(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025056928
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】タグ通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/59 20060101AFI20250401BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20250401BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H04B1/59
G06K7/10 124
G06K7/10 144
G06K19/07 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166463
(22)【出願日】2023-09-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」に係る委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 有佑
(72)【発明者】
【氏名】三次 仁
(72)【発明者】
【氏名】川喜田 佑介
(57)【要約】
【課題】 複数個の無線タグのそれぞれへのバックスキャッタ周波数の割り当てを迅速に実行するための技術を提供する。
【解決手段】 タグ通信装置は、複数個の無線タグのそれぞれに設定値を書き込むことによって、複数個の無線タグのそれぞれに互いに異なるバックスキャッタ周波数を割り当てる割り当て部と、複数個の無線タグのそれぞれに、電波を繰り返し送信して、複数個の無線タグのそれぞれから、当該無線タグに割り当てられたバックスキャッタ周波数を有する信号を受信する信号受信部と、を備え、割り当て部は、複数個の無線タグのそれぞれに電波を送信して、当該電波に対する反射波の強さを測定し、複数個の無線タグのそれぞれについて、測定された強さに対応するマップを利用して、当該無線タグに割り当てるべきバックスキャッタ周波数である割り当て周波数に対応する設定値を決定し、マップは、割り当て周波数と設定値の間の相関関係を示す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の無線タグと通信可能なタグ通信装置であって、
前記複数個の無線タグのそれぞれに設定値を書き込むことによって、前記複数個の無線タグのそれぞれに互いに異なるバックスキャッタ周波数を割り当てる割り当て部と、
前記複数個の無線タグのそれぞれに互いに異なるバックスキャッタ周波数が割り当てられた後に、前記複数個の無線タグのそれぞれに、電波を繰り返し送信して、前記複数個の無線タグのそれぞれから、当該無線タグに割り当てられた前記バックスキャッタ周波数を有する信号を受信する信号受信部と、
を備え、
前記割り当て部は、
前記複数個の無線タグのそれぞれに電波を送信して、当該電波に対する反射波の強さを測定し、
前記複数個の無線タグのそれぞれについて、測定された前記強さに対応するマップを利用して、当該無線タグに割り当てるべき前記バックスキャッタ周波数である割り当て周波数に対応する前記設定値を決定し、
前記マップは、前記割り当て周波数と前記設定値の間の相関関係を示す、
タグ通信装置。
【請求項2】
前記タグ通信装置は、前記マップを記憶するメモリを備える、請求項1に記載のタグ通信装置。
【請求項3】
前記複数個の無線タグのそれぞれは、当該無線タグに対応する前記マップを記憶し、
前記割り当て部は、前記複数個の無線タグのそれぞれから前記マップを読み出す、請求項1に記載のタグ通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、複数個の無線タグと通信可能なタグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数個の無線タグに電波を送信し、複数個の無線タグのそれぞれからバックスキャッタ周波数を有する信号を受信する無線通信システムが開示されている。無線通信システムは、複数個の無線タグのそれぞれに、互いに異なるバックスキャッタ周波数を割り当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の無線タグは、バックスキャッタ周波数を有する信号を生成するための発振回路を備える。発振回路の設定値を変えることにより、発振回路が所望の周波数で動作する。しかし、発振回路の設定値を予め決定されている設計値に設定しても、発振回路が実際に動作する周波数が、設計値に対応する周波数からずれる場合がある。この場合、実際のバックスキャッタ周波数が、無線タグに割り当てられるべきバックスキャッタ周波数からずれる。
【0005】
例えば、発振回路の設定値の調整を繰り返し試行して、実際のバックスキャッタ周波数を無線タグに割り当てられるべきバックスキャッタ周波数に近づけるフィードバック手法が想定される。しかし、この方法では、設定値の調整時間が比較的に長くなる。
【0006】
本明細書では、複数個の無線タグのそれぞれへのバックスキャッタ周波数の割り当てを迅速に実行するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、複数個の無線タグと通信可能なタグ通信装置を開示する。当該タグ通信装置は、前記複数個の無線タグのそれぞれに設定値を書き込むことによって、前記複数個の無線タグのそれぞれに互いに異なるバックスキャッタ周波数を割り当てる割り当て部と、前記複数個の無線タグのそれぞれに互いに異なるバックスキャッタ周波数が割り当てられた後に、前記複数個の無線タグのそれぞれに、電波を繰り返し送信して、前記複数個の無線タグのそれぞれから、当該無線タグに割り当てられた前記バックスキャッタ周波数を有する信号を受信する信号受信部と、を備え、前記割り当て部は、前記複数個の無線タグのそれぞれに電波を送信して、当該電波に対する反射波の強さを測定し、前記複数個の無線タグのそれぞれについて、測定された前記強さに対応するマップを利用して、当該無線タグに割り当てるべき前記バックスキャッタ周波数である割り当て周波数に対応する前記設定値を決定し、前記マップは、前記割り当て周波数と前記設定値の間の相関関係を示す。
【0008】
実験において、無線タグの反射波の強さが或る値を示す状態において、割り当て周波数と周波数設定値の間に相関関係が存在することが判明した。上記の構成によれば、タグ通信装置は、反射波の強さを測定する。そして、タグ通信装置は、測定された反射波の強さに対応するマップを利用して、割り当て周波数に対応する設定値を決定することができる。マップを利用することにより、バックスキャッタ周波数の割り当てを迅速に実行することができる。
【0009】
前記タグ通信装置は、前記マップを記憶するメモリを備えてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、自身のメモリからマップを迅速に呼び出すことができる。
【0011】
前記複数個の無線タグのそれぞれは、当該無線タグに対応する前記マップを記憶し、前記割り当て部は、前記複数個の無線タグのそれぞれから前記マップを読み出してもよい。
【0012】
例えば、複数個の無線タグのそれぞれで相関関係が異なる場合がある。上記の構成によれば、複数個の無線タグのそれぞれからマップを読み出せばよく、複数個の無線タグのそれぞれで異なるマップをタグ通信装置に記憶させなくてもよい。例えば、無線タグを新たに追加したとしても、当該無線タグに対応するマップをタグ通信装置10に新たに記憶させる必要がない。複数個の無線タグのそれぞれで相関関係が異なる状況に簡易に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】タグ通信装置と無線タグを示すブロック図である。
【
図2】タグ通信装置と無線タグの通信を示すシーケンス図である。
【
図3】第1実施例に係るタグ通信装置が実行する処理のフローチャート図である。
【
図4】第2実施例に係る設定値マップを示す図である。
【
図5】第2実施例に係るタグ通信装置が実行する処理のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)
(タグ通信装置10の構成;
図1)
タグ通信装置10は、複数個の無線タグ100及び200と通信可能な装置である。
図1では、2個の無線タグ100及び200が記載されているが、無線タグの個数は、2個に限らず、3個以上であってもよい。無線タグは、例えば、Radio Frequency Identification(RFID)タグである。
【0015】
タグ通信装置10は、アンテナ部12と、変調部14と、復調部16と、制御部30と、を備える。アンテナ部12は、各無線タグに搬送波を送信し、各無線タグから当該搬送波の反射波を受信するアンテナを含む。アンテナ部12の構成は、例えば、既知の構成でよく、本明細書では、詳細な説明は省略する。本実施例では、アンテナ部12は、UHF帯の搬送波を送信する。変形例では、アンテナ部12は、UHF帯以外の帯域の搬送波を送信してもよい。
【0016】
変調部14は、UHF帯の搬送波を変調してアンテナ部12に供給する回路である。また、変調部14は、UHF帯の搬送波を変調せずにアンテナ部12に供給可能である。以下では、変調された搬送波を「変調波」と記載し、変調されていない搬送波を「無変調波」と記載する。復調部16は、アンテナ部112が受信した反射波を復調して、制御部30に供給する回路である。変調部14及び復調部16の構成は、例えば、既知の構成でよく、本明細書では、詳細な説明は省略する。
【0017】
制御部30は、メモリ34に記憶されているプログラム40に従って、各部12、14、及び、16を制御する回路である。例えば、制御部30は、変調部14を制御して、特定のコマンドを搬送波に乗せて、アンテナ部12に送信させる。また、制御部30は、復調部16から取得したデジタル信号から情報を取得し、当該情報をメモリ34に記憶する。
【0018】
制御部30は、メモリ34に備える。メモリ34は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含む。メモリ34は、設定値マップ50を記憶する。設定値マップ50は、各無線タグに割り当てるべきバックスキャッタ周波数を決定するために利用される。設定値マップ50の詳細は後述する。
【0019】
(無線タグ100及び200の構成;
図1)
無線タグ100は、アンテナ部112と、変調部114と、復調部116と、制御部130と、を備える。アンテナ部112は、タグ通信装置10からの搬送波を受信し、当該搬送波の反射波を送信するアンテナを含む。ここで、反射波は、バックスキャッタ周波数を有する。バックスキャッタ周波数は、搬送波の周波数、いわゆる、キャリア周波数から所定の周波数だけずれた周波数である。バックスキャッタ周波数は、いわゆる、サブキャリア周波数である。バックスキャッタ周波数は、例えば、搬送波の周波数の前後200kHzの範囲内である。アンテナ部112の構成は、例えば、既知の構成でよく、本明細書では、詳細な説明は省略する。
【0020】
復調部116は、アンテナ部112が受信した搬送波を復調して、制御部130に供給する。変調部114は、アンテナ部112が受信した搬送波の反射波を変調してアンテナ部112に供給する。変調部114及び復調部116の構成は、例えば、既知の構成でよく、本明細書では、詳細な説明は省略する。
【0021】
制御部130は、各部112、114、及び、116を制御する回路である。例えば、制御部130は、変調部114を制御して、メモリ134に記憶されている情報を反射波に乗せて、アンテナ部112に送信させる。
【0022】
制御部130は、バックスキャッタ周波数を有する反射波を生成するための発振回路を備える。バックスキャッタ周波数は、発振回路の周波数に基づいて決定される。発振回路は、例えば、リングオシレータであり、水晶等の振動子を含まない回路である。振動子を利用しないことにより、発振回路が省電力で動作する。
【0023】
制御部130は、メモリ134を備える。メモリ34は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含む。メモリ134は、タグID「t01」と、周波数設定値140と、を記憶する。タグID「t01」は、無線タグ100を識別するIDである。周波数設定値140は、バックスキャッタ周波数を調整するための設定値である。周波数設定値140を変えることにより、バックスキャッタ周波数を調整することができる。
【0024】
制御部130には、センサ160が接続されている。センサ160は、例えば、振動を測定するセンサである。センサ160によって測定された測定値は、メモリ134に記憶される。
【0025】
無線タグ100の各部112、114、116、及び、130は、搬送波の電力で動作する。無線タグ100は、いわゆる、パッシブ型のタグである。無線タグ200も、無線タグ100と同様の構成を有し、無線タグ200は、無線タグ200を識別するタグID「t02」を記憶する。
【0026】
(タグ通信装置10と無線タグ100の通信)
図2を参照して、タグ通信装置10と無線タグ100の通信について説明する。タグ通信装置10は、各無線タグとの通信を開始する指示をユーザから受けると、搬送波の送信を開始する。タグ通信装置10は、各無線タグとの通信を終了する指示をユーザから受けるまで、搬送波を連続的に送信する。ここで、タグ通信装置10は、各無線タグにコマンドを送信する場合には、変調波を各無線タグに送信する。一方、タグ通信装置10は、各無線タグから情報を受信する場合には、無変調波を各無線タグに送信する。
【0027】
T2では、タグ通信装置10は、インベントリのコマンドを無線タグ100に送信する。インベントリのコマンドは、タグIDを取得するためのコマンドである。実際には、インベントリのコマンドは、複数個のコマンドを含み、タグ通信装置10は、複数個のコマンドを順次に送信する。複数個のコマンドは、例えば、ACKを含む。
【0028】
続くT4では、タグ通信装置10は、無変調波を無線タグ100に送信する。無線タグ100は、タグ通信装置10からの無変調波の反射波に、T2のインベントリの応答としてタグID「t01」を乗せる。これにより、タグ通信装置10は、無線タグ100からタグID「t01」を受信する。
【0029】
T6では、タグ通信装置10は、周波数設定値140に特定の値を書き込むための書き込みコマンドを無線タグ100に送信する。書き込みコマンドは、特定の値と、T4で取得したタグID「t01」と、を含む。特定の値は、後述する
図3の処理によって決定される。周波数設定値140に特定の値を書き込むことにより、無線タグ100には、特定の値に対応する特定のバックスキャッタ周波数が割り当てられる。また、書き込みコマンドがタグID「t01」を含むことにより、書き込みコマンドを処理する無線タグとして無線タグ100が指定される。別言すれば、タグID「t01」を含む書き込みコマンドが、無線タグ100以外の無線タグで受信されても、無線タグ100以外の無線タグは、当該書き込みコマンドを無視する。
【0030】
続くT8では、タグ通信装置10は、無変調波を無線タグ100に送信する。無線タグ100は、タグ通信装置10からの無変調波の反射波に、T6の書き込みコマンドに対する応答を載せる。これにより、タグ通信装置10は、周波数設定値140への特定の値の書き込みが完了したことを知る。
【0031】
T10では、タグ通信装置10は、ストリーミングの開始のコマンドを無線タグ100に送信する。ストリーミングは、無変調波を繰り返し送信して、各無線タグからセンサ160の測定値を繰り返し受信する処理である。T12A~T12Cは、ストリーミングを表す。タグ通信装置10は、ストリーミングによって、各無線タグからセンサ160の測定値を繰り返し受信する。これにより、センサ160の測定値を短い間隔で連続的にサンプリングすることができる。
【0032】
T2~T12Cの通信は、他の無線タグ200との間でも実行される。ここで、T6において、無線タグ200には、無線タグ100とは異なる他のバックスキャッタ周波数が割り当てられる。無線タグ100と無線タグ200のそれぞれに、互いに異なるバックスキャッタ周波数が割り当てられることにより、無線タグ100のストリーミングが、無線タグ200のストリーミングから区別される。この結果、無線タグ100と無線タグ200との間で同時的にストリーミングを実行することができる。別言すれば、無線タグ100の測定値を無線タグ200の測定値と同期することができる。
【0033】
(タグ通信装置10の処理;
図3)
図3を参照して、タグ通信装置10の制御部30がプログラム40に従って実行する処理について説明する。
図3の処理によって、
図2に示す通信が実現される。
【0034】
S10では、制御部30は、複数個の無線タグ(例えば100及び200)のそれぞれに割り当てるバックスキャッタ周波数である割り当て周波数を決定する。例えば、無線タグ100の割り当て周波数を920MHz+100kHzに、無線タグ200の割り当て周波数を920MHz+140kHzに決定する。
【0035】
S12では、制御部30は、インベントリのコマンドを各無線タグに送信する。S12の処理により、
図2のT2及びT4の通信が実行され、制御部30は、各無線タグからタグIDを取得する。
【0036】
S20では、制御部30は、S12のイベントリにおいて各無線タグから受信した反射波の受信電力を測定する。受信電力の単位は、例えば、dBmである。
【0037】
S22では、制御部30は、複数個の無線タグのそれぞれについて、設定値マップ50を利用して、当該無線タグに書き込むべき設定値を決定する。設定値マップ50の一例を
図3に示す。設定値マップ50は、実験に基づいて予め生成される。実験において、無線タグの反射波の受信電力が或る値を示す状態において、割り当て周波数と設定値の間に相関関係が存在することが判明した。例えば、受信電力P1~P4のそれぞれについて、
図3に示す正の相関関係が得られる。なお、相関関係は、
図3に示す線形関係に限らず、非線形関係であってもよい。
【0038】
例えば、S10で無線タグ100に割り当て周波数Ftが割り当てられ、かつ、無線タグ100においてS20で測定した受信電力がP4である場合に、制御部30は、受信電力P4の相関関係を利用して、無線タグ100に対する設定値X1を決定する。また、例えば、S10で無線タグ100に割り当て周波数Ftが割り当てられ、かつ、無線タグ100においてS20で測定した受信電力がP3である場合に、制御部30は、受信電力P3の相関関係を利用して、無線タグ100に対する設定値X2を決定する。本実施例では、無線タグ100に対応する相関関係は、無線タグ200に対応する相関関係と同じである。複数個の無線タグ100及び200の全てについて、同じ設定値マップ50が利用される。
【0039】
S24では、制御部30は、複数個の無線タグのそれぞれに、書き込みコマンドを送信する。書き込みコマンドは、送信先の無線タグのタグIDと、S22で決定された設定値と、を含む。S24の処理により、
図2のT6及びT8の通信が実行され、制御部30は、各無線タグに設定値を書き込む。なお、S24の処理は、全ての無線タグについて、当該無線タグの反射波の周波数とS10で決定した割り当て周波数の誤差が許容範囲内となるまで、繰り返し実行される。
【0040】
S26では、制御部30は、複数個の無線タグのそれぞれについて、当該無線タグから受信する反射波の実際の周波数を測定する。例えば、制御部30は、各無線タグに送信先を指定した変調波を送信して、当該変調波の反射波の周波数を測定する。
【0041】
S28では、制御部30は、S26で測定した周波数とS10で決定した割り当て周波数との誤差が許容範囲内であるのか否かを判断する。制御部30は、複数個の無線タグの全てについて、当該誤差が許容範囲内であると判断する場合(S28でYES)に、S32に進む。S32では、制御部30は、ストリーミングの開始のコマンドを各無線タグに送信する。これにより、ストリーミングが開始されて、各無線タグからセンサ160の測定値を繰り返し受信する。S32の処理により、
図2のT10~T12Cの通信が実行される。S32の処理が終了すると、制御部30は、
図3の処理を終了する。
【0042】
また、制御部30は、複数個の無線タグの少なくとも一つについて、誤差が許容範囲外であると判断する場合(S28でNO)に、S30に進む。S30では、制御部30は、S24の処理を実行した回数(以下、「書き込み回数」と記載)が所定回数に到達したのか否かを判断する。制御部30は、書き込み回数が所定回数に到達したと判断する場合(S30でNO)に、S32の処理をスキップして、
図3の処理を終了する。この場合、例えば、制御部30は、ユーザにエラーを通知する。
【0043】
また、制御部30は、書き込み回数が所定回数に到達していないと判断する場合(S30でYES)に、S20に戻る。これにより、設定値の書き込みが再び実行される。なお、設定値の再度の書き込みは、全ての無線タグに対して実行されてもよいし、誤差が許容範囲外であると判断された無線タグのみに対して実行されてもよい。
【0044】
(本実施例の効果)
発振回路の設定値、即ち、周波数設定値140を変えることにより、発振回路が所望の周波数で動作する。しかし、発振回路の設定値を予め決定されている設計値に設定しても、発振回路が実際に動作する周波数が、設計値に対応する周波数からずれる場合がある。これは、例えば、無線タグが置かれる環境(例えば温度等)が、発振回路の特性に影響を及ぼすからである。この場合、実際のバックスキャッタ周波数が、割り当て周波数からずれる。
【0045】
例えば、発振回路の設定値の調整を繰り返し試行して、実際のバックスキャッタ周波数を割り当て周波数に近づけるフィードバック手法が想定される。しかし、この方法では、設定値の調整時間が比較的に長くなる。
【0046】
これに対し、本実施例の構成によれば、タグ通信装置10は、測定された反射波の受信電力に対応する設定値マップ50を利用して、割り当て周波数に対応する設定値を決定することができる(S22)。設定値マップ50を利用することにより、バックスキャッタ周波数の割り当てを迅速に実行することができる。
【0047】
また、本実施例では、設定値マップ50は、タグ通信装置10のメモリ34に記憶されている。これにより、自身のメモリ34から設定値マップ50を迅速に呼び出すことができる。
【0048】
(対応関係)
無線タグ100及び200が、「複数個の無線タグ」の一例である。タグ通信装置10、メモリ34、設定値マップ50が、それぞれ、「タグ通信装置」、「メモリ」、「マップ」の一例である。設定値X1が、「設定値」の一例である。
図3のS20~S24を実行する制御部30、S32を実行する制御部30が、それぞれ、「割り当て部」、「信号受信部」の一例である。
【0049】
(第2実施例)
本実施例は、設定値マップ150が各無線タグに記憶されている点と、タグ通信装置10の処理が異なる点と、を除いて、第1実施例と同様である。
【0050】
(無線タグ100及び200の構成;
図1)
本実施例では、各無線タグは、互いに異なる相関関係を示す。
図1に示すように、無線タグ100のメモリ134には、無線タグ100に対応する設定値マップ150が記憶されている。なお、無線タグ200のメモリ134には、無線タグ200に対応する設定値マップ150が記憶されている。
【0051】
(設定値マップ150;
図4)
図4に示すように、受信電力P1について、複数個の無線タグ(例えば、タグID「t01」~「t04」に対応する4個の無線タグ)は、互いに異なる相関関係を示す。他の受信電力、例えば、受信電力P2についても、複数個の無線タグは、互いに異なる相関関係を示す。
【0052】
(タグ通信装置10の処理;
図5)
図5を参照して、タグ通信装置10の制御部30がプログラム40に従って実行する処理について説明する。S110、S112は、
図3のS10、S12と同様である。S14では、制御部30は、各無線タグから設定値マップ150を読み取るための読み取りコマンドを各無線タグに送信する。読み取りコマンドは、送信先を指定したコマンドであり、S112で取得したタグIDを含む。これにより、制御部30は、各無線タグから設定値マップ150を載せた反射波を受信し、各無線タグから設定値マップ150を読み取る。
【0053】
S120~S132は、S120においてS114の読み取りコマンドの反射波の受信電力が測定される点と、S122においてS114で読み取られた設定値マップ150が利用される点を除いて、
図3のS20~S32と同様である。
【0054】
本実施例の構成によれば、複数個の無線タグのそれぞれから設定値マップ150を読み出せばよく、複数個の無線タグのそれぞれで異なる設定値マップ150をタグ通信装置10に記憶させなくてもよい。例えば、無線タグを新たに追加したとしても、当該無線タグに対応する設定値マップ150をタグ通信装置10に新たに記憶させる必要がない。複数個の無線タグのそれぞれで相関関係が異なる状況に簡易に対処することができる。設定値マップ150が、「マップ」の一例である。
【0055】
(本明細書で開示する技術の用途)
本明細書で開示する技術は、例えば、構造物の複数個の箇所にセンサ160付の無線タグを張り付け、複数個の箇所の振動を同時的に測定することに利用可能である。構造物は、例えば、ビル、橋等の建築物、自動車等の製品である。また、測定する物理量は、振動に限らず、例えば、速度、電流等の他の物理量であってもよく、本技術は、構造物の振動測定以外の他の用途にも利用可能である。
【0056】
以上、本明細書で開示する技術の具体例を説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0057】
(変形例1) 複数個の無線タグのそれぞれについて相関関係が互いに同じである場合でも、設定値マップは、各無線タグに記憶されていてもよい。
【0058】
(変形例2) 「反射波の強さ」は、受信電力に限らず、例えば、Received Signal Strength Indicator(RSSI)であってもよい。
【0059】
(変形例3) 第1実施例における
図3のS20において、制御部30は、S12のインベントリとは異なるコマンドを別途に送信して、当該コマンドの反射波の受信電力を測定してもよい。また、第2実施例における
図3のS120において、制御部30は、S114の読み取りコマンドとは異なるコマンドを別途に送信して、当該コマンドの反射波の受信電力を測定してもよい。
【0060】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0061】
10 :タグ通信装置
12 :アンテナ部
14 :変調部
16 :復調部
30 :制御部
34 :メモリ
40 :プログラム
50 :設定値マップ
100 :無線タグ
112 :アンテナ部
114 :変調部
116 :復調部
130 :制御部
134 :メモリ
140 :周波数設定値
150 :設定値マップ
160 :センサ
200 :無線タグ
Ft :割り当て周波数
P1~P4 :受信電力
X1、X2 :設定値