(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005626
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】炒め米飯用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20250109BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20250109BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23L7/10 E
A23D9/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105862
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島津 理江子
(72)【発明者】
【氏名】服部 桂祐
(72)【発明者】
【氏名】及川 里央奈
【テーマコード(参考)】
4B023
4B026
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LC08
4B023LE22
4B023LG01
4B023LK05
4B023LK20
4B023LL04
4B023LP07
4B023LP10
4B026DC03
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK01
4B026DK10
4B026DP03
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】本発明は、フライパン等の調理器具で炒め調理をした炒め米飯の焦げ付きを抑制し、かつ保存安定性に優れた炒め米飯用油脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ジグリセリン脂肪酸エステルを3~10質量%、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルを0.1~5質量%、及び油脂を含有し、かつレシチンを含有しない炒め米飯用油脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリン脂肪酸エステルを3~10質量%、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルを0.1~5質量%、及び油脂を含有し、かつレシチンを含有しない炒め米飯用油脂組成物。
【請求項2】
調理器具の加熱面温度が150℃超において、請求項1に記載の炒め米飯用油脂組成物を用いて米飯を炒める工程を有する、炒め米飯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炒め米飯用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炒飯、チキンライス等の炒め米飯は、フライパン等の調理器具を用いて炒める際に焦げ付きが発生しやすい。最近では、生産効率の向上や食感への影響を考慮し、より高い温度帯で調理する試みがなされており、その結果、炒め米飯の焦げ付きが問題になるケースが増えている。これに対し、油脂に乳化剤等を添加して、焦げ付きの抑制効果を狙った炒め調理用の油脂組成物等が提案されているが、油脂の劣化を防ぐために冷蔵等の低い温度帯に保管すると、保管中に油脂組成物中の成分が分離、沈殿しやすい、といった課題を有している。そのため、焦げ付きの抑制効果、及び保存安定性を兼ね備えた炒め米飯に用いられる油脂組成物に関する技術が求められている。
【0003】
炒め米飯に用いられる油脂組成物に関する技術としては、例えば、ジアシルグリセロールを50質量%以上含有する油脂と、ホスファジン酸とホスファチジルイノシトールを一定の質量比で含有するリン脂質とを所定量含有する油脂組成物(特許文献1)、HLBが4.7~8の乳化剤と食用油脂とを含有する澱粉系食材の炒め調理用の油脂組成物(特許文献2)、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上と、レシチンと、水性調味料と、食用油脂とを含有する炒め調理用組成物(特許文献3)等が開示されている。
【0004】
しかし、これらの技術では、焦げ付きの抑制効果、及び保存安定性は必ずしも十分とはいえず、より実用性があり、効果に富んだ炒め米飯に用いられる油脂組成物に関する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-159829号公報
【特許文献2】特開2019-150068号公報
【特許文献3】特開2022-70778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フライパン等の調理器具で炒め調理をした炒め米飯の焦げ付きを抑制し、かつ保存安定性に優れた炒め米飯用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題に対して鋭意検討を行った結果、レシチンを含有せず、ジグリセリン脂肪酸エステル及びグリセリンクエン酸脂肪酸エステルをそれぞれ所定量含有する油脂組成物によって、前記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)ジグリセリン脂肪酸エステルを3~10質量%、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルを0.1~5質量%、及び油脂を含有し、かつレシチンを含有しない炒め米飯用油脂組成物、
(2)調理器具の加熱面温度が150℃超において、(1)に記載の炒め米飯用油脂組成物を用いて米飯を炒める工程を有する、炒め米飯の製造方法、
から成っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炒め米飯用油脂組成物は、フライパン等の調理器具で炒め調理をした炒め米飯の焦げ付きを抑制し、かつ保存安定性に優れている。特に、高い温度帯(例えば、調理器具の加熱面温度が150℃超、170℃以上、190℃以上)で炒め調理をした場合の炒め米飯の焦げ付きを抑制する効果に優れており、特に低い温度帯(例えば、10℃以下、5℃以下)に保存した場合の保存安定性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられるジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸のエステル化反応生成物であり、エステル化反応等の自体公知の方法で製造される。
【0011】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられるジグリセリン脂肪酸エステルを構成するジグリセリンは、グリセリンに少量の酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素、二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、好ましくは180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が好ましくは1.5~2.4、より好ましくは平均重合度が2.0のジグリセリン混合物を挙げることができる。また、ジグリセリンはグリシドール、エピクロルヒドリン等を原料として得られるものであってもよい。反応終了後、所望により中和、脱塩、脱色等の処理を行ってもよい。本発明においては、前記ジグリセリン混合物を、蒸留、カラムクロマトグラフィー等を用いて精製し、グリセリン2分子からなるジグリセリンを好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上に高濃度化した高純度ジグリセリンを用いることが好ましい。
【0012】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられるジグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はないが、例えば、炭素数6~24の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を挙げることができる。炭素数6~24の飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等を挙げることができる。炭素数6~24の不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数12~22の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~22の不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数16~18の不飽和脂肪酸がさらに好ましい。ジグリセリン脂肪酸エステルは、これら脂肪酸の1種のみを構成脂肪酸とするものであっても、任意の2種以上を構成脂肪酸とするものであってもよい。
【0013】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられるジグリセリン脂肪酸エステルの製造方法は、特に制限はないが、例えば、次のようなエステル化反応による製造方法を挙げることができる。まず、攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた反応容器に、ジグリセリンと脂肪酸を1:1のモル比で仕込み、触媒として水酸化ナトリウム等を加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、好ましくは180~260℃、より好ましくは200~250℃で加熱する。その際の反応時間は、0.5~15時間が好ましく、1~3時間がより好ましい。反応の終点は、反応混合物の酸価を測定し、酸価12以下を目安とするのが好ましい。得られた反応混合物は、未反応の脂肪酸、未反応のジグリセリン、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル(モノエステル体)、ジグリセリンジ脂肪酸エステル(ジエステル体)、ジグリセリントリ脂肪酸エステル(トリエステル体)、ジグリセリンテトラ脂肪酸エステル(テトラエステル体)等を含む混合物である。
【0014】
その後、所望により反応混合物中に残存する触媒を中和してもよい。その際、エステル化反応の温度が200℃以上の場合は液温を180~200℃に冷却してから中和処理を行うのが好ましい。また、反応温度が200℃未満の場合は、そのままの温度で中和処理を行ってもよい。未反応のジグリセリンが下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
【0015】
前記製造方法により得られたジグリセリン脂肪酸エステルをさらに精製し、モノエステル体の含有量を高めることが好ましい。モノエステル体の含有量を高める方法としては、特に制限はないが、例えば、ジグリセリン脂肪酸エステルを流下薄膜式分子蒸留装置、遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留する方法、カラムクロマトグラフィー、液液抽出等を用いて精製する方法等を挙げることができる。ジグリセリン脂肪酸エステル中のモノエステル体の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0016】
ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポエムDO-100V(商品名;ジグリセリンオレイン酸エステル;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0017】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられるグリセリンクエン酸脂肪酸エステルは、グリセリン有機酸脂肪酸エステルの1種であり、グリセリンが有するヒドロキシ基のいずれかにクエン酸及び脂肪酸がそれぞれ少なくとも1つエステル結合した化合物であり、グリセリンモノ脂肪酸エステルとクエン酸(又は無水クエン酸)との反応、グリセリンとクエン酸と脂肪酸との反応等自体公知の方法により製造される。
【0018】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられるグリセリンクエン酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はないが、例えば、炭素数6~24の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を挙げることができる。炭素数6~24の飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等を挙げることができる。炭素数6~24の不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数12~22の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~22の不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数16~18の不飽和脂肪酸がさらに好ましい。グリセリンクエン酸脂肪酸エステルは、これら脂肪酸の1種のみを構成脂肪酸とするものであっても、任意の2種以上を構成脂肪酸とするものであってもよい。
【0019】
グリセリンクエン酸脂肪酸エステルとしては、ポエムK-37V(商品名;グリセリンクエン酸オレイン酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0020】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられる油脂は、特に制限はないが、植物油脂、動物油脂、加工油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等を挙げることができる。植物油脂としては、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、コメ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油等を挙げることができる。動物油脂としては、豚脂、牛脂、魚油、乳脂、バター等を挙げることができる。加工油脂としては、植物油脂や動物油脂に分別、水素添加、エステル交換等の処理をしたものを挙げることができ、具体的には、パーム硬化油脂、ヤシ硬化油脂、大豆硬化油脂、菜種硬化油脂等の硬化油脂、パーム分別油脂、ヤシ分別油脂、大豆分別油脂、菜種分別油脂等の分別油脂等を挙げることができる。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、カプロン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド等を挙げることができる。油脂は、いずれか1種のみを用いてもよく、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、後述するとおり、本発明の炒め米飯用油脂組成物にはレシチンを含有しないため、本発明の炒め米飯用油脂組成物に用いられる油脂は、精製された油脂を用いることが好ましい。通常、商業的に販売されている油脂は、精製工程を経ているためレシチンが検出されない。
【0021】
本発明の炒め米飯用油脂組成物にはレシチンを含有しない。レシチンは、炒め米飯の食感や風味に影響を及ぼすおそれや、炒め米飯のツヤの低下を招くおそれがあるが、本発明の炒め米飯用油脂組成物は、レシチンを含有しないため、これらレシチンによる炒め米飯の品質低下への影響がない点で優れている。ここでいうレシチンは、大豆や菜種等の油糧種子又は卵黄等の動物原料から得られるリン脂質[例えば、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸又はこれらの酵素処理物(例えば、フォスファチジルコリンの酵素分解物であるリゾフォスファチジルコリン等)]を主成分とするものであれば、特に制限はなく、リン脂質以外に糖脂質、トリグリセリド等の単純脂質、遊離の糖、色素等を含有する粗製レシチン(クルードレシチン)、粗製レシチンから単純脂質等を除去してリン脂質の純度を高めた高純度レシチン(精製レシチン)、さらに分別や酵素処理を行った分別レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等であってもよい。なお、「レシチンを含有しない」とは、炒め米飯の食感や風味に影響を及ぼすおそれや、炒め米飯のツヤの低下を招くおそれがある量を含有しないことをいい、具体的には、炒め米飯用油脂組成物中のレシチン含有量は0.005質量%未満、好ましくは0.001質量%未満、より好ましくは0.0001質量%未満であり、レシチンが検出されないこと(0質量%)が特に好ましい。
【0022】
本発明の炒め米飯用油脂組成物は、その形態に特に制限はないが、炒め調理時の炒め米飯への分散性の点で、液状、ペースト状、半固形状等であることが好ましい。
【0023】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に含有するジグリセリン脂肪酸エステルは、炒め米飯用油脂組成物中に3~10質量%であれば、特に制限はないが、例えば、3.5~9質量%が好ましく、4~9質量%がより好ましく、5~9質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に含有するグリセリンクエン酸脂肪酸エステルは、炒め米飯用油脂組成物中に0.1~5質量%であれば、特に制限はないが、例えば、0.5~4.5質量%が好ましく、1~4質量%がより好ましく、2~3.5質量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明の炒め米飯用油脂組成物に含有する油脂は、炒め米飯用油脂組成物中に85~96.9質量%が好ましく、86.5~96質量%がより好ましく、87~95質量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明の炒め米飯用油脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を含有させてもよい。このような成分としては、食品用乳化剤、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0027】
食品用乳化剤としては、ジグリセリン脂肪酸エステル及びグリセリンクエン酸脂肪酸エステル以外の食品用乳化剤を挙げることができ、例えば、ジグリセリン脂肪酸エステル以外のポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0028】
酸化防止剤としては、トコフェロール、L-アスコルビン酸脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0029】
本発明の炒め米飯用油脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、自体公知の方法を用いることができるが、例えば、油脂にジグリセリン脂肪酸エステル及びグリセリンクエン酸脂肪酸エステルを溶解し、液状、ペースト状あるいは半固形状製剤にする方法等を挙げることができる。
【0030】
調理器具の加熱面温度が150℃超において、本発明の炒め米飯用油脂組成物を用いて米飯を炒める工程を有する、炒め米飯の製造方法も本発明の形態の一つである。
【0031】
本発明の炒め米飯の製造方法における米飯を炒める工程とは、加熱面温度が150℃超、好ましくは170℃以上、より好ましくは190℃以上の調理器具の加熱面において、本発明の炒め米飯用油脂組成物と米飯とを接触させた状態で加熱調理する工程をいい、米飯を炒める工程を経ることで炒め米飯を得る。なお、加熱面とは、本発明の炒め米飯用油脂組成物と米飯とが調理器具に直接接して加熱調理される面をいう。
【0032】
本発明の炒め米飯用油脂組成物と米飯とを加熱面で加熱調理する際に、調味料、具材等を添加して加熱調理してもよい。米飯を炒める工程で用いられる調理器具としては、特に制限はないが、例えば、フライパン、ホットプレート、鉄板等を挙げることができる。米飯を炒める工程で用いられる米飯としては、生米を炊飯して得られる白飯の他、例えば、玄米ご飯、赤飯、おこわ飯、炊き込みご飯等を挙げることができる。また、おにぎり等のようにこれら米飯を加工した成形米飯も米飯に含まれる。
【0033】
米飯を炒める工程で用いられる調味料としては、特に制限はないが、例えば、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、醤油、味噌、ソース、カレー、ケチャップ、トマトソース、魚介エキス、畜肉エキス、酵母エキス等の他、これらが含まれる市販の合わせ調味料を用いることができる。米飯を炒める工程で用いられる具材としては、特に制限はないが、例えば、魚、貝、えび、かに、いか等の魚介、牛、豚、鶏等の畜肉、ネギ、タマネギ、しょうが、にんにく、にんじん、もやし、ゴマ、きのこ等の野菜、卵等を挙げることができる。米飯を炒める工程における加熱時間は、特に制限はないが、例えば、10~1800秒間が好ましく、10~600秒間がより好ましく、10~300秒間がさらに好ましい。
【0034】
米飯を炒める工程で用いられる本発明の炒め米飯用油脂組成物の添加量は、米飯100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、1~8質量部がさらに好ましい。
【0035】
本発明の炒め米飯の製造方法により得られる炒め米飯は、特に制限はないが、例えば、炒飯、チキンライス、石焼ビビンバ、ドライカレー、焼きおにぎり等の他、これらを冷凍した冷凍炒め米飯等を挙げることができる。
【0036】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例0037】
[炒め米飯用油脂組成物の作製]
(1)原料
1)ジグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;ジグリセリンオレイン酸エステル;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製)
2)グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムK-37V;グリセリンクエン酸オレイン酸エステル;理研ビタミン社製)
3)グリセリン脂肪酸エステル(商品名:エマルジーOL-100H;グリセリンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)
4)ヘキサグリセリン脂肪酸エステル(ヘキサグリセリンオレイン酸エステル)
5)ソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポエムO-80V;ソルビタンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)
6)ショ糖脂肪酸エステルA(商品名:リョートーシュガーエステルB-370;ショ糖ベヘン酸エステル;三菱ケミカル社製)
7)ショ糖脂肪酸エステルB(商品名:リョートーシュガーエステルO-170;ショ糖オレイン酸エステル;三菱ケミカル社製)
8)菜種油(商品名:食用なたね油;ボーソー油脂社製)
【0038】
(2)作製方法
各試験区において、得られる炒め米飯用油脂組成物が500gとなるよう、表1~3に記載の含有量(質量%)に従って全ての原料を1Lビーカーに投入し、80℃で約10分間加熱混合した。その後、静置放冷し、炒め米飯用油脂組成物1~21を得た。なお、炒め米飯用油脂組成物1~7が実施例であり、炒め米飯用油脂組成物8~21が比較例である。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
[炒め米飯(石焼ビビンバ)の作製]
生米(栃木県産コシヒカリ無洗米)600g、水840gを炊飯器に投入し、炊飯することで白飯を得た。次に、鉄製フライパンに炒め米飯用油脂組成物1~21のいずれか6gを投入し、鉄製フライパンの加熱面温度が190℃に達するまで熱した後、白飯150g、石焼ビビンバの素(商品名:石焼ビビンバの素;ユウキ食品社製)10gを鉄製フライパンに投入し、木べらで混合しながら40秒間炒め、炒め米飯を得た。次に、炒め米飯をボウルに回収する際に、鉄製フライパンの加熱面に焦げ付いて回収できない部分の量を測定の上、炒め米飯の回収率(%)を次のように算出した。
【0043】
回収率(%)=[166(g)-焦げ付いて回収できない部分の量(g)]×100/166(g)
【0044】
[炒め米飯用油脂組成物による焦げ付き抑制評価]
焦げ付き抑制評価は、次の評価基準により実施した。回収率(%)が高いほど、焦げ付きが抑制されていることを示す。「◎」及び「○」を本発明の効果を満足するものとした。評価結果を表4に示す。
【0045】
<評価基準>
◎:回収率(%)が95以上
○:回収率(%)が90以上95未満
△:回収率(%)が85以上90未満
×:回収率(%)が85未満
【0046】
[炒め米飯用油脂組成物の保存安定性評価]
保存安定性評価は、ビーカーに入った炒め米飯用油脂組成物1~21を4℃に設定した冷蔵庫に静置保存し、保存7日後の状態変化を目視で確認することで実施した。保存安定性は、次の評価基準により評価し、「○」を本発明の効果を満足するものとした。評価結果を表4に示す。
【0047】
<評価基準>
○:保存前と比較し変化がない
×:保存により白い沈殿物が発生した
【0048】
【0049】
表4のとおり、実施例である炒め米飯用油脂組成物1~7は、焦げ付き抑制及び保存安定性の両面で優れていることがわかった。これらの中でも、炒め米飯用油脂組成物1及び2は、焦げ付き抑制効果が高く、特に好ましいことがわかった。
一方、比較例である炒め米飯用油脂組成物8~21は、焦げ付き抑制又は保存安定性のいずれかにおいて、あるいは焦げ付き抑制及び保存安定性の両面において、効果に乏しいことがわかった。