(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005682
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム、露光方法、基板処理装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20250109BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03F9/00
H01L21/68 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105953
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】朝日 亮吏
(72)【発明者】
【氏名】栢森 翔太
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2H197AA06
2H197AA09
2H197BA11
2H197CA09
2H197CA10
2H197CB16
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD43
2H197CD48
2H197DA02
2H197EA18
2H197EA26
2H197EB16
2H197EB18
2H197EB24
2H197HA03
2H197HA05
2H197HA08
2H197HA10
5F131AA02
5F131AA10
5F131BA13
5F131CA18
5F131EA02
(57)【要約】
【課題】 複数のショット領域それぞれに対応する位置合わせ量の算出に有利な情報処理装置を提供する。
【解決手段】 第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて回帰モデルを生成し、第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる複数の非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める処理部を有し、前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて回帰モデルを生成し、第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる複数の非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める処理部を有し、
前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第1値及び前記第2値は、前記マークの位置の計測結果、又は、前記マークの位置の計測結果と前記マークの目標位置との差分である位置ずれ量、又は、前記マークの位置を計測したショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量であることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記位置合わせ量は前記第2基板を保持しつつ駆動可能なステージの制御に用いることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記複数の非サンプルショット領域それぞれに対して前記回帰モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第2値が入力されることで前記複数の非サンプルショット領域に含まれる第1非サンプルショット領域及び第2非サンプルショット領域それぞれに対応する第1位置合わせ量と第2位置合わせ量とを出力する、多出力の前記回帰モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1基板上の複数のショット領域の前記第1基板における位置は、前記第2基板上の複数のショット領域の前記第2基板における位置のいずれかと一致する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記第1基板上の複数のショット領域のうち、前記複数の非サンプルショット領域のうち少なくとも1つの非サンプルショット領域と対応する、ショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて前記回帰モデルを生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、第3基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第3値と、前記第1値と、を用いて前記回帰モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第1基板と前記第2基板とは、露光処理条件が同じであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記処理部が前記露光処理条件それぞれについて生成した前記回帰モデルを記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第2値は前記回帰モデルの説明変数であり、前記位置合わせ量は前記回帰モデルの目的変数であることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記位置合わせ量に関する情報を、前記第2基板を保持しつつ駆動可能なステージを制御する制御部、又は、表示部に表示するために送信する送信部を有することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を取得する第1取得工程と、
前記第1取得工程で取得した前記第1値に基づいて、回帰モデルを生成する生成工程と、
前記第1基板とは異なる第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値を取得する第2取得工程と、
前記第2取得工程で取得した前記第2値と、生成した前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める算出工程と、を含み、
前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項14】
第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を取得する第1取得工程と、
前記第1取得工程で取得した前記第1値に基づいて、回帰モデルを生成する生成工程と、
前記第1基板とは異なる第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値を取得する第2取得工程と、
前記第2取得工程で取得した前記第2値と、生成した前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める算出工程と、を含み、
前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
第2基板上の複数のショット領域それぞれについて位置合わせを行いながら、前記第2基板上の複数のショット領域それぞれを露光する露光工程を含み、
前記第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせのために、前記第2基板を保持するステージの制御に用いる位置合わせ量は、
前記第2基板とは異なる第1基板上の、前記サンプルショット領域の数よりも多い複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて生成された回帰モデルと、前記サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、に基づいて求められる、
ことを特徴とする露光方法。
【請求項16】
基板を保持しつつ駆動可能なステージと、
第2基板上の複数のショット領域それぞれについて位置合わせを行うために前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせのために、前記ステージの制御に用いる位置合わせ量は、
前記第2基板とは異なる第1基板上の前記サンプルショット領域の数よりも多い複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて生成された回帰モデルと、前記サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、に基づいて求められる、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項17】
第2基板上の複数のショット領域それぞれについて位置合わせを行いながら、前記第2基板上の複数のショット領域それぞれを露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記第2基板から物品を製造する製造工程と、を含み、
前記第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせのために、前記第2基板を保持するステージの制御に用いる位置合わせ量は、
前記第2基板とは異なる第1基板上の前記サンプルショット領域の数よりも多い複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて生成された回帰モデルと、前記サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、に基づいて求められる、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム、露光方法、基板処理装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイスなどの製造工程において、基板上の複数のショット領域それぞれを位置合わせする際に用いる位置合わせ量(補正量)を求めることがある。特許文献1には、サンプルショット領域に設けられたマークの位置を計測し、基板の変形を近似して複数のショット領域それぞれに対応する位置合わせ量を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、サンプルショット領域に設けられたマークの位置を計測し、基板の変形を近似して求めた非サンプルショット領域の位置合わせ量を位置合わせに用いた場合に、非サンプルショット領域における位置合わせ精度が低くなることがある。
【0005】
そこで、本発明は、複数のショット領域それぞれに対応する位置合わせ量の算出に有利な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての情報処理装置は、第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて回帰モデルを生成し、第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる複数の非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める処理部を有し、前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のショット領域それぞれに対応する位置合わせ量の算出に有利な情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における基板処理装置の構成を示す概略図である。
【
図2】レーザ干渉計システムによって微動ステージの位置を計測する方法を示す模式図である。
【
図3】基板上の複数のショット領域それぞれに位置ずれが生じている例である。
【
図4】第1実施形態における、事前に回帰モデルを生成するフローチャートである。
【
図5】第1実施形態における、基板を露光するときのフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における非サンプルショット領域の位置合わせ量を求める例である。
【
図7】第2実施形態における物品の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
また、本明細書および図面では、基本的に、鉛直方向をZ軸とし、鉛直方向に対し垂直な水平面をXY平面とする、各軸が相互に直交するXYZ座標系によって方向が示されている。ただし、各図面にXYZ座標系を記載している場合はその座標系を優先する。
【0012】
以下、各実施形態において、具体的な構成を説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態における基板処理装置1の構成を示す概略図である。基板処理装置1は、本実施形態では、ステップ・アンド・リピート方式又はステップ・アンド・スキャン方式により原版(マスク、レチクル)のパターンを、投影光学系を介して基板に露光する投影露光装置である。但し、基板処理装置1は、投影露光装置に限定されるものではない。例えば、基板処理装置1は、電子線やイオンビームなどによって基板に描画を行い、パターンを基板に形成する描画装置であってもよい。また、基板処理装置1は、他のリソグラフィ装置(基板露光装置)、例えば、基板の上のインプリント材を型により成形してパターンを基板上に形成するインプリント装置であってもよい。あるいは、基板処理装置1は、イオン打ち込み装置、現像装置、エッチング装置、成膜装置、アニール装置、スパッタリング装置、蒸着装置など、半導体ウエハやガラスプレートなどの基板を処理する他の装置であってもよい。また、基板処理装置1は、平坦な板を用いて基板上の組成物を平坦化する平坦化装置であってもよい。
【0014】
基板処理装置1は、光を照射する照明光学系12と、投影光学系15と、レチクル13を保持するレチクルステージ14と、基板16を保持しつつ駆動可能(移動可能)な基板ステージ20と、計測部(検出部)30と、を有する。さらに、基板処理装置1は、処理部40と、制御部41と、記憶部42と、を有する。レチクル13は、例えば、転写されるべきパターン(例えば回路パターン)がクロムで石英ガラスの表面に形成されている原版である。また、基板16は、例えば単結晶シリコンであり、基板処理装置1が露光装置である場合において基板処理装置1に搬送される基板16は、表面上に感光材料(レジスト)が塗布されている。ここで、照明光学系12は基板16にパターンを形成するパターン形成部である。なお、本実施形態では光を用いてパターンを形成するリソグラフィ装置の例を示し、パターン形成部は照明光学系12であるが、パターンが転写された熱硬化性材料を熱により硬化させるリソグラフィ装置であってもよい。その場合のパターン形成部は、例えば、熱硬化性材料を加熱する加熱部である。処理部40は、後述する位置合わせ量(補正量)の算出を行う情報処理装置(情報処理部)である。
【0015】
処理部40は送信部43を有していてもよく、或いは送信部43と通信可能に接続されていてもよい。送信部43は、処理部40が算出した位置合わせ量に関する情報を、制御部41に送信する。ここで、送信部43は基板処理装置1又は別の装置に配置された表示部(不図示)の表示を制御するための表示制御部(不図示)に、処理部40が算出した位置合わせ量に関する情報を送信してもよい。この場合、表示制御部は、送信部43から送信された位置合わせ量に関する情報に基づいて、算出された位置合わせ量についてユーザーが視認できるように表示部の表示を制御する。この表示は、例えば基板16上の複数のショット領域の位置と対応するように表示される。
【0016】
制御部41は基板処理装置1内の各部分を制御する。記憶部42は基板16に露光処理を行うために用いるプログラムや情報などを記憶する。なお、本実施形態では処理部40は、基板処理装置1の内部にあり、制御部41とは別である例を示すが、制御部41の内部にあってもよく(制御部41の一部であってもよく)、基板処理装置1の外部の情報処理装置の内部にあってもよい。また、記憶部42についても、本実施形態では基板処理装置1の内部にあり、制御部41とは別である例を示すが、制御部41の内部にあってもよく(制御部41の一部であってもよく)、基板処理装置1の外部の記憶装置の内部にあってもよい。
【0017】
処理部40及び制御部41は、例えば、FPGAなどのPLD、又は、ASIC、又は、プログラムが組み込まれたコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合せによって構成されうる。なお、FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。PLDは、Programmable Logic Deviceの略称である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。処理部40及び制御部41は、CPUを含み、各構成要素は記憶部42に記憶されたプログラムに従って機能する。CPUは、プログラムに従って制御のための演算を行う。記憶部42は、処理部40や制御部41のオペレーティングシステム(OS)のプログラム、およびデータの一時保存領域としても用いられる。記憶部42は、保存するデータを長期間にわたり参照できるように、永続的なデータとして保存できる不揮発性記憶装置であることが望ましい。記憶装置は、主に磁気記憶装置(HDD)で構成されるが、CD、DVD、メモリカードといった外部メディアを装填してデータの読み込みや書き込みを行う装置であっても良い。
【0018】
基板ステージ20は、XY平面を移動可能なXYステージ23と、XYステージ23の上に載置されていて微動可能な微動ステージ22と、微動ステージ22に保持された状態で基板16を保持する基板チャック21と、を有する。微動ステージ22はX軸方向、Y軸方向、Z軸方向(投影光学系15の光軸方向)、θx軸方向、θy軸方向、θz軸方向に移動(駆動)可能である。つまり、微動ステージ22は6軸方向に移動(駆動)可能である。ここで、θx軸方向はX軸周りの回転方向、θy軸方向はY軸周りの回転方向、θz軸方向はZ軸周りの回転方向である。また、θx軸方向の位置はX軸周りの回転角、θy軸方向の位置はY軸周りの回転角、θz軸方向はZ軸周りの回転角を意味する。
【0019】
図2は、レーザ干渉計システムによって微動ステージ22の位置を計測する方法を示す模式図である。微動ステージ22のX軸方向の位置は、Xバーミラー100とレーザ干渉計110とを用いて計測される。そして、微動ステージ22のY軸方向の位置は、Yバーミラー200とレーザ干渉計210とを用いて計測される。Xバーミラー100は微動ステージ22の側面においてY軸方向に延設されていて、Yバーミラー200は微動ステージ22の側面においてX軸方向に延設されている。
【0020】
まず、微動ステージ22のX軸方向の位置を計測する方法について説明する。レーザ干渉計110は3つのレーザ干渉計を含む。レーザ干渉計111と同じ水平位置(同じX軸における位置且つ同じY軸における位置)であって、レーザ干渉計111と高さ方向(Z軸方向)に間隔Δz離れた位置に、レーザ干渉計112を配置する。このレーザ干渉計111とレーザ干渉計112との計測結果により、Y軸周りの回転方向のずれ量θyが計測できる。レーザ干渉計111と同じ高さ(同じZ軸方向における位置)であって、レーザ干渉計111と水平方向(Y軸方向)に間隔Δy離れた位置に、レーザ干渉計113を配置する。このレーザ干渉計111とレーザ干渉計113との計測結果により、XY平面内におけるZ軸周りの回転方向のずれ量θzが計測できる。
【0021】
次に、微動ステージ22のY軸方向の位置を計測する方法について説明する。レーザ干渉計210は3つのレーザ干渉計を含む。レーザ干渉計211と同じ水平位置(同じX軸における位置且つ同じY軸における位置)であって、レーザ干渉計211と高さ方向(Z軸方向)に間隔Δz離れた位置に、レーザ干渉計212を配置する。このレーザ干渉計211とレーザ干渉計212との計測結果により、X軸周りの回転方向のずれ量θxが計測できる。レーザ干渉計211と同じ高さ(同じZ軸方向における位置)であって、レーザ干渉計211と水平方向(X軸方向)に間隔Δx離れた位置に、レーザ干渉計213を配置する。このレーザ干渉計211とレーザ干渉計213との計測結果により、XY平面内におけるZ軸周りの回転方向のずれ量θzが計測できる。以上のような構成により、微動ステージ22の位置を計測する。なお、本実施形態では微動ステージ22の側面にバーミラーを設置する例を示したが、バーミラーは微動ステージ22の上部に設置されていてもよく、設置位置について特に限定しない。なお、本実施形態では干渉計システムにより微動ステージ22の位置を計測する例を示したが、エンコーダー等の別の手段により微動ステージ22の位置を計測してもよい。
【0022】
計測部30は、例えばオフアクシススコープであり、基板16の位置決め、及び基板16上の複数のパターン領域の位置を計測(検出)するために使用される。具体的には、基板16上の複数のショット領域それぞれに設けられたアライメントマーク(不図示)と、微動ステージ22上の基準マーク(不図示)との相対位置及び姿勢関係を計測(検出)する。本実施形態では、計測部30が計測した基準マークとショット領域に設けられたアライメントマークとの相対位置及び姿勢の関係を、ショット領域に設けられたマークの位置の計測結果と呼ぶことがある。
【0023】
基板処理装置1において、光源(不図示)からの露光光は、照明光学系12を介して、レチクルステージ14に保持されたレチクル13を照明する。レチクル13を透過した光は、投影光学系15を介して、基板16に照射される。この時、レチクル13に形成されたパターンからの光が基板16表面に結像し、基板16(感光材料)がパターン像により露光される。基板処理装置1はこのように基板16上のショット領域を露光し、複数のショット領域のそれぞれについて同様に露光を行う。
【0024】
図3は、基板16上の複数のショット領域それぞれに位置ずれが生じている例である。
図3の例において、破線で示された矩形形状の領域が、理想的なショット領域50であり、実線で示された矩形形状の領域が、実際のショット領域51である。
図3に示すように、実際のショット領域51は理想的なショット領域50に対して位置ずれが生じていることがある。露光処理においては重ね合わせ精度が重要であるため、この位置ずれ量を補正するための位置合わせ量を用いながら露光を行う必要がある。よって、露光の際には、計測部30による計測結果(ショット領域に設けられたマークの位置の計測結果)、マークの(ショット領域の)目標位置、位置ずれ量などに基づいて位置合わせ量を求める。そして、求めた位置合わせ量を用いて、基板ステージ20(微動ステージ22)の位置の計測結果に基づいて基板ステージ20を制御して(基板ステージ20を駆動させ)、基板16上の複数のショット領域についてそれぞれ位置合わせを行う。
【0025】
ここで、これから露光する基板16すべてにおいて、すべてのショット領域(に設けられたマークの位置)に対して位置合わせ量を求めることで、複数のショット領域(に設けられたマークの位置)それぞれの位置ずれを適切に補正することができる。しかし、この方法では、単位時間当たりの基板の処理枚数は少なくなる。そこで、例えば、複数のショット領域に含まれるサンプルショット領域(計測対象のショット領域)に設けられたマークの位置を計測し、基板の変形を近似して、複数のショット領域それぞれに対応する位置合わせ量を求める方法がある。しかし、サンプルショット領域に設けられたマークの位置を計測し、基板の変形を近似して求めた非サンプルショット領域の位置合わせ量を位置合わせに用いた場合に、非サンプルショット領域の位置合わせ精度が低くなることがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、複数のショット領域それぞれに対応する位置合わせ量の算出に有利な方法を開示する。具体的には、事前に1又は複数の基板(第1基板、第3基板)についてこれから露光を行う基板(第2基板)の非サンプルショット領域と対応する位置にあるショット領域を含む複数のショット領域に設けられたマークの位置の計測を行う。例えば、事前にマークの位置の計測を行う基板が1枚である場合はその基板は第1基板であり、事前にマークの位置の計測を行う基板が複数である場合は、その複数の基板は第1基板と第3基板である。なお、本実施形態では、事前にマークの位置の計測を行う基板が複数であったとしても、第1基板と第3基板とを合わせて第1基板と記載することがある。また、第1基板上の複数のショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた値は第1値であり、第3基板上の複数のショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた値は第3値である。ここで、本実施形態では第1値と第3値とを合わせて第1値と記載することがある。なお、本実施形態における第1値及び第3値は、複数のショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた値である複数の数値を含む数値群である。
【0027】
そして、本実施形態では計測結果に基づいた値(第1値、第3値)を用いて回帰モデルを生成する。この第1値(第3値)は、第2基板の非サンプルショット領域と対応する位置にあるショット領域を含む複数のショット領域に設けられたマークの位置の計測結果であってもよい。或いは、この第1値(第3値)は、計測結果に基づいて求めた第2基板の非サンプルショット領域と対応する位置にあるショット領域を含む複数のショット領域の位置合わせ量であってもよい。或いは、この第1値(第3値)は、第2基板の非サンプルショット領域と対応する位置にあるショット領域に設けられたマークの目標位置と計測結果の差分である、複数の位置ずれ量であってもよい。
【0028】
次に、回帰モデルと、これから露光を行う基板(第2基板)のサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた値(第2値)と、に基づいてこれから露光を行う基板(第2基板)の非サンプルショット領域の位置合わせ量を求める。この第2値は、第2基板のサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果であってもよい。或いは、この第2値は、計測結果に基づいて求めた第2基板のサンプルショット領域の位置合わせ量であってもよい。或いは、この第2値は、サンプルショット領域に設けられたマークの目標位置と計測結果の差分である位置ずれ量であってもよい。回帰モデルは、第1値と第2値の種類(計測結果又は位置合わせ量又は位置ずれ量)に応じて、生成される。なお、本実施形態における第2値は、サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた値である複数の数値を含む数値群である。
【0029】
ここで、これから露光を行う基板(第2基板)に設定されたサンプルショット領域と非サンプルショット領域の配置と、事前にマークの位置の計測を行う基板(第1基板)の複数のショット領域との配置は同じであるとする。つまり、第1基板上の複数のショット領域の第1基板における位置は、第2基板上の複数のショット領域の第2基板における位置のいずれかと一致する。
【0030】
さらに、これから露光を行う基板の基板処理条件(露光処理条件、レシピ)と、事前にマークの位置の計測を行う基板の基板処理条件(露光処理条件、レシピ)は同じであるとする。
【0031】
本実施形態は、非サンプルショット領域の位置合わせ量を求めるために用いる回帰モデルの生成に、第2基板上の非サンプルショット領域と対応する第1基板上のショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づく第1値を用いる。具体的には、回帰モデルの生成に第2基板上の複数の非サンプルショット領域のうち少なくとも1つの非サンプルショット領域と対応する、第1基板上のショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づく第1値を用いる。そして、回帰モデルに入力する値は、第2基板のサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値である。このように、本実施形態の回帰モデルは、非サンプルショット領域と対応するショット領域の計測結果に基づいた値を含む第1値を用いて生成される。よって、本実施形態の非サンプルショット領域の位置合わせ量を求める方法は、サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいて基板の変形を近似して非サンプルショット領域の位置合わせ量を求める方法より位置合わせ量の精度が高い。したがって、本実施形態により求めた位置合わせ量を用いて複数のショット領域それぞれの位置合わせを行うことで、位置合わせ精度(重ね合わせ精度)を向上することができる。
【0032】
図4は、本実施形態における、事前に回帰モデルを生成するフローチャートである。まず、処理部40は、回帰モデルを生成するために、計測部30によりショット領域に設けられたマークの位置の計測(検出)を行う基板(第1基板)を選択する(S110)。そして、計測部30によりステップS110で選択した基板上の複数のショット領域それぞれについてショット領域に設けられたマークの位置の計測を行う(S120)。ここで、ステップS120ではこれから露光を行う基板(第2基板)のサンプルショット領域と対応するショット領域すべてについて位置の計測を行う。さらに、ステップS120では第2基板のサンプルショット領域とは異なる複数の非サンプルショット領域と対応する複数のショット領域のうち少なくとも1つについて位置の計測を行う。つまり、マークの位置の計測を行う第1基板上の複数のショット領域の数は、サンプルショット領域の数よりも多い。なお、基板上のすべてのショット領域について位置の計測を行うことが好ましい。また、1つのショット領域に複数のアライメントマークが設けられている場合は、アライメントマークそれぞれについて計測してもよい。また、回帰モデルを生成する第1値として第1基板の複数のショット領域の計測結果を用いる場合は、ステップS130を行なわずに、ステップS120の後にステップS140を行う。
【0033】
次に、処理部40は、第1基板上のショット領域についてステップS120の計測結果に基づいて位置合わせ量(第1値)を求める(S130)。この位置合わせ量は、ステップS120でショット領域に設けられたマークの位置の計測結果(ショット領域に設けられたマークの位置ずれ)に基づいた値であり、マークの位置ずれを補正するための値である。この第1値を用いて、ショット領域に設けられたマークの位置合わせを行う。つまり、位置合わせ量は位置ずれ量と同じである。ここで、1つのショット領域に複数のアライメントマークが設けられている場合は、各アライメントマークの計測結果に基づいてそれぞれ位置合わせ量を求めてもよい。或いは、各アライメントマークの計測結果に基づいて求めた1つの値を、1つのショット領域に対応する1つの位置合わせ量としてもよい。なお、第1値として第1基板の複数のショット領域の計測結果を用いる場合は、ステップS120が第1取得工程であり、第1値として第1基板の位置合わせ量(位置ずれ量)を用いる場合は、ステップS130が第1取得工程である。
【0034】
ここで、第1値を得られなかったショット領域がある場合は、対象ショット領域の第1値を補間(推測)する。例えば、ステップS120にて基板上のすべてのショット領域について位置の計測を行わない場合である。或いは、計測部30によるショット領域に設けられたマークの位置の計測が正常に行われなかったショット領域がある場合である。或いは、マークが設けられていないショット領域がある場合である。これらの場合には、対象のショット領域と近い位置にある(例えば隣接している)ショット領域の第1値を用いる。或いは、複数の基板に対してステップS120を行う場合は、ほかの基板における対象ショット領域と同じ位置にあるショット領域の第1値又はそれらの平均値を用いる。或いは、ほかの基板のショット領域の位置合わせの目標位置と、ショット領域の第1値と、に基づいて回帰モデルを生成し、生成した回帰モデルから対象のショット領域の第1値を求めてもよい。この回帰モデルは、対象のショット領域の位置合わせの目標位置を説明変数、対象のショット領域の第1値を目的変数とする回帰モデルである。
【0035】
次に、処理部40は、回帰モデルを生成するために用いる第1値を対象のすべての基板について取得したか否かを判定する(S140)。換言すれば、直前に第1値を取得した基板が第1値を取得する対象の基板のうち最終基板であるか否かを判定する。例えば、第1値を求める基板(第1基板)が1枚である場合に、ステップS150へと進む。例えば、第1値を求める基板が25枚である場合に、第1値を20枚の基板について取得している場合は、第1値を25枚の基板について取得するまでステップS110に戻る。
【0036】
次に、第2基板の非サンプルショット領域と対応する第1基板の複数のショット領域のうち1つのショット領域を選択する(S150)。そして、選択したショット領域について回帰モデルを生成する(S160、生成工程)。回帰モデルは、1又は複数の事前にマークの位置の計測を行う基板について取得した第1値に基づいて生成される。なお、選択したショット領域の基板上の位置(座標)における特性(基板外周部の歪みやすさなど)を考慮して回帰モデルを生成してもよい。この回帰モデルは、これから露光する基板(第2基板)のサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値を入力値(説明変数)とし、第2基板の非サンプルショット領域の位置合わせ量を出力値(目的変数、予測値)とする。ここで、例えば、1つのショット領域に複数のアライメントマークが設けられている場合は、各アライメントマークの計測結果に基づいた第2値それぞれを入力値(説明変数)としてもよい。或いは、それらの第2値から求めた1つの値を入力値(説明変数)としてもよい。
【0037】
次に、処理部40は、第2基板の非サンプルショット領域と対応する第1基板の複数のショット領域のうちすべてのショット領域について回帰モデルを生成したか否かを判定する(S170)。すべてのショット領域について回帰モデルを生成している場合は、終了する。すべてのショット領域について回帰モデルを生成していない場合は、ステップS150に戻る。このように、本実施形態では、事前に第2基板上の非サンプルショット領域それぞれの位置合わせ量を求めるための回帰モデルを生成する。
【0038】
図5は、本実施形態における、基板を露光するときのフローチャートである。まず、これから露光する基板16(第2基板)のサンプルショット領域に設けられたマークの位置を計測する(S210)。なお、1つのショット領域に複数のアライメントマークが設けられている場合は、アライメントマークそれぞれについて計測してもよい。ここで、回帰モデルに入力する第2値として、このステップS210の計測結果を用いてもよい。
【0039】
次に、処理部40は、ステップS210の計測結果それぞれについて位置合わせ量(第2値)を求める(S220)。つまり、サンプルショット領域について位置合わせ量(位置ずれ量)を求める。ここで、1つのショット領域に複数のアライメントマークが設けられている場合は、各アライメントマークの計測結果に基づいてそれぞれ位置合わせ量を求めてもよい。或いは、各アライメントマークの計測結果に基づいて求めた1つの位置合わせ量を、1つのショット領域に対応する1つの位置合わせ量としてもよい。なお、第2値として第2基板のサンプルショット領域の計測結果を用いる場合は、ステップS210が第2取得工程であり、第2値として第2基板の位置合わせ量(位置ずれ量)を用いる場合は、ステップS220が第2取得工程である。
【0040】
ここで、第2値を得られなかった対象ショット領域の第2値を補間(推測)する。これは、例えば過去に計測した同一の露光処理条件の基板における対象ショット領域と同じ位置にあるショット領域の第2値又はそれらの平均値を用いる。或いは、ほかのサンプルショット領域の位置合わせの目標位置と、ほかのサンプルショット領域の第2値と、に基づいて回帰モデルを生成し、生成した回帰モデルから対象のショット領域の第2値を求めてもよい。この回帰モデルは、対象のショット領域の位置合わせの目標位置を説明変数、対象のショット領域の第2値を目的変数とする回帰モデルである。
【0041】
次に、処理部40は、非サンプルショット領域のうち1つの非サンプルショット領域を選択する(S230)。そして、処理部40は回帰モデルと、第2値と、に基づいて、非サンプルショット領域の位置合わせ量を求める(S240、算出工程)。
【0042】
ここで、ステップS240で用いる回帰モデルは、選択した非サンプルショット領域の基板上の位置(座標)と対応する回帰モデルである。この回帰モデルは、これから露光する第2基板のサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値を入力値(説明変数)とし、非サンプルショット領域の位置合わせ量を出力値(目的変数)とする。
【0043】
ここで、ステップS240について
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態における非サンプルショット領域の位置合わせ量を求める例である。これから露光する基板16(第2基板)には、16個のショット領域が含まれており、それぞれ番号が1~16の数字で示されている。ここで、番号1、4、6、11、12、13がサンプルショット領域であり、ほかのショット領域は非サンプルショット領域である。非サンプルショット領域それぞれについては、前述した方法により回帰モデルが求められている。例えば、番号2の非サンプルショット領域について位置合わせ量を求める場合について説明する。この場合、番号1、4、6、11、12、13のサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値を、番号2に対応する回帰モデルに入力して、番号2の位置合わせ量を求める。
【0044】
次に、処理部40は、これから露光する基板16(第2基板)上のすべての非サンプルショット領域について位置合わせ量を求めたか否かを判定する(S250)。すべての非サンプルショット領域について位置合わせ量を求めている場合は、ステップS260に進む。すべての非サンプルショット領域について位置合わせ量を求めていない場合は、ステップS230に戻る。以上のように、本実施形態ではこれから露光する基板16の非サンプルショット領域の位置合わせ量を求める。なお、
図4のフローチャートに記載のステップS130~S170、及び、
図5のフローチャートに記載のステップS220~S250は処理部40が内部に格納されたプログラムに従うことにより行われる情報処理方法である。
【0045】
次に、求めた位置合わせ量を用いて位置合わせを行いながら(制御部41が基板ステージ20に対して位置合わせの制御をしている状態で)基板上の複数のショット領域それぞれを露光し(S260、露光工程)、終了する。なお、露光工程を開始する前に、制御部41はステップS220により求めたサンプルショット領域の位置合わせ量と、ステップS240により求めた非サンプルショット領域の位置合わせ量を取得しておく。なお、基板処理装置1が露光装置でない場合は、ステップS260が行う処理はパターンを形成する処理ではなく、その基板処理装置1が行う処理である。
【0046】
これから露光する第2基板のショット領域の配置や露光処理条件(レシピ)に対応した回帰モデルを生成していない場合は、第2基板のショット領域の配置や露光処理条件(レシピ)に対応した第1基板により回帰モデルを生成して記憶部42が記憶しておく。このように、記憶部42はショット領域の配置や露光処理条件(レシピ)毎に生成された回帰モデルを、ショット領域の配置や露光処理条件(レシピ)と対応させて複数記憶しておく。そして、回帰モデルを生成したショット領域の配置及び露光処理条件と対応したショット領域の配置及び露光処理条件である第2基板を処理する際に記憶部42に記憶していた回帰モデルを用いて第2基板の非サンプルショット領域の位置合わせ量を求めればよい。または、適切な回帰モデルが無い基板毎に、サンプルショット領域の位置合わせの目標位置と、サンプルショット領域の第2値と、に基づいて回帰モデルを生成し、生成した回帰モデルから非サンプルショット領域の位置合わせ量を求めてもよい。この回帰モデルは、非サンプルショット領域の位置合わせの目標位置を説明変数、非サンプルショット領域の位置合わせの位置合わせ量を目的変数とする回帰モデルである。
【0047】
次に、回帰モデルについて詳細に説明する。以下の説明では回帰モデルを、1つの目的変数を複数の説明変数で予測する重回帰として説明する。x1、x2、、、xsを説明変数(第2基板上のサンプルショット領域の位置合わせ量)、w0、w1、、、wsを事前に取得した第1値より算出できる係数とする。また、sを第2基板上のサンプルショット領域の数、y’を目的変数(第2基板上の対象の非サンプルショット領域の位置合わせ量)とすると、回帰モデルは式(1)のように表せる。
y’=w0+w1x1+w2x2+・・・+wsxs 式(1)
【0048】
係数wは式(2)により求めることができる。なお、Tは転置行列を示している。
w=(XTX)-1XTy 式(2)
【0049】
ここで、式(2)により求められる係数wは式(3)に示すベクトルである。
w=(w0,w1,w2,・・・,ws)T 式(3)
【0050】
また、式(2)のXは式(4)で表され、事前に第1値を求めたN枚の基板(第1基板、第3基板など)の、第2基板上のサンプルショット領域と対応するショット領域についての第1値を並べた行列である。行列内の定数1は、係数w0、w1、、、wsのうち切片w0と掛け合わせるための定数である。
【0051】
【0052】
また、式(2)のyは式(5)で表され、事前に第1値を求めたN枚の基板(第1基板)の、第2基板上の対象の非サンプルショット領域と対応するショット領域の第1値を並べたベクトルである。
y=(y(1),y(2),・・・,y(N))T 式(5)
【0053】
回帰モデルとしては、重回帰のほかに、n次多項式回帰、線形回帰、Ridge回帰、Lasso回帰、ガウス過程回帰、サポートベクター回帰などほかの回帰手法を用いてもよい。n次多項式回帰は、回帰モデルの説明変数をn次多項式で展開して新しい特徴量を作成し、その特徴量に基づいて重回帰を行う方法であり、重回帰よりも高い表現能力を持つ。線形回帰は、回帰モデルの説明変数に特徴量変換関数Φを通して新しい特徴量を作成し、その特徴量に基づいて重回帰する方法であり、重回帰よりも高い表現能力を持つ。Ridge回帰は、線形回帰モデルの係数の値にL2ノルム制約をかけて学習する手法で、過学習(オーバーフィッティング)の抑制効果が期待できる。Lasso回帰は、線形回帰モデルの係数の値にL1ノルム制約をかけて、係数の値がスパース(0値が多い)となるように学習する手法で、過学習(オーバーフィッティング)の抑制効果および推論時間の高速化が期待できる。ガウス過程回帰は、説明変数と目的変数の関係がガウス過程に従うことを仮定した手法であり、回帰モデルの係数を陽に持たない。データサンプル間の関係をカーネル関数によって表現することで、回帰モデルとして高い表現力を持つ。また、ベイズ推定によって出力の確率分布が得られるため、出力の平均だけでなく分散値も得られ、推論の不確かさを定量化することが可能である。サポートベクター回帰は、ガウス過程回帰と同様にデータサンプル間の関係をカーネル関数によって表現することで、回帰モデルとして高い表現力を持つ。さらに、回帰誤差に不感帯を設けているため、データのノイズの影響を抑えることができる。
【0054】
基板16上の複数のショット領域のうち、すべてのショット領域について同じ回帰手法を用いてもよいし、ショット領域毎に異なる回帰手法を用いてもよい。ショット領域毎に異なる回帰手法を用いる場合は、高い位置合わせ精度を実現できる位置合わせ量を算出可能な回帰手法をショット領域毎に検討するとよい。
【0055】
なお、非サンプルショット領域毎に回帰モデルを生成する例を示したが、複数の説明変数の入力により、複数の目的変数を出力する多出力回帰モデルを用いてもよい。例えば、これから露光する基板の複数のサンプルショット領域の位置合わせ量を入力すると、これから露光する基板の複数の非サンプルショット領域の位置合わせ量を出力する回帰モデルでもよい。つまり、第2値を入力することで第2基板上の第1非サンプルショット領域と第2非サンプルショット領域それぞれに対応する第1位置合わせ量と第2位置合わせ量とを出力する、多出力の前記回帰モデルを生成してもよい。この場合、1つの回帰モデルにより複数の非サンプルショット領域の位置合わせ量を求めることができ、非サンプルショット領域毎に位置合わせ量を求める演算を行わなくともよい。目的変数を複数とる多出力回帰モデルとしては、例えばニューラルネットワークを用いる。ニューラルネットワークでは、複数の目的変数の誤差を同時に最小化するように学習されるため、それらの変数間の関係を捉えた回帰が実現でき、精度向上が期待できる。
【0056】
以上のように、本実施形態に記載の方法で求めた非サンプルショット領域の位置合わせ量を用いて位置合わせを行うことにより、位置合わせ精度(重ね合わせ精度)を向上させることができる。
【0057】
<第2実施形態>
図7は本実施形態における物品の製造方法のフローチャートである。まず、第2基板上の複数のショット領域それぞれについて位置合わせを行いながら、複数のショット領域それぞれを露光する露光工程を行う(S310)。次に、露光工程で露光された第2基板から物品を製造する製造工程を行う(S320)。
【0058】
ここで、第2基板の複数のショット領域のうちサンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量は、回帰モデルと、第2値と、に基づいて求められる。回帰モデルは、第2基板上のサンプルショット領域の数よりも多い第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて生成されたモデルである。第2値は、第2基板のサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた値である。
【0059】
この製造方法で製造する物品は、例えば、半導体IC素子、液晶表示素子、カラーフィルタ、MEMS等である。
【0060】
製造工程は、例えば、パターンが形成された基板(感光材料)の現像、現像された基板に対するエッチング及びレジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングの実施が含まれる。本製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。
【0061】
本明細書の開示は、以下の情報処理装置、情報処理方法、プログラム、露光方法、基板処理装置及び物品の製造方法を含む。
【0062】
〔項目1〕
第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて回帰モデルを生成し、第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる複数の非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める処理部を有し、
前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い、
ことを特徴とする情報処理装置。
【0063】
〔項目2〕
前記第1値及び前記第2値は、前記マークの位置の計測結果、又は、前記マークの位置の計測結果と前記マークの目標位置との差分である位置ずれ量、又は、前記マークの位置を計測したショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量であることを特徴とする項目1に記載の情報処理装置。
【0064】
〔項目3〕
前記位置合わせ量は前記第2基板を保持しつつ駆動可能なステージの制御に用いることを特徴とする項目1又は2に記載の情報処理装置。
【0065】
〔項目4〕
前記処理部は、前記複数の非サンプルショット領域それぞれに対して前記回帰モデルを生成することを特徴とする項目1~3のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0066】
〔項目5〕
前記処理部は、前記第2値が入力されることで前記複数の非サンプルショット領域に含まれる第1非サンプルショット領域及び第2非サンプルショット領域それぞれに対応する第1位置合わせ量と第2位置合わせ量とを出力する、多出力の前記回帰モデルを生成することを特徴とする項目1~3のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0067】
〔項目6〕
前記第1基板上の複数のショット領域の前記第1基板における位置は、前記第2基板上の複数のショット領域の前記第2基板における位置のいずれかと一致する、ことを特徴とする項目1~5のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0068】
〔項目7〕
前記処理部は、前記第1基板上の複数のショット領域のうち、前記複数の非サンプルショット領域のうち少なくとも1つの非サンプルショット領域と対応する、ショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて前記回帰モデルを生成する、ことを特徴とする項目1~6のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0069】
〔項目8〕
前記処理部は、第3基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第3値と、前記第1値と、を用いて前記回帰モデルを生成することを特徴とする項目1~7のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0070】
〔項目9〕
前記第1基板と前記第2基板とは、露光処理条件が同じであることを特徴とする項目1~8のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0071】
〔項目10〕
前記処理部が前記露光処理条件それぞれについて生成した前記回帰モデルを記憶する記憶部を有することを特徴とする項目9に記載の情報処理装置。
【0072】
〔項目11〕
前記第2値は前記回帰モデルの説明変数であり、前記位置合わせ量は前記回帰モデルの目的変数であることを特徴とする項目1~10のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0073】
〔項目12〕
前記位置合わせ量に関する情報を、前記第2基板を保持しつつ駆動可能なステージを制御する制御部、又は、表示部に表示するために送信する送信部を有することを特徴とする項目1~11のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0074】
〔項目13〕
第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を取得する第1取得工程と、
前記第1取得工程で取得した前記第1値に基づいて、回帰モデルを生成する生成工程と、
前記第1基板とは異なる第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値を取得する第2取得工程と、
前記第2取得工程で取得した前記第2値と、生成した前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める算出工程と、を含み、
前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い、
ことを特徴とする情報処理方法。
【0075】
〔項目14〕
第1基板上の複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を取得する第1取得工程と、
前記第1取得工程で取得した前記第1値に基づいて、回帰モデルを生成する生成工程と、
前記第1基板とは異なる第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値を取得する第2取得工程と、
前記第2取得工程で取得した前記第2値と、生成した前記回帰モデルと、に基づいて、前記第2基板上の複数のショット領域のうち前記サンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせに用いる位置合わせ量を求める算出工程と、を含み、
前記マークの位置の計測を行う前記第1基板上の複数のショット領域の数は、前記サンプルショット領域の数よりも多い、
ことを特徴とするプログラム。
【0076】
〔項目15〕
第2基板上の複数のショット領域それぞれについて位置合わせを行いながら、前記第2基板上の複数のショット領域それぞれを露光する露光工程を含み、
前記第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせのために、前記第2基板を保持するステージの制御に用いる位置合わせ量は、
前記第2基板とは異なる第1基板上の、前記サンプルショット領域の数よりも多い複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて生成された回帰モデルと、前記サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、に基づいて求められる、
ことを特徴とする露光方法。
【0077】
〔項目16〕
基板を保持しつつ駆動可能なステージと、
第2基板上の複数のショット領域それぞれについて位置合わせを行うために前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせのために、前記ステージの制御に用いる位置合わせ量は、
前記第2基板とは異なる第1基板上の前記サンプルショット領域の数よりも多い複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて生成された回帰モデルと、前記サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、に基づいて求められる、
ことを特徴とする基板処理装置。
【0078】
〔項目17〕
第2基板上の複数のショット領域それぞれについて位置合わせを行いながら、前記第2基板上の複数のショット領域それぞれを露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記第2基板から物品を製造する製造工程と、を含み、
前記第2基板上の複数のショット領域のうちサンプルショット領域とは異なる非サンプルショット領域の位置合わせのために、前記第2基板を保持するステージの制御に用いる位置合わせ量は、
前記第2基板とは異なる第1基板上の前記サンプルショット領域の数よりも多い複数のショット領域それぞれに設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第1値を用いて生成された回帰モデルと、前記サンプルショット領域に設けられたマークの位置の計測結果に基づいた第2値と、に基づいて求められる、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【0079】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。