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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025057084
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20250402BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
G07D11/14
G07G1/00 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166735
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】須藤 信行
【テーマコード(参考)】
3E141
3E142
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141BA06
3E141CA05
3E141FF01
3E141LA31
3E142GA24
(57)【要約】
【課題】着脱可能な硬貨回収器に硬貨を安定的に収納し得るようにする。
【解決手段】硬貨処理装置1は、作業者により硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3を装着させる場合、該硬貨回収器3の固定用部品31に設けた右規制部51及び左規制部52を、該硬貨処理本体装置2の入金口パネル17に設けた右差込空間17NR及び左差込空間17NLにそれぞれ差し込む。このため硬貨処理装置1は、回収袋32に多数の硬貨が収納された場合に、固定用部品31が出金トレー被覆前端18AEを回転支点として回転することを阻止できる。これにより硬貨処理装置1は、硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3を装着した状態を維持でき、出金トレー13に排出される硬貨を回収袋32内へ安定的に収納できる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨処理本体装置に対し硬貨回収器を着脱可能な硬貨処理装置であって、
前記硬貨処理本体装置は、
硬貨を収納する収納庫から排出された当該硬貨を集積し、使用者により出金開口部から取出可能な状態で保持する出金トレーと、
前記出金トレーの底部に形成された排出孔と、
前記排出孔を開放又は閉塞する開閉蓋と、
前記出金トレーにおける前記出金開口部を除いた部分の少なくとも一部を覆うパネル部と
を具え、
前記硬貨回収器は、
前記硬貨を収容する回収袋と、
前記回収袋が取り付けられ、前記パネル部に対し、装着方向へ変位されることにより装着が可能であると共に、当該装着方向と反対の離脱方向へ変位されることにより離脱が可能であり、当該パネル部に装着され且つ前記開閉蓋が開放された状態で、前記収納庫から排出され前記出金トレーの前記排出孔から落下する前記硬貨を前記回収袋の内部へ案内する固定用部品と
を具え、
前記パネル部は、前記硬貨回収器の前記固定用部品が装着された状態において、前記回収袋に前記硬貨が収納された場合に当該硬貨の荷重により当該固定用部品が回転しようとする荷重回転方向に関し、当該固定用部品と当接して当該回転を規制するパネル部側回転規制部を有し、
前記固定用部品は、前記パネル部に装着された状態において、前記荷重回転方向に関し、当該パネル部と当接して前記回転を規制する回収器側回転規制部を有する
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記回収器側回転規制部は、前記装着方向及び前記離脱方向と平行な着脱平行面を有すると共に、当該着脱平行面よりも前記荷重回転方向へ突出した係合突起を有し、
前記パネル部は、前記硬貨回収器の前記固定用部品が装着された状態において前記係合突起と係合する被係合部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記回収器側回転規制部は、前記装着方向及び前記離脱方向と平行な着脱平行面を有すると共に、前記固定用部品が前記パネル部に装着された場合に、前記着脱平行面における前記パネル部の表面と位置を合わせるべき箇所に、位置目印が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記パネル部は、前記出金トレーを挟んで互いに対向する複数の位置に、前記パネル部側回転規制部をそれぞれ有し、
前記固定用部品は、前記パネル部に装着された場合に複数の前記パネル部側回転規制部とそれぞれ対向する複数の位置に、前記回収器側回転規制部をそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記固定用部品は、複数の前記回収器側回転規制部同士を接続すると共に、前記パネル部に装着された場合に前記出金トレーとの間に少なくとも作業者の指先が通過可能な大きさの隙間を形成する規制接続部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記固定用部品の前記規制接続部は、前記パネル部に装着された場合に、当該パネル部の表面との間に少なくとも前記作業者の指先が通過可能な隙間を形成する
ことを特徴とする請求項5に記載の硬貨処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置に関し、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等のような小売店舗の精算所において使用されるレジ釣銭機に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レジ釣銭機においては、POS(Point Of Sales)システム等に接続されたレジスタ部に、媒体としての紙幣や硬貨の入出金処理を行う釣銭処理部が組み合わされたものが普及しつつある。この釣銭処理部において硬貨を処理する硬貨処理装置は、例えばレジ係員に硬貨を投入させる硬貨投入部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の種類を鑑別する鑑別部、硬貨を収納する収納部、及び釣銭用の硬貨を排出する排出部等を有している。排出部は、例えば中央付近が下方へ窪んだ形状の出金トレー等を有しており、収納部から排出された硬貨を出金トレー内に集積する。
【0003】
硬貨処理装置では、例えば店舗における1日の営業時間が終了した後に、収納部に収納している硬貨を回収し、所定の回収袋に収納する回収作業が行われる場合がある。硬貨処理装置は、この回収作業が行われる場合、例えばレジ係員により金種や数量等に関する指定を伴う所定の操作が行われると、収納部に収納している硬貨を排出部の出金トレーに順次排出する。
【0004】
このとき出金トレーに順次排出される硬貨については、回収袋に順次収納させる必要がある。そこで硬貨処理装置としては、例えば出金トレーの底部に排出孔を設けると共にこの排出孔を開閉可能な開閉蓋を設け、さらに該出金トレーに対し着脱可能な固定用部品(硬貨回収用部材)に回収袋を取り付けた硬貨回収器を使用するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-219889号公報(図11等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述した硬貨処理装置では、着脱作業の容易さや回収袋の荷重に耐え得る強度の確保等の観点から、硬貨回収器の固定用部品が出金トレーの前側部分や上側の縁部分等を覆うような形状となっている。このため硬貨処理装置では、装着時に固定用部品を該出金トレーの前側から後方向へ変位させ、また離脱時に該固定用部品を該出金トレーの前方向へ変位させることになる。
【0007】
また硬貨処理装置は、使用者にとって使い勝手の良い高さに合わせるべく、所定の設置台等の上に設置される場合が多い。このような設置台は、その内部に備品等を収納する等の目的により、前面がパネル等により閉塞されていることがある。このため硬貨処理装置では、回収袋に大量の硬貨が収納される場合、該回収袋の後側が台の前面パネル等に干渉するために前側へ膨らむようになり、これに伴い該回収袋の重心が前方向へ変位していく。
【0008】
そうすると硬貨処理装置では、硬貨回収器の回収袋から固定用部品に対し下方向に加えて前方向へ向かう力が作用するため、該固定用部品が出金トレーに対して前方向へ変位し、該固定用部品が該出金トレーから外れて硬貨回収器が脱落する恐れがある、という問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、着脱可能な硬貨回収器に硬貨を安定的に収納し得る硬貨処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨処理本体装置に対し硬貨回収器を着脱可能な硬貨処理装置であって、硬貨処理本体装置には、硬貨を収納する収納庫から排出された当該硬貨を集積し、使用者により出金開口部から取出可能な状態で保持する出金トレーと、出金トレーの底部に形成された排出孔と、排出孔を開放又は閉塞する開閉蓋と、出金トレーにおける出金開口部を除いた部分の少なくとも一部を覆うパネル部とを設け、硬貨回収器には、硬貨を収容する回収袋と、回収袋が取り付けられ、パネル部に対し、装着方向へ変位されることにより装着が可能であると共に、当該装着方向と反対の離脱方向へ変位されることにより離脱が可能であり、当該パネル部に装着され且つ開閉蓋が開放された状態で、収納庫から排出され出金トレーの排出孔から落下する硬貨を回収袋の内部へ案内する固定用部品とを設け、パネル部は、硬貨回収器の固定用部品が装着された状態において、回収袋に硬貨が収納された場合に当該硬貨の荷重により当該固定用部品が回転しようとする荷重回転方向に関し、当該固定用部品と当接して当該回転を規制するパネル部側回転規制部を有し、固定用部品は、パネル部に装着された状態において、荷重回転方向に関し、当該パネル部と当接して回転を規制する回収器側回転規制部を有するようにした。
【0011】
本発明では、硬貨処理本体装置のパネル部に硬貨回収器の固定用部品を装着した状態において、出金トレーの排出孔から落下する硬貨が回収袋に収納されてその荷重が増加した場合、当該硬貨の荷重により固定用部品に対し荷重回転方向に回転しようとする力が作用する。このとき本発明は、固定用部品の回収器側回転規制部をパネル部のパネル部側回転規制部に当接させることにより、当該固定用部品の荷重回転方向への回転を規制でき、使用者の意に反した当該固定用部品の離脱を阻止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、着脱可能な硬貨回収器に硬貨を安定的に収納し得る硬貨処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】硬貨処理装置の構成を示す略線敵斜視図である。
図2】硬貨処理本体装置の構成を示す略線的平面図である。
図3】硬貨処理本体装置の構成を示す略線的正面図である。
図4】第1の実施の形態による硬貨回収器の構成を示す略線的斜視図である。
図5】第1の実施の形態による硬貨回収器を硬貨処理本体装置に装着した状態を示す略線的斜視図である。
図6】第1の実施の形態による硬貨回収器を硬貨処理本体装置に装着した状態における右側部分を示す略線的断面図である。
図7】硬貨回収器を硬貨処理本体装置に装着した状態における左側部分を示す略線的断面図である。
図8】硬貨回収器を硬貨処理本体装置に装着した状態を示す略線的右側面図である。
図9】第2の実施の形態による硬貨回収器の構成を示す略線的右側面図である。
図10】第2の実施の形態による硬貨回収器を硬貨処理本体装置に装着した状態における右側部分を示す略線的断面図である。
図11】第3の実施の形態による硬貨回収器の構成を示す略線的斜視図である。
図12】第3の実施の形態による硬貨回収器を硬貨処理本体装置に装着した状態を示す略線的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0015】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.硬貨処理装置の構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による硬貨処理装置1は、大きく分けて硬貨に関する処理を行う硬貨処理本体装置2と、該硬貨処理本体装置2に対し着脱可能に構成された硬貨回収器3とにより構成されている。
【0016】
硬貨処理本体装置2は、図示しないレジ釣銭機の一部として構成されている。レジ釣銭機は、例えば表示部や操作部等を有するレジスタ部や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置、及び硬貨処理装置1により構成されている。このレジ釣銭機は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員や顧客等(以下これを使用者と呼ぶ)により操作される。またこのレジ釣銭機は、レジ台100の上に載置されており、使用者が立って操作しやすいような高さに位置している。
【0017】
なお以下では、使用者が対峙する一側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該使用者から見て左右及び上下を定義して説明する。
【0018】
硬貨処理本体装置2は、図1の斜視図に加えて図2に平面図を示すと共に図3に正面図を示すように、全体として直方体状に構成されており、上側や左右の側面等を覆う本体カバー10の内側に、硬貨を機械的に取り扱うメカユニット11が設けられている。本体カバー10は、例えば所定の樹脂材料による成型部品であり、十分な強度を有している。
【0019】
メカユニット11には、図示しない強固なフレームに対し、硬貨に関する種々の処理を行う種々の部品が取り付けられている。具体的にメカユニット11には、例えば外部からの硬貨の投入を受け入れると共に当該硬貨を1枚ずつに分離する硬貨投入部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の金種や真偽等を認識する認識部、異物等を返却する返却部、硬貨を金種別に収納する収納庫、及び硬貨を排出する排出部等が設けられている。
【0020】
因みに硬貨処理本体装置2は、レジ釣銭機(図示せず)の筐体内に形成された収納空間内に収納されている。レジ釣銭機では、この収納空間の前側が開放される一方、他の部分が閉塞されており、この収納空間に対し硬貨処理本体装置2を前側から後方向へ変位させるようにして収納するようになっている。
【0021】
メカユニット11の前側には、左上側に硬貨が投入される入金トレー12が配置されており、右下側に硬貨を排出する出金トレー13が配置され、その左側に硬貨を返却する返却トレー14が配置されている。入金トレー12は、図示しない硬貨投入部の一部となっており、上側部分が大きく開口された椀状若しくはすり鉢状に形成され、使用者により硬貨を容易に投入させ得るようになっている。
【0022】
出金トレー13は、図示しない排出部の一部となっており、上側に大きく開口されると共に椀状若しくはすり鉢状に形成され、傾斜された案内面に沿って硬貨を下降させて集積すると共に、使用者により前側から硬貨を掻き取るようにして容易に取り出させるようになっている。以下、出金トレー13の上側において開口された部分を出金開口部13Aと呼ぶ。
【0023】
また出金トレー13は、図2に示すように、トレー本体部21の底部に十分な大きさの排出孔21Hが形成されており、この排出孔21Hを開放又は閉塞する開閉蓋22が設けられている。開閉蓋22は、排出孔21Hに対応する板状の部材であり、排出孔21Hの手前側に設けられた回動機構23を介してトレー本体部21に対し回動可能に取り付けられている。
【0024】
出金トレー13は、開閉蓋22により排出孔21Hを閉塞した閉塞状態において、トレー本体部21及び開閉蓋22により概ね連続した曲面を形成し、収納庫(図示せず)から排出された硬貨を集積すると共に、この硬貨を使用者に取り出させる。また出金トレー13は、開閉蓋22の後側部分が上方へ持ち上げられるように回動されると、排出孔21Hを開放した開放状態となる。このとき出金トレー13は、収納庫(図示せず)から排出された硬貨を殆ど集積すること無く、排出孔21Hから下方へ落下させることになる。因みに開閉蓋22は、閉塞状態から後側部分を上方向へ持ち上げる方向にのみ回動し得るよう、回動範囲が規制されている。
【0025】
返却トレー14は、図示しない返却部の一部となっており、出金トレー13と同様に、上側部分が大きく開口された椀状若しくはすり鉢状に形成され、硬貨を案内して集積すると共に、使用者により前側から硬貨を掻き取るようにして容易に取り出させるようになっている。ただし返却トレー14は、出金トレー13の半分程度の大きさとなっている。
【0026】
メカユニット11における前端近傍の上側から前側に渡る部分は、フロントパネル16により覆われている。パネル部としてのフロントパネル16は、所定の樹脂材料による成型部品であり、本体カバー10の前側に取り付けられている。このフロントパネル16は、種々の平面や曲面を組み合わせた複雑な形状に形成されており、十分な厚さを有すると共に図示しないリブ等が内部に設けられ、十分な強度を確保している。
【0027】
フロントパネル16は、メカユニット11の上側部分並びに前側部分における上側の約3/5の範囲を覆う入金口パネル17と、その下側の約2/5の範囲を覆う出金口パネル18とにより構成されている。
【0028】
入金口パネル17は、左側において、入金トレー12の上側部分を露出させる一方、その周囲を覆っている。また入金口パネル17は、右側において、出金トレー13の上側における後側の一部分のみを覆っており、さらに前上側の梁状部17Bを残して上面と下面とを貫通するように開口された貫通孔17Hが形成されている。
【0029】
すなわち入金口パネル17では、該梁状部17Bの下側及びその後側に、前側から連通された空間が形成されている。また梁状部17Bの下面は、ほぼ水平な平面として形成されている。さらに梁状部17Bの後面は、ほぼ垂直な平面として形成されている。説明の都合上、以下では該梁状部17Bのうち右端近傍の部分を右規制部17ERと呼び、該右規制部17ERの下面を右規制面17SRと呼び、該右規制面17SRの下側及びその後側の空間を右差込空間17NRと呼ぶ。
【0030】
また、入金口パネル17における下側の部分であって出金トレー13の真上に位置する範囲は、概ね湾曲された面を形成しているものの、該出金トレー13における左端近傍の真上となる狭い範囲に左規制部17ELが設けられ、該左規制部17ELの下面に概ね水平な平面でなる左規制面17SLが形成されている。この左規制面17SLの下側には、前側から連通する空間である左差込空間17NLが形成されている。
【0031】
因みに硬貨処理本体装置2は、レジ釣銭機の筐体から引き出された状態において、入金口パネル17をメカユニット11等に対し前方向ないし上方向へ変位させることにより取り外し、該メカユニット11の保守作業等を行わせ得るようになっている。
【0032】
出金口パネル18は、出金トレー13及び返却トレー14の開口部分をそれぞれ露出させる一方、それ以外の部分を概ね覆っている。説明の都合上、以下では、出金口パネル18のうち出金トレー13における上端の縁を覆う部分を出金トレー被覆部18Aと呼ぶ。
【0033】
一方、硬貨回収器3(図1)は、大きく分けて固定用部品31及び回収袋32により構成されている。固定用部品31は、例えば所定の樹脂材料による成型部品であり、図4に拡大した斜視図を示すように、大きく分けて下側のトレー取付部41と上側の柱状部42とにより構成されている。
【0034】
トレー取付部41は、全体的に、後側が開放されると共に中央付近が大きく前方へ窪んだような形状となっている。またトレー取付部41は、出金口パネル18のうち出金トレー13を覆う部分よりも一回り大きくなっている。これに加えてトレー取付部41には、該出金口パネル18の出金トレー被覆部18Aを上側から覆う上被覆部41Tが形成されている。上被覆部41Tは、前上側から見た場合に、英大文字の「U」に類似した形状となっている。
【0035】
柱状部42は、全体として四角柱状の部品を適宜湾曲させると共に接続させたような構成となっており、右側の右柱状部43、左側の左柱状部44、及び中央の中央柱状部45を有している。
【0036】
右柱状部43は、トレー取付部41の上被覆部41Tにおける右端近傍の上面から上方向に向けて立設されており、全体として上下方向に沿った四角柱における上端近傍を後方向へ湾曲させたような形状となっている。右柱状部43における上後側の端部には、右規制部51が設けられている。右規制部51は、全体として概ね直方体状であり、その上面である右規制面51Sがほぼ平坦な平面となっている。一方、右規制部51の下面は、後方向へ進むに連れて上昇するような傾斜面が形成されている。
【0037】
左柱状部44は、トレー取付部41の上被覆部41Tにおける左端近傍において、前後方向に沿った比較的短い四角柱を該上被覆部41Tの上側に重ねたような形状となっている。左柱状部44における後側の端部には、左規制部52が設けられている。左規制部52は、全体として概ね直方体状であり、その上面である左規制面52Sがほぼ平坦な平面となっている。この左規制面52Sは、上被覆部41Tの上面よりもやや上側に位置している。また左規制部52の下面における後端近傍の部分は、後方向へ進むに連れて上昇するような傾斜面が形成されている。
【0038】
規制接続部としての中央柱状部45は、右柱状部43の上端近傍から前方向へ延設された右中央柱状部45Rと、該右中央柱状部45Rの前端に接続され左右方向に沿った前中央柱状部分45Fと、左柱状部44の前後方向に関する中央付近から上方向へ延設され前中央柱状部分45Fの左端と接続された左中央柱状部45Lとを有している。また右中央柱状部45R及び前中央柱状部分45Fの接続部分、並びに該前中央柱状部分45F及び左中央柱状部45Lの接続部分は、何れも四角柱を湾曲させたような形状となっている。
【0039】
一方、回収袋32(図1)は、例えば比較的厚い布や図示しない芯材等により袋状に構成されており、袋の口に当たる部分が固定用部品31の下側に開口した状態で取り付けられている。この回収袋32は、例えば数百枚ないし数千枚程度の硬貨を収納することができる。
【0040】
また固定用部品31は、トレー取付部41及び柱状部42の何れも樹脂材料による成形部品であるものの、その材料が適切に選定され、またその構造が適切に設計されているため、十分な剛性を有している。このため固定用部品31は、例えば回収袋32に大量の硬貨が収納されることにより重量が十分に大きい(重い)状態であり、トレー取付部41の各部分、右規制部51や左規制部52、或いは中央柱状部45にその荷重が作用したとしても、殆ど変形せずにその形状を維持することができる。
【0041】
[1-2.硬貨回収器の装着]
ところで硬貨処理装置1は、上述したように、硬貨処理本体装置2に対し硬貨回収器3を着脱させ得るようになっている。例えば硬貨処理装置1は、硬貨の回収処理が行われる場合、まずレジ係員や保守作業者等(以下これを作業者と呼ぶ)により、出金トレー13の開閉蓋22(図2)が閉塞状態から回動されて開放状態に遷移される。
【0042】
続いて硬貨処理装置1は、図1に示したように、使用者により、硬貨回収器3における固定用部品31のトレー取付部41を、硬貨処理本体装置2における出金トレー13の前側に位置させ、該固定用部品31を後方向へ変位させる。
【0043】
そうすると硬貨処理装置1は、図5に示すように、出金トレー13の前側に固定用部品31のトレー取付部41を被せるようにして、硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3を装着させることができる。説明の都合上、以下では後方向を装着方向とも呼ぶ。
【0044】
このとき硬貨処理装置1は、出金口パネル18の出金トレー被覆部18Aにトレー取付部41の上被覆部41Tを被せる。これにより硬貨処理装置1は、硬貨回収器3に重力が作用し、該硬貨回収器3から出金トレー被覆部18Aに対し下方向へ向かう力が作用した場合に、この力を該出金トレー被覆部18Aから出金トレー13及びメカユニット11(図1)に伝え、該硬貨回収器3を支えることができる。
【0045】
これに加えて硬貨回収器3は、図6に模式的な断面図を示すように、その右側において固定用部品31の右規制部51が入金口パネル17の右差込空間17NRに差し込まれる。これにより硬貨処理装置1では、硬貨回収器3側における右規制部51の上面である右規制面51Sを、硬貨処理本体装置2側における入金口パネル17の右規制面17SRに対向させ、両者を極めて近接させ若しくは当接させる。
【0046】
また硬貨回収器3は、図7に模式的な断面図を示すように、その左側において固定用部品31の左規制部52が入金口パネル17の左差込空間17NLに差し込まれる。これにより硬貨処理装置1では、硬貨回収器3側における左規制部52の上面である左規制面52Sを、硬貨処理本体装置2側における入金口パネル17の左規制面17SLに対向させ、両者を極めて近接させ若しくは当接させる。
【0047】
このとき柱状部42の中央柱状部45と入金口パネル17との間には、作業者の指先が容易に入る程度の十分な長さを有する第1隙間81が形成される。また中央柱状部45と出金トレー被覆部18Aとの間にも、作業者の指先が容易に入る程度の十分な長さを有し、且つ作業者に出金トレー13の内部を容易に視認させ得るような十分な大きさの第2隙間82が形成される。
【0048】
このように硬貨処理装置1は、硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3が装着された場合、出金トレー13を覆う出金トレー被覆部18Aにトレー取付部41の上被覆部41Tを乗せ、右規制部51を入金口パネル17の右差込空間17NRに差し込み、且つ左規制部52を左差込空間17NLに差し込んだ状態となる。
【0049】
その後、硬貨処理装置1は、作業者によりレジスタ部(図示せず)等を介して所定の操作が行われると、メカユニット11内の収納庫から出金トレー13へ硬貨を順次排出する。このとき排出された硬貨は、出金トレー13の排出孔21H(図2)を介して下方へ落下し、回収袋32内へ案内されて収納される。このとき回収袋32内に収納された全ての硬貨の荷重は、固定用部品31を介して出金口パネル18の出金トレー被覆部18Aに加えられ、メカユニット11等により支持される。
【0050】
ところで硬貨処理装置1は、図8に模式的な断面図を示すように、出金トレー13を含む硬貨処理本体装置2の大きさに関する制約やレジ台100の存在等により、硬貨回収器3の回収袋32が出金トレー13の真下に対し、やや前側に偏るように位置することになる。このため硬貨処理装置1では、硬貨回収器3の回収袋32に硬貨が収納された場合、硬貨回収器3の重心G3が、出金トレー13を覆う出金トレー被覆部18Aの前端である出金トレー被覆前端18AEよりも前側に位置してしまう。なお図8では、重心G3を通る鉛直な補助線LG3と、出金トレー被覆前端18AEを通る鉛直な補助線L18AEとをそれぞれ表している。
【0051】
すなわち硬貨処理装置1は、重力により硬貨回収器3の重心G3から下方向へ力が作用する一方、硬貨処理本体装置2側において、出金トレー被覆前端18AEよりも後側においてのみ、該硬貨回収器3を支持する状態となる。
【0052】
そうすると硬貨処理装置1では、特に回収袋32に多数の硬貨が収納され硬貨回収器3全体の重量が増加した場合に、前後方向に関して出金トレー被覆前端18AEよりも前側において、重心G3に対し、比較的大きい荷重による比較的大きい力が作用する。これにより硬貨回収器3は、出金トレー被覆前端18AEを回転支点として、固定用部品31の後側を上方向へ持ち上げるように回転しようとする。以下、このとき回転しようとする方向、すなわち図6における反時計回りの方向であり、図7における時計回りの方向を、荷重回転方向R1とも呼ぶ。
【0053】
このとき硬貨処理装置1では、固定用部品31の右側において右規制部51の右規制面51Sが右差込空間17NRの右規制面17SRに当接すると共に、該固定用部品31の左側において左規制部52の左規制面52Sが左差込空間17NLの左規制面17SLに当接する。
【0054】
このため硬貨処理装置1では、出金トレー被覆前端18AEを回転支点として荷重回転方向R1へ回転しようとする動作が規制され、引き続き、出金トレー被覆部18Aやメカユニット11等により硬貨回収器3全体を安定的に支持することができる。
【0055】
説明の都合上、以下では固定用部品31の右規制部51及び左規制部52をまとめて回収器側回転規制部とも呼ぶ。また以下では、入金口パネル17の右規制部17ER及び左規制部17ELをまとめてパネル部側回転規制部とも呼ぶ。
【0056】
因みに硬貨処理装置1は、回収処理が終了すると、作業者によって固定用部品31が前方向へ変位されて出金口パネル18から取り外されることにより、硬貨回収器3が硬貨処理本体装置2から離脱された状態となる説明の都合上、以下では前方向を離脱方向とも呼ぶ。続いて硬貨処理装置1は、出金トレー13の開閉蓋22が開放状態から回動されて閉塞状態(図2)に遷移される。これにより硬貨処理装置1は、通常の業務に係る種々の処理、例えば入金処理や出金処理等を正常に行うことができる。
【0057】
[1-3.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による硬貨処理装置1は、硬貨の回収処理が行われる場合、作業者により、硬貨処理本体装置2において出金トレー13を覆う出金トレー被覆部18Aに、硬貨回収器3における固定用部品31のトレー取付部41を被せるようにして装着させる(図5等)。
【0058】
このとき硬貨回収器3は、固定用部品31における右側の右規制部51を硬貨処理本体装置2における入金口パネル17の右差込空間17NRに差し込むと共に、固定用部品31における左側の左規制部52を硬貨処理本体装置2における入金口パネル17の左差込空間17NLに差し込む(図6及び図7)。
【0059】
このため硬貨処理装置1は、回収袋32に多数の硬貨が収納され硬貨回収器3全体の重量が増加した場合に、右規制部51の右規制面51Sを入金口パネル17の右規制面17SRに当接させると共に左規制部52の左規制面52Sを入金口パネル17の左規制面17SLに当接させることができる。
【0060】
これにより硬貨処理装置1は、固定用部品31が出金トレー被覆前端18AEを回転支点として荷重回転方向R1へ回転仕様とする動きを阻止でき、出金トレー被覆部18Aから該固定用部品31が前下方へ滑り落ちること、すなわち硬貨処理本体装置2から硬貨回収器3が離脱することを未然に防止できる。この結果、硬貨処理装置1は、硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3を装着した状態を維持でき、出金トレー13に排出される硬貨を回収袋32内へ安定的に収納させることができる。
【0061】
特に固定用部品31の右規制部51及び左規制部52は、それぞれ概ね前後方向に沿った直方体状に構成し、それぞれの上面である右規制面51S及び左規制面52Sを概ね水平な平面状とした。このため硬貨処理装置1では、硬貨回収器3の装着時に、作業者に固定用部品31を出金トレー13の前側から後方向へ変位させる(すなわち押し込む)、といった簡易な作業を行わせるだけで良い。
【0062】
これにより硬貨処理装置1は、トレー取付部41を出金トレー被覆部18Aに被せると共に、右規制部51及び左規制部52を右差込空間17NR及び左差込空間17NLにそれぞれ差し込むことができる。また硬貨処理装置1は、硬貨処理本体装置2から硬貨回収器3を離脱させる際にも、作業者に固定用部品31を前方向へ変位させる(すなわち引き抜く)、といった簡易な作業を行わせるだけで良い。
【0063】
すなわち硬貨処理装置1では、作業者により硬貨処理本体装置2に対し硬貨回収器3を容易に着脱させることと、該硬貨回収器3を装着された状態に維持することとを、両立させることができる。
【0064】
また硬貨回収器3は、固定用部品31の左右両側に、右規制部51及び左規制部52をそれぞれ設けた。このため硬貨処理装置1は、硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3を装着した状態で回収袋32に多数の硬貨が収納され、その重量が増加した場合に、右規制部51の右規制面51S及び左規制部52の左規制面52Sを入金口パネル17の右規制面17SR及び左規制面17SLにそれぞれ当接させ、左右のバランスを維持できる。
【0065】
これにより硬貨処理装置1は、回収袋32に多数の硬貨が収納された場合に、出金トレー被覆前端18AEを中心として左右方向へねじれが発生することを回避でき、固定用部品31を出金トレー被覆部18Aに装着した状態を良好に維持できる。
【0066】
さらに硬貨回収器3は、固定用部品31に右柱状部43及び左柱状部44を繋ぐ中央柱状部45を設け、装着状態において入金口パネル17との間にパネル前側空間80を形成するようにした。このため硬貨処理装置1は、作業者により硬貨回収器3を硬貨処理本体装置2に装着させる場合や該硬貨処理本体装置2から離脱させる場合、或いは該硬貨回収器3を単体で運搬させる場合等に、中央柱状部45を取っ手(持ち手)として把持させ、該硬貨回収器3を容易に取り扱わせることができる。
【0067】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による硬貨処理装置1は、作業者により硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3を装着させる場合、該硬貨回収器3の固定用部品31に設けた右規制部51及び左規制部52を、該硬貨処理本体装置2の入金口パネル17に設けた右差込空間17NR及び左差込空間17NLにそれぞれ差し込む。このため硬貨処理装置1は、回収袋32に多数の硬貨が収納された場合に、固定用部品31が出金トレー被覆前端18AEを回転支点として回転することを阻止できる。これにより硬貨処理装置1は、硬貨処理本体装置2に硬貨回収器3を装着した状態を維持でき、出金トレー13に排出される硬貨を回収袋32内へ安定的に収納できる。
【0068】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による硬貨処理装置201は、第1の実施の形態による硬貨処理装置1と比較して、硬貨回収器3に代わる硬貨回収器203を有する点において相違するものの、硬貨処理本体装置2については同様に構成されている。硬貨回収器203は、第1の実施の形態による硬貨回収器3と比較して、固定用部品31に代わる固定用部品231を有する点において相違し、回収袋32が同様に構成されている。固定用部品231は、第1の実施の形態による固定用部品31と比較して、柱状部42に代わる柱状部242を有する点において相違し、トレー取付部41が同様に構成されている。
【0069】
柱状部242は、図9に模式的な右側面図を示すように、第1の実施の形態による柱状部42と比較して、右規制部51の上側に係合突起261が設けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。係合突起261は、右規制部51の上面である右規制面51Sから上方向に向けて突出した微小な直方体状に形成されており、その後側面が前上側と後下側とを結ぶように傾斜されている。説明の都合上、以下では硬貨回収器203の着脱時に固定用部品231が変位する方向である前後方向と平行な右規制面51Sを着脱平行面とも呼ぶ。
【0070】
一方、入金口パネル17の梁状部17B(図3及び図6等)は、上述したように、後面がほぼ垂直な平面として形成されている。また硬貨処理本体装置2は、レジ釣銭機の筐体に収納された状態において、レジ釣銭機の筐体との間に形成される僅かな隙間が形成されている。このため入金口パネル17は、仮に上方向へ向かう力が作用した場合、レジ釣銭機の筐体との隙間を利用して、メカユニット11等に対し上方向に僅かに変位することが可能となっている。
【0071】
この第2の実施の形態では、硬貨処理本体装置2に対し硬貨回収器203を装着させる場合、第1の実施の形態と同様に、作業者により、該硬貨回収器203における固定用部品231のトレー取付部41を、硬貨処理本体装置2における出金トレー13の前側に位置させ、該固定用部品231を後方向(すなわち装着方向)へ変位させる。
【0072】
これにより硬貨回収器203は、第1の実施の形態と同様に、トレー取付部41の上被覆部41Tを出金口パネル18の出金トレー被覆部18Aに被せる。これに加えて硬貨回収器203は、第1の実施の形態と同様に、その右側において固定用部品31の右規制部51が入金口パネル17の右差込空間17NRに差し込まれると共に、その左側において固定用部品31の左規制部52が入金口パネル17の左差込空間17NLに差し込まれる。
【0073】
このとき硬貨回収器203は、右規制部51が入金口パネル17の右差込空間17NRに差し込まれる過程において、係合突起261が入金口パネル17の梁状部17Bに当接する。そうすると入金口パネル17は、該係合突起261から該梁状部17Bに対し上方向へ向かう力が作用するため、レジ釣銭機の筐体との隙間を利用して僅かに上方向へ変位し、該係合突起261を通過させる。さらに入金口パネル17は、係合突起261が梁状部17Bの後側に到達すると、上方向へ向かう力が解除されるため、下方向へ変位して元の位置に戻る。
【0074】
この結果、硬貨処理装置201は、図10に模式的な拡大断面図を示すように、梁状部17Bの後側に係合突起261が位置し、両者が互いに係合した状態となる。これにより硬貨処理装置201は、固定用部品231に対し振動や前方向へ向かう比較的小さい力が作用したとしても、係合突起261と梁状部17Bとが係合した状態を維持できる。説明の都合上、以下では梁状部17Bを被係合部とも呼ぶ。
【0075】
すなわち硬貨処理装置201は、固定用部品231の右規制部51が入金口パネル17の右差込空間17NRに差し込まれ、右規制面51Sを右規制面17SRに極めて近接させ若しくは当接させた状態を維持できる。
【0076】
このため硬貨処理装置201は、第1の実施の形態と同様に、出金トレー被覆前端18AEを回転支点とした固定用部品231の回転を阻止できるので、硬貨処理本体装置2から硬貨回収器203が離脱してしまうことを未然に防止でき、さらにこの状態を良好に維持できる。
【0077】
因みに硬貨処理装置201は、硬貨処理本体装置2から硬貨回収器203を離脱させる場合、第1の実施の形態と同様に、作業者により固定用部品231を前方向へ変位させれば良い。このとき硬貨処理装置201では、作業者に対し、固定用部品231に比較的強い力を加えさせ、或いは入金口パネル17を上方向へ僅かに持ち上げるように力を作用させることにより、硬貨回収器203を円滑に離脱させることができる。
【0078】
その他の点においても、第2の実施の形態による硬貨処理装置201は、第1の実施の形態による硬貨処理装置1と同様の作用効果を奏し得る。
【0079】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による硬貨処理装置301は、第1の実施の形態による硬貨処理装置1と比較して、硬貨回収器3に代わる硬貨回収器303を有する点において相違するものの、硬貨処理本体装置2については同様に構成されている。硬貨回収器303は、第1の実施の形態による硬貨回収器3と比較して、固定用部品31に代わる固定用部品331を有する点において相違し、回収袋32が同様に構成されている。固定用部品331は、第1の実施の形態による固定用部品31と比較して、柱状部42に代わる柱状部342を有する点において相違し、トレー取付部41が同様に構成されている。
【0080】
柱状部342は、図11に模式的な断面図を示すように、第1の実施の形態による柱状部42と比較して、中央柱状部45における右中央柱状部45Rの上側に表示体371が取り付けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0081】
表示体371は、上下方向に薄い板状であり、左右方向の長さが右規制部51と同等以下であり、前後方向の長さが右中央柱状部45Rのうち前後方向に沿った直線状の部分よりもやや短くなっている。また表示体371は、全体的に白色であり、さらに後端部分に位置マーク372が設けられている。
【0082】
位置目印としての位置マーク372は、左右方向に沿った赤色の直線となっている。また該位置マーク372は、硬貨回収器303が硬貨処理本体装置2に装着され右規制部51が入金口パネル17の右差込空間17NRに差し込まれた場合に、梁状部17Bの前下端の真下となるよう、前後方向の位置が調整されている。
【0083】
このような構成により、硬貨処理装置301は、硬貨回収器303を硬貨処理本体装置2に装着させようとする当該作業者に対し、表示体371の位置マーク372を利用して固定用部品331を適切な位置に合わせるよう、具体的には当該位置マーク372を梁状部17Bの前下端の真下に位置させるよう、促すことができる。
【0084】
硬貨処理装置301では、事前に用意された取扱説明書等により、硬貨回収器303を硬貨処理本体装置2に装着する場合、表示体371の位置マーク372を梁状部17Bの前下端に合わせるよう、作業者に予め認識させている。
【0085】
すなわち硬貨処理装置301は、作業者によって硬貨回収器303を硬貨処理本体装置2に装着させる場合、第1の実施の形態と同様に、硬貨回収器303を出金トレー13の前側に位置させて固定用部品331を後方向へ変位させる。このとき作業者は、表示体371の位置マーク372が梁状部17Bの前下端の真下に位置した段階で、固定用部品331の後方向への変位を終了させる。これにより硬貨処理装置301は、出金トレー13、入金口パネル17及び出金口パネル18等に対し、固定用部品331を適切な位置で停止させることができる。
【0086】
これにより硬貨処理装置301は、作業者によって硬貨回収器303を硬貨処理本体装置2に装着させる場合に、表示体371の位置マーク372を用いて、固定用部品331を適切な位置に対し容易に装着させることができる。
【0087】
その他の点においても、第3の実施の形態による硬貨処理装置301は、第1の実施の形態による硬貨処理装置1と同様の作用効果を奏し得る。
【0088】
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、入金口パネル17における梁状部17Bの下側及びその後側を右差込空間17NRとし、入金口パネル17における下側の部分であって出金トレー13における左端近傍の真上を左差込空間17NLとして、右規制部51及び左規制部52をそれぞれ差し込む形態について述べた(図3及び図4等)。しかし本発明はこれに限らず、入金口パネル17における種々の箇所に差込空間を形成し、この差込空間に右規制部51及び左規制部52をそれぞれ差し込むようにしても良い。これらの場合、入金口パネル17における差込空間の上面部分に右規制部51等を当接させることにより、回収袋32における重心の位置に起因して固定用部品31が出金トレー被覆前端18AEを中心として回転しようとする動きを規制できれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0089】
また上述した第1の実施の形態においては、入金口パネル17に右差込空間17NR及び左差込空間17NLといった2箇所の差込空間を形成すると共に、固定用部品31に右規制部51及び左規制部52といった2箇所の規制部を設ける形態について述べた(図4図6及び図7等)。しかし本発明はこれに限らず、例えば入金口パネル17に1箇所又は3箇所以上の差込空間を設けると共に、固定用部品31における各差込空間と対応する箇所に、該差込空間と同数の規制部を設けるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0090】
さらに上述した第1の実施の形態においては、固定用部品31の柱状部42に、右柱状部43及び左柱状部44を繋ぐよう湾曲された柱状の中央柱状部45を設ける形態について述べた(図4)。しかし本発明はこれに限らず、例えば柱状部42の他の形状の中央柱状部45を設けても良く、或いは該中央柱状部45を省略しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0091】
さらに上述した第2の実施の形態においては、固定用部品231における右規制部51の上側に係合突起261を設け、硬貨回収器203を硬貨処理本体装置2に装着した場合に該係合突起261を入金口パネル17の梁状部17Bと係合させる形態について述べた(図9及び図10)。しかし本発明はこれに限らず、例えば固定用部品231における左規制部52の上側に係合凸部を設けると共に入金口パネル17における左差込空間17NLの上面部分に窪みを形成し、該係合凸部を該窪みと係合させるようにしても良い。或いは、例えば右規制部51の上面に係合突起261に代わる窪みを形成すると共に、入金口パネル17における梁状部17Bの下面に下方向へ突出する凸部を形成し、該凸部を該窪みと係合させるようにしても良い。
【0092】
さらに上述した第3の実施の形態においては、固定用部品331における右中央柱状部45Rの上側、すなわち右規制部51の近傍に白色の表示体371を設け、該表示体371に赤色の直線でなる位置マーク372を設ける形態について述べた(図11及び図12)。しかし本発明はこれに限らず、例えば左規制部52の近傍となる左柱状部44の上面に表示体371を設けても良い。また、例えば位置マーク372を複数の微小な円や三角形等を左右方向に沿った直線状に整列配置する等、種々の図形や記号等としても良い。さらに、例えば表示体371を黒色として位置マーク372を黄色とする等、表示体371及び位置マーク372を互いに異なる種々の色としても良い。この場合、作業者が位置マーク372を良好に視認し得るような色の組み合わせであることが望ましい。或いは、例えば表示体371を省略し、右中央柱状部45Rの上面に位置マーク372を直接表示させても良い。さらにこの場合、例えば該右中央柱状部45Rの表面に凹凸によって位置マーク372を形成しても良い。
【0093】
さらに上述した第1の実施の形態においては、図示しないレジ釣銭機の一部でなる硬貨処理本体装置2及び着脱式の硬貨回収器3を組み合わせた硬貨処理装置1(図1)に本発明を適用する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば現金自動預払機(ATM)や自動販売機のような硬貨を取り扱う種々の装置における硬貨を排出(出金)する箇所に本発明を適用しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0094】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。
【0095】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨処理本体装置と、硬貨回収器とによって硬貨処理装置を構成する形態について述べた。このうち硬貨処理本体装置は、出金トレーと、排出孔と、開閉蓋と、パネル部とによって構成した。また硬貨回収器は、回収袋と、固定用部品とによって構成した。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる硬貨処理本体装置と、硬貨回収器とによって硬貨処理装置を構成しても良い。この場合、硬貨処理本体装置は、その他種々の構成でなる出金トレーと、排出孔と、開閉蓋と、パネル部とによって構成しても良い。また硬貨回収器は、その他種々の構成でなる回収袋と、固定用部品とによって構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、例えば小売店舗の精算所において使用されるレジ釣銭機で利用できる。
【符号の説明】
【0097】
1、201、301……硬貨処理装置、2……硬貨処理本体装置、3、203、303……硬貨回収器、13……出金トレー、13A……出金開口部、16……フロントパネル、17……入金口パネル、17B……梁状部、17EL……左規制部、17ER……右規制部、17H……貫通孔、17NL……左差込空間、17NR……右差込空間、17SL……左規制面、17SR……右規制面、18……出金口パネル、18A……出金トレー被覆部、18AE……出金トレー被覆前端、31、231、331……固定用部品、32……回収袋、41……トレー取付部、41T……上被覆部、42、242、342……柱状部、45……中央柱状部、51……右規制部、51S……右規制面、52……左規制部、52S……左規制面、81、82……隙間、100……レジ台、261……係合突起、371……表示体、372……位置マーク、G3……重心。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12