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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025056527
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】電力変換装置とその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20250401BHJP
   G05F 1/10 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H02M7/12 H
G05F1/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166057
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】長野 昌明
(72)【発明者】
【氏名】谷野 光平
【テーマコード(参考)】
5H006
5H410
【Fターム(参考)】
5H006AA05
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC05
5H006FA00
5H006GA04
5H410BB01
5H410BB04
5H410CC03
5H410FF03
5H410FF26
5H410LL01
5H410LL20
(57)【要約】
【課題】負荷装置からのリモートセンス線を電力変換装置に逆極性で接続しても、その接続状態を検出して電力変換装置からの出力を停止させる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置(2)は、交流電圧を直流電圧に変換して電源線(LP,LN)を介して負荷(3)に出力するインバータ装置(10)を含む。前記電力変換装置(2)は、前記負荷(3)に接続されたリモートセンス線(SP,SN)をセンス端子(T3,T4)に接続して前記電源線(LP,LN)の配線抵抗(R1,R2)に係る電圧降下を補償するように前記負荷の電圧を制御する制御回路(15)と、前記負荷(3)に接続されたリモートセンス線(SP,SN)をセンス端子(T3,T4)に逆極性で誤接続したことを検出して前記インバータ装置(10)からの直流電圧の出力を停止させる逆接続検出回路(20)とを備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ装置を含む電力変換装置であって、
前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に接続して前記電源線の配線抵抗に係る電圧降下を補償するように前記負荷の電圧を制御する制御回路と、
前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出して前記インバータ装置からの直流電圧の出力を停止させる逆接続検出回路と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記逆接続検出回路は、
前記リモートセンス線のアノードセンス端子に接続されたフォトカップラのダイオードと、
前記ダイオードに接続された直列回路であって、抵抗及びツェナーダイオードを含む直列回路と、
を備え、
前記ダイオードの極性と、前記ツェナーダイオードの極性は互いに逆極性となるように、前記ダイオードと前記ツェナーダイオードは前記抵抗を介して接続された、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記インバータ装置は、発振器からの駆動用発振信号に基づいて、交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ回路を含み、
前記逆接続検出回路は、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出したときに、前記発振器による駆動用発振信号の発生を停止し、前記インバータ回路からの直流電圧の出力を停止させる、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記インバータ装置は、交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ回路を含み、
前記逆接続検出回路は、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出したときに、前記インバータ回路による直流電圧の発生を停止し、もしくは、前記インバータ回路からの直流電圧の出力を停止させる、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記インバータ装置は、
交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路の前段に設けられ、交流電圧を直流電圧に変換するAC-DCコンバータとを含み、
前記逆接続検出回路は、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出したときに、前記AC-DCコンバータによる直流電圧の発生を停止し、もしくは、前記AC-DCコンバータからの直流電圧の出力を停止させる、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ装置を含む電力変換装置の制御方法であって、
制御回路が、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に接続して前記電源線の配線抵抗に係る電圧降下を補償するように前記負荷の電圧を制御するステップと、
逆接続検出回路が、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出して前記インバータ装置からの直流電圧の出力を停止させるステップと、
を含む電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
前記電力変換装置の制御方法は、
前記インバータ装置が、発振器からの駆動用発振信号に基づいて、交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するステップと、
前記逆接続検出回路が、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出したときに、前記発振器による駆動用発振信号の発生を停止し、前記インバータ装置からの直流電圧の出力を停止させるステップと、
を含む請求項6に記載の電力変換装置の制御方法。
【請求項8】
前記インバータ装置は、交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ回路を含み、
前記電力変換装置の制御方法は、
前記逆接続検出回路が、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出したときに、前記インバータ回路による直流電圧の発生を停止し、もしくは、前記インバータ回路からの直流電圧の出力を停止させるステップを、
含む請求項6に記載の電力変換装置の制御方法。
【請求項9】
前記インバータ装置は、
交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路の前段に設けられ、交流電圧を直流電圧に変換するAC-DCコンバータとを含み、
前記電力変換装置の制御方法は、
前記逆接続検出回路が、前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出したときに、前記AC-DCコンバータによる直流電圧の発生を停止し、もしくは、前記AC-DCコンバータからの直流電圧の出力を停止させるステップを、
含む請求項6に記載の電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインバータ装置を備え、リモートセンス線を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばインバータ装置を備えたスイッチング電源装置において、リモートセンス線を用いた下記のリモートセンシング機能が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スイッチング電源装置の出力端子において出力電圧安定度が良好でも、スイッチング電源装置から負荷までの距離が長くなると、負荷の変動により出力ラインに電圧降下が生じ、負荷端子での電圧安定度が悪化する。この現象を防止するために、リモートセンシング機能は、実際の負荷端子で出力電圧を検出するようにして、電源装置と負荷とを接続したリード配線の線間電圧降下を補償するものである。
【0004】
具体的には、電圧降下により出力電圧より低くなった供給電圧をリモートセンシング機能によりフィードバックし、供給電圧が規定値より高い場合は、スイッチング電源装置内のコンバータPWM制御のデューティ比を減少させる一方、供給電圧が規定値より低い場合は、スイッチング電源装置内のコンバータPWM制御のデューティ比を増大させる。このように制御することで、出力電圧を規定値に補正することで、出力電圧の安定化をはかれるという効果を有する。
【0005】
図5は特許文献1において開示された従来例に係る電源回路の構成を示すブロック図である。負荷側の異常に対する電源回路の保護を十分に行える電源回路を提供するために、図5の電源回路が開示され、特に、DC-DCコンバータ60と、DC-DCコンバータ60を保護するリモートセンス保護回路50とを有する電源回路において、DC-DCコンバータ60の負荷70側に異常が発生した際に、DC-DCコンバータ60とリモートセンス保護回路50とを切り離す手段であるリレースイッチ53を備えたことを特徴としている。
【0006】
図5の電源回路は、例えば電子機器である負荷70に出力電圧Voを供給するDC-DCコンバータ60と、リモートセンス保護回路50とを備える。ここで、リモートセンス保護回路50は、負荷70側の異常を検出するための検出回路51とDC-DCコンバータ60(電源回路)にフィードバックする参照電圧を決定するフィードバック回路52から構成される。検出回路51はDC-DCコンバータ60の出力電圧Voと負荷70側供給電圧Vrsを比較し、負荷側の異常を検出する。フィードバック回路52は検出回路51からの情報を参照して選択的に自動で電源回路フィードバック系に返す参照電圧Vsenceを決定する。ここで、検出回路51の比較回路に入力される出力電圧Voと負荷への供給電圧Vrsとを常時比較し、Vrs>Voの時を異常動作とする。異常の際には供給電圧Vrsをリレースイッチ53により切り離し、出力電圧VoをDC-DCコンバータ60にフィードバックし、検出回路51で低い方の値を参照電圧VsenceとしてDC-DCコンバータ60にフィードバックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-194960号公報
【特許文献2】特許第5630832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、負荷装置からのリモートセンス線を逆極性でスイッチング電源装置に接続すると、リモートセンス電圧が出力電圧よりも大幅に小さいと誤判断し、出力電圧が大幅に増大してスイッチング電源装置が破損する場合があるという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、負荷装置からのリモートセンス線を、スイッチング電源装置などの電力変換装置に逆極性で接続しても、その接続状態を検出して電力変換装置からの出力を停止させることができる電力変換装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る電力変換装置は、
交流電圧を直流電圧に変換して電源線を介して負荷に出力するインバータ装置を含む電力変換装置であって、
前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に接続して前記電源線の配線抵抗に係る電圧降下を補償するように前記負荷の電圧を制御する制御回路と、
前記負荷に接続されたリモートセンス線をセンス端子に逆極性で誤接続したことを検出して前記インバータ装置からの直流電圧の出力を停止させる逆接続検出回路と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
従って、本発明の一態様に係る電力変換装置によれば、負荷装置からのリモートセンス線を電力変換装置に逆極性で接続しても、その接続状態を検出して電力変換装置からの出力を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】実施形態に係るスイッチング電源装置の構成例を示すブロック図である。
図1B】変形例1に係るスイッチング電源装置の構成例を示すブロック図である。
図1C】変形例2に係るスイッチング電源装置の構成例を示すブロック図である。
図1D】変形例3に係るスイッチング電源装置の構成例を示すブロック図である。
図2】比較例1に係るスイッチング電源装置の構成を示すブロック図である。
図3】比較例2に係るスイッチング電源装置の構成を示すブロック図である。
図4図3のスイッチング電源装置において負荷装置からのリモートセンス線をスイッチング電源装置に逆極性で誤接続したときのブロック図である。
図5】従来例に係る電源回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態及び変形例について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0014】
(発明者の知見)
図2は比較例1に係るスイッチング電源装置2Aの構成を示すブロック図である。図2のスイッチング電源装置2Aは、インバータ装置10と、整流回路16と、電解キャパシタCs及びインダクタLsを含む平滑回路17と、正極の出力端子T1(+)及び負極の出力端子T2(-)とを備えて構成される。インバータ装置10は交流電源1からの交流電圧をスイッチングすることで所定の交流電圧を発生した後、整流回路16及び平滑回路17を介して所定の直流電圧を得る。当該直流電圧は、一対の電源線LP,NPを介して例えば抵抗ROの負荷3に出力される。なお、R1,R2は電源線LP,NPの配線の抵抗であり、他の図1A図1D図3図4においても同じである。
【0015】
図2の比較例1で示すように、スイッチング電源装置2Aから離れた抵抗R0の負荷3に10Aの電流を流したとき、スイッチング電源装置2A本体から離れており、電源線LP,NPの合計で往復0.2Ω(=R1+R2)の抵抗値を持ったとき、スイッチング電源装置2Aの出力端子T1,T2の電圧と、負荷3の電圧とを比較すると、26V-24V=2Vの電圧降下が発生する。
【0016】
図3は比較例2に係るスイッチング電源装置の構成を示すブロック図である。図2の電圧降下を防止するために、リモートセンシング機能を用いて、負荷3の両端電圧をリモートセンス線SP,SN及び正極のセンス端子T3(+S),負極のセンス端子T4(-S)を介してリモートセンス回路18がリモートセンス電圧Vrsとして検出する。そして、リモートセンス回路18は、リモートセンス電圧Vrsに基づいて、図3に示すように、電圧降下した電圧分を補償して出力電圧Voを補正するようにインバータ装置10を制御する。ここで、SPは正極のリモートセンス線であり、NPは負極のリモートセンス線である。また、センス端子T3には+Sの表示があり、センス端子T4には-Sの表示がある。
【0017】
しかしながら、リモートセンス線SP,SNはユーザがセンス端子T3(+S),T4(-S)に手動で接続するため、当該リモートセンス線SP,SNの接続を間違える場合がある。
【0018】
図4図3のスイッチング電源装置2Bにおいて負荷装置からのリモートセンス線SP,SNをスイッチング電源装置2Bのセンス端子T3(+S),T4(-S)に、逆極性で誤接続したときのブロック図である。図4のように誤接続した場合、リモートセンス回路18は、負荷電圧Vorに基づくリモートセンス電圧Vrsが出力電圧Voよりも大幅に小さいと誤判断し、出力電圧Voが大幅に増大してスイッチング電源装置2Bが破損する場合があるという問題点があった。本発明に係る実施形態の目的はこの問題点を解決することにある。
【0019】
(実施形態)
図1Aは実施形態に係るスイッチング電源装置2の構成例を示すブロック図である。図1Aのスイッチング電源装置2は、インバータ装置10と、整流回路16と、平滑回路17と、リモートセンス回路18と、正極の出力端子T1(+)及び負極の出力端子T2(-)と、逆接続検出回路20とを備えて構成される。ここで、インバータ装置10は、AC-DCコンバータ11と、平滑回路12と、PWMインバータ回路13と、発振器14と、制御回路15とを備えて構成される。また、逆接続検出回路20は、フォトカップラ21と、停止信号発生器22と、抵抗R3と、ツェナーダイオードZDとを備えて構成される。
【0020】
図1Aのインバータ装置10において、AC-DCコンバータ11は交流電源1からの交流電圧をスイッチングすることで所定の交流電圧を発生した後、整流することで、所定の整流電圧を発生する。当該整流電圧は平滑回路12により平滑されて所定の直流電圧に変換された後,PWMインバータ回路13に入力される。発振器14は、インバータ装置10の起動時に発振を開始して駆動用発振信号を発生してPWMインバータ回路13に出力する。PWMインバータ回路13は、平滑回路12から入力される直流電圧を、発振器14からの駆動用発振信号に同期してPWM電圧を発生した後、整流回路16及び平滑回路17を介して直流出力電圧Voを発生する。直流出力電圧Voは電源線LP,LNを介して負荷3に出力される。制御回路15は、PWMインバータ回路13の出力電圧を検出して、所定の出力電圧となるようにPWM信号の時間幅を制御する。
【0021】
負荷3の負荷電圧Vorはリモートセンス線SP,SNを介してリモートセンス回路18にリモートセンス電圧Vrsとしてフィードバックされる。リモートセンス回路18は、そして、リモートセンス回路18は、リモートセンス電圧Vrsに基づいて、電源線LP,LNにより電圧降下した電圧分を補償して所定の出力電圧Voを出力するように補正するように制御回路15を介してPWMインバータ回路13を制御する。
【0022】
図1Aの逆接続検出回路20において、センス端子T3はリモートセンス電圧Vrsのアノードセンス端子であって、フォトカップラ21のダイオードD1のカソードに接続され、ダイオードD1のアノードは抵抗R3及びツェナーダイオードZDを介して出力端子T1に接続される。ここで、ダイオードD1の極性と、ツェナーダイオードZDの極性は互いに逆極性となるように、ダイオードD1とツェナーダイオードZDは互いに抵抗R3を介して直列に接続される。フォトカップラ21のダイオードD1は、逆接続時の誘起電圧Vds(リモートセンス電圧)を検出するために設けられる。また、センス端子T4はリモートセンス電圧Vrsのカソードセンス端子であって、接地される。なお、抵抗R3とツェナーダイオードZDの直列回路において、直列に接続された抵抗R3とツェナーダイオードZDの位置を入れ替えてもよい。
【0023】
ここで、抵抗R3の抵抗値及びツェナーダイオードZDのツェナー電圧はフォトカップラ21のダイオードD1における誘起電圧Vdsを検出できる電圧範囲(電源線LP,LNの電圧降下に対応する電圧範囲に対応する)を規定する。リモートセンス電圧Vrsは次式で表される。
【0024】
Vrs=Vo+Vdr+Vds+VR2 (1)
【0025】
ここで、VdrはツェナーダイオードZDのツェナー電圧に抵抗R3の電圧降下分を加算した電圧であり、VR2は抵抗R2の電圧降下分である。従って、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧及び抵抗R3の抵抗値の設定値を変更することで、逆極性での誤接続の検出電圧範囲を変更することができる。
【0026】
前記(1)式から次式を得る。
【0027】
Vds+Vdr=Vrs-Vo-VR2 (2)
【0028】
ここで、端子T1から見た端子T3の電位差がVds+Vdrの電位を下回れば、ダイオードD1は発光し、フォトトランジスタTR1はその発光光を受光し、所定のHレベル信号を停止信号発生器22に出力する。一方、端子T1から見た端子T3の電位差がVds+Vdrの電位以上であれば、ダイオードD1は発光せず、所定のLレベル信号を停止信号発生器22に出力する。停止信号発生器22は入力されるHレベル信号に応答してLレベルの発振停止信号を出力する一方、入力されるLレベル信号に応答してHレベルの発振停止信号を出力する。ここで、端子T1から見た端子T3の電位差がVds+Vdrの電位を下回るときは、例えば上述のように、ユーザが、スイッチング電源装置2において負荷装置からのリモートセンス線SP,SNをスイッチング電源装置2のセンス端子T3(+S),T4(-S)に、逆極性で誤接続したときである。
【0029】
発振器14は上述のように、インバータ装置10の起動時に発振動作をするが、Lレベルの発振停止信号に応答してその発振出力を停止し、PWMインバータ回路13への発振信号の供給を停止する。これにより、PWMインバータ回路13はPWM電圧の出力を停止し、スイッチング電源装置2からの直流電圧の出力は停止される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、逆接続検出回路20を備えたので、例えば上述のように、ユーザが、スイッチング電源装置2において負荷装置からのリモートセンス線SP,SNをスイッチング電源装置2のセンス端子T3(+S),T4(-S)に、逆極性で誤接続したときであっても、センス端子T3のリモートセンス電圧Vrsに基づいて、前記逆極性で誤接続を検出して、PWMインバータ回路13への発振信号の発生を停止させる。これにより、スイッチング電源装置2からの直流電圧の出力を緊急に停止させることができる。
【0031】
従って、リモートセンス線SP,SNを逆極性でセンス端子T3,T4に接続しても、スイッチング電源装置2は破壊されない。それ故、ユーザは、リモートセンス線SP,SNを正しくセンス端子T3,T4に接続することができる。
【0032】
また、本実施形態では、逆接続検出回路20による逆極性での接続を検出したときに、インバータ装置10の発振器14の発振信号の発生を停止させているので、インバータ装置10の起動時においてPWMインバータ回路13の出力電圧を発生させる前に、インバータ装置10の動作を停止させることができる。
【0033】
(変形例1)
図1Bは変形例1に係るスイッチング電源装置の構成例を示すブロック図である。図1Bにおいて、変形例1に係るスイッチング電源装置は、図1Aの実施形態に係るスイッチング電源装置に比較して以下の点が異なる。
(1)停止信号発生器22からの発振停止信号は発振器14に代えて、PWMインバータ回路13に入力される。PWMインバータ回路13はLレベルの発振停止信号に応答して、PWMインバータ回路13の動作を停止し、もしくは、PWMインバータ回路13からの出力電圧の出力動作を停止し、これにより、インバータ装置10の出力電圧の出力動作を停止する。なお、PWMインバータ回路13はHレベルの発振停止信号に応答して、PWMインバータ回路13の動作を継続し、もしくは、PWMインバータ回路13からの出力電圧の出力動作を継続する。以上のように構成された変形例1でも、実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
(変形例2)
図1Cは変形例2に係るスイッチング電源装置の構成例を示すブロック図である。図1Cにおいて、変形例2に係るスイッチング電源装置は、図1Aの実施形態に係るスイッチング電源装置に比較して以下の点が異なる。
(1)停止信号発生器22からの発振停止信号は発振器14に代えて、制御回路15に入力される。制御回路15はLレベルの発振停止信号に応答してPWMインバータ回路13を制御することで、PWMインバータ回路13の動作を停止し、もしくは、PWMインバータ回路13からの出力電圧の出力動作を停止し、これにより、インバータ装置10の出力電圧の出力動作を停止する。なお、制御回路15はHレベルの発振停止信号に応答してPWMインバータ回路13を制御することで、PWMインバータ回路13の動作を継続し、もしくは、PWMインバータ回路13からの出力電圧の出力動作を継続する。以上のように構成された変形例2でも、実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
(変形例3)
図1Dは変形例3に係るスイッチング電源装置の構成例を示すブロック図である。図1Dにおいて、変形例3に係るスイッチング電源装置は、図1Aの実施形態に係るスイッチング電源装置に比較して以下の点が異なる。
(1)停止信号発生器22からの発振停止信号は発振器14に代えて、AC-DCコンバータ11に入力される。AC-DCコンバータ11はLレベルの発振停止信号に応答して、AC-DCコンバータ11の動作を停止し、もしくは、AC-DCコンバータ11からの出力電圧の出力動作を停止することで、インバータ装置10からの出力電圧の出力動作を停止する。なお、AC-DCコンバータ11はHレベルの発振停止信号に応答して、AC-DCコンバータ11の動作を継続し、もしくは、AC-DCコンバータ11からの出力電圧の出力動作を継続する。以上のように構成された変形例3でも、実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
(他の変形例)
以上の実施形態においては、交流電圧を直流電圧に変換するスイッチング電源装置について説明したが、本発明はこれに限らず、交流電流等の交流電力を、直流電流等の直流電力に変換するスイッチング電源装置に適用してもよい。
【0037】
以上の実施形態においては、インバータ装置10はPWMインバータ回路13を備えているが、本発明はこれに限らず、他の種類のインバータ回路を備えてもよい。
【0038】
以上の実施形態においては、スイッチング電源装置2について説明しているが、本発明はこれに限らず、駆動用発振信号により電力変換を行うインバータ回路を含む電力変換装置に広く適用することができる。
【0039】
以上の実施形態においては、逆接続検出回路20による逆極性での接続を検出したときに、インバータ装置10の発振器14の発振信号の発生を停止させて、インバータ装置10からの直流電圧の出力を停止させているが、本発明はこれに限らず、逆接続検出回路20による逆極性での接続を検出したときに、インバータ装置10からの直流電圧の出力を停止させてもよい。
【0040】
(本発明と特許文献2との相違点)
特許文献2に係る発明の目的は、電池極性が逆の場合でも障害の発生を防止しうる充放電制御装置等を提供することにある。当該充放電制御装置は、電池ボックスに嵌挿された二次電池の電圧極性を検出する電圧検出線と、前記二次電池の充電電流または放電電流を伝送する負荷線とを備える。ここで、前記電圧検出線により検出された前記二次電池の極性と、前記負荷線により検出された前記二次電池の極性とが、一致する場合には、充放電試験プログラムの放電試験を遂行し、前記電圧検出線により検出された前記二次電池の極性と、前記負荷線により検出された前記二次電池の極性とが、一致しない場合には、充放電試験プログラムの放電試験を遂行しないことを特徴としている。
【0041】
すなわち、特許文献2に係る発明は、例えばバッテリなどの二次電池にて発生した電圧を検出し、リモートセンス線のセンス端子への逆極性での接続を検出すると、リレースイッチで接続を切り替えて、内部回路を保護するように構成されている。
【0042】
これに対して、本実施形態では、スイッチング電源装置2の逆接続検出回路20が、前記リモートセンス線の逆接続により誤検出を行い、インバータ装置10が直流電圧を出力する前に停止するので、特許文献2に係る発明とは全く異なる。
【0043】
言い換えれば、特許文献2に係る発明では、二次電池により出力電圧がすでに発生しており、前記リモートセンス線の逆接続の誤検出時に前記出力電圧の出力を停止させるものではない。これに対して、本実施形態では、前記リモートセンス線の逆接続の誤検出時に前記出力電圧の出力を停止させる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように、本発明によれば、負荷装置からのリモートセンス線を電力変換装置に逆極性で接続しても、その接続状態を検出して電力変換装置からの出力を停止させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 交流電源
2 スイッチング電源装置
3 負荷
10 インバータ装置
11 AC-DCコンバータ
12 平滑回路
13 PWMインバータ回路
14 発振器
15 制御回路
16 整流回路
17 平滑回路
20 逆接続検出回路
21 フォトカップラ
22 停止信号発生器
50 リモートセンス保護回路
51 検出回路
52 フィードバック回路
53 リレースイッチ
60 DC-DCコンバータ
70 負荷(電子機器)
Cs 電解キャパシタ
Ls インダクタ
LP,LN 電源線
R1~R3 抵抗
SP,SN リモートセンス線
T1,T2 出力端子
T3,T4 センス端子
ZD ツェナーダイオード
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5