(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025056490
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】段積みシステムおよび段積み方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20250401BHJP
【FI】
B25J15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023165994
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】池田 竜司
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS15
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES17
3C707ET08
3C707LV09
3C707NS09
(57)【要約】
【課題】段積みに係るサイクルタイムを短くする。
【解決手段】段積みシステム10は、互いに離れた取得場所に置かれた複数のワーク30を所定の配置場所に段積みするものであり、ワーク30を把持するためのハンド40が先端に取り付けられたロボットアーム20と、ロボットアーム20の動作を制御する制御装置50と、を備える。ハンド40は、複数のワーク30を多段に積み重ねた状態で同時に全てを把持することができる構造となっている。制御装置50は、ロボットアーム20の先端を取得場所の近傍に移動させて複数のワーク30のそれぞれをハンド40により1個ずつ把持する把持処理と、把持処理を繰り返し実行することにより複数のワーク30の全てをハンド40により把持した後、ロボットアーム20の先端を配置場所の近傍に移動させて複数のワーク30の全てを多段に積み重ねた状態を維持しつつ配置場所に置く配置処理と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを用いて互いに離れた取得場所に置かれた複数のワークを所定の配置場所に段積みするシステムであって、
前記ワークを把持するためのハンドが先端に取り付けられた前記ロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記ハンドは、前記複数のワークを多段に積み重ねた状態で同時に全てを把持することができる構造となっており、
前記制御装置は、
前記ロボットアームの先端を前記取得場所の近傍に移動させて前記複数のワークのそれぞれを前記ハンドにより1個ずつ把持する把持処理と、
前記把持処理を繰り返し実行することにより前記複数のワークの全てを前記ハンドにより把持した後、前記ロボットアームの先端を前記配置場所の近傍に移動させて前記複数のワークの全てを多段に積み重ねた状態を維持しつつ前記配置場所に置く配置処理と、
を実行する段積みシステム。
【請求項2】
前記ワークは、互いに対向する2つの主面を有する平板形状をなしており、
前記主面に沿う互いに直交する2方向のうちの一方を左右方向とするとともに、前記主面に直交する方向を上下方向とすると、
前記ハンドは、左右方向に平行移動して開閉する2つの爪部を備え、
前記2つの爪部の先端には、左右方向に沿って延びる形状の載置部が設けられており、
前記制御装置は、
前記把持処理において、
把持する対象となる前記ワークである対象ワークの上方向の位置に前記ハンドを移動させる処理と、
前記2つの爪部を左右方向に沿って開くとともに前記ハンドを下方向に移動させる処理と、
前記2つの爪部を左右方向に沿って閉じることにより前記載置部に前記対象ワークを載せる処理と、
を実行する請求項1に記載の段積みシステム。
【請求項3】
前記ワークは、互いに対向する2つの主面を有する平板形状をなしており、
前記主面に沿う互いに直交する2方向のうちの一方を左右方向とするとともに、前記主面に直交する方向を上下方向とすると、
前記ハンドは、左右方向に平行移動して開閉する2つの爪部を備え、
前記2つの爪部の先端には、左右方向に沿って延びる形状の載置部が設けられており、
前記載置部は、その基端部を中心として、その先端部が上方向に向けて回転可能に構成されており、
前記制御装置は、
前記把持処理において、
把持する対象となる前記ワークである対象ワークの上方向の位置に前記ハンドを移動させる処理と、
前記ハンドを下方向に移動させることにより前記載置部に前記対象ワークを載せる処理と、
を実行する請求項1に記載の段積みシステム。
【請求項4】
前記載置部の上下方向の寸法は、前記ワークの上下方向の寸法に比べて小さくなっている請求項2に記載の段積みシステム。
【請求項5】
前記ワークは、互いに対向する2つの主面を有する平板形状をなしており、
前記主面に沿う互いに直交する2方向のうちの一方を左右方向とするとともに、前記主面に直交する方向を上下方向とすると、
前記ハンドは、1つの爪部を備え、
前記爪部の先端には、左右方向に沿って延びる形状の複数の載置部が上下方向に沿って積み重なるように設けられており、
前記複数の載置部は、いずれも上下方向および左右方向に沿って移動可能に構成されており、
前記制御装置は、
前記把持処理において、
把持する対象となる前記ワークである対象ワークの上方向の位置に前記ハンドを移動させる処理と、
前記ハンドを下方向に移動させるとともに左右方向に移動させることにより前記載置部に前記対象ワークを載せる処理と、
前記対象ワークを載せた前記載置部を上方向に移動させる処理と、
を実行し、
前記配置処理において、
前記ハンドを上下方向に対して傾ける処理、または、前記複数の載置部を左右方向に移動させることにより前記ハンド から引き抜く処理を実行する請求項1に記載の段積みシステム。
【請求項6】
前記ハンドは、前記ワークを把持した状態において前記ワークの前記主面を除く面である側面を支持する支持部を備えている請求項2から5のいずれか一項に記載の段積みシステム。
【請求項7】
ロボットアームを用いて互いに離れた取得場所に置かれた複数のワークを所定の配置場所に段積みする方法であって、
前記ロボットアームは、その先端に前記ワークを把持するためのハンドが取り付けられており、
前記ハンドは、前記複数のワークを多段に積み重ねた状態で同時に全てを把持することができる構造となっており、
前記ロボットアームの先端を前記取得場所の近傍に移動させて前記複数のワークのそれぞれを前記ハンドにより1個ずつ把持する把持処理と、
前記把持処理を繰り返し実行することにより前記複数のワークの全てを前記ハンドにより把持した後、前記ロボットアームの先端を前記配置場所の近傍に移動させて前記複数のワークの全てを多段に積み重ねた状態を維持しつつ前記配置場所に置く配置処理と、
を実行する段積み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボットアームを用いた段積みシステムおよび段積み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の生産ラインなどにおいて、互いに離れた場所にばらばらに置かれた平板形状をなす複数のワークを、所定の配置場所に段積みする、といった工程が存在する。段積みとは、縦方向に多段に積み重ねることを意味している。特許文献1には、このような段積みを行うための段積み装置が開示されている。特許文献1に開示された段積み装置は、段積みを行う位置に固定された複雑な構造のものである。そこで、従来、移動の自由度や構造の簡素化などを目的として、ロボットアームを用いて段積みを行うシステムが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ロボットアームを用いて段積みを行う場合、次のような動作の流れとなる。まず、ロボットアームの先端をワークが置かれた取得場所の近傍に移動させ、そのワークをロボットアームの先端に取り付けられたハンドで把持する。その後、ロボットアームの先端を配置場所の近傍に移動させ、そのワークを配置場所に仮置きする。これら把持および仮置きの動作を、全てのワークに対して実行することにより、配置場所に複数のワークが段積みされる。このような通常の動作の流れによる段積みでは、配置場所にワークを1個ずつ仮置きして積み重ねていくことから、ロボットアームの移動距離が長くなり、その結果、段積みに係るサイクルタイムの長期化を招くおそれがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、段積みに係るサイクルタイムを短くすることができる段積みシステムおよび段積み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の段積みシステムは、ロボットアームを用いて互いに離れた取得場所に置かれた複数のワークを所定の配置場所に段積みするシステムである。段積みシステムは、前記ワークを把持するためのハンドが先端に取り付けられた前記ロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、を備える。前記ハンドは、前記複数のワークを多段に積み重ねた状態で同時に全てを把持することができる構造となっている。前記制御装置は、前記ロボットアームの先端を前記取得場所の近傍に移動させて前記複数のワークのそれぞれを前記ハンドにより1個ずつ把持する把持処理と、前記把持処理を繰り返し実行することにより前記複数のワークの全てを前記ハンドにより把持した後、前記ロボットアームの先端を前記配置場所の近傍に移動させて前記複数のワークの全てを多段に積み重ねた状態を維持しつつ前記配置場所に置く配置処理と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る段積みシステムの構成を模式的に示すものであり、複数のワークが互いに異なる取得場所にある状態を示す図
【
図2】一実施形態に係る段積みシステムの構成を模式的に示すものであり、複数のワークが配置場所において段積みされた状態を示す図
【
図3】一実施形態に係るハンドの具体的な第1構成例を示す図
【
図4】一実施形態に係るハンドの具体的な第2構成例を示す図
【
図5】一実施形態に係るハンドの具体的な第3構成例を示す図
【
図6】一実施形態に係るハンドの具体的な第4構成例を示す図
【
図7】一実施形態に係るハンドの具体的な第4構成例を示すものであり、載置部が上方向に倒れる様子を表す図
【
図8】一実施形態に係るハンドの具体的な第5構成例を示すものであり、ワークを把持していない状態を示す図
【
図9】一実施形態に係るハンドの具体的な第5構成例を示すものであり、1つのワークを把持している状態を示す図
【
図10】一実施形態に係る制御装置が実行する第1処理の内容の一例を示す図
【
図11】一実施形態に係る制御装置が第1処理を実行する場合における一連の動作の流れを説明するための図
【
図12】一実施形態に係る制御装置が実行する第2処理の内容の一例を示す図
【
図13】一実施形態に係る制御装置が第2処理を実行する場合における一連の動作の流れを説明するための図
【
図14】一実施形態に係る制御装置が実行する第3処理の内容の一例を示す図
【
図15】一実施形態に係る制御装置が第3処理を実行する場合における一連の動作の流れを説明するための図
【
図16】比較例に係る段積みにおけるアーム先端の移動距離を説明するための図
【
図17】一実施形態に係る段積みにおけるアーム先端の移動距離を説明するための図
【
図18】一実施形態に係る第2構成例のハンドを採用した場合の2個目以降のワークを把持する際の動作を説明するための図
【
図19】一実施形態に係る第1構成例のハンドを採用した場合の2個目以降のワークを把持する際の動作を説明するための図
【
図20】一実施形態に係るハンドの変形例の構成を示す斜視図であり、ワークを把持していない状態を示す図
【
図21】一実施形態に係るハンドの変形例の構成を示す斜視図であり、ワークを把持している状態を示す図
【
図22】一実施形態に係る段積みされた複数のワーク同士が多少ずれた状態と段積みされた複数のワークを揃えた状態とを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態による段積みシステムについて、図面を参照しながら説明する。
図1および
図2に示すように、段積みシステム10は、ロボットアーム20を用いて複数のワーク30a、30b、30cを段積みするシステムである。具体的には、段積みシステム10は、ロボットアーム20を用いて、
図1に示すように、ばらばらに置かれた複数のワーク30a~30c、つまり互いに離れた取得場所に置かれた複数のワーク30a~30cを、
図2に示すように、所定の配置場所に段積みするシステムである。取得場所および配置場所は、平面を有する台、容器などの任意の場所に設定される。段積みとは、配置場所の平面に垂直の方向に多段に積み重ねることを意味している。なお、以下の説明では、ワーク30a~30cについて区別する必要が無い場合、ワーク30と総称することとする。
【0009】
本実施形態では、3つのワーク30a~30cを段積みする場合を例示しているが、段積みの対象とするワーク30の数は3つに限らずともよく、2つでもよいし、4つ以上でもよい。ただし、段済みの対象とするワークの数は、ロボットアーム20が把持可能な数に限られる。ロボットアーム20は、例えば4軸のアームを有する水平多関節型ロボットとして構成されている。ワーク30は、例えば食品などであり、いわゆる平べったい形状をなしている。具体的には、ワーク30は、互いに対向する2つの主面31、32を有する平板形状をなしている。本明細書では、ワーク30の主面31、32に沿う互いに直交する2方向のうちの一方を左右方向とするとともに、主面31、32に直交する方向を上下方向とする。
【0010】
ロボットアーム20の先端には、ワーク30を把持するためのハンド40が取り付けられている。ハンド40は、複数のワーク30を多段に積み重ねた状態で同時に全てを把持することができる構造となっている。
図1および
図2では、このような構造を有するハンド40の一構成例を示しているが、ハンド40の構造は、これに限らずともよく、後述するような各種の構造を含め、様々な構造を採用することができる。
【0011】
ハンド40を含めたロボットアーム20の動作は、制御装置50により制御される。制御装置50は、図示しないCPU、ROMおよびRAMなどで構成されたコンピュータからなる制御手段においてコンピュータプログラムを実行することで、ロボットアーム20の動作を制御している。制御装置50は、把持処理部51および配置処理部52などの機能ブロックを備えている。これら各機能ブロックは、制御装置50が備えるCPUがROMなどに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、各機能ブロックのうち少なくとも一部をハードウェアにより実現する構成としてもよい。
【0012】
把持処理部51は、ロボットアーム20の先端であるアーム先端21を、取得場所の近傍に移動させて複数のワーク30のそれぞれをハンド40により1個ずつ把持する把持処理を実行する。配置処理部52は、把持処理部51が把持処理を繰り返し実行することにより複数のワーク30の全てをハンド40により把持した後、アーム先端21を配置場所の近傍に移動させて複数のワーク30の全てを多段に積み重ねた状態を維持しつつ配置場所に置く配置処理を実行する。
【0013】
<ハンドの具体的な構成例>
ロボットアーム20のアーム先端21に取り付けられるハンド40の具体的な構成としては、以下で説明する5つの構成例などを採用することができる。
【0014】
[1]第1構成例
図3に示すように、第1構成例のハンド40Aは、左右方向に平行移動して開閉する2つの爪部41A、42Aを備えている。2つの爪部41A、42Aの先端には、左右方向に沿って延びる形状の載置部43A、44Aが設けられている。載置部43Aは、
図3中の左側の端部である基端部から
図3中の右側の端部である先端部にかけて、上下方向の寸法である厚みが均一になっている。載置部44Aは、
図3中の右側の端部である基端部から
図3中の左側の端部である先端部にかけて、厚みが均一になっている。また、載置部43A、44Aの厚みは、ワーク30の厚みに比べて小さくなっている。
【0015】
[2]第2構成例
図4に示すように、第2構成例のハンド40Bは、左右方向に平行移動して開閉する2つの爪部41B、42Bを備えている。2つの爪部41B、42Bの先端には、左右方向に沿って延びる形状の載置部43B、44Bが設けられている。載置部43Bは、
図4中の左側の端部である基端部から
図3中の右側の端部である先端部にかけて厚みが漸減する形状、つまり基端部から先端部にかけて下向きに傾斜する形状になっている。載置部44Bは、
図4中の右側の端部である基端部から
図4中の左側の端部である先端部にかけて厚みが漸減する形状、つまり基端部から先端部にかけて下向きに傾斜する形状になっている。また、載置部43B、44Bの基端部における厚みは、ワーク30の厚みと同程度またはワーク30の厚みに比べて大きくなっている。
【0016】
[3]第3構成例
図5に示すように、第3構成例のハンド40Cは、左右方向に平行移動して開閉する2つの爪部41C、42Cを備えている。2つの爪部41C、42Cの先端には、左右方向に沿って延びる形状の載置部43C、44Cが設けられている。載置部43Cは、
図5中の左側の端部である基端部から
図5中の右側の端部である先端部にかけて上下方向の寸法である厚みが均一になっている。載置部44Cは、
図5中の右側の端部である基端部から
図5中の左側の端部である先端部にかけて厚みが均一になっている。また、載置部43C、44Cの厚みは、ワーク30の厚みと同程度またはワーク30の厚みに比べて大きくなっている。
【0017】
[4]第4構成例
図6に示すように、第4構成例のハンド40Dは、左右方向に平行移動して開閉する2つの爪部41D、42Dを備えている。2つの爪部41D、42Dの先端には、左右方向に沿って延びる形状の載置部43D、44Dが設けられている。載置部43Dは、
図6中の左側の端部である基端部から
図6中の右側の端部である先端部にかけて上下方向の寸法である厚みが均一になっている。載置部44Dは、
図6中の右側の端部である基端部から
図6中の左側の端部である先端部にかけて厚みが均一になっている。また、載置部43D、44Dの厚みは、ワーク30の厚みに比べて小さくなっている。
【0018】
図7に示すように、載置部43Dは、その基端部を中心として、その先端部が上方向に向けて回転可能に構成されている。図示は省略しているが、載置部44Dも、載置部43Dと同様、その基端部を中心として、その先端部が上方向に向けて回転可能に構成されている。つまり、載置部43D、44Dは、その先端が上方向にだけ倒れる構造となっている。
【0019】
[5]第5構成例
図8および
図9に示すように、第5構成例のハンド40Eは、1つの爪部41Eを備えている。爪部41Eの先端には、左右方向に沿って延びる形状の3つの載置部43E、44E、45Eが上下方向に沿って積み重なるように設けられている。載置部の数は、3つに限らずともよく、段積みの対象とするワーク30の数以上の数であればよい。載置部43E~45Eは、それぞれが個別に上下方向に沿って移動可能に構成されている。また、載置部43E~45Eは、それぞれが個別にまたは一括して左右方向に沿ってハンド40Eの外側に向けて移動可能に構成されている。つまり、載置部43E~45Eは、ハンド40Eから引き抜くことができるように構成されている。
【0020】
<把持処理および配置処理の具体例>
制御装置50により実行される把持処理および配置処理の具体的な内容としては、次のような内容を採用することができる。以下では、ハンド40の第1~第5構成例のそれぞれに対応する具体的な処理内容の一例について
図10~
図15を参照して説明する。
【0021】
[1]第1~第3構成例に対応する第1処理の内容
ハンド40として第1構成例のハンド40A、第2構成例のハンド40Bまたは第3構成例のハンド40Cを採用した場合、制御装置50は、
図10に示すような内容の第1処理を実行することができる。第1処理は、ハンド40を開閉させることによりハンド40が把持するワーク30を追加していく方法を実現する処理である。この場合、ステップS102、S103、S104およびS105が把持処理に対応する処理であり、ステップS107、S108およびS109が配置処理に対応する処理である。
【0022】
ステップS101では、3つのワーク30のうち未だハンド40により把持されていないものの中からいずれか1つが、把持する対象となるワークである対象ワークとして設定される。ステップS102では、対象ワークの上方向の位置、つまり対象ワークの上空の位置にハンド40を移動させる処理が実行される。ステップS103では、2つの爪部41A、42Aなどを左右方向に沿って開く、つまりハンド40を開く処理が実行される。ステップS102およびS103は、実行順を逆にしたり、同時に実行したり、することができる。
【0023】
ステップS104では、ハンド40を下方向に移動させる、つまりハンド40を対象ワークに向けて下降させる処理が実行される。ステップS105では、2つの爪部41A、42Aなどを左右方向に沿って閉じる、つまりハンド40を閉じることにより載置部43A、44Aなどに対象ワークを載せる処理が実行される。ステップS106では、3つのワーク30の全てをハンド40により把持したか否かが判断される。ここで、3つのワーク30の全てをハンド40により把持していない場合、ステップS106で「NO」となり、ステップS101に戻る。一方、3つのワーク30の全てをハンド40により把持している場合、ステップS106で「YES」となり、ステップS107に進む。
【0024】
ステップS107では、配置場所の上空の位置にハンド40を移動させる処理が実行される。ステップS108では、ハンド40を下方向に移動させる、つまりハンド40を配置場所に向けて下降させる処理が実行される。ステップS109では、2つの爪部41A、42Aなどを左右方向に沿って開く、つまりハンド40を開くことにより配置場所に対象ワークを置く処理が実行される。ステップS109の実行後、本処理が終了となる。
【0025】
制御装置50により第1処理がされる場合、
図11に示すような一連の動作によりワーク30の段積みが行われる。なお、
図11では、ハンド40として第1構成例のハンド40Aを採用した場合を例示しているが、ハンド40として第2構成例のハンド40Bまたは第3構成例のハンド40Cを採用した場合についても同様の一連の動作によりワーク30の段積みが行われる。まず、
図11の1段目に示すように、1個目のワーク30aを把持する動作が行われる。ワーク30を把持する動作としては、
図11の左側から順に、「(1)対象ワークの上空にハンド40Aを移動」→「(2)ハンド40Aを開く」→「(3)ハンド40Aを対象ワークに向けて下降」→「(4)ハンド40Aを閉じることにより対象ワークを載置部43A、44Aに載せる」となる。
【0026】
続いて、
図11の2段目に示すように、2個目のワーク30bを把持する動作が行われる。その後、
図11の3段目に示すように、3個目のワーク30cを把持する動作が行われ、最後に、3個のワーク30を配置場所に置く動作が行われる。3個のワーク30を配置場所に置く動作としては、図示は省略しているが、「配置場所の上空の位置にハンド40Aを移動」→「ハンド40Aを配置場所に向けて下降」→「ハンド40Aを開く」となる。これにより、3つのワーク30が段積みの状態で配置場所に配置される。
【0027】
[2]第4構成例に対応する第2処理の内容
ハンド40として第4構成例のハンド40Dを採用した場合、制御装置50は、
図12に示すような内容の第2処理を実行することができる。第2処理は、載置部43D、44Dの先端が上方向にだけ倒れる構造であることを利用してハンド40Dが把持するワーク30を追加していく方法を実現する処理である。第2処理は、
図10に示した第1処理に対し、ステップS103、S105が省かれている点が異なっている。この場合、ステップS102およびS104が把持処理に対応する処理であり、ステップS107、S108およびS109が配置処理に対応する処理である。
【0028】
第2処理では、ステップS102の実行後にステップS104が実行される。この場合、ステップS104が実行されることにより、ハンド40Dの先端が取得場所の平面に到達するまで下降すると、ハンド40Dの先端の載置部43D、44Dが上方向に倒れることによりハンド40Dの内側に対象ワークが入る。その後、ハンド40Dの先端の載置部43D、44Dが元の状態に戻ることにより載置部43D、44Dに対象ワークが載せられた状態となる。この場合、ステップS104は、ハンド40Dを下方向に移動させることにより載置部43D、44Dに対象ワークを載せる処理に相当する。
【0029】
ハンド40として第4構成例のハンド40Dを採用するとともに制御装置50により第2処理が実行される場合、
図13に示すような一連の動作によりワーク30の段積みが行われる。まず、
図13の1段目に示すように、1個目のワーク30aを把持する動作が行われる。ワーク30を把持する動作としては、
図13の左側から順に、「(1)対象ワークの上空にハンド40Dを移動」→「(2)ハンド40Dを対象ワークに向けて下降させてハンド40Dの内側に対象ワークを入れる」→「(3)載置部43D、44Dが元の状態に戻ることにより載置部43D、44Dに対象ワークを載せる」となる。
【0030】
続いて、
図13の2段目に示すように、2個目のワーク30bを把持する動作が行われる。その後、
図13の3段目に示すように、3個目のワーク30cを把持する動作が行われ、最後に、3個のワーク30を配置場所に置く動作が行われる。ワーク30を配置場所に置く動作としては、図示は省略しているが、「配置場所の上空の位置にハンド40Dを移動」→「ハンド40Dを配置場所に向けて下降」→「ハンド40Dを開く」となる。これにより、3つのワーク30が段積みの状態で配置場所に配置される。
【0031】
[3]第5構成例に対応する第3処理の内容
ハンド40として第5構成例のハンド40Eを採用した場合、制御装置50は、
図14に示すような内容の第3処理を実行することができる。第3処理は、載置部43E~45Eにワークを載せるとともにその載置部43E~45Eを上昇させることによりハンド40Eが把持するワーク30を追加していく方法を実現する処理である。
【0032】
第3処理は、
図10に示した第1処理に対し、ステップS103が省かれている点、ステップS105に代えてステップS201、S202が設けられている点、ステップS109に代えてステップS203が設けられている点などが異なっている。この場合、ステップS102、S104、S201およびS202が把持処理に対応する処理であり、ステップS107、S108およびS203が配置処理に対応する処理である。
【0033】
ステップS201は、ステップS104の後に実行される。ステップS201では、ハンド40Eを左右方向のうち対象ワークに向かう方向である右方向に移動させる処理が実行されることにより、対象ワークの下に載置部43Eなどが入れられる、つまり対象ワークが載置部43Eなどに載せられる。この場合、ステップS104およびS201は、ハンド40Eを下方向に移動させるとともに左右方向に移動させることにより載置部43E~45Eのいずれかに対象ワークを載せる処理に相当する。
【0034】
続くステップS202では、対象ワークを載せた載置部43E~45Eのいずれかを上方向に移動させる、つまり対象ワークを載せた載置部43E~45Eのいずれかを上昇させる処理が実行される。ステップS202の実行後にはステップS106が実行される。ステップS203は、ステップS108の後に実行される。ステップS203では、配置場所に対象ワークを置くための処理、具体的には、ハンド40Eを上下方向に対して傾ける処理、または、載置部43E~45Eを左右方向に移動させることによりハンド40Eから引き抜く処理が実行される。ステップS203の実行後、本処理が終了となる。
【0035】
ハンド40として第5構成例のハンド40Eを採用するとともに制御装置50により第3処理が実行される場合、
図15に示すような一連の動作によりワーク30の段積みが行われる。まず、
図15の1段目に示すように、1個目のワーク30aを把持する動作が行われる。ワーク30を把持する動作としては、
図15の左側から順に、「(1)対象ワークの上空にハンド40Eを移動」→「(2)ハンド40Eを対象ワークに向けて下降」→「(3)ハンド40Eを右方向に移動させて対象ワークの下に載置部43E~45Eのいずれかを入れる」→「対象ワークを載せた載置部43E~45Eのいずれかを上昇」となる。
【0036】
続いて、
図15の2段目に示すように、2個目のワーク30bを把持する動作が行われる。その後、
図15の3段目に示すように、3個目のワーク30cを把持する動作が行われ、最後に、3個のワーク30を配置場所に置く動作が行われる。ワーク30を配置場所に置く動作としては、一部の図示は省略しているが、「配置場所の上空の位置にハンド40Eを移動」→「ハンド40Eを配置場所に向けて下降」→「(X)ハンド40Eを傾ける」または「(Y)載置部43E~45Eを引き抜く」となる。これにより、3つのワーク30が段積みの状態で配置場所に配置される。
【0037】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の段積みシステム10は、ロボットアーム20を用いて互いに離れた取得場所に置かれた複数のワーク30を所定の配置場所に段積みするシステムである。段積みシステム10は、ワーク30を把持するためのハンド40が先端に取り付けられたロボットアーム20と、ロボットアーム20の動作を制御する制御装置50と、を備える。ハンド40は、複数のワーク30を多段に積み重ねた状態で同時に全てを把持することができる構造となっている。制御装置50は、ロボットアーム20の先端を取得場所の近傍に移動させて複数のワーク30のそれぞれをハンド40により1個ずつ把持する把持処理と、把持処理を繰り返し実行することにより複数のワーク30の全てをハンド40により把持した後、ロボットアーム20の先端を配置場所の近傍に移動させて複数のワーク30の全てを多段に積み重ねた状態を維持しつつ配置場所に置く配置処理と、を実行する。
【0038】
このようにすれば、ワーク30を1個ずつ仮置きする通常の動作の流れによる段積みに比べ、ロボットアーム20のアーム先端21の移動距離が短く抑えられることから、段積みに係るサイクルタイムを大幅に短縮することができる。以下、このような本実施形態により得られる効果について、
図16および
図17を参照して詳細に説明する。なお、以下では、ワーク30を1個ずつ仮置きする通常の動作の流れによる段積みのことを比較例による段積みと称することがある。
図16および
図17では、ロボットアーム20のアーム先端21の初期位置を白抜きの丸印で表すとともに、アーム先端21のおおまかな動作軌跡を矢印で表している。
【0039】
比較例による段積みでは、
図16に示すように、ロボットアーム20のアーム先端21は、「初期位置」→「1個目のワーク30aの取得場所」→「配置場所」→「2個目のワーク30bの取得場所」→「配置場所」→「3個目のワーク30cの取得場所」→「配置場所」という順で移動する。これに対し、本実施形態の段積みでは、
図17に示すように、ロボットアーム20のアーム先端21は、「初期位置」→「1個目のワーク30aの取得場所」→「2個目のワーク30bの取得場所」→「3個目のワーク30cの取得場所」→「配置場所」という順で移動する。
【0040】
図16および
図17に示すように、本実施形態の段積みによれば、比較例による段積みに比べ、ロボットアーム20のアーム先端21の移動距離が短く抑えられる。具体的には、本実施形態による段積みによれば、比較例による段積みに比べ、主に配置場所から取得場所へと戻るための移動距離に相当する距離だけアーム先端21の移動距離が短く抑えられ、その結果、そのような移動に係る時間だけサイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0041】
ハンド40として第1~第3構成例のうちいずれかを採用するとともに制御装置50により第1処理が実行されるようにすれば、ハンド40は、開閉動作だけを実行可能な構成であればよいことから、その構造が簡単なものでよく、ハンド40として比較的安価なものを採用することができ、コスト低減の効果が得られる。
【0042】
ハンド40として第4構成例を採用するとともに制御装置50により第2処理が実行されるようにすれば、ワーク30を把持するときにハンド40の開閉動作が不要となることから、段積みに係るサイクルタイムの更なる短縮が可能となる。
【0043】
ハンド40として第1構成例のハンド40Aまたは第4構成例のハンド40Dを採用する場合、ハンド40として第2構成例のハンド40Bまたは第3構成例のハンド40Cを採用する場合に対し、次のような利点がある。すなわち、
図18に示すように、ハンド40Bは、載置部43B、44Bの厚みがワーク30の厚みと同程度またはワーク30の厚みに比べて大きくなっている。なお、図示は省略するが、ハンド40Cについても、ハンド40Bと同様である。
【0044】
これに対し、
図19に示すように、ハンド40Aは、載置部43A、44Aの厚みがワーク30の厚みに比べて小さくなっている。なお、図示は省略するが、ハンド40Dについても、ハンド40Aと同様である。このように、ハンド40Aの載置部43A、44Aの厚みは、ハンド40Bの載置部43B、44Bの厚みに比べて薄くなっている。
【0045】
載置部43B、44Bの厚みが相対的に厚いハンド40Bなどによれば、
図18に示すように、2個目以降のワーク30を把持するためにハンド40Bを開くとき、既に保持していたワーク30のうち最も下側のワーク30bの下側の主面32と、これから把持するワーク30cの上側の主面31とが大きく離間した状態となることから、既に把持していたワーク30が比較的高い位置から落下してワーク30に衝撃が加わってしまう。
【0046】
これに対し、載置部43A、44Aの厚みが相対的に薄いハンド40Aによれば、
図19に示すように、2個目以降のワーク30を把持するためにハンド40Aを開くとき、既に保持していたワーク30のうち最も下側のワーク30bの下側の主面32と、これから把持するワーク30cの上側の主面31とが接近した状態となることから、既に把持していたワーク30が比較的高い位置から落下することがなく、ワーク30に衝撃が加わることはない。このように、ハンド40として第1構成例のハンド40Aまたは第4構成例のハンド40Dを採用すれば、2個目以降のワーク30を把持するときに既に把持していたワーク30が落下してワーク30に衝撃を与えることが防止される。
【0047】
<ハンドの構成に関する変形例>
ハンド40の構成については、ワーク30を把持した状態でロボットアーム20の先端を移動させる際、つまりワーク30の搬送中におけるワーク30の落下を防止するための機構を追加するといった変形が可能である。このような変形の一例について、
図20~
図22を参照して説明する。
図20および
図21に示すように、本変形例のハンド40Fは、第1構成例のハンド40Aに対し、4つの支持部46、47、48、49が追加されている。
【0048】
支持部46~49は、いずれも矩形の板状の部材により構成されている。
図21に示すように、支持部46~49は、ワーク30を把持した状態においてワーク30の主面の除く面である4つの側面33のうちの2つを支持するように設けられている。なお、側面33のうち残りの2つはハンド40Fの爪部41A、42Aにより支持される。本変形例のハンド40Fによれば、ワーク30を把持した状態において支持部46~49を含めたハンド40Fの構成部材によりワーク30の四方が覆われるため、ワーク30の搬送中にワーク30が落下することが防止される。
【0049】
また、本変形例のハンド40Fによれば、ハンド40Fの構造によってワーク30を把持するだけでワーク30が四方から押さえつけられるため、3つのワーク30を均一に整えることが可能となり、その結果、3つのワーク30を揃えた状態で段積みすることができる。さらに、本変形例のハンド40Fによれば、全てのワーク30を把持したとき、
図22の左側に示すようにワーク30同士が多少ずれた状態になっていたとしても、その状態でロボットアーム20の先端を配置場所の上空の位置まで移動させるときに配置場所の上空の位置で急停止させることにより、ワーク30に慣性力が働くことで、
図22の右側に示すように3つのワーク30を確実に揃えた状態として段積みすることができる。
【0050】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0051】
ロボットアーム20としては、水平多関節型ロボットとして構成されたものに限らずともよく、例えば6軸または7軸のアームを有する垂直多関節型ロボットとして構成されたものなど、各種のロボットアームを用いることができる。
【0052】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0053】
10…段積みシステム、20…ロボットアーム、30、30a、30b、30c…ワーク、31、32…主面、33…側面、40、40A、40B、40C、40D、40E、40F…ハンド、41A、41B、41C、41D、41E、42A、42B、42C、42D…爪部、43A、43B、43C、43D、43E、44A、44B、44C、44D、44E、45E…載置部、46、47、48、49…支持部、50…制御装置。