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特開2025-5685インクジェット用インク及びインクジェット記録装置
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  • 特開-インクジェット用インク及びインクジェット記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005685
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】インクジェット用インク及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20250109BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250109BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20250109BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
B41J2/01 403
B41J2/165 301
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105956
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 翼
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA16
2C056EC08
2C056FA04
2C056FA13
2C056FC01
2C056JB04
2H186BA10
2H186DA14
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB57
4J039AD00
4J039BA04
4J039BC07
4J039BC10
4J039BC35
4J039BE01
4J039BE12
4J039EA10
4J039EA41
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、クリーニングにより除去され易いインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】インクジェット用インクは、顔料と、水性媒体と、アミン化合物とを含有する。前記水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する。前記特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、0.10以上2.00以下である。前記特定有機溶媒の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、水性媒体と、アミン化合物とを含有し、
前記水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有し、
前記特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、0.10以上2.00以下であり、
前記特定有機溶媒の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下である、インクジェット用インク。
【請求項2】
乾燥処理後の前記インクジェット用インクの25℃における粘度は、100.0mPa・s以上8200.0mPa・s以下であり、
前記乾燥処理は、前記インクジェット用インクの質量が30.00質量%減少するまで前記インクジェット用インクを40℃で加熱する処理である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記アミン化合物は、トリエタノールアミン及びジエチルアミノエタノールのうち少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記アミン化合物の含有割合は、0.05質量%以上1.00質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記特定有機溶媒は、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルのうち少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記特定有機溶媒の含有割合は、5.00質量%以上40.00質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
前記水の含有割合は、50.00質量%以上90.00質量%以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
インクジェット用インクと、記録ヘッドと、ワイプブレードとを備えるインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドは、ノズルを有し、前記インクジェット用インクを前記ノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、前記ノズル内の前記インクジェット用インクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行い、
前記ワイプブレードは、前記記録ヘッドのインク吐出面をワイプするワイプ動作を行い、
前記インクジェット用インクは、請求項1又は2に記載のインクジェット用インクである、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、所望の画像濃度を有する画像を形成できることが要求される。インクジェット記録装置で所望の画像濃度を有する画像を形成する方法としては、例えば、インクジェット用インクとして、記録媒体に着弾した後に速やかに乾燥して増粘するインクジェット用インクを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、インクジェット用インクの乾燥時の粘度が高すぎると、例えば記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクジェット用インクが乾燥して増粘し、インクジェット用インクの吐出安定性が不十分となる場合がある。
【0004】
このため、インクジェット用インクには、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、クリーニングにより除去され易いことが要求される。また、インクジェット記録装置には、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、インクジェット用インクをクリーニングにより除去し易いことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-175951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、上述した要求を満たすことができない。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、クリーニングにより除去され易いインクジェット用インクを提供することである。本発明の別の目的は、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、インクジェット用インクをクリーニングにより除去し易いインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェット用インクは、顔料と、水性媒体と、アミン化合物とを含有する。前記水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する。前記特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、0.10以上2.00以下である。前記特定有機溶媒の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下である。
【0009】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インクジェット用インクと、記録ヘッドと、ワイプブレードとを備える。前記記録ヘッドは、ノズルを有し、前記インクジェット用インクを前記ノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、前記ノズル内の前記インクジェット用インクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行う。前記ワイプブレードは、前記記録ヘッドのインク吐出面をワイプするワイプ動作を行う。前記インクジェット用インクは、上述のインクジェット用インクである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインクジェット用インクは、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、クリーニングにより除去され易い。本発明に係るインクジェット記録装置は、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、インクジェット用インクをクリーニングにより除去し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第二実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す図である。
図2】第1ライン式記録ヘッドの底面図である。
図3図2のI-I断面の要部における拡大図である。
図4図1の第1ライン式記録ヘッドの側面及びその近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下において、体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、マルバーン社製「ゼータサイザー(登録商標)ナノZS」)を用いて測定された値である。
【0013】
有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、文献値が有る有機溶媒については文献値を採用でき、文献値が無い有機溶媒については計算ソフト(例えば、パーキンエルマー社製「ChemDraw」)により算出される値を採用できる。
【0014】
粘度は、25℃において、回転粘度計(例えば、東機産業株式会社製「TV-100EL」)を用いて測定される値である。
【0015】
本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。本明細書に記載の各成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。「A及びBのうち少なくとも1つ」は、「A及び/又はB」を意味する。
【0016】
[第一実施形態:インク]
以下、本発明の第一実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。本実施形態に係るインクは、顔料と、水性媒体と、アミン化合物とを含有する。水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する。特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogP(以下、単にLogPと記載することがある)は、0.10以上2.00以下である。特定有機溶媒の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下である。
【0017】
本実施形態に係るインクは、上述の構成を備えることにより、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、クリーニングにより除去され易い。本実施形態に係るインクが上述の効果を奏する理由は、以下のように推察される。
【0018】
本実施形態に係るインクは、有機溶媒として、疎水性が比較的高い特定有機溶媒(LogPが0.10以上2.00以下)を含む。本実施形態に係るインクは、特定有機溶媒を含有することにより、乾燥して水分が減少した際に、高い疎水性を示す。本実施形態に係るインクは、疎水性が高くなると、本実施形態に係るインクに含まれる顔料が凝集し、本実施形態に係るインクが増粘する。このような理由から、本実施形態に係るインクは、乾燥して水分が失われた際に、顔料が凝集して増粘し易い。そして、このような乾燥によって増粘し易い本実施形態に係るインクは、記録媒体に着弾した後に速やかに増粘し、記録媒体の表面付近に顔料を留めて画像濃度が高い画像を形成する。これにより、本実施形態に係るインクは、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。
【0019】
また、特定有機溶媒の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下である。このため、本実施形態に係るインクを備えるインクジェット記録装置のノズルが詰まることがなく、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を最適化できる。また、特定有機溶媒の25℃における粘度が2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下であることで、クリーニングにより本実施形態に係るインクが除去され易くなる。
【0020】
また、本実施形態に係るインクは、アミン化合物を含有する。アミン化合物は、顔料表面の酸性基の一部を中和する。この結果、中和後に生成するイオンによる電荷反発作用が大きくなり、本実施形態に係るインクを保存している間に、本実施形態に係るインクが増粘したり、本実施形態に係るインクに含まれる顔料が凝集したりすることを抑制することができる。また、本実施形態に係るインクがアミン化合物を含有することで、乾燥(増粘)した本実施形態に係るインクに含まれる顔料が、水性媒体に再分散し易くなる。この結果、クリーニングによって、乾燥(増粘)した本実施形態に係るインクが除去され易くなる。本実施形態に係るインクは、例えば、クリーニング液を使用しなくても、クリーニングによって除去され易い。このため、本実施形態によれば、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を最適化することができる。
【0021】
乾燥処理後の本実施形態に係るインクの25℃における粘度は、100.0mPa・s以上8200.0mPa・s以下が好ましく、100.0mPa・s以上5000.0mPa・s以下がより好ましく、2000.0mPa・s以上5000.0mPa・s以下が更に好ましい。乾燥処理後の本実施形態に係るインクの25℃における粘度を100.0mPa・s以上8200.0mPa・s以下とすることで、所望の画像濃度を有する画像をより形成し易くなる。
【0022】
なお、乾燥処理は、本実施形態に係るインクの質量が30.00質量%減少するまで本実施形態に係るインクを40℃で加熱する処理である。加熱処理の詳細については、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法を採用できる。
【0023】
本実施形態に係るインクの25℃における粘度は、2.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が好ましく、7.5mPa・s以上9.5mPa・s以下がより好ましい。本実施形態に係るインクの25℃における粘度を2.0mPa・s以上25.0mPa・s以下とすることで、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を最適化することができる。
【0024】
(顔料)
本実施形態に係るインクにおいて、顔料は、例えば、顔料被覆樹脂と共に顔料粒子を構成する。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する顔料被覆樹脂とにより構成される。顔料被覆樹脂は、例えば、水性媒体に分散して存在する。本実施形態に係るインクの色濃度、色相、又は安定性を最適化する観点から、顔料粒子の体積中位径としては、30nm以上300nm以下が好ましく、90nm以上130nm以下がより好ましい。
【0025】
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係るインクにおいて、顔料の含有割合としては、1.00質量%以上15.00質量%以下が好ましく、5.00質量%以上8.00質量%以下がより好ましい。顔料の含有割合を1.00質量%以上とすることで、本実施形態に係るインクは、所望する画像濃度を有する画像を形成し易くなる。また、本実施形態に係るインクにおける顔料の含有割合を15.00質量%以下とすることで、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を最適化できる。
【0027】
(顔料被覆樹脂)
顔料被覆樹脂は、顔料の表面に付着して、水性媒体に対する顔料の分散安定性を最適化する。なお、顔料被覆樹脂の一部は、顔料の表面に付着することなく、水性媒体中に遊離していてもよい。顔料被覆樹脂としては、例えば、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、及びスチレン-マレイン酸樹脂が挙げられる。顔料被覆樹脂の市販品としては、例えば、「DISPERBYK(登録商標)-190」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
【0028】
本実施形態に係るインクにおいて、顔料被覆樹脂の含有割合としては、0.30質量%以上3.50質量%以下が好ましく、1.00質量%以上2.00質量%以下がより好ましい。顔料被覆樹脂の含有割合を0.30質量%以上とすることで、所望する画像濃度を有する画像を形成し易くなる。顔料被覆樹脂の含有割合を3.50質量%以下とすることで、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を更に最適化できる。
【0029】
(水性媒体)
水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有する媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体は、水及び特定有機溶媒に加え、特定有機溶媒以外の水溶性有機溶媒(以下、その他の水溶性有機溶媒と記載することがある)を更に含有してもよい。
【0030】
本実施形態に係るインクにおいて、水性媒体の含有割合としては、60.00質量%以上98.00質量%以下が好ましく、70.00質量%以上95.00質量%以下がより好ましい。水性媒体の含有割合を60.00質量%以上98.00質量%以下とすることで、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を最適化できる。
【0031】
(水)
本実施形態に係るインクにおいて、水の含有割合としては、50.00質量%以上90.00質量%以下が好ましく、55.00質量%以上65.00質量%以下がより好ましい。水の含有割合を50.00質量%以上90.00質量%以下とすることで、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を最適化できる。
【0032】
(特定有機溶媒)
特定有機溶媒のLogPは、0.10以上2.00以下であり、0.20以上0.60以下が好ましく、0.20以上0.40以下が更に好ましい。特定有機溶媒のLogPを0.10以上2.00以下とすることで、本実施形態に係るインクは、乾燥して水分が減少した際に、高い疎水性を示す。このため、本実施形態に係るインクが、所望する画像濃度を有する画像を形成し易くなる。
【0033】
特定有機溶媒の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下であり、6.0mPa・s以上150.0mPa・s以下が好ましく、10.0mPa・s以上150.0mPa・s以下が更に好ましい。特定有機溶媒の25℃における粘度を2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下とすることで、インクジェット記録装置による本実施形態に係るインクの吐出安定性を最適化できる。また、特定有機溶媒の25℃における粘度を2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下とすることで、クリーニングにより本実施形態に係るインクが除去され易くなる。
【0034】
特定有機溶媒としては、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(LogP:0.35)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(LogP:0.44)が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係るインクにおいて、特定有機溶媒の含有割合としては、5.00質量%以上40.00質量%以下が好ましく、15.00質量%以上25.00質量%以下がより好ましい。特定有機溶媒の含有割合を5.00質量%以上40.00質量%以下とすることで、乾燥処理後の本実施形態に係るインクの25℃における粘度を上述の範囲に調整し易くなる。
【0036】
(その他の水溶性有機溶媒)
その他の水溶性有機溶媒は、LogPが0.10未満、又は2.00超の水溶性有機溶媒である。その他の水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール、グリセリン及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0037】
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられる。
【0038】
その他の水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物が好ましく、1,3-プロパンジオールがより好ましい。
【0039】
本実施形態に係るインクにおけるその他の水溶性有機溶媒の含有割合としては、3.00質量%以上25.00質量%以下が好ましく、5.00質量%以上15.00質量%以下がより好ましい。
【0040】
本実施形態に係るインクにおける特定有機溶媒及びその他の水溶性有機溶媒の合計含有割合としては、8.00質量%以上65.00質量%以下が好ましく、25.00質量%以上35.00質量%以下がより好ましい。
【0041】
水性媒体は、水、特定有機溶媒及び1,3-プロパンジオールのみを含有することが好ましい。水性媒体における水、特定有機溶媒及び1,3-プロパンジオールの合計含有割合としては、90.00質量%以上が好ましく、99.00質量%以上がより好ましく、100.00質量%が更に好ましい。
【0042】
(アミン化合物)
本実施形態に係るインクにおいて、アミン化合物の含有割合としては、0.05質量%以上1.00質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.30質量%以下がより好ましい。アミン化合物の含有割合を0.05質量%以上1.00質量%以下とすることで、クリーニングにより本実施形態に係るインクをより確実に除去することができる。また、アミン化合物の含有割合を1.00質量%以下とすることで、本実施形態に係るインクの25℃における粘度の上昇を確実に抑制することができ、本実施形態に係るインクの25℃における粘度を上述の範囲に調整し易くなる。また、アミン化合物の含有割合を1.00質量%以下とすることで、本実施形態に係るインクのpHが高くなり過ぎることを抑制することができる。
【0043】
アミン化合物としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノメタノール、ジエチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノールが挙げられる。アミン化合物としては、トリエタノールアミン、ジエチルアミノエタノールが好ましい。
【0044】
(界面活性剤)
界面活性剤は、本実施形態に係るインクに含まれる各成分の相溶性及び分散安定性を最適化する。また、界面活性剤は、本実施形態に係るインクに、記録媒体に対する濡れ性を付与する。本実施形態に係るインクにおける界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0045】
本実施形態に係るインクにおけるノニオン界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール界面活性剤(アセチレングリコール化合物を含む界面活性剤)、シリコーン界面活性剤(シリコーン化合物を含む界面活性剤)及びフッ素界面活性剤(フッ素樹脂又はフッ素含有化合物を含む界面活性剤)が挙げられる。アセチレングリコール界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物及びアセチレングリコールのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。本実施形態に係るインクは、アセチレングリコール界面活性剤を含有することが好ましい。
【0046】
本実施形態に係るインクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.10質量%以上1.50質量%以下が好ましく、0.30質量%以上0.60質量%以下がより好ましい。
【0047】
(その他の成分)
本実施形態に係るインクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
【0048】
(好ましい組成)
本実施形態に係るインクは、下記表1及び2に示す組成1~6の何れかを有することが好ましい。なお、表1及び2は、それぞれ、組成1~6の一部を示す。例えば、表2に示す組成1の成分は、表1に示す組成1における、表1に示す成分以外の成分を示す。また、下記表1及び2において、「割合」は、好ましい含有割合[質量%]の数値範囲を示す。例えば、表1における組成1の顔料の割合である「5.70-6.90」は、顔料を5.70質量%以上6.90質量%以下含有することを示す。他の欄の表記も同様である。「樹脂」は、顔料被覆樹脂を示す。「MPD」、「1,3PD」、「BTG」は、それぞれ、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示す。「DMAE」及び「TEA」は、それぞれ、ジメチルアミノエタノール及びトリエタノールアミンを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
(本実施形態に係るインクの製造方法)
本実施形態に係るインクは、例えば、顔料を含む顔料分散液と、水性媒体と、アミン化合物と、必要に応じて添加される他の成分(例えば、界面活性剤)とを混合することで製造できる。本実施形態に係るインクの製造では、各成分を均一に混合した後、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
【0052】
[第二実施形態:インクジェット記録装置]
以下、本発明の第二実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。本実施形態に係るインクジェット記録装置は、インクジェット用インクと、記録ヘッドと、ワイプブレードとを備える。記録ヘッドは、ノズルを有し、インクジェット用インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、ノズル内のインクジェット用インクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行う。ワイプブレードは、記録ヘッドのインク吐出面をワイプするワイプ動作を行う。インクジェット用インクは、第一実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)である。
【0053】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、上述の構成を備えることにより、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、インクをクリーニングにより除去し易い。本実施形態に係るインクジェット記録装置が上述の効果を奏する理由は、以下のように推察される。
【0054】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、第一実施形態に係るインクを使用するため、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、インクをクリーニングにより容易に除去できる。
【0055】
しかも、本実施形態に係るインクジェット記録装置が備える記録ヘッドは、インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作に加え、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させる揺動動作を行う。記録ヘッドは、上述の揺動動作でノズル内のインクの拡散を促し、吐出口付近に充填されるインクの増粘を抑制できる。このため、第一実施形態に係るインクが増粘したとしても、揺動動作によって、第一実施形態に係るインクの増粘を解消することができる。このため、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、第一実施形態に係るインク用のインクジェット記録装置として好適である。
【0056】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、ワイプブレードを備えている。ワイプブレードは、記録ヘッドのインク吐出面をワイプするワイプ動作を行う。一般的に、記録ヘッドのインク吐出面にインクが付着していると、記録ヘッドのノズルからのインクの不吐出や吐出ヨレが発生する。しかしながら、第一実施形態に係るインクは、クリーニング液を使用しなくても、クリーニングによって除去され易い。本実施形態に係るインクジェット記録装置は、ワイプブレードによるワイプ動作を行うことで、記録ヘッドのインク吐出面に付着した第一実施形態に係るインクを、クリーニングにより容易に除去することができる。このため、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、第一実施形態に係るインクの吐出安定性に優れる。
【0057】
[インクジェット記録装置の構造]
以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。
【0058】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例であるインクジェット記録装置100の要部を示す図である。図1は、インクジェット記録装置100の要部を示す図である。図1に示すように、インクジェット記録装置100は、搬送部1と、4個のライン式記録ヘッド11(記録ヘッド)と、図示しない4個のワイプブレードとを主に備える。インクジェット記録装置100は、給紙トレイ2、給紙ローラー3、給紙従動ローラー4、搬送ベルト5、ベルト駆動ローラー6、ベルト従動ローラー7、排出ローラー8、排出従動ローラー9及び排紙トレイ10を更に備える。搬送ベルト5、ベルト駆動ローラー6及びベルト従動ローラー7は、搬送部1の一部を構成する。インクジェット記録装置100の図中左端部には、給紙トレイ2が設けられている。給紙トレイ2は、記録用紙P(記録媒体)を収容する。給紙トレイ2の一端部には、給紙ローラー3と、給紙従動ローラー4とが設けられている。給紙ローラー3は、収容された記録用紙Pを、最上位置の記録用紙Pから順に一枚ずつ取り出し、搬送ベルト5に搬送し給紙する。給紙従動ローラー4は、給紙ローラー3に圧接されて従動回転する。
【0059】
給紙ローラー3及び給紙従動ローラー4の用紙搬送方向下流側(図1において右側)には、搬送ベルト5が回転自在に配設されている。搬送ベルト5は、ベルト駆動ローラー6とベルト従動ローラー7とに掛け渡されている。ベルト駆動ローラー6は、用紙搬送方向下流側に配置される。ベルト駆動ローラー6は、搬送ベルト5を駆動する。ベルト従動ローラー7は、用紙搬送方向上流側に配置される。ベルト従動ローラー7は、搬送ベルト5を介してベルト駆動ローラー6に従動して回転する。ベルト駆動ローラー6が時計方向に回転駆動されることにより、記録用紙Pが矢印で示される搬送方向Xに搬送される。
【0060】
また、搬送ベルト5の搬送方向下流側には、排出ローラー8と排出従動ローラー9とが設けられている。排出ローラー8は、図中時計回りに駆動され、画像が形成された記録用紙Pを装置筐体外へ排出する。排出従動ローラー9は、排出ローラー8の上部に圧接され従動回転する。排出ローラー8及び排出従動ローラー9の下流側には、排紙トレイ10が設けられている。排紙トレイ10には、装置筐体外に排出された記録用紙Pが積載される。
【0061】
4個のライン式記録ヘッド11は、第1ライン式記録ヘッド11C、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kを含む。第1ライン式記録ヘッド11C、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kは、それぞれ、搬送方向Xに直交する方向(幅方向A)に延びている。第1ライン式記録ヘッド11C、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kは、搬送ベルト5の上方において、記録用紙Pの搬送方向Xの上流側から下流側に向けて、この順に略等間隔で配設されている。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、搬送ベルト5の上面との距離が所定の長さとなる高さで支持されている。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、搬送ベルト5上を搬送される記録用紙Pに画像を記録する。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインク(第1インク、第2インク、第3インク及び第4インク)が収容されている。4個のライン式記録ヘッド11は、それぞれ、一定の吐出間隔Tを空け、所定の順序に沿って記録用紙Pにインクジェット吐出を行う。これにより、記録用紙P上にカラー画像が形成される。
【0062】
以下、図2及び図3を用いて、ライン式記録ヘッド11の詳細を説明する。なお、第1ライン式記録ヘッド11C、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kは、ほぼ同一の構造を有する。そのため、以下の説明では、第1ライン式記録ヘッド11Cを代表に挙げて説明するが、同様の説明は第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kにも当てはまる。
【0063】
図2はインクジェット記録装置100の第1ライン式記録ヘッド11Cの底面図である。図3は、図2のI-I断面の要部における拡大図である。
【0064】
第1ライン式記録ヘッド11Cの底面は、インクを吐出するインク吐出面(以下、単に吐出面と記載することがある)である。図2に示すように、第1ライン式記録ヘッド11Cの吐出面223には複数の吐出口224が開口している。複数の吐出口224は、インク滴が記録用紙P上に吐出されることで形成される、隣り合う記録ドット間に空白が生じないように、吐出面223上に千鳥状に配置される。また、複数の吐出口224は、吐出面223の長手方向において、インクジェット記録装置100で画像形成可能な最大の用紙の最大幅に亘って設けられる。
【0065】
図3に示すように、第1ライン式記録ヘッド11Cは、複数のノズル222(図3では1個のみ図示)と、撥水膜225と、複数のインク収容室226(図3では1個のみ図示)と、インク槽(図示せず)と、共通流路227と、供給孔228と、ノズル流路229と、振動板230と、共通電極231と、圧電素子232と、個別電極233とを備える。
【0066】
複数のノズル222の各々は、第1ライン式記録ヘッド11Cの吐出面223に開口して吐出口224を形成している(図2参照)。複数のノズル222は、第1ライン式記録ヘッド11Cの長手方向に沿って複数の列に配列される。
【0067】
撥水膜225は、吐出面223のうち、吐出口224以外の部分を覆うように形成されている。
【0068】
インク収容室226は、複数の吐出口224の各々に対応して1つずつ設けられる。
【0069】
インク槽はインクを貯留する。第1ライン式記録ヘッド11Cのインク槽はシアンのインクカートリッジ(図示せず)に連通し、連通したインクカートリッジから供給されるシアンインクを貯留する。なお、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kのインク槽は、それぞれ、マゼンタのインクカートリッジ、イエローのインクカートリッジ又はブラックのインクカートリッジ(何れも図示せず)に連通し、連通したインクカートリッジから供給されるマゼンタインク、イエローインク又はブラックインクを貯留する。
【0070】
共通流路227は、複数のインク収容室226の各々にインク槽のインクを供給する。複数のインク収容室226と共通流路227とは供給孔228を介して連通している。
【0071】
ノズル流路229はノズル222とインク収容室226とを連通させる。
【0072】
振動板230は、インク収容室226の壁のうち吐出面223と反対側の壁を構成する。振動板230は複数のインク収容室226に亘って連続して形成されている。
【0073】
共通電極231は、振動板230上において、複数のインク収容室226に亘って連続して形成されている。
【0074】
圧電素子232は、共通電極231上において、複数のインク収容室226の各々に対応して設けられている。
【0075】
個別電極233は、共通電極231との間に圧電素子232を挟むように、複数のインク収容室226の各々に対応して設けられている。
【0076】
後述する吐出用駆動パルスの印加によって、吐出口224から1ドット分のインク滴が記録用紙P上に吐出される。なお、インク滴が吐出されない間もノズル222内にはインクが満たされており、ノズル222内でインクはメニスカスMを形成している。
【0077】
インクジェット記録装置100の制御機構(図示略)は、吐出用駆動パルスを個別電極233に印加することで、圧電素子232を変形させる。この圧電素子232の変形が振動板230に伝えられ、振動板230の変形によってインク収容室226は圧縮される。その結果、ノズル222内のインクに圧力が付与され、ノズル222を通ったインクが吐出口224からインク滴となって記録用紙P上に吐出される。
【0078】
吐出用駆動パルスは、パルス幅がヘッド流路の固有振動周期の半周期に近い長さとなるように設定される。ここで「ヘッド流路」とは、ノズル222、ノズル流路229、インク収容室226、及び供給孔228を含む部分で構成される流路である。よって、圧電素子232に印加される駆動電圧のパルス幅も、同様にヘッド流路の固有振動周期の半分に近い長さになる。このような駆動パルスによると、1つのインク滴が吐出口224から吐出される。これにより、第1ライン式記録ヘッド11Cは、インクを所定の位置のノズル222から記録媒体に吐出する吐出動作を実施する。
【0079】
インクジェット記録装置100の制御機構(図示略)は、揺動用駆動パルスを個別電極233に印加することで、圧電素子232を変形させる。揺動用駆動パルスは、吐出用駆動パルスのパルス幅よりも小さい幅のパルスが複数回繰り返して印加されるように設定される。揺動用駆動パルスの個々のパルス幅は、ヘッド流路の固有振動周期よりも短く設定される。よって、圧電素子232に印加される駆動電圧のパルス幅も、同様にヘッド流路の固有振動周期よりも短くなる。このような短いパルスが連続すると、ノズル222内のインクの流速は、メニスカスMが揺動されるもののインク滴が吐出されない程度の値となる。これにより、第1ライン式記録ヘッド11Cは、ノズル222内のインクのメニスカスMを揺動させる揺動動作を実施する。
【0080】
以上のように、複数のインク収容室226の各々に設けられた圧電素子232がインクに圧力を付与することにより、吐出動作又は揺動動作が行われる。なお、揺動動作とは、ノズル222内のインクのメニスカスMを揺動させるが、ノズル222からインク滴を吐出させない動作である。
【0081】
第1ライン式記録ヘッド11Cは、例えば、揺動動作の直後に吐出動作を行う。なお、第1ライン式記録ヘッド11Cは、短時間に複数回の吐出動作を行う際には、特定の吐出動作と次の吐出動作との間に揺動動作を行わず、連続して吐出動作を行ってもよい。
【0082】
図4は、図1の第1ライン式記録ヘッド11Cの側面及びその近傍を示す図である。第1ライン式記録ヘッド11Cの近傍には、インクジェット記録装置100が備えるワイプブレード22が配設される。ワイプブレード22は、吐出面223を所定方向(図4においては左方向。以下、ワイプ方向Wとする)に拭き払う機能を有する。これにより、ワイプブレード22は、第1ライン式記録ヘッド11Cの吐出面223をワイプするワイプ動作を実施する。ワイプブレード22は、例えば、ゴム製ワイパーである。ワイプブレード22の線圧としては、例えば、5.0N/m以上13.0N/m以下である。
【0083】
なお、第2ライン式記録ヘッド11M、第3ライン式記録ヘッド11Y及び第4ライン式記録ヘッド11Kの近傍にも、インクジェット記録装置100が備える別のワイプブレード22が配設される。
【0084】
以上、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例について説明したが、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、図1~4に示されるものに限定されない。
【0085】
図1~4では、4色のインクに対応する4個のライン式記録ヘッド11を備えるインクジェット記録装置100を例に挙げて説明した。しかしながら、本実施形態に係るインクジェット記録装置が備える記録ヘッドの数は、特に限定されず、例えば、1個以上10個以下とすることができ、3個以上5個以下が好ましい。
【0086】
また、インクジェット記録装置100は、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色のインクをこの順番で吐出するが、本実施形態に係るインクジェット記録装置において、インクの種類、組み合わせ及び吐出順序はこれに限定されない。
【0087】
更に、インクジェット記録装置100は、揺動用駆動パルスを圧電素子232に印加することでノズル222内のインクのメニスカスMを揺動させる。しかし、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、他の機構(例えば、記録ヘッド自体の揺動)によってノズルのインクのメニスカスを揺動させてもよい。そのため、記録ヘッドは、サーマル式の記録ヘッドであってもよい。
【0088】
更に、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、スキャナー、複写機、プリンター又はファクシミリの機能を更に有する複合機であってもよい。
【0089】
本実施形態に係るインクジェット記録装置で画像形成を行う記録媒体としては、浸透性の記録媒体(例えば、普通紙)が好ましい。公知のインクジェット記録装置(特に、ライン型の記録ヘッドを備える公知のインクジェット記録装置)で普通紙に画像形成を行うと、画像濃度が不十分となり易い。これに対して、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、普通紙に画像形成を行う場合でも、所望の画像濃度を有する画像を形成できる。
【実施例0090】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0091】
[粘度の測定]
実施例において、有機溶媒及びインクの粘度の測定は、温度25℃において、トルクバランス・サーボ方式回転粘度計(東機産業株式会社製「TV-100EL」)を用いて実施した。
【0092】
実施例において使用した有機溶媒の詳細を下記表3に示す。なお、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルは、特定有機溶媒であった。
【0093】
【表3】
【0094】
[インクの調製]
以下の方法により、実施例及び比較例のインクジェット記録装置に用いるインク(A)~(I)を調製した。各インクの組成を下記表4に示す。
【0095】
(顔料分散液の調製)
黒色顔料としてのカーボンブラック(キャボット社製「Black Pearls(登録商標)800」)18.00質量部と、顔料被覆樹脂(ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK(登録商標)-190」4.00質量部と、イオン交換水78.00質量部とをディスパーを用いて混合した。得られた混合液を、ビーズミルを用いて分散処理することにより、顔料分散液として、黒色顔料分散液(顔料粒子のD50:110nm)を得た。
【0096】
(インク(A)の調製)
35.00質量部の黒色顔料分散液(黒色顔料6.30質量部、顔料被覆樹脂1.40質量部、イオン交換水27.30質量部)と、20.00質量部の3-メチル-1,5-ペンタンジオールと、10.00質量部の1,3-プロパンジオールと、0.50質量部の界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、アセチレン界面活性剤)と、0.10質量部のジメチルアミノエタノールと、34.40質量部のイオン交換水とを混合し、混合液を得た。
【0097】
上述の混合液を、攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーターBL-600」)を用いて回転数400rpmで攪拌した。次に、孔径5μmのフィルターを用いて、攪拌後の混合液をろ過し、異物及び粗大粒子を除去した。その結果、インク(A)を得た。
【0098】
(インク(B)~(I)の調製)
使用する原料の種類及び量を下記表4に示す通りに変更した以外は、インク(A)の調製と同様の方法により、インク(B)~(I)を調製した。下記表4に記載の数字は、各成分の質量部を示す。「樹脂」は顔料被覆樹脂を示す。「MPD」、「1,3PD」、「BTG」は、それぞれ、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルを示す。「DMAE」及び「TEA」は、それぞれ、ジメチルアミノエタノール及びトリエタノールアミンを示す。
【0099】
【表4】
【0100】
[インクの粘度測定]
上述の方法により、インク(A)~(I)について、25℃における粘度を測定した。測定結果を下記表5に示す。
【0101】
[乾燥処理後のインクの粘度測定]
測定対象となるインク(詳しくは、インク(A)~(I)の何れか)100.00質量部をシャーレに投入した。シャーレを40℃のオーブンに入れ、乾燥処理を行った。乾燥処理中は、シャーレ内の測定対象の質量を経時的に測定した。そして、シャーレ内の測定対象の質量が70.00質量部にまで減少した段階(測定対象の質量が30.00質量%減少した段階)で、乾燥処理を終了した。乾燥処理後の測定対象について、上述の方法により、25℃における粘度を測定した。測定結果(乾燥粘度)を下記表5に示す。
【0102】
[評価]
ピエゾ方式でインクを吐出するライン型の記録ヘッドとワイプブレード(線圧:8.0N/m)とを備える印字試験機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)を、評価機(インクジェット記録装置)として用いた。上述の記録ヘッドは、インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作(吐出液滴量:10pL、解像度600dpi)と、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを実施可能であった。なお、記録ヘッドは、揺動動作の際に、インクが吐出されない程度の弱い圧力をノズルに加えることで、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させた。記録媒体としては、A4サイズの普通紙(mondi社製「Color Copy(登録商標)」、坪量90g/m2)を用いた。記録媒体の搬送速度は、350mm/秒に設定した。
【0103】
評価機の記録ヘッドに下記表5に示すインク(詳しくは、インク(A)~(I)の何れか)を充填し、それぞれ実施例1~6及び比較例1~3のインクジェット記録装置とした。実施例1~6及び比較例1~3のインクジェット記録装置について、形成される画像の画像濃度と、クリーニング性とを評価した。クリーニング性とは、インクジェット記録装置によるクリーニングでのインクの除去され易さを示す。評価結果を下記表5に示す。なお、評価は、特に断りのない限り、温度25℃、湿度50%RHの環境下において行った。
【0104】
[画像濃度]
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像を形成した。形成されたソリッド画像の画像濃度(ID値)を、蛍光分光濃度計(コニカミノルタ株式会社製「FD-5」)で測定した。画像濃度は、以下の基準で判定した。
【0105】
(画像濃度の基準)
A(良好):ID値が1.20以上である。
B(不良):ID値が1.20未満である。
【0106】
[クリーニング性]
記録ヘッドの吐出面のクリーニング性の評価は、常温常湿環境(温度25℃且つ湿度60%RHの環境)下で行った。評価機を用いて、ソリッド画像(印字率100%、A4サイズ)を、5000枚の記録媒体に連続して印刷した。印刷後、評価機の記録ヘッドからインクをパージするパージ処理を行った。次に、評価機の記録ヘッドにおける吐出面をワイプブレードでワイプするワイプ処理を行った。これにより、記録ヘッドの吐出面に付着しているインクを除去した。次に、顕微鏡を用いて吐出面を観察し、クリーニングできずに残存したインクの有無を確認した。クリーニング性は、以下の基準で判定した。
【0107】
(クリーニング性の評価基準)
A(特に良好):吐出面に全くインクが付着していない。
B(良好):吐出面に僅かにインクが付着している。
C(不良):吐出面に明らかにインクが付着している。
【0108】
【表5】
【0109】
表3~5に示すように、実施例1~6のインクジェット記録装置は、インクと、記録ヘッドと、ワイプブレードとを備えていた。記録ヘッドは、ノズルを有し、インクをノズルから記録媒体に吐出する吐出動作と、ノズル内のインクのメニスカスを揺動させる揺動動作とを行った。ワイプブレードは、記録ヘッドのインク吐出面をワイプするワイプ動作を行った。インクは、顔料と、水性媒体と、アミン化合物とを含有していた。水性媒体は、水及び特定有機溶媒を含有していた。特定有機溶媒のオクタノール/水分配係数LogPは、0.10以上2.00以下であった。特定有機溶媒の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下であった。
【0110】
実施例1~6のインクジェット記録装置は、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、クリーニング性に優れていた。実施例1~6のインク(A)~(D)及び(G)~(H)は、所望の画像濃度を有する画像を形成できるとともに、クリーニングにより除去され易かった。
【0111】
より具体的には、実施例1~6のインク(A)~(D)及び(G)~(H)は、LogPが0.10以上2.00以下であり、かつ、25℃における粘度が2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下の特定有機溶媒を含むため、増粘が早く、所望の画像濃度を有する画像を形成できた。実施例1~6における乾燥処理後のインク(A)~(D)及び(G)~(H)の25℃における粘度は、100.0mPa・s以上8200.0mPa・s以下であった。乾燥処理は、インクの質量が30.00質量%減少するまでインクを40℃で加熱する処理であった。通常、高画像濃度用の増粘したインクは、クリーニング液を使用せずに記録ヘッドの吐出面をブレードワイプでワイプしただけではクリーニングにより除去され難い。しかしながら、実施例1~6のインク(A)~(D)及び(G)~(H)は、アミン化合物を含有するとともに25℃における粘度が2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下の特定有機溶媒を含むことで、クリーニング液を使用しなくても、クリーニングにより除去され易かった。
【0112】
一方、比較例1及び2のインクジェット記録装置に用いたインク(E)及び(F)は、特定有機溶媒を含有することで、普通紙でも所望の画像濃度を有する画像を形成できたが、アミン化合物を含有しておらず、クリーニングにより除去され難かった。比較例3のインクジェット記録装置に用いたインク(I)は、アミン化合物を含有することでクリーニングにより除去され易かったが、特定有機溶媒の代わりに、25℃における粘度が2.0mPa・s以上350.0mPa・s以下であってもLogPが0.10以上2.00以下の条件を満たさない有機溶媒を用いたことで、形成される画像の画像濃度が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の実施形態のインク及びインクジェット記録装置は、画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
11 :ライン式記録ヘッド
11C :第1ライン式記録ヘッド
11M :第2ライン式記録ヘッド
11Y :第3ライン式記録ヘッド
11K :第4ライン式記録ヘッド
22 :ワイプブレード
100 :インクジェット記録装置
222 :ノズル
223 :吐出面(インク吐出面)
M :メニスカス
P :記録用紙(記録媒体)
図1
図2
図3
図4