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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005617
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】角膜内皮撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61B3/13 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105852
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】亀井 芽衣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA04
4C316AB16
4C316FA06
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】解析に適した画像を得るための時間が無用に長期化することを防止する技術の提供。
【解決手段】被検眼の角膜を撮影する撮影部と、撮影によって得られた画像が基準を満たさない場合に前記撮影部に再撮影を開始させ、前記再撮影中に前記画像のサムネイル画像と前記再撮影のキャンセルボタンとを表示部に表示させ、前記キャンセルボタンが選択されると前記再撮影をキャンセルする制御部と、を備える角膜内皮撮像装置を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜を撮影する撮影部と、
撮影によって得られた画像が基準を満たさない場合に前記撮影部に再撮影を開始させ、前記再撮影中に前記画像のサムネイル画像と前記再撮影のキャンセルボタンとを表示部に表示させ、前記キャンセルボタンが選択されると前記再撮影をキャンセルする制御部と、
を備える角膜内皮撮像装置。
【請求項2】
前記再撮影中に前記サムネイル画像として表示される前記画像は、前記再撮影の要否の判断対象である複数の前記画像のうち最も画質が良い前記画像を少なくとも含む、
請求項1に記載の角膜内皮撮像装置。
【請求項3】
前記基準は、前記画像において、内皮細胞が位置する領域を示す内皮領域が、前記画像に占める割合が閾値以上であることである、
請求項1に記載の角膜内皮撮像装置。
【請求項4】
前記基準は、前記画像において、各内皮細胞を示す細胞領域の数と大きさの少なくとも一方についての判断基準である、
請求項1に記載の角膜内皮撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記再撮影の要否の判断対象である前記画像における、内皮細胞が位置する領域を示す内皮領域の位置に基づいてオフセット値を算出し、前記オフセット値に基づいて前記撮影部を移動させて前記再撮影を開始させる、
請求項1に記載の角膜内皮撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜内皮撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼疾患の有無判断や眼の術後経過の診断などに際して、角膜を観察することが行われている。このような角膜の細胞状態を観察するに際して、非接触で被検眼における角膜を撮像する装置が知られている。特許文献1には、撮影した画像が解析エラー画像であると判定された場合に再撮影を行うことが記載されている(0039,0201等)。特許文献2には、アライメント処理中にアライメント処理を中断させるためのキャンセルボタンを表示することが記載されている(図2、0027)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-103433号公報
【特許文献2】特開2023-46651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再撮影が予め決められた既定の回数行われる場合、被験者の拘束期間が長期化し被験者の負担が増大しうる。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、解析に適した画像を得るための時間が無用に長期化することを防止する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、角膜内皮撮像装置は、被検眼の角膜を撮影する撮影部と、撮影によって得られた画像が基準を満たさない場合に撮影部に再撮影を開始させ、再撮影中に画像のサムネイル画像と再撮影のキャンセルボタンとを表示部に表示させ、キャンセルボタンが選択されると再撮影をキャンセルする制御部と、を備える。
【0006】
すなわち、角膜内皮撮像装置は、基準を満たさない場合に再撮影を自動的に開始する構成であるため、基準を満たす画像を得るための操作者の手間を軽減できる。また、角膜内皮撮像装置は、再撮影中に、基準を満たさないと判断した画像のサムネイル画像と再撮影のキャンセルボタンとを表示する構成であるため、再撮影の要否を判断する機会を操作者に提供できる。また、角膜内皮撮像装置は、操作者が再撮影の必要がないと判断した場合に操作者のキャンセルボタンの選択に応じて再撮影をキャンセルするため、解析に適した画像を得るための時間が無用に長期化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】装置光学系の構成を示す説明図である。
図2】角膜内皮撮像装置の構成を示す説明図である。
図3】装置光学系に接続される制御回路等を説明する説明図である。
図4】撮影処理のフローチャートである。
図5】アライメント処理のフローチャートである。
図6】撮影された画像の一例を示す図である。
図7】画面表示の一例を示す図である。
図8図8Aは撮影された画像の例を示す図、図8Bは特定された内皮領域の例を示す図、図8Cはオフセット値算出例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)角膜内皮撮像装置の構成:
(1-1)制御系の構成:
(1-2)撮影処理:
(2)他の実施形態:
【0009】
(1)角膜内皮撮像装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる角膜内皮撮像装置100が備える装置光学系10の構成を示す説明図である。図2および図3は、角膜内皮撮像装置100を説明するための図である。装置光学系10は、前眼部撮像光学系12と、角膜照明光学系14と、軸方向位置検出光学系16と、軸方向照明光学系18と、角膜検出光学系20と、を備える。本実施形態においては、角膜照明光学系14および角膜検出光学系20が角膜撮像光学系を構成し、軸方向位置検出光学系16と、軸方向照明光学系18と、が軸方向位置調整光学系を構成する。
【0010】
装置光学系10において、前眼部撮像光学系12から図面下部の側に角膜照明光学系14および軸方向位置検出光学系16が設けられ、前眼部撮像光学系12から図面上部の側に軸方向照明光学系18および角膜検出光学系20が配置されている。角膜照明光学系14(軸方向位置検出光学系16)の光軸14a(16a)と、軸方向照明光学系18(角膜検出光学系20)の光軸18a(20a)とは、前眼部撮像光学系12の光軸12aと同一平面に配置されている。
【0011】
前眼部撮像光学系12は、光軸12a上において被検眼Eに近い位置から、ハーフミラー22、対物レンズ24、ハーフミラー26、コールドミラー27、CCD28、の順に設けられている。また、被検眼Eに対面する所定の位置には、2つの観察用光源30が配設されている。観察用光源30は、赤外光を発する赤外LEDであり、被検眼Eの前眼部を照明する照明光源である。コールドミラー27は、赤外光を透過させる一方で可視光を反射する。観察用光源30から発せられて被検眼Eの前眼部で反射された反射光は、対物レンズ24およびコールドミラー27を通して、CCD28上で結像される。すなわち、CCD28は、照明光源である観察用光源30による前眼部からの反射光を受光して前眼部の画像である前眼部画像を撮像する前眼部撮像素子である。
【0012】
角膜照明光学系14は、被検眼Eに近い位置から、投影レンズ32、コールドミラー34、スリット36、集光レンズ38、撮像用光源40、の順に設けられている。撮像用光源40は、可視光を発するLEDである。コールドミラー34は、赤外光を透過させる一方で可視光を反射する。撮像用光源40から発せられた光は、集光レンズ38およびスリット36を通すことによってスリット光とされる。このスリット光は、コールドミラー34により反射されるとともに投影レンズ32を通って、角膜Cに対して斜め方向から照射される。すなわち、撮像用光源40は、スリット光を被検眼Eに対して斜めから照明する照明光源である。
【0013】
軸方向位置検出光学系16は、その光軸の一部が角膜照明光学系14の光軸と一致する。軸方向位置検出光学系16は、被検眼Eに近い位置から、投影レンズ32、コールドミラー34、ラインセンサ44、の順に設けられている。後述する調整用光源54から照射されて角膜Cで反射された反射光は、投影レンズ32およびコールドミラー34を通って、ラインセンサ44上に結像する。
【0014】
一方、軸方向照明光学系18は、被検眼Eに近い位置から、対物レンズ46、コールドミラー48、集光レンズ52、軸方向位置検出用の検出光を出力する光源としての調整用光源54、の順に設けられている。調整用光源54は、赤外LEDなどの赤外光源が好ましい。調整用光源54から発せられた検出光は、角膜Cに対して斜めから照射される。調整用光源54は、必ずしも赤外光源とされる必要は無く、ハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源を用いても良い。可視光源を用いる場合には、その照度は撮像用光源40の照度よりも小さくされることが好ましい。可視光源の照度を撮像用光源40の照度よりも小さくすることによって、アライメント等、調整用光源54から光を照射する際の被検者の負担が軽減される。調整用光源54は、ハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源と赤外フィルタを組み合わせることによって構成されても良い。
【0015】
角膜検出光学系20は、その光軸の一部が軸方向照明光学系18の光軸と一致する。角膜検出光学系20は、被検眼Eに近い位置から、対物レンズ46、コールドミラー48、スリット56、変倍レンズ58、合焦レンズ60、コールドミラー27、CCD28の順に設けられている。撮像用光源40から照射されて角膜Cで反射された光は、対物レンズ46を通るとともにコールドミラー48で反射された後に、スリット56によって平行光とされる。この平行光は、変倍レンズ58および合焦レンズ60を通るとともに、コールドミラー27で反射されて、撮像素子であるCCD28上に結像される。すなわち、CCD28は、撮像用光源40から発せられた光であって集光レンズ38およびスリット36を通過した光であるスリット光による被検眼Eの角膜からの反射光を受光して角膜の画像である角膜画像を撮像する角膜撮像素子でもある。
【0016】
本実施形態においては、前眼部撮像光学系12の光軸12aが特定の方向に向くように前眼部撮像光学系12が角膜内皮撮像装置100に取り付けられている。また、被検者が角膜内皮撮像装置100に対面して顔を固定した場合に、測定対象となる被検眼Eを光軸12aが通るように、前眼部撮像光学系12が角膜内皮撮像装置100に取り付けられている。この結果、被検眼Eの正面方向と光軸12aとは、略一致する。
【0017】
角膜照明光学系14(軸方向位置検出光学系16)の光軸14a(16a)と、軸方向照明光学系18(角膜検出光学系20)の光軸18a(20a)とは、前眼部撮像光学系12の光軸12aに対して互いに逆方向に傾斜している。本実施形態において、光軸14a(16a)と光軸18a(20a)とは一点で交わり、当該一点において光軸12aも交わる。光軸14a(16a)、光軸18a(20a)、光軸12aが交わる交点を回転中心とした場合における光軸12aに対する傾斜角αは、光軸14a(16a)、光軸18a(20a)において同一である。すなわち、交点を回転中心とし、光軸12aに対して光軸14a(16a)が傾斜する傾斜角を鋭角側で定義し、交点を回転中心とし、光軸12aに対して光軸18a(20a)が傾斜する傾斜角を鋭角側で定義した場合、両傾斜角はともにαで一致している。以上のような本実施形態において、前眼部撮像光学系12の光軸12aが所定の軸に相当する。
【0018】
本実施形態においては、角膜撮像光学系において合焦状態で撮像可能な物体と、角膜撮像光学系と、の光軸12a方向における距離は一定である。具体的には、本実施形態においては、光軸14a(16a)と光軸20a(18a)とが交差する点に物体が存在する場合に、当該物体に合焦した状態でCCD28による撮像が行われるように、角膜撮像光学系の各光学部品の位置が調整されている。従って、光軸12a方向における角膜撮像光学系と、撮像対象となる角膜の部位と、の距離が特定の距離である場合に、任意の物体が合焦した状態でCCD28による撮像が可能である。なお、撮像対象が角膜の内皮である場合には角膜によって光が屈折するが、角膜の内皮に合焦した状態における、角膜の内皮と、角膜撮像光学系と、の光軸12a方向における距離は、任意の物体における距離と同一であると見なされていてもよい。
【0019】
さらに、前眼部撮像光学系12上に設けられるハーフミラー22は、固視標光学系64、垂直照明光学系66の一部を構成している。固視標光学系64は、被検眼Eに近い位置から、ハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、固視標光源74、の順に設けられている。固視標光源74は、LEDなどの可視光を発する光源であり、被検眼Eの視線を既定方向に誘導する。固視標光源74は、例えば、複数のLEDをマトリクス状に並べたドットマトリクスLED等によって実現可能である。
【0020】
垂直照明光学系66は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、絞り76、ピンホール板78、集光レンズ80、アライメント光源82が設けられて構成されている。アライメント光源82からは垂直位置検出用の検出光である赤外線が出力され、かかる赤外光は集光レンズ80により集光されてピンホール板78を通過し、絞り76に導かれる。そして、絞り76を通過した光はハーフミラー70に反射されて、投影レンズ68によって平行光とされた後に、ハーフミラー22によって反射されて被検眼Eに照射される。本実施形態においては、垂直位置検出用の検出光である赤外線がハーフミラー22によって光軸12aに平行な方向に向けられる。従って、垂直位置検出用の検出光は、光軸12aに沿った方向から被検眼Eに照射する。
【0021】
垂直位置検出光学系84は、被検眼Eに近い位置から、ハーフミラー26、位置検出可能なアライメント検出センサ88、の順に設けられている。アライメント光源82から照射されて角膜Cで反射された光がハーフミラー26で反射され、反射光がアライメント検出センサ88に導かれる。前眼部撮像光学系12上に設けられたハーフミラー26は、垂直位置検出光学系84の一部を構成している。本実施形態においては、以上の垂直照明光学系66および垂直位置検出光学系84が、垂直位置調整光学系を構成する。
【0022】
アライメント検出センサ88は、2次元センサであり、垂直位置検出用の検出光による被検眼Eからの反射光を受光する。当該反射光が2次元センサで受光される位置は、被検眼Eと垂直位置調整光学系との位置関係が、光軸12aに垂直な方向に変動することによって、変動する。従って、反射光が2次元センサで受光される位置に基づいて、垂直位置調整光学系の被検眼Eに対する相対位置関係を、光軸12aに垂直な方向において特定することができる。
【0023】
図2は、角膜内皮撮像装置100の構成を示す説明図である。角膜内皮撮像装置100は、非接触で被検眼における角膜内皮を撮像するための装置である。角膜内皮撮像装置100は、ベース102と、本体部104と、ヘッド106(撮影部)と、操作スティック108と、ディスプレイ110と、を備える。ベース102は、電源装置を内蔵する。本体部104は、ベース102の上に設けられている。本体部104は、後述する各制御回路を収容する。ヘッド106の内側には、図1において説明した装置光学系10が収容されている。
【0024】
本実施形態において、角膜内皮撮像装置100のベース102は、水平面に設置される。角膜内皮撮像装置100は図示しない支持部を備えており、支持部に被検者の顔が支持された状態において、被検者の左右、上下、前後方向となる方向のそれぞれを、本明細書ではX方向、Y方向、Z方向と呼ぶ。図2においては、各方向をX軸、Y軸、Z軸によって示している。また、本明細書では、当該被検者から見た後方をZ方向の正方向、被検者から見た左方をX方向の正方向、上方をY方向の正方向として示している。なお、Z方向は、前眼部撮像光学系12の光軸12aと平行であるため、光軸12aに沿った方向はZ方向である。一方、X方向およびY方向に平行な平面上の任意の方向は、光軸12aに対して垂直な方向である。
【0025】
ヘッド106は、本体部104の上方において、X方向、Y方向、Z方向に沿って正負それぞれの方向に駆動できるように構成されている。ヘッド106には、装置光学系10が収容され、固定されている。従って、角膜照明光学系14と、軸方向位置検出光学系16と、軸方向照明光学系18と、角膜検出光学系20と、垂直照明光学系66と、垂直位置検出光学系84は、ヘッド106の移動に伴って一体として駆動される。
【0026】
操作スティック108は、ベース102に設けられている。操作スティック108は、ヘッド106を駆動可能に構成されている。ディスプレイ110は、ヘッド106に設けられている。ディスプレイ110は、タッチパネルディスプレイである。従って、ディスプレイ110は、任意の画像を表示可能であるとともにタッチパネルによる入力を受け付けることが可能である。表示部および入力部はタッチパネルディスプレイに限定されず、他にも種々の装置であって良い。
【0027】
(1-1)制御系の構成:
図3は、図1にて説明した装置光学系10に接続される制御回路等を説明するための説明図である。角膜内皮撮像装置100には、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれにヘッド106を移動させるX軸駆動機構112、Y軸駆動機構114、Z軸駆動機構116が設けられている。これらの駆動機構は、例えば、ラック・ピニオン機構によって構成可能である。
【0028】
さらに、角膜内皮撮像装置100は、制御部117、XYアライメント検出回路118、Zアライメント検出回路120、画像処理回路122、記憶装置124を備える。制御部117は、装置光学系10による角膜像の撮像の作動制御を行う回路である。制御部117は、X軸駆動機構112、Y軸駆動機構114、Z軸駆動機構116に接続されており、これらの駆動機構を駆動させる駆動信号を出力可能である。
【0029】
XYアライメント検出回路118は、アライメント検出センサ88、制御部117に接続されている。また、Zアライメント検出回路120は、ラインセンサ44、制御部117に接続されている。アライメント検出センサ88およびラインセンサ44の検出情報は、XYアライメント検出回路118およびZアライメント検出回路120を介して制御部117に入力される。なお、図示は省略するが、制御部117は、観察用光源30、撮像用光源40、調整用光源54、アライメント光源82にも接続されており、これら照明光源の発光を制御する。また、制御部117は、ディスプレイ110にも接続されており、ディスプレイ110に対して任意の画像を表示させ、また、タッチパネルによる操作者の入力を受け付けることが可能である。
【0030】
画像処理回路122は、CCD28が撮像した画像を取得する回路である。画像処理回路122には記憶装置124が接続されており、記憶装置124は、画像処理回路122から出力された画像の画像データを記憶する。
【0031】
(1-2)撮影処理:
次に、以上のような構成の角膜内皮撮像装置100において、制御部117が実行する撮影処理を説明する。図4は、撮影処理を示すフローチャートである。制御部117は、操作者がディスプレイ110に対してタッチ操作を行い、撮影処理の開始を指示することにより開始される。撮影処理が開始されると、制御部117は、再撮影回数を0回に初期化する(ステップS200)。本実施形態において、初回の撮影を行った後、撮影された画像が基準を満たさない場合に再撮影するように構成されている。再撮影回数は、再撮影が行われる度に1ずつ増加する値である。また、再撮影中には、操作者の判断で再撮影を中止するためのキャンセルボタンと、撮影された画像(基準を満たさないと判断された画像)のサムネイル画像がディスプレイ110に表示される。サムネイル画像によって操作者は再撮影の要否を判断可能である。操作者の判断によってキャンセルされない場合、再撮影は、最大で、予め設定された上限値の回数まで行われる。
【0032】
続いて、制御部117は、アライメント処理を行う(ステップS205)。図5は、アライメント処理のフローチャートである。アライメント処理が開始されると、制御部117は、粗調整を行う(ステップS100)。具体的には、撮像処理が開始されると、制御部117は、観察用光源30を点灯させ、前眼部撮像光学系12による撮像を開始する。この結果、CCD28によって撮像された前眼部の画像が画像処理回路122によって取得され、記憶装置124に記憶される。制御部117は、当該記憶装置124に記憶された画像を示す画像データを取得し、ディスプレイ110を制御して当該画像を表示させる。この結果、ディスプレイ110には前眼部の画像がライブ表示される。
【0033】
操作者は、このように前眼部の画像がディスプレイ110にライブ表示された状態で操作スティック108を操作して粗調整を行う。すなわち、操作者が操作スティック108を操作すると、制御部117は操作スティック108の操作方向および操作量に応じてX軸駆動機構112およびY軸駆動機構114を駆動させ、ヘッド106をX方向およびY方向に移動させる。操作者は、ディスプレイ110の表示を視認しつつ操作スティック108を操作し、被検眼Eの角膜の中心がディスプレイ110の予め決められた位置(例えば、中央)に一致するように粗調整を行う。Z方向の粗調整は、自動で行われても良いし、操作者によって行われてもよい。自動で行われる構成としては、ヘッド106のZ方向の位置を予め決められた初期位置に設定する構成や、ラインセンサ44の出力に基づいて、例えば、上皮からの反射光が既定の範囲で検出されるようにヘッド106をZ方向に移動させる構成等を採用可能である。
【0034】
次に、制御部117は、垂直位置調整光学系を用いて光軸12aに垂直な方向の位置の調整、すなわち、被検眼Eに対する装置光学系10のXY方向の位置合わせであるXYアライメントを行う(ステップS105)。具体的には、制御部117は、アライメント光源82を点灯させる。この結果、アライメント光源82から垂直位置検出用の検出光が出力され、被検眼Eに向けて照射される。垂直位置検出用の検出光が被検眼Eで反射すると、反射光がアライメント検出センサ88に導かれ、アライメント検出センサ88によって検出される。なお、垂直位置検出用の検出光が被検眼Eで反射した反射光の強度は、角膜頂点で大きい値となるため、反射光が検出される位置は、角膜頂点からの反射光が検出される位置に相当する。ここで、角膜頂点とは、角膜CのうちZ方向において前眼部撮像光学系12に最も近い位置である。
【0035】
以上のように、垂直位置検出用の検出光による被検眼Eからの反射光がアライメント検出センサ88によって検出されている状態において、制御部117は、XYアライメントを行う。具体的には、制御部117は、アライメント検出センサ88の出力結果を参照し、閾値以上の検出値が検出されたアライメント検出センサ88上の位置を特定する。当該位置は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置と見なされる。閾値は、反射光を検出するための値として予め決められた値である。
【0036】
制御部117は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置を、アライメント検出センサ88上の既定の位置(本実施形態においてはセンサの中央)に一致させるための制御を行う。すなわち、制御部117は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置と、アライメント検出センサ88上の既定の位置との差分を特定する。さらに、制御部117は、当該差分を減少させるためのXY平面内でのヘッド106の移動方向を特定する。そして、制御部117は、X軸駆動機構112およびY軸駆動機構114を制御し、当該移動方向にヘッド106を移動させる。
【0037】
制御部117は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置と、アライメント検出センサ88上の既定の位置との差分が閾値以下になるまで以上の処理を繰り返すことによってXYアライメントを実行する。なお、XYアライメントの際には、ステップS100におけるライブ表示が行われてもよい。XYアライメントが行われると、制御部117は、XY方向のトラッキングを開始する(ステップS110)。すなわち、制御部117は、ステップS105におけるアライメントを継続的に繰り返すことにより、XYアライメントを常時実行する。
【0038】
次に、制御部117は、軸方向位置調整光学系を用いて軸方向位置の調整、すなわち、Zアライメントを行う。このために、まず、制御部117は、上皮の位置+目標距離の位置が合焦した状態になるようにZアライメントを行う(ステップS115)。具体的には、制御部117は、調整用光源54を点灯させる。この結果、調整用光源54から軸方向位置検出用の検出光が出力され、被検眼Eに向けて照射される。軸方向位置検出用の検出光が被検眼Eで反射すると、反射光がラインセンサ44に導かれ、ラインセンサ44によって検出される。なお、本実施形態においては、角膜の内皮が撮像対象である。角膜の内皮に合焦した状態で撮像が行われるためには、角膜照明光学系14の光軸14aと、角膜検出光学系20の光軸20aとが交差する点に角膜の内皮が存在する必要がある。
【0039】
角膜照明光学系14の光軸14aと軸方向位置検出光学系16の光軸16aとは被検眼Eの周辺で一致しており、軸方向照明光学系18の光軸18aと角膜検出光学系20の光軸20aとは被検眼Eの周辺で一致している。このため、角膜照明光学系14の光軸14aと角膜検出光学系20の光軸20aとが交差する点と、軸方向照明光学系18の光軸18aと軸方向位置検出光学系16の光軸16aとが交差する点と、は一致している。従って、角膜の内皮からの反射光がラインセンサ44によって検出された位置を解析することによって、角膜の内皮が、角膜検出光学系において合焦した状態になっているか否かを特定する。
【0040】
次に、制御部117は、ラインセンサ44の出力を前房側から走査する(ステップS120)。具体的には、制御部117は、ラインセンサ44が受光した受光結果を前房側から上皮側に向けて参照していき、ラインセンサ44上の各位置での検出値と予め決められた閾値とを比較し、内皮ピークを特定する。内皮ピークは、角膜の内皮からの反射光のピークである。角膜からの反射光の検出結果が複雑な形状である場合、制御部117は、被検眼Eの前房に最も近いピークを内皮からの反射光と見なす。
【0041】
次に、制御部117は、内皮ピークが特定されたか否か判定する(ステップS125)。すなわち、制御部117は、ステップS120の処理により、内皮ピークが特定されなかった場合には、ステップS130を実行し、内皮ピークが特定された場合には、ステップS140を実行する。
【0042】
ステップS125において内皮ピークが特定されなかった場合、制御部117は、ステップS130において、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦する状態になっているか否かを確認する。ステップS130において、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦した状態になっていると判定されない場合、制御部117は、再度、ステップS115を繰り返す。
【0043】
一方、ステップS130において、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦した状態になっていると判定された場合、制御部117は、目標距離を変更して(ステップS135)、ステップS115以降の処理を繰り返す。
【0044】
ステップS125において内皮ピークが特定された場合、制御部117は、内皮ピークが合焦位置付近に存在するか否かを判定する(ステップS140)。すなわち、制御部117は、ステップS125で特定された内皮ピークの位置と合焦位置との差分を算出し、差分が閾値以下である場合に、内皮ピークが合焦位置付近に存在すると判定する。なお、閾値は、内皮ピークが合焦位置に充分近いか否かを判定するための値として予め決められた値であり、本実施形態においては、ステップS135における目標距離の変更幅と同一である。
【0045】
ステップS140において、内皮ピークが合焦位置付近に存在すると判定されない場合、制御部117は、ステップS130以降の処理を行う。すなわち、固視微動による影響を受けていれば、目標距離を変更することなくステップS115以降の処理を繰り返し、固視微動による影響を受けていなければ、目標距離を変更してステップS115以降の処理を繰り返す。
【0046】
ステップS140において、内皮ピークが合焦位置付近に存在すると判定された場合、制御部117は、内皮ピークが合焦位置になるようにZアライメントを行う(ステップS145)。すなわち、制御部117は、ラインセンサ44上の合焦位置と、角膜の内皮からの反射光がラインセンサ44において受光される位置と、を一致させるようにヘッド106を移動させる。具体的には、制御部117は、ラインセンサ44の検出結果に基づいて内皮ピークの位置を特定し、特定された内皮ピークの位置と、合焦位置との差分を特定し、ラインセンサ上の当該差分に相当する光軸12a上での距離を特定する。そして、制御部117は、Z軸駆動機構116を制御し、当該距離だけヘッド106を移動させる。この結果、角膜の内皮が角膜撮像光学系において合焦した状態になるようにZアライメントが行われる。
【0047】
Zアライメントが行われると、制御部117は、Z方向のトラッキングを開始する(ステップS150)。すなわち、制御部117は、ステップS145におけるアライメントを継続的に繰り返すことにより、Zアライメントを常時実行する。なお、ステップS115~S140の処理によって、合焦位置付近に存在する内皮ピークが見つかった後においては、容易に継続して内皮ピークをトラッキングすることが可能である。以上の処理によれば、角膜撮像光学系が角膜の内皮に合焦した状態が継続して維持された状態になる。
【0048】
図4の撮影処理の説明に戻る。角膜の内皮に合焦した状態で、制御部117は、撮影を行う(ステップS210~S225)。制御部117は、所定周期(例えば40ms)毎の撮影を所定期間(例えば2秒間)内に繰り返し行い(ステップS215)、そのうち画質の良い所定枚数(例えば16枚)を記憶装置124に保存する。すなわち、制御部117は、画像処理回路122から出力され、記憶装置124に記憶されている画像データを取得し、画像データの撮影枚数が所定枚数を超えると、所定枚数のうち最も画質の悪い画像データと最新の画像データとを比較する。制御部117は比較の結果、画質が悪い方の画像データを破棄する。そうすることで所定期間内に撮影された画像データのうち画質が相対的に良い所定枚数の画像データが記憶装置124に保存されることとなる。
【0049】
画質を判断するために、制御部117は、画像データはフォーカスが合った画像であるか否かと、画像データ内に内皮細胞が含まれているか否かを判断する。本実施形態において制御部117は、画像データの端部の黒色のスリット領域が図6に示すように左右両端に等しい幅で現れている場合に、フォーカスが合っていると判断する。また、制御部117は、例えば、図6に示す破線の5つの各ライン上において、左右に隣り合う画素との輝度値の差の合計を算出する。画像データにおいて、内皮細胞の内側の領域と内皮細胞の境界線とは輝度値の差がある。制御部117は、輝度値の差の合計が大きい場合は少ない場合よりも、ライン上において内皮細胞が多く位置していると見なす。制御部117は、撮影済みの画像データのうち、輝度値の差の合計値が最も小さい画像と、最新の画像データにおける合計値とを比較し、値が大きく(すなわち内皮細胞が多く含まれている可能性があり)、フォーカスが合っている方を画質が良いと判断する。
【0050】
ステップS215にて1枚の画像を撮影した後、制御部117はキャンセル有りか否かを判定する(ステップS220)。すなわち制御部117は、再撮影中に表示されるキャンセルボタンが選択されたか否かを判定する。再撮影回数が0回である間は、サムネイル画像とキャンセルボタンは表示されないため、ステップS220ではキャンセル有りと判定されない。再撮影回数が1以上の場合、後述するステップS240によってサムネイル画像とキャンセルボタンが表示されている状態である。この状態で、キャンセルボタンが選択されると、ステップS220において制御部117はキャンセル有りと判定し、所定期間が経過していなくても撮影を中止し、ステップS280に進む。
【0051】
ステップS210~S225の撮影が終わると、所定枚数分の画像データが新たに保存されたこととなる。制御部117は、再撮影回数が最大値より小さいか否かを判定する(ステップS230)。再撮影回数の最大値(最大回数)が予め設定されており、ステップS230では、予め設定されている再撮影回数の最大値との比較が行われる。なおもちろん操作者はメニュー画面を介してデフォルトの最大値から所望の値に変更することができる。
【0052】
ステップS230において再撮影回数が最大値より小さいと判定されなかった場合、制御部117は、ステップS280に進む。ステップS230において再撮影回数が最大値より小さいと判定された場合、制御部117は、再撮影が必要か否かを判定する(ステップS235)。制御部117は、画像が基準を満たす場合に、再撮影不要と判断し、画像が基準を満たさない場合に再撮影が必要と判断する。基準は、画像において、内皮細胞が位置する領域を示す内皮領域が、画像に占める割合が閾値以上であることである。内皮領域は、画像データにおいて、内皮細胞が離間せず複数連続して存在している領域である。内皮領域は、内皮細胞が位置しない領域よりも輝度が高い領域である。そのため、制御部117は、輝度差を利用して内皮領域を特定する。図8Aは内皮細胞(閉領域で示される)を含む画像の一例を模式的に示す図である。内皮細胞を示す閉領域はそれ以外の領域よりも輝度が高い。図8Aを例に用いて説明する。
【0053】
制御部117は、画像データにおいて、注目画素の上下方向±所定画素の画素値に基づいて平滑化してノイズを除去した後、左右方向に伸びる各ラインについて左端から右端に向かって走査し、輝度差が低い値から高い値に所定の値以上変化する境界の画素を特定する。さらに制御部117は、特定した画素の位置を平滑化してつなぎ合わせ、左端から右端に向かって走査した場合の1本の境界線を導出する。同様に、制御部117は、左右方向に伸びる各ラインについて右端から左端に走査し、輝度差が低い値から高い値に所定の値以上変化する境界の画素を特定し、特定した画素の位置を平滑化してつなぎ合わせて右端から左端に走査した場合の1本の境界線を導出する。また、制御部117は、注目画素の左右方向±所定画素の画素値に基づいて平滑化した後、上下方向に伸びる各ラインについて上端から下端に向かって走査し、輝度差が低い値から高い値に所定の値以上に変化する境界の画素を特定する。制御部117は、特定した画素の位置を平滑化してつなぎ合わせ、上端から下端に向かって走査した場合の1本の境界線を導出する。同様に、制御部117は、上下方向に伸びる各ラインについて下端から上端に向かって走査し、輝度差が低い値から高い値に所定の値以上に変化する境界の画素を特定し、特定した画素の位置を平滑化してつなぎ合わせて下端から上端に走査した場合の1本の境界線を導出する。制御部117は、このようにして導出した境界線で囲まれる閉領域を、内皮領域として特定する。図8Bは、図8Aに示すように内皮細胞が撮像された画像に対して上述の処理を行った場合に特定される内皮領域を模式的に示す図である。
【0054】
なお、内皮領域を特定する手法は他にも様々な方法を採用可能であるが、ステップS215で撮影された所定枚数の画像データに対して処理をする必要があるため、処理負荷の小さい(処理時間が短い)手法であることが望ましい。制御部117は、ステップS215で撮影された所定枚数の各画像データについて、内皮領域の面積を算出し、内皮領域の面積が最大である画像データについて、内皮領域の面積が画像全体の面積に占める割合を算出し、当該割合が閾値(例えば60%)以上であるという基準を満たさない場合に、再撮影が必要と判断する。
【0055】
ステップS235において再撮影が必要であると判定されなかった場合、制御部117は、ステップS280に進む。ステップS235において再撮影が必要であると判定された場合、制御部117は、サムネイル画像とキャンセルボタンを表示する(ステップS240)。サムネイル画像は、再撮影の要否判断の対象の画像を縮小した画像である。図7は、サムネイル画像300とキャンセルボタン301の表示例を示している。サムネイル画像300とキャンセルボタン301が、被検眼のライブ画像に重ねて表示される。本実施形態において、サムネイル画像300として表示される画像は、再撮影の要否の判断対象である複数の画像のうち最も画質が良い画像のサムネイル画像である。すなわち本実施形態においては、内皮領域の面積が画像全体に占める割合がステップS210~S225で撮影された画像データのうち最も大きいが閾値未満である画像のサムネイル画像である。操作者に対して、最も画質が良い画像を提示することで、これ以上再撮影を継続すべきか否かを判断するための要素を操作者に与えることができる。
【0056】
続いて、制御部117は、オフセット値を算出する(ステップS245)。オフセット値は、内皮領域の位置を撮像素子の所定位置に移動させるためのヘッドの移動距離である。図8の例のように、内皮領域が画像の端部に偏っている場合、制御部117は偏りが解消されるようにオフセット値を設定する。オフセット値の設定方法として、例えば、図8Cに示すように、内皮領域が内接する矩形枠F(画像の上下方向と平行な2辺を有し画像の左右方向と平行な2辺を有する矩形枠)を設定し、矩形枠Fの重心P1と画像の中央P2との画像内における上下方向および左右方向の距離(Kx, Ky)をそれぞれ、X方向のオフセット値とY方向のオフセット値に換算するように構成される。あるいは、上述の矩形枠Fの上端・下端のうち、一方の端部は画像の上端・下端の一方と接しているが他方は画像の上端・下端の他方と接していない場合や、矩形枠Fの左端・右端のうちの一方は画像の左端・右端の一方と接しているが他方は画像の左端・右端の他方と接していない場合、画像の端部と接していない矩形枠Fの端部と当該画像の端部との画像内における上下方向および左右方向の距離に基づいて、X方向のオフセット値とY方向のオフセット値を算出するように構成されてもよい。具体的には例えば図8Cに示す例においては、矩形枠Fの左端は画像の左端に接しているが右端は画像の右端に接しておらず、矩形枠Fの上端は画像の上端に接しているが下端は画像の下端に接していない。そのため矩形枠Fの右端と画像の右端との画像内の距離Kx2をX方向のオフセット量に換算し、矩形枠Fの下端と画像の下端との距離Ky2をY方向のオフセット値に換算するように構成されてもよい。
このように、画像に含まれる内皮領域の位置に基づいてオフセット値を設定し、当該オフセット値に基づいてヘッドを移動させて再撮影を行わせることにより、再撮影において基準を満たす画像を撮影できる可能性を高めることができる。
【0057】
続いて、制御部117は、ヘッドを後退させ(ステップS250)、アライメントを開始する(ステップS255)。再撮影が必要と判断された状態であるため、制御部117は、一旦ヘッド106を後退させて再度アライメントを行うことで基準を満たす画像の撮影を試みる。
【0058】
続いて、制御部117は、キャンセル有りか否かを判定する(ステップS260)。すなわち、制御部117は、図7に示すキャンセルボタンが選択されたか否かを判定する。ステップS260においてキャンセル有りと判定されなかった場合、制御部117は、ヘッドを移動させる(ステップS265)。すなわち、制御部117は、ステップS245で算出したオフセット値が示す距離だけXY方向にヘッドを移動した位置にXYアライメントさせる。制御部117は当該位置へのXYアライメントを継続的に繰り返してXYトラッキングを行わせる。また、制御部117は、内皮ピークが合焦位置になるようにZアライメントおよびZ方向トラッキングを行わせる。
【0059】
ステップS260においてキャンセル有りと判定された場合、または、ステップS220においてキャンセル有りと判定された場合、または、ステップS230において再撮影回数が最大値より小さいと判定されなかった場合、または、ステップS235において再撮影が必要と判定されなかった場合、制御部117はサムネイル画像とキャンセルボタンを非表示とし、撮影およびヘッド移動を中断する(ステップS280)。撮影については、所定期間において、キャンセル有りと判断されて以降の撮影が行われない。また、ヘッド移動に関しては、移動途中のヘッドを即座に停止するように構成されてもよいし、既定の位置まで移動させてから停止するように構成されてもよい。
【0060】
ステップS265を実行後、制御部117は、撮影条件を満たすか否かを判定する(ステップS270)。すなわち制御部117は、角膜の内皮に合焦した状態であるか否かを判定する。ステップS270において満たすと判定されなかった場合、制御部117はステップS260に戻る。ステップS270において満たすと判定された場合、制御部117は再撮影回数をインクリメントし、ステップS210に戻る。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、角膜内皮撮像装置100は、基準を満たさない場合に再撮影を自動的に開始する構成であるため、基準を満たす画像を得るための操作者の手間を軽減できる。また、角膜内皮撮像装置100は、再撮影中に、基準を満たさないと判断した画像のサムネイル画像と再撮影のキャンセルボタンとを表示する構成であるため、再撮影の要否を判断する機会と判断材料を操作者に提供できる。基準を満たさないために自動的に再撮影が開始された場合であっても、操作者にとって有用な画像が既に撮影できていることがあり得る。角膜内皮撮像装置100は、操作者が再撮影の必要がないと判断した場合に操作者のキャンセルボタンの選択に応じて再撮影をキャンセルするため、解析に適した画像を得るための時間が無用に長期化することを防止できる。
また、操作者の再撮影不要との判断に応じて再撮影を停止させることにより、無用に多くの画像が記憶装置124に保存されることを防止できる。無用に多くの画像が保存されることを防止できることにより、例えば操作者が最善の画像を選択する作業を簡略化することもできる。
【0062】
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、再撮影の要否は、画像において、各内皮細胞を示す細胞領域の数と大きさの少なくとも一方についての判断基準によって判断されてもよい。具体的には例えば、制御部は画像内の輪郭線を検出し、輪郭線に囲まれた各閉領域を、各内皮細胞を示す細胞領域として検出する。制御部は、画像内に検出された細胞領域の個数が標準値よりも既定値以上異なっている場合に、基準を満たさず、再撮影が必要であると判断するように構成されてもよい。また、1つの細胞領域の面積が、面積の標準的な値の範囲に収まらない場合に、制御部は、画像が基準を満たさず、再撮影が必要であると判断するように構成されてもよい。また、細胞領域をその面積に応じて例えば大中小3グループに分類した場合に、各グループに分類された細胞領域の個数をカウントし、それぞれのグループにおいて細胞領域数が予め決められた値以上であれば基準を満たすと判断するように構成されてもよい。
【0063】
また、サムネイル画像として表示される画像は、再撮影の要否の判断対象である複数の画像のうち最も画質が良い画像を少なくとも含むように構成されてもよい。従って、例えば、画質が良い順に複数枚の画像の各サムネイル画像がキャンセルボタンとともに表示されてもよい。
【0064】
上記実施形態においては、再撮影の際に、撮影画像に分析して算出したXYオフセット値だけヘッドを移動させた位置でXYアライメントさせる構成であったが、XYオフセット値算出やXYオフセット値に基づくヘッドの移動の工程は省略されてもよい。
【0065】
キャンセルボタンは、再撮影の停止を指示するためにディスプレイに表示される画像であり、キャンセルボタンの名称や表示態様は、上記実施形態で示した例に限定されず、様々な態様で実現されてよい。
【0066】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0067】
10…装置光学系、12…前眼部撮像光学系、12a…光軸、14…角膜照明光学系、14a…光軸、16…軸方向位置検出光学系、16a…光軸、18…軸方向照明光学系、18a…光軸、20…角膜検出光学系、20a…光軸、22…ハーフミラー、24…対物レンズ、26…ハーフミラー、27…コールドミラー、28…CCD、30…観察用光源、32…投影レンズ、34…コールドミラー、36…スリット、38…集光レンズ、40…撮像用光源、44…ラインセンサ、46…対物レンズ、48…コールドミラー、52…集光レンズ、54…調整用光源、56…スリット、58…変倍レンズ、60…合焦レンズ、64…固視標光学系、66…垂直照明光学系、68…投影レンズ、70…ハーフミラー、74…固視標光源、76…絞り、78…ピンホール板、80…集光レンズ、82…アライメント光源、84…垂直位置検出光学系、88…アライメント検出センサ、100…角膜内皮撮像装置、102…ベース、104…本体部、106…ヘッド、108…操作スティック、110…ディスプレイ、112…X軸駆動機構、114…Y軸駆動機構、116…Z軸駆動機構、117…制御部、118…XYアライメント検出回路、120…Zアライメント検出回路、122…画像処理回路、124…記憶装置、300…サムネイル画像、301…キャンセルボタン、C…角膜、E…被検眼、F…矩形枠、P1…重心、P2…中央
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8