IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガラス物品の製造方法 図1
  • 特開-ガラス物品の製造方法 図2
  • 特開-ガラス物品の製造方法 図3
  • 特開-ガラス物品の製造方法 図4
  • 特開-ガラス物品の製造方法 図5
  • 特開-ガラス物品の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005704
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/02 20060101AFI20250109BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C03B33/02
C03B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105995
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】山城 陸
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015FA01
4G015FB02
4G015FC02
4G015FC04
4G015FC10
(57)【要約】
【課題】
ガラスリボンを元にしてガラス物品を製造するに際し、ガラスリボンに不良クラックが発生した場合に、ガラスリボンから不良クラックを迅速に除去できるようにすること。
【解決手段】
ガラスリボンGを搬送経路11に沿って搬送する搬送工程P4と、搬送経路11の下流端11eでガラスリボンGからガラス板Gsを取得する取得工程P5と、を備えたガラス物品の製造方法において、ガラスリボンGに、ガラスリボンGの上流側に向かって進展する不良クラックCが発生した場合に、不良クラックCをガラスリボンGの幅方向端縁Geに誘導する誘導工程P6を更に備え、誘導工程P6では、不良クラックCを境界として隔てられたガラスリボンGの幅方向の一方側部位G1と他方側部位G2との間に張力差を設けるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスリボンを搬送経路に沿って搬送する搬送工程と、前記搬送経路の下流端でガラスリボンからガラス物品を取得する取得工程と、を備えたガラス物品の製造方法であって、
前記ガラスリボンに、該ガラスリボンの上流側に向かって進展する不良クラックが発生した場合に、該不良クラックを前記ガラスリボンの幅方向端縁に誘導する誘導工程を更に備え、
前記誘導工程では、前記不良クラックを境界として隔てられた前記ガラスリボンの幅方向の一方側部位に生じる張力と他方側部位に生じる張力との間に張力差を設けることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項2】
前記誘導工程では、前記一方側部位と前記他方側部位との一方の搬送速度を加速させることで、前記張力差を設けることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項3】
前記誘導工程では、前記一方側部位と前記他方側部位との一方に対し、(1)前記ガラスリボンの搬送方向下流側の向きの外力、又は、(2)前記ガラスリボンの搬送方向下流側の向きの成分、及び、幅方向中央側から外側の向きの成分を有する外力、を付与することで、前記張力差を設けることを特徴とする請求項2に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項4】
前記ガラスリボンにおける幅方向端縁と前記不良クラックとの相互間に位置する部位に対し、前記外力を付与することを特徴とする請求項3に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項5】
前記一方側部位と前記他方側部位とのうち、幅寸法が小さい方の部位に対し、前記外力を付与することを特徴とする請求項3又は4に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項6】
前記外力を付与するにあたり、前記外力の向きと同方向となる送り方向を有する送り部材を前記ガラスリボンに接触させることを特徴とする請求項3又は4に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項7】
前記送り部材がローラーであることを特徴とする請求項6に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項8】
前記ローラーと前記ガラスリボンとの接触時に、前記ローラーの周速度を前記ガラスリボンの搬送速度よりも高速にすることを特徴とする請求項7に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項9】
前記外力を付与するにあたり、ガスを前記ガラスリボンに向けて噴き付けることを特徴とする請求項3又は4に記載のガラス物品の製造方法。
【請求項10】
前記誘導工程では、前記ガラスリボンを撮像して画像を得ると共に、該画像を画像処理することで、前記不良クラックの発生を検出することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
【請求項11】
前記取得工程では、前記ガラスリボンを幅方向に繰り返し切断することで、前記ガラス物品としてのガラス板を連続的に取得することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
【請求項12】
前記ガラスリボンは、
厚みが200μm以下であり、
成形工程と、前記成形工程後の搬送方向転換工程と、前記搬送方向転換工程後の不要部分断工程とを経て、前記搬送工程に供され、
前記成形工程では、成形体に供給した溶融ガラスから前記ガラスリボンを縦方向に引き出しながら成形し、
前記搬送方向転換工程では、前記成形工程後の前記ガラスリボンの搬送方向を縦方向から横方向に転換し、
前記不要部分断工程では、前記ガラスリボンの幅方向の一方側および他方側にそれぞれ存する不要部を前記ガラスリボンから分断して除去することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
【請求項13】
ガラスリボンを搬送経路に沿って搬送する搬送工程と、前記搬送経路の下流端でガラスリボンからガラス物品を取得する取得工程と、を備えたガラス物品の製造方法であって、
前記ガラスリボンに、該ガラスリボンの上流側に向かって進展する不良クラックが発生した場合に、該不良クラックを前記ガラスリボンの幅方向端縁に誘導する誘導工程を更に備え、
前記誘導工程では、前記不良クラックを境界として隔てられた前記ガラスリボンの幅方向の一方側部位と他方側部位との一方に対し、前記誘導のための外力を付与することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板やガラスロール等に代表されるガラス物品は、ガラスリボンを元にして製造される場合が多い。特許文献1には、ガラスリボンからガラスロールを製造する形態の一例が開示されている。
【0003】
同形態では、まず、ダウンドロー法を利用して溶融ガラスから連続的にガラスリボンを成形する。次に、成形したガラスリボンの搬送方向を縦方向から横方向に転換させる。その後、ガラスリボンの幅方向の一方側および他方側にそれぞれ存する不要部をガラスリボンから分断して除去する。最後に、不要部が除去されたガラスリボンを巻芯の周りにロール状に巻き取ってガラスロールとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-40755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにガラスリボンを元にしてガラス物品を製造する場合、意図せずガラスリボンに発生したクラック(以下、「不良クラック」と表記)に起因して、ガラス物品の生産ロスが生じてしまうことがある。
【0006】
例えば、図6に示した態様のごとく、A方向に搬送されるガラスリボン100をその搬送経路の下流端で繰り返し切断することで、ガラスリボン100からガラス板200を連続的に切り出すような場合に生産ロスが生じ得る。同態様では、ガラス板200の切り出しに失敗した場合に、ガラスリボン100が割れる等して不良クラックCが発生することがある。不良クラックCは、ガラスリボン100の搬送方向(A方向)とは反対に、ガラスリボン100の上流側(B方向)に向かって進展する。なお、同図に示したガラスリボン100の幅方向の一方側部位101と他方側部位102は、不良クラックCを境界として分断された状態となる。
【0007】
上述した不良クラックCが発生した場合、この不良クラックCがガラスリボン100から除去されるまでの間、ガラスリボン100から新たにガラス板200を切り出すことが不可能となる。詳述すると、不良クラックCは、これがガラスリボン100の幅方向端縁100aに逸れない限り上流側への進展が停止せず、ガラスリボン100上に存在し続ける。そのため、不良クラックCが偶然に幅方向端縁100aに逸れるまでは、ガラス板200の切り出しを中止せざる得なくなる。これにより、ガラス板200の生産ロスが生じてしまう。従って、ガラスリボン100に不良クラックCが発生した場合に、ガラスリボン100から不良クラックCを迅速に除去できる技術の確立が期待されていた。
【0008】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、ガラスリボンを元にしてガラス物品を製造するに際し、ガラスリボンに不良クラックが発生した場合に、ガラスリボンから不良クラックを迅速に除去できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための第1のガラス物品の製造方法は、ガラスリボンを搬送経路に沿って搬送する搬送工程と、搬送経路の下流端でガラスリボンからガラス物品を取得する取得工程と、を備えたガラス物品の製造方法であって、ガラスリボンに、ガラスリボンの上流側に向かって進展する不良クラックが発生した場合に、不良クラックをガラスリボンの幅方向端縁に誘導する誘導工程を更に備え、誘導工程では、不良クラックを境界として隔てられたガラスリボンの幅方向の一方側部位に生じる張力と他方側部位に生じる張力との間に張力差を設けることを特徴とする。
【0010】
第1のガラス物品の製造方法では、誘導工程の実行に伴い、不良クラックを境界として隔てられたガラスリボンの幅方向の一方側部位に生じる張力と他方側部位に生じる張力との間に張力差が生じる(以下、両部位のうちの張力が大きい方の部位を「張力大部位」と表記)。この張力差が生じることで、不良クラックは、ガラスリボンの幅方向両端縁のうち、張力大部位に含まれる方の幅方向端縁に向かって進展し、同端縁へと速やかに到達する。これに伴って、ガラスリボンから不良クラックを除去できる。このとおり、本製造方法によれば、ガラスリボンに不良クラックが発生した場合に、ガラスリボンから不良クラックを迅速に除去することが可能となる。
【0011】
第2のガラス物品の製造方法は、上記の第1の製造方法において、誘導工程では、一方側部位と他方側部位との一方の搬送速度を加速させることで、張力差を設ける形態としたものである。
【0012】
第2のガラス物品の製造方法では、両部位の一方の搬送速度を加速させて張力差を設けるため、両部位の間に迅速かつ確実に張力差を設けることができる。また、搬送速度を加速させるので、減速させる場合とは異なり、誘導工程の実行に伴ってガラスリボンに皺や弛みが発生するような恐れを排除できる。
【0013】
第3のガラス物品の製造方法は、上記の第1又は第2の製造方法において、誘導工程では、一方側部位と他方側部位との一方に対し、(1)ガラスリボンの搬送方向下流側の向きの外力、又は、(2)ガラスリボンの搬送方向下流側の向きの成分、及び、幅方向中央側から外側の向きの成分を有する外力、を付与することで、張力差を設ける形態としたものである。
【0014】
第3のガラス物品の製造方法では、両部位の一方に対し、上記の(1)又は(2)の外力を付与する。(1),(2)の外力は、いずれもガラスリボンの搬送方向下流側の向きの成分を有している。これにより、外力の付与に伴い、両部位の間に確実に張力差を設けられる効果、及び、不良クラックをガラスリボンの幅方向端縁に向かって進展させやすくなる効果が得られる。
【0015】
第4のガラス物品の製造方法は、上記の第3の製造方法において、ガラスリボンにおける幅方向端縁と不良クラックとの相互間に位置する部位に対し、外力を付与する形態としたものである。
【0016】
第4のガラス物品の製造方法では、ガラスリボンにおける幅方向端縁よりも内側の部位に対して外力を付与することになる。そのため、誘導工程の実行に伴い、ガラスリボンにおける強度が低い部位である幅方向端縁に負荷が掛かることを回避できる。従って、負荷の掛かった幅方向端縁から新たな不良クラックが発生するような恐れを排除できる。
【0017】
第5のガラス物品の製造方法は、上記の第3又は第4の製造方法において、一方側部位と他方側部位とのうち、幅寸法が小さい方の部位に対し、外力を付与する形態としたものである。
【0018】
第5のガラス物品の製造方法では、不良クラックが、ガラスリボンの幅方向両端縁のうち、不良クラックからの距離が近い方の幅方向端縁に向かって進展する。このため、不良クラックが幅方向端縁に到達するまでに要する時間を短縮でき、より迅速に不良クラックをガラスリボンから除去することが可能となる。
【0019】
第6のガラス物品の製造方法は、上記の第3~第5のいずれかの製造方法において、外力を付与するにあたり、外力の向きと同方向となる送り方向を有する送り部材をガラスリボンに接触させる形態としたものである。
【0020】
第6のガラス物品の製造方法では、送り部材をガラスリボンに接触させて外力を付与することから、外力を安定して付与できる。
【0021】
第7のガラス物品の製造方法は、上記の第6の製造方法において、送り部材がローラーである形態としたものである。
【0022】
第7のガラス物品の製造方法では、送り部材としてローラーを用いるため、簡易な構成により外力の付与を実現することが可能となる。
【0023】
第8のガラス物品の製造方法は、上記の第7の製造方法において、ローラーとガラスリボンとの接触時に、ローラーの周速度をガラスリボンの搬送速度よりも高速にする形態としたものである。
【0024】
第8のガラス物品の製造方法では、ローラーの周面と、ガラスリボン(一方側部位と他方側部位とのうちの一方)の表面との間の摩擦力により、外力を付与できる。
【0025】
第9のガラス物品の製造方法は、上記の第3~第5のいずれかの製造方法において、外力を付与するにあたり、ガスをガラスリボンに向けて噴き付ける形態としたものである。
【0026】
第9のガラス物品の製造方法では、ガスを噴き付けることで外力を付与するため、外力を付与する対象となる部位(一方側部位と他方側部位とのうちの一方)の幅寸法が小さい場合であっても、外力を付与しやすくなる。
【0027】
第10のガラス物品の製造方法は、上記の第1~第9のいずれかの製造方法において、誘導工程では、ガラスリボンを撮像して画像を得ると共に、画像を画像処理することで、不良クラックの発生を検出する形態としたものである。
【0028】
第10のガラス物品の製造方法では、ガラスリボンを撮像した画像および画像処理を利用するため、ガラスリボンに発生した不良クラックを精度よく検出できる。
【0029】
第11のガラス物品の製造方法は、上記の第1~第10のいずれかの製造方法において、取得工程では、ガラスリボンを幅方向に繰り返し切断することで、ガラス物品としてのガラス板を連続的に取得する形態としたものである。
【0030】
第11のガラス物品の製造方法では、ガラスリボンを幅方向に繰り返し切断することから、切断に伴ってガラスリボンに形成される端部(切断端部)から不良クラックが発生しやすくなる。そのため、本製造方法では、ガラスリボンから不良クラックを迅速に除去できる効果を好適に享受することが可能となる。
【0031】
第12のガラス物品の製造方法は、上記の第1~第11のいずれかの製造方法において、ガラスリボンは、厚みが200μm以下であり、成形工程と、成形工程後の搬送方向転換工程と、搬送方向転換工程後の不要部分断工程とを経て、搬送工程に供され、成形工程では、成形体に供給した溶融ガラスからガラスリボンを縦方向に引き出しながら成形し、搬送方向転換工程では、成形工程後のガラスリボンの搬送方向を縦方向から横方向に転換し、不要部分断工程では、ガラスリボンの幅方向の一方側および他方側にそれぞれ存する不要部をガラスリボンから分断して除去する形態としたものである。
【0032】
第12のガラス物品の製造方法では、ガラスリボンの厚みが200μm以下と極めて薄い上に、不要部分断工程を実行することから、不要部分断工程を経たガラスリボンに不良クラックが発生しやすくなる。そのため、本製造方法では、ガラスリボンから不良クラックを迅速に除去できる効果を一層好適に享受することが可能となる。
【0033】
上記の課題を解決するための第13のガラス物品の製造方法は、ガラスリボンを搬送経路に沿って搬送する搬送工程と、搬送経路の下流端でガラスリボンからガラス物品を取得する取得工程と、を備えたガラス物品の製造方法であって、ガラスリボンに、ガラスリボンの上流側に向かって進展する不良クラックが発生した場合に、不良クラックをガラスリボンの幅方向端縁に誘導する誘導工程を更に備え、誘導工程では、不良クラックを境界として隔てられたガラスリボンの幅方向の一方側部位と他方側部位との一方に対し、誘導のための外力を付与することを特徴とする。
【0034】
第13のガラス物品の製造方法では、上記の第1の製造方法と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0035】
本開示に係るガラス物品の製造方法によれば、ガラスリボンを元にしてガラス物品を製造するに際し、ガラスリボンに不良クラックが発生した場合に、ガラスリボンから不良クラックを迅速に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ガラス物品の製造方法を示した側面図である。
図2】ガラス物品の製造方法を示した平面図である。
図3】誘導工程を示した平面図である。
図4図4(a)は誘導工程を示した平面図であり、図4(b)は誘導工程を示した側面図である。
図5】誘導工程の変形例を示した側面図である。
図6】従来における課題を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施形態に係るガラス物品の製造方法について添付の図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の説明で参照する各図面に表示したX方向、Y方向、及び、Z方向は、互いに直交する方向である。
【0038】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るガラス物品の製造方法では、ダウンドロー法(図示例ではオーバーフローダウンドロー法)を利用して成形したガラスリボンGからガラス物品としてのガラス板Gsを切り出して製造する。本製造方法は、主たる工程として、成形工程P1と、搬送方向転換工程P2と、不要部分断工程P3と、搬送工程P4と、取得工程P5と、を備えている。
【0039】
成形工程P1では、成形体1に供給した溶融ガラスMGからガラスリボンGを縦方向(Z方向)に引き出しながら成形する。ガラスリボンGの引き出しには、上下複数段に配置されたローラー群2を用いる。ローラー群2の中には、エッジローラー3と、アニーラローラー4と、支持ローラー5と、が含まれている。
【0040】
エッジローラー3は、成形体1の直下でガラスリボンGの幅方向端部と接触してガラスリボンGの幅方向(X方向)の収縮を抑制する。アニーラローラー4は、徐冷炉(図示省略)内で歪点以下の温度まで徐冷されるガラスリボンGの下方への移動を案内する。支持ローラー5は、冷却室(図示省略)内で室温付近まで温度が低下したガラスリボンGを支持しながら下方に牽引する。
【0041】
成形したガラスリボンGの幅方向の一方側および他方側には、それぞれ不要部Gxが存在している(図2では不要部Gxとそれ以外の部位との境界を二点鎖線で表示)。不要部Gxは、成形工程P1よりも下流側で実行される不要部分断工程P3において、ガラスリボンGから分断されて除去される部位である。不要部Gxには、ガラスリボンGの他の部位と比較して厚みの大きい耳部が含まれている。ガラスリボンGの厚み(耳部を除く部位の厚み)は、例えば200μm以下、100μm以下、50μm以下である。
【0042】
搬送方向転換工程P2では、成形工程P1後のガラスリボンGの搬送方向を縦方向から横方向(Y方向)に転換させる。ガラスリボンGの搬送方向の転換には、複数のローラーでなるローラーコンベア6を用いる。
【0043】
搬送方向転換工程P2後のガラスリボンGは、ベルトコンベア7、及び、支持台8上を移動する帯状保護シート9(例えば、帯状樹脂シートなど)により下流側に搬送することで、不要部分断工程P3へと送る。
【0044】
不要部分断工程P3では、不要部GxをガラスリボンGから分断して除去する。不要部Gxの分断には、レーザー切断装置10を用いる。同装置10からガラスリボンGに向けてレーザーLを照射し、ガラスリボンGを長手方向(Y方向)に沿って連続的に切断することで不要部Gxを分断する。分断後の不要部Gxは、不要部分断工程P3よりも下流側でガラスリボンGの搬送経路11から離脱させて廃棄する。
【0045】
搬送工程P4では、不要部分断工程P3後のガラスリボンG(不要部Gxが除去されたガラスリボンG)を搬送経路11に沿って搬送して取得工程P5へと送る。搬送工程P4でのガラスリボンGの搬送には、ベルトコンベア12上およびボード13上を移動する帯状保護シート9を用いる。
【0046】
ガラスリボンGの搬送経路11の上方には、後述する誘導工程P6に使用される撮像装置14および一対のローラー15,15(送り部材)が配置されている。
【0047】
一対のローラー15,15は、それぞれガラスリボンGの幅方向の一方側および他方側に対応して配置されている。各ローラー15は、Z方向から視てガラスリボンGの幅方向中央と幅方向端縁Geとの相互間に位置している。一対のローラー15,15は、いずれもボード13の上方に位置している。各ローラー15は、上下方向に移動でき、移動に伴ってガラスリボンGの表面への接触および表面からの離反が可能である。各ローラー15は、誘導工程P6での使用時にはガラスリボンGの表面に接触し、使用時以外には表面から離反する。誘導工程P6での撮像装置14の機能および一対のローラー15,15の動作の詳細については後述する。
【0048】
取得工程P5では、搬送経路11の下流端11eでガラスリボンGを幅方向(X方向)に繰り返し切断することで、ガラスリボンGから連続的にガラス板Gsを取得する。ガラスリボンGの幅方向に沿った切断は、公知の切断装置や、作業者による切断作業により実施が可能である。ガラスリボンGから取得した複数枚のガラス板Gsは、例えば緩衝シートと交互に重ね合わせた上で梱包する。
【0049】
本製造方法は、上記の各工程P1~P5に加えて、図3及び図4に示した誘導工程P6を更に備えている。
【0050】
誘導工程P6は、図3に示すように、ガラスリボンGの上流側(D1方向)に向かって進展する不良クラックCが発生した場合に実行する工程である。誘導工程P6では、不良クラックCをガラスリボンGの幅方向端縁Geに誘導し、これに伴ってガラスリボンGから不良クラックCを除去する。本実施形態では、取得工程P5でガラスリボンGを幅方向に切断した際に、切断端部(ガラスリボンGの先頭部)から不良クラックCが発生した場合を例に挙げる。なお、誘導工程P6の実行中には、取得工程P5の実行を中断してガラスリボンGからのガラス板Gsの取得を停止する。また、誘導工程P6の実行中には、搬送経路11の下流端11eに到達したガラスリボンGを連続的に廃棄する。
【0051】
不良クラックCは、ガラスリボンGの搬送方向とは反対方向に進展するクラックである。この不良クラックCがガラスリボンGに発生すると、不良クラックCを境界として隔てられたガラスリボンGの幅方向の一方側部位G1と他方側部位G2とが分断された状態となる。本実施形態では、不良クラックCの一つの発生態様として、ガラスリボンGの幅方向における一方側寄りに不良クラックCが発生している。これにより、一方側部位G1の幅寸法W1が他方側部位G2の幅寸法W2よりも小さくなっている。勿論であるが、ガラスリボンGの幅方向中央付近に不良クラックCが発生する場合(W1とW2とが略同寸法となる場合)もある。
【0052】
誘導工程P6では、まず、ガラスリボンGに不良クラックCが発生したことを検出する必要がある。不良クラックCの検出には、ガラスリボンGを撮像する撮像装置14と、撮像された画像を処理する画像処理装置(図示省略)と、を用いる。
【0053】
撮像装置14は、X方向およびY方向における所定の範囲を視野に収めている。X方向においては、不要部分断工程P3後のガラスリボンGにおける全幅(不要部Gxが分断された後の全幅)を視野に収めている。Y方向においては、ガラスリボンGにおける長手方向の少なくとも一部の区間を視野に収めている。これにより、撮像装置14は、ガラスリボンGに不良クラックCが発生した場合に、その幅方向における発生位置を問わず(幅方向の一方側寄りか他方側寄りかを問わず)、不良クラックCを確実に視野に収めることが可能である。
【0054】
画像処理装置は、撮像装置14が撮像した画像に基づき、一例として差分画像を利用(撮像した画像と過去に撮像された画像とのピクセル値の差を画像化)することで、不良クラックCを検出することが可能である。勿論であるが、不良クラックCの有無を判別できる限りで、他の画像処理を利用して不良クラックCを検出するようにしてもよい。
【0055】
ガラスリボンGに不良クラックCが発生したことを検出した場合、図4(a)に示すように、不良クラックCをガラスリボンGの幅方向端縁Geに誘導する。不良クラックCの幅方向端縁Geへの誘導には、上記の一対のローラー15,15のうちの片方のローラー15を用いる。なお、図4(a),(b)には、一対のローラー15,15のうち、不良クラックCの誘導に用いる片方のローラー15のみを図示している(もう片方のローラー15は図示省略)。
【0056】
上記の片方のローラー15とは、ガラスリボンGの一方側部位G1と他方側部位G2とのうち、幅寸法が小さい方の部位である一方側部位G1の上方に配置されたローラー15である。誘導工程P6では、図4(a),(b)に示すように、ローラー15を一方側部位G1に接触させることで、一方側部位G1にガラスリボンGの搬送方向下流側の向きの外力Fを付与する。このとき、ローラー15の送り方向は付与すべき外力Fの向きと同方向とし、更にローラー15の周速度V1はガラスリボンGの搬送速度V2よりも高速にする。外力Fを付与する位置は、X方向において幅方向端縁Geと不良クラックCとの相互間である。外力Fを付与する位置は、Y方向において不要部分断工程P3が実行される位置から十分に離間している。そのため、外力Fの付与に起因してガラスリボンGの幅方向端縁Geの性状が悪化するような恐れは排除されている。
【0057】
ローラー15を一方側部位G1に接触させた際には、一方側部位G1はローラー15とボード13との両者により厚み方向(Z方向)に挟まれた状態となる。つまり、誘導工程P6の実行中において、ボード13は、ガラスリボンG(一方側部位G1)を介してローラー15を支持する支持部材として機能する。
【0058】
本実施形態では、ガラスリボンGの搬送方向下流側の向きの外力Fを一方側部位G1に付与しているが、これに限定されるものではない。ガラスリボンGの搬送方向下流側の向きの成分、及び、幅方向中央側から外側の向きの成分を有する外力Fを一方側部位G1に付与してもよい。つまり、外力Fの向きは、ガラスリボンGの搬送方向に対して傾いていてもよく、傾きの大きさ(図4(a)に示した角度θ)は90°未満であればよい。この場合、ローラー15の送り方向は付与すべき外力Fの向きと同方向とし、更にローラー15の周速度V1におけるガラスリボンGの搬送方向の成分が、ガラスリボンGの搬送速度V2よりも高速になるようにする。
【0059】
上述のようにして一方側部位G1に外力Fを付与すると、一方側部位G1の搬送速度が加速される。これにより、一方側部位G1と他方側部位G2との間に張力差が生じる。具体的には、一方側部位G1に作用する張力T1が、他方側部位G2に作用する張力T2よりも大きくなる。この張力差により、不良クラックCは、ガラスリボンGの幅方向両端縁Ge,Geのうち、一方側部位G1に含まれる端縁Geに向かって進展(D2方向に進展)し、同端縁Geへと速やかに到達する。不良クラックCが幅方向端縁Geへと到達すると、不良クラックCの上流側への進展が停止する。その後、ガラスリボンGにおける不良クラックCよりも上流側の箇所を幅方向に切断する。これにより、ガラスリボンGの長手方向における不良クラックCが存在する区間を、存在しない区間から分断する。これに伴って、ガラスリボンGから不良クラックCが除去され、誘導工程P6が完了する。誘導工程P6の完了後には、中断していた取得工程P5の実行を再開する。
【0060】
ここで、ローラー15の周面(ガラスリボンGとの接触面)の材質としては、上記の外力Fを好適に付与する観点から、例えばブチルゴム、ニトリルゴム等を採用することが好ましい。さらに、ガラスリボンG(一方側部位G1)に作用する張力T1が過大になることを回避する観点から、ローラー15の周速度V1は、ガラスリボンGの搬送速度V2を基準として101%~500%の範囲内とすることが好ましい。
【0061】
なお、上記の実施形態に対しては、下記のような変形例を適用することも可能である。
【0062】
上記の実施形態では、ガラスリボンGに発生した不良クラックCを幅方向端縁Geに誘導するにあたり、一対のローラー15,15を配置した上で、片方のローラー15を用いている。しかしながら、一対のローラー15,15のいずれか一方のローラー15は元来存在していなくともよく、単一のローラー15のみを配置しても構わない。この単一のローラー15は、ガラスリボンGの幅方向の一方側および他方側のいずれに対応して配置されていてもよい。一方側および他方側のいずれに対応して単一のローラー15が配置されていたとしても、上記の張力T1と張力T2との間に張力差(T1とT2との大小関係は逆でも可)を設けさえすれば、不良クラックCの発生位置を問わず(幅方向の一方側寄りか他方側寄りかを問わず)、不良クラックCを幅方向端縁Geに誘導できる。
【0063】
上記の実施形態では、不良クラックCの発生態様として、取得工程P5でガラスリボンGを幅方向に切断した際に、切断端部(ガラスリボンGの先頭部)から不良クラックCが発生した場合を例に挙げた。勿論であるが、不良クラックCの発生態様はこの限りではなく、不要部分断工程P3後のガラスリボンGの幅方向端縁Geから不良クラックCが発生する場合もあるし、不要部分断工程P3よりも上流側のガラスリボンGに不良クラックCが発生する場合もある。これらの場合に誘導工程P6を実行するようにしてもよい。これらの場合においても、上記の実施形態と同じ撮像装置14および一対のローラー15,15の配置の下で誘導工程P6を実行すれば、ガラスリボンGに発生した不良クラックCを幅方向端縁Geに誘導できる。
【0064】
上記の実施形態では、ローラー15をガラスリボンGの一方側部位G1に接触させることで外力Fを付与している。しかしながらこの限りではなく、図5に示すように、噴射ノズル16からボード13上のガラスリボンGに向けて噴射したエアーA(ガス)により外力Fを付与してもよい。噴射ノズル16は、搬送経路11の上方からガラスリボンGの搬送方向下流側を指向している。さらには、ローラー15や噴射ノズル16から噴射したエアーAに代えて、作業者が手作業で外力Fを付与するようにしても構わない。
【0065】
上記の実施形態では、ガラスリボンGの一方側部位G1と他方側部位G2との間に張力差を設けるにあたり、一方側部位G1の搬送速度を加速させている。しかしながらこの限りではなく、一方側部位G1の搬送速度を減速させることで、一方側部位G1と他方側部位G2との間に張力差を設けてもよい。
【0066】
上記の実施形態では、ガラスリボンGからガラス物品としてのガラス板Gsを切り出して製造しているが、ガラスリボンGをロール状に巻き取ってガラスロールを製造しても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1 成形体
11 搬送経路
11e 下流端
15 ローラー
A エアー
C 不良クラック
F 外力
G ガラスリボン
G1 一方側部位
G2 他方側部位
Ge 幅方向端縁
Gs ガラス板
Gx 不要部
MG 溶融ガラス
P1 成形工程
P2 搬送方向転換工程
P3 不要部分断工程
P4 搬送工程
P5 取得工程
P6 誘導工程
T1,T2 張力
V1 周速度
V2 搬送速度
W1,W2 幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6