IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アース製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-共凝集抑制剤及び共凝集抑制方法 図1
  • 特開-共凝集抑制剤及び共凝集抑制方法 図2
  • 特開-共凝集抑制剤及び共凝集抑制方法 図3
  • 特開-共凝集抑制剤及び共凝集抑制方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025056570
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】共凝集抑制剤及び共凝集抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/11 20060101AFI20250401BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20250401BHJP
   A61K 8/9741 20170101ALI20250401BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
A61K36/11
A61P1/02
A61K8/9741
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166124
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】新居 沙織
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC622
4C083AD532
4C083CC41
4C083EE33
4C088AA18
4C088AC01
4C088BA08
4C088CA08
4C088NA14
4C088ZA67
(57)【要約】
【課題】歯面での歯周病関連細菌の共凝集を抑制することによって歯周病関連細菌の歯面への付着・定着を防止し、歯周病関連疾患の予防・改善に有用な口腔用製剤を提供すること。
【解決手段】スギナ抽出物を有効成分として含有する歯周病関連細菌の共凝集抑制剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スギナ抽出物を有効成分として含有する歯周病関連細菌の共凝集抑制剤。
【請求項2】
前記歯周病関連細菌がフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)またはアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)である、請求項1に記載の共凝集抑制剤。
【請求項3】
スギナ抽出物を有効成分として含有する口腔用組成物を口腔内に適用して、歯周病関連細菌が共凝集することを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共凝集抑制剤及び共凝集抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、病原性細菌の歯面への付着、定着により発症へと向かう口腔内感染症である。歯周病関連細菌の歯面への定着機構は、先ず、唾液の薄膜(ペリクル)によって覆われたエナメル質表面に、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・サングィニス(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカス・ゴルドニィ(Streptococcus gordonii)、アクチノマイセス・ナエスランディ(Actinomyces naeslundii)等の初期定着細菌が吸着する。そして、これら初期定着細菌は増殖に伴って互いに共凝集を起こし、歯垢(プラーク)の形成を開始する。次いで、プラークの成熟化に伴い、微生物菌叢が通性嫌気性菌から偏性嫌気性菌へと遷移し、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)に代表される偏性嫌気性菌が初期定着細菌に共凝集する。そして、フソバクテリウム・ヌクレアタムにアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)等の歯周病関連細菌が共凝集し、定着すると考えられている。
【0003】
共凝集は、細菌同士の非特異性静電気的相互作用やレクチン・レセプター型相互作用、粘着性多糖合成による付着作用、非特異性疎水的相互作用等によって引き起こされ、病原性細菌の歯面への定着においては、特に重要な役割を果たしている。
【0004】
虫歯や歯周病の原因となる病原性細菌の歯垢への定着、繁殖を防ぐためには、細菌と細菌の共凝集を抑制することが有効であり、細菌の共凝集を抑制するための手段が種々検討されている。例えば、特許文献1には、エリスリトールを含む口腔細菌の共凝集抑制剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-8579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エリスリトールは糖アルコールの一種であって、一般的には甘味料として知られる成分であるので、エリスリトールを共凝集抑制剤として配合した口腔用組成物は甘い味になることから、甘さが苦手な使用者には使いづらいものであった。また、甘味料はう蝕を想起させるため、歯周病関連細菌の共凝集抑制剤として用いる場合には、使用者に好ましくないイメージを与える懸念がある。
【0007】
そこで、本発明は、歯面での歯周病関連細菌の共凝集を抑制することによって歯周病関連細菌の歯面への付着・定着を防止し、歯周病関連疾患の予防・改善に有用な口腔用製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、スギナ抽出物に歯周病関連細菌の共凝集を抑制する効果があることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)~(3)によって達成される。
(1)スギナ抽出物を有効成分として含有する歯周病関連細菌の共凝集抑制剤。
(2)前記歯周病関連細菌がフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)またはアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)である、前記(1)に記載の共凝集抑制剤。
(3)スギナ抽出物を有効成分として含有する口腔用組成物を口腔内に適用して、歯周病関連細菌が共凝集することを抑制する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスギナ抽出物を有効成分として含有する歯周病関連細菌の共凝集抑制剤により、歯周病関連細菌の共凝集を抑制できるので、スギナ抽出物を有効成分として含有する口腔用組成物を口腔内に適用することにより、歯垢(プラーク)の形成を抑制でき、虫歯や歯周病の予防ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】試験例1で測定した対照例1、実施例1~4及び比較例1~3のOD600nmにおける吸光度を示すグラフである。
図2】試験例1の対照例1、実施例1~4及び比較例1~3の写真図である。
図3】試験例2で測定した実施例5~10と、試験例1の対照例1及び比較例1~3のOD600nmにおける吸光度を示すグラフである。
図4】試験例3で測定した対照例2及び実施例11~13及び比較例4のOD600nmにおける吸光度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について更に詳しく説明する。
【0013】
本発明の歯周病関連細菌の共凝集抑制剤(以下、単に「共凝集抑制剤」ともいう。)は、スギナ抽出物を有効成分として含有する。
スギナ抽出物は、生薬の一種であるトクサ科(Equisetaceae)トクサ属(Equisetum)の植物であるスギナ(Equisetum arvense)から得られる抽出物(植物エキス)である。
【0014】
スギナ抽出物は、スギナの全草、茎部及び/又は葉部を抽出処理することにより得てもよいが、スギナの全草を抽出処理することにより得ることが好ましく、市販品を用いてもよい。抽出によりスギナ抽出物を得る方法は、溶媒抽出、超臨界抽出、水蒸気蒸留等が挙げられる。
【0015】
溶媒抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水、アルコール類が挙げられ、アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液、もしくは1%尿素含有エタノール溶液、1%尿素含有1,3-ブチレングリコール溶液等が挙げられ、これらの溶媒により抽出して得られる抽出物を用いるのが好ましく、特に水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液により抽出して得られる抽出物を用いるのが好ましい。
【0016】
得られた抽出物は、そのままの状態で使用してもよく、乾燥させて使用してもよい。また、必要に応じて、得られた抽出物に精製、及び濃縮処理等を施してもよい。精製処理としては、例えば濾過またはイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色、及び分離といった処理を例示できる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等の常法を例示できる。また、これらに対して更に凍結乾燥等の乾燥処理を施してもよく、更に従来公知の方法に従って粉末化させてもよい。また、このようにして得た抽出物を、必要に応じて水やエタノール等に溶解して用いてもよい。
【0017】
スギナ抽出物の市販品としては、例えば、「スギナ抽出液BG」(丸善製薬株式会社製)、「スギナ抽出液」(丸善製薬株式会社製)、「すぎな抽出液」(香栄興業株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
スギナ抽出物は、1種を単独で用いてもよいし、抽出部位や抽出方法の異なるスギナ抽出物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
スギナ抽出物は、共凝集抑制剤中、固形分に換算したときに、0.00001w/v%以上含まれるように含有させるのが好ましい。共凝集抑制剤中のスギナ抽出物の含有量が固形分換算で0.00001w/v%以上であると、口腔内に適用した際に本発明の所望の効果が得られる。
スギナ抽出物の含有量は、固形分換算で0.0001w/v%以上であるのがより好ましく、0.001w/v%以上がさらに好ましい。また共凝集抑制剤中のスギナ抽出物は、固形分換算で、1w/v%以下であるのが好ましく、0.1w/v%以下がより好ましく、0.05w/v%以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の共凝集抑制剤には、本発明の効果を阻害しない範囲において、口腔用に適用される他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、溶剤、殺菌剤、抗炎症剤、歯石予防剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、色素、香料等が挙げられる。
【0021】
溶剤としては、例えば、精製水、イオン交換水等の水;エタノール等の低級一価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0022】
殺菌剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩、ヒノキチオール、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液等が挙げられる。
【0023】
抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、アミノカプロン酸及びその誘導体、アラントイン及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、アズレン、アズレンスルホン酸及びその誘導体、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、塩化リゾチーム等が挙げられる。
【0024】
歯石予防剤としては、例えば、リン酸塩、ポリリン酸塩、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、塩化亜鉛、有機酸亜鉛等が挙げられる。
【0025】
pH調整剤としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコノ-δ-ラクトン、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及びこれらの水和物等が挙げられる。
【0026】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が挙げられ、具体的には、ノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アシル化メチルタウリン塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
色素としては、例えば、青色1号、青色2号、青色201号、黄色4号、黄色5号、黄色202(1)号、黄色203号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、緑色3号、緑色201号等が挙げられる。
【0029】
香料としては、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、ユーカリ油、クローブ油、タイム油、ローズマリー油、レモン油、ジンジャー油、ライム油、カシア油、カルダモン油、ラベンダー油、シナモン油等の天然精油、L-メントール、L-カルボン、カルバクロール、オイゲノール、アネトール、1,8-シネオール、チモール、バニリン、ピネン、3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール、サリチル酸メチル等の香料成分、これらの混合物、天然香料、調合香料、合成香料等が挙げられる。
【0030】
上記した他の任意成分は、口腔内に適用したときに細菌の共凝集を促進してしまうものがある。例えば、抗炎症成分であるトラネキサム酸は細菌を共凝集させやすく、本発明の共凝集抑制剤を共に配合することで細菌同士の共凝集を起こさせ難くできるので、口腔内を清潔に保つことができ、トラネキサム酸の抗炎症効果を損なうことがない。
【0031】
本発明の共凝集抑制剤は、口腔内に存在する細菌であれば特に制限なく共凝集を抑制できるが、初期定着細菌に別の細菌が共凝集するのを効果的に抑制できる。初期定着細菌に共凝集する歯周病関連細菌として、例えば、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)タンネレラ(バクテロイデス)・フォルシチア(Tannerella (Bacteroides) forsythia)、トレポネマ・デンティコラ(Treponema denticola)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、カンピロバクター・レクタス(Campylobacter rectus)、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アクチノマイセス・ビスコーサス(Actinomyces viscosus)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、セレノモナス・スプチゲナ(Selenomonas sputigena)等が挙げられ、中でも、フソバクテリウム・ヌクレアタムまたはアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスの共凝集を好適に抑制できる。
【0032】
本発明の共凝集抑制剤は、口腔用組成物として口腔内に適用できる。製剤形態としては、例えば、液状、ジェル状、ペースト状、クリーム状、錠剤等の固形状、顆粒状や細粒等の粉末状、カプセル状、ソフトカプセル状等が挙げられる。中でも、スギナ抽出物を口腔内に均一に処理できるため、液体製剤が好ましい。液体製剤としては、例えば、うがい薬(含嗽薬とも称する。)、液体歯磨剤、洗口液、マウススプレー等が挙げられる。
【0033】
なお、本明細書において、「液体」とは、流動性を有しており、20℃における粘度が20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下であるものをいう。ここで、粘度は、市販の回転式粘度計(例えば、東機産業株式会社製B型粘度計)を使用して測定できる。
【0034】
本発明はまた、スギナ抽出物を有効成分として含有する口腔用組成物を口腔内に適用して、歯周病関連細菌が共凝集することを抑制する方法を提供するものであり、上記した本発明の共凝集抑制剤を口腔用組成物として用いることができる。
【0035】
口腔用組成物中、スギナ抽出物を、固形分に換算したときに、0.00001w/v%以上含まれるように含有させるのが好ましく、0.0001w/v%以上がより好ましく、0.001w/v%以上がさらに好ましい。また口腔用組成物中のスギナ抽出物は、固形分換算で、1w/v%以下であるのが好ましく、0.1w/v%以下がより好ましく、0.05w/v%以下がさらに好ましい。
【0036】
口腔用組成物を口腔内に適用する際の使用方法としては、口腔用組成物が洗口液の場合は、液体口腔用組成物5~25mLを口に含み、15~60秒間、口腔内でゆすぐようにして使用する。これにより、本発明の液体口腔用組成物を口腔内に十分ゆきわたらせて、歯周病関連細菌の共凝集抑制効果を発揮できる。
【実施例0037】
以下、下記試験例により更に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0038】
<試験例1:対照例1、実施例1~4、比較例1~3>
(試験方法)
1.試験検体の作製
Fusobacterium nucleatum(ATCC23736、以下「Fn」と称する。)を10mLのBHI(Brain Heart Infusion)液体培地にて、37℃で24~48時間、嫌気条件で前培養して、Fn前培養液を得た。
同様にして、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(ATCC33384、以下「Aa)と称する。)をBHI液体培地で培養したAa前培養液を得た。
Fn前培養液及びAa前培養液をそれぞれ遠心管に移し、5000rpm、10分間で遠心分離し、その上澄み液を除去し、5mLのバッファー(Tris(1mmol/L)、塩化カルシウム(0.1mmol/L)、塩化マグネシウム(0.1mmol/L)、塩化ナトリウム(0.15mol/L)、pH8.0)を加えて、再度5000rpm、10分間で遠心分離し、上澄み液を除去し、さらにバッファーを加え、分光光度計における600nmにおける吸光度OD600=0.5のFn懸濁液及びAa懸濁液を得た。
次に、96穴ウェル丸底プレートに、スギナ抽出物及び/又はトラネキサム酸を表1に記載の最終濃度となるように注入し、そこにFn懸濁液100μL及びAa懸濁液100μLを注入して試験検体とした。スギナ抽出物は、丸善製薬株式会社製「スギナ抽出液BG」(スギナの全草から50容量%1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出したもの)を滅菌水とブチレングリコールを質量比で50:50の割合で混合した混合液で希釈し、検体中のスギナ抽出物の濃度が固形分換算で表1記載のとおりになるように加えた。トラネキサム酸は、トラネキサム酸水溶液を用い、検体中のトラネキサム酸の最終濃度が表1記載のとおりになるように加えた。各例につき、3穴を使用し、3検体ずつ作製した。
なお、対照例1として、滅菌水とブチレングリコールを質量比で50:50の割合で混合した混合液4μLをプレートに注入し、そこにFn懸濁液100μL及びAa懸濁液100μLを注入して試験検体とした。対照例1は3検体作製した。
【0039】
2.共凝集の評価
上記で作製したプレートを卓上撹拌機(大洋化学工業株式会社製「TAIYO MICRO MIXER」)で15秒撹拌、15秒静置のサイクルを5分間繰り返し、5分間静置後、プレートの側面を手で持ち、20秒間小さな円を描くようにプレートを動かして手撹拌を行った後、室温(20~25℃)で静置した。
16時間後に再度手撹拌を行い、室温で静置し、対照例1の凝集が目視でも確認できることを確認後(再攪拌から5~9時間後)にプレートリーダー(Thermo scientific製「MULTISKAN GO」)を用いて各ウェルの600nmにおける吸光度OD600を測定し、各例において3検体の平均値を求めた。
【0040】
対照例1と比較して、OD600が0.005以上低下しているものを共凝集抑制効果があると判断した。より具体的には、共凝集の抑制効果を、対照例1と比較した時のOD600の値が0.005以上0.020未満低下しているものを「〇」、0.020以上低下しているものを「◎」、0.005未満の低下あるいはOD600が対照例1よりも大きくなったものを「×」と評価した。
【0041】
結果を表1及び図1~2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
<試験例2:実施例5~10>
試験例1において、スギナ抽出物及びトラネキサム酸の最終濃度を表2に記載のとおりになるようにした以外は、試験例1と同様にして共凝集の評価を行った。
結果を、表2及び図3に示す。なお、表2及び図3には、比較のために試験例1の対照例1及び比較例1~3の結果も示す。
【0044】
【表2】
【0045】
試験例1及び試験例2より、対照例1は吸光度OD600が0.209であり、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)とアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)との共凝集が見られた。そして、トラネキサム酸を含む比較例1~3は対照例1に比べて共凝集が促進された結果となり、図2に示すようにプレートの底に凝集物が沈殿した。
これに対し、スギナ抽出物を加えた実施例1~3は対照例1に比べて吸光度OD600が顕著に小さく、スギナ抽出物によりフソバクテリウム・ヌクレアタムとアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスの共凝集が抑制されたことがわかった。また、比較例1と実施例4~5との比較、比較例2と実施例6~7との比較、及び比較例3と実施例8~10との比較より、トラネキサム酸を配合していてもスギナ抽出物を含むことで細菌の共凝集が抑制されることがわかった。
【0046】
<試験例3:対照例2、実施例11~13、比較例4>
試験例1において、トラネキサム酸の代わりにグリチルリチン酸ジカリウムを使用して、スギナ抽出物とグリチルリチン酸ジカリウムを表3に記載の最終濃度となるように調整した以外は、試験例1と同様に行った。
なお、グリチルリチン酸ジカリウムは、グリチルリチン酸ジカリウム水溶液を用い、検体中のグリチルリチン酸ジカリウムの濃度がグリチルリチン酸に換算した濃度で表3記載のとおりになるように加えた。
【0047】
結果を表3及び図4に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
試験例3より、対照例2とグリチルリチン酸ジカリウムを含む比較例4の吸光度OD600は、ほぼ同じであり、グリチルリチン酸ジカリウムは細菌の共凝集には影響のないものであることがわかった。グリチルリチン酸ジカリウムとスギナ抽出物を含む実施例11~13は、対照例2、比較例4に比べて吸光度OD600が顕著に小さく、試験例3からもスギナ抽出物により細菌の共凝集が抑制されることがわかった。
図1
図2
図3
図4