(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005641
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】排泄物処理材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 1/015 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A01K1/015 B ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105897
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101GB05
2B101GB06
2B101GB07
2B101GB08
(57)【要約】
【課題】性質の異なる2種類の粒状体を含むにもかかわらず、低コストで製造するのに適した排泄物処理材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】排泄物処理材1は、粒状体10及び粒状体20を備えている。粒状体10は、疎水性を有している。粒状体20は、吸水性を有している。粒状体20は、粒状体10と同一組成の材料からなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性を有する第1の粒状体と、
前記第1の粒状体と同一組成の材料からなり、吸水性を有する第2の粒状体と、
を備えることを特徴とする排泄物処理材。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、複数ずつ設けられている排泄物処理材。
【請求項3】
請求項2に記載の排泄物処理材において、
前記第2の粒状体の個数は、前記第1及び第2の粒状体の個数の合計の30%以上70%以下である排泄物処理材。
【請求項4】
請求項3に記載の排泄物処理材において、
前記第2の粒状体の個数は、前記第1及び第2の粒状体の個数の合計の40%以上60%以下である排泄物処理材。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体の粒径は、前記第2の粒状体の粒径よりも小さい排泄物処理材。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体の見掛け密度は、前記第2の粒状体の見掛け密度よりも大きい排泄物処理材。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体の空隙率は、前記第2の粒状体の空隙率よりも小さい排泄物処理材。
【請求項8】
請求項1乃至4の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、プラスチックを含有する排泄物処理材。
【請求項9】
請求項8に記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体に含有される前記プラスチックの平均粒度は、前記第2の粒状体に含有される前記プラスチックの平均粒度よりも大きい排泄物処理材。
【請求項10】
請求項1乃至4の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、有機物を主材料とする排泄物処理材。
【請求項11】
請求項10に記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、有機物のみからなる排泄物処理材。
【請求項12】
請求項1乃至4の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、表面が被覆されていない造粒物である排泄物処理材。
【請求項13】
疎水性を有する第1の粒状体を形成する第1の粒状体形成工程と、
前記第1の粒状体と同一組成の材料からなり、吸水性を有する第2の粒状体を形成する第2の粒状体形成工程と、
を含むことを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程は、同一の装置を用いて同時に実行される排泄物処理材の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、複数の前記第1の粒状体を形成し、
前記第2の粒状体形成工程においては、複数の前記第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第2の粒状体形成工程においては、前記第2の粒状体の個数が前記第1及び第2の粒状体の個数の合計の30%以上70%以下となるように、当該第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第2の粒状体形成工程においては、前記第2の粒状体の個数が前記第1及び第2の粒状体の個数の合計の40%以上60%以下となるように、当該第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項18】
請求項13乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体の粒径が前記第2の粒状体の粒径よりも小さくなるように、当該第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項19】
請求項13乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体の見掛け密度が前記第2の粒状体の見掛け密度よりも大きくなるように、当該第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項20】
請求項13乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体の空隙率が前記第2の粒状体の空隙率よりも小さくなるように、当該第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項21】
請求項13乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程においては、それぞれ、プラスチックを含有する前記第1及び第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体に含有される前記プラスチックの平均粒度が前記第2の粒状体に含有される前記プラスチックの平均粒度よりも大きくなるように、当該第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項23】
請求項13乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程においては、それぞれ、有機物を主材料とする前記第1及び第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程においては、それぞれ、有機物のみからなる前記第1及び第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項25】
請求項13乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程においては、それぞれ、表面が被覆されていない造粒物である前記第1及び第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排泄物処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された排泄物処理材は、動物用トイレに用いられる動物用の排泄物処理材であって、複数の粒状体からなる。複数の粒状体には、性質の異なる2種類の粒状体が含まれている。すなわち、撥水性を有する粒状体と、吸水性を有する粒状体とが混在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の排泄物処理材において撥水性を有する粒状体は、吸水性を有する基材の表面に撥水加工を施すことによって得られたものである。それゆえ、撥水性を有する粒状体と吸水性を有する粒状体とは、相異なる組成の材料からなっている。そのため、吸水性を有する粒状体を構成する材料とは別に、撥水性を有する粒状体を構成する材料を準備しなければならない。このことは、排泄物処理材の製造コストを増大させる要因となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、性質の異なる2種類の粒状体を含むにもかかわらず、低コストで製造するのに適した排泄物処理材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による排泄物処理材は、疎水性を有する第1の粒状体と、上記第1の粒状体と同一組成の材料からなり、吸水性を有する第2の粒状体と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この排泄物処理材においては、疎水性を有する粒状体(第1の粒状体)と吸水性を有する粒状体(第2の粒状体)とが設けられている。第1及び第2の粒状体は、同一組成の材料からなっている。このため、第1の粒状体を構成する材料と第2の粒状体を構成する材料とを別々に準備する必要がない。このように第1及び第2の粒状体の材料を共通化することは、排泄物処理材の製造コストの低減に資する。
【0008】
また、本発明による排泄物処理材の製造方法は、疎水性を有する第1の粒状体を形成する第1の粒状体形成工程と、上記第1の粒状体と同一組成の材料からなり、吸水性を有する第2の粒状体を形成する第2の粒状体形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、疎水性を有する粒状体(第1の粒状体)と吸水性を有する粒状体(第2の粒状体)とが形成される。第1及び第2の粒状体は、同一組成の材料からなっている。このため、第1の粒状体を構成する材料と第2の粒状体を構成する材料とを別々に準備する必要がない。このように第1及び第2の粒状体の材料を共通化することは、排泄物処理材の製造コストの低減に資する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、性質の異なる2種類の粒状体を含むにもかかわらず、低コストで製造するのに適した排泄物処理材、及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。
【
図5】押出造粒機30を用いて粒状体10及び粒状体20を形成する工程を説明するための図である。
【
図6】押出造粒機30を用いて粒状体10及び粒状体20を形成する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。排泄物処理材1は、排泄物(主に尿)の処理に用いられる排泄物処理材である。排泄物処理材1は、猫や犬等の動物の排泄物の処理に用いられる動物用の排泄物処理材であってもよいし、人の排泄物の処理に用いられる人用の排泄物処理材であってもよい。排泄物処理材1は、排泄物を処理するための複数の粒状体からなる。排泄物処理材1は、例えば、複数の粒状体が箱状のトイレに敷設された状態で使用される。排泄物処理材1は、粒状体10(第1の粒状体)、及び粒状体20(第2の粒状体)を備えている。すなわち、排泄物処理材1を構成する複数の粒状体は、粒状体10及び粒状体20を含んでいる。
【0014】
粒状体10は、疎水性(撥水性)を有している。すなわち、粒状体10は、尿等の液体を全く吸収しないか、あるいは吸収するとしても殆ど吸収しない性質を有する。粒状体10が疎水性を有するというには、次の試験により測定される液通過率が60%より大きいことが必要である。まず、内径10cm、目開き1mmの篩に50g相当の粒状体10(サンプル)を入れる。篩の下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、外筒の内径3cm、筒先の内径4mmのシリンジ(テルモ社製60mlシリンジ)を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。計測した水量の滴下した水量(30ml)に対する割合をもって液通過率とする。すなわち、ビーカー内の水量が18mlより多ければ、液通過率が60%より大きくなるため、粒状体10が疎水性を有するといえる。
【0015】
粒状体20は、吸水性を有している。すなわち、粒状体20は、その内部に尿等の液体を取り込んで保持する。粒状体20が吸水性を有するというには、上述の試験により測定される液通過率が60%以下であることが必要である。粒状体10の液通過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。粒状体20の液通過率は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0016】
粒状体10及び粒状体20は、複数ずつ設けられている。排泄物処理材1においては、これらの粒状体10,20が混在している。粒状体20の個数は、粒状体10及び粒状体20の個数の合計の30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。粒状体10の粒径は、粒状体20の粒径に等しい。ここで、粒径は、当該粒状体を内包しうる最小の球の直径として定義するものとする。各粒状体10,20の粒径は、例えば5mm以上30mm以下である。
【0017】
各粒状体10は、粒状をしている。かかる粒状の形状としては、例えば、球、円柱、又は楕円体が挙げられる。各粒状体10は、表面が被覆されていない造粒物である。すなわち、各粒状体10には、被覆層(造粒物の表面の一部又は全体を覆う層)が設けられていない。それゆえ、粒状体10を構成する造粒物の表面には、疎水加工(撥水加工)が施されていない。各粒状体10は、有機物を主材料とすることが好ましい。ここで、粒状体10の主材料とは、粒状体10を構成する材料のうち、当該粒状体10に占める重量割合が最大のものをいう。かかる有機物としては、例えば、紙類、植物類、プラスチック、又は有機汚泥類が挙げられる。各粒状体10は、有機物のみからなっていてもよいし、有機物及び無機物からなっていてもよい。
【0018】
紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙(紙粉)の他にも、フラッフパルプ、塩ビ壁紙由来の紙(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生する紙)、石膏ボード由来の紙(石膏ボードの製造時又は分級時に発生する紙)、又は衛生用品由来の紙(紙を含む衛生用品の製造時又は分級時に発生する紙)を用いることができる。紙を含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生用紙(ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル等)が挙げられる。植物類としては、例えば、木粉、大鋸屑、又は植物性残渣(茶殻、オカラ等)を用いることができる。プラスチックとしては、例えば、通常のプラスチックの他にも、塩ビ壁紙由来のプラスチック(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生するプラスチック)、又は衛生用品由来のプラスチック(プラスチックを含む衛生用品の製造時又は分級時に発生するプラスチック)を用いることができる。プラスチックを含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生マスクが挙げられる。有機汚泥類としては、例えば、製紙スラッジ、又はパルプスラッジを用いることができる。本実施形態において各粒状体10は、プラスチックを含有している。プラスチックは、粒状体10の主材料であってもよいし、主材料でなくてもよい。
【0019】
各粒状体20は、粒状をしている。各粒状体20は、表面が被覆されていない造粒物である。各粒状体20は、有機物を主材料とすることが好ましい。ここで、粒状体20の主材料とは、粒状体20を構成する材料のうち、当該粒状体20に占める重量割合が最大のものをいう。各粒状体20は、有機物のみからなっていてもよいし、有機物及び無機物からなっていてもよい。本実施形態において各粒状体20は、プラスチックを含有している。粒状体20は、粒状体10と同一組成の材料からなっている。すなわち、粒状体20を構成する材料の種類及び割合は、粒状体10を構成する材料の種類及び割合に等しい。仮に粒状体10及び粒状体20のうち粒状体10の表面のみに疎水加工(撥水加工)を施したような場合、疎水加工に用いた材料も「粒状体10を構成する材料」に含まれるため、粒状体20が粒状体10と同一組成の材料からなるとはいえない。
【0020】
粒状体10の見掛け密度は、粒状体20の見掛け密度よりも大きいことが好ましい。粒状体10の空隙率は、粒状体20の空隙率よりも小さいことが好ましい。ここで、空隙率は、各粒状体の内部に存在する空隙の当該粒状体全体に対する容積割合として定義される。各粒状体の真密度をDt、見掛け密度をDaとしたとき、空隙率は、1-(Da/Dt)で表される。また、粒状体10に含有されるプラスチックの平均粒度は、粒状体20に含有されるプラスチックの平均粒度よりも大きいことが好ましい。ここで、平均粒度とは、多数の粒子(プラスチック粉末又はプラスチック片)の集合体であるプラスチックを篩にかけたときに、50重量%以上の粒子が通過できる最小の目開きをいう。
【0021】
続いて、本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態として、排泄物処理材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、第1の粒状体形成工程、及び第2の粒状体形成工程を含んでいる。
【0022】
第1の粒状体形成工程は、粒状体10を形成する工程である。この工程においては、造粒装置を用いて第1の造粒材料(粒状体10を構成する材料)を造粒することにより、粒状体10となる複数の造粒物を形成する。造粒装置としては、例えば押出造粒機を用いることができる。造粒に先立って、第1の造粒材料には、粉砕、混錬、加水等の前処理が必要に応じて行われる。また、造粒後には、篩分け(分粒)、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。これにより、複数の粒状体10が得られる。
【0023】
第2の粒状体形成工程は、粒状体20を形成する工程である。この工程においては、造粒装置を用いて第2の造粒材料(粒状体20を構成する材料)を造粒することにより、粒状体20となる複数の造粒物を形成する。第2の造粒材料の組成は、第1の造粒材料の組成に等しい。造粒に先立って、第2の造粒材料には、粉砕、混錬、加水等の前処理が必要に応じて行われる。また、造粒後には、篩分け(分粒)、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。これにより、複数の粒状体20が得られる。
【0024】
その後、第1の粒状体形成工程において形成された粒状体10と、第2の粒状体形成工程において形成された粒状体20とを混合する。このとき、粒状体20の個数が粒状体10及び粒状体20の個数の合計の30%以上70%以下となるように、粒状体10及び粒状体20を混合することが好ましい。また、粒状体20の個数が粒状体10及び粒状体20の個数の合計の40%以上60%以下となるように、粒状体10及び粒状体20を混合することがより好ましい。以上により、粒状体10及び粒状体20が混在した排泄物処理材1が得られる。
【0025】
第1及び第2の粒状体形成工程を実行する順序は、任意である。すなわち、両工程を(異なる装置を用いて)同時に並行して実行してもよいし、一方の工程を他方の工程より先に実行してもよい。あるいは、第1及び第2の粒状体形成工程は、同一の装置を用いて同時に実行してもよい。すなわち、第1及び第2の粒状体形成工程を1つの工程として実行してもよい。その場合、第1及び第2の粒状体形成工程は、例えば、次に示す押出造粒機30を用いて実行することができる。
【0026】
図2及び
図3は、それぞれ、押出造粒機30を示す平面図及び底面図である。また、
図4は、
図2のIV-IV線に沿った端面図である。押出造粒機30は、ダイス32、ローラー34、及びカッター36を有している。ダイス32は、平面視で円形をしている。ダイス32の厚みは、均一である。ダイス32には、造粒材料(第1及び第2の造粒材料)を通過させる複数の貫通孔33が設けられている。以下の記述において「複数の貫通孔33」は、別段の断りがない限り、ダイス32に設けられた全ての貫通孔33を指すものとする。複数の貫通孔33は、互いに等しい長さを有している。複数の貫通孔33は、ダイス32の表面の略全体にわたって点在している。各貫通孔33の断面(ダイス32の厚み方向に垂直な断面)の形状は、円形である。また、ダイス32の厚み方向について、各貫通孔33の径は一定である。すなわち、各貫通孔33は、円柱状の空間からなる。
【0027】
ダイス32は、押出造粒時に第1の温度を有する部分32a(第1の部分)、及び押出造粒時に第2の温度を有する部分32b(第2の部分)を含んでいる。第1の温度は、造粒材料に含まれるプラスチックの融点以上である。第2の温度は、当該融点未満である。融点が異なる2種類以上のプラスチックが造粒材料に含まれる場合、第1の温度は最も低い融点を有するプラスチックの融点以上であればよく、第2の温度は当該プラスチックの融点未満であればよい。プラスチックの融点をM℃としたとき、第1の温度、及び第2の温度は、それぞれ、(M+5)℃以上、及び(M-5)℃以下であることが好ましく、(M+10)℃以上、及び(M-10)℃以下であることがより好ましい。なお、ダイス32の温度は、貫通孔33の内面において計測するものとする。押出造粒時、ダイス32は、部分32aの温度(第1の温度)がプラスチックの融点以上になるとともに、部分32bの温度(第2の温度)が当該融点未満になるように制御される。かかる温度制御は、例えば、部分32aを加熱するヒーターと部分32bを加熱するヒーターとを別々に設けることにより行うことができる。各部分32a,32bの加熱は、誘導加熱により行ってもよい。
【0028】
本例においては、部分32aが部分32bの内側に位置している。すなわち、部分32aの方が、部分32bよりも、後述する回転軸35の近くに位置している。平面視で、部分32aは円板状の領域であり、部分32bは円環状の領域である。部分32aと部分32bとの境界には、断熱材38が設けられている。すなわち、部分32aと部分32bとは、断熱材38によって分断されている。断熱材38は、筒状に設けられており、ダイス32の表面(造粒材料の入口側の面)から裏面(造粒材料の出口側の面)まで延びている。断熱材38の材料としては、例えば、第1の温度よりも充分に高い融点を有するプラスチックを用いることができる。
【0029】
複数の貫通孔33は、貫通孔33a(第1の貫通孔)、及び貫通孔33b(第2の貫通孔)を含んでいる。貫通孔33a及び貫通孔33bは、それぞれ、ダイス32の部分32a及び部分32bに存在する。貫通孔33aの径は、貫通孔33bの径に等しい。本実施形態において複数の貫通孔33は、貫通孔33a及び貫通孔33bのみからなる。ダイス32に設けられた貫通孔33bの個数は、ダイス32に設けられた貫通孔33a及び貫通孔33bの個数の合計の30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。
【0030】
ダイス32の表面側には、ローラー34が設けられている。ローラー34は、円柱状をしており、その中心軸がダイス32の径方向に延びている。本例においては、複数(具体的には4つ)のローラー34が設けられている。各ローラー34の一端は、ダイス32の表面の中心部に位置する回転軸35に連結されている。回転軸35は、その中心軸の周りに回転(自転)するように構成されている。各ローラー34は、その中心軸の周りに回転(自転)しつつ、回転軸35の周りに回転(公転)する。このように、ローラー34は、回転軸35の周りに公転しながら造粒材料を各貫通孔33に押し込む。ローラー34は、ダイス32に設けられた全ての貫通孔33の入口上を通過することが可能である。
【0031】
ダイス32の裏面側には、カッター36が設けられている。カッター36は、ダイス32の裏面の中心部からダイス32の径方向に延びている。カッター36は、ダイス32の裏面に沿って回転しながら、各貫通孔33から押し出された造粒材料を切断する。詳細には、カッター36は、ダイス32の裏面に平行な面内で、ダイス32の中心部を軸として回転運動をする。なお、カッター36は、ローラー34とは独立して回転できるように構成されている。カッター36は、ダイス32に設けられた全ての貫通孔33の出口上を通過することが可能である。
【0032】
押出造粒機30を用いて第1及び第2の粒状体形成工程を実行する場合、
図5に示すように、ダイス32の表面側に供給された造粒材料M1が、ダイス32の表面上を転動するローラー34によって貫通孔33に押し込まれる。このとき、ダイス32は、上述のとおり、部分32aの温度がプラスチックの融点以上になるとともに部分32bの温度が当該融点未満になるように制御される。具体的には、造粒材料が通過する直前において、貫通孔33aの内面の温度がプラスチックの融点以上になるとともに貫通孔33bの内面の温度が当該融点未満になるように制御される。貫通孔33に押し込まれた造粒材料M1は、ダイス32の裏面側から押し出される。造粒材料M1が押し出される際、ダイス32の裏面側では、カッター36が回転し続けている。これにより、貫通孔33から押し出された造粒材料M1は、
図6に示すように、カッター36によって切断される。このようにして形成される造粒物が、粒状体10又は粒状体20となる。
【0033】
敷衍すると、部分32aに存在する貫通孔33aを通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こる一方、部分32bに存在する貫通孔33bを通過する造粒材料においてはプラスチックの融解が起こらない。融解したプラスチックは、造粒材料内の空隙に入り込んで当該空隙を塞ぐ。かかる空隙は、造粒物の内部に尿等の液体が浸入する経路となるものである。これにより、貫通孔33aを通過した造粒材料から疎水性の粒状体10を得るとともに、貫通孔33bを通過した造粒材料から吸水性の粒状体20を得ることができる。
【0034】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、疎水性を有する粒状体10と吸水性を有する粒状体20とが形成される。粒状体10及び粒状体20は、同一組成の材料からなっている。このため、粒状体10を構成する材料と粒状体を構成する材料20とを別々に準備する必要がない。なお、各粒状体10,20を構成する材料が複数種類ある場合、「準備」には、個々の材料を調達することだけでなく、それらの材料を所定の割合で混合することまで含まれる。このように粒状体10及び粒状体20の材料を共通化することは、排泄物処理材1の製造コストの低減に資する。したがって、性質の異なる2種類の粒状体(粒状体10及び粒状体20)を含むにもかかわらず、低コストで製造するのに適した排泄物処理材1、及びその製造方法が実現されている。
【0035】
このように粒状体10及び粒状体20が同一組成の材料からなる場合であっても、造粒条件(ダイスの温度、造粒材料に加わる圧力等)を変えることにより、粒状体10及び粒状体20に相異なる性質を付与することができる。
【0036】
粒状体10と粒状体20とがバランス良く混合された排泄物処理材1を得る観点から、粒状体20の個数は、粒状体10及び粒状体20の個数の合計の30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。
【0037】
粒状体10の見掛け密度が粒状体20の見掛け密度よりも大きい場合、粒状体10の内部に液体が浸入する余地が小さくなるため、粒状体10の液通過率を高めるのに有利である。粒状体10の空隙率が粒状体20の空隙率よりも小さい場合についても、同様である。なお、粒状体10の見掛け密度を大きくしたり粒状体10の空隙率を小さくしたりするには、粒状体10の造粒時に第1の造粒材料に加わる圧力を高くすればよい。
【0038】
粒状体10に含有されるプラスチックの平均粒度が粒状体20に含有されるプラスチックの平均粒度よりも大きい場合、粒状体10の造粒時にはプラスチックが融解した一方、粒状体20の造粒時にはプラスチックが融解しなかったということである。すなわち、粒状体10においては、造粒時に融解して変形したプラスチックが再凝固したため、当該プラスチックの平均粒度が大きくなっている。それゆえ、粒状体10に含有されるプラスチックの平均粒度が大きいことは、プラスチックが粒状体10の内部の空隙を塞ぐように融解したことの証左である。
【0039】
粒状体10及び粒状体20が有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した排泄物処理材1を得ることができる。このことは、使用済みの排泄物処理材1の処分の便宜に資する。特に粒状体10及び粒状体20が有機物のみからなる場合、焼却処分に一層適した排泄物処理材1を得ることができる。
【0040】
粒状体10及び粒状体20は、表面が被覆されていない造粒物である。このため、造粒物の表面を被覆する工程を実行することなく、粒状体10及び粒状体20を形成することができる。このことも、排泄物処理材1の製造コストの低減に資する。
【0041】
第1及び第2の粒状体形成工程が同一の装置を用いて同時に実行される場合、第1及び第2の粒状体形成工程を実行した後に、粒状体10と粒状体20とを混合する工程を実行する必要がない。このことも、排泄物処理材1の製造コストの低減に資する。
【0042】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、粒状体10の粒径が粒状体20の粒径に等しい場合を例示した。しかし、粒状体10の粒径は、粒状体20の粒径より小さくてもよい。このように粒状体10の粒径を小さくするには、例えば、押出造粒時に第1の造粒材料が通過する貫通孔の径を小さくすればよい。貫通孔の径が小さくなるほど、当該貫通孔を通過する第1の造粒材料に加わる圧力が高くなる。このことは、粒状体10の液通過率を高めるのに有利である。ただし、粒状体10の粒径は、粒状体20の粒径より大きくてもよい。
【0043】
上記実施形態においては、粒状体10及び粒状体20がプラスチックを含有する場合を例示した。しかし、粒状体10及び粒状体20は、プラスチックを含有しなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 排泄物処理材
10 粒状体
30 押出造粒機
32 ダイス
32a 部分(第1の部分)
32b 部分(第2の部分)
33 貫通孔
33a 貫通孔(第1の貫通孔)
33b 貫通孔(第2の貫通孔)
34 ローラー
35 回転軸
36 カッター
38 断熱材
M1 造粒材料