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2025-56690銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極
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  • -銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極 図1
  • -銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極 図2
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  • -銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025056690
(43)【公開日】2025-04-08
(54)【発明の名称】銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/00 20060101AFI20250331BHJP
   C23C 22/26 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
C23F11/00 C
C23C22/26
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213878
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】112136707
(32)【優先日】2023-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】鄭 ▲維▼昇
(72)【発明者】
【氏名】謝 ▲育▼淇
(72)【発明者】
【氏名】邱 馨慧
【テーマコード(参考)】
4K026
4K062
【Fターム(参考)】
4K026AA06
4K026AA22
4K026BA06
4K026BB10
4K026CA16
4K026CA20
4K026CA37
4K026DA03
4K062AA01
4K062BA10
4K062BB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極を提供する。
【解決手段】酸化防止銅箔は、銅箔基材と、銅箔基材に形成された酸化防止層と、を備える。前記酸化防止層は、クロム酸化合物に由来するクロムを含み、前記酸化防止層は、アミノテトラゾール化合物および窒素含有複素環式化合物に少なくとも部分的に由来する窒素を含む。酸化防止銅箔は、以下の特性(a)~(d)を満たし、(a)酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定したクロム含有量は5μg/m~35μg/mであり、(b)酸化防止層のX線光電子分光装置(XPS)で測定した窒素含有量は0.1~10質量%であり、(c)酸化防止層は、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、(d)酸化防止銅箔の250℃で10分間焼成前後の色差ΔEは8以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔基材を提供することと、
前記銅箔基材をクロム酸化合物、アミノテトラゾール化合物及び含窒素複素環化合物を含む酸化防止液に浸すことと、
前記銅箔基材を前記酸化防止液に所定時間浸すか、若しくは電解させることによって、前記銅箔基材の少なくとも一面に酸化防止層が形成されて、酸化防止銅箔を形成することと、を含む、銅箔の表面処理方法であって、
前記酸化防止銅箔は以下の特性(a)~(d)を満たし、
(a)前記酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定したクロム含有量は5μg/m~35μg/mであると共に、前記酸化防止層におけるクロムは、前記クロム酸化合物に由来し、
(b)前記酸化防止層のX線光電子分光装置(XPS)で測定した窒素含有量は0.1質量%~10質量%であると共に、前記酸化防止層における窒素の少なくとも一部は、前記アミノテトラゾール化合物及び前記窒素含有複素環式化合物に由来し、
(c)前記酸化防止層は、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、
(d)前記酸化防止銅箔の250℃で10分間焼成の前後の色差ΔEは8以下であることを特徴とする、銅箔の表面処理方法。
【請求項2】
前記酸化防止液において、前記クロム酸化合物の濃度は0.1g/L~5g/Lであり、
前記クロム酸化合物は、クロム酸(chromic acid)、重クロム酸(dichromic acid)、及び重クロム酸カリウム(potassium dichromate)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の銅箔の表面処理方法。
【請求項3】
前記酸化防止液において、前記アミノテトラゾール化合物の濃度は0.1g/L~10g/Lであり、前記含窒素複素環化合物の濃度は0.1g/L~10g/Lであり、前記アミノテトラゾール化合物と前記含窒素複素環化合物との質量比(前記アミノテトラゾール化合物:前記含窒素複素環化合物)は1:5~5:1である、請求項1に記載の銅箔の表面処理方法。
【請求項4】
前記アミノテトラゾール化合物は、5-アミノテトラゾール(5-aminotetrazole)であり、前記含窒素複素環化合物は、二環式含窒素複素環化合物である、請求項3に記載の銅箔の表面処理方法。
【請求項5】
前記含窒素複素環化合物は、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)である、請求項4に記載の銅箔の表面処理方法。
【請求項6】
前記酸化防止液は、1,5-ジアミノテトラゾール、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、及び3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールからなる群から選択される少なくとも2つを更に含む、請求項1に記載の銅箔の表面処理方法。
【請求項7】
前記銅箔基材を前記酸化防止液に所定時間浸すか、若しくは電解させる前記所定時間は、0.1秒~10秒であり、電解めっき条件の電流密度は、0.1~5ASD(A/dm)である、請求項1に記載の銅箔の表面処理方法。
【請求項8】
銅箔基材と、
前記銅箔基材の一面に形成された酸化防止層と、を備える、酸化防止銅箔であって、
前記酸化防止層は、クロム酸化合物に由来するクロムを含み、前記酸化防止層は、アミノテトラゾール化合物および窒素含有複素環式化合物に少なくとも部分的に由来する窒素を含み、
前記酸化防止銅箔は、以下の特性(a)~(d)を満たし、
(a)前記酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定したクロム含有量は5μg/m~35μg/mであり、
(b)前記酸化防止層のX線光電子分光装置(XPS)で測定した窒素含有量は0.1質量%~10質量%であり、
(c)前記酸化防止層は、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、
(d)前記酸化防止銅箔の250℃で10分間焼成の前後の色差ΔEは8以下であることを特徴とする、酸化防止銅箔。
【請求項9】
前記銅箔基材の厚みは、1μm~10μmであり、前記酸化防止層の厚みは、1nm~100nmである、請求項8に記載の酸化防止銅箔。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の酸化防止銅箔を含む、リチウム電池の負極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅箔の技術分野に関し、特に、銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の銅箔技術の発展において、銅箔の酸化を回避するために、銅箔の表面に酸化防止層が形成される。銅箔の表面に酸化防止層が形成されていないと、銅箔の表面が室温や高温の大気環境で酸化しやすくなって、当該銅箔は長い時間に保存することができず、高温の作業に適さない(即ち、銅箔の耐熱性が不良である)。
【0003】
従来の銅箔の表面に酸化防止層が形成される方法として、電解によってニッケル(Ni)メッキ層、亜鉛(Zn)メッキ層、又はニッケル-亜鉛(Ni-Zn)合金メッキ層が形成されることである。
【0004】
しかしながら、前記金属元素(例えば、ニッケル、亜鉛)を含む酸化防止層を備える銅箔は、リチウム電池に適用しない。前記銅箔をリチウム電池に応用すると、前記リチウム電池の機能及び安定性は、ニッケル及び亜鉛などの金属元素によって低減されることがある。
【0005】
銅箔をリチウム電池に応用できるために、従来の技術では、酸化防止層の成分としてクロム酸とブドウ糖を使用しており、銅箔が室温で酸化しにくくなり、操作温度180℃で10分間加熱前後の銅箔の色差ΔEは8未満であってもよい。即ち、前記銅箔はある程度の耐熱性を有する。ただし、酸化防止層の成分としてクロム酸とブドウ糖を用いる際に、より高い温度(例えば、250℃)で色差ΔEは依然として8を超えるため、その応用が限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、銅箔の表面処理方法及び酸化防止銅箔を提供し、より優れた耐熱程度を提供する。例えば、本発明に係る銅箔は、250℃の操作温度で10分間焼成した後でも、前記銅箔の色差ΔEは依然として8未満であることができる。即ち、本発明に係る銅箔は、従来の技術における、酸化防止層の成分としてクロム酸とブドウ糖を用いた銅箔に比べて、より顕著な耐熱程度を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、銅箔の表面処理方法を提供する。銅箔の表面処理方法は、銅箔基材を提供することと、前記銅箔基材をクロム酸化合物、アミノテトラゾール化合物及び含窒素複素環化合物を含む酸化防止液に浸して、前記銅箔基材を前記酸化防止液に所定時間浸すか、若しくは電解させることによって、前記銅箔基材の少なくとも一面に酸化防止層が形成されて、酸化防止銅箔を形成することと、を含む。
【0008】
ここで、前記酸化防止銅箔は、以下の特性(a)~(d)を満たし、(a)前記酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定したクロム含有量は5μg/m~35μg/mであると共に、前記酸化防止層におけるクロムは、前記クロム酸化合物に由来し、(b)前記酸化防止層のX線光電子分光装置(XPS)で測定した窒素含有量は0.1質量%~10質量%であると共に、前記酸化防止層における窒素の少なくとも一部は、前記アミノテトラゾール化合物及び前記窒素含有複素環式化合物に由来し、(c)酸化防止銅箔は、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、(d)酸化防止銅箔の250℃で10分間焼成の前後の色差ΔEは8以下である。
【0009】
好ましくは、前記酸化防止液において、前記クロム酸化合物の濃度は0.1g/L~5g/Lである。
【0010】
好ましくは、前記クロム酸化合物は、クロム酸(chromic acid)、重クロム酸(dichromic acid)、重クロム酸カリウム(potassium dichromate)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0011】
好ましくは、前記酸化防止液において、前記アミノテトラゾール化合物の濃度は0.1g/L~10g/Lであり、前記含窒素複素環化合物の濃度は0.1g/L~10g/Lであり、前記アミノテトラゾール化合物と前記含窒素複素環化合物との質量比(前記アミノテトラゾール化合物:前記含窒素複素環化合物)は1:5~5:1である。
【0012】
好ましくは、前記アミノテトラゾール化合物は、5-アミノテトラゾールであり、前記含窒素複素環化合物は、二環式含窒素複素環化合物である。
【0013】
好ましくは、前記含窒素複素環化合物は、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)である。
【0014】
好ましくは、前記酸化防止液2は、1,5-ジアミノテトラゾール、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、及び3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールからなる群から選択される少なくとも2つを更に含む。
【0015】
好ましくは、前記銅箔基材を前記酸化防止液に所定時間浸すか、若しくは電解させる所定時間は、0.1秒~10秒であり、電解めっき条件の電流密度は、0.1~5ASD(A/dm)である。
【0016】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、酸化防止銅箔を提供する。酸化防止銅箔は、銅箔基材と、前記銅箔基材の一面に形成された酸化防止層と、を備え、前記酸化防止層は、クロム酸化合物に由来するクロムを含み、前記酸化防止層は、アミノテトラゾール化合物および窒素含有複素環式化合物に少なくとも部分的に由来する窒素を含み、前記酸化防止銅箔は、以下の特性(a)~(d)を満たし、(a)前記酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定したクロム含有量は5μg/m~35μg/mであり、(b)前記酸化防止層のX線光電子分光装置(XPS)で測定した窒素含有量は0.1質量%~10質量%であり、(c)前記酸化防止銅箔は、ヘッドスペースGC/MS分析(head space-GC/MS)によってC-N信号を検出し、(d)前記酸化防止銅箔の250℃で10分間焼成の前後の色差ΔEは8以下である。
【0017】
好ましくは、前記銅箔基材の厚みは、1μm~10μmであり、前記酸化防止層の厚みは、1nm~100nmである。
【0018】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、前記酸化防止銅箔を含むリチウム電池の負極を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有利な効果として、本発明に係る銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極は、「酸化防止銅箔は、銅箔基材と、前記銅箔基材に形成された酸化防止層と、を備える。前記酸化防止層は、クロム酸化合物に由来するクロムを含み、前記酸化防止層は、アミノテトラゾール化合物および窒素含有複素環式化合物に少なくとも部分的に由来する窒素を含む」及び「酸化防止銅箔は、以下の特性(a)~(d)を満たし、(a)酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定したクロム含有量は5μg/m~35μg/mであり、(b)酸化防止層のX線光電子分光装置(XPS)で測定した窒素含有量は0.1質量%~10質量%であり、(c)酸化防止銅箔は、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、(d)酸化防止銅箔の250℃で10分間焼成の前後の色差ΔEは8以下である」といった技術的特徴によって、本発明に係る銅箔は、従来の技術における、酸化防止層の成分としてクロム酸とブドウ糖を用いた銅箔に比べて、より顕著な耐熱程度を達成する。このように、リチウム電池の負極材料として用いることが特に適切すると共に、製品がより広く応用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る銅箔の表面処理方法を示す模式図である。
図2図1に係る銅箔の表面に酸化防止層が形成されることを示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る銅箔の一面に酸化防止層が形成されることを示す模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る銅箔の両面に酸化防止層が形成されることを示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る銅箔の表面処理方法の一つの変化例を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態に係る銅箔の表面処理方法のもう一つの変化例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0022】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0023】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の材料又はパラメータを叙述することがあるが、これらの材料又はパラメータは、これらの用語によって制限されるものではない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0024】
[銅箔の表面処理方法]
図1図6に示すように、本発明の実施形態において、工程S110と、工程S120と、工程S130と、工程S140と、工程S150と、を含む銅箔の表面処理方法を提供する。説明すべきことは、本実施形態における各工程の順番や操作方式はニーズに応じて調整することは可能であり、これに制限されるものではない。
【0025】
前記工程S110は、銅箔基材1(copper foil)を提供することを含む。
【0026】
前記銅箔基材1は例えば、電解銅箔(electrolytic copper foil)又は圧延銅箔(rolled copper foil)であってもよい。一つの実施形態において、前記銅箔基材1は電解銅箔であると共に、前記銅箔基材1は、リチウム電池の負極の製造に適するが、本発明はこれに制限されるものではない。前記銅箔基材1の厚みは例えば、1~10μmであり、3~8μmであることが好ましい。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、前記工程S110は、銅箔基板1表面の不純物または化学残留物を除去するように、前記銅箔基材1を水洗することを更に含む。
【0028】
前記工程S120は、貯液タンクTで抗酸化剤液2を調製し、前記銅箔基材1を酸化防止液2に浸しすることを含む(図1を参酌)。
【0029】
ここで、前記酸化防止液2は、以下の(1)~(3)の化合物を少なくとも含む。
(1)クロム酸化合物。
(2)アミノテトラゾール化合物。
(3)含窒素複素環化合物。
【0030】
ここで、(1)前記クロム酸化合物の酸化防止液での濃度は、0.1g/L~5g/Lであることが好ましく、0.1g/L~2g/Lであることが特に好ましい。
【0031】
本発明の一つの実施形態において、前記クロム酸化合物は、クロム酸(chromic acid)、重クロム酸(dichromic acid)、及び重クロム酸カリウム(potassium dichromate)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0032】
ここで、前記クロム酸化合物は、クロム酸であることが好ましい。
【0033】
クロム酸の化学式はHCrOであり、その化学構造は以下の通りである。
【化1】
【0034】
重クロム酸の化学式はHCrであり、化学構造は以下の通りである。
【化2】
【0035】
重クロム酸カリウムの化学式はKCrであり、化学構造は以下の通りである。
【化3】
【0036】
更に説明すると、(2)前記アミノテトラゾール化合物は、5-アミノテトラゾール(5-aminotetrazole)であり、その化学式はHNCNHであり、化学構造は以下の通りである。
【化4】
【0037】
ここで、前記アミノテトラゾール化合物の酸化防止液での濃度は、0.1g/L~10g/Lであることが好ましく、2g/L~8g/Lであることが特に好ましい。
【0038】
更に説明すると、(3)前記含窒素複素環化合物は、二環式含窒素複素環化合物であり、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)であることが好ましい。前記二環式含窒素複素環化合物は例えば、インドリン又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0039】
ここで、ベンゾトリアゾールの化学式はCであり、化学構造は以下の通りである。
【化5】
【0040】
ここで、前記含窒素複素環化合物の酸化防止液での濃度は、0.1g/L~10g/Lであることが好ましく、2g/L~8g/Lであることが特に好ましい。
【0041】
ここで、前記アミノテトラゾール化合物と前記含窒素複素環化合物との質量比(アミノテトラゾール化合物:含窒素複素環化合物)は、1:5~5:1であることが好ましく、1:2~2:1であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0042】
前記酸化防止液2は、以下の(4)~(6)含窒素複素環化合物の中の少なくとも1種を更に含んでもよい。
【0043】
(4)1,5-ジアミノテトラゾール(1,5-diaminotetrazole)。
(5)2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール(2-amino-1,3,4-thiadiazole)。
(6)3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール(1H-1,2,4-Triazole-3,5-diamine)。
【0044】
ここで、1,5-ジアミノテトラゾールの化学式はCHであり、化学構造は以下の通りである。
【化6】
【0045】
2-アミノ-1,3,4-チアジアゾールの化学式はCSであり、化学構造は以下の通りである。
【化7】
【0046】
3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールの化学式はCであり、化学構造は以下の通りである。
【化8】
【0047】
本発明の一つの実施形態において、前記酸化防止液2は、1,5-ジアミノテトラゾール、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、及び3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールからなる群から選択される少なくとも2つを含む。
【0048】
なお、前記(4)~(6)含窒素複素環化合物の、酸化防止液での濃度総合は0.1g/L~100g/Lであり、1g/L~20g/Lであることが特に好ましい。
【0049】
ここで、1,5-ジアミノテトラゾールの濃度は、1~100g/Lであり、1~10g/Lであることが好ましい。
【0050】
ここで、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾールの濃度は、0.1~10g/Lである。
【0051】
ここで、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールの濃度は、0.1~10g/Lである。
【0052】
ただし、本発明は、前記実施形態で挙げられた濃度の範囲に制限されることがない。
【0053】
本実施形態において、前記酸化防止液2の液体成分は水であり、例えば、脱イオン水(DI)、逆浸透水(RO)、又は超純水(MQ)であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0054】
前記工程S130は、前記銅箔基材1を前記酸化防止液2に浸すか、若しくは電解させることによって、前記銅箔基材1の少なくとも一面に酸化防止層1a(図2及び図3に示すように)が形成されることを含む。前記酸化防止層1aの厚みは、1~100nmであり、1~30nmであることが好ましい。
【0055】
本発明のもう一つの実施形態において、前記銅箔基材1の両面に酸化防止層1a(図4に示すように)が形成される。
【0056】
更に説明すると、前記銅箔基材1は、前記酸化防止液2に所定時間浸すか、若しくは電解させることによって、前記酸化防止層1aが形成される。
【0057】
本発明の一つの実施形態において、前記所定時間は、0.1秒~10秒であり、0.5秒~5秒であることが好ましい。例えば、前記所定時間は、0.3秒、0.5秒、1秒、3秒、又は5秒であってもよい。
【0058】
なお、前記銅箔基材1の酸化防止液での電解メッキ条件として、電流密度は0.1ASD~5ASD(即ち、A/dm、アンペア/平方センチメートル)である。例えば、前記電流密度は0.5ASD、0.8ASD、又は1ASDであってもよい。
【0059】
特筆すべきことは、本実施形態において、前記銅箔基材1は、一枚の銅箔を酸化防止液2に浸すことを例として説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0060】
図5に示すように、本発明の一つの実施形態において、前記銅箔基材1は、曲げ可能な連続シートである。前記銅箔基材1は、貯液タンクTの内部に設置されること、及びその周りにある複数のガイドローラーRによって、酸化防止液2にガイドされる。
【0061】
なお、前記銅箔基材1は、複数のガイドローラーRのスクロール速度の制御によって、前記銅箔基材1が前記酸化防止液2に所定時間浸漬される。
【0062】
図6に示すように、本発明のもう一つの実施形態において、前記貯液タンクTの中には更に、少なくとも一対の電極Eが設置されることによって、電極Eの通電で前記酸化防止液2に浸される銅箔基材1の電解メッキ作業を行う。ただし、本発明はこれに制限されるものではない。
【0063】
前記工程S140は、前記酸化防止層1aが形成された銅箔基材1を取り出して、送風と乾燥を行うことによって、酸化防止層1aの余分な液体成分(例えば、水分)を除去することを含む。
【0064】
前記工程S150は、酸化防止層1aが形成された銅箔基材1を巻き取ることにより、酸化防止銅箔CFが完成することを含むが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0065】
[酸化防止銅箔]
更に図3及び図4に示すように、本発明の実施形態に係る酸化防止銅箔CFは、図3に示すように、銅箔基材1と、銅箔基材1の一面に形成された酸化防止層1aと、を備える。もう一つの実施形態において、図4に示すように、前記銅箔基材1の両面に酸化防止層1aが形成される。
【0066】
前記銅箔基材1の厚みは例えば、1μm~10μmであり、5μm~8μmであることが好ましい。前記酸化防止層1aの厚みは、1nm~100nmであり、1nm~30nmであることが好ましい。
【0067】
前記酸化防止銅箔CFは、リチウム電池の負極(cathode)の製造に適用し、前記酸化防止銅箔CFは、以下の特性(a)~(d)を有する。
【0068】
(a)前記酸化防止銅箔CFの酸化防止銅層1aの蛍光X線分析装置(X-ray fluorescence spectroscopy,XRF)で測定したクロム含有量(chromium content)は、5μg/m(マイクログラム/平方メートル)~35μg/mであり、0μg/m~30μg/mであることが好ましい。ここで、前記酸化防止層1aにおけるクロム元素は、クロム酸化合物(即ち、前記酸化防止液におけるクロム酸化合物であり、例えば、クロム酸、重クロム酸、及び/又は重クロム酸カリウムが挙げられる)に由来する。特筆すべきことは、蛍光X線分析装置は、高エネルギーX線または物質に当たるガンマ線によって励起される二次X線を用いて、元素分析及び化学分析に応用し、また、材料におけるクロム含有量を定量することができる。
【0069】
(b)前記酸化防止銅箔CFの酸化防止層1aのX線光電子分光装置(X-ray photoelectron spectroscopy,XPS)で測定した窒素含有量(nitrogen content)は0.1質量%~10質量%であり、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~2質量%であることがより好ましい。前記酸化防止層1aにおける窒素元素の少なくとも一部は、前記酸化防止液におけるアミノテトラゾール化合物および窒素含有複素環式化合物に由来し、他部は、1,5-ジアミノテトラゾール、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、及び3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールからなる群から選択される少なくとも1つに由来する。特筆すべきことは、XPSは、材料における元素構成、実験式、及び含まれた元素の化学状態と電子状態を測定するための定量的エネルギー分光法である。この技術は、X線で分析しようとする材料を照射する同時に、材料の表面下1nm~10nmの範囲で逃される電子の運動エネルギーと数量を測定して、X線光電子スペクトルを得た。
【0070】
(c)前記酸化防止銅箔CFは、ヘッドスペースGC/MS分析(head space-GC/MS)によってC-N信号(C-N signal)を検出した。測定方法は例えば、前記酸化防止銅箔CFを150℃~250℃に加熱し、サンプルから生じたガスは、質量分析計に入力されて分析され、質量スペクトルの分析結果が出力され、質量スペクトルの分析結果にC-N信号のピークがあるかどうかを評価することができる。
【0071】
(d)前記酸化防止銅箔CFは、オーブンに置いて250℃で10分間焼成した。ここで、焼成前後の酸化防止銅箔CF表面の色を色彩計(chroma meter)で観察し、色差ΔEが8以下である。
【0072】
上述した構成により、前記酸化防止銅箔CFは、常温及び高温の両方では酸化しにくく、従来の技術における、酸化防止層の成分としてクロム酸とブドウ糖を用いた銅箔に比べて、より顕著な耐熱程度を達成する。
【0073】
特筆すべきことは、前記酸化防止層1aを形成するための酸化防止液2において、含窒素複素環化合物(例えば、ベンゾトリアゾール)は、酸化防止層1aを形成するための主体であり、酸化防止層1aに基本的な酸化防止特性及び耐熱性を与えることができる。アミノテトラゾール化合物(例えば、5-アミノテトラゾール)は、酸化防止層1aの緻密度を向上させることで、前述の抗酸化特性および耐熱性の向上を助けるものである。酸化防止液2に含まれた余分のアミノ含有アゾール化合物は、酸化防止特性を補強できる、複合配合を形成する。
【0074】
[実験データの測定]
以下、実施例及び比較例により、本発明の内容を詳しく説明するが、それらの実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0075】
実施例1について、0.6g/Lのクロム酸と、5g/Lの5-アミノテトラゾールと、5g/Lのベンゾトリアゾールと、2g/Lの1,5-ジアミノテトラゾールと、5g/Lの2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、2g/Lの3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、を含む酸化防止液である水溶液を調製した。銅箔基材(電解銅箔であり、その厚みは約6μmであった)の水洗いを行い、前記銅箔基材を前記酸化防止液に浸した。電流密度が0.8ASDの電解メッキ条件で、銅箔基材を0.5秒処理して、銅箔基材の表面に酸化防止層を形成して、酸化防止銅箔を得た。その後、酸化防止銅箔を酸化防止液から取り出し、風乾、巻き取りを行うことによって、酸化防止銅箔の製造を完了した。
【0076】
測定の結果について、実施例1に係る酸化防止銅箔のXRF分析によるクロム含有量は20μg/mであり、XPS分析による窒素含有量は0.5質量%であり、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、更に250℃で10分間焼成前後の色差ΔEは8以下であった。実施例1に係る酸化防止銅箔は、優れた酸化防止特性及び耐熱性を備えた。
【0077】
実施例2について、0.6g/Lのクロム酸と、5g/Lの5-アミノテトラゾールと、5g/Lのベンゾトリアゾールと、2g/Lの2-アミノ-1,3,4-チアジアゾールと、5g/Lの3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、を含む酸化防止液である水溶液を調製した。銅箔基材(電解銅箔であり、その厚みは約6μmであった)の水洗いを行い、前記銅箔基材を前記酸化防止液に浸した。電流密度が0.8ASDの電解メッキ条件で、銅箔基材を0.5秒処理して、銅箔基材の表面に酸化防止層を形成して、酸化防止銅箔を得た。その後、酸化防止銅箔を酸化防止液から取り出し、風乾、巻き取りを行うことによって、酸化防止銅箔の製造を完了した。
【0078】
測定の結果について、実施例2に係る酸化防止銅箔のXRF分析によるクロム含有量は20μg/mであり、XPS分析による窒素含有量は0.5質量%であり、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、更に250℃で10分間焼成前後の色差ΔEは8以下であった。実施例2に係る酸化防止銅箔は、優れた酸化防止特性及び耐熱性を備えた。
【0079】
参考例1について、0.6g/Lのクロム酸と、5g/Lの5-アミノテトラゾールと、5g/Lの1,5-ジアミノテトラゾールと、2g/Lの2-アミノ-1,3,4-チアジアゾールと、2g/Lの3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、を含む酸化防止液である水溶液を調製し、また、前記酸化防止液にベンゾトリアゾールが含まれていなかった。銅箔基材(電解銅箔であり、その厚みは約6μmであった)の水洗いを行い、前記銅箔基材を前記酸化防止液に浸した。電流密度が0.8ASDの電解メッキ条件で、銅箔基材を0.5秒処理して、銅箔基材の表面に酸化防止層を形成して、酸化防止銅箔を得た。その後、酸化防止銅箔を酸化防止液から取り出し、風乾、巻き取りを行うことによって、酸化防止銅箔の製造を完了した。
【0080】
測定の結果について、参考例1に係る酸化防止銅箔のXRF分析によるクロム含有量は20μg/mであり、XPS分析による窒素含有量は0.5質量%であり、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、更に250℃で10分間焼成前後の色差ΔEは10を超えた。参考例1に係る酸化防止銅箔の酸化防止特性及び耐熱性は実施例1~2に比べてやや劣った。その原因について、酸化防止層の緻密度が比較的に劣ったことを推測する。
【0081】
参考例2について、0.6g/Lのクロム酸、5g/Lのベンゾトリアゾール、2g/Lの1,5-ジアミノテトラゾールと、5g/Lの2-アミノ-1,3,4-チアジアゾールと、2g/Lの3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、を含む酸化防止液である水溶液を調製し、また、前記酸化防止液に5-アミノテトラゾールに含まれていなかった。銅箔基材(電解銅箔であり、その厚みは約6μmであった)の水洗いを行い、前記銅箔基材を前記酸化防止液に浸した。電流密度が0.8ASDの電解メッキ条件で、銅箔基材を0.5秒処理して、銅箔基材の表面に酸化防止層を形成して、酸化防止銅箔を得た。その後、酸化防止銅箔を酸化防止液から取り出し、風乾、巻き取りを行うことによって、酸化防止銅箔の製造を完了した。
【0082】
測定の結果について、参考例2に係る酸化防止銅箔のXRF分析によるクロム含有量は20μg/m、XPS分析による窒素含有量は0.5質量%であり、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、更に250℃で10分間焼成前後の色差ΔEは10を超えた。参考例2係る酸化防止銅箔の酸化防止特性及び耐熱性は実施例1~2に比べてやや劣った。その原因について、酸化防止層の緻密度が比較的に劣った。
【0083】
比較例1について、0.6g/Lのクロム酸と、2g/Lの3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールと、を含む酸化防止液である水溶液を調製し、前記酸化防止液に5-アミノテトラゾール及びベンゾトリアゾールが含まれていなかった。銅箔基材(電解銅箔であり、その厚みは約6μmであった)の水洗いを行い、前記銅箔基材を前記酸化防止液に浸した。電流密度が0.8ASDの電解メッキ条件で、銅箔基材を0.5秒処理して、銅箔基材の表面に酸化防止層を形成して、酸化防止銅箔を得た。その後、酸化防止銅箔を酸化防止液から取り出し、風乾、巻き取りを行うことによって、酸化防止銅箔の製造を完了した。測定の結果について、比較例1に係る酸化防止銅箔のXRF分析によるクロム含有量は20μg/mであり、XPS分析による窒素含有量は0質量%(検出できなかった)であり、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、更に250℃で10分間焼成前後の色差ΔEは20を超えた。比較例1に係る酸化防止銅箔の酸化防止特性及び耐熱性は、実施例1~2より遥かに劣った。
【0084】
比較例2について、0.6g/Lのクロム酸と、2g/Lの2-アミノ-1,3,4-チアジアゾールと、を含む酸化防止液である水溶液を調製し、前記酸化防止液に5-アミノテトラゾール及びベンゾトリアゾールが含まれていなかった。銅箔基材(電解銅箔であり、その厚みは約6μmであった)の水洗いを行い、前記銅箔基材を前記酸化防止液に浸した。電流密度が0.8ASDの電解メッキ条件で、銅箔基材を0.5秒処理して、銅箔基材の表面に酸化防止層を形成して、酸化防止銅箔を得た。その後、酸化防止銅箔を酸化防止液から取り出し、風乾、巻き取りを行うことによって、酸化防止銅箔の製造を完了した。測定の結果について、比較例2に係る酸化防止銅箔のXRF分析によるクロム含有量は20μg/mであり、XPS分析による窒素含有量は0質量%(検出できなかった)であり、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、更に250℃で10分間焼成前後の色差ΔEは20を超えた。比較例2に係る酸化防止銅箔の酸化防止特性及び耐熱性は、実施例1~2より遥かに劣った。
【0085】
上記のXRFでクロム含有量を分析し、XPS分析で窒素含有量を分析し、ヘッドスペースGC/MS分析でC-N信号を定性し、色差ΔEの分析方法については、前文に説明したので、ここで重複に説明しない。
【0086】
【表1】
【0087】
上記の実験結果によれば、実施例1~2で製造された酸化防止銅箔は、250℃で10分間焼成前後の色差ΔEはいずれも8以下であり、5-アミノテトラゾール及びベンゾトリアゾール(即ち、含窒素複素環化合物)を同時に含む酸化防止液で形成された酸化防止層は、銅箔に優れた酸化防止特性及び耐熱性を与えることを証明した。
【0088】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る銅箔の表面処理方法、酸化防止銅箔、及びリチウム電池の負極は、「酸化防止銅箔は、銅箔基材と、前記銅箔基材に形成された酸化防止層と、を備える。前記酸化防止層は、クロム酸化合物に由来するクロムを含み、前記酸化防止層は、アミノテトラゾール化合物および窒素含有複素環式化合物に少なくとも部分的に由来する窒素を含む」及び「酸化防止銅箔は、以下の特性(a)~(d)を満たし、(a)酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定したクロム含有量は5~35μg/mであり、(b)酸化防止層の蛍光X線分析装置(XRF)で測定した窒素含有量は0.1~10質量%であり、(c)酸化防止銅箔は、ヘッドスペースGC/MS分析によってC-N信号を検出し、(d)酸化防止銅箔の250℃で10分間焼成の前後の色差ΔEは8以下である」といった技術的特徴によって、本発明に係る銅箔は、従来の技術における、酸化防止層の成分としてクロム酸とブドウ糖を用いた銅箔に比べて、より顕著な耐熱程度を達成する。このように、リチウム電池の負極材料として用いることが特に適切すると共に、製品がより広く応用されることができる。
【0089】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
CF、CF’...酸化防止銅箔
1...銅箔基材
1a...酸化防止層
2...酸化防止液
T...貯液タンク
R...ガイドローラー
E...電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6