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特開2025-5680姿勢情報取得装置、撮像装置、及び姿勢情報取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005680
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】姿勢情報取得装置、撮像装置、及び姿勢情報取得方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20250109BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20250109BHJP
   H04N 23/58 20230101ALI20250109BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20250109BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B17/56 B
H04N23/58
H04N23/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105951
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】山内 将暉
【テーマコード(参考)】
2H105
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA03
2H105AA06
2H105AA12
2H105EE16
2K005CA04
2K005CA14
2K005CA24
2K005CA38
2K005CA40
2K005CA54
5C122EA41
5C122GD04
5C122HA76
5C122HA77
5C122HA82
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】 被駆動部を駆動させるアクチュエータを有する装置の被駆動部の姿勢情報を取得することが可能な姿勢情報取得装置を提供することができる。
【解決手段】 本発明の姿勢情報取得装置は、基台40に対して姿勢を変更可能な被駆動部に設けられ、被駆動部に加わる揺れを検出する揺れ検出部から、揺れ検出結果を取得する第1の取得手段と、被駆動部の駆動情報を取得する第2の取得手段と、揺れ検出結果と駆動情報とに基づいて、被駆動部の姿勢情報を算出する姿勢情報算出部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に対して姿勢を変更可能な被駆動部に設けられ、前記被駆動部に加わる揺れを検出する揺れ検出部から、揺れ検出結果を取得する第1の取得手段と、
前記被駆動部の駆動情報を取得する第2の取得手段と、
前記揺れ検出結果と前記駆動情報とに基づいて、前記被駆動部の姿勢情報を算出する姿勢情報算出部と、を備えることを特徴とする姿勢情報取得装置。
【請求項2】
前記姿勢情報算出部は、
前記揺れ検出結果から高周波成分を抽出して得られた信号と、前記駆動情報とに基づいて前記被駆動部の姿勢情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の姿勢情報取得装置。
【請求項3】
前記姿勢情報算出部は、
前記揺れ検出結果から高周波成分を抽出して得られた信号と、前記駆動情報とを加算した信号に基づいて前記被駆動部の姿勢情報を算出することを特徴とする請求項2に記載の姿勢情報取得装置。
【請求項4】
前記姿勢情報算出部は、前記駆動情報と前記揺れ検出結果とをフィルタに入力して得られた出力信号に基づいて前記被駆動部の姿勢に関する情報を算出し、
前記フィルタは誤差を含む入力値からシステムの状態を推定するためのフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の姿勢情報取得装置。
【請求項5】
前記フィルタはカルマンフィルタであることを特徴とする請求項4に記載の姿勢情報取得装置。
【請求項6】
前記揺れ検出結果は角速度信号であることを特徴とする請求項1に記載の姿勢情報取得装置。
【請求項7】
前記被駆動部は前記基台に対してパン、チルト、ロールの少なくともいずれかの駆動が行われるものであることを特徴とする請求項1に記載の姿勢情報取得装置。
【請求項8】
前記駆動情報は前記被駆動部の前記基台に対する位置を示す情報であることを特徴とする請求項1に記載の姿勢情報取得装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の姿勢情報取得装置と、前記基台と、前記被駆動部と、を有し、
前記被駆動部は撮像光学系からの光を撮像する撮像素子を含む撮像部を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1、5乃至8のいずれか1項に記載の姿勢情報取得装置と、
前記基台と、前記被駆動部と、
前記被駆動部が有する撮像部により撮像された画像の像ブレをブレ補正量に基づいて補正する像ブレ補正の制御手段を備え、
前記姿勢情報算出部は、前記駆動情報と前記揺れ検出結果と前記ブレ補正量に基づいて前記被駆動部の姿勢情報を算出し、
前記被駆動部は撮像光学系からの光を撮像する撮像素子を含む撮像部を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
前記姿勢情報算出部は、前記揺れ検出結果と前記ブレ補正量とに基づいて取得された、揺れ成分の影響の少なくとも一部が補正された画像に対応する揺れ成分と、前記駆動情報とに基づいて前記被駆動部の姿勢情報を算出することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記姿勢情報算出部は恵、前記揺れ検出結果から前記ブレ補正量を減算することにより、前記揺れ成分を取得することを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
基台に対して姿勢を変更可能な被駆動部に設けられ、前記被駆動部に加わる揺れを検出する揺れ検出部から、揺れ検出結果を取得する工程と、
前記被駆動部の駆動情報を取得する工程と、
前記揺れ検出結果と前記駆動情報とに基づいて、前記被駆動部の姿勢情報を算出する工程と、を有することを特徴とする姿勢情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動部の姿勢情報を取得する姿勢情報取得装置、撮像装置、及び姿勢情報の取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等の撮像装置には、搭載されたセンサの出力から相対的な姿勢を算出する機能を有するものがある。特許文献1では、撮像装置の動きを角速度センサと加速度センサ及び地磁気センサによって検出し、これらの出力を組み合わせて撮像装置の姿勢を算出する技術が開示されている。このように、撮像装置の動きを検出するセンサを使用することで、撮像装置の姿勢を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-181059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年、撮像部を回転させるアクチュエータを有し、卓上や天井等に固定して使用する撮像装置がある。このような撮像装置は、ユーザが撮像装置に対して駆動量を入力するか、または、撮像した映像の情報から自動的に駆動量を算出する等して、駆動目標値を決定し、その目標値に従ってアクチュエータを駆動させることで撮像方向を制御する。しかしながら、特許文献1には、このような撮像装置において姿勢情報を取得することについては考慮されていない。また、撮像装置に限らず、基台に対して回転駆動する等して姿勢を変更する被駆動部の姿勢情報を取得する場合も同様である。
【0005】
本発明は、撮像部などの被駆動部を駆動させるアクチュエータを有する装置の被駆動部の姿勢情報を取得することが可能な姿勢情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一側面としての姿勢情報取得装置は、基台に対して姿勢を変更可能な被駆動部に設けられ、前記被駆動部に加わる揺れを検出する揺れ検出部から、揺れ検出結果を取得する第1の取得手段と、前記被駆動部の駆動情報を取得する第2の取得手段と、前記揺れ検出結果と前記駆動情報とに基づいて、前記被駆動部の姿勢情報を算出する姿勢情報算出部と、を備えることを特徴とする。本発明のその他の特徴については発明を実施するための形態で説明をする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被駆動部を駆動させるアクチュエータを有する装置の被駆動部の姿勢情報を取得することが可能な姿勢情報取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】パンチルトカメラとその姿勢を説明するための概念図である。
図2】第1の実施形態および第2の実施形態のパンチルトカメラを説明するための構成図である。
図3】パンチルト駆動目標値とパンチルト駆動量を説明するためのグラフである。
図4】第1の実施形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出部の構成図である。
図5】第1の実施形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出処理を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出部を説明するための構成図である。
図7】第2の実施形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出処理を示すフローチャートである。
図8】第3の実施形態のパンチルトカメラを説明するための構成図である。
図9】第3の実施形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出部を説明するための構成図である。
図10】第3の実施形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第1~第3の実施形態1~3に共通する部分について最初に説明した後、それぞれの実施形態特有の部分について説明する。また、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。
【0010】
<共通部分>
図1~3を用いて、第1~第3実施形態に共通する構成について説明をする。第1~第3実施形態では、被駆動部が基台に対して駆動する装置として、パンチルトカメラを例に説明をする。
【0011】
図1は、パンチルトカメラ100の外観図である。パンチルトカメラ100は、基台40と、基台に対して姿勢を変更可能な被駆動部である撮像部10とチルト駆動部20とパン駆動部30とを備える。
【0012】
撮像部10は、撮像光学系を構成する撮像レンズ105と、撮像光学系により結像された被写体像を撮像する撮像素子106とを備える。
【0013】
チルト駆動部20は撮像部10をチルト方向に回転自由に支持する機構であり、回転駆動用のアクチュエータであるステッピングモータと、当該ステッピングモータを駆動するためのパルス信号を生成する集積回路(IC)を有する。チルト駆動部20は、集積回路にパルス数を設定することで、撮像部10をチルト方向に回転駆動させる。
【0014】
パン駆動部30はチルト駆動部20をパン方向に回転自由に支持する機構であり、回転駆動用のアクチュエータであるステッピングモータと、当該ステッピングモータを駆動するためのパルス信号を生成する集積回路で構成される。パン駆動部30は、集積回路にパルス数を設定することで、チルト駆動部20およびそれに支持されている撮像部10をパン方向に回転駆動させる。
【0015】
基台40はパン駆動部30を回転自由に支持する機構であり、天井や天板、三脚などに固定される。また、天板などに置いた状態で撮影してもよい。
【0016】
パンチルトカメラ100は、チルト駆動部20およびパン駆動部30の集積回路にパルス数を設定することで、撮像部10をパン方向およびチルト方向に回転させ、撮像部10の姿勢を変更することができる。
【0017】
なお、チルト駆動部20およびパン駆動部30のアクチュエータはステッピングモータに限定されず、ボイスコイルモータまたはその他のモータを使用してもよい。
【0018】
図1を用いてパンチルトカメラ100の被駆動部である撮像部10の姿勢について説明する。本実施形態では、撮像部10の動きに合わせて回転する、直交する3軸の座標系を定義し、その座標系が回転角で撮像部10の姿勢を表す。すなわち、算出する姿勢情報は、ある基準タイミングにおける座標系に対して、どれだけ回転したかという相対角度で表されるものとする。例えば、図1(a)のようにX軸、Y軸、Z軸を定義し、これを基準タイミングTにおける座標系Cとする。その後、撮像部10の姿勢が変化して、図1(b)のように、タイミングTにおいて、X軸、Y軸、Z軸のような座標系Cになったとする。この時の座標系Cから座標系Cへ変換するための回転角が、タイミングTにおける撮像部10の姿勢である。
【0019】
座標系の回転角は、例えば、基準タイミングにおける座標系を基準座標系として、オイラー角を使って表すことができ、本実施形態でもオイラー角を使って説明する。なお、オイラー角については公知の情報であるため、詳しい説明は省略する。また、図1では、撮像部10の光軸方向を座標系のZ軸に対応させているが、算出する姿勢は基準角度に対する相対角度で表されるため、座標系は任意に定義できる。尚、基準タイミングは、例えば、パンチルトカメラ100の電源起動時でもよいし、後述するクライアント装置から映像記録の指示を受けたタイミングでもよい。図2は、本発明の実施形態であるパンチルトカメラ100の構成を示すブロック図である。パンチルトカメラ100はネットワーク102を介して、クライアント装置(不図示)と接続されており、相互に通信可能である。
【0020】
クライアント装置は、パンチルトカメラ100に対してユーザがパンチルト駆動や画像(静止画と動画は問わない)記録を指示するコントローラや、パンチルトカメラ100で撮像した映像をユーザが確認するためのモニタ等を備える装置である。
【0021】
ネットワーク102は、例えば、インターネット、有線LAN、無線LAN、またはWAN等により実現される。なお、本実施形態では、ネットワークを介して撮像装置とクライアント装置を接続する場合について説明するが、ネットワーク以外のインタフェースで接続をしてもよく、パンチルトカメラ100を制御する方法をこれらに限定するものではない。
【0022】
通信制御部101は、ネットワーク102を介してクライアント装置から撮像部10へのパンチルト駆動指示を受け、パンチルト駆動量決定部103に駆動指示を出力する。具体的には、ユーザはクライアント装置で、パンチルト駆動の回転角度と駆動時間を設定し、これらがネットワーク102と通信制御部101とを介してパンチルト駆動量決定部103に入力される。また、クライアント装置から記録指示を受けると、記録制御部へ記録指示を出力する。
【0023】
パンチルト駆動量決定部103は、通信制御部101から受け付けた駆動指示が示す回転角度と駆動時間に基づいてパンチルト駆動目標値およびパンチルト駆動量を決定する。図3はパンチルト駆動目標値とパンチルト駆動量の一例を表すグラフである。パンチルト駆動目標値は撮像部10の目標姿勢角を表す時系列データである。例えば、図3(a)は、時刻t=0において、ターゲット角度D、ターゲット時間Tが入力された場合のパンチルト駆動目標値d(t)を表している。パンチルト駆動量決定部103は、ターゲット角度D、ターゲット時間Tが入力されると、初めにターゲット駆動時間を満たすように駆動開始タイミングt1、駆動終了タイミングt2を決定する。その後、タイミングt2においてパンチルト駆動目標値がターゲット角度Dに達するようにタイミングt1~タイミングt2間のパンチルト駆動目標値d(t)を算出する。
【0024】
パンチルト駆動目標値d(t)は、例えば、下記(式1)を用いて算出される。
【0025】
【数1】
【0026】
算出されたパンチルト駆動目標値は、撮像部10の姿勢算出のために姿勢情報算出部200に入力される。また、パンチルト駆動目標値は、姿勢算出の基準タイミングにおいて0で初期化され、以降、駆動指示が来るたびに積算されていく。
【0027】
一方、パンチルト駆動量とは、アクチュエータの駆動角速度を表す時系列データである。例えば、図3(b)は、タイミングt0において、ターゲット角度D、ターゲット時間Tが入力された場合のパンチルト駆動量ω(t)を表している。パンチルト駆動量ω(t)はパンチルト駆動目標値d(t)に基づいて算出され、例えば、パンチルト駆動目標値d(t)を時間微分することで、角速度として算出される。算出されたパンチルト駆動量は、パンチルト駆動指示部104に入力される。
【0028】
パンチルト駆動指示部104は、パンチルト駆動量決定部103から取得したパンチルト駆動量に基づいて、チルト駆動部20およびパン駆動部30の集積回路に設定するパルス数を算出し、算出したパルス数をチルト駆動部20及びパン駆動部30へ出力する。チルト駆動部20およびパン駆動部30のそれぞれは、パンチルト駆動支持部104から取得したパルス数をチルト駆動部20およびパン駆動部30のそれぞれの集積回路に設定する。これにより、パンチルト駆動量に基づいた角度でアクチュエータが駆動し、撮像部10の基台40に対する姿勢が変化する。
【0029】
なお、パンチルト駆動量決定部103はパンチルト駆動目標値を(式1)に基づいて算出し、一定速度でアクチュエータを駆動させる場合について説明したが、パンチルト駆動目標値の算出方法はこれに限定されない。例えば、パンチルト駆動量決定部103は加減速駆動させるためのパンチルト駆動目標値のパターンを予め保持しておき、入力された回転角度や駆動時間に基づいてそれらパターンを組み合わせることで、加減速を伴う駆動をさせてもよい。
【0030】
また、ここでは、パンチルト駆動量決定部103がクライアント装置からのユーザ指示に基づいてパンチルト駆動目標値およびパンチルト駆動量を決定する場合について説明したが、撮像部10のパンチルト駆動はこれに限定されない。例えば、パンチルト駆動量決定部103は、ユーザ指示の代わりに、後述する画像メモリ110に格納されている映像情報に基づいて回転角度と駆動時間を決定してもよい。これにより、パンチルトカメラ100による被写体の自動追尾が実現される。具体的には、パンチルト駆動量決定部103が入力された映像情報から被写体を検出し、算出した被写体移動量と被写体移動速度からパンチルト駆動の回転角度と駆動時間を決定する。被写体検出を行う別の回路を有し、被写体検出結果をパンチルト駆動量決定部103に入力する構成としてもよい。
【0031】
撮像部10は、撮像レンズ105、撮像素子106、角速度センサ107を有する。撮像素子106は撮像レンズ105を通して被写体を撮像し、撮像した画像信号を画像信号処理部108へ出力する。撮像素子106は、例えばCMOSイメージセンサ等で構成される。
【0032】
画像信号処理部108は、撮像素子106から出力された画像信号にホワイトバランス調整やガンマ補正等の信号処理を施し、生成された映像信号を画像メモリ110に格納する。
【0033】
画像メモリ110は映像信号を一時的に格納する記憶媒体である。画像メモリ110に格納された映像信号は、通信制御部101によりネットワーク102を介してクライアント装置に送信されたり、記録制御部111を介して記録媒体112へ記録されたりする。
【0034】
記録制御部111は、通信制御部101によりネットワーク102を介してクライアント装置から、映像記録の指示を受け、画像メモリ110に格納された映像信号と姿勢情報算出部200が出力した姿勢情報とを同期させて、記録媒体112に記録する。なお、第1~第3の実施形態では、パンチルトカメラ100が記録媒体112を備える場合について説明する。しかしながら、パンチルトカメラ100が記録媒体112を持たず、ネットワーク102を介してクライアント装置に映像信号および姿勢情報を送信し、クライアント装置側で記録してもよい。また、記憶媒体112は、パンチルトカメラ100に装着可能な可搬型の記憶媒体(例えばSDカード)でもよい。
【0035】
角速度センサ107は、撮像部10に加わる揺れを角速度として検出する検出部であり、直交する3軸まわりの角速度を検出する。検出した3つの角速度信号は姿勢情報算出部200に入力され、撮像部10の姿勢算出に使用される。本実施形態では、姿勢算出の説明を簡単にするために、角速度センサ107の検出軸をx軸、y軸、z軸とする。x軸が撮像部10の側面方向、y軸が撮像部10の上下面方向、z軸が撮像部10の光軸方向と一致するように角速度センサ107が取り付けられているものとする。
【0036】
姿勢情報算出部200はパンチルト駆動目標値と角速度信号に基づいて撮像部10の姿勢を算出する。一般的に、角速度センサや加速度センサ等の慣性センサの出力には電気的なノイズ特性やフィルタ演算による位相遅れ等による誤差が含まれており、角速度信号の特に低周波帯域には誤差成分が含まれている。そのため、慣性センサの出力だけに基づいて姿勢情報を算出すると、算出した姿勢情報の精度が低下してしまうという。
【0037】
一方、パンチルト駆動目標値は、慣性センサ出力に含まれるような電気的なノイズ成分を含まず、撮像光学系の姿勢変化を予め知ることができるため位相遅れによる誤差が生じない。しかしながら撮像部10の基台40に対するパンチルト駆動位置に関する情報は含まれているが、外力によってパンチルトカメラ100自体の姿勢が変化する成分は含まれていない。ここで、外力による姿勢変化とは、例えば、建物に固定されている場合は風や人の運動による振動の影響などによる姿勢変化のことを指す。そこで、第1~第3の実施形態の姿勢情報算出部200では、角速度信号とパンチルト駆動目標値とを用いて撮像部10の姿勢を算出する。算出方法の詳細については第1~第3の実施形態で説明をする。
【0038】
<第1の実施形態>
図4は第1の実勢形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出部200の機能ブロック図である。また、図5は姿勢情報算出部200による姿勢情報算出処理を示すフローチャートであり、任意の周期(例えば画像の取り込み周期など)で繰り返し実行される処理を表している。これら図面を参照して、本実施形態の姿勢情報算出部200による姿勢情報算出処理について説明する。
【0039】
本実施形態では、パンチルト駆動量決定部103が出力したパンチルト駆動目標値をフレーミング成分、角速度センサ107で検出した角速度信号に基づいて算出した角度を揺れ成分として、両者を合成して撮像部10の姿勢を算出する。
【0040】
本実施形態の姿勢情報算出部200は、角速度信号を角度信号に換算する角度換算部201と、角度信号から高周波成分を抽出する高周波成分抽出部202と、抽出された角度信号の高周波成分とフレーミング成分とを加算する加算器210とを有する。
【0041】
角度換算部201は、角速度センサ107が検出した角速度信号を積分演算することにより、角度信号(ψ、θ、φ)に変換する。下記(式2)は、角速度センサ107からの出力である角速度信号(ωx、ωy、ωz)を角度信号(ψ、θ、φ)に変換するための式である。(ωx、ωy、ωz)は角速度センサ107が検出したそれぞれ前述のx軸、y軸、z軸まわりの角速度を表している。角度信号ψ、θは、それぞれパンチルト駆動量決定部103が出力したパンチルト駆動目標値のパン方向の回転角ψ、チルト方向の回転角θに対応している。また、角度信号φは、撮像部10の光軸方向のまわりの回転角を表している。ここで、(ψG(t)、θG(t)、φG(t))は今回の処理で算出した角度信号であり、(ψG(t-1)、θG(t-1)、φG(t-1))は前回の処理で算出した角度信号である。
【0042】
行列Aは角速度センサ107が検出した角速度信号をオイラー角で表された角度変化量に変換するための変換行列であり、下記(式3)で表される。(θ、φ)は加算器210の出力からフィードバックされる撮像部10の姿勢角を表しており、θはチルト方向の回転角、φは撮像部10の光軸方向のまわりの回転角を表している。
【0043】
【数2】
【0044】
【数3】
【0045】
尚、角速度信号を角度信号に変換する方法はこの式を用いるものに限定されず、ローパスフィルタを用いた疑似積分や、数学的に積分する方法等、種々の公知の方法により角速度を角度に変換し、これを前回の角度信号に加算する方法を用いることができる。
【0046】
高周波成分抽出部202は、角度信号(ψ、θ、φ)に含まれる高周波成分を抽出する。高周波成分抽出部202は、例えばハイパスフィルタで構成される。
【0047】
加算器210は、高周波成分抽出部202により抽出された、角度信号(つまり揺れ成分)の高周波成分と、フレーミング成分とを加算することにより、揺れ成分とフレーミング成分を合成して撮像部10の姿勢情報を算出する。
【0048】
本実施形態の姿勢情報算出部200による姿勢情報算出処理のフローを図5を用いて説明する。まず、ステップS101において、現在の処理タイミングが前述した姿勢算出の基準タイミングであるかどうかを判断する。基準タイミングであると判断された場合には、ステップS102、ステップS103、ステップS104に示した初期化処理を実行する。
【0049】
まず、ステップS102で、角度換算部201は角度積算値(ψ、θ、φ)を0で初期化する。次に、ステップS103で、パンチルト駆動量決定部103はパンチルト駆動目標値(ψ、θ、0)を0で初期化する。これにより、ステップS104で、加算器210から出力される姿勢情報(ψ、θ、φ)も0で初期化される。角度積算値(ψ、θ、φ)とパンチルト駆動目標値(ψ、θ、0)の初期化の順番は特に問わず、順次行っても良いし同時に行ってもよい。
【0050】
ステップS101で現在の処理タイミングが基準タイミングではないと判断された場合、あるいは、基準タイミングであると判断され、各初期化処理が終了した場合は、ステップS105へ進む。ステップS105では、角速度センサ107が検出した角速度信号を角度換算部201が積分演算することにより、角度信号(ψ、θ、φ)を算出してステップS106へ進む。
【0051】
ステップS106では、高周波成分抽出部202がステップS105で算出した角度信号(ψ、θ、φ)に含まれる高周波成分を抽出して、揺れ成分(ψGh、θGh、φGh)として加算器210へ出力する。
【0052】
ステップS107では、加算器210は、(式4)に示すように、パンチルト駆動量決定部103が出力したパンチルト駆動目標値(ψ、θ、0)と高周波成分抽出部202が出力した揺れ成分(ψGh、θGh、φGh)とを加算する。そして、加算結果を姿勢角(ψ、θ、φ)として記録制御部111に出力する。ここで、ψはパン方向の回転角、θはチルト方向の回転角、φはロール方向の回転角を表している。
【0053】
【数4】
【0054】
以上、説明してきたように、本実施形態によれば、角速度センサで検出した揺れ成分を用いることで周囲環境による振動を検出しつつ、パンチルト駆動目標値を用いて撮像部の姿勢を精度よく算出することが可能となる。
【0055】
<第2の実施形態>
図6は第2の実勢形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出部200の機能ブロック図である。なお、図6において図4と同様の構成には同じ符号を付し、説明は省略する。また、図7は姿勢情報算出部200による姿勢情報算出処理を示すフローチャートであり、第1の実施形態同様に任意の周期で繰り返し実行される処理を表している。なお、図7において図5と同様の処理には同じ符号を付し、説明は省略する。これら図面を参照して、本実施形態の姿勢情報算出部200による姿勢情報算出処理について説明する。
【0056】
本実施形態では、パンチルト駆動量決定部103が出力したパンチルト駆動目標値と角速度センサ107で検出した角速度信号に基づいてカルマンフィルタリングすることによって、撮像部10の姿勢を算出する。ここで、カルマンフィルタは状態方程式及び観測方程式を用いて、誤差を含む入力値からシステムの動的な状態を推定するためのフィルタの一例である。
【0057】
本実施形態の姿勢情報算出部200は、角速度センサ107の出力である角速度信号とパンチルト駆動量決定部103の出力であるパンチルト駆動目標値とが入力されるカルマンフィルタ演算部203を備える。カルマンフィルタ演算部203はカルマンフィルタリングにより得られた出力信号に基づいて姿勢情報を取得し、記録制御部111へ出力する。
【0058】
本実施形態の姿勢情報算出部200による姿勢情報算出処理のフローを図7を用いて説明する。まず、ステップS101において、現在の処理タイミングが前述した姿勢算出の基準タイミングであるかどうかを判断する。基準タイミングであると判断された場合には、ステップS102、ステップS103、ステップS111に示した初期化処理を実行する。ステップS102、S103の初期化処理は第1実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0059】
ステップS111では、カルマンフィルタ演算部203の初期化が実行され、後述するカルマンフィルタの状態値である姿勢角(ψ、θ、φ)が0で初期化される。ステップS101で現在の処理タイミングが基準タイミングではないと判断された場合は、ステップS112へ進む。ステップS112では、カルマンフィルタ演算部203は、角速度センサ107が出力した角速度信号(ωx、ωy、ωz)と、パンチルト駆動量決定部103が出力したパンチルト駆動目標値(ψ、θ、0)の2つの信号をカルマンフィルタに入力する。そして、カルマンフィルタの出力を姿勢角(ψ、θ、φ)として記録制御部111に出力する。なお、カルマンフィルタは公知の情報であるため、詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施形態では、撮像部10の姿勢を推定する動的な状態とすると、状態方程式は(式5)、観測方程式は(式6)で表され、それぞれ異なる種類のノイズ成分を含む2つの入力から真の状態を推定する構成になっている。パンチルト駆動目標値は周囲環境の振動成分を含まないことが真の状態に対するノイズ成分であり、角度信号は角速度センサ107の温度特性等による出力変動(オフセット成分やドリフト成分といった誤差を含むこと)等がノイズ成分である。
【0061】
【数5】
【0062】
【数6】
【0063】
xは撮像部10の真の姿勢を表す状態値、yは観測値、uは入力値、vはプロセスノイズ、wは観測ノイズを表し、状態値xを姿勢角(ψ、θ、φ)、観測値yをパンチルト駆動目標値(ψ、θ、0)、入力値uを角速度信号(ωx、ωy、ωz)とする。行列Aは角速度信号(ωx、ωy、ωz)をオイラー角で表された角度変化量に変換するための変換行列であり、前述の(式3)に示した通りであり、(θ、φ)は後段からフィードバックされる撮像部10の姿勢情報を表す。プロセスノイズvおよび観測ノイズwは、角速度信号やパンチルト駆動目標値に含まれるノイズ成分の大きさを考慮して設定される必要がある。カルマンフィルタ演算部203は、この状態方程式と観測方程式に基づいてカルマンフィルタリングすることによって姿勢角(ψ、θ、φ)を得る。
【0064】
以上、説明してきたように、本実施形態によれば、角速度信号とパンチルト駆動目標値を用いてカルマンフィルタリングをすることにより、振動の影響を考慮しつつ、より正確な姿勢を算出することが可能となる。
【0065】
<第3の実施形態>
本実施形態では、撮像部10に加わる揺れにより生じる像ブレを補正する機能を備える場合において、撮像部10の姿勢情報を算出する方法について説明する。
【0066】
図8は、第3の実勢形態のパンチルトカメラ100の構成を示す機能ブロック図である。なお、図8において図2と同様の構成には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0067】
本実施形態のパンチルトカメラ100は、像ブレ補正制御部109を備え、電子的に像ブレを補正する機能を有する点で図2に示したパンチルトカメラ100と異なる。像ブレ補正制御部109は、撮像部10に加わる揺れにより、撮像部10のより撮像される画像(映像)に生じる像ブレを補正するための像ブレ補正量を算出し、画像信号処理部108および姿勢情報算出部200に出力する。像ブレ補正制御部109は、通信制御部101によりネットワーク102を介してクライアント装置から像ブレ補正を行うか否かの像ブレ補正機能の入切の指示を受け、その入切に応じて像ブレ補正角の算出方法を切り替える。像ブレ補正機能が入の場合には、角速度センサ107の出力である角速度信号を積分して像ブレ補正量を算出する。なお、像ブレ補正量の算出の際、角度信号に低周波成分を除去するためのハイパスフィルタ処理をしてもよいし、補正の効き具合を調整するためのゲインを乗じてもよく、角速度センサ107の出力にもとづいて像ブレ補正量を算出すれば良い。像ブレ補正量の算出方法については公知の技術を用いることができるため説明は省略する。一方、像ブレ補正機能が切の場合は、像ブレ補正量を0に固定する。
【0068】
画像信号処理部108は像ブレの動きを打ち消すように画像の切り出し位置をシフトすることで像ブレを補正する。切り出し位置のシフト量は、像ブレ補正制御部109から出力される像ブレ補正量に基づいて算出され、例えば、下記(式7)を用いて像ブレ補正量(ψ、θ)から切り出し位置シフト量(H、H)に換算される。(ψ、θ)はそれぞれ、パン方向、チルト方向の像ブレ補正量を、(H、H)はそれぞれ、水平方向、垂直方向の切り出し位置シフト量を表している。また、fは撮像レンズ105の焦点距離、pは撮像素子106のセルピッチである。
【0069】
【数7】
【0070】
なお、本実施形態では像ブレ補正の手段として、画像の切り出し位置シフトにより電子的に補正する方法について説明をしたが、像ブレ補正の方法はこれに限定されない。例えば、撮像レンズ105が像ブレ補正用のシフトレンズ(不図示)を有し、像ブレ補正制御部109の出力である像ブレ補正角に基づいて撮像レンズ105の光軸方向に対して直交する方向にシフトレンズを駆動させることで像ブレを補正してもよい。このようなシフトレンズの駆動により、撮像素子106と撮像レンズによって結像される光学像との相対位置がシフトし、像ブレを補正することができる。その場合、撮像部10にシフトレンズの位置を検出するホール素子を設置し、像ブレ補正制御部109でホール素子で検出したシフトレンズの位置から実際の像ブレ補正量を逆算し、その補正量を姿勢情報算出部200に入力させてもよい。また、撮像素子106を光軸方向に対して直交する方向に駆動することで、像ブレを補正してもよい。この場合も、撮像部10に撮像素子106の位置を検出するホール素子を設置し、ホール素子で検出した撮像素子106の位置から実際の像ブレ補正量を逆算して姿勢情報算出部200に入力させてもよい。また、像ブレ補正の方法は、複数組み合わせてもよい。
【0071】
像ブレ補正によって像ブレ補正が効いている場合、周囲環境による振動の影響が記録映像に表れないため、第1の実施形態や第2の実施形態で説明した姿勢算出方法を用いると、画像の動きと算出した姿勢情報が一致しない。前述の通り、本実施形態のパンチルトカメラでは画像信号と姿勢情報を同期して記録するため、像ブレ補正後の映像の動きに姿勢情報を一致させることが好適である。本実施形態では、この目的を達成するための姿勢算出方法について説明する。
【0072】
図9は、第3の実勢形態のパンチルトカメラの姿勢情報算出部200の機能ブロック図である。なお、図9において図4と同様の構成には同じ符号を付し、説明は省略する。また、図10は姿勢情報算出部200による姿勢情報算出の処理を示すフローチャートであり、任意の周期で繰り返し実行される処理を表している。なお、図10において図5と同様の処理には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0073】
本実施形態の姿勢情報算出部200は、角度換算部201からの出力から、像ブレ補正制御部109の出力を減算する減算器220を備える点が図4に示した第1の実施形態の姿勢情報算出部200と異なる。減算器220による減算結果が高周波成分抽出部202へ出力される。これにより、像ブレ補正により揺れ成分の影響の少なくとも一部が補正された画像に対応する、像ブレ補正後の揺れ成分を取得することができる。本実施形態では、この像ブレ補正後の揺れ成分とフレーミング成分とを用いて姿勢情報を取得する。
【0074】
本実施形態の姿勢算出部220による姿勢情報算出処理のフローを図10を用いて説明する。ステップS101からS105までは第1の実施形態と同様であり、基準タイミングであると判断された場合は各種初期化処理(S102~S103)を行い、ステップS105へ進む。また、基準タイミングでないと判断された場合もステップS105へ進む。ステップS105では、上述のように角速度センサ107の出力を角度信号(ψ、θ、φ)に変換し、ステップS108へ進む。
【0075】
ステップS108において、減算器220は、角度換算部201が出力した角度信号(ψ、θ、φ)から像ブレ補正制御部109が出力した像ブレ補正量(角度)を減算し減算結果を高周波成分抽出部202に出力してステップS106へ進む。このステップで像ブレ補正量を減算することにより、像ブレ補正を考慮した姿勢角(ψ、θ、φ)を取得することができる。
【0076】
ステップS106、S107は第1の実施形態と同様であり、減算器220による減算結果から高周波成分を抽出してこれを揺れ成分(ψGh、θGh、φGh)とし、フレーミング成分(ψ、θ、0)と加算することで姿勢角情報を取得する。
【0077】
以上、説明してきたように、本実施形態によれば、像ブレ補正機能を備える場合において、角速度信号とパンチルト駆動目標値と像ブレ補正角に基づいて姿勢情報を算出することで、像ブレ補正機能を考慮した姿勢情報を算出することが可能となる。
【0078】
(その他の実施形態・変形例)
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。例えば、第2、第3の実施形態を組み合わせ、減算器220の出力とパンチルト駆動量決定部103の出力をカルマンフィルタに入力して姿勢情報を取得してもよい。
【0079】
また、上述の第1~3の実施形態では、パンチルト駆動量決定部103から撮像部10のパンチルト駆動における駆動目標値(ψ、θ、0)を取得し、駆動目標値をフレーミング成分とした。しかしながら、撮像部10の基台40に対する駆動情報であればフレーミング成分はこれに限定されない。例えば、パンチルト駆動量決定部103が取得したパンチルト駆動量を角度に換算した値であっても良い。また、基台40に対する撮像部10のパンチルト駆動を検出する位置検出センサ(エンコーダ)を備える場合は、位置検出センサの出力に基づいてパンチルトの位置を検出し、これをフレーミング成分として用いてもよい。但し、パンチルト駆動を検出する位置検出センサの検出結果をフレーミング成分として用いると、パンチルト駆動指示に基づく情報(例えば駆動目標値)をフレーミング成分として用いる場合と比較して、位相遅れの影響が生じやすいため、位相補償を行ってもよい。
【0080】
また、上述の第1~3の実施形態では、パンチルトカメラ100本体内で姿勢情報を算出する形態について説明をしたが、ネットワークで接続された別の装置で取得してもよい。その場合、当該装置が姿勢情報取得装置として機能する。別の装置で姿勢情報を算出する場合、角速度センサの出力とフレーミング成分として例えばパンチルト駆動の駆動目標値とが通信制御部111を介して当該装置に送信される。当該装置がパンチルトカメラ100へ駆動指示を送信するクライアント装置である場合は、クライアント装置がパンチルトカメラ100へ出力する駆動指示に基づいて駆動目標値等の駆動情報を取得してもよい。また、クライアント装置とは別の装置が姿勢情報を算出する場合であっても、角速度センサの出力はパンチルトカメラ100から、駆動目標値等の駆動情報はクライアント装置から受信する形態としてもよい。
【0081】
また、上述の第1~3の実施形態では、揺れ成分として角速度信号を用いたが、揺れ成分はこれに限定されず、加速度センサの出力、地磁気センサの出力等も用いることができる。3軸での姿勢を検出する場合は、加速度センサ(ピッチ、ロール方向)と地磁気センサ(ヨー方向)を組み合わせればよい。
【0082】
また、上述の第1~3の実施形態では、レンズ一体型のパンチルトカメラを例に説明をしたが、パンとチルトとロールの少なくともいずれかの駆動ができれば、撮像装置の構成はこれに限定されない。例えば、レンズ交換式のパンチルトカメラや、パンチルト駆動可能なジンバルカメラにも適用できる。また、用途も特に問わず、所謂監視カメラでも良いし、映像制作に用いられるようなカメラであっても良い。また、パンチルト駆動可能な雲台またはジンバルとカメラを組み合わせて構成される撮影システムであってもよい。パンチルト駆動も、ユーザの指示に基づいてリアルタイムに駆動しても良いし、予め設定された駆動で予め設定された時刻あるいは時間間隔で駆動しても良い。また、上述のように、被写体を自動追尾してパンチルト駆動してもよい。さらに、撮像装置以外の基台に対してパンチルトロールの回転駆動することで姿勢を変更可能なロボットアームなどの装置に適用することもできる。
【0083】
また、姿勢情報の取得方法は上述の第1~第3の実施形態に限定されない。例えば、フレーミング成分と揺れ成分を比較することで、揺れ成分の位相遅れ量を取得し、揺れ成分に対して取得した位相遅れ分を位相補償フィルタを用いて補償することで、揺れ成分に含まれる位相遅れの影響を軽減できる。取得した、位相補償済みの揺れ成分に基づいて姿勢情報を取得することで、フレーミング成分を用いずに姿勢情報を取得するよりも精度よく姿勢情報を取得することができる。
【0084】
また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。
【0085】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。
【0086】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0087】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。
【0088】
また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータはがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。
【符号の説明】
【0089】
100 パンチルトカメラ
10 撮像部
20 チルト駆動部
30 パン駆動部
103 パンチルト駆動量決定部
104 パンチルト駆動指示部
105 撮像レンズ
106 撮像素子
107 角速度センサ
108 画像信号処理部
109 像ブレ補正制御部
111 記録制御部
201 角度換算部
202 高周波成分抽出部
203 カルマンフィルタ演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10