(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025056610
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 9/10 20060101AFI20250401BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20250401BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20250401BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20250401BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
B24B9/10 Z
B24B9/00 601G
B24B41/06 L
B24B5/04
C03C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166191
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C049
4G059
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034DD08
3C043AA01
3C043CC03
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043EE04
3C049AA03
3C049AA09
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB04
3C049CB01
3C049CB05
4G059AA09
4G059AB03
4G059AC03
(57)【要約】
【課題】円盤形状のガラス基板の周縁端部に端面加工を施す工程を備えた、ガラス基板の製造方法であって、設備コストの増加を伴うことなく、高精度な端面加工の加工精度を長期間に亘って維持することができる、ガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】定盤2の上面22aに円盤形状のガラス基板Gを載置して保持する保持工程S01と、定盤2によって保持されたガラス基板Gを、当該定盤2とともに軸心Z1を中心にして回転させる回転工程S02と、回転するガラス基板Gの端面Gaに研削ツール3を押し当て、ガラス基板Gの端面加工を施す端面加工工程S03とを備え、保持工程S01において、定盤2は、金属製の部材からなる第1定盤21と、ガラス製の部材からなり、第1定盤21の上面21aにおいて、着脱可能に積層配置される第2定盤22とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤形状のガラス基板の製造方法であって、
定盤の上面に円盤形状のガラス基板を載置して保持する保持工程と、
前記定盤によって保持された前記ガラス基板を、当該定盤とともに軸心を中心にして回転させる回転工程と、
回転する前記ガラス基板の端面に加工具を押し当て、前記ガラス基板の端面加工を施す端面加工工程とを備え、
前記保持工程において、
前記定盤は、
金属製の部材からなる第1定盤と、
ガラス製の部材からなり、前記第1定盤における前記ガラス基板側の主面において、着脱可能に積層配置される第2定盤とを有する、
ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2定盤において、
前記第1定盤側との反対側の主面における平坦度(TTV)は、3μm以下である、
ことを特徴とする、請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2定盤のビッカース硬さ(HV1)は、前記ガラス基板のビッカース硬さ(HV2)以下である、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1定盤における前記ガラス基板側の主面は、円形状に形成され、
前記第2定盤は、円盤形状に形成され、
前記第2定盤の直径をL2、前記第1定盤における当該主面の直径をL1とすると、L1≦L2である、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1定盤は、
前記ガラス基板側の主面において、
前記第2定盤を吸着可能な吸着手段を有する、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤形状のガラス基板の端面加工を施す工程を備えた、ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば半導体ウエハーのバックグラインド工程において、半導体ウエハーを支持する支持体の一例として、円盤形状のガラス基板からなる支持体が知られている(例えば、「特許文献1」を参照)。このような円盤形状のガラス基板の製造工程においては、作製されたガラス基板の周縁端部に対して、R面取りやC面取り等に代表される面取り加工(端面加工)を施すのが一般的である。
【0003】
ここで、上記端面加工については、従来より、以下の手順に従い実行されている。即ち、先ず始めに、円盤形状のガラス基板を、水平姿勢の状態で定盤上に載置して固定し、当該定盤とともに軸心を中心として回転させる。次に、同じく軸心を中心にして回転する略円筒形状の研削ツールの外周面を、上記ガラス基板の端面に押し当てる。これにより、上記研削ツールの外周面に形成されている溝部の形状が、ガラス基板の周縁端部に転写され、当該周縁端部に所定の端面加工が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、端面加工が施されたガラス基板の周縁端部の形状が十分に安定していないと、例えば半導体ウエハーの製造工程において、当該ガラス基板からなる支持体に半導体ウエハーを取付けるデボンド作業を精度良く行うことができず、その後実行される各プロセスにおいて不良を誘発する可能性が高まることから、ガラス基板の周縁端部に施される端面加工の要求精度については、近年増々高精度になっている。
【0006】
ここで、前述した従来の端面加工の手法においては、定盤の載置面の平面精度(平坦度等)が、上記端面加工の加工精度に大きく寄与するため、当該載置面の平面精度をより高精度に仕上げることが重要である。即ち、定盤の載置面の平面精度が十分でない場合、当該載置面に載置されたガラス基板は、周縁端部がやや波打つように軸心を中心として回転されることとなる。その結果、研削ツールの外周面を押し当てることで形成される、ガラス基板の周縁端部の形状は、周方向において加工精度のばらつきが大きくなることから、定盤の載置面における平面精度を、より高精度に仕上げることが重要である。
【0007】
一方、一般的に定盤は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属製部材からなるため、載置面の平面精度を高精度に仕上げるためには加工コストが嵩むこと、また精度に限界があるという問題があった。また、このような金属製部材からなる定盤においては、たとえ載置面の平面精度を高精度に仕上げたとしても、載置面の形状の経年変化によって平面精度の劣化が進むため、長期間に亘って載置面の平面精度を高精度に維持することが困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、円盤形状のガラス基板の周縁端部に端面加工を施す工程を備えた、ガラス基板の製造方法であって、設備コストの増加を伴うことなく、高精度な端面加工の加工精度を長期間に亘って維持することができる、ガラス基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、本発明の態様1に係るガラス基板の製法方法は、円盤形状のガラス基板の製造方法であって、定盤の上面に円盤形状のガラス基板を載置して保持する保持工程と、前記定盤によって保持された前記ガラス基板を、当該定盤とともに軸心を中心にして回転させる回転工程と、回転する前記ガラス基板の端面に加工具を押し当て、前記ガラス基板の端面加工を施す端面加工工程とを備え、前記保持工程において、前記定盤は、金属製の部材からなる第1定盤と、ガラス製の部材からなり、前記第1定盤における前記ガラス基板側の主面において、着脱可能に積層配置される第2定盤とを有することを特徴とする。このように、本発明に係るガラス基板の製造方法においては、研磨加工を施すことで、高精度な平面精度(平坦度等)を実現可能なガラス製の部材によって、被加工物である円盤形状のガラス基板を定盤上に載置する際に直接接触する第2定盤を形成することから、設備コストの大幅な増加を伴うことなく、当該ガラス基板の周縁端部に対して、高精度な端面加工を行うことができる。また、本発明に係るガラス基板の製造方法によれば、比較的製造コストの低廉なガラス製の部材からなる第2定盤を消耗品として取り扱い、比較的短期間の一定周期毎に、新たな第2定盤に逐次更新することにより、高精度な端面加工の加工精度を、長期間に亘って維持することができる。
【0011】
また、本発明の態様2に係るガラス基板の製法方法は、上記態様1において、前記第2定盤における、前記第1定盤側との反対側の主面における平坦度(TTV)は、3μm以下であることを特徴とする。前記第2定盤がガラスであれば、金属製部材の場合に比べ、TTVを3μm以下に研磨加工し易い。これは、ガラスが非晶質材料であるためである。このような構成を有することにより、第2定盤上において、高精度な水平姿勢を維持した状態でガラス基板を載置することができ、定盤とともに軸心を中心にして回転されるガラス基板の周縁端部が波打つのを抑制し、当該ガラス基板の周縁端部に対して、高精度な端面加工を安定して行うことができる。
【0012】
また、本発明の態様3に係るガラス基板の製法方法は、上記態様1または上記態様2において、前記第2定盤のビッカース硬さ(HV1)は、前記ガラス基板のビッカース硬さ(HV2)以下であることを特徴とする。このように、本発明に係るガラス基板の製造方法においては、ガラス基板のビッカース硬さ(HV2)に比べて、第2定盤のビッカース硬さ(HV1)が比較的低く設定されていることから、例えば不意に、ガラス基板と第2定盤との間において、破損や傷等を誘発する要因が生じた場合であっても、ビッカース硬さの低い第2定盤に対して優先的に、破損や傷等を発生することとなり、ガラス基板に破損や傷等が生じるのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の態様4に係るガラス基板の製法方法は、上記態様1または上記態様2において、前記第1定盤における前記ガラス基板側の主面は、円形状に形成され、前記第2定盤は、円盤形状に形成され、前記第2定盤の直径をL2、前記第1定盤における当該主面の直径をL1とすると、L1≦L2であることを特徴とする。このような構成を有することにより、本願発明に係るガラス基板の製造方法によれば、定盤上に載置された状態において、第1定盤に対して径方向外側に大きく食み出る大型サイズのガラス基板であっても、第2定盤によって保持することにより、定盤から径方向外側に食み出る周縁端部の領域を小さくすることができ、従来に比べて、より大型サイズのガラス基板の周縁端部に対して、高精度に端面加工を行うことができる。
【0014】
また、本発明の態様5に係るガラス基板の製法方法は、上記態様1または上記態様2において、前記第1定盤が、前記ガラス基板側の主面において、前記第2定盤を吸着可能な吸着手段を有することを特徴とする。このような構成を有することにより、例えば、消耗品として取り扱われる第2定盤の交換作業等において、第1定盤に対する第2定盤の着脱作業を、吸着手段を介して容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。即ち、本発明に係るガラス基板の製法方法によれば、設備コストの増加を伴うことなく、高精度な端面加工の加工精度を長期間に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態におけるガラス基板の製造方法の各工程を、経時的に順に示した工程図である。
【
図2】端面加工装置の全体的な構成を示した断面図である。
【
図3】第1定盤におけるガラス基板側の主面の形状を示した平面図である。
【
図4】第2定盤におけるガラス基板側の主面の形状を示した図であって、(a)は本実施形態における第2定盤の形状を示した平面図であり、(b)は別実施形態における第2定盤の形状を示した平面図である。
【
図5】端面加工工程を実行する際の端面加工装置の状態を示した図であって、研削ツールが当接されたガラス基板の端部付近の領域を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態について、
図1乃至
図5を用いて説明する。
【0018】
[ガラス基板の製造方法]
先ず、本発明を具現化したガラス基板の製造方法について、
図1を用いて説明する。本実施形態におけるガラス基板の製造方法は、円盤形状のガラス基板G(
図2を参照)の製造方法であって、後述する端面加工装置1を用いて、成形されたガラス基板Gの端面を加工するための各種工程(保持工程S01、回転工程S02、及び端面加工工程S03)を備えている。
【0019】
なお、本実施形態において製造されるガラス基板Gは、例えば半導体ウエハーのバックグラインド工程において、半導体ウエハーを支持する支持体の一例として採用されるガラス基板である。
【0020】
ガラス基板Gは、主にダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法によって成形されることが好ましいが、その他の成形方法、例えば、スロットダウン法、リドロー法、フロート法、またはロールアウト法等を採用することも可能である。
【0021】
そして、上記成形方法によって成形された板状のガラス原板は、例えば、切断(割断)工程や研磨工程や表面処理工程等からなる複数の前工程を経て、所定の円盤形状からなるガラス基板Gに形成され、その後、端面加工装置1によって端面加工を施される。
【0022】
ガラス基板の製造方法は、主に、経時的に順に行われる保持工程S01、回転工程S02、及び端面加工工程S03等を備えている。
【0023】
保持工程S01は、上記複数の前工程を経て作製された円盤形状のガラス基板Gを、後述する定盤2の上面(より具体的には、第2定盤22の上面22a。
図2を参照)に載置して保持する工程である。
【0024】
ここで、定盤2の上面22aは、水平、且つ円形状に形成されており、当該上面22aの直径は、ガラス基板Gの直径に比べて小さく設定されている。
【0025】
そして、保持工程S01において、ガラス基板Gは、定盤2の上面22aと同軸上に載置され、当該上面22aより周縁端部を食み出した状態で保持される。
【0026】
回転工程S02は、定盤2によって保持されたガラス基板Gを、当該定盤2とともに軸心Z1(
図2を参照)を中心にして回転させる工程である。なお、ガラス基板Gの回転速度は、後述する研削ツール3(
図2を参照)の回転速度に比べて低速に設定されている。
【0027】
端面加工工程S03は、回転するガラス基板Gの端面Gaに研削ツール3を押し当てることにより、当該ガラス基板Gの周縁端部Gbに端面加工を施す工程である。
【0028】
ここで、後述するように、研削ツール3は、ガラス基板G(または、定盤2)の軸心Z1に対して、当該研削ツール3の軸心Z2(
図2を参照)が平行となるように配置されており、研削ツール3の外周面には、所定の形状からなる溝部31aが予め設けられている。また、研削ツール3の回転速度は、ガラス基板Gの回転速度に比べて高速に設定されている。
【0029】
そして、軸心Z2を中心にして回転する研削ツール3の外周面を、ガラス基板Gの端面に押し当てることにより、上記溝部31aの形状がガラス基板Gの周縁端部Gbに転写され、当該周縁端部Gbに所定の端面加工が施される。
【0030】
[端面加工装置1の構成]
次に、前述したガラス基板の製造方法における各種工程(保持工程S01、回転工程S02、及び端面加工工程S03)を実施するための端面加工装置1の構成について、
図2乃至
図5を用いて説明する。
【0031】
図2において、端面加工装置1は、主に、加工対象物であるガラス基板Gを保持する定盤2と、定盤2によって保持されたガラス基板Gに対して端面加工を施す研削ツール3とを備える。
【0032】
定盤2は、平面視円形状の上面21aを有する第1定盤21と、第1定盤21の上面21aに積層配置される第2定盤22と、これらの第1定盤21及び第2定盤22に負圧を発生される負圧発生手段23とを有する。ここで、負圧発生手段23は、例えば真空ポンプ等からなり、後述する配管部材(第1配管部材21f及び第2配管部材22d)を介して、これらの第1定盤21及び第2定盤22と各々連通されている。
【0033】
第1定盤21は、円盤形状に形成された金属製の部材からなり、軸心Z1の方向を上下方向として配置される。また、第1定盤21は、下面21bより下方に向かって延出する主軸21cを有し、当該主軸21cは、軸心Z1と同軸上に設けられている。
【0034】
そして、第1定盤21は、電動モータ等からなる駆動源(図示せず)の駆動力が、主軸21cに伝達されることにより、軸心Z1を中心にして回転駆動される。
【0035】
第1定盤21の上面21aは、定盤2に保持されたガラス基板G側の主面であり、当該上面21aには、第1溝部21dが設けられている。
【0036】
第1溝部21dは、例えば
図3に示すように、平面視円形状からなる円状第1溝部21d1と、平面視円環形状からなり、円状第1溝部21dに対して径方向外側に設けられる環状第1溝部21d2と、これらの円状第1溝部21d1及び環状第1溝部21d2を互いに連通する複数(本実施形態においては4つ)の連通用第1溝部21d3・21d3・・・とを有する。また、円状第1溝部21d1及び環状第1溝部21d2は、軸心Z1に対して各々同軸上に配置されている。
【0037】
一方、第1定盤21の上面21aにおける、第1溝部21dを除いた複数の領域(
図3中において、網掛けによって示された領域)は、第2定盤22が積層配置される配置面として機能し、各々同一平面上に位置するように形成されている。
【0038】
第1定盤21における上面21aの中心部には、複数(本実施形態においては2つ)の第1貫通孔21e・21eが設けられている。上記複数(2つ)の第1貫通孔21e・21eにおいて、一方の第1貫通孔21e(本実施形態においては、軸心Z1に対してずれた位置に配置される第1貫通孔21e)には、負圧発生手段23と連結された第1配管部材21f(
図2を参照)が嵌挿されている。これにより、上記第1溝部21dは、第1配管部材21fを介して負圧発生手段23と連通される。
【0039】
なお、他方の第1貫通孔21e(本実施形態においては、軸心Z1と同軸上に配置される第1貫通孔21e)については、後述する。
【0040】
そして、
図2に示すように、第1定盤21の上面21aにおいて、負圧発生手段23によって第1溝部21d内に負圧を発生させることにより、当該上面21aに積層配置された第2定盤22は吸着され、第1定盤21に固定される。
また、負圧発生手段23による負圧の発生を停止することにより、第1定盤21の上面21aに固定された第2定盤22は、上記の吸着状態から解放され、当該上面21aより脱着可能な状態となる。つまり、第1定盤の上面21aにおける第1溝部21d、第1配管部材21f、及び負圧発生手段23は、本発明に係る吸着手段を構成し、当該吸着手段を介して、第2定盤22は、第1定盤21の上面21aにおいて、着脱可能に積層配置される。
【0041】
このように、本実施形態における第1定盤21は、ガラス基板G側の主面である上面21aにおいて、第2定盤22を吸着可能な吸着手段(第1溝部21d、第1配管部材21f、及び負圧発生手段23)を有する構成となっている。
【0042】
このような構成を有することにより、例えば後述するように、消耗品として取り扱われる第2定盤22の交換作業等において、第1定盤21に対する第2定盤22の着脱作業を、上記吸着手段を介して容易に行うことができる。
【0043】
第2定盤22は、円盤形状に形成されたガラス製の部材からなり、前述したように、第1定盤21におけるガラス基板G側の主面(上面21a)において、当該第1定盤21と同軸上に積層配置される。また、第2定盤22は、定盤2上にガラス基板Gを載置する際に直接接触する部材であり、上面22aを介して、当該ガラス基板Gを下方から支持する。
【0044】
ここで、第2定盤22のビッカース硬さ(HV1)は、定盤2上に載置されるガラス基板Gのビッカース硬さ(HV2)以下となるように設定される(HV1≦HV2)。具体的には、本実施形態においては、ビッカース硬さ(HV2)が550~800HVの範囲内(550≦HV2≦800)である複数種類のガラス基板Gを、端万加工装置1による加工対象物としており、これに対して、ビッカース硬さ(HV1)が500~750HVの範囲内(500≦HV1≦750)である複数種類の第2定盤22が、消耗品として予め用意されている。
【0045】
そして、端面加工装置1によってガラス基板Gの周縁端部Gbに端面加工を施す際は、当該ガラス基板Gのビッカース硬さ(HV2)に応じて、適宜最適なビッカース硬さ(HV1)である第2定盤22を選択し、選択された第2定盤22を第1定盤21の上面21aに積層配置する構成となっている。
【0046】
このように、本実施形態においては、ガラス基板Gのビッカース硬さ(HV2)に比べて、第2定盤22のビッカース硬さ(HV1)が比較的低く設定されていることから、例えば不意に、ガラス基板Gと第2定盤22との間において、破損や傷等を誘発する要因が生じた場合であっても、ビッカース硬さの低い第2定盤22に対して優先的に、破損や傷等を発生することとなり、ガラス基板Gに破損や傷等が生じるのを防止することができる。
【0047】
なお、第2定盤22を形成する部材の素材については、ガラス製の部材であれば特に限定されることはなく、ガラス基板Gの素材と略同等のものであってもよい。
【0048】
第1定盤21の上面21aに積層配置された状態において、第2定盤22の上面22aには、第2溝部22bが設けられている。
【0049】
第2溝部22bは、例えば
図4(a)に示すように、平面視にて各々直径が異なる円環形状からなり、且つ互いに互いに同心円状に配置される複数の環状第2溝部22b1・22b1・・・と、これら複数の環状第2溝部22b1・22b1・・・と半径方向に交差し、且つ当該複数の環状第2溝部22b1・22b1・・・を互いに連通する複数(本実施形態においては4つ)の連通用第2溝部22b2・22b2・・・とを有する。
【0050】
一方、第2定盤22の上面22aにおける、第2溝部22bを除いた複数の領域(
図4(a)中において、網掛けによって示された領域。以下、適宜「載置面Q」と記載する)は、ガラス基板Gが載置される載置面として機能し、各々同一平面上に位置するように形成されている。
【0051】
ここで、本実施形態における第2定盤22において、ガラス基板G側、即ち、第1定盤21側との反対側の主面である上面22aの載置面Qにおける平坦度(TTV)は、3μm以下に設定されている。
【0052】
なお、上記平坦度(TTV)は、ガラス製の部材からなる円盤形状の第2定盤22における「全体板厚偏差」を意味する。具体的には、平坦度(TTV)は、第2定盤22の上面22a(より具体的には、載置面Q)における、全体の最大板厚と最少板厚の差であり、例えば、コベルコ科研社製のBow/Warp測定装置 SBW-331ML/dにより測定可能である。
【0053】
このような構成を有することにより、本実施形態における端面加工装置1によれば、第2定盤22上において、高精度な水平姿勢を維持した状態でガラス基板Gを載置することができ、定盤2とともに軸心Z1を中心にして回転されるガラス基板Gの周縁端部Gbが波打つのを抑制し、当該ガラス基板Gの周縁端部Gbに対して、高精度な端面加工を安定して行うことができる。
【0054】
第2定盤22における上面22aの中心部には、第2貫通孔22cが、軸心Z1と同軸上に設けられている。また、上記第2貫通孔22cには、上述した第1定盤21における他方の第1貫通孔21eとともに、負圧発生手段23と連結された第2配管部材22d(
図2を参照)が嵌挿されている。これにより、上記第2溝部22bは、第2配管部材22dを介して負圧発生手段23と連通される。
【0055】
そして、
図2に示すように、前述した第1定盤21と同様に、第2定盤22の上面22aにおいて、負圧発生手段23によって第2溝部22b内に負圧を発生させることにより、当該上面22aに載置されたガラス基板Gは吸着されて固定され、定盤2の上面(より具体的には、上面22a)にて保持される。また、負圧発生手段23による負圧の発生を停止することにより、第2定盤22の上面22aに固定されたガラス基板Gは、上記の吸着状態から解放され、当該上面22aより脱着可能な状態となる。
【0056】
なお、第2定盤22の上面22aに設けられる第2溝部22bの形状については、本実施形態に限定されるものではなく、負圧発生手段23による負圧によって、ガラス基板Gを安定して着脱可能に固定可能な構成であれば、何れのような形状であってもよい。
【0057】
例えば
図4(b)に示すように、上記第2溝部22bの別実施形態である第3溝部22eは、平面視扇形状からなり、且つ軸心Z1を中心にして放射状に配置される複数の扇状第3溝部22e1・22e1・・・と、平面視小円形状からなり、軸心Z1と同軸上に設けられ、且つこれら複数の扇状第3溝部22e1・22e1・・・に比べてさらに深く掘り下げられた小円状第3溝部22e2とを有する。なお、小円状第3溝部22e2は、複数の扇状第3溝部22e1・22e1・・・と重なるように設けられており、当該小円形状第3溝部22e2と各扇状第3溝部22e1とは互いに連通されている。
【0058】
このような構成からなる第3溝部22eが、第2定盤22の上面22aに設けられている場合であっても、負圧発生手段23による負圧によって、ガラス基板Gを安定して着脱可能に固定することができる。
【0059】
ところで、本実施形態において、第2定盤22の直径は、第1定盤21の上面21aにおける直径以上となるように設定されている。
【0060】
具体的には、
図5において、第1定盤21におけるガラス基板G側の主面(上面21a)は、平面視円形状に形成されており、また、第2定盤22は、円盤形状に形成されている。そして、第2定盤22の直径をL2とし、且つ第1定盤21における上記主面(上面21a)の直径をL1とした場合、直径L2が直径L1以上となるように設定されている(L1≦L2)。
【0061】
このような構成を有することにより、本実施形態における端面加工装置1によれば、定盤2上に載置された状態において、第1定盤21に対して径方向外側に大きく食み出る大型サイズのガラス基板Gであっても、第2定盤22によって保持することにより、定盤2から径方向外側に食み出る周縁端部Gbの領域を小さくすることができる。即ち、ガラス基板Gの周縁端部Gbに端面加工を施す際において、当該ガラス基板Gの端面Gaと当接する研削ツール3に対して、より近接する領域に亘って、第2定盤2によってガラス基板Gを保持することが可能となる。その結果、本実施形態における端面加工装置1によれば、従来に比べて、より大型サイズのガラス基板Gの周縁端部Gbに対して、高精度に端面加工を行うことができる。
【0062】
研削ツール3は、本発明に係る加工具の一例であって、例えば、略円筒形状の研削砥石31と、研削砥石31に対して同軸上に嵌挿される主軸32とを有する。
【0063】
研削砥石31は、多数の砥粒が接着剤(例えば、メタボンド等)によって固着されることにより構成されており、当該研削砥石31の外周面には、複数の環状の溝部31a・31a・・・が、主軸32における軸心Z2(
図2を参照)の方向に沿って形成されている。また、各溝部31aにおける周方向の断面は、端面加工後に意図する、ガラス基板Gの周縁端部Gbの形状に沿って形成されている。
【0064】
さらに、
図2において、研削ツール3は、定盤2の側方において、定盤2(または、ガラス基板G)の軸心Z1に対して、主軸32の軸心Z2が平行となるように配置される。また、研削ツール3は、軸心Z2を中心にして回転駆動可能に構成されるとともに、定盤2によって保持されたガラス基板Gに対して、近接離間方向に水平移動可能に構成されている。
【0065】
そして、定盤2によって軸心Z1を中心にして回転駆動されるガラス基板Gに対して、同じく軸心Z2を中心にして回転駆動される研削ツール3を近接方向に移動させ、所定の溝部31aを介して、当該ガラス基板Gの端面Gaに研削ツール3(より具体的には、研削砥石31)を押し当てることにより、当該溝部31aの形状がガラス基板Gの周縁端部Gbに転写され、当該周縁端部Gbに所定の端面加工が施される。
【0066】
なお、研削ツール3は、上下方向に移動(昇降)可能とする昇降手段(図示せず)を有しており、当該昇降手段によって移動することにより、各溝部31aの摩耗度合いに応じて、適宜新たな溝部31aに変更し、当該新たな溝部31aによって、ガラス基板Gの周縁端部Gbに端面加工を施す構成となっている。
【0067】
以上のように、本実施形態におけるガラス基板の製造方法は、円盤形状のガラス基板Gの製造方法であって、定盤2の上面(第2定盤22の上面22a)に円盤形状のガラス基板Gを載置して保持する保持工程S01と、定盤2によって保持されたガラス基板Gを、当該定盤2とともに軸心Z1を中心にして回転させる回転工程S02と、回転するガラス基板Gの端面Gaに研削ツール(加工具)3を押し当て、ガラス基板Gの端面加工を施す端面加工工程S03とを備えている。
【0068】
そして、上記保持工程S01において、定盤2は、金属製の部材からなる第1定盤21と、ガラス製の部材からなり、第1定盤21におけるガラス基板G側の主面(上面21a)において、着脱可能に積層配置される第2定盤22とを有する構成となっている。
【0069】
このように、本実施形態におけるガラス基板の製造方法においては、研磨加工を施すことで比較的容易に高精度な平面精度(平坦度等)を実現可能なガラス製の部材によって、被加工物である円盤形状のガラス基板Gを定盤2上に載置する際に直接接触する第2定盤21を形成することから、設備コストの大幅な増加を伴うことなく、当該ガラス基板Gの周縁端部Gbに対して、高精度な端面加工を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態におけるガラス基板の製造方法によれば、比較的製造コストの低廉なガラス製の部材からなる第2定盤22を消耗品として取り扱い、比較的短期間の一定周期毎に、新たな第2定盤22に逐次更新することにより、高精度な端面加工の加工精度を、長期間に亘って維持することができる。
【0071】
以上、本発明を具現化する一実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0072】
2 定盤
21 第1定盤
21a 上面
21d 第1溝部(吸着手段)
21f 第1配管部材(吸着手段)
22 第2定盤
22a 上面
23 負圧発生手段(吸着手段)
3 研削ツール
G ガラス基板
Ga 端面
HV1 第2定盤のビッカース硬さ
HV2 ガラス基板のビッカース硬さ
L1 第1定盤における上面の直径
L2 第2定盤の直径
S01 保持工程
S02 回転工程
S03 端面加工工程
TTV 平坦度
Z1 軸心