(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005668
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20250109BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G21/16 120
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105936
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】古賀 賢
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB12
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BE03
2H171FA02
2H171FA03
2H171FA19
2H171HA06
2H171HA23
2H171JA12
2H171KA05
2H171KA17
2H171KA22
2H171KA23
2H171KA25
2H171KA26
2H171KA27
2H171QC37
2H171QC38
(57)【要約】
【課題】 ドアに連動して定着装置のニップ解除を行う構成において、定着装置を取り出す際の作業性を損なうことなく定着装置を交換可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】 係合機構は第1の係合部を有し、加圧解除機構は第1の係合部と係合する第1の被係合部を有し、第1の開閉部材が閉じられている状態から開かれていく過程では、第1の被係合部よりも第2の開口側にある第1の係合部が第1の被係合部を第2の開口側から押すことで定着ニップ部に加わる付勢力を低減もしくは解除させていき、第1の開閉部材が閉じられている状態では第1の係合部と第1の被係合部の係合が解除され、定着ユニットを第2の開口から取り出す際の第1の被係合部の経路上から第1の係合部が退避している。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上に形成されたトナー像をシートに定着させる定着ユニットであって、シートを加熱する加熱ユニットと、前記加熱ユニットに圧接して定着を行うための定着ニップ部を形成する加圧部材と、前記加圧部材と前記加熱ユニットを圧接させるために付勢力を加える付勢部材と、前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減させる、もしくは解除させる加圧解除機構と、を有する定着ユニットと、
前記定着ユニットを着脱可能に収容する装置本体であって、前記装置本体の第1の開口に対して開閉可能に設けられた第1の開閉部材と、前記加圧解除機構、および、前記第1の開閉部材と係合し、前記第1の開閉部材の開閉に連動する係合機構と、前記定着ユニットを着脱するための第2の開口と、を有する装置本体と、を備え、
前記第1の開閉部材が閉じられている状態では前記付勢部材が前記定着ニップ部に前記付勢力を加え、前記第1の開閉部材が閉じられている状態から開かれていく過程で前記係合機構が動くことで前記加圧解除機構が前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減させる、もしくは解除する画像形成装置において、
前記係合機構は第1の係合部を有し、前記加圧解除機構は前記第1の係合部と係合する第1の被係合部を有し、
前記第1の開閉部材が閉じられている状態から開かれていく過程では、
前記第1の被係合部よりも前記第2の開口側にある前記第1の係合部が前記第1の被係合部を前記第2の開口側から押すことで前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減もしくは解除させていき、
前記第1の開閉部材が閉じられている状態では前記第1の係合部と前記第1の被係合部の係合が解除され、前記定着ユニットを前記第2の開口から取り出す際の前記第1の被係合部の経路上から前記第1の係合部が退避していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の開閉部材が開かれていく過程で前記第1の係合部が前記第1の被係合部に係合することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記係合機構は第2の係合部を有し、
前記加圧解除機構は第2の被係合部を有し、
前記第2の被係合部は前記第2の係合部よりも前記第2の開口側にあって、
前記第1の開閉部材が閉じられる過程では、前記第2の係合部は前記第2の被係合部と係合しており、前記第2の係合部が前記第2の被係合部を押すことで前記定着ニップ部に前記付勢力が加わるようになることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の係合部は前記第2の係合部より前記第2の開口側にあることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記加圧解除機構は、前記付勢部材に作用することで前記付勢力を調整できる回動可能なカム部材を有し、前記カム部材が前記第1の被係合部を有していることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加圧部材は回転軸を有する加圧ローラであって、
前記係合機構は前記第1の開閉部材の開閉に応じて水平方向に移動可能に保持されたスライド部材と、
前記スライド部材に前記加圧ローラの回転軸と平行な軸周りに回動可能に保持された揺動部材と、
を有し、前記揺動部材が前記第1の係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加圧部材は回転軸を有する加圧ローラであって、
前記係合機構は前記第1の開閉部材の開閉に応じて水平方向に移動可能に保持されたスライド部材と、
前記スライド部材に前記加圧ローラの回転軸と直交する軸周りに回動可能に保持された揺動部材と、
を有し、前記揺動部材が前記第1の係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記装置本体は前記定着ニップ部でのジャム処理のための第2の開閉部材を前記第2の開口の少なくとも一部を覆う位置に有し、前記第2の開閉部材の開閉動作は前記加圧解除機構と連動することで前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減、もしくは解除させることができることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2の開閉部材の開閉動作は前記係合機構とは連動しないことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、紙詰まり(以下ジャム)が発生した場合、ジャム処理をするためにドアの開放に連動して定着装置の加圧力が解除される構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置は、シート上に形成されたトナー像に熱と圧をかけてシートにトナー像を定着させる定着装置を備える。定着装置は加圧部材と加熱ユニットとでニップ部を形成し、シートがニップ部を通過する際に熱と圧を加えてトナー像が定着されるように構成されている。
【0003】
特許文献1ではギア列機構によってドアの開閉に連動して定着装置のニップ部の圧解除を行う構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成ではドアに繋がるアーム部材と定着装置との間にギア列が組付けられており、ギアを取り外さないと定着装置を画像形成装置から取り外すことができない構成となっていた。そのため、画像形成装置のサービス時において定着装置の取り出しに手間がかかってしまう懸念があった。
【0006】
そこで本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、ドアの開放に連動して定着装置のニップ解除を行う構成において、定着装置を取り出す際の作業性を損なうことなく定着装置を交換可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明では、以下の構成を備える。
【0008】
シート上に形成されたトナー像をシートに定着させる定着ユニットであって、シートを加熱する加熱ユニットと、前記加熱ユニットに圧接して定着を行うための定着ニップ部を形成する加圧部材と、前記加圧部材と前記加熱ユニットを圧接させるために付勢力を加える付勢部材と、前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減させる、もしくは解除させる加圧解除機構と、を有する定着ユニットと、前記定着ユニットを着脱可能に収容する装置本体であって、前記装置本体の第1の開口に対して開閉可能に設けられた第1の開閉部材と、前記加圧解除機構、および、前記第1の開閉部材と係合し、前記第1の開閉部材の開閉に連動する係合機構と、前記定着ユニットを着脱するための第2の開口と、を有する装置本体と、を備え、前記第1の開閉部材が閉じられている状態では前記付勢部材が前記定着ニップ部に前記付勢力を加え、前記第1の開閉部材が閉じられている状態から開かれていく過程で前記係合機構が動くことで前記加圧解除機構が前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減させる、もしくは解除する画像形成装置において、前記係合機構は第1の係合部を有し、前記加圧解除機構は前記第1の係合部と係合する第1の被係合部を有し、前記第1の開閉部材が閉じられている状態から開かれていく過程では、前記第1の被係合部よりも前記第2の開口側にある前記第1の係合部が前記第1の被係合部を前記第2の開口側から押すことで前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減もしくは解除させていき、前記第1の開閉部材が閉じられている状態では前記第1の係合部と前記第1の被係合部の係合が解除され、前記定着ユニットを前記第2の開口から取り出す際の前記第1の被係合部の経路上から前記第1の係合部が退避していることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドアの開放に連動して定着装置のニップ解除を行う構成において、定着装置を取り出す際の作業性を損なうことなく定着装置を交換可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】フロントカム34、リアカム35、シャフト部材37の概略図
【
図7】リアドア20の開閉による定着装置9の加圧解除機構の動作を示す説明図
【
図8】フロントドア19に連動して定着装置9の加圧解除機構と係合する係合機構を示す斜視図
【
図9】フロントドア19と係合機構の画像形成装置本体前側の動作を示す説明図
【
図10】カム係合部材51と加圧解除機構の動作を示す説明図(フロントドア19が閉状態)
【
図11】カム係合部材51と加圧解除機構の動作を示す説明図(カム係合部材51とフロントカム34が係合し始める状態)
【
図12】カム係合部材51と加圧解除機構の動作を示す説明図(圧解除をしている過程)
【
図13】カム係合部材51と加圧解除機構の動作を示す説明図(フロントドア19が開状態)
【
図15】第1の実施例における定着装置9の着脱軌跡を示す説明図
【
図16】カム係合部材61と加圧解除機構の動作を示す斜視図
【
図17】カム係合部材61と加圧解除機構の動作を示す上面図
【
図18】第2の実施例における定着装置9の着脱軌跡を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
本発明の実施例1を以下に説明する。
図1は、画像形成装置の一例であるモノクロレーザープリンタの概略構成を示す断面図である。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。したがって、特に特定的な記載がない限りは本発明の範囲をそれに限定するものではない。ここでは画像形成装置の全体構成について説明した後に定着装置の構成を説明する。
【0012】
図1に示す画像形成装置101は大きく分けて、シート給紙部と、シートに画像を形成する画像形成部と、定着部と、排紙反転部と、両面搬送部とを有する。画像形成装置101は、装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジ1を備えている。プロセスカートリッジ1は電子写真プロセスを用いてシートにトナー像を形成するためのプロセスユニットであり、感光体ドラム2と不図示の現像部、帯電ローラ等のプロセス手段を有する。プロセスカートリッジ1の鉛直上方にはスキャナユニット3が配置され、画像信号に基づく露光を感光体ドラム2に対して行う。感光体ドラム2は不図示の帯電ローラによって所定の負極性の電位に帯電される。その後、スキャナユニット3が感光体ドラム2上をレーザー光で走査することにより、感光体ドラム2上に静電潜像が形成される。その後、プロセスカートリッジ1内の不図示の現像部が感光体ドラム2上の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。
【0013】
シート給紙部は、画像形成装置101内の給紙ローラ4と画像形成装置101に対して着脱可能な、シートを収納する給紙カセット5とを有する。給紙カセット5に収納されているシートSは、不図示の給紙駆動ユニットの動力によって回転させられる給紙ローラ4により、給紙カセット5から1枚ずつ分離給送される。給送されたシートSは、搬送ローラ対6によってレジストローラ対7に搬送され、レジストローラ対7によって斜行補正が行われ、転写部に搬送される。転写部では転写ローラ8に不図示のバイアス印加手段によって正極性のバイアスが印加される。これにより、転写部に搬送されたシートSには感光体ドラム2上のトナー画像が転写される。
【0014】
トナー画像が転写されたシートSは、転写部から見て搬送方向下流側に設けられている定着装置(定着ユニット)9に搬送される。定着装置9は、シートSに転写されたトナー画像をシートに定着させるものであり、不図示の加熱手段であるヒータを備える加熱ユニット10とこれに圧接して回転軸回りに回転する加圧部材である加圧ローラ11とを有している。トナー画像が形成されたシートSは加熱ユニット10と加圧ローラ11とで形成される定着ニップ部Nで挟持搬送され、熱及び圧力が与えられることでトナー画像がシートS表面に定着される。
【0015】
トナー画像が定着されたシートSは、定着装置9から排紙反転部へと搬送される。排紙反転部は排紙ローラ13と排紙コロ14、反転コロ15を有する3連ローラと、両面フラッパ12を有する。片面画像形成(片面印字)の場合は、両面フラッパ12がシートSを排紙ローラ13と排紙コロ14とで形成される排紙ニップ部側に導く位置に待機し、シートSは排紙ローラ13と排紙コロ14によって排紙トレイ16上へ排出される。
【0016】
また、両面画像形成(両面印字)の場合は、両面フラッパ12が排紙ローラ13と反転コロ15とで形成される反転ニップ側にシートSを導く位置に待機され、定着装置9によってシートSは反転ニップ部側へ搬送される。排紙ローラ13は、シートS後端が所定の位置に来るタイミングで、不図示の回転方向切り替え手段によって逆回転する。これにより、シートSは後端を先頭にして両面搬送ローラ対17、再給紙ローラ対18を通過し、レジストローラ対へ表裏反転された状態で再送される。その後は、両面フラッパ12はシートSを排紙ローラ13と排紙コロ14とで形成される排紙ニップ部側に導く位置に待機させておく。そしてシートSは片面印字と同様に、2面目に感光体ドラム2上のトナー画像が転写され、さらに定着装置9で定着され、排紙ローラ13と排紙コロ14によって排紙トレイ16上へ排出され、両面印字が完了となる。なおシートの搬送中に定着装置9でシートの詰まり(ジャム)が発生した場合はジャムが発生した場所に応じて第1の開口を覆うフロントドア(第1の開閉部材)19または第2の開口を覆うリアドア(第2の開閉部材)20を開いてジャム処理を行うことができる。
【0017】
次に、定着装置9について、
図2~
図4を用いて説明する。
図2(a)は本実施例1における定着装置9の概略図であり、
図2(b)は定着装置9から紙搬送ガイドを除いた概略図である。尚、定着装置9は画像形成装置101に着脱可能に収容されている。定着装置9は側板21、22、上ステイ23、下ステイ24を有する。加圧部材としての加圧ローラ11はボールベアリング25、軸受け26を介して側板21、22に対して回転可能に支持されている。加熱ユニット10はフランジ部材28を介して側板21、22に取り付けられている。加圧ローラ11は加熱ユニット10の対向側に配置されることで定着ニップ部Nを形成し、シートを挟持する。
【0018】
図3は加熱ユニットを示す断面図である。加熱ユニット10は、主にヒータ30、加圧ステイ29、定着フィルム31、フィルムガイド32を有する。定着フィルム31は円筒状(スリーブ状)で可撓性を有し、フィルムガイド32に対して外嵌させてある。加熱源であるヒータ30はフィルムガイド32の長手方向に沿って設けた凹溝部に嵌め入れて固定される。加圧ステイ29は、断面形状が略U字形状であり、フィルムガイド32の内側に配置され、加圧力を受けたときにフィルムガイド32及びヒータ30を加圧ローラ11側に加圧する。
【0019】
図4は
図2をA方向に見た側面図であり、定着装置9における加圧機構及び加圧解除機構の概略図である。なお
図4(a)は加圧ローラ11に対して加熱ユニット10が付勢されることで所定の加圧力が付与されている当接状態、
図4(b)は当接状態よりも加圧ローラ11に対する加熱ユニット10の加圧力が低減されている(又は加圧力がゼロ)圧解除状態の図である。加圧バネ33が加圧板27を付勢することで、付勢力がフランジ部材28を介して加熱ユニット10に伝わり、加圧ローラ11に対して加熱ユニット10が付勢されることで定着ニップ部Nに所定の加圧力が加えられる。
【0020】
また、定着装置9の加圧解除機構はフロントドア19の開閉に連動するフロントカム(カム部材)34、リアドア20の開閉に連動して回動するリアカム35を有する。さらに、加圧板27を持ち上げることで定着ニップ部Nを加圧状態と圧解除状態とで切り替えるための圧解除アーム36、圧解除アーム36を保持する圧解除アームホルダ40を有する。定着装置9はフロントドア19及びリアドア20が閉状態から開状態になることに連動してフロントカム34及びリアカム35が回動し、
図4(a)の当接状態から
図4(b)の圧解除状態に切り替わる。なお、
図4(b)はフロントドア19及びリアドア20の両方が開いており、フロントカム34及びリアカム35の両方が回動した状態の圧解除状態となっている。
図5はフロントカム34とリアカム35とシャフト部材37の関係を示す図である。
図5に示すようにフロントカム34の軸部34Dにリアカム35の穴部35Dが係合する形でシャフト部材37にフロントカム34とリアカム35が保持されている。これによりフロントカム34とリアカム35は独立して回動可能であり、フロントドア19とリアドア20のどちらか一方が開状態にあるときには、開いているドアに対応したカムのみが回動した状態となる。また、フロントカム34、リアカム35、圧解除アーム36、圧解除アームホルダ40は定着装置9の長手両側に配置されており、両側に配置されたフロントカム34はシャフト部材37で連結されている。フロントカム34及びリアカム35には圧解除アーム36を上方に持ち上げるためのカム面が設けられており、回動することで定着装置9を圧解除状態にする。フロントカム34とリアカム35は独立して回動可能であるため、フロントカム34とリアカム35の少なくとも一方が回動していれば圧解除状態となる。すなわち、フロントドア19とリアドア20の少なくとも一方が開状態にあれば、圧解除状態となる。次に
図6を用いてリアドア20に連動した圧解除について説明する。
図6はリアドア20を示す斜視図であり、
図7はリアドア20の開閉による定着装置9の加圧解除機構の動作を示す説明図であり、リアカム35部分での断面図である。
図6のようにリアドア20は定着装置9を圧解除するための第一リアドア係合部20Aと第二リアドア係合部20Bを両端にそれぞれ有している。これは前述の通り定着装置9の長手方向の両端部に配置されているリアカム35がお互い独立して回動できるためであり、第一リアドア係合部20A及び第二リアドア係合部20Bによって両側のリアカム35をそれぞれ回動させることができる。
【0021】
続いて
図7を用いてリアドア20の開閉時の定着装置9の加圧解除機構の動作を説明する。
図7(a)はリアドア20が閉状態で、定着ニップ部Nが
図4(a)の加圧状態の図である。
図7(b)はリアドア20が開状態で、定着ニップ部Nが
図4(b)の圧解除状態の図である。リアドア20が開き始めるとリアドア20の第一リアドア係合部20Aはリアカム35の面35Gと接触する。さらにリアドア20を開くとリアドア20に設けられた第二リアドア係合部20Bがリアカムの面35Fと接触する。これらによりリアドア20の開放方向の回動に連動し、リアカム35が
図7の時計周りに回動する。最終的にリアカム35は
図7(b)のようにリアカム35の回動軸中心と同心円である円弧部35Bが圧解除アーム36と当接した位置で回動が止まる。ここでは第二リアドア係合部20Bとリアカムの面35Fは接触している。リアドア20を開状態から閉状態に移動させる場合にリアドア20の第一リアドア係合部20Aがリアカム35の面35Eに当接し、リアカム35を反時計方向に回動させ、最終的に
図4(a)に示す当接状態となる。
【0022】
次に
図8~
図12を用いてフロントドア19に連動した圧解除について説明する。
図8はフロントドア19に連動して定着装置9の加圧解除機構と係合する係合機構を示す斜視図である。係合機構はフロントドア19の開閉に連動して定着ニップ部Nの加圧および圧解除を行うための機構である。係合機構はフロントドア19と係合しているフロントドア係合部材38、水平方向に移動可能なスライド部材50、フロントカム34と係合してフロントカム34を回動させるカム係合部材(揺動部材)51からなる。本実施例1においては、カム係合部材51はスライド部材50に対して加圧ローラ11の回転軸と平行な軸周りに回動可能に連結されている。尚、本実施例はこの構成に限定されるものではなく、カム係合部材51とスライド部材50の間に別の部材が回動可能に連結されていてもよい。
【0023】
フロントドア係合部材38はスライド部材50に回動可能に保持されており、長穴38Aを有している。フロントドア19からフロントドア19の回動軸方向に伸びたボス19Aが長穴38Aに係合している。カム係合部材51はスライド部材50の軸50Aに回動可能に保持されており、ガイドボス51Aとフロントカム34と係合するためのカム係合部材51のU字形状部の先端側に設けられた第1の係合部51B、後端側に設けられた第2の係合部51Cを有する。フロントカム34は係合部51B、係合部51Cと係合するためのボス34Cを有する。ガイドボス51Aとフロントカム34のボス34Cは平行に設けられており、ガイドボス51Aは画像形成装置本体内に設けられたガイド溝52に係合している。スライド部材は水平方向移動可能に不図示の部品によって画像形成装置本体内に保持されている。
【0024】
続いて、フロントドア19の開閉動作に連動した係合機構の動作について
図9~
図13を用いて説明する。
図9はフロントドア19と係合機構の画像形成装置本体前側の動作を示す説明図であり、
図9(a)はフロントドア19が閉状態の図、
図9(b)はスライド部材50が水平移動し始める状態の図、
図9(c)はフロントドア19が開状態の図である。フロントドア19が閉状態から回動軸19Bを中心に
図9(a)の時計回りに回動し始めるとボス19Aは長穴38A内を滑るように移動し、フロントドア係合部材38は回動軸38Cを中心に時計回りに回動する。このとき、スライド部材50は水平移動を行わない。そして長穴38Aの端面38Bとフロントドア19のボス19Aが接触し、
図9(b)に示す状態となる。フロントドア19がさらに回動するとボス19Aと長穴38Aの端面38Bが接触したまま移動し、スライド部材50は所定距離L1だけ水平移動を行う。最終的に
図9(c)に示す開状態の位置まで移動を行う。
【0025】
図10はカム係合部材51と加圧解除機構の動作を示す説明図である。
図10はフロントドア19が閉状態の図であり、
図11から
図13まで順にフロントドア19が開いていく過程でのカム係合部材51と加圧解除機構の動作を示している。
図10に示すようにフロントドア19が閉状態において、カム係合部材51の係合部51Bはフロントカム34のボス34Cから離間した位置にある。フロントドア19が開いていくと、スライド部材50が水平移動をしていく。すると、カム係合部材51のガイドボス51Aがガイド溝52の斜面部52Aに沿って移動することで、カム係合部材51はスライド部材50との係合部である軸50A周りに回動しながら移動する。これにより、第1の係合部51Bは上方へ移動し、第2の開口側からフロントカム34のボス34Cの図内左面である第1の被係合部34E1に係合部51Bが当接し
図11に示す状態となる。さらにスライド部材50が水平移動すると、カム係合部材51のガイドボス51Aがガイド溝52の水平部に沿って移動し、カム係合部材51はスライド部材50と一体で水平移動を行う。その際、カム係合部材51の係合部51Bがフロントカム34を回動させ
図12に示す状態となる。最終的にスライド部材が所定距離L1だけ移動し終えると、
図13に示す圧解除状態となる。
【0026】
フロントドア19を開状態から閉状態に移動させる場合には、カム係合部材51の動きはこれまで説明した逆の動きとなる。フロントカム34のボス34Cの図内右面である第2の被係合部34E2は前記カム係合部材51の第2の係合部51Cよりも第2の開口側にある。フロントドア19が開状態から閉状態になる過程でカム係合部材51の第2の係合部51Cがフロントカム34の第2の被係合部34E2を第2の開口側に押すことでフロントカム34が回動し、定着ニップ部Nに付勢力が加わるようになる。
図10に示すように、フロントドア19が閉状態では、カム係合部材51の第2の係合部51Cとフロントカム34の第2の被係合部34E2は当接していない。尚、フロントドア19が閉状態では、第2の係合部51Cとボス34Cが当接する位置となるようにカム係合部材51が移動してもよい。また、ボス34Cが第1被係合部と第2被係合部を有する実施例を説明したが、第1被係合部と第2被係合部はそれぞれ別々のボス部に設けられるようにしてもよい。
【0027】
続いて定着装置9を取り外す手順について説明する。
図14(a)は画像形成装置101を左背面からみた斜視図、
図14(b)はリアドア20の外し方を示す説明図、
図14(c)はリアドアを取り外した状態の画像形成装置101の斜視図、
図14(d)は定着装置9の取り外し方を示す説明図である。リアドア20は
図14(a)に示すリアカバー70に回動可能に支持されており、締結用ビス80を外したのちに
図14(b)に示すようにリアドア20とリアカバー70は一体で取り外される。これにより定着装置9へ着脱のためにアクセスが可能となる。
【0028】
これまで説明した通り、フロントドア19が閉状態である
図10において、第1の係合部51Bは定着装置9を画像形成装置101から取り外す際に第1の被係合部34E1が移動する経路上から退避した位置にある。したがって、
図15に示す通り定着装置9はX方向へ取り外し可能となっている。尚、第1の被係合部34E1が移動する経路は
図15に示すPであり、第2の開口側から見て真正面に移動する経路となる。ユーザーが係合機構と定着装置9の係合部を解除するといった作業を行うことなく定着装置9の交換作業が可能となっており、ユーザビリティを損なうことなく定着装置9の交換が可能となる。
【0029】
また、本実施例における加圧解除機構はフロントドア19とリアドア20とでそれぞれ独立して連動している。そのため、リアドア20に連動した加圧解除機構が加圧状態と圧解除状態いずれの場合においても、フロントドア19が閉状態において、定着装置9の着脱が可能である。また、本実施例において、第1の係合部51Bは定着装置9を画像形成装置101から取り外す際の第1の被係合部34E1の経路上から完全に退避した位置にあった。しかし、完全に退避した位置にいなくともよい。係合機構を構成する部品間の係合部のクリアランス分は、第1の被係合部34E1が第1の係合部51Bを押すことで第1の係合部51Bが移動しうる。すなわち、定着装置9を画像形成装置101から取り外す際に第1の被係合部34E1が第1の係合部51Bを押すことで第1の係合部51Bが第1の被係合部34E1の経路から退避する構成としてもよい。
【0030】
なお、本実施例において、フロントドア19と連動して定着装置9と係合する係合機構として、フロントドア係合部材38、スライド部材50、カム係合部材51の3部品からなる構成について説明した。しかし、係合機構は3部品以外の部品数で構成されていても良い。このように、上記実施例に記載されている構成部品の機能、材質、形状その配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明をそれらのみに限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更可能である。
【0031】
(実施例2)
次に本発明の実施例2について
図16及び
図17を用いて説明する。第1の実施形態と同一または相当部分は符号を同じくして詳細な説明を省略する。本実施例における係合機構はフロントドア19と連結するフロントドア係合部材38、水平方向に移動可能なスライド部材60、フロントカム34と係合してフロントカム34を回動させるカム係合部材61からなる。
【0032】
本実施例2においては、カム係合部材61はスライド部材60の軸60Aに回動可能に連結されている。すなわち、カム係合部材61はスライド部材60に対して加圧ローラ11の回転軸と直交する軸周りに回動可能に連結されている。尚、カム係合部材61とスライド部材60の間に別の部材が回動可能に連結されていてもよい。また、ガイドボス61Aとフロントカム34と係合するための係合部61Bを有する。フロントカム34は係合部61Bと係合するためのボス34Cが伸びている。ガイドボス61Aとフロントカム34のボス34Cは直交するように設けられており、ガイドボス61Aは画像形成装置本体内に設けられたガイド溝62に係合している。スライド部材は水平方向移動可能に不図示の部品によって画像形成装置本体内に保持されている。
【0033】
図16はカム係合部材61と加圧解除機構の動作を示す斜視図であり、
図17は本体上方から見た上面図である。
図16(a)、
図17(a)はフロントドア19が閉状態の図、
図16(b)、
図17(b)はカム係合部材61とフロントカム34が係合し始める状態の図、
図16(c)、
図17(c)はフロントドア19が開状態の図である。
図16(a)に示すようにフロントドア19が閉状態において、カム係合部材61の係合部61Bはフロントカムのボス34Cから離間した位置にある。スライド部材60が水平移動を始めるとカム係合部材61は水平移動しながら、ガイドボス61Aがガイド溝62の斜面部62Aに沿って移動することでスライド部材60の軸60A周りに回動しながら移動する。これにより、係合部61Bは定着装置9へ近づく方向へ移動し、フロントカム34のボス34Cに当接し
図16(b)に示す状態となる。さらにスライド部材60が水平移動すると、カム係合部材61のガイドボス61Aがガイド溝62の垂直部に沿って移動し、カム係合部材61はスライド部材60と一体で水平移動を行う。その際、カム係合部材61の係合部61Bがフロントカム34を回動させる。最終的にスライド部材60が実施例1の
図9(c)同様に所定距離L1だけ移動し終えると、
図16(c)に示す圧解除状態となる。
【0034】
フロントドア19を開状態から閉状態に移動させる場合には、これまで説明した逆の動作を行う。これまで説明した通り、
図16(a)、
図17(a)に示すフロントドア19が閉状態において、係合機構(カム係合部材61)はフロントカム34の着脱経路上から退避した位置にある。したがって、
図18に示す通り定着装置9はX方向へ着脱可能となっている。ユーザーが係合機構と定着装置9の係合部を解除するといった作業を行うことなく定着装置9の交換作業が可能となっており、ユーザビリティを損なうことなく定着装置9の交換が可能となる。
【0035】
また、本実施例における加圧解除機構はフロントドア19とリアドア20とでそれぞれ独立して連動している。そのため、リアドア20に連動した加圧解除機構が当接状態と圧解除状態いずれの場合においても、フロントドア19が閉状態において、定着装置9の着脱が可能である。また、本実施例において、カム係合部材61は定着装置9の着脱経路上から完全に退避した位置にあった。しかし、完全に退避した位置にいなくともよい。例えば、定着装置9を取り出す過程において、フロントカム34がカム係合部材61を押してカム係合部材61を回動させることでカム係合部材51を着脱経路上から退避させるようにしても良い。
【0036】
なお、本実施例において、フロントドア19と連動して定着装置9と係合する係合機構として、フロントドア係合部材38、スライド部材60、カム係合部材61の3部品からなる構成について説明した。しかし、係合機構は3部品以外の部品数で構成されていても良い。このように、上記実施例に記載されている構成部品の機能、材質、形状その配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明をそれらのみに限定するものではなく、本実施例の趣旨の範囲で適宜変更可能である。
【0037】
[付記]
上記実施形態は以下の画像形成装置を少なくとも開示する。
【0038】
(項目1)
シート上に形成されたトナー像をシートに定着させる定着ユニットであって、シートを加熱する加熱ユニットと、前記加熱ユニットに圧接して定着を行うための定着ニップ部を形成する加圧部材と、前記加圧部材と前記加熱ユニットを圧接させるために付勢力を加える付勢部材と、前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減させる、もしくは解除させる加圧解除機構と、を有する定着ユニットと、
前記定着ユニットを着脱可能に収容する装置本体であって、前記装置本体の第1の開口に対して開閉可能に設けられた第1の開閉部材と、前記加圧解除機構、および、前記第1の開閉部材と係合し、前記第1の開閉部材の開閉に連動する係合機構と、前記定着ユニットを着脱するための第2の開口と、を有する装置本体と、を備え、
前記第1の開閉部材が閉じられている状態では前記付勢部材が前記定着ニップ部に前記付勢力を加え、前記第1の開閉部材が閉じられている状態から開かれていく過程で前記係合機構が動くことで前記加圧解除機構が前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減させる、もしくは解除する画像形成装置において、
前記係合機構は第1の係合部を有し、前記加圧解除機構は前記第1の係合部と係合する第1の被係合部を有し、
前記第1の開閉部材が閉じられている状態から開かれていく過程では、
前記第1の被係合部よりも前記第2の開口側にある前記第1の係合部が前記第1の被係合部を前記第2の開口側から押すことで前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減もしくは解除させていき、
前記第1の開閉部材が閉じられている状態では前記第1の係合部と前記第1の被係合部の係合が解除され、前記定着ユニットを前記第2の開口から取り出す際の前記第1の被係合部の経路上から前記第1の係合部が退避していることを特徴とする画像形成装置。
【0039】
(項目2)
項目1に記載の画像形成装置であって、
前記第1の開閉部材が開かれていく過程で前記第1の係合部が前記第1の被係合部に係合することを特徴とする画像形成装置。
【0040】
(項目3)
項目1から2に記載の画像形成装置であって、
前記係合機構は第2の係合部を有し、
前記加圧解除機構は第2の被係合部を有し、
前記第2の被係合部は前記第2の係合部よりも前記第2の開口側にあって、
前記第1の開閉部材が閉じられる過程では、前記第2の係合部は前記第2の被係合部と係合しており、前記第2の係合部が前記第2の被係合部を押すことで前記定着ニップ部に前記付勢力が加わるようになることを特徴とする画像形成装置。
【0041】
(項目4)
項目1から3に記載の画像形成装置であって、
前記第1の係合部は前記第2の係合部より前記第2の開口側にあることを特徴とする画像形成装置。
【0042】
(項目5)
項目1から4に記載の画像形成装置であって、
前記加圧解除機構は、前記付勢部材に作用することで前記付勢力を調整できる回動可能なカム部材を有し、前記カム部材が前記第1の被係合部を有していることを特徴とする画像形成装置。
【0043】
(項目6)
項目1から5に記載の画像形成装置であって、
前記加圧部材は回転軸を有する加圧ローラであって、
前記係合機構は前記第1の開閉部材の開閉に応じて水平方向に移動可能に保持されたスライド部材と、
前記スライド部材に前記加圧ローラの回転軸と平行な軸周りに回動可能に保持された揺動部材と、
を有し、前記揺動部材が前記第1の係合部を有することを特徴とする画像形成装置。
【0044】
(項目7)
項目1から5に記載の画像形成装置であって、
前記加圧部材は回転軸を有する加圧ローラであって、
前記係合機構は前記第1の開閉部材の開閉に応じて水平方向に移動可能に保持されたスライド部材と、
前記スライド部材に前記加圧ローラの回転軸と直交する軸周りに回動可能に保持された揺動部材と、
を有し、前記揺動部材が前記第1の係合部を有することを特徴とする画像形成装置。
【0045】
(項目8)
項目1から7に記載の画像形成装置であって、
前記装置本体は前記定着ニップ部でのジャム処理のための第2の開閉部材を前記第2の開口の少なくとも一部を覆う位置に有し、前記第2の開閉部材の開閉動作は前記加圧解除機構と連動することで前記定着ニップ部に加わる前記付勢力を低減、もしくは解除させることができることを特徴とする画像形成装置。
【0046】
(項目9)
項目8に記載の画像形成装置であって、
前記第2の開閉部材の開閉動作は前記係合機構とは連動しないことを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0047】
9 定着装置
19 フロントドア
20 リアドア
34 フロントカム
35 リアカム
38 フロントドア連結部材
50、60 スライド部材
51、61 カム係合部材