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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005683
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】構造体および筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20250109BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H05K9/00 C
H05K9/00 E
G03G21/16 152
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105954
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】山下 展輝
【テーマコード(参考)】
2H171
5E321
【Fターム(参考)】
2H171FA05
2H171FA26
2H171FA28
2H171GA31
2H171JA23
2H171JA27
2H171JA28
2H171JA29
2H171JA31
2H171JA46
2H171MA01
2H171MA20
2H171QA02
2H171QA08
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171UA02
2H171UA22
2H171WA26
5E321AA03
5E321AA05
5E321AA14
5E321AA33
5E321CC22
5E321CC30
5E321GG01
5E321GG05
(57)【要約】
【課題】 インダクタンスを低減することを目的とする。
【解決手段】 導電性を有する第1板状部と、第1板状部に対向し、導電性を有する第2板状部と、を備えた構造体であって、第1板状部と第2板状部との間で、第1導電部、第2導電部、第3導電部および第4導電部を介して、電流源からの電流が流れるように構成され、第3導電部は、第1板状部に接続された第3導電部の第1接続部から、第2板状部に接続された第3導電部の第2接続部へ延在し、第4導電部は、第1板状部に接続された第4導電部の第3接続部から、第2板状部に接続された第4導電部の第4接続部へ延在し、第1接続部と第3接続部との距離は、第3接続部と第1導電部との距離より小さく、第1接続部と第1導電部との距離は、第2接続部と第1導電部との距離より小さく、第3接続部と第2導電部との距離は、第4接続部と第2導電部との距離より小さいことを特徴とする構造体。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1板状部と、
前記第1板状部に対向し、導電性を有する第2板状部と、
を備えた構造体であって、
第1板状部と前記第2板状部とを電気的に接続する第1導電部、第2導電部、第3導電部および第4導電部と、
電流源と、を有し、
前記第1板状部と前記第2板状部との間で、前記第1導電部、前記第2導電部、前記第3導電部および前記第4導電部を介して、前記電流源からの電流が流れるように構成され、
前記第3導電部は、前記第1板状部に接続された前記第3導電部の第1接続部から、前記第2板状部に接続された前記第3導電部の第2接続部へ延在し、
前記第4導電部は、前記第1板状部に接続された前記第4導電部の第3接続部から、前記第2板状部に接続された前記第4導電部の第4接続部へ延在し、
前記第1接続部と前記第3接続部との距離は、前記第3接続部と前記第1導電部との距離より小さく、
前記第1接続部と前記第1導電部との距離は、前記第2接続部と前記第1導電部との距離より小さく、
前記第3接続部と前記第2導電部との距離は、前記第4接続部と前記第2導電部との距離より小さいことを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記第1接続部と前記電流源との距離は、前記第2接続部と前記電流源との距離より小さく、前記第3接続部と前記電流源との距離は、前記第3接続部と前記電流源との距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第1接続部と前記第3接続部との距離は、前記第1接続部と前記第2導電部との距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記第3導電部の端部および前記第4導電部の端部は、開放端であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記電流源は、30MHz以上の周波数の電磁波を発することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記第3導電部および前記第4導電部は弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記第3導電部および前記第4導電部は、前記弾性体の変形によって前記第1板状部または前記第2板状部から離間可能に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の構造体。
【請求項8】
前記第1接続部と前記第3接続部との距離は、前記第1接続部と前記第1導電部との距離以上であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
前記第3導電部と前記第4導電部との距離は、前記第4導電部と前記第2導電部との距離以上であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項10】
前記第1板状部の材質は、前記第3導電部の材質と同じであることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項11】
前記第3導電部は、前記第1板状部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項12】
前記第1板状部に前記第2板状部を取り付けることで、前記第3導電部と前記第2板状部が接触することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項13】
前記第3導電部および前記第4導電部は板バネであることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項14】
前記電流源は、複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項15】
前記第3導電部は、前記第1板状部のうち、前記第2板状部に対向する面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項16】
前記電流源は、プリント回路板であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を含む容器と、前記容器の開口部を覆う蓋とを備えることを特徴とする筐体。
【請求項18】
容器と、前記容器の開口部を覆う請求項1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を含む蓋とを備えることを特徴とする筐体。
【請求項19】
前記筐体は、板金からなることを特徴とする請求項17に記載の筐体。
【請求項20】
請求項17に記載の筐体の内部に、前記筐体の外部の装置に接続する電気装置が設けられることを特徴とする制御ボックス。
【請求項21】
シートに画像を形成する画像形成部を備え、
請求項17に記載の筐体の内部に設けられた制御装置によって、前記画像形成部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体および筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、信号の入力または出力が可能な複数の回路を含む電気回路が搭載されている。各回路が動作すると、動作に応じた電流が、電気回路を搭載するプリント回路板を伝搬し、高周波雑音電流ならびに電圧が発生して、機器同士の接点を介して、導電性を有する機器へと流れ込む。このように接点を介してなる構造体は、特定の周波数帯域において共振系を構成し、大きな不要輻射ノイズを発生することが問題となっている。そこで特許文献1では、電子機器を構成する各部品を、ばね部品を介在させて電気的に接続する形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-283191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の形態では、各部品間にばね部品を介在させているため、弾性部材のインダクタンスが増大する虞があった。そこで本発明は、インダクタンスを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は、導電性を有する第1板状部と、前記第1板状部に対向し、導電性を有する第2板状部と、を備えた構造体であって、第1板状部と前記第2板状部とを電気的に接続する第1導電部、第2導電部、第3導電部および第4導電部と、電流源と、を有し、前記第1板状部と前記第2板状部との間で、前記第1導電部、前記第2導電部、前記第3導電部および前記第4導電部を介して、前記電流源からの電流が流れるように構成され、前記第3導電部は、前記第1板状部に接続された前記第3導電部の第1接続部から、前記第2板状部に接続された前記第3導電部の第2接続部へ延在し、前記第4導電部は、前記第1板状部に接続された前記第4導電部の第3接続部から、前記第2板状部に接続された前記第4導電部の第4接続部へ延在し、前記第1接続部と前記第3接続部との距離は、前記第3接続部と前記第1導電部との距離より小さく、前記第1接続部と前記第1導電部との距離は、前記第2接続部と前記第1導電部との距離より小さく、前記第3接続部と前記第2導電部との距離は、前記第4接続部と前記第2導電部との距離より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インダクタンスを低減する上で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の構造体を構成する筐体の斜視図である。
図2】蓋および蓋に接続された部品を示した図である。
図3】蓋および蓋に接続された部品を示した図である。
図4】蓋を容器に組み付ける方法を示した図である。
図5】(a)は、筐体を上面(Z方向上)から見た平面図であり、(b)は、筐体を下面(Z方向下)から見た平面図である。
図6】蓋におけるそれぞれの部材の距離を表す図である。
図7】第2実施形態に係る筐体の模式図である。
図8】(a)は実施例に係る筐体を示した図であり、(b)は比較例に係る筐体を示した図である。
図9図7(a)及び図7(b)に示す2つの筐体構造を電磁界シミュレーションした結果を示したグラフである。
図10】実施形態の構造体を適用可能な画像形成装置の斜視図である。
図11】画像形成装置に搭載される画像形成部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に説明する形態は、発明の1つの実施形態であって、これに限定されるものではない。そして、共通する構成を複数の図面を相互に参照して説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。同じ名称で別々の事項については、それぞれ、第1の事項、第2の事項というように、「第〇」を付けて区別することができる。
【0009】
図1は、本発明に係る構造体を、金属板材で構成された筐体1に適用した実施形態を示す斜視図である。構造体である筐体1は金属板材を成形した容器2と、容器2の開口部の一部を覆う蓋3とからなる部品で構成されている。容器2は導電性を有する板状部101を含む。蓋3には、金属板材の縁を折り曲げ加工によって成形した取り付け面4が設けられている。筐体1において、蓋3は導電性を有する板状部102を含む。板状部102が取り付け面4を有する。容器2に蓋3を取り付け、ビス7a~7dで固定することで筐体1は該箱状となる。このとき、蓋3は容器2の側壁20に取り付けられる。図1は、筐体1の上面が設けられていない形態を説明したが、上面にさらに別の蓋を設けてもよい。筐体1は家電やパーソナルコンピュータなどの電子機器の筐体や、複写機、加工機等電子機器における、電装ボックス等に使用可能である。電装ボックスに用いられる筐体1では、容器2の中に、電装ボックスの外部装置に接続する電気装置を取り付け、或いは収納することができる。電装ボックス内の電気装置は、電装ボックス外の外部装置を制御する制御装置や、外部装置に電源を供給する電源装置などである。筐体1内で生じる静電気や電磁障害の対策のために、容器2および蓋3はそれぞれ金属等の導電性材料で形成されている。また、容器2および蓋3のいずれか一方を接地した場合に、他方も接地されるように、これらの間で導通を確保した構造体を構成している。
【0010】
このとき、容器2と取り付け面4との間の隙間において、高周波雑音電流の漏洩、または特定の周波数帯域において共振系を構成して、大きな不要輻射ノイズが発生することが問題となることがある。そこで本発明では、不要輻射ノイズを抑制するため、容器2と取り付け面4を導通させる弾性部材5a、5bを設けている。
【0011】
本実施形態の筐体1においては、蓋3の取り付け面4に設けられた弾性部材5a、5bによって容器2と蓋3との導通を取るように構成されている。すなわち、弾性部材5a、5bは導電性を有し、筐体1において、板状部101と板状部102とを電気的に接続する導電部として用いられる。また、ビス7a~7dは導電性を有し、筐体1において、板状部101と板状部102とを電気的に接続する導電部として用いられる。容器2および蓋3を構成する導電性材料は同じ材料でも良いし、互いに異なる材料でも構わない。弾性部材5a、5bは、取り付け面4を介さずに蓋3に直接取り付けられてもよい。その場合は、蓋3が第2板状部となる。弾性部材の数は、2つ以上であれば特に限定されるものではない。
【0012】
筐体1の容器2および蓋3で使用する金属板材の材質は電気抵抗値の低い鉄材もしくは銅材といった板金の導電部材であることが好ましい。板材の厚みは0.4~1.2mmが望ましい。材質や板厚については塑性変形可能な導電部材であれば、本発明を実施することができる。導電部材の表面は場合によっては防錆性を維持する等の目的で亜鉛めっきなどの塗膜が施されていることがある。
【0013】
容器2および蓋3を形成する金属板材の表面は、この金属板材を構成する導電性材料よりも導電性が低い被膜で被覆されていることが好ましい。この被膜としては、傷がついたり指紋が残留したりすることを防ぎ、良好な外観維持のため潤滑性の高い絶縁材料から成る絶縁被膜を用いることが好ましい。しかし導電性の観点から、容器2と蓋3の導通を取る接点部分には被膜が設けられていないことが好ましい。
【0014】
<第1実施形態>
図2および図3を用いて、構造体としての筐体1の構成について説明する。図2は、図1の蓋3および蓋3に接続された部品を示した図である。図3は、蓋3に設けられた部品同士の位置関係を示した図である。
【0015】
本実施形態では、電流源8の一例としてプリント回路板が蓋3に設けられている形態について説明するが、容器2に電流源8が設けられていてもよい。また、電流源はプリント回路板に限られるものではなく、ビス7a、7bに電流や電磁波が流れるように構成されている部品であればよい。筐体1は、板状部101(容器2)と板状部102(蓋3)との間で、ビス7a~7dおよび弾性部材5a、5bを介して、電流源8からの電流が流れるように構成されている。電流源8からの電流はノイズになりうる。つまり、電流源8はノイズ源でありうる。筐体1は、板状部101(容器2)と板状部102(蓋3)との間で、ビス7a~7dおよび弾性部材5a、5bを介して、電流源8からのノイズ電流が流れるように構成されていることになる。電流源8が、たとえば30MHz以上の周波数の電磁波を発する部品であると、ノイズ対策をする上でより大きな効果を発することができる。
【0016】
弾性部材5a、5bは、板状部101と板状部102との接点の構造であり、取り付け面4に容器2が重なることによって、板状部101および板状部102が互いに重なっている。容器2に蓋3を重ね、弾性部材5a、5bを容器2に接触させることで導通を取り、高周波雑音電流の漏洩、または特定の周波数帯域において共振系を構成することによる大きな不要輻射ノイズを抑制することができる。
【0017】
本実施形態では、容器2の側壁20と蓋3とをビス7a、7b(第1導電部材、第2導電部材)で固定しているが、ビス7a、7bとで固定した場合においても、側壁20と蓋3との間には隙間ができてしまう虞がある。隙間ができてしまった場合、両端のビス7a、7bを節とする電界の共振現象が発生する。すなわち、両端部に設けたビス7aからビス7bまでの距離の2倍に相当する波長λとなる周波数で、共振現象が発生する。このような共振現象を抑制する手段として、筐体のアンテナ特性が所望の性能を満たすまで、容器2と蓋3との導通を取る部材を多点で接地する。しかし、多点で接地した場合でも、所望のアンテナ特性が得られないことがあった。
【0018】
側壁20と蓋3との間に隙間がある場合、筐体1に電流が流れると、電流源8からビス7a、7bに向かう方向に電流9が流れる。それにより上述したように両端のビス7a、7bを節とする電界の共振現象が発生する。
【0019】
そこで図2および図3に示すように、本実施形態の弾性部材5aは、接続部110から接触部111に向かって延在し、弾性部材5bは、接続部112から接触部113に向かって延在している。接続部110は、板状部102と弾性部材5aとの接続部であり、接触部111は、板状部101と弾性部材5aとの接続部である。接続部112は、板状部102と弾性部材5bとの接続部であり、接触部113は、板状部101と弾性部材5bとの接続部である。弾性部材5aは、電流源8からビス7aに向かう方向とは反対の方向に延在し、弾性部材5bは、電流源8からビス7bに向かう方向とは反対の方向に延在している。第1方向と第2方向は完全に正反対の方向だけではなく、正反対の方向からずれた方向でもよい。弾性体である弾性部材5a、5bは、弾性部材5a、5bの変形(弾性変形)によって板状部101(容器2)または板状部102(蓋3)から離間可能に設けられている。本例では、弾性部材5a、5bは板状部101(蓋3)と離間可能である。つまり、弾性部材5a、5bの変形(弾性変形)によって、接触部111、113における接触を解除可能である。典型的な弾性部材5a、5bは板バネである。弾性部材5a、5bは板状部101(容器2)と板状部102(蓋3)との間のバネ接点(板バネ接点)を形成する部材である。板状部101(容器2)または板状部102(蓋3)の一方に固定された、板バネとしての弾性部材5a、5bが、板状部101(容器2)または板状部102(蓋3)の他方に接触することで、電気的接点が形成される。弾性部材5a、5bの一方を、板状部101(容器2)および板状部102(蓋3)の一方に固定し、弾性部材5a、5bの他方を、板状部101(容器2)および板状部102(蓋3)の他方に固定してもよい。 接続部110とビス7aとの距離d11は、接触部111とビス7aとの距離d12より小さく、接続部112とビス7bとの距離d21は、接触部113とビス7bとの距離d22より小さく構成されている。そうすることで、電流源8からビス7aに向かう方向とは反対の方向に延在し、弾性部材5bは、電流源8からビス7bに向かう方向とは反対の方向に延在するように構成することができる。
【0020】
それにより、電流源8からビス7aに向かう電流9と、弾性部材5aに流れる電流10とが互いに相反する方向に流れることで、電流9を電流10で低減することができる。電流9は電流源8から発生するノイズ電流であり、電流9を低減することで、電界の共振現象を抑制することができる。
【0021】
また、接続部110と電流源8との距離d13は、接触部111と電流源8との距離d14より小さく、接続部112と電流源との距離d23は、接触部113と電流源8との距離d24より小さい。
【0022】
弾性部材5aのみでも共振現象を抑制することはできるが、弾性部材5bをさらに設け、電流源8からビス7bに向かう電流9を弾性部材5bに流れる電流10で低減することで、電界の共振現象の抑制効果を発揮することができる。
【0023】
弾性部材5a、5bは、板金からなる蓋3を切り起こして設けることが好ましく、容器2または蓋3と一体で形成されることが好ましいが、蓋3に後付けで弾性部材5a、5bを設けても良い。弾性部材5a、5bは、一端が開放端であることが好ましい。
【0024】
次に図4を用いて、蓋3を容器2に組み付ける方法について説明する。図4(a)は容器2に蓋3を組み付ける前の様子を示した図であり、図4(b)は容器2に蓋3を組み付けた後の様子を示した図である。
【0025】
容器2と蓋3はそれぞれ独立しており、容器2に蓋3を組み付けることで筐体1を形成する。容器2に蓋3を組み付ける際には、蓋3に設けられたビス7a(および図1に示すビス7b)によって容器2の側壁20と蓋3を固定する。蓋3には電流源8となり得るプリント配線板が設けられており、ビス7c(および図1に示すビス7d)によって蓋3に固定されている。プリント配線板には、オプション基板をさらに設けることができ、オプション基板を設けた場合、プリント配線板にオプション基板をビスで固定することができる。筐体1の内部には、オプション基板を動作させるためのコントローラ基板をさらに設けることができる。
【0026】
容器2に蓋3を組み付けることによって、図4(b)に示すように、弾性部材5a(および図1に示す弾性部材5b)が板状部101に当接する。それにより、容器2と蓋3との導通を取ることができる。さらに本実施形態で説明したように、弾性部材5a、5bが相反する方向に延伸することで、電界の共振現象の抑制効果を発揮することができる。
【0027】
図5(a)は、筐体1を上面(Z方向上)から見た平面図である。図4でも説明した通り、側壁20に蓋3がビス7a、7bによって固定され、蓋3に電流源8がビス7c、7dによって固定されている。
【0028】
図5(b)は、筐体1を下面(Z方向下)から見た平面図である。下面からみたとき、電流源8は、弾性部材5a、5bの間に設けられることが好ましい。ここで弾性部材5a、5bの間とは、厳密に弾性部材5aと弾性部材5bの間に電流源8が存在している必要はなく、弾性部材5aを通りY方向に延びる直線と、弾性部材5bを通りY方向に延びる直線との間に電流源8が設けられていることを示している。それにより、電流源8とビス7aとの間に弾性部材5aを配置し、電流源8とビス7bとの間に弾性部材5bが配置することができる。
【0029】
ここまで蓋3に弾性部材5a、5bが設けられている形態を説明したが、容器2の板状部101に弾性部材5a、5bが設けられていても良い。その場合も、それぞれの弾性部材は相反する方向に延在するように設けることで、電界の共振現象の抑制効果を発揮することができる。ほかにも弾性部材5aが蓋3に設けられており、弾性部材5bが板状部101に設けられていてもよい。
【0030】
図6は、蓋3におけるそれぞれの部材の距離を表す図である。弾性部材5aと弾性部材5bとの間の距離D3は、弾性部材5aとビス7bとの距離より小さく、同様に距離D3は、弾性部材5bとビス7aとの距離より小さい。ビス7aと弾性部材5aとの間の距離D2は、距離D3以下であることが好ましい。同様にビス7bと弾性部材5bとの間の距離D4は、弾性部材5aと弾性部材5bとの間の距離D3以下であることが好ましい。また、ビス7aと弾性部材5aとの間の距離D2は、ビス7aとビス7bとの間の距離D1の1/3以下であることが好ましい。同様にビス7bと弾性部材5bとの間の距離D4は、ビス7aとビス7bとの間の距離D1の1/3以下であることが好ましい。距離D2と距離D4が等しいことが好ましく、距離D2、距離D3および距離D4がすべて等しいことがより好ましい。ビス7a、7bは、ビスに限定する必要はなく、ガスケットなどの電気的に接続が可能な部材であってもよい。弾性部材5a、5bとの距離とは、弾性部材5a、5bと蓋3との接続部からの距離であり、弾性部材5a、5bが容器2(板状部101)に設けられている場合、弾性部材5a、5bと容器2との接続部からの距離である。
【0031】
<第2実施形態>
次に図7を用いて、本実施形態に係る筐体1の構成について説明する。図7(a)は本実施形態に係る筐体1の斜視図であり、図7(b)は本実施形態に係る筐体1の変形例を示した筐体1の斜視図である。
【0032】
本実施形態の筐体1は、電流源8とは異なる電流源80がある点で第1実施形態と異なる。電流源が複数ある場合においても弾性部材5a、5bによって電界の共振現象の抑制効果を発揮することができる。
【0033】
本実施形態においても蓋3と板状部101との間には間隙が形成されており、蓋3に弾性部材5a、5bが形成されることによって、蓋3と容器2が電気的に接続されている。また、側壁20と蓋3に関してもビス7a、7bによって電気的に接続されている。
【0034】
電流源80は、領域81において蓋3と電気的に接続されている。電流源80からも電流源8と同様にビス7a、7bに向かって電流が流れる。ここでは電流源80からビス7bに向かう電流を、弾性部材5aで抑制することができるように構成されている。また、電流源8からビス7aに向かう電流を、弾性部材5bで抑制することができるように構成されている。このように電流源8に加え、電流源80が設けられている場合においても、弾性部材5a、5bによって電界の共振現象の抑制効果を発揮することができる。
【0035】
図7(b)では、図7(a)よりも電界の共振現象の抑制効果を発揮するために、弾性部材5cおよび弾性部材5dをさらに設けている。ここでは、電流源80からビス7aに向かう電流を、弾性部材5cで抑制することができるように構成されている。また、電流源8からビス7bに向かう電流を、弾性部材5dで抑制することができるように構成されている。それにより、図7(a)よりも電界の共振現象の抑制効果を発揮することができる。
【0036】
次に本実施形態に示した筐体1の電界の共振現象を抑制する効果について、図8および図9で説明する。図8(a)は実施例に係る筐体1を示した図であり、図8(b)は比較例に係る筐体を示している。図9は、図8(a)および図8(b)を電磁界シミュレーションにて検討した結果を示したグラフである。
【0037】
図8における筐体1の容器2は、図に示すX方向が400mm、Y方向が128mm、Z方向が122mmで、板厚1mmの鉄を加工した直方体の筐体構造で、鉄からなる側壁20と組み合わせてボックス構造を構成する。蓋3と容器2の間の領域は、1mmの隙間を介して対向し、側壁20を-Y方向からみて、左下と右下の端部を2つのビス等の導電性を有する部材で、蓋3と側壁20とが接続されている。
【0038】
蓋3には、電流源8としてのプリント回路板が接地されている。電流源8は、50mm角の大きさで板厚1mmであり、蓋3のX方向における両端部にて、X方向10mm、Z方向1mmのビス等の導電性を有する部材で2箇所を固定している。電流源8は、側壁20の長手方向の中央部となるX方向に200mmの位置を中心として接地されている。
【0039】
弾性部材5aと弾性部材5bはそれぞれ同じ形状であり、側壁20のX方向を3分割する位置に形成されている。3分割する位置とは、弾性部材5aの取り付け面4との接点とビス7aとの距離が、ビス7aからビス7bまでの距離の1/3の位置に配置されていることを言う。同様に弾性部材5bは、弾性部材5bの取り付け面4(板状部102)との接点とビス7bとの距離が、ビス7bからビス7aまでの距離の1/3の位置に配置されている。弾性部材5a、5bは、長さが40mm、幅が10mm、板厚が0.2mmの直方体であり、先端部が板状部101に接続されている。
【0040】
図9は、図8(a)及び図8(b)に示す2つの筐体構造を電磁界シミュレーションした結果であり、10mの遠方界でみたEMI特性である。電磁界シミュレーションにおける電流源8は、側壁20と、側壁20に対向する他方の側壁との中間点に接地し、ノイズは振幅1Vで0Hzから3GHzまで推移するガウシアン波形としている。
【0041】
グラフAは、蓋3に弾性部材5a、5bを形成していないときのEMI特性である。400MHz帯域付近において、板状部101と、板状部102との間で形成された共振特性が確認できた。
【0042】
グラフBは、図8(a)に示すように弾性部材5a、5bをそれぞれ相反する方向に延在するように形成することで、グラフAで観測された400MHz帯域の共振特性が990MHz帯域付近にシフトしていることが確認できた。
【0043】
グラフCは、図8(b)に示すように弾性部材5a、5bを形成するものの、どちらの弾性部材も同一方向に延在するように構成した。グラフAで観測された400MHz帯域の共振特性が970MHz帯域付近にシフトしていることが確認できた。
【0044】
グラフBは、グラフAに比べて共振特性を高周波帯域にシフトさせることができ、グラフCに比べて全周波帯域において良好なEMI特性を確認できた。
【0045】
電流源8から側壁20へと伝搬するノイズ電流が、ビス7a、7bに加えて、弾性部材5a、5bを介して、板状部101および容器2へと伝搬する。そして弾性部材5a、5bの向きによってインピーダンス特性が変化していると考えられる。つまりは、弾性部材5aのインダクタンス成分が、弾性部材5bのインダクタンス成分と異なることで、互いのインダクタンス成分が低減されている。そのため、電流源8からビス7a、7bへと向かう線分を蓋3に投影した線分に対し、弾性部材5a、5bが相反する方向に延伸することでEMI特性が向上する。共振抑制の考え方から、蓋3において、ビス7a、7bを結ぶ線分を等分に分割する位置に、弾性部材5a、5bを設けることが好ましい。
【0046】
<第3実施形態>
図10は、第1実施形態から第2実施形態の筐体1を適用可能な装置の一例としての画像形成装置600の説明図である。
【0047】
画像形成装置600は、例えば電子写真方式のレーザビームプリンタである。画像形成装置600は、筐体1、外装カバー601、画像形成部610および画像読取部620と、を備えている。
【0048】
画像読取部620は、セットされた原稿の画像を読み取る装置である。画像形成部610は、画像データに基づいてシートに画像を形成する。シートとは、普通紙、コート紙等の特殊紙、封筒、およびインデックス紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、並びに布などを含む記録媒体とする。
【0049】
図11は、図10に示した画像形成部610の模式図である。画像形成部610は、筐体1の内部に設けられた制御装置によって制御される。画像形成部610は、図11に示すように、電子写真方式の画像形成ユニットPUと、定着装置107と、を備える。画像形成動作の開始が指示されると、感光体である感光ドラム109が回転し、感光ドラム109の表面が帯電装置110によって一様に帯電される。すると、露光装置103が、画像読取部620又は外部のコンピュータから送信された画像データに基づいてレーザ光を変調して出力し、感光ドラム109の表面を走査して静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像装置104から供給されるトナーによって現像されてトナー像となる。
【0050】
このような画像形成動作に並行して、不図示のカセット又は手差しトレイに積載されたシートを画像形成部610へ向けて給送する給送動作が実行される。給送されたシートは、画像形成ユニットPUによる画像形成動作の進行に合わせて搬送される。そして、感光ドラム109に担持されたトナー像は、転写ローラ5によってシートに転写される。トナー像転写後に感光ドラム109上に残ったトナーは、クリーニング装置106によって回収される。トナー像が転写されたシートは、定着装置107へと受け渡されて、ローラ対に挟持されて加熱および加圧される。トナーが溶融しシートに固着して画像が定着したシートは、排出ローラ対によって機外に排出される。両面印刷の場合には、反転搬送部108によってシートは反転した状態で搬送され、画像形成部610によって裏面に画像を形成された後に機外に排出される。
【0051】
なお、画像形成部610は、記録媒体としてのシートに画像を形成可能な画像形成手段の一例であり、上述の直接転写方式に代えて中間転写体を含む中間転写方式の構成を用いてもよく、インクジェット方式等の他の機構を用いてもよい。
【0052】
以上、説明した実施形態は、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、先の実施形態では、筐体を構成する容器が第1板状部を有し、蓋が第2板状部を有する構成としたが、それぞれが反対の板状部を有するようにしても構わない。また、先の実施形態においては、容器と蓋との間の導通をとる筐体の例を説明した。しかしながら、本発明は互いに重ね合わされる板状部をそれぞれ有する部材間で導通をとる構造体であれば、どのようなものにも適用が可能である。
【0053】
また、先に説明した複数の実施形態を互いに組み合わせた構成としても構わない。また、少なくとも1つの実施形態の一部の事項の削除あるいは置換を行うことができる。更に、少なくとも1つの実施形態に新たな事項の追加を行うことも可能である。
【0054】
なお、本明細書の開示内容は、本明細書に明示的に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。
【0055】
また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した個別の概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、たとえ「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略していたとしても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【0056】
以下に本発明の開示内容を示す。
【0057】
(構成1)
導電性を有する第1板状部と、前記第1板状部に対向し、導電性を有する第2板状部と、を備えた構造体であって、第1板状部と前記第2板状部とを電気的に接続する第1導電部、第2導電部、第3導電部および第4導電部と、電流源と、を有し、前記第1板状部と前記第2板状部との間で、前記第1導電部、前記第2導電部、前記第3導電部および前記第4導電部を介して、前記電流源からの電流が流れるように構成され、前記第3導電部は、前記第1板状部に接続された前記第3導電部の第1接続部から、前記第2板状部に接続された前記第3導電部の第2接続部へ延在し、前記第4導電部は、前記第1板状部に接続された前記第4導電部の第3接続部から、前記第2板状部に接続された前記第4導電部の第4接続部へ延在し、前記第1接続部と前記第3接続部との距離は、前記第3接続部と前記第1導電部との距離より小さく、前記第1接続部と前記第1導電部との距離は、前記第2接続部と前記第1導電部との距離より小さく、前記第3接続部と前記第2導電部との距離は、前記第4接続部と前記第2導電部との距離より小さいことを特徴とする構造体。
【0058】
(構成2)
前記第1接続部と前記電流源との距離は、前記第2接続部と前記電流源との距離より小さく、前記第3接続部と前記電流源との距離は、前記第3接続部と前記電流源との距離より小さいことを特徴とする構成1に記載の構造体。
【0059】
(構成3)
前記第1接続部と前記第3接続部との距離は、前記第1接続部と前記第2導電部との距離より小さいことを特徴とする構成1または2に記載の構造体。
【0060】
(構成4)
前記第3導電部の端部および前記第4導電部の端部は、開放端であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか1項に記載の構造体。
【0061】
(構成5)
前記電流源は、30MHz以上の周波数の電磁波を発することを特徴とする構成1乃至4のいずれか1項に記載の構造体。
【0062】
(構成6)
前記第3導電部および前記第4導電部は弾性体であることを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載の構造体。
【0063】
(構成7)
前記第3導電部および前記第4導電部は、前記弾性体の変形によって前記第1板状部または前記第2板状部から離間可能に設けられていることを特徴とする構成6に記載の構造体。
【0064】
(構成8)
前記第1接続部と前記第3接続部との距離は、前記第1接続部と前記第1導電部との距離以上であることを特徴とする構成1乃至7のいずれか1項に記載の構造体。
【0065】
(構成9)
前記第3導電部と前記第4導電部との距離は、前記第4導電部と前記第2導電部との距離以上であることを特徴とする構成1乃至8のいずれか1項に記載の構造体。
【0066】
(構成10)
前記第1板状部の材質は、前記第3導電部の材質と同じであることを特徴とする構成1乃至8のいずれか1項に記載の構造体。
【0067】
(構成11)
前記第3導電部は、前記第1板状部と一体に形成されていることを特徴とする構成1乃至10のいずれか1項に記載の構造体。
【0068】
(構成12)
前記第1板状部に前記第2板状部を取り付けることで、前記第3導電部と前記第2板状部が接触することを特徴とする構成1乃至11のいずれか1項に記載の構造体。
【0069】
(構成13)
前記第3導電部および前記第4導電部は板バネであることを特徴とする構成1乃至12のいずれか1項に記載の構造体。
【0070】
(構成14)
前記電流源は、複数設けられることを特徴とする構成1乃至13のいずれか1項に記載の構造体。
【0071】
(構成15)
前記第3導電部は、前記第1板状部のうち、前記第2板状部に対向する面に設けられることを特徴とする構成1乃至14のいずれか1項に記載の構造体。
【0072】
(構成16)
前記電流源は、プリント回路板であることを特徴とする構成1乃至15のいずれか1項に記載の構造体。
【0073】
(筐体1)
構成1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を含む容器と、前記容器の開口部を覆う蓋とを備えることを特徴とする筐体。
【0074】
(筐体2)
容器と、前記容器の開口部を覆う構成1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を含む蓋とを備えることを特徴とする筐体。
【0075】
(筐体3)
前記筐体は、板金からなることを特徴とする筐体1または2に記載の筐体。
【0076】
(機器1)
筐体1乃至3のいずれか1項に記載の筐体の内部に、前記筐体の外部の電子機器を制御する制御部が設けられることを特徴とする制御ボックス。
【0077】
(装置1)
シートに画像を形成する画像形成部を備え、
筐体1乃至3のいずれか1項に記載の筐体の内部に設けられた制御装置によって、前記画像形成部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0078】
1 構造体
5a 第3導電部
5b 第4導電部
7a 第1導電部
7b 第2導電部
8、80 電流源
101 第1板状部
102 第2板状部
110 第1接続部
111 第2接続部
112 第3接続部
113 第4接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11