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特開2025-5701駆動伝達機構およびそれを備えた定着装置並びに画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005701
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】駆動伝達機構およびそれを備えた定着装置並びに画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20250109BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20250109BHJP
   F16H 31/00 20060101ALI20250109BHJP
   F16D 43/26 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G15/20 535
G03G21/16 185
F16H31/00 A
F16D43/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105986
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩高
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
3J062
【Fターム(参考)】
2H033AA13
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA26
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB37
2H033BE06
2H171FA04
2H171FA19
2H171GA04
2H171GA15
2H171KA12
2H171KA21
2H171LA08
2H171LA10
2H171LA13
2H171LA17
2H171LA20
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171QC22
2H171QC24
2H171QC36
2H171SA11
2H171SA14
2H171SA15
2H171SA19
2H171SA22
2H171SA26
2H171XA16
3J062AA35
3J062AB36
3J062BA12
(57)【要約】
【課題】バネ等のブレーキを用いることなくラチェット駆動部と被駆動部材との連結状態を維持可能な駆動伝達機構およびそれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】駆動伝達機構は、第1ラチェット機構と、第2ラチェット機構と、リンク部材と、を備える。第1ラチェット機構は、第1駆動入力ギアと、第1駆動出力ギアと、第1連結部材と、を有する。第2ラチェット機構は、第2駆動入力ギアと、第2駆動出力ギアと、第2連結部材と、を有する。リンク部材は、第1連結部材の第1駆動出力ギアに近づく方向へのスラスト移動によって第2連結部材を第2駆動出力ギアから離間する方向へ移動させ、第2連結部材の第2駆動出力ギアに近づく方向へのスラスト移動によって第1連結部材を第1駆動出力ギアから離間する方向へ移動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの回転駆動力を第1被駆動部材に伝達する第1ラチェット機構と、
前記駆動源からの回転駆動力を第2被駆動部材に伝達する第2ラチェット機構と、
を備える駆動伝達機構であって、
前記第1ラチェット機構は、
前記駆動源の回転駆動力が入力される第1駆動入力ギアと、
前記第1駆動入力ギアと同軸上に配置され、前記駆動源の回転駆動力を前記第1被駆動部材に出力する第1駆動出力ギアと、
前記第1駆動入力ギアと前記第1駆動出力ギアとの間にスラスト移動可能に配置され、前記第1駆動入力ギアと共に回転する第1連結部材と、
を有し、
前記第2ラチェット機構は、
前記駆動源の回転駆動力が入力される第2駆動入力ギアと、
前記第2駆動入力ギアと同軸上に配置され、前記駆動源の回転駆動力を前記第2被駆動部材に出力する第2駆動出力ギアと、
前記第2駆動入力ギアと前記第2駆動出力ギアとの間にスラスト移動可能に配置され、前記第2駆動入力ギアと共に回転する第2連結部材と、
を有し、
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、それぞれ前記第1駆動出力ギアまたは前記第2出力ギアとの対向面に形成される第1ラチェット歯を有し、
第1駆動出力ギアおよび前記第2駆動出力ギアは、それぞれ前記第1連結部材または前記第2連結部材との対向面に形成され、前記第1ラチェット歯と噛み合う第2ラチェット歯を有し、
前記駆動源が正方向に回転したとき、
前記第1ラチェット機構は、前記第1ラチェット歯と前記第2ラチェット歯の駆動伝達面同士が噛み合う方向に回転することで前記第1被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達状態となり、
前記第2ラチェット機構は、前記第1ラチェット歯と前記第2ラチェット歯の非駆動伝達面同士が噛み合う方向に回転することで前記第2被駆動部材に駆動力を伝達しない非駆動伝達状態となり、
前記駆動源が逆方向に回転したとき、
前記第1ラチェット機構は、前記非駆動伝達面が噛み合う方向に回転することで前記第1被駆動部材に駆動力を伝達しない非駆動伝達状態となり、
前記第2ラチェット機構は、前記駆動伝達面が噛み合う方向に回転することで前記第2被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達状態となり、
前記第1ラチェット機構と前記第2ラチェット機構の間には、前記第1ラチェット機構および前記第2ラチェット機構の前記駆動伝達状態と前記非駆動伝達状態との切り換えを補助するリンク部材が配置され、
前記リンク部材は、前記第1連結部材の前記第1駆動出力ギアから離間する方向へのスラスト移動によって前記第2連結部材を前記第2駆動出力ギアに近づく方向へ移動させ、前記第2連結部材の前記第2駆動出力ギアから離間する方向へのスラスト移動によって前記第1連結部材を前記第1駆動出力ギアに近づく方向へ移動させることを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
前記前記第1連結部材および前記第2連結部材は、前記外周面から環状に突出するフランジ部を有し、
前記リンク部材は、長手方向の両端部が前記フランジ部の下面に対向配置され、前記長手方向の中央部を揺動支点として上下方向に揺動可能に支持されており、
前記第1連結部材が前記第1駆動出力ギアから離間する方向へスラスト移動したとき、前記第1連結部材の前記フランジ部が前記リンク部材の一端部を押し下げることで、前記第2連結部材が前記第2駆動出力ギアに近づく方向へ押し上げられ、
前記第2連結部材が前記第2駆動出力ギアから離間する方向へスラスト移動したとき、前記第2連結部材の前記フランジ部が前記リンク部材の他端部を押し下げることで、前記第1連結部材が前記第1駆動出力ギアに近づく方向へ押し上げられることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、前記第1ラチェット歯と前記第2ラチェット歯の前記非駆動伝達面に作用する抗力のうち、垂直下向きに作用する分力によって前記第1駆動出力ギアまたは前記第2駆動出力ギアから離間する方向にスラスト移動することを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
前記第1駆動入力ギアおよび前記第2駆動入力ギアは、それぞれ前記第1連結部材または前記第2連結部材との対向面に、周方向に沿って延在し、上下方向に傾斜するスロープを有し、
前記第1連結部材および前記第2連結部材の下端部には、前記スロープと対向する脚部を有し、
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、前記脚部が前記スロープに当接した状態で前記第1駆動入力ギアおよび前記第2駆動入力ギアに対して回転することでスラスト方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項5】
前記スロープの最上部および最下部には、それぞれ垂直面からなる第1回転規制部および第2回転規制部が形成されており、
前記脚部には、前記第1回転規制部と対向する第1回転規制面と、前記第2回転規制部と対向する第2回転規制面と、が形成されており、
前記第1回転規制部と前記第1回転規制面とが接触して前記第1連結部材および前記第2連結部材が前記第1駆動入力ギアまたは前記第2駆動入力ギアと共に回転した状態で、前記第1ラチェット歯と前記第2ラチェット歯の前記駆動伝達面同士が噛み合い、
前記第2回転規制部と前記第2回転規制面とが接触して前記第1連結部材および前記第2連結部材が前記第1駆動入力ギアまたは前記第2駆動入力ギアと共に回転した状態で、前記第1ラチェット歯と前記第2ラチェット歯の前記非駆動伝達面同士が噛み合うことを特徴とする請求項4に記載の駆動伝達機構。
【請求項6】
前記第1駆動入力ギアと前記第2駆動入力ギアとが噛み合っており、
前記第1駆動入力ギアには前記駆動源の回転駆動力が直接入力され、前記第2駆動入力ギアには前記第1駆動入力ギアを介して前記駆動源の回転駆動力が入力されることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項7】
被加熱回転体と、
前記被加熱回転体に所定の圧力で圧接されて定着ニップ部を形成し、前記被加熱回転体に回転駆動力を伝達しながら回転する加圧部材と、
前記被加熱回転体を加熱する加熱機構と、
前記被加熱回転体に対する前記加圧部材の圧接力を調整する加圧機構と、
前記加圧部材に回転駆動力を入力する前記第1被駆動部材としての定着駆動ギアと、
前記加圧機構を駆動する前記第2被駆動部材としての偏芯カムと、
前記定着駆動ギアへの回転駆動力の伝達と、前記偏芯カムへの回転駆動力の伝達とを切り換える請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の駆動伝達機構と、
を備えた定着装置。
【請求項8】
記録媒体にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって前記トナー像が形成された前記記録媒体を加熱および加圧して前記記録媒体に前記トナー像を定着させる請求項7に記載の定着装置と、
を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達機構、およびそれを備えた定着装置並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター等の画像形成装置の駆動装置では、モーターの正回転と逆回転で異なるユニットに駆動が伝達される構成とすることで、クラッチ等のスイッチ機構を削減する手法がしばしば用いられる。これらの駆動装置で使われる動力伝達先の切替手段として、駆動ギアおよび被駆動ギアに螺旋スロープを設けてスラスト移動させるラチェット機構や、動力伝達の歯面力によって歯車自体の位置を移動させる遊星歯車機構が代表的である。
【0003】
例えば特許文献1には、可逆転可能なモーターと、モーターの正回転の駆動力をローラーへ伝達するための駆動伝達手段と、ローラー間に圧を与えるため、モーターの逆回転の駆動力を受けてローラーを変位するローラー変位手段と、を備えた定着装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、2つの現像ユニットと、2つのトナーコンテナと、トナー補給用のモーターと、2つのラチェット機構部と、を備えたトナー補給機構が開示されている。トナー補給用のモーターは、回転軸にピニオンが取り付けられている。ラチェット機構部の一方は、ピニオンの正方向の回転駆動力のみを一方のトナーコンテナの搬送スクリューに伝達する。ラチェット機構部の他方は、ピニオンの逆方向の回転駆動力のみを他方のトナーコンテナの搬送スクリューに伝達する。この構成によれば、比較的少ない部品点数で、1個のトナー補給用のモーターで2個の現像ユニットに個別にトナーを補給するトナー補給機構を構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-34575号公報
【特許文献2】特開2015-125209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の構成では、ラチェット機構部が被駆動部材であるコンテナスクリューの上方に配置されているため、ラチェット機構部の自重によってコンテナスクリューのシャフトに固定されたクラウンギアとの噛み合い状態が維持される。しかしながら、ラチェット機構部が被駆動部材の下方に配置される場合は、ラチェット機構部の自重によって噛み合い状態を維持することができず、バネ等の付勢部材によるブレーキを用いて噛み合い状態を維持する必要があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、バネ等の付勢部材によるブレーキを用いることなくラチェット駆動部と被駆動部材との連結状態を維持可能な駆動伝達機構およびそれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、第1ラチェット機構と、第2ラチェット機構と、を備える駆動伝達機構である。第1ラチェット機構は、駆動源からの回転駆動力を第1被駆動部材に伝達する。第2ラチェット機構は、駆動源からの回転駆動力を第2被駆動部材に伝達する。第1ラチェット機構は、第1駆動入力ギアと、第1駆動出力ギアと、第1連結部材と、を有する。第1駆動入力ギアは、駆動源の回転駆動力が入力される。第1駆動出力ギアは、第1駆動入力ギアと同軸上に配置され、駆動源の回転駆動力を第1被駆動部材に出力する。第1連結部材は、第1駆動入力ギアと第1駆動出力ギアとの間にスラスト移動可能に配置され、第1駆動入力ギアと共に回転する。第2ラチェット機構は、第2駆動入力ギアと、第2駆動出力ギアと、第2連結部材と、を有する。第2駆動入力ギアは、駆動源の回転駆動力が入力される。第2駆動出力ギアは、第2駆動入力ギアと同軸上に配置され、駆動源の回転駆動力を第2被駆動部材に出力する。第2連結部材は、第2駆動入力ギアと第2駆動出力ギアとの間にスラスト移動可能に配置され、第2駆動入力ギアと共に回転する。第1連結部材および第2連結部材は、それぞれ第1駆動出力ギアまたは第2出力ギアとの対向面に形成される第1ラチェット歯を有する。第1駆動出力ギアおよび第2駆動出力ギアは、それぞれ第1連結部材または第2連結部材との対向面に形成され、第1ラチェット歯と噛み合う第2ラチェット歯を有する。駆動源が正方向に回転したとき、第1ラチェット機構は、第1ラチェット歯と第2ラチェット歯の駆動伝達面同士が噛み合う方向に回転することで第1被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達状態となり、第2ラチェット機構は、第1ラチェット歯と第2ラチェット歯の非駆動伝達面同士が噛み合う方向に回転することで第2被駆動部材に駆動力を伝達しない非駆動伝達状態となる。駆動源が逆方向に回転したとき、第1ラチェット機構は、非駆動伝達面が噛み合う方向に回転することで第1被駆動部材に駆動力を伝達しない非駆動伝達状態となり、第2ラチェット機構は、駆動伝達面が噛み合う方向に回転することで第2被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達状態となる。第1ラチェット機構と第2ラチェット機構の間には、第1ラチェット機構および第2ラチェット機構の駆動伝達状態と非駆動伝達状態との切り換えを補助するリンク部材が配置される。リンク部材は、第1連結部材の第1駆動出力ギアに近づく方向へのスラスト移動によって第2連結部材を第2駆動出力ギアから離間する方向へ移動させ、第2連結部材の第2駆動出力ギアに近づく方向へのスラスト移動によって第1連結部材を第1駆動出力ギアから離間する方向へ移動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の構成によれば、第1ラチェット機構と第2ラチェット機構との駆動力伝達の切り換えを補助するリンク部材を設けることで、第1連結部材および第2連結部材のスラスト移動を確実に行うことができる。従って、第1連結部材または第2連結部材を第1ラチェット歯と第2ラチェット歯とが噛み合う位置まで押し上げることができ、第1ラチェット機構および第2ラチェット機構を確実に駆動連結状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置100の内部構成を示す概略図
図2図1における定着装置13付近の側面断面図
図3】定着装置13の加圧機構21周辺の構成を示す側面図
図4】定着装置13に駆動力を伝達する駆動伝達機構30を模式的に示す図であって、第1ラチェット機構31の駆動伝達状態を示す図
図5】駆動伝達機構30を構成する第1ラチェット機構31の斜視図
図6】第1ラチェット機構31を構成する第1駆動入力ギア40aの斜視図
図7】第1ラチェット機構31を構成する第1連結部材50aの斜視図
図8】第1ラチェット機構31を構成する第1駆動出力ギア60aの斜視図
図9】定着装置13に駆動力を伝達する駆動伝達機構30を模式的に示す図であって、第2ラチェット機構32の駆動伝達状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.画像形成装置の構成]
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る定着装置13が搭載される画像形成装置100の内部構造を示す概略断面図である。画像形成装置100(ここではカラープリンター)本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの画像を順次形成する。
【0012】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム(像担持体)1a、1b、1cおよび1dが配設されており、さらに図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a~1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳される。その後、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー9によって記録媒体の一例としての用紙S上に二次転写される。さらに、トナー像が二次転写された用紙Sは、定着装置13においてトナー像が定着された後、画像形成装置100本体より排出される。メインモーター(図示せず)により感光体ドラム1a~1dを図1において時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a~1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0013】
トナー像が二次転写される用紙Sは、画像形成装置100の本体下部に配置された用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
【0014】
次に、画像形成部Pa~Pdについて説明する。回転可能に配設された感光体ドラム1a~1dの周囲および下方には、感光体ドラム1a~1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2cおよび2dと、各感光体ドラム1a~1dに画像情報を露光する露光装置5と、感光体ドラム1a~1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3cおよび3dと、感光体ドラム1a~1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング装置7a、7b、7cおよび7dが設けられている。
【0015】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面を一様に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a~3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0016】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a~1d上のシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等がクリーニング装置7a~7dにより除去される。
【0017】
中間転写ベルト8は、上流側の従動ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されており、ベルト駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回り方向に回転を開始すると、用紙Sがレジストローラー対12bから所定のタイミングで駆動ローラー11とこれに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のフルカラー画像が用紙S上に二次転写される。トナー像が二次転写された用紙Sは定着装置13へと搬送される。
【0018】
定着装置13に搬送された用紙Sは、定着ローラー131および加圧ローラー132(図2参照)により加熱および加圧されてトナー像が用紙Sの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Sは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられ、そのまま(或いは、両面搬送路18に送られて両面に画像が形成された後に)、排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0019】
[2.定着装置の構成]
図2は、図1における定着装置13周辺の側面断面図である。定着装置13は、電磁誘導加熱方式の熱源を用いた定着方式であり、加熱部材である定着ローラー131と、加圧回転体である加圧ローラー132と、定着ローラー131の外周に対向して配設される誘導加熱部133と、定着ローラー131の表面の温度を検知するサーミスター等からなる温度センサー134とを備える。誘導加熱部133と温度センサー134は画像形成装置100本体に固定されており、定着ローラー131と加圧ローラー132は定着装置13のハウジングに回転可能に保持されている。
【0020】
定着ローラー131は、円筒型ステンレスからなる基材と、加圧ローラー132に圧接する定着ニップ部Nに対し弾性を付与するためのシリコンゴムスポンジからなる弾性層と、弾性層に離型性を付与するフッ素系樹脂からなる離型層(いずれも図示せず)と、を備え、基材と弾性層との間に、基材側から順に断熱層と誘導発熱層(いずれも図示せず)を備える。
【0021】
加圧ローラー132は、アルミニウム製のシャフト132aと、定着ニップ部Nへ弾性を付与するために基材132a上に形成されるシリコンゴムからなる弾性層132bと、定着ニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させるために弾性層132bの表面を覆うフッ素樹脂チューブからなる離型層(図示せず)とを備える。
【0022】
また、加圧ローラー132は、定着駆動モーター20(図4参照)によって回転駆動され、さらに加圧機構21(図3参照)によって定着ローラー131の径方向中心に向かって加圧される。これにより、加圧ローラー132が定着ローラー131に圧接し、加圧ローラー132が回転すると、定着ローラー131が定着ニップ部Nにおいて同方向に従動回転する。
【0023】
温度センサー134は、定着ローラー131の軸方向(幅方向)の中央部の通紙領域と、A4縦サイズ等の小サイズの用紙が通紙された時に非通紙領域となる軸方向の両端部とに対向するように配置され、夫々の領域の温度を検知する。温度センサー134にて検知された温度に基づいて、誘導加熱部133に供給される電力が制御され、定着ローラー131の表面が所定の温度に保持される。
【0024】
誘導加熱部133は、励磁コイル133aとホビン133bとコア133cとを備え、電磁誘導により定着ローラー131を加熱するものであり、定着ローラー131の軸方向に延びて、定着ローラー131の外周の一部を囲うように対向して配設される。
【0025】
銅線からなる励磁コイル133aは、ホビン133bに巻回され、コア133cの中央部の周りを軸方向に周回するように、定着ローラー131の外周の一部にわたって渦巻状に配設されている。励磁コイル133aは、図示しない高圧電源に接続されており、電源から供給される高周波電流により磁束を発生させる。誘導加熱部133から発せられる磁束は、図2の紙面に平行な方向に発せられ、定着ローラー131の誘導発熱層を貫通する。誘導発熱層の磁束の周りには渦電流が生じ、渦電流が流れると、誘導発熱層内の電気抵抗によってジュール熱が発生して誘導発熱層が発熱する。
【0026】
定着ローラー131が誘導加熱部133によって所定の温度となるように、温度センサー134の検知する温度に基づいて高圧電源の電力を制御している。そして、定着ローラー131が加熱され所定の温度に昇温すると、定着ニップ部Nで挟持された用紙Sが加熱されるとともに、加圧ローラー132にて加圧されることにより、用紙S上の未定着トナー像が溶融定着される。
【0027】
トナー像が定着された用紙Sは、定着搬送ローラー対135を介して排出ローラー対15から排出トレイ17(いずれも図1参照)に排出される。定着搬送ローラー対135の線速は、搬送される用紙Sに撓みが発生しないように定着ローラー131および加圧ローラー132の線速よりも僅かに速く設定されている。
【0028】
図3は、定着装置13の加圧機構21周辺の構成を示す側面図である。加圧ローラー132のシャフト132aには定着駆動ギア136が固定されている。定着駆動ギア136には駆動伝達機構30(図4参照)の第1駆動出力ギア60aが連結されている。
【0029】
加圧機構21は、加圧板211と、加圧バネ212と、偏芯カム213と、を有する。加圧板211は、加圧ローラー132の軸受部137に対向配置される。加圧板211は、支点部211aが定着装置13の筐体(図示せず)に固定されており、軸受部137に対して接近または離間する方向に揺動可能である。加圧バネ212は加圧板211を挟んで軸受部137と反対側に配置され、軸受部137に近づく方向に付勢する。
【0030】
偏芯カム213は、加圧板211を挟んで加圧バネ212と反対側に配置される。偏芯カム213は、駆動伝達機構30(図4参照)の第2駆動出力ギア60bに一体形成されている。第2駆動出力ギア60bと共に偏芯カム213が回転すると、加圧板211に当接する偏芯カム213の径が変化する。
【0031】
より詳細には、図3のように偏芯カム213の小径部が加圧板211に対向しているとき、加圧バネ212の付勢力によって加圧板211から軸受部137へ一定の加圧力が作用している。図3の状態から偏芯カム213が所定量回転し、加圧板211に接触する偏芯カム213の外径が大きくなるにつれて、加圧バネ212の付勢力に抗して加圧板211が軸受部137から離間する方向に押圧される。その結果、加圧バネ212が圧縮されて加圧板211から軸受部137へ作用する圧力が弱められる。即ち、偏芯カム213の回転量(回転角)によって定着ローラー131に対する加圧ローラー132の圧接力を調整することができる。
【0032】
[3.駆動伝達機構の構成]
図4は、定着装置13に駆動力を伝達する駆動伝達機構30を模式的に示す図である。図3に示すように、駆動伝達機構30は、第1ラチェット機構31と、第2ラチェット機構32と、リンク部材33と、を有する。
【0033】
第1ラチェット機構31は、第1駆動入力ギア40aと、第1連結部材50aと、第1駆動出力ギア60aと、を有する。第1ラチェット機構31は、第1駆動入力ギア40aが定着駆動モーター20に連結され、さらに第1駆動出力ギア60aが定着駆動ギア136に連結されており、定着駆動ギア136を介して加圧ローラー132に回転駆動力を伝達する。
【0034】
第2ラチェット機構32は、第2駆動入力ギア40bと、第2連結部材50bと、第2駆動出力ギア60bと、を有する。第2ラチェット機構32は、第2駆動入力ギア40bが定着駆動モーター20に連結され、さらに第2駆動出力ギア60bに一体形成される偏芯カム213を介して加圧機構21(いずれも図3参照)に連結されており、加圧機構21に駆動力を伝達する。
【0035】
リンク部材33は、第1ラチェット機構31の第1連結部材50aと第2ラチェット機構32の第2連結部材50aとの間に配置されている。リンク部材33は、長手方向の中央部に設けられた揺動支軸33aを中心として両端部が上下に揺動する。リンク部材33は、第1連結部材50aおよび第2連結部材50bのスラスト移動によって揺動することにより、第1ラチェット機構31と第2ラチェット機構32との駆動力伝達の切り換えを補助する。
【0036】
図5は、駆動力伝達機構を構成する第1ラチェット機構31の斜視図である。図6図8は、第1ラチェット機構31を構成する第1駆動入力ギア40a、第1連結部材50a、第1駆動出力ギア60aの斜視図である。図5図8を用いて第1ラチェット機構31の構成について説明する。なお、第2ラチェット機構32の第2駆動入力ギア40b、第2連結部材50b、第2駆動出力ギア60b(いずれも図4参照)についても図6図8と全く同様の構成である。
【0037】
図6に示すように、第1駆動入力ギア40aは、ギア本体41と、ボス部42と、スロープ43と、第1回転規制部44と、第2回転規制部45と、を有する。ギア本体41の外周面にはギア歯(図示せず)が形成されている。ボス部42は、ギア本体41の回転軸線上に形成されており、第1駆動出力ギア60aの軸部62(図8参照)が回転可能に挿入される。
【0038】
スロープ43は、第1連結部材50aとの対向面であってギア本体41とボス部42の間に螺旋状に形成されている。第1回転規制部44および第2回転規制部45は、それぞれスロープ43の最上部および最下部に形成される垂直面である。
【0039】
第1駆動入力ギア40aは、定着駆動モーター20の出力軸に固定されたピニオンギア22(図4参照)と噛み合う。第1駆動入力ギア40aは、第2ラチェット機構32を構成する第2駆動入力ギア40b(図4参照)とも噛み合う。
【0040】
図7に示すように、第1連結部材50aは、本体部51と、第1ラチェット歯52と、脚部53と、第1回転規制面54と、第2回転規制面55と、フランジ部56と、を有する。本体部51は円筒状であり、貫通穴51aが形成されている。
【0041】
第1ラチェット歯52は、本体部51の上端部に複数(本実施形態では6つ)形成されている。各第1ラチェット歯52は、略垂直な駆動連結面52aと、駆動連結面52aの上端から所定の角度で下向きに傾斜する非駆動連結面52bとを有する。
【0042】
脚部53は、本体部51の下端部に形成されている。脚部53は、第1駆動入力ギア40aのスロープ43に接触する。第1駆動入力ギア40aの回転に伴い、脚部53がスロープに沿って上下方向に移動する。これにより、第1連結部材50aは第1駆動入力ギア40aに対してスラスト移動可能に配置される。
【0043】
第1回転規制面54および第2回転規制面55は、それぞれ脚部53の周方向の一端側および他端側に形成されている。第1回転規制面54は、第1駆動入力ギア40aの第1回転規制部44に当接する。第2回転規制面55は、第1駆動入力ギア40aの第2回転規制部45に当接する。
【0044】
フランジ部56は、本体部51の外周面に環状に形成されている。フランジ部56の下面にはリンク部材33の揺動端(図4参照)が当接する。
【0045】
図8に示すように、第1駆動出力ギア60aは、ギア本体61と、軸部62と、第2ラチェット歯63と、を有する。ギア本体61の外周面には、定着駆動ギア136(図4参照)に噛み合うギア歯(図示せず)が形成されている。軸部62は、ギア本体61の回転軸線上に形成されており、第1連結部材50aの貫通穴51a、および第1駆動入力ギア40aのボス部42に回転可能に挿入される。
【0046】
第2ラチェット歯63は、ギア本体61の下端部に複数(本実施形態では6つ)形成されている。第2ラチェット歯63は、第1連結部材50aの第1ラチェット歯52と噛み合う。各第2ラチェット歯63は、略垂直な駆動連結面63aと、駆動連結面63aの下端から所定の角度で上向きに傾斜する非駆動連結面63bとを有する。
【0047】
第1駆動出力ギア60aの軸部62が、第1連結部材50aの貫通穴51a、および第1駆動入力ギア40aのボス部42に挿入されることで、第1駆動入力ギア40a、第1連結部材50a、第1駆動出力ギア60aが同軸上に配置される。
【0048】
第1駆動出力ギア60aは、第1連結部材50aのスラスト移動によって、第1ラチェット歯52の駆動連結面52aと第2ラチェット歯63の駆動連結面63aとが噛み合う駆動連結状態と、第1ラチェット歯52の非駆動連結面52bと第2ラチェット歯63の非駆動連結面63bとが対向する非駆動連結状態とに切り換わる。
【0049】
[4.駆動伝達機構を用いた駆動伝達の切り換え手順]
次に、駆動伝達機構30を用いた定着装置13に対する駆動伝達の切り換え手順について説明する。定着装置13の加圧ローラー132を回転駆動させる場合、図4に示すように、定着駆動モーター20を正回転させて第1ラチェット機構31の第1駆動入力ギア40aを図6の時計回り方向(外周面が図4の右から左に移動する方向)に回転させる。第1駆動入力ギア40aの回転に伴い、第1連結部材50aの脚部53が第1駆動入力ギア40aのスロープ43を上り始める。
【0050】
そして、脚部53がスロープ43を上りきったところで、第1連結部材50aの第1回転規制面54が第1駆動入力ギア40aの第1回転規制部44と接触し、第1駆動入力ギア40aから第1連結部材50aに回転駆動力が伝達される。その結果、第1連結部材50aは図7の時計回り方向(外周面が図4の右から左に移動する方向)に回転する。
【0051】
また、第1連結部材50aがスロープ43を上ることで、第1ラチェット機構31は、第1ラチェット歯52の駆動連結面52aと第2ラチェット歯63の駆動連結面63aとが噛み合う駆動連結状態となる。これにより、第1駆動出力ギア60aが図7の時計回り方向(外周面が図4の右から左に移動する方向)に回転し、定着駆動ギア136に回転駆動力が伝達される。
【0052】
一方、第2ラチェット機構32の第2駆動入力ギア40bは、第1駆動伝達ギア40aの回転に伴い図6の反時計回り方向(外周面が図4の左から右に移動する方向)に回転する。第2駆動入力ギア40bの回転に伴い、第2連結部材50bの脚部53が第2駆動入力ギア40bのスロープ43を下り始める。
【0053】
そして、脚部53がスロープ43を下りきったところで、第2連結部材50bの第2回転規制面55が第2駆動入力ギア40bの第2回転規制部45と接触し、第2駆動入力ギア40bから第2連結部材50bに回転駆動力が伝達される。その結果、第2連結部材50bは図7の反時計回り方向(外周面が図4の左から右に移動する方向)に回転する。
【0054】
また、第2連結部材50bがスロープ43を下ることで、第2ラチェット機構32は第1ラチェット歯52の非駆動連結面52bと第2ラチェット歯63の非駆動連結面63bとが対向する非駆動連結状態となる。これにより、第2連結部材50bから第2駆動出力ギア60bに回転駆動力が伝達されず、加圧機構21に駆動力が伝達されない。
【0055】
さらに、非駆動連結面52bと非駆動連結面63bは、どちらも回転方向下流側に向かって傾斜している。そのため、非駆動連結面52bと非駆動連結面63bとが接触した状態で第2連結部材50bが回転すると、非駆動連結面52bと非駆動連結面63bとの間に作用する抗力のうち垂直下向きの分力によって、第2連結部材50bが第2駆動出力ギア60bから遠ざかる方向(下方向)に移動する。
【0056】
これにより、第2連結部材50bに形成されたフランジ部56がリンク部材33の一端側(図4の右側)を押し下げる。その結果、リンク部材33の他端側(図4の左端)が第1連結部材50aのフランジ部56を押し上げる。
【0057】
次に、加圧ローラー132の加圧機構21を駆動する場合について説明する。図9は、定着装置13に駆動力を伝達する駆動伝達機構30を模式的に示す図であって、第2ラチェット機構32の駆動伝達状態を示す図である。図4の状態から、定着駆動モーター20を逆回転させて第1ラチェット機構31の第1駆動入力ギア40aを図6の反時計回り方向(外周面が図9の左から右に移動する方向)に回転させる。第1駆動入力ギア40aの回転に伴い、第1連結部材50aの脚部53が第1駆動入力ギア40aのスロープ43を下り始める。
【0058】
そして、脚部53がスロープ43を下りきったところで、第1連結部材50aの第2回転規制面55が第1駆動入力ギア40aの第2回転規制部45と接触し、第1駆動入力ギア40aから第1連結部材50aに回転駆動力が伝達される。その結果、第1連結部材50aは図7の反時計回り方向(外周面が図9の左から右に移動する方向)に回転する。
【0059】
また、第1連結部材50aがスロープ43を下ることで、第1ラチェット機構31は第1ラチェット歯52の非駆動連結面52bと第2ラチェット歯63の非駆動連結面63bとが対向する非駆動連結状態となる。これにより、第1連結部材50aから第1駆動出力ギア60aに回転駆動力が伝達されず、定着駆動ギア132cに駆動力が伝達されない。
【0060】
さらに、非駆動連結面52bと非駆動連結面63bは、どちらも回転方向下流側に向かって傾斜している。そのため、非駆動連結面52bと非駆動連結面63bとが接触した状態で第1連結部材50bが回転すると、非駆動連結面52bと非駆動連結面63bとの間に作用する抗力のうち垂直下向きの分力によって、第1連結部材50aが第1駆動出力ギア60aから遠ざかる方向(下方向)に移動する。
【0061】
これにより、第1連結部材50aに形成されたフランジ部56がリンク部材33の他端側(図9の左側)を押し下げる。その結果、リンク部材33の一端側(図9の右端)が第2連結部材50bのフランジ部56を押し上げる。
【0062】
一方、第2ラチェット機構32の第2駆動入力ギア40bは、第1駆動伝達ギア40aの回転に伴い図8の時計回り方向(外周面が図9の右から左に移動する方向)に回転する。第2駆動入力ギア40bの回転に伴い、第2連結部材50bの脚部53が第2駆動入力ギア40bのスロープ43を上り始める。
【0063】
そして、脚部53がスロープ43を上りきったところで、第2連結部材50bの第1回転規制面54が第2駆動入力ギア40bの第1回転規制部44と接触し、第2駆動入力ギア40bから第2連結部材50bに回転駆動力が伝達される。その結果、第2連結部材50aは図7の時計回り方向(外周面が図9の右から左に移動する方向)に回転する。
【0064】
また、第2連結部材50bがスロープ43を上ることで、第2ラチェット機構32は第1ラチェット歯52の駆動連結面52aと第2ラチェット歯63の駆動連結面63aとが噛み合う駆動連結状態となる。これにより、第2駆動出力ギア60bが図8の時計回り方向(外周面が図9の右から左に移動する方向)に回転し、第2駆動出力ギア60bに一体形成された偏芯カム213を介して加圧ローラー132の加圧機構21に回転駆動力が伝達される。
【0065】
本実施形態の構成によれば、駆動伝達機構30は第1ラチェット機構31および第2ラチェット機構32を用いて定着駆動ギア132cと加圧機構21への駆動力の伝達の切り換えを行うことにより、定着駆動モーター20を正回転または逆回転させることにより、定着駆動ギア132cと加圧機構21に対する駆動力の伝達を切り換えることができる。従って、1つの定着駆動モーター20を用いて加圧ローラー132の回転駆動と定着ローラー131に対する圧接力の調整を行うことができ、モーターを別個に設ける構成に比べてコストダウンを図るとともに制御経路も簡素化することができる。
【0066】
また、第1ラチェット機構31と第2ラチェット機構32との駆動力伝達の切り換えを補助するリンク部材33を設けることで、第1連結部材50aおよび第2連結部材50bのスラスト移動を確実に行うことができる。
【0067】
従って、リンク部材33の姿勢によらず、第1連結部材50aまたは第2連結部材50bが第1駆動入力ギア40a、第2駆動入力ギア40bに連れ回りしてスロープ43を上らない場合でも、第1連結部材50aまたは第2連結部材50bを第1ラチェット歯52と第2ラチェット歯63とが噛み合う位置まで押し上げることができ、第1ラチェット機構31および第2ラチェット機構32を確実に駆動連結状態とすることができる。
【0068】
なお、例えば第1駆動入力ギア40aと第2駆動入力ギア40bの間にピニオンギア22を配置した場合、第1駆動入力ギア40aと第2駆動入力ギア40bが同方向に回転する。その場合、第1ラチェット機構31を構成する第1駆動入力ギア40a、第1連結部材50aと、第2ラチェット機構32を構成する第2駆動入力ギア40b、第2連結部材50bの位相を逆方向とする必要がある。
【0069】
そこで、本実施形態では、第1駆動入力ギア40aと第2駆動入力ギア40bが逆方向に回転するように、第1ラチェット機構31の第1駆動入力ギア40aと第2ラチェット機構32の第2駆動入力ギア40bとを連結し、第1駆動入力ギア40aに定着駆動モーター20のピニオンギア22を連結している。これにより、第1ラチェット機構31を構成する第1駆動入力ギア40a、第1連結部材50aと、第2ラチェット機構32を構成する第2駆動入力ギア40b、第2連結部材50bを共通化することができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0070】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては第2駆動出力ギア60bに偏芯カム213を一体形成したが、偏芯カム213の回転軸に第2駆動出力ギア60bを固定してもよい。或いは、偏芯カム213の外周面にギア歯を形成して第2駆動出力ギア60bと直接、若しくはアイドルギアを介して連結してもよい。
【0071】
駆動伝達機構30を用いて定着装置13の定着駆動ギア136と加圧機構21との駆動力伝達の切り換えを行う場合について説明したが、本発明は定着装置13に限定されるものではない。例えば、駆動伝達機構30を用いて2つの現像ユニットと2つのトナーコンテナとの間のトナー補給動作の切り換えを行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、被駆動部材に駆動力を伝達する駆動伝達機構に利用可能である。本発明の利用により、バネ等の付勢部材によるブレーキを用いることなくラチェット駆動部と被駆動部材との連結状態を維持可能な駆動伝達機構およびそれを備えた定着装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
P 画像形成部
13 定着装置
131 定着ローラー
132 加圧ローラー
136 定着駆動ギア(第1被駆動部材)
20 定着駆動モーター(駆動源)
21 加圧機構
211 加圧板
212 加圧バネ
213 偏芯カム(第2被駆動部材)
30 駆動伝達機構
31 第1ラチェット機構
32 第2ラチェット機構
33 リンク部材
40a 第1駆動入力ギア
40b 第1駆動入力ギア
41 ギア本体(駆動入力ギア)
42 ボス部
43 スロープ
44 第1回転規制部
45 第2回転規制部
50a 第1連結部材
50b 第2連結部材
51 本体部
52 第1ラチェット歯
52a 駆動伝達面(第1ラチェット歯)
52b 非駆動伝達面(第1ラチェット歯)
53 脚部
54 第1回転規制面
55 第2回転規制面
60a 第1駆動出力ギア
60b 第2駆動出力ギア
61 ギア本体(駆動出力ギア)
62 軸部
63 第2ラチェット歯
63a 駆動伝達面(第2ラチェット歯)
63b 非駆動伝達面(第2ラチェット歯)
100 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9