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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025056857
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】眼科装置及び顎受け高さ制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/00 20060101AFI20250401BHJP
【FI】
A61B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166363
(22)【出願日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 尚樹
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB16
4C316FC02
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】顎受け高さ制御の際、被検者に与える違和感や不快感を抑えながら、センサ検知情報を用いる自動処理により顎受け高さ制御が実現される眼科装置及び顎受け高さ制御方法を提供すること。
【解決手段】眼科装置Aは、本体部20と、顔支持部33と、顎受け部30と、制御部60と、を備える。制御部60は、額当てセンサ80と顎受けセンサ90からの検知情報を用い、顎受け部30の駆動制御を行う顎受け高さ制御部631を有する。顎受け高さ制御部631は、被検者の顔の位置が、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れているとき、額当てセンサ80によって被検者の額接触を検知すると、顎受け部30の上昇を開始し、顎受け部30の上昇中、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知すると、顎受け部30の上昇を停止する制御を行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の特性測定や撮影をする光学系を内蔵する本体部と、前記本体部に設けられ、目高ライン及び額当て部を有する顔支持部と、前記顔支持部に対し上下方向に駆動可能に設けられる顎受け部と、装置各部を制御する制御部と、を備える眼科装置であって、
前記額当て部は、被検者が額を接触させたことを検知する額当てセンサを有し、
前記顎受け部は、被検者の顎が接触したことを検知する顎受けセンサを有し、
前記制御部は、前記額当てセンサと前記顎受けセンサからの検知情報を用い、前記顎受け部の駆動制御を行う顎受け高さ制御部を有し、
前記顎受け高さ制御部は、前記被検者の顔の位置が、前記被検眼と前記目高ラインとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、前記被検者の顎が前記顎受け部から離れているとき、前記額当てセンサによって前記被検者の額接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を開始し、前記顎受け部の上昇中、前記顎受けセンサによって前記被検者の顎接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を停止する制御を行う
ことを特徴する眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記本体部は、測定部開口の周りに測定部開口表示灯を設け、
前記顎受け高さ制御部は、前記被検眼と前記目高ラインとの高さ位置を合わせた調整状態に処方された状態で前記額当て部に前記被検者の額を当てるとき、前記測定部開口表示灯を点灯させる制御を行う
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記眼科装置は、調整操作又は駆動制御によって上下方向の高さ調整が可能な光学テーブルに載置する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項3に記載された眼科装置において、
前記光学テーブルは、上下方向の高さ調整を行う昇降レバーを、前記眼科装置に対峙している前記被検者が操作可能な位置に配置する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載された眼科装置において、
前記顎受け高さ制御部は、前記顎受け部の上昇駆動中、顎受け高さ制御の正常な作動状態から逸脱している作動状態であることを検知すると、少なくとも前記顎受け部の上昇駆動を停止する制御を行う
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項5に記載された眼科装置において、
前記顎受け高さ制御部は、前記顎受け部の上昇駆動中であって、前記顎受けセンサによって前記被検者の顎接触を検知する前に、前記額当てセンサによって前記被検者の額が非接触になったと検知すると、額の非接触を検知したタイミングで前記顎受け部の上昇を停止する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項7】
請求項5に記載された眼科装置において、
前記顎受け高さ制御部は、前記顎受け部の上昇駆動中であって、前記顎受けセンサによって前記被検者の顎接触を検知する前に、前記被検眼と前記顎受け部の上昇速度が同じになったと判定されると、同一速度であることを判定したタイミングで前記顎受け部の上昇を停止する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項8】
眼科装置は、被検眼の特性測定や撮影をする光学系を内蔵する本体部と、前記本体部に設けられ、目高ライン及び額当て部を有する顔支持部と、前記顔支持部に対し上下方向に駆動可能に設けられる顎受け部と、装置各部を制御する制御部と、を備え、
前記額当て部は、被検者が額を接触させたことを検知する額当てセンサを有し、
前記顎受け部は、被検者の顎が接触したことを検知する顎受けセンサを有し、
前記制御部は、前記額当てセンサと前記顎受けセンサからの検知情報を用い、前記顎受け部の駆動制御を行う顎受け高さ制御部を有する顎受け高さ制御方法であって、
前記被検者が前記眼科装置に対峙している検査姿勢のとき、前記被検眼の高さ位置に、前記顔支持部に設けられた目高ラインの位置を合わせた調整状態に処方する位置合わせステップと、
前記被検者の顔の位置が、前記被検眼と前記目高ラインとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、前記被検者の顎が前記顎受け部から離れているとき、前記額当てセンサによって前記被検者の額接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を開始する顎受け部上昇開始ステップと、
前記顎受け部の上昇中、前記顎受けセンサによって前記被検者の顎接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を停止する顎受け部上昇停止ステップと、を有する
ことを特徴とする顎受け高さ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置及び顎受け高さ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オートアライメント開始前に顎受け部の高さを制御する顎受け高さ制御技術としては、例えば、特許文献1~特許文献4に記載されている技術が提案されている。特許文献1には、被検者の顎を乗せた顎受け部の位置を目高ラインの位置に合わせるように調整することで安定性の高いアライメントを実現する技術が記載されている。特許文献2には、被検眼の瞳孔位置がオートアライメントの可能範囲内に入るように、顎受け部又は測定部を駆動することでスムーズに検査を行うことができる眼科装置を提供する技術が記載されている。特許文献3には、被検眼の前眼部を見ながら容易に被検眼と検眼部との位置調整を行う眼科装置を提供する技術が記載されている。特許文献4には、被検眼の位置合わせに用いる顎受け部の高さ調整の手間を軽減できるとともに、検者の意思に基づいて顎受け部を上下させることができる眼科装置を提供する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6188338号公報
【特許文献2】特許第3935834号公報
【特許文献3】特許第4987391号公報
【特許文献4】特許第4649218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、顎受け高さ制御とは、被検眼と眼科装置の位置関係を、オートアライメントを開始できる位置関係に整える制御をいう。この顎受け高さ制御は、被検眼の高さ位置が顔支持部に設けられた目高ラインの位置に合うように、被検者の顔を載せる顎受け部の高さ位置を調整することで行われる。なお、目高ラインは、顔支持部の両側位置に、被検眼を適正な高さ位置に調整する目安として設けられている。目高ラインは、その高さ位置を眼科装置の本体部の対物レンズなどによる測定部開口の高さ中心位置に符合させている。
【0005】
これに対し、先行技術の顎受け高さ制御は、特許文献1~4の何れの文献をみても、デフォルト位置の顎受け部に被検者の顎(下顎底)を載せ、被検者の顎が接した状態のままで、顎受け部を上下方向に駆動して顎受け高さ制御を行う構成になっている。よって、被検者は、顎受け高さ制御中、意図しないタイミングで顔が顎受け部により押し上げられたり、顎受け部の低下に伴って不意に顔が下げられたりする。このため、被検者は、顎受け高さ制御の際、顎受け部の駆動により違和感や不快感を受ける。
【0006】
現行の顎受け高さ調整は、被検眼と目高ラインの位置関係を監視しながら、顎受け部の上昇スイッチ又は顎受け部の下降スイッチを操作するというように、検者の手動操作により調整を行っている。このため、検者は、顎受け高さ調整に手間と熟練を要するし、高さ調整が完了するまで上昇スイッチ又は下降スイッチを押し続ける必要がある。この結果、手動操作による顎受け高さ調整は、遠隔操作や初心者スタッフによる操作に対応できないし、さらに、顎受け高さ調整の操作中に他の作業ができない。
【0007】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、顎受け高さ制御の際、被検者に与える違和感や不快感を抑えながら、センサ検知情報を用いる自動処理により顎受け高さ制御が実現される眼科装置及び顎受け高さ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の眼科装置は、被検眼の特性測定や撮影をする光学系を内蔵する本体部と、前記本体部に設けられ、目高ライン及び額当て部を有する顔支持部と、前記顔支持部に対し上下方向に駆動可能に設けられる顎受け部と、装置各部を制御する制御部と、を備える。前記額当て部は、被検者が額を接触させたことを検知する額当てセンサを有する。前記顎受け部は、被検者の顎が接触したことを検知する顎受けセンサを有する。前記制御部は、前記額当てセンサと前記顎受けセンサからの検知情報を用い、前記顎受け部の駆動制御を行う顎受け高さ制御部を有する。前記顎受け高さ制御部は、前記被検者の顔の位置が、前記被検眼と前記目高ラインとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、前記被検者の顎が前記顎受け部から離れているとき、前記額当てセンサによって前記被検者の額接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を開始し、前記顎受け部の上昇中、前記顎受けセンサによって前記被検者の顎接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を停止する制御を行う。
【0009】
本発明の顎受け高さ制御方法は、額当てセンサと顎受けセンサからの検知情報を用いて行われる方法であり、位置合わせステップと、顎受け部上昇開始ステップと、顎受け部上昇停止ステップと、を有する。位置合わせステップは、前記被検者が前記眼科装置に対峙している検査姿勢のとき、前記被検眼の高さ位置に、前記顔支持部に設けられた目高ラインの位置を合わせた調整状態に処方する。顎受け部上昇開始ステップは、前記被検者の顔の位置が、前記被検眼と前記目高ラインとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、前記被検者の顎が前記顎受け部から離れているとき、前記額当てセンサによって前記被検者の額接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を開始する。顎受け部上昇停止ステップは、前記顎受け部の上昇中、前記顎受けセンサによって前記被検者の顎接触を検知すると、前記顎受け部の上昇を停止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る眼科装置及び顎受け高さ制御方法は、顎受け高さ制御の際、被検者に与える違和感や不快感を抑えながら、センサ検知情報を用いる自動処理により顎受け高さ制御が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の眼科装置が光学テーブルに載置された状態を示す斜視図である。
図2】実施例1の眼科装置を被検者側から視た状態を示す正面図である。
図3】実施例1の眼科装置での被検眼の測定/撮影状態を示す側面図である。
図4】実施例1の眼科装置の額当てセンサ例及び顎受けセンサ例を示す図である。
図5】実施例1の眼科装置の制御系をあらわすブロック図を示す。
図6】被検眼撮影時における基本操作の流れを示すフローチャートである。
図7】顎受け高さ制御処理動作の流れを示すフローチャートである。
図8】測定部開口ラインLEDを用いた眼科装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の眼科装置及び顎受け高さ制御方法を実施するための形態は、図面に示す実施例1に基づいて以下のように説明される。
【0013】
実施例1に適用される眼科装置Aは、被検眼の前眼部像、被検眼の眼底像、被検眼の眼底断層像を観察、撮影及び記録し、電子画像として診断のために提供する装置である。なお、図1図4のX,Y,Zは、被検眼を基準として眼科装置の本体部に対峙したときの左右方向(水平方向)の左右軸をX軸で示し、上下方向(鉛直方向)の上下軸をY軸で示し、X軸及びY軸と直交する前後方向(奥行き方向)の前後軸をZ軸で示す。
【実施例0014】
[装置全体構成(図1図3)]
眼科装置Aは、被検眼Eの眼底像を取得する眼底カメラと、被検眼Eの眼底断層像を取得するOCT(「Optical Coherence Tomography」の略称)と、を含む構成であり、“3次元眼底像撮影装置”と呼ばれる。ここで、「眼底カメラ」は、被検眼Eの奥にある網膜や視神経、毛細血管などの眼底状態を画像化し、眼底像を撮影するカメラである。「OCT」は、光の干渉を利用して被検眼Eの眼底に存在する網膜の断層を画像化し、眼底断層像を撮影する光干渉断層計である。
【0015】
眼科装置Aは、図1,図3に示すように、架台部10と、本体部20と、顎受け部30と、コントロールパネル部40と、光学系50と、制御部60と、光学テーブル70と、額当てセンサ80と、顎受けセンサ90と、を備えている。
【0016】
架台部10は、Y軸方向の高さ調整が可能な光学テーブル70に載置される。架台部10は、その上面位置に本体部20がX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に移動可能に支持される。架台部10は、その前面位置に顎受け部30が設けられる。架台部10は、その両側面位置に電源スイッチ11と、電源インレット12と、USB端子13と、LAN端子14と、が設けられる。「USB」は、「Universal Serial Bus」の略称であり、「LAN」は、「Local Area Network」の略称である。USB端子13は、外部メモリ接続用端子であり、図3に示すように、HDD(「Hard Disk Drive」の略)やUSBメモリなどが接続される。LAN端子14は、LANケーブル15を介して専用ソフトウェアなどがインストールされているパーソナルコンピュータ16が接続される。
【0017】
架台部10は、図3に示すように、電源部17とXYZ駆動部18が内蔵される。電源部17は、電源スイッチ11と電源インレット12とUSB端子13とLAN端子14などを含む。XYZ駆動部18は、アライメント制御において架台部10に対して本体部20を移動させるとき、本体部20をXYZ軸の三軸方向(三次元方向)に駆動するモータ及びモータ駆動回路を有するモータアクチュエータである。
【0018】
本体部20は、顎受け部30が固定される架台部10に対してXYZ駆動部18によりX軸方向とY軸方向とZ軸方向に移動可能に設けられる。本体部20は、顎受け部30に対して被検者が適正な位置関係にて顎を支持した状態で、被検眼Eの眼特性を測定する光学系50が、全体を覆う本体カバー21に内蔵される。本体カバー21の背面上部位置には、図1,3に示すようにコントロールパネル部40が配置される。本体カバー21の内部空間には、図3に示すように、光学系50以外に制御部60が内蔵される。
【0019】
本体カバー21は、図2に示すように、前面位置の中央部に、被検眼Eと対峙する光学系50の対物レンズ51(測定部開口)を有する。対物レンズ51は、その周辺部に、前眼部ステレオカメラ22と、外部固視孔23と、前眼部観察フィルター24と、測定部開口リングLED25(測定部開口表示灯の一例)と、を有する。
【0020】
前眼部ステレオカメラ22は、被検者の前眼部撮影により前眼部画像を取得するカメラである。この前眼部ステレオカメラ22は、対物レンズ51の両側位置に、測定対象である被検眼Eの前眼部に向かってレンズ光軸を傾斜配置した2個の右カメラ22aと左カメラ22bによって構成される。右カメラ22aと左カメラ22bは、被検眼Eの選択とそのときの画角に応じて顎受け部30に支持された被検者の顔の一部を切り取った右側前眼部画像及び左側前眼部画像を取得する。また、前眼部ステレオカメラ22は、X軸方向の幅寸法と見込み角度を決めて配置した2個の右カメラ22aと左カメラ22bにより構成している。このため、前眼部ステレオカメラ22は、右カメラ22aと左カメラ22bからの2つの前眼部画像に基づく計算処理により被検眼Eの三次元座標位置を特定することが可能である。
【0021】
外部固視孔23は、点灯することによって被検眼Eの視線方向を落ち着かせるために用いられる固視灯であり、対物レンズ51の外周位置に等間隔で8個配置される。前眼部観察フィルター24は、前眼部観察や前眼部OCTの際に光量調整するために用いられるフィルターであり、右カメラ22aの外側位置と左カメラ22bの外側位置の縦方向にそれぞれ2個(合計4個)配置される。測定部開口リングLED25は、点灯することによって被検眼Eの視線を測定部開口の高さ中心位置に固定させるために用いられる測定部開口表示灯の一例である。この測定部開口リングLED25は、測定部開口である対物レンズ51の外周に沿った位置に環状で設けられ、後述する調整状態に処方された状態で額当て部33bに被検者の額を当てるときに点灯される。
【0022】
顎受け部30は、被検者の顎を受ける部材であり、図2及び図3に示すように、架台部10に固定された顎受け支持部31に対し上下方向に駆動可能に設けられる。顎受け部30は、内蔵された顎受け駆動部32により昇降する昇降ロッド30aと、該昇降ロッド30aの上端位置に固定された顎受け台30bと、該顎受け台30bの両側位置に設けられた顎受け紙止めピン30cと、を有している。顎受け駆動部32は、アライメント制御において顎受け支持部31(=架台部10)に対して顎受け部30をY軸方向に移動させるとき、昇降ロッド30aをY軸方向に駆動するモータ及びモータ駆動回路を有するモータアクチュエータである。
【0023】
顎受け支持部31は、図2に示すように、T字形状の両端部位置に、顎受け部30に顎を支持した被検者の顔を3方向から囲む形状の顔支持部33が固定される。顔支持部33は、架台部10に固定されている部材であり、Y軸方向に延びる一対の縦支柱部331,332と、一対の縦支柱部331,332の上端部を繋ぐ横支柱部333と、を有する。一対の縦支柱部331,332は、対物レンズ51による測定部開口の高さ中心位置に符合するそれぞれの位置に、被検眼Eを適正な高さ位置に調整する目安となる目高ライン33aが設けられる。横支柱部333は、被検者の額が接する面の中央部位置に、着脱可能であり、シリコーンゴムなどで形成された額当て部33bが設けられる。さらに、横支柱部333は、被検者の額が接する面とは反対面の中央位置に、多段階に折り曲げ可能なアーム34が設けられ、アーム34の先端部には図示していない外部固視標が設けられる。
【0024】
コントロールパネル部40は、図1及び図3に示すように、本体カバー21の背面上部位置に配置される。コントロールパネル部40は、前眼部ステレオカメラ22からの被検眼Eの前眼部画像や光学系50からの被検眼Eの前眼部観察像などをカラー表示する画面41を有している。画面41は、表示されたボタン像や画像などを検者が指によってタッチ操作することが制御部60への入力操作になるタッチパネルになっている。コントロールパネル部40は、本体部20に対して連結支持部42により連結支持される。連結支持部42は、画面41を本体部20に対して全周方向の何れの位置にも設定可能であるとともに、画面41の傾斜角度も自由に設定可能な折れ曲げ支持と回転支持の組み合わせ支持構造にしている。
【0025】
コントロールパネル部40は、検者が被検者の傍に寄り添って眼特性の検査(以下、「直接検査」という。)を行うときに用いられる。連結支持部42は、検者が眼科装置Aの周囲のどこの位置にいても画面41を検者にとって操作しやすい位置に配置できる機能を確保している。なお、図1に示す遠隔操作用タブレット40’は、検者が遠隔操作により眼特性の検査(以下、「リモート検査」という。)を行うときに用いられる。遠隔操作用タブレット40’は、タッチパネルによる画面41’を有し、コントロールパネル部40と同等の入力操作機能を備えるのに加え、本体部20との通信機能を備えている。
【0026】
光学系50は、顎受け部30に被検者が顎を支持した状態で被検眼Eの眼特性を測定するもので、図3に示すように、対物レンズ51を有する眼底カメラユニット52と、OCTユニット53と、を有している。眼底カメラユニット52は、照明光学系と撮影光学系とを含み、レンズや撮像素子などにより被検眼Eの眼底像を取得する眼底カメラを構成するユニットである。OCTユニット53は、波長可変光源やファイバカプラなどにより被検眼Eの眼底断層像を取得するOCTを構成するユニットである。なお、光学系50は、被検眼Eの眼底像と眼底断層像を取得する機能以外に、被検眼Eの前眼部観察像を取得する機能も併せて有する。
【0027】
制御部60は、コントロールパネル部40の画面41へのタッチ操作などを含む各種の入力操作に基づいて、装置各部(眼底カメラユニット52、OCTユニット53、顎受け部30、本体部20など)を制御する。制御部60は、ハードウェア構成として、図3に示すように、制御基板60aと、CPU基板60bと、画像ボード60cと、を有している。
【0028】
光学テーブル70は、図1に示すように、眼科装置Aが載置される天板71と、天板支柱72と、キャスター支柱73と、テーブル昇降機構74と、昇降レバー75と、キャスターベース76と、キャスター77と、を備えている。テーブル昇降機構74は、天板支柱72とキャスター支柱73の内部に配置され、キャスター支柱73に対して天板支柱72を昇降する。昇降レバー75は、眼科装置Aが載置される天板71及び天板支柱72を手動操作で昇降させる手動操作部である。ここで、昇降レバー75は、例えば、リモート検査のとき、被検者が椅子78に座った状態のままで昇降操作が可能なように、レバー把持部が被検者側に向けて天板71の下部から突出する位置に配置されている。なお、天板ストローク量は、例えば、200mm程度に設定されている。ここで、実施例1の光学テーブル70は、座面の高さが調整可能な椅子78に被検者が座った状態(座位)で測定を行う眼科装置Aであるため、座位測定に対応する高さを有している。なお、光学テーブルは、被検者が立った状態(立位)で測定を行う眼科装置とすることもでき、この場合、椅子78を備える必要がなく、立位測定に対応する高さを有するテーブルを使用する。
【0029】
額当てセンサ80は、図1及び図2に示すように、顔支持部44の額当て部33bに設けられる。顎受けセンサ90は、図1及び図2に示すように、顎受け部30の顎受け台30bに設けられる。
【0030】
[額当てセンサ及び顎受けセンサの詳細構成(図4)]
額当てセンサ80は、顔支持部44の額当て部33bに設けられ、被検者が額Fを額当て部33bに接触させたこと、及び、被検者が額当て部33bに接触させている額Fを額当て部33bから離したか否かを検知する。額当てセンサ80からの検知信号は、後述する顎受け高さ制御部631に出力する。
【0031】
額当てセンサ80は、例えば、クリック感を持ち、押している間だけ導通してオン信号を出力する1個のタクトスイッチ(登録商標)により構成される。額当てセンサ80は、図4の吹出し部Bに示すように、タクトスイッチを採用したとき、接触感応部81と本体部82を有する。接触感応部81及び本体部82は、額当て部33bを構成するシリコーンゴムの裏面と、横支柱部333のゴム取り付け面と、によって形成される隙間空間の位置に組み込み配置し、接触感応部81の円柱端部を被検者の額に対向させる。
【0032】
額当てセンサ80は、図4に示すように、被検者の顔の位置が、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れているとき、被検者が額Fを額当て部33bに接触させたことを検知する。そして、顎受け高さ制御部631は、額当てセンサ80からの接触を示す検知信号を入力すると、オフ信号→オン信号をトリガにして顎受け部30の上昇駆動を開始する。
【0033】
額当てセンサ80は、顎受け部30の上昇駆動中、被検者が額当て部33bに接触させている額Fを額当て部33bから離したか否かを検知する。顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇駆動中、額Fを額当て部33bから離したことを示す検知信号を入力すると、オン信号→オフ信号をトリガにして顎受け部30の上昇駆動を停止する。
【0034】
顎受けセンサ90は、顎受け部30の顎受け台30bに設けられ、顎受け台30bが被検者の顎Jに接触していない状態から接触状態へ移行したことを検知する。顎受けセンサ90からの検知信号は、後述する顎受け高さ制御部631に出力する。
【0035】
顎受けセンサ90は、額当てセンサ80と同様に、例えば、クリック感を持ち、押している間だけ導通してオン信号を出力する1個のタクトスイッチ(登録商標)により構成される。顎受けセンサ90は、図4の吹出し部Cに示すように、タクトスイッチを採用したとき、顎受け部91と接触感応部92と本体部93とを有する。顎受け部91は、接触感応部92の円柱端部の位置に固定され、スイッチオフのときに顎受け台30bから上方に突出して配置される。顎受け部91は、被検者の顎Jに接触を開始して下方へ短いストローク量を移動すると、顎受け台30bに有する凹部30dに沈み込んで一体化し、スイッチオンになる。接触感応部92は、円柱形状であり、顎受け台30bに有する穴部30eを貫通してY軸方向に移動可能に配置される。本体部93は、顎受け台30bの裏面位置に組み込み固定される。
【0036】
顎受けセンサ90は、額当てセンサ80からのオン信号をトリガにして顎受け部30の上昇駆動を開始した後、被検者の顎Jに接触していない状態が維持されている間、被検者の顎Jに接触していない状態を示すオフ信号を出力する。顎受けセンサ90は、顎受け部30の上昇駆動により顎受け部91が被検者の顎Jに接触し、短いストローク量を移動した後、顎受け台30bに有する凹部30dに沈み込むと、被検者の顎Jに接触している状態を示すオン信号の出力に切り替えられる。顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇駆動中、顎受け部30が被検者の顎Jに接触したことを示す検知信号を顎受けセンサ90から入力すると、オフ信号→オン信号をトリガにして顎受け部30の上昇駆動を停止する。
【0037】
[制御系構成(図5)]
制御系は、図5に示すように、コントロールパネル部40(画面41)と、光学系50(眼底カメラユニット52、OCTユニット53)と、制御部60と、を有している。
【0038】
制御部60は、眼底カメラユニット52及びOCTユニット53を制御する主制御部61と、必要データを記憶しておく記憶部62と、アライメント制御部63と、を備えている。アライメント制御部63は、前眼部ステレオカメラ22(右カメラ22a、左カメラ22b)により被検者の顔の左前眼部と右前眼部のそれぞれを異なる2方向から撮影することで前眼部画像を取得する。また、アライメント制御部63は、光学系50により被検眼Eの右眼と左眼のそれぞれの前眼部と眼底を撮影することで前眼部正面画像及び眼底正面画像を取得する。
【0039】
アライメント制御部63は、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32の少なくとも一方へ出力する駆動指令により、被検眼Eと本体部20の測定部開口に設けられた対物レンズ51との相対位置関係の調整を行う。ここで、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32の使い分けは、調整移動量がXZ軸方向移動量のみであればXYZ駆動部18を用いる。一方、調整移動量にY軸方向移動量を含む場合は、XYZ駆動部18の移動許容範囲より顎受け駆動部32のY軸移動許容範囲が広いため、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32を使い分ける。例えば、顎受け高さ制御でのY軸移動は、顎受け駆動部32を用い、オートアライメントやマニュアルアライメントでのY軸移動は、XYZ駆動部18を用いる。このアライメント制御部63は、図5に示すように、顎受け高さ制御部631と、オートアライメント部632と、マニュアルアライメント部633と、を有している。
【0040】
顎受け高さ制御部631は、額当てセンサ80及び顎受けセンサ90からの検知信号を入力する。そして、顎受け高さ制御は、被検者の顔の位置が、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れていることを開始条件とする。顎受け高さ制御部631は、開始条件が成立しているとき、額当てセンサ80によって被検者の額接触を検知すると、顎受け部30の上昇を開始する指令を顎受け駆動部32に出力する。そして、顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇中、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知すると、顎受け部30の上昇を停止する指令を顎受け駆動部32に出力する制御を行う。また、顎受け高さ制御部631は、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方された状態で額当て部33bに被検者の額Fを当てるとき、測定部開口リングLED25を点灯する制御を行う。
【0041】
オートアライメント部632は、顎受け高さ制御の完了に続いて、前眼部ステレオカメラ22により取得される前眼部画像に基づいて、瞳孔に対するオートアライメントを開始する。瞳孔に対するオートアライメントは、画面41の動画エリアに表示されている2つの前眼部画像の瞳孔マークが合うように撮影眼の自動調整により行われる。撮影眼の自動調整は、XYZ駆動部18の駆動により、前眼部画像の中央位置に2つの瞳孔マークが重なって配置されるように、自動的にXYZ軸アライメント調整する制御である。
【0042】
マニュアルアライメント部633は、オートアライメント開始からの経過時間が予め設定した制限時間を経過したとき、又は、検者が積極的にマニュアル操作を選択したとき、瞳孔に対するマニュアルアライメントを実行する。瞳孔に対するマニュアルアライメントは、オートアライメント画面に表示されているマニュアルモードボタンをタップすると、撮影眼の自動調整を中止し、手動で撮影眼のアライメント調整を行うマニュアル調整モードへ移行する。このマニュアル調整モードは、画面41に表示されている2つの前眼部画像の瞳孔マークをタップ操作する撮影眼のマニュアル調整により行われる。このマニュアル調整は、XYZ駆動部18の駆動により、前眼部画像の中央位置に2つの瞳孔マークが重なって配置されるように、XYZ軸アライメント調整が行われる。
【0043】
[被検眼画像の撮影処理動作(図6)]
制御部60において実行される被検眼画像(例えば、前眼部像、眼底像、眼底断層像の何れかの画像)の撮影処理動作は、図6を参照して以下のように説明される。なお、被検眼画像の撮影処理動作は、電源スイッチをオンにした眼科装置Aによる被検者が確定したらスタートする。
【0044】
ステップS1は、検者が、患者(=被検者)を特定する氏名や患者IDによる患者登録をするステップである。ここで、「患者ID」は、被検者の眼科検査に係る個人情報を管理するための識別番号であり、年齢や性別やフォローアップのための過去の検査情報などを含めることができる。
【0045】
ステップS2は、アライメント制御部63の顎受け高さ制御部631が、顎受け高さ制御を行うステップである。なお、顎受け高さ制御は、その詳しい内容を後述する。
【0046】
ステップS3は、検者が、撮影種別の選択をするステップである。この撮影種別の選択は、コントロールパネル部40の画面41に表示される撮影アイコン選択画面から撮影モード(前眼部像撮影モード、眼底像撮影モード、眼底断層像撮影モードなど)の何れかをタッチ操作により選択することで行われる。なお、撮影種別の選択と併せて、表示ボタンのタッチ操作により撮影眼が選択される。
【0047】
ステップS4は、アライメント制御部63のオートアライメント部632が、撮影眼の瞳孔に対するオートアライメント(自動調整)を実行するステップである。なお、オートアライメント時間が長引いたときや検者が積極的に希望したときは、瞳孔に対するオートアライメント(自動調整)に代え、瞳孔に対するマニュアルアライメント(手動調整)がマニュアルアライメント部633により実行される。
【0048】
ステップS5は、主制御部61が、自動的に焦点調整するオートフォーカスを行うステップである。このオートフォーカスは、前眼部像撮影モードの際、被検眼Eの前眼部に対して焦点の調整をし、眼底像撮影モード及び眼底断層像撮影モードの際、被検眼Eの眼底に対して焦点の調整をする。
【0049】
ステップS6は、検者が、被検眼画像(例えば、前眼部像、眼底像、眼底断層像の何れかの画像)を撮影するステップである。この撮影は、画面41に表示される撮影画面にて「OKボタン」をタップ操作したら今回の撮影をし、次の撮影に移行する。そして、1回の撮影毎に撮影画像のプレビューが表示される。
【0050】
ステップS7は、検者が、撮影画像のプレビューを確認し、プレビュー確認OKかプレビュー確認NGかを判断するステップである。ステップS7は、プレビュー確認OKと判断したらステップS8へ進む。ステップS7は、プレビュー確認NGと判断したらステップS5へ戻り、再びオートフォーカスを行い、ステップS7にてプレビュー確認OKと判断されるまでステップS6にて撮影を試みる。
【0051】
ステップS8は、検者が、撮影画像を記憶部62に保存するステップである。この画像保存は、画面41に表示される撮影画面にて「保存ボタン」をタップ操作したらそのときの撮影画像が記憶部62に保存され、保存を完了したらエンドへ進む。
【0052】
[顎受け高さ制御処理動作(図7)]
患者登録が完了したらスタートし、図6のステップS2(顎受け高さ制御)にて実行される顎受け高さ制御処理動作は、図7を参照して以下のように説明される。
【0053】
ステップS201は、検者が、被検者に対して椅子78に座るように促すことで、被検者が椅子78に座るステップである。検者は、直接検査で被検者を椅子78に座らせるとき、同じ姿勢を維持できる楽な姿勢で座るように被検者に対して口頭でアドバイスする。検者は、リモート検査で被検者を椅子78に座らせるとき、同様のアドバイスをマイクとスピーカを通じて被検者に対して伝える。
【0054】
ステップS202は、ステップS201での着座、又は、ステップS203でのNOとの判断に続き、目高ライン33aが被検眼Eに合うように光学テーブル70を上下移動するステップである。直接検査のときは、主に検者が昇降レバー75に対するレバー操作を行う。リモート検査のときは、被検者が昇降レバー75に対するレバー操作を行う。レバー操作は、被検眼Eよりも目高ライン33aが低いとき、光学テーブル70の昇降レバー75の上向き操作を行い、眼科装置Aの位置を高くして目高ライン33aを被検眼Eの高さ位置に合わせる。レバー操作は、被検眼Eよりも目高ライン33aが高いとき、光学テーブル70の昇降レバー75の下向き操作を行い、眼科装置Aの位置を低くして目高ライン33aを被検眼Eの高さ位置に合わせる。ここで、光学テーブル70の天板ストローク量は、例えば、200mm程度に設定され、しかも、椅子78は、座面の高さが調整可能である。よって、目高ライン33aと被検眼Eの高さ位置を合わせは、高さ調整をした椅子78に被検者が座った状態(座位)で測定を行うとき、子供から大人までの被検者に対応できる。
【0055】
ステップS203は、光学テーブル70の上下移動に続き、検者が、被検眼Eの位置に目高ライン33aの位置を合わせた調整状態であるか否かを判断するステップである。直接検査のときは、検者が直接に目視することで判断する。リモート検査のときは、検者が遠隔操作用タブレット40’の画面41’に映し出された被検者の顔と顔支持部33の画像を見て判断する。
【0056】
ステップS204は、ステップS203での位置を合わせた調整状態であるとの判断に続き、顎受け高さ制御部631が、測定部開口リングLED25を環状に点灯させるステップである。ステップS204は、検者が位置合わせ調整状態を判断し、画面41又は画面41’に表示されている高さ調整OKボタンなどをタッチ操作すると、顎受け高さ制御部631が測定部開口リングLED25を点灯する。測定部開口リングLED25を点灯させる理由は、測定部開口リングLED25が測定部開口である対物レンズ51の外周を囲む位置に設けられているため、測定部開口リングLED25を点灯すると測定部開口が光りに囲まれて浮き立ち、被検眼Eが測定部開口の高さ中心位置を簡単に認識できることによる。
【0057】
ステップS205は、ステップS204での測定部開口リングLED25の点灯に続き、検者が、被検者に対して額当て部33bに額Fを当てるように要求することで、被検者が額Fを額当て部33bに当てて顔固定するステップである。検者は、額当て部33bに額Fを当てるように被検者へ要求するとき、被検者の顔の向きや顔の位置や視線をずらさないで維持できる程度に額Fを額当て部33bに押し当てるように口頭(直接検査)、又は、マイク(リモート検査)によってアドバイスする。アドバイスの理由は、被検者が額Fを額当て部33bに当てるとき、顎受け部30が被検者の顎Jから離れていることを除いて、被検者の顔がオートアライメントの開始条件が整っている状態であり、この状態で顔を固定したいことによる。
【0058】
ステップS206は、ステップS205での顔固定、又は、ステップS210でのNOの判定に続き、顎受け高さ制御部631が、額当てセンサ80からの検知信号がオン信号であるか否かを判定するステップである。ステップS206は、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れているとき、顎受け高さ制御部631が、額当てセンサ80からの検知信号を入力して判定する。
【0059】
ステップS207は、ステップS206での額当てセンサ80からの検知信号がオン信号であるとの判定に続き、顎受け高さ制御部631が、最初にオフ信号→オン信号になったことをトリガとして顎受け部30の上昇駆動を開始する。ステップS207は、顎受け部30の上昇駆動の開始後は、額当てセンサ80からの検知信号がオン信号であることを条件として顎受け部30がゆっくり位置を変更するステップである。ここで、顎受け部30の上昇速度は、仮に顎受け部30により被検者の顎Jを押し上げても、被検者に与える違和感を低く抑えることができる低速度域の速度に設定されている。
【0060】
ステップS208は、ステップS207での顎受け部30がゆっくり位置を変更する上昇に続き、顎受け高さ制御部631が、被検眼Eの瞳孔の上昇速度を測定するステップである。瞳孔の上昇速度測定は、画面41の動画エリアに表示されている前眼部画像の瞳孔マークの単位時間当たりの位置変化量によって測定する。
【0061】
ステップS209は、ステップS207での顎受け部30の上昇駆動に続き、顎受け高さ制御部631が、測定により取得した瞳孔の上昇速度が、そのときの顎受け部30の上昇速度と同じか否かを判定するステップである。すなわち、顎受け高さ制御部631は、顎受けセンサ90にオフ固定故障などが発生していると、被検者の顎Jに顎受け部30が接触してもオン信号を出力しないことがある。一方、顎受け部30は、制御系故障などを原因として上昇駆動を続け、被検者の顎Jに接触して被検者の顎Jを押し上げると、瞳孔の上昇速度と顎受け部30の上昇速度とが同じ速度になる。ステップS210は、顎受け部30が被検者の顎Jを押し上げると、瞳孔の上昇速度と顎受け部30の上昇速度とが同じ速度になることを利用し、制御系に故障や誤作動が発生したとき、顎受け部30が被検者の顎Jに到達していることを判定するステップである。
【0062】
ステップS210は、ステップS209での瞳孔と顎受け部30の上昇速度が異なるとの判定に続き、同顎受け高さ制御部631が、顎受けセンサ90からの検知信号がオン信号になったか否かを判定するステップである。ステップS209は、顎受け高さ制御の正常な作動状態が維持されていると、停止している瞳孔と上昇している顎受け部30の速度が異なると判定する。よって、ステップS210は、顎受け高さ制御の正常な作動状態において、顎受けセンサ90からの検知信号により顎受け部30が、被検者の顎Jに到達したか否かを判定している。
【0063】
ステップS211は、ステップS206でのNOとの判定、又は、ステップS209でのYESとの判定、又は、ステップS210でのYESとの判定に続き、顎受け高さ制御部631が、顎受け部30の上昇駆動を停止し、エンドへ進むステップである。ステップS211は、ステップS210でYESと判定されたとき、顎受けセンサ90からの検知信号が、オフ信号→オン信号になったことをトリガとし、顎受け部30の上昇駆動を停止する。なお、顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇駆動を停止すると、測定部開口リングLED25を消灯する。
【0064】
[顎受け高さ制御(調整)技術について(図3図4図7)]
現行の顎受け高さ調整は、顎受け部に被検者の顎を載せ、被検者の顎が接した状態のままで、顎受け部を、上昇スイッチ又は下降スイッチへのスイッチ操作により駆動し、被検眼の高さ位置を目高ラインの高さ位置に合わせている。よって、被検者は、顎受け高さ制御中、意図しないタイミングで顔が顎受け部により押し上げられたり、顎受け部の低下に伴って不意に顔が下げられたりする。このため、被検者は、顎受け高さ調整の際、顎受け部の駆動により違和感や不快感を受ける。
【0065】
現行の顎受け高さ調整は、被検眼と目高ラインの位置関係を監視しながら、顎受け部の上昇スイッチ又は顎受け部の下降スイッチを操作するというように、検者の手動操作により調整を行っている。このため、検者は、顎受け高さ調整に手間と熟練を要するし、高さ調整が完了するまで上昇スイッチ又は下降スイッチを押し続ける必要がある。この結果、手動操作による顎受け高さ調整は、遠隔操作や初心者スタッフによる操作に対応できないし、さらに、顎受け高さ調整の操作中に他の作業ができない。
【0066】
このように、現行の顎受け高さ調整は、顎受け高さ調整の最後に被検眼の高さ位置を目高ラインの高さ位置に合わせようとするため、最初から顎受け部に被検者の顎を載せた状態を保っておく必要がある。これに対し、本発明者は、順序を逆にして最初に被検眼の高さ位置を目高ラインの高さ位置に合わせておくと、最後に顎受け部が被検者の顎に接触するまで、顎受け部と顎の非接触状態を保つことができる点に着目した。加えて、本発明者は、顎受け高さ制御でセンサ検知情報を用いると自動制御が可能である点に着目した。
【0067】
上記着目点による顎受け高さ制御部631は、被検者の顔の位置が、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れていることを制御開始条件とする。顎受け高さ制御部631は、制御開始条件が成立しているとき、額当てセンサ80によって被検者の額接触を検知すると、顎受け部30の上昇を開始する。顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇中、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知すると、顎受け部30の上昇を停止する制御を行う構成を採用した。
【0068】
上記着目点による顎受け高さ制御方法は、額当てセンサ80と顎受けセンサ90からの検知情報を用いて行われ、位置合わせステップ(ステップS201~S203)と、顎受け部上昇開始ステップ(ステップS204~S207)と、顎受け部上昇停止ステップ(ステップS210~S211)と、を有する方法を採用した(図7を参照)。
【0069】
位置合わせステップは、被検者が眼科装置Aに対峙している検査姿勢のときを条件とする。そして、検者又は被検者は、眼科装置Aを載置した光学テーブル70を上下移動することで、被検眼Eの高さ位置に、顔支持部33に設けられた目高ライン33aの位置を合わせた調整状態に処方する(図4を参照)。
【0070】
顎受け部上昇開始ステップは、被検者の顔の位置が、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れているときを条件とする(図4を参照)。そして、顎受け高さ制御部631は、額当てセンサ80によって被検者の額接触を検知すると、顎受け部30の上昇を開始する。
【0071】
顎受け部上昇停止ステップは、顎受け部30の上昇駆動中、顎受け高さ制御が正常な作動状態を維持していることを条件とする。そして、顎受け高さ制御部631は、顎受け部の上昇中、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知すると、顎受け部30の上昇を停止する(図3を参照)。
【0072】
このように、顎受け部30は、上昇開始前から上昇を停止する直前のタイミングまで被検者の顎Jから離れている状態になるため、意図しないタイミングで顔が顎受け部により押し上げられたり、顎受け部の低下に伴って不意に顔が下げられたりすることがない。よって、被検者は、顎受け高さ制御で上昇駆動する顎受け部30から違和感や不快感を受けることが抑えられる。
【0073】
顎受け高さ制御部631は、額当てセンサ80と顎受けセンサ90からの検知情報に基づき、自動的に顎受け部30の上昇開始と顎受け部30の上昇停止の制御を行うため、顎受け高さ制御を、センサ検知情報を用いる自動処理により実現できる。この結果、検者が眼科装置Aの傍らにいる必要が無く、遠隔操作によるリモート検査に対応可能であるし、自動処理で熟練を全く要さないことで、初心者スタッフの検者にも対応できる。さらに、検者は、顎受け高さ制御中の余裕時間で他の作業ができる。
【0074】
[被検眼と目高ラインの高さ位置調整作用(図1図7)]
被検眼Eと目高ライン33aの高さ位置調整作用は、図7に示す位置合わせステップ(ステップS201~ステップS203)での処理動作により行われるもので、図1図7を参照して以下のように説明される。
【0075】
図7の処理は、スタートすると、ステップS201→ステップS202→ステップS203へと進み、ステップS203において、被検眼Eの位置が調整状態ではないと判断されている間、ステップS202→ステップS203へと進む流れが繰り返される。ここで、ステップS201は、検者が、被検者に対して椅子78に座るように促すことで、被検者を椅子78に座らせる。ステップS202は、直接検査のとき、検者が昇降レバー75に対するレバー操作を行い、目高ライン33aが被検眼Eに合うように光学テーブル70を上下移動させる。ステップS202は、リモート検査のとき、被検者が昇降レバー75に対するレバー操作を行い、目高ライン33aが被検眼Eに合うように光学テーブル70を上下移動させる。ステップS203は、直接検査又はリモート検査のとき、検者が、被検眼Eの位置に目高ライン33aの位置を合わせた調整状態であるか否かを判断する。ステップS203において、被検眼Eの位置が調整状態であると判断されると、次のステップS204へ進む。
【0076】
このように、眼科装置Aは、調整操作によって上下方向の高さ調整が可能な光学テーブルに載置している。よって、眼科装置Aの前に被検者が対峙しているとき、検者又は被検者が、光学テーブル70を上下方向に移動させる高さ調整操作を行うことにより、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方することができる。
【0077】
光学テーブル70は、上下方向の高さ調整操作を行う昇降レバー75を、眼科装置Aに対峙している被検者が操作可能な位置に配置している(図1を参照)。よって、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせるとき、昇降レバー75に対するレバー操作を被検者に委ねることで、検者の遠隔操作によるリモート検査に対応することができる。
【0078】
[顎受け制御作用(図4図7)]
顎受け部上昇開始作用は、図7に示す顎受け部上昇開始ステップ(ステップS204~S207)と、図7に示す顎受け部上昇停止ステップ(ステップS210~S211)とでの処理動作により行われるもので、図4図7を参照して以下のように説明される。
【0079】
図7の処理は、ステップS203において、被検眼Eの位置が調整状態であると判断されると、ステップS204→ステップS205→ステップS206→ステップS207へと進む。ここで、ステップS204は、顎受け高さ制御部631が、測定部開口リングLED25を環状に点灯させる。ステップS205は、検者が、被検者に対して額当て部33bに額Fを当てるように要求することで、被検者が額Fを額当て部33bに当てて顔固定する。ステップS206は、顎受け高さ制御部631が、額当てセンサ80からの検知信号がオン信号であるか否かを判定する。ステップS207は、ステップS206での額当てセンサ80からの検知信号がオン信号であるとの判定に続いて、顎受け高さ制御部631が、最初にオフ信号→オン信号になったことをトリガとして顎受け部30の上昇駆動を開始する(図4を参照)。
【0080】
図7の処理は、ステップS207に続き、ステップS208→ステップS209→ステップS210へと進む。ステップS210にてNOと判定されている間は、ステップS206→ステップS207→ステップS208→ステップS209→ステップS210へと進むながれが繰り返される。そして、図7の処理は、ステップS210にてYESと判定されると、ステップS211→エンドへ進み、顎受け制御を完了する。ステップS210は、同顎受け高さ制御部631が、顎受けセンサ90からの検知信号がオン信号になったか否かを判定する。ステップS211は、ステップS210でのYESとの判定に続き、顎受け高さ制御部631が、顎受けセンサ90からの検知信号がオフ信号→オン信号になったことをトリガとして顎受け部30の上昇駆動を停止する。顎受け部30は、その上昇駆動を停止すると、顎受け部30により被検者の顎Jが支持され、オートアライメントが開始できる。
【0081】
このように、顎受け高さ制御部631は、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方された状態で額当て部33bに被検者の額Fを当てるとき、測定部開口の周りに設けた測定部開口リングLED25を点灯させる制御を行うようにしている。よって、この制御は、顎受け高さ制御を開始するとき、測定部開口リングLED25の点灯によって測定部開口(対物レンズ51)を浮き立たせる演出をすることで、被検眼Eが測定部開口の高さ中央位置を簡単に認識できる。つまり、測定部開口リングLED25は、測定部開口である対物レンズ51の周りを環状に点灯する演出によって測定部開口が浮き立って見える。また、被検者は、額Fを額当て部33bに当接させた状態で被検眼Eの視線を測定部開口の高さ中心位置に固定させると、顎受け部30が接触するまで顔の向きや顔の位置が安定する。
【0082】
[顎受け部上昇中のフェールセーフ作用(図7)]
顎受け部上昇中のフェールセーフ作用は、図7に示すステップS206からステップS210へと進む流れが繰り返されている顎受け部30の上昇駆動中に行われるもので、図7を参照して以下のように説明される。
【0083】
図7の処理は、顎受け部30の上昇駆動中に、額当てセンサ80からのセンサ信号が、オン信号からオフ信号に切り替えられると、ステップS206→ステップS211へ進む流れになり、顎受け部30の上昇駆動が停止される。また、図7の処理は、顎受け部30の上昇駆動中に、瞳孔の上昇速度と顎受け部30の上昇速度とが同じになったら、ステップS208→ステップS209→ステップS211へ進む流れになり、顎受け部30の上昇駆動が停止される。ステップS208は、顎受け高さ制御部631が、被検眼Eの瞳孔の上昇速度を測定する。ステップS209は、顎受け高さ制御部631が、測定により取得した瞳孔の上昇速度が、そのときの顎受け部30の上昇速度と同じか否かを判定する。
【0084】
このように、顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇駆動中、顎受け高さ制御の正常な作動状態から逸脱している作動状態であることを検知すると、少なくとも顎受け部30の上昇駆動を停止する制御を行っている。よって、この制御は、顎受け部30の上昇駆動中、額当てセンサ80や顎受けセンサ90を含む顎受け高さ制御系において意図しない不具合が生じて正常な作動状態から逸脱すると、不具合をそのまま放置することによる弊害を防止できる。
【0085】
顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇駆動中であって、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知する前に、額当てセンサ80によって被検者の額Fが非接触になったと検知すると、額Fの非接触を検知したタイミングで顎受け部30の上昇を停止している。よって、この制御は、顎受け部30の上昇駆動中に被検者の額Fが額当て部33bから外れたとき、測定エラーが生じたり撮影画像にボケが生じたりするのを防止できる。つまり、被検者の顔は、額Fを額当て部33bに押し当てることで固定性を確保している。これに対し、被検者の顔は、額Fが額当て部33bから離れてしまうと固定性が損なわれ、簡単に顔が様々な方向に動くことで、測定エラーが生じたり撮影画像にボケが生じたりする。
【0086】
顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇中であって、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知する前に、被検眼Eと顎受け部30の上昇速度が同じになったと判定されると、同一速度であることを判定したタイミングで顎受け部30の上昇を停止している。顎受けセンサ90は、例えばオフ固定故障であると、顎受け部30の上昇駆動中にオン信号が出力されることなく、顎受け部30が上限位置まで上昇しようとする。このため、被検者の顎Jの位置が顎受け部30の上限位置より低いと、被検者の顎Jが必要以上に押し上げられることになる。これに対し、この制御は、顎受け部30の上昇駆動中に顎受け部30によって被検者の顎Jが押し上げを開始したとき、顎受け部30によって被検者の顎Jが必要以上に押し上げられるのを防止できる。
【0087】
[眼科装置A及び顎受け高さ制御方法の効果]
(1)眼科装置Aは、被検眼Eの特性測定や撮影をする光学系を内蔵する本体部20と、本体部20に設けられ、目高ライン33a及び額当て部33bを有する顔支持部33と、顔支持部33に対し上下方向に駆動可能に設けられる顎受け部30と、装置各部を制御する制御部60と、を備える。額当て部33bは、被検者が額Fを接触させたことを検知する額当てセンサ80を有する。顎受け部30は、被検者の顎Jが接触したことを検知する顎受けセンサ90を有する。制御部60は、額当てセンサ80と顎受けセンサ90からの検知情報を用い、顎受け部30の駆動制御を行う顎受け高さ制御部631を有する。顎受け高さ制御部631は、被検者の顔の位置が、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れているとき、額当てセンサ80によって被検者の額接触を検知すると、顎受け部30の上昇を開始し、顎受け部30の上昇中、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知すると、顎受け部30の上昇を停止する制御を行う。この発明は、顎受け高さ制御の際、被検者に与える違和感や不快感を抑えながら、センサ検知情報を用いる自動処理により顎受け高さ制御が実現される眼科装置Aを提供できる。
【0088】
(2)本体部20は、測定部開口(対物レンズ51)の周りに測定部開口表示灯(測定部開口リングLED25)を設ける。顎受け高さ制御部631は、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方された状態で額当て部33bに被検者の額Fを当てるとき、測定部開口表示灯(測定部開口リングLED25)を点灯させる制御を行う。この発明は、顎受け高さ制御を開始するとき、測定部開口表示灯(測定部開口リングLED25)の点灯によって測定部開口(対物レンズ51)を浮き立たせる演出をすることで、被検眼Eが測定部開口の高さ位置を簡単に認識して視線を固定できる。
【0089】
(3)眼科装置Aは、調整操作によって上下方向の高さ調整が可能な光学テーブル70に載置する。この発明は、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせるとき、光学テーブル70を上下方向に移動させる調整操作により、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方することができる。
【0090】
(4)光学テーブル70は、上下方向の高さ調整を行う昇降レバー75を、眼科装置Aに対峙している被検者が操作可能な位置に配置する。この発明は、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせるとき、昇降レバー75に対するレバー操作を被検者に委ねることで、検者の遠隔操作によるリモート検査に対応することができる。
【0091】
(5)顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇駆動中、顎受け高さ制御の正常な作動状態から逸脱している作動状態であることを検知すると、少なくとも顎受け部30の上昇駆動を停止する制御を行う。この発明は、顎受け部30の上昇駆動中、額当てセンサ80や顎受けセンサ90を含む顎受け高さ制御系において意図しない不具合が生じて正常な作動状態から逸脱すると、不具合をそのまま放置することによる弊害を防止できる。
【0092】
(6)顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇駆動中であって、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知する前に、額当てセンサ80によって被検者の額Fが非接触になったと検知すると、額Fの非接触を検知したタイミングで顎受け部30の上昇を停止する。この発明は、顎受け部30の上昇駆動中に被検者の額Fが額当て部33bから外れたとき、測定エラーが生じたり撮影画像にボケが生じたりするのを防止できる。
【0093】
(7)顎受け高さ制御部631は、顎受け部30の上昇中であって、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知する前に、被検眼Eと顎受け部30の上昇速度が同じになったと判定されると、同一速度であることを判定したタイミングで顎受け部30の上昇を停止する。この発明は、顎受け部30の上昇駆動中に顎受け部30によって被検者の顎Jが押し上げを開始したとき、顎受け部30によって被検者の顎Jが必要以上に押し上げられるのを防止できる。
【0094】
(8)眼科装置Aは、被検眼Eの特性測定や撮影をする光学系を内蔵する本体部20と、本体部20に設けられ、目高ライン33a及び額当て部33bを有する顔支持部33と、顔支持部33に対し上下方向に駆動可能に設けられる顎受け部30と、装置各部を制御する制御部60と、を備える。額当て部33bは、被検者が額Fを接触させたことを検知する額当てセンサ80を有する。顎受け部30は、被検者の顎Jが接触したことを検知する顎受けセンサ90を有する。制御部60は、額当てセンサ80と顎受けセンサ90からの検知情報を用い、顎受け部30の駆動制御を行う顎受け高さ制御部631を有する。顎受け高さ制御方法は、位置合わせステップ(ステップS201~ステップS203)と、顎受け部上昇開始ステップ(ステップS204~ステップS207)と、顎受け部上昇停止ステップ(ステップS210~ステップS211)と、を有する。位置合わせステップは、被検者が眼科装置Aに対峙している検査姿勢のとき、被検眼Eの高さ位置に、顔支持部33に設けられた目高ライン33aの位置を合わせた調整状態に処方する。顎受け部上昇開始ステップは、被検者の顔の位置が、被検眼Eと目高ライン33aとの高さ位置を合わせた調整状態に処方され、被検者の顎Jが顎受け部30から離れているとき、額当てセンサ80によって被検者の額接触を検知すると、顎受け部30の上昇を開始する。顎受け部上昇停止ステップは、顎受け部の上昇中、顎受けセンサ90によって被検者の顎接触を検知すると、顎受け部30の上昇を停止する。この発明は、顎受け高さ制御の際、被検者に与える違和感や不快感を抑えながら、センサ検知情報を用いる自動処理により顎受け高さ制御が実現される顎受け高さ制御方法を提供できる。
【0095】
実施例1の眼科装置A及び顎受け高さ制御方法は、図面を参照して以上のように説明された。しかし、本発明の眼科装置及び顎受け高さ制御方法の具体的な構成は、実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0096】
実施例1は、額当てセンサ80及び顎受けセンサ90として、1個のタクトスイッチによる構成例を示した。しかし、額当てセンサ及び顎受けセンサは、1個のタクトスイッチによる構成に限られない。額当てセンサ及び顎受けセンサは、例えば、複数個のタクトスイッチ、シートスイッチ、マイクロスイッチ、接触センサ(タッチパッドなど)、静電センサ、圧力センサ、などであってもよい。額当てセンサは、要するに、被検者が額を接触させたことを検知するスイッチ類やセンサ類であればよい。顎受けセンサは、要するに、被検者の顎が接触したことを検知するスイッチ類やセンサ類であればよい。
【0097】
実施例1は、測定部開口表示灯として、測定部開口リングLED25を用いる例を示した。しかし、測定部開口表示灯は、測定部開口リングLED25の例に限られない。測定部開口表示灯は、例えば、図8に示すように、測定部開口ラインLED25’としてもよい。測定部開口ラインLED25’は、測定部開口である対物レンズ51の周りの位置であって、レンズ中心位置を通る水平線に沿って配置される。この測定部開口ラインLED25’は、点灯によって左右一対のライン光になり、被検眼Eの水平方向の位置をX軸方向に合致させやすくなる。加えて、左右一対のライン光を延長した位置が測定部開口の高さ中央位置であることを容易に認識できる。さらに、測定部開口表示灯としては、図1に示す測定部開口リングLED25と図8に示す測定部開口ラインLED25’とを組み合わせた複合表示灯を用いてもよい。
【0098】
実施例1は、眼科装置Aとして、昇降レバーへの調整操作によって上下方向の高さ調整が可能な光学テーブル70に載置する例を示した。しかし、眼科装置は、調整操作によって上下方向の高さ調整が可能な光学テーブルへの載置例に限られない。眼科装置は、例えば、カメラ画像を監視しながら主制御部や顎受け高さ制御部やテーブル制御部などによる駆動制御によって上下方向の高さ調整が可能な光学テーブルに載置する例としてもよい。そして、光学テーブルの高さ調整制御を行う機能を持たせ制御部は、光学テーブルの上下移動処理ステップ(ステップS202)を、テーブル駆動部への制御指令により実行することができる。
【0099】
実施例1は、顎受け高さ制御部631のフェールセーフ制御として、顎受け部の上昇駆動中、額当てセンサ80によって被検者の額が非接触になったと検知すると、額の非接触を検知したタイミングで顎受け部30の上昇を停止する例を示した。また、実施例1は、顎受け部30の上昇駆動中、被検眼Eと顎受け部30の上昇速度が同じになったと判定されると、同一速度であることを判定したタイミングで顎受け部30の上昇を停止する例を示した。しかし、フェールセーフ制御は、実施例1に記載した例に限られず、顎受け部の上昇駆動中、顎受け高さ制御の正常な作動状態から逸脱している作動状態であることを検知すると、少なくとも顎受け部の上昇駆動を停止する制御を行うものであればよい。フェールセーフ制御例としては、例えば、下記の(a)~(e)に記載の例としてもよい。
(a)顎受けカメラを設け、顎受け部と顎との状態を示す画像により監視・判断し、顎受け部の上昇を抑える措置をする。
(b)本体カメラ及び/又は外部カメラを設け、全身カメラアライメントにより監視・判断し、顎受け部の上昇を抑える措置をする。
(c)顎受け部と光学テーブルとを連動させ、顎受け部の下降を含めて顎受け部の必要以上の上昇を回避する。
(d)現行の下降スイッチと連動させ、顎受け部の下降を含めて顎受け部の必要以上の上昇を回避する。
(e)被検者の顎部の広角画像に対するタッチ操作により顎受け部の必要以上の上昇を回避する。
【0100】
実施例1は、眼科装置として、被検眼の前眼部像、被検眼の眼底像、被検眼の眼底断層像を観察、撮影及び記録し、電子画像として診断のために提供する眼科装置Aへの適用例を示した。しかし、眼科装置は、実施例1に示した眼科装置Aへの適用に限られるものではない。すなわち、本発明のアライメント制御技術は、顎受け部と顔支持部を有し、被検眼と装置本体部との相対位置関係を調整する制御を行うアライメント制御を必要とする眼科装置であれば、自覚眼科装置であるか他覚眼科装置であるかを問わず様々な眼科装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
A 眼科装置
20 本体部
30 顎受け部
32 顎受け駆動部
33 顔支持部
33a 目高ライン
33b 額当て部
50 光学系
60 制御部
631 顎受け高さ制御部
80 額当てセンサ
90 顎受けセンサ
E 被検眼
J 顎
F 額
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8