(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005700
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シート収容装置およびそれを備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/14 20060101AFI20250109BHJP
B65H 1/18 20060101ALI20250109BHJP
B65H 1/26 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B65H1/14 322A
B65H1/18 310
B65H1/26 312C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105983
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩高
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC25
3F343FC29
3F343HA12
3F343HB04
3F343HC24
3F343HC26
3F343HD16
3F343LA04
3F343LA14
3F343LC17
3F343LC24
3F343LD10
3F343LD24
(57)【要約】
【課題】シートが載置されるリフト板が意図せず下降することを抑制する。
【解決手段】シート収容装置は、リフト板と、押し上げ部材と、第1歯車と、第1歯車と噛み合う第2歯車と、第2歯車と噛み合う第3歯車を少なくとも含み、モーターの動力を押し上げ部材に伝達する伝達機構と、回動規制部材と、を備え、第1歯車は、支持部を有し、回動規制部材は、支持部が嵌め込まれ、支持部の外周面に対して回転する方向に摺動可能な環状部と、環状部から径方向外方に突出して第2歯車に係合可能な突出部と、を有し、突出部は、第2歯車と環状部との間の隙間を通過不能な形状を有し、隙間よりも、モーターの動力で回転する場合の第2歯車の回転方向における下流側に位置する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが載置されるリフト板と、
前記リフト板の下方において回動可能に支持され、モーターの動力が伝達されてリフトアップ方向に回動することによって前記リフト板を押し上げる押し上げ部材と、
前記モーターの動力により一方向に回転する第1歯車と、
前記第1歯車と噛み合う第2歯車と、
前記第2歯車と噛み合う第3歯車を少なくとも含み、前記モーターの動力を前記押し上げ部材に伝達する伝達機構と、
前記押し上げ部材の前記リフトアップ方向とは逆方向への回動を規制する回動規制部材と、を備え、
前記第1歯車は、前記第1歯車の中心軸を筒軸とする円筒状の支持部を有し、
前記回動規制部材は、
前記支持部が嵌め込まれ、前記支持部の外周面に対して回転する方向に摺動可能な環状部と、
前記環状部から径方向外方に突出して前記第2歯車に係合可能な突出部と、を有し、
前記突出部は、前記第2歯車と前記環状部との間の軸線方向と直交する方向の隙間を通過不能な形状を有し、前記隙間よりも、前記モーターの動力で回転する場合の前記第2歯車の回転方向における下流側に位置する、シート収容装置。
【請求項2】
前記モーターから前記第1歯車への動力の伝達と遮断とを切り替える切替機構を備え、
前記モーターからの動力の伝達が遮断されたとき、前記第1歯車は、前記一方向とは逆の他方向に回転可能な状態となる、請求項1に記載のシート収容装置。
【請求項3】
前記モーターから前記第1歯車への動力の伝達が遮断されることにより、前記第2歯車が前記モーターの動力で回転する場合の回転方向とは逆方向に回転したとき、前記回動規制部材は、前記突出部を前記第2歯車に係合させた状態で回転し、前記突出部が前記隙間に至ると回転を停止する、請求項2に記載のシート収容装置。
【請求項4】
前記第1歯車が前記一方向に回転したとき、前記環状部は、前記支持部の外周面との間の摩擦抵抗と前記第2歯車から受ける力とにより、前記突出部が前記隙間から離れる方向に回転位置を変位させる、請求項1に記載のシート収容装置。
【請求項5】
前記第2歯車は、段付き歯車であり、
前記第1歯車と噛み合う入力側歯車と、
前記第3歯車と噛み合う出力側歯車と、を有し、
前記突出部は、前記出力側歯車と係合可能である、請求項1に記載のシート収容装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシート収容装置を備え、
前記シートを搬送して前記シートに画像を印刷する、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート収容装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート収容装置は、昇降可能なリフト板を備える。シートは、リフト板上に載置される。リフト板は、上昇することにより、リフト板上の最上層のシートの高さ位置を所定位置に保持する。このようなシート収容装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0003】
従来のシート収容装置は、所定位置のシートに対して上方から接触する給送ローラーを備える。給送ローラーがシートに接触した状態で回転することにより、シートが給送される。リフト板上の最上層のシートが所定位置に無ければ、給送ローラーは空転し、シートは給送されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、リフト板は、複数の歯車を含むギア列に連結される。リフト板は、モーターの動力がギア列を介して伝達されることによって上昇する。仮に、リフト板の重量およびリフト板上のシートの重量により、リフト板が意図せず下降すると、シート収容装置からシートが給送されないなどの給送不良が発生する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、シートが載置されるリフト板が意図せず下降することを抑制することが可能なシート収容装置およびそれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の局面によるシート収容装置は、シートが載置されるリフト板と、リフト板の下方において回動可能に支持され、モーターの動力が伝達されてリフトアップ方向に回動することによってリフト板を押し上げる押し上げ部材と、モーターの動力により一方向に回転する第1歯車と、第1歯車と噛み合う第2歯車と、第2歯車と噛み合う第3歯車を少なくとも含み、モーターの動力を押し上げ部材に伝達する伝達機構と、押し上げ部材のリフトアップ方向とは逆方向への回動を規制する回動規制部材と、を備える。第1歯車は、第1歯車の中心軸を筒軸とする円筒状の支持部を有する。回動規制部材は、支持部が嵌め込まれ、支持部の外周面に対して回転する方向に摺動可能な環状部と、環状部から径方向外方に突出して第2歯車に係合可能な突出部と、を有する。突出部は、第2歯車と環状部との間の軸線方向と直交する方向の隙間を通過不能な形状を有し、隙間よりも、モーターの動力で回転する場合の第2歯車の回転方向における下流側に位置する。
【0008】
本発明の第2の局面による画像形成装置は、上記シート収容装置を備え、シートを搬送してシートに画像を印刷する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成によると、シートが載置されるリフト板が意図せず下降することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態によるシート収容装置を備える画像形成装置の概略図である。
【
図2】実施形態によるシート収容装置の押し上げ部材に連結されるギア列を軸線方向から見た平面図である。
【
図3】実施形態によるシート収容装置の第1歯車およびその周辺の斜視図である。
【
図4】実施形態によるシート収容装置の第1歯車およびその周辺の断面斜視図である。
【
図5】実施形態によるシート収容装置の回動規制部材の斜視図である。
【
図6】実施形態によるシート収容装置の回動規制部材およびその周辺の斜視図である。
【
図7】実施形態によるシート収容装置の切替機構がモーターの動力を伝達しているときの状態を示す図である。
【
図8】実施形態によるシート収容装置の切替機構がモーターの動力伝達を遮断しているときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図8を参照し、本発明の一実施形態によるシート収容装置100およびそれを備える画像形成装置1000について説明する。画像形成装置1000は、床面に設置される。画像形成装置1000が設置される床面(平坦面)に対して垂直な方向が上下方向に相当する。
【0012】
<画像形成装置の構成>
本実施形態の画像形成装置1000は、プリンターである。画像形成装置1000は、印刷ジョブの実行が可能である。画像形成装置1000は、印刷ジョブを実行することにより、シートSに画像を印刷する。画像形成装置1000の印刷方式は、たとえば、電子写真方式である。なお、画像形成装置1000の印刷方式は、インクジェット方式であってもよい。
【0013】
画像形成装置1000は、シート収容装置100を備える。シート収容装置100は、印刷ジョブで使用されるシートSを収容する。たとえば、シートSは用紙(すなわち、紙製)である。画像形成装置1000は、シート収容装置100に収容されたシートSを搬送路に沿って搬送し、搬送中のシートSに画像を印刷する。
図1では、シートSの搬送路を破線矢印で模式的に示す。当該矢印で示す方向がシート搬送方向となる。
【0014】
以下、シート搬送方向と直交し、かつ、上下方向と直交する方向を幅方向と称する場合がある。
図1では、紙面に対して垂直な方向が幅方向である。たとえば、
図1は、画像形成装置1000を正面から見た図に相当する。すなわち、幅方向は前後方向でもある。
【0015】
画像形成装置1000は、給送ローラー1001を備える。給送ローラー1001は、幅方向に延びる軸線回りに回転可能に支持される。給送ローラー1001は、シート収容装置100に収容されたシートSを搬送路に給送する。給送ローラー1001は、シート収容装置100に収容されたシートSに上方から接触し、回転する。これにより、シート収容装置100から搬送路にシートSが給送される。
【0016】
画像形成装置1000は、レジストローラー対1002を備える。レジストローラー対1002は、幅方向に延びる軸線回りに回転可能に支持される。レジストローラー対1002は、互いに圧接する一対のローラーを含む。レジストローラー対1002は、給送ローラー1001から送られてくるシートSをニップし、回転する。これにより、レジストローラー対1002は、シートSを搬送する。レジストローラー対1002のうち、一方は、モーターMから動力が伝達されて回転する駆動ローラーであり、他方は、一方のレジストローラーに従動して回転する従動ローラーである。
【0017】
画像形成装置1000は、画像形成部1003を備える。画像形成部1003は、感光体ドラム1003aおよび転写ローラー1003bを含む。感光体ドラム1003aおよび転写ローラー1003bは、それぞれ、幅方向に延びる軸線回りに回転可能に支持される。感光体ドラム1003aおよび転写ローラー1003bは、互いに圧接する。感光体ドラム1003aおよび転写ローラー1003bは、レジストローラー対1002から送られてくるシートSをニップし、回転する。これにより、画像形成部1003は、シートSを搬送する。
【0018】
画像形成部1003は、図示しないが、帯電装置、露光装置および現像装置をさらに含む。帯電装置は、感光体ドラム1003aの周面を帯電させる。露光装置は、感光体ドラム1003aの周面上に静電潜像を形成する。現像装置は、感光体ドラム1003aの周面上の静電潜像をトナー像に現像する。感光体ドラム1003aは、転写ローラー1003bとの間にシートSをニップし、転写ローラー1003bと共に回転することにより、シートSにトナー像を転写する。
【0019】
画像形成装置1000は、定着ローラー対1004を備える。定着ローラー対1004は、幅方向に延びる軸線回りに回転可能に支持される。定着ローラー対1004は、加熱ローラーおよび加圧ローラーを含む。加熱ローラーは、ヒーターを内蔵する。加圧ローラーは、加熱ローラーに圧接する、定着ローラー対1004は、画像形成部1003から送られてくるシートSをニップし、回転する。すなわち、定着ローラー対1004は、シートSに対する加熱および加圧を行う。これにより、定着ローラー対1004は、シートSに転写されたトナー像をシートSに定着させる。その後、排出トレイETにシートSが排出される。
【0020】
<シート収容装置の構成>
シート収容装置100は、シートカセットCAを備える。シートカセットCAには、シートSが収容される。シートカセットCAは、画像形成装置1000の装置本体に対して着脱可能である。印刷ジョブの実行によってシートカセットCAからシートSが無くなったとき、シートカセットCAが装置本体から引き出され、シートカセットCAへのシートSの収容後、シートカセットCAが装置本体に戻される。
【0021】
シート収容装置100は、リフト板101を備える。リフト板101は、シートカセットCAに配置される。シートカセットCAにシートSを収容することにより、リフト板101上にシートSが載置された状態となる。リフト板101は、幅方向に延びる軸線回りに回動可能である。リフト板101は、シート給送方向上流側の端部を支点とし、シート給送方向下流側の端部を上下に振るように回動する。
図1では、図面の左側から右側に向かう方向がシート給送方向となる。
【0022】
印刷ジョブの実行中、リフト板101は、シート給送方向上流側の端部が上昇する方向への回動と回動停止とを繰り返す。これにより、リフト板101は、リフト板101上の最上層のシートSに対する給送ローラー1001の接触を維持する。リフト板101上のシートSが減少しても、リフト板101が上昇することにより、シートカセットCAから搬送路へのシートSの給送が可能な状態で維持される。
【0023】
シート収容装置100は、押し上げ部材102を備える。押し上げ部材102は、シートカセットCAに配置される。押し上げ部材102は、リフト板101の下方において、幅方向に延びる軸線回りに回動可能に支持される。押し上げ部材102は、シート給送方向上流側の端部を支点とし、シート給送方向下流側の端部を上下に振るよう回動する。押し上げ部材102は、リフトアップ方向に回動することにより、リフト板101を押し上げる。なお、押し上げ部材102は、シート給送方向下流側の端部を支点とし、シート給送方向上流側の端部を上下に振るよう回動してもよい。押し上げ部材102の回動方向にかかわらず、押し上げ部材102でリフト板101を押し上げることができる。
【0024】
シート収容装置100は、レジストローラー対1002を回転させるモーターMの動力を受ける。押し上げ部材102は、モーターMの動力が伝達されてリフトアップ方向に回動する。ただし、これに限定されない。押し上げ部材102は、専用のリフトアップモーター(図示せず)の動力が伝達されてリフトアップ方向に回動してもよい。
【0025】
<押し上げ部材のリフトアップ方向への回動>
シート収容装置100は、モーターMの動力を押し上げ部材102の回動軸102aに伝達する歯車列を備える。以下、
図2~
図4を参照し、シート収容装置100の歯車列について説明する。なお、シート収容装置100の各歯車は、全て、幅方向に延びる軸線回りに回転可能である。すなわち、シート収容装置100の各歯車は、全て、幅方向を軸線方向とする。
【0026】
以下の説明では、シート収容装置100の各歯車の回転方向に関し、軸線方向の一方側から見た場合を基準とする。以下の説明では、シート収容装置100の各歯車の回転方向に関し、反時計回り方向を単に一方向と称し、時計回り方向を単に他方向と称する場合がある。
【0027】
シート収容装置100は、樹脂製の第1歯車1を備える。具体的には、シート収容装置100は、第1歯車1を一体的に有する樹脂製の円筒部材10を備える。円筒部材10(すなわち、第1歯車1)は、幅方向に延びるシャフト10Aの軸線回りに回転可能に支持される。円筒部材10は、段付きの円筒形状の部材である。円筒部材10は、小径部および小径部よりも外径が大きい大径部を有する。第1歯車1は、円筒部材10のうち小径部の外周面に設けられる。
【0028】
円筒部材10は、第1歯車1が設けられた小径部に対し、軸線方向(すなわち、筒軸方向)の一方側に大径部を有する。言い換えると、第1歯車1は、第1歯車1よりも外径が大きい円筒部(すなわち、大径部)を軸線方向の一方側に有する。詳細は後述するが、第1歯車1のうち軸線方向の一方側の円筒部は支持部11となる。
【0029】
第1歯車1は、モーターMの動力が伝達されて一方向に回転する。第1歯車1が一方向に回転することにより、押し上げ部材102がリフトアップ方向に回動する。
【0030】
シート収容装置100は、樹脂製の第2歯車2を備える。第2歯車2は、第1歯車1と噛み合う。たとえば、第2歯車2は、その回転軸を第1歯車1の回転軸(すなわち、シャフト10A)よりも下方に有する。モーターMの動力を受けた第1歯車1が一方向に回転することにより、第2歯車2は他方向に回転する。
【0031】
第2歯車2は、段付き歯車である。第2歯車2は、2段歯車である。第2歯車2は、第1歯車1と噛み合う部分を入力側歯車21として有する。第2歯車2は、後述する第3歯車3と噛み合う部分を出力側歯車22として有する。入力側歯車21から軸線方向の一方側に向かって円筒状のボス部が突出し、そのボス部の外周面に出力側歯車22が設けられる。すなわち、入力側歯車21の外径は、出力側歯車22の外径よりも大きい。
【0032】
シート収容装置100は、複数の歯車を含む伝達機構(符号省略)を備える。伝達機構は、モーターMの動力を押し上げ部材102の回動軸102aに伝達することにより、押し上げ部材102をリフトアップ方向に回動させる。伝達機構は、第2歯車2と噛み合う樹脂製の第3歯車3を少なくとも含む。第3歯車3は、出力側歯車22と噛み合う。第2歯車2が他方向に回転することにより、第3歯車3は一方向に回転する。
【0033】
伝達機構は、それぞれが樹脂製の第4歯車4および第5歯車5を含む。第4歯車4は、第3歯車3と噛み合う。第3歯車3が一方向に回転することにより、第4歯車4は他方向に回転する。第5歯車5は、第4歯車4と噛み合う。第4歯車4が他方向に回転することにより、第5歯車5は一方向に回転する。なお、伝達機構を構成する歯車の個数は特に限定されない。
【0034】
押し上げ部材102の回動軸102aは、図示しない樹脂製の歯車を介して、第5歯車5に連結される。これにより、モーターMの動力が押し上げ部材102の回動軸102aに伝達される。押し上げ部材102は、モーターMの動力が伝達されることにより、リフトアップ方向に回動し、リフト板101を押し上げる。
【0035】
また、シート収容装置100は、切替機構7を備える。切替機構7は、モーターMから第1歯車1への動力の伝達と遮断とを切り替える。モーターMから第1歯車1に動力が伝達されることにより、第1歯車1が一方向に回転する。モーターMから第1歯車1への動力の伝達が遮断された場合には、第1歯車1は一方向に回転しない。第1歯車1が一方向に回転しなければ、押し上げ部材102はリフトアップ方向に回動せず、リフト板101は上昇しない。
【0036】
切替機構7の構成は特に限定されない。モーターMから第1歯車1への動力の伝達と遮断との切り替えが可能であればよい。たとえば、切替機構7は、遊星歯車機構を含む。以下、切替機構7の構成について説明する。なお、以下に説明する切替機構7の構成は一例である。切替機構7として、電磁クラッチを含む機構を用いることもできる。
【0037】
切替機構7は、第1歯車1に連結される遊星歯車機構を有する。具体的には、切替機構7は、内歯車71を備える。内歯車71は、シャフト10Aの軸線回りに回転可能に支持される。内歯車71は、第1歯車1を有する円筒部材10のうち大径部の内周面に設けられる。言い換えると、円筒部材10は、内歯車71を一体的に有する。なお、内歯車71は円筒部材10と同一部材であるため、内歯車71は樹脂製である。
【0038】
切替機構7は、樹脂製の太陽歯車72を備える。太陽歯車72は、シャフト10Aの軸線回りに回転可能に支持される。太陽歯車72は、内歯車71の内側(すなわち、円筒部材10のうち大径部の内側)に配置される。
【0039】
切替機構7は、それぞれが樹脂製の複数の遊星歯車73を備える。複数の遊星歯車73は、内歯車71の内側(すなわち、円筒部材10のうち大径部の内側)において、太陽歯車72を囲むように配置される。複数の遊星歯車73は、太陽歯車72と噛み合うとともに、内歯車71と噛み合う。
【0040】
切替機構7は、樹脂製の遊星キャリア74を備える。遊星キャリア74は、シャフト10Aの軸線回りに回転可能に支持される。遊星キャリア74は、複数の遊星歯車73を回転可能に支持する。これにより、複数の遊星歯車73は、太陽歯車72の周りを自転しつつ公転可能となる。複数の遊星歯車73が太陽歯車72の周りを公転することにより、遊星キャリア74が回転する。
【0041】
遊星キャリア74は、動力入力歯車730を一体的に有する。動力入力歯車730は、シャフト10Aの軸線回りに回転可能である。動力入力歯車730は、円筒部材10(その大径部)に対して軸線方向の一方側に配置される。遊星キャリア74のうち、各遊星歯車73を支持する部分は円筒部材10の内側に配置されるが、動力入力歯車730を有する部分は円筒部材10の外側に配置される。なお、動力入力歯車730は遊星キャリア74と同一部材であるため、動力入力歯車730は樹脂製である。
【0042】
動力入力歯車730は、駆動歯車700(
図2参照)と噛み合う。駆動歯車700は、レジストローラー対1002のうち駆動ローラーの回転軸に取り付けられ、駆動ローラーと共に回転する歯車である。すなわち、駆動歯車700は、モーターMから押し上げ部材102の回動軸102aへの動力伝達方向において最上流側の歯車である。
【0043】
ここで、太陽歯車72は、シャフト10Aの軸線回りに回転可能な係合回転体720を一体的に有する。係合回転体720は、太陽歯車72と共に回転する。太陽歯車72は係合回転体720と一体であるため、係合回転体720が回転不能な状態では、太陽歯車72は回転しない。
【0044】
係合回転体720は、動力入力歯車730に対して軸線方向の一方側に配置される。係合回転体720は、円筒部材10のうち大径部の内側にまで延びるボス部を有する。太陽歯車72は、係合回転体720から延びるボス部の外周面に設けられる。これにより、太陽歯車72は、円筒部材10のうち大径部の内側に配置され、複数の遊星歯車73と噛み合う。なお、係合回転体720は太陽歯車72と同一部材であるため、係合回転体720は樹脂製である。
【0045】
係合回転体720は、その径方向外方に突出する突起721を外周面に複数有する。複数の突起721は、係合回転体720の回転方向に互いに間隔を隔てて配列される。言い換えると、係合回転体720は、凹凸を外周面に有する。さらに言い換えると、係合回転体720の外周面は、後述する爪部材75と係合可能である。
【0046】
動力入力歯車730の回転中、係合回転体720が回転不能になる(すなわち、太陽歯車72が回転不能になる)ことにより、第1歯車1が一方向に回転する。すなわち、第1歯車1は、モーターMの動力が伝達されて一方向に回転する。これにより、第2歯車2が他方向に回転するとともに、第3歯車3が一方向に回転し、押し上げ部材102がリフトアップ方向に回動する。その結果、リフト板101が上昇する。
【0047】
動力入力歯車730の回転中、係合回転体720が回転可能になる(すなわち、太陽歯車72が回転可能になる)ことにより、モーターMの動力が第1歯車1に伝達されない。すなわち、モーターMから第1歯車1への動力の伝達が遮断される。これにより、押し上げ部材102の回動軸102aには、押し上げ部材102をリフトアップ方向に回動させる動力が伝達されない。このとき、第1歯車1は、その回転がロックされず、一方向とは逆の他方向に回転可能な状態となる。
【0048】
この構成では、リフト板101を上昇させたいとき(すなわち、押し上げ部材102をリフトアップ方向に回動させたいとき)には、係合回転体720を回転不能状態とすればよい。リフト板101の上昇を停止したいとき(すなわち、押し上げ部材102のリフトアップ方向への回動を停止したいとき)には、係合回転体720を回転可能状態とすればよい。
【0049】
そこで、切替機構7は、爪部材75を備える。爪部材75は、係合回転体720(その外周面の凹凸)と係合可能な爪750を有する。爪部材75は、係合回転体720に接近する方向および係合回転体720から離間する方向に回動可能に支持される。
【0050】
爪部材75は、係合回転体720に接近する方向に回動することにより、係合回転体720と係合する。複数の突起721のいずれかに爪750が係合することにより、係合回転体720に対して爪部材75が係合した状態となる。爪部材75が係合回転体720から離間する方向に回動することにより、係合回転体720と爪部材75との係合が解除される。
【0051】
また、切替機構7は、ソレノイド76を備える。ソレノイド76は、可動体761および引張コイルばね762を含む。可動体761は、爪部材75に連結される。可動体761の位置が変位することにより、爪部材75が係合回転体720に接近したり、爪部材75が係合回転体720から離間したりする。引張コイルばね762は、その一端が可動体761に連結される。
【0052】
ソレノイド76は、磁力を発生することにより、引張コイルばね762の引張力に抗して可動体761の位置を変位させ、爪部材75を係合回転体720に接近する方向に移動させる。すなわち、ソレノイド76は、磁力を発生することにより、係合回転体720に対して爪部材75を係合させる。
【0053】
一方で、爪部材75を係合回転体720から離間する方向に移動させるとき、ソレノイド76は、磁力の発生を停止する。これにより、引張コイルばね762の引張力により、爪部材75が係合回転体720から離間する方向に移動する。すなわち、係合回転体720と爪部材75との係合が解除される。
【0054】
係合回転体720に対して爪部材75が係合することにより、係合回転体720が回転不能となり、太陽歯車72が回転不能となる。これにより、第1歯車1は、一方向(すなわち、押し上げ部材102をリフトアップ方向に回動させる方向)に回転する。
【0055】
一方で、係合回転体720と爪部材75との係合が解除されることにより、係合回転体720が回転可能となり、太陽歯車72が回転可能となる。これにより、第1歯車1は、一方向には回転しない。言い換えると、モーターMの動力が第1歯車1に伝達されない。このとき、第1歯車1は、一方向とは逆の他方向に回転可能な状態となる。
【0056】
<押し上げ部材のリフトアップ方向とは逆方向への回動規制>
シート収容装置100は、
図5および
図6に示すような回動規制部材8を備える。回動規制部材8は、樹脂製である。回動規制部材8は、押し上げ部材102のリフトアップ方向とは逆方向への回動を規制する。回動規制部材8は、円筒部材10に支持される。回動規制部材8は、モーターMから第1歯車1への動力伝達遮断時における第2歯車2の回転を規制することにより、押し上げ部材102のリフトアップ方向とは逆方向への回動を規制する。
【0057】
回動規制部材8は、環状部81を有する。環状部81は、軸線方向(すなわち、幅方向)から見て、環状である。環状部81は、軸線方向から見て、その内縁が円形状である。環状部81の軸線方向から見た外形形状は特に限定されない。たとえば、環状部81は、軸線方向から見て、円環状である。
【0058】
円筒部材10の大径部が環状部81に嵌め込まれることにより、回動規制部材8が円筒部材10に支持された状態となる。この構成では、円筒部材10の大径部が回動規制部材8を支持する支持部となる。以下の説明では、円筒部材10の大径部に符号11を付して支持部11(
図3および
図4参照)と称する。
【0059】
なお、円筒部材10の大径部は、第1歯車1の一部である。すなわち、第1歯車1は、その中心軸を筒軸とする円筒状の支持部11を有する。第1歯車1は、軸線方向の一方側に支持部11を有する。
【0060】
また、回動規制部材8は、環状部81から径方向外方に突出する突出部82を有する。径方向外方とは、環状部81(すなわち、環状体)の内側から外側に向かう方向である。突出部82は、第2歯車2のうち出力側歯車22と係合可能な複数の突起を有する。第2歯車2は、その中心軸を筒軸とし、外周面に凹凸を有する円筒状の係合部を有する。出力側歯車22が「係合部」に相当する。
【0061】
回動規制部材8は、第1歯車1の軸線回りに回転可能である。具体的には、環状部81は、支持部11の外周面に対し、第1歯車1の軸線回りに摺動可能である。支持部11の外周面と環状部81の内周面との間には、グリースなどの潤滑剤が配置されてもよい。
【0062】
環状部81は、出力側歯車22(その先端)に対して軸線方向と直交する方向に間隔を隔てて配置される。すなわち、軸線方向から見て、出力側歯車22と環状部81と間には隙間Gがある。これにより、環状部81が回転するよう支持部11の外周面に対して摺動しても、環状部81は出力側歯車22と干渉しない。
【0063】
しかし、突出部82は、出力側歯車22と環状部81との間の軸線方向と直交する方向の隙間Gを通過不能な形状を有する。これにより、回動規制部材8は、環状部81が支持部11の外周面に対して摺動することにより第1歯車1の軸線回りに回転するが、突出部82が隙間Gに至ると回転を停止する。
【0064】
ここで、突出部82は、軸線方向から見て、出力側歯車22と環状部81との間の隙間Gよりも、モーターMの動力で回転した場合の出力側歯車22の回転方向における下流側に位置する。これにより、回動規制部材8は、押し上げ部材102のリフトアップ方向とは逆方向への回動を規制する機能を発揮する。
【0065】
以下、
図7および
図8を参照し、具体的に説明する。
図7および
図8では、第2~第5歯車2~5の回転方向を太線矢印で示す。なお、
図7および
図8には、第1歯車1は図示されない。
【0066】
モーターMの動力を押し上げ部材102の回動軸102aに伝達して押し上げ部材102をリフトアップ方向に回動させる場合には、
図7に示すように、係合回転体720に対して爪部材75が係合する。このため、係合回転体720は、回転を停止する。
【0067】
このとき、第1歯車1は、一方向(反時計回り方向)に回転する。第2歯車2は、他方向(時計回り方向)に回転する。第3~第5歯車3~5は、それぞれ、対応する矢印方向に回転する。これにより、モーターMの動力が押し上げ部材102の回動軸102aに伝達され、押し上げ部材102がリフトアップ方向に回動する。リフト板101は、上昇する。
【0068】
一方で、モーターMから押し上げ部材102の回動軸102aへの動力の伝達を遮断する場合には、
図8に示すように、係合回転体720と爪部材75との係合が解除される。このため、係合回転体720は、回転可能である。
【0069】
このとき、第1歯車1は、回転を停止する。第1歯車1が回転を停止したことにより、第2歯車2も回転を停止する。第3~第5歯車3~5もそれぞれ回転を停止する。係合回転体720と爪部材75との係合が解除されることにより、第1歯車1は、他方向に回転可能な状態となる。
【0070】
ここで、係合回転体720と爪部材75との係合が解除されたとき、押し上げ部材102は、リフト板101の重量およびリフト板101上のシートSの重量により、リフトアップ方向とは逆方向に回動しようとする。このとき、第2~第5歯車2~5はそれぞれ、
図8中の矢印方向に回転しようとする。第1歯車1は、他方向に回転可能な状態である。このため、第2歯車2が一方向(
図8中の矢印方向)に回転しようとすると、第1歯車1は他方向に回転しようとする。
【0071】
仮に、第2歯車2が一方向に回転すると、リフト板101が下降する。その結果、リフト板101上のシートSに給送ローラー1001が接触しなくなり、シート収容装置100から搬送路へのシートSの給送不良が発生する。
【0072】
そこで、本実施形態では、第1歯車1の支持部11に回動規制部材8が配置される。この構成では、第2歯車2が一方向に回転したとき(すなわち、第2歯車2がモーターMの動力で回転する場合の回転方向とは逆方向に回転したとき)、出力側歯車22と回動規制部材8の突出部82とが係合し、その状態で、回動規制部材8が円筒部材10の外周面に対して第1歯車1の軸線回りに回転する。以降、出力側歯車22と環状部81との間の隙間Gに突出部82が至るが、突出部82は隙間Gを通過できない。すなわち、回動規制部材8は、突出部82が隙間Gに至ることで回転を停止する。このとき、出力側歯車22と突出部82とが係合しているため、それ以上、第2歯車2は一方向に回転しない。第2歯車2が回転しなければ、第3~第5歯車3~5も回転しない。
【0073】
これにより、本実施形態では、押し上げ部材102がリフトアップ方向と逆方向に回動することを抑制できる。すなわち、シートSが載置されるリフト板101が意図せず下降することを抑制できる。その結果、シート収容装置100からのシートSの給送に異常が発生することを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態では、
図5に示す部材だけで回動規制部材8が構成される。これにより、構造の複雑化を抑制できる。たとえば、ウォームホイールをギア列に配置することにより、摩擦ロスを用いて第1歯車1にブレーキをかけることができる。しかし、ウォームホイールをギア列に配置すると、軸方向を変えるため、部品点数が多くなり、構造が複雑化してコストアップに繋がる。また、押し上げ部材2をリフトアップ方向に回動させるときの駆動損失が大きくなってしまう。一方で、回動規制部材8を用いることにより、これらの不都合を抑制できる。
【0075】
なお、本実施形態では、回動規制部材8は、環状部81に支持部11が嵌め込まれることによって支持される。ここで、環状部81は、支持部11の外周面に対して回転する方向に摺動可能である。この構成では、モーターMの動力により第1歯車1が一方向に回転したとき、環状部81は、支持部11の外周面との間の摩擦抵抗と第2歯車2から受ける力とにより、突出部82が隙間Gから離れる方向に回転位置を変位させる。環状部81が第2歯車2から受ける力とは、出力側歯車22が突出部82を回動させる力である。これにより、第1歯車1の一方向への回転が突出部82によって妨げられることはない。
【0076】
また、本実施形態では、第2歯車2のうち出力側歯車22が突出部82と係合する係合部として機能する。これにより、回動規制部材8と係合する係合部を別途設ける必要はない。なお、突出部82と係合する係合部の形状は特に限定されず、突出部82と係合可能であればよい。すなわち、係合部は歯車でなくてもよい。
【0077】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 第1歯車
2 第2歯車
3 第3歯車
7 切替機構
8 回動規制部材
11 支持部
21 入力側歯車
22 出力側歯車
81 環状部
82 突出部
100 シート収容装置
101 リフト板
102 押し上げ部材
1000 画像形成装置
G 隙間
M モーター
S シート