る。
【0069】
すなわち、第1解除レバー91が解除ピン8に対して第2解除レバー92と同一側に配置され、かつ、第1寸法L1(
図5参照)と第2寸法L2(
図5参照)とが同一寸法である構成では、第1操作ケーブル11と第2操作ケーブル12とが干渉してしまう。
【0070】
なお、第1寸法とL1は、解除ピン8から第1操作ケーブル11と第1解除レバー91との連結部までの寸法をいう。第2寸法L2とは、解除ピン8から第2操作ケーブル12と第2解除レバー92との連結部までの寸法をいう。
【0071】
したがって、第1解除レバー91が解除ピン8に対して第2解除レバー92と同一側に配置された構成では、第1寸法L1と第2寸法L2とが異なる寸法にならざるを得なく、第1解除レバー91又は第2解除レバー92が長くなってしまう。
【0072】
これに対して、当該乗物用シート1では、第1解除レバー91は、解除ピン8を挟んで第2解除レバー92と反対側に配置されているので、第1操作ケーブル11と第2操作ケーブル12との干渉が生じない。
【0073】
したがって、当該乗物用シート1では、第1寸法L1と第2寸法L2とを同一寸法とすることができるので、第1解除レバー91又は第2解除レバー92が長くなってしまうことが抑制され得る。
【0074】
第1解除レバー91及び第2解除レバー92は、第1リクライナ61に対してシート幅方向外側に配置されている。これにより、外側にシールド等のカバー15(
図8参照)を配置すれば、第1解除レバー91及び第2解除レバー92を隠すことができるので、乗物用シート1の意匠性を向上させることができる。
【0075】
規制部14は、第1操作ケーブル11が上向きに変位することを規制するとともに、下向きに変位することを許容し、かつ、第2操作ケーブル12が下向きに変位することを規制するとともに、上向きに変位することを許容する構成である。
【0076】
これにより、第1操作ケーブル11及び第2操作ケーブル12の変位を効果的に規制でき得る。すなわち、例えば、第1操作ケーブル11に操作力、つまり張力が作用すると、湾曲状態で配索されている第1操作ケーブル11は、直線状になろうとする。
【0077】
このため、本実施形態において、第1操作ケーブル11に操作力が作用すると、第1操作ケーブル11が上向きに変位しようとする。したがって、規制部14は、第1操作ケーブル11が上向きに変位することを規制すれば、必要にして十分である。
【0078】
さらに、第1解除レバー91と第2解除レバー92とは一体品であり、第1解除レバー91と第2解除レバー92とは、解除ピン8に対して対称な形状である。したがって、当該一体品であれば、乗物用シート1の右側及び左側のいずれに対しても装着可能である。
【0079】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る第2解除レバー92は、シート幅方向において第1リクライナ61に対して第1解除レバー91と同一側に配置されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2解除レバー92が第1解除レバー91と反対側に配置された構成であってもよい。
【0080】
上述の実施形態では、第1解除レバー91は、解除ピン8を挟んで第2解除レバー92と反対側に配置され、かつ、第1解除レバー91と第2解除レバー92とは、解除ピン8に対して対称な形状に構成されていた。
【0081】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1解除レバー91が解除ピン8を挟んで第2解除レバー92と同一側に配置された構成、又は第1解除レバー91と第2解除レバー92とは、解除ピン8に対して非対称な形状に構成されていてもよい。
【0082】
上述の実施形態では、第1解除レバー91及び第2解除レバー92が外側に配置されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1解除レバー91及び第2解除レバー92が内側に配置された構成であってもよい。
【0083】
上述の実施形態では、第1解除レバー91と第2解除レバー92とが一体品であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1解除レバー91と第2解除レバー92とが別部品であってもよい。
【0084】
上述の実施形態では、2つの操作ケーブル11、12の変位を規制する規制部14が設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば当該規制部14が廃止された構成であってもよい。
【0085】
上述の実施形態では、第1操作レバー71が解除ピン8と同軸線上に配置され、かつ、第2操作レバー72がシートバック5の背面に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0086】
すなわち、当該開示は、例えば、第1操作レバー71がシートクッション3の側面に設けられ、第2操作レバー72がシートバック5の肩口に設けられた構成であってもよい。なお、当該構成においては、第1操作レバー71の操作力が、リンク機構や操作ケーブルにて解除ピン8に伝達される構成が望ましい。
【0087】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0088】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1… 乗物用シート 5…シートバック 8… 解除ピン
11… 第1操作ケーブル 12…第2操作ケーブル
14… 規制部 15…カバー 31… クッションフレーム
32、33… クッションサイドフレーム
51… バックフレーム、 52、53… バックサイドフレーム
61… 第1リクライナ 62…第2リクライナ
71… 第1操作レバー 72…第2操作レバー
91… 第1解除レバー 92…第2解除レバー