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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005711
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】定電圧生成回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/24 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G05F3/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106008
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内本 大介
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA27
5H420NB02
5H420NB12
5H420NB25
5H420NE21
5H420NE26
(57)【要約】
【課題】電流能力を持たせることができる定電圧生成回路を提供する。
【解決手段】定電圧生成回路(11)は、デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、入力電圧(Vin)の印加端に接続される第1ドレインと、第1ソースと、前記第1ソースと短絡された第1ゲートと、を有する第1トランジスタ(M1)と、NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ソースと接続される第2ドレインと、第2ソースと、第2ゲートと、を有する第2トランジスタ(M2)と、NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ドレインと接続される第3ドレインと、前記第1ソースと接続される第3ゲートと、前記第2ゲートと接続される第3ソースと、を有する第3トランジスタ(M3)と、前記第2ゲートに接続され、出力電圧(Vout)が出力されるように構成される出力端(Tout)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、入力電圧の印加端に接続される第1ドレインと、第1ソースと、前記第1ソースと短絡された第1ゲートと、を有する第1トランジスタと、
NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ソースと接続される第2ドレインと、第2ソースと、第2ゲートと、を有する第2トランジスタと、
NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ドレインと接続される第3ドレインと、前記第1ソースと接続される第3ゲートと、前記第2ゲートと接続される第3ソースと、を有する第3トランジスタと、
前記第2ゲートに接続され、出力電圧が出力されるように構成される出力端と、
を備える、定電圧生成回路。
【請求項2】
前記第3トランジスタは、デプレッション型である、請求項1に記載の定電圧生成回路。
【請求項3】
前記第3ソースに接続される定電流源をさらに備える、請求項1に記載の定電圧生成回路。
【請求項4】
前記定電流源は、能動素子を有する能動負荷として構成される、請求項3に記載の定電圧生成回路。
【請求項5】
前記能動素子は、ゲート・ソース間が短絡されたデプレッション型のNチャネルMOSFETである、請求項4に記載の定電圧生成回路。
【請求項6】
前記第3ソースと前記定電流源との間に接続される第1スイッチと、
前記第3ソースと前記出力端との間に接続される第2スイッチと、をさらに備える、請求項3に記載の定電圧生成回路。
【請求項7】
デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、前記第3ソースに接続される第4ドレインと、第4ソースと、前記第4ソースと短絡された第4ゲートと、を有する第4トランジスタをさらに備え、
前記第2トランジスタは、エンハンスメント型であり、
前記第3トランジスタは、デプレッション型である、請求項1に記載の定電圧生成回路。
【請求項8】
デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、前記第3ソースに接続される第4ドレインと、第4ソースと、前記第4ソースと短絡された第4ゲートと、を有する第4トランジスタをさらに備え、
前記第2トランジスタおよび前記第3トランジスタは、デプレッション型であり、
前記第1ゲート、前記第3ゲート、および前記第4ゲートには、n型不純物が注入されており、
前記第2ゲートには、p型不純物が注入されている、請求項1に記載の定電圧生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定電圧生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定電圧生成回路の一種として、デプレッション型のNチャネルMOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]とエンハンスメント型のNチャネルMOSFETを組み合わせたED型定電圧源が広く一般に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/172001号
【0004】
[概要]
ここで、定電圧生成回路に接続する負荷を考慮し、定電圧生成回路に電流能力が要求される場合があった。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、電流能力を持たせることができる定電圧生成回路を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る定電圧生成回路は、
デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、入力電圧の印加端に接続される第1ドレインと、第1ソースと、前記第1ソースと短絡された第1ゲートと、を有する第1トランジスタと、
NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ソースと接続される第2ドレインと、第2ソースと、第2ゲートと、を有する第2トランジスタと、
NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ドレインと接続される第3ドレインと、前記第1ソースと接続される第3ゲートと、前記第2ゲートと接続される第3ソースと、を有する第3トランジスタと、
前記第2ゲートに接続され、出力電圧が出力されるように構成される出力端と、
を備える構成としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、比較例に係る定電圧生成回路の構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る定電圧生成回路の構成を示す図である。
図3図3は、第2実施形態に係る定電圧生成回路の構成を示す図である。
図4図4は、第3実施形態に係る定電圧生成回路の構成を示す図である。
図5図5は、第4実施形態に係る定電圧生成回路の構成を示す図である。
【0008】
[詳細な説明]
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
<比較例>
図1は、定電圧生成回路の比較例(後出の実施形態と対比される基本構成)を示す図である。本比較例の定電圧生成回路1は、いわゆるED型基準電圧源である。本図に即して述べると、定電圧生成回路1は、トランジスタM1と、トランジスタM2と、を備える。トランジスタM1は、デプレッション型のNチャネルMOSFETにより構成される。トランジスタM2は、エンハンスメント型のNチャネルMOSFETにより構成される。
【0010】
なお、デプレッション型とは、ゲート・ソース間電圧が0Vであってもドレイン電流が流れるものを指す。一方、エンハンスメント型とは、ゲート・ソース間電圧が0Vであるときにはドレイン電流が流れないものを指す。
【0011】
トランジスタM1のドレインは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタM2のソースおよびバックゲートは、接地端(グランド電位の印加端)に接続されている。トランジスタM1のゲート、ソースおよびバックゲート、並びに、トランジスタM2のゲートおよびドレインは、いずれも出力電圧Voutの印加端である出力端Toutに接続されている。
【0012】
本比較例の定電圧生成回路1では、トランジスタM1のゲートとソースとの間が短絡されている。そのため、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgs1は0Vである。従って、トランジスタM1は、一定のドレイン電流Idd1を生成する定電流源として機能する。すなわち、トランジスタM2には、一定のバイアス電流(=ドレイン電流Idd1)が流れる。その結果、トランジスタM2のゲート・ソース間電圧Vgs2に相当する一定の出力電圧Voutが生成される。
【0013】
ここで、飽和領域で動作するトランジスタM1およびM2それぞれに流れる電流をI1およびI2とすると、電流I1,I2は、次の(1a)式および(1b)式で表される。
【0014】
【数1】
【0015】
なお、上記の(1a)式および(1b)式において、μ1およびμ2は、トランジスタM1およびM2それぞれのキャリア移動度である。Coxは、トランジスタM1およびM2それぞれの酸化膜容量である。W1およびW2は、トランジスタM1およびM2それぞれのゲート幅である。L1およびL2は、トランジスタM1およびM2それぞれのゲート長である。Vth1およびVth2は、トランジスタM1およびM2それぞれの閾値電圧である。
【0016】
定電圧生成回路1では、I1=I2が成り立つ。そのため、出力電圧Voutは、次の(2)式で表される。
【0017】
【数2】
【0018】
なお、デプレッション型であるトランジスタM1の閾値電圧Vth1は負値となる。従って、先出の(2)式は次の(3)式で表される。
【0019】
【数3】
【0020】
そのため、トランジスタM1およびM2それぞれのW/Lが適切に設計されることにより閾値電圧Vth1およびVth2の温度特性が相殺され得る。
【0021】
しかしながら、このような本比較例の定電圧生成回路1には電流能力がなく、出力端Toutに接続する負荷(図示せず)が電流能力を必要な場合、出力電圧Voutが低下してしまう課題があった。電流能力を必要とする負荷の一例は、抵抗分圧回路である。
【0022】
<第1実施形態>
図2は、本開示の第1実施形態に係る定電圧生成回路11の構成を示す図である。定電圧生成回路11は、上記比較例と同様にトランジスタM1およびM2を備えることに加え、トランジスタM3およびM4を備える。ここでは、上記比較例との構成の相違点について、主に述べる。
【0023】
トランジスタM3は、デプレッション型のNチャネルMOSFETにより構成される。トランジスタM3のドレインは、トランジスタM1のドレインに接続される。トランジスタM3のゲートは、トランジスタM1のソースに接続される。トランジスタM3のソースは、トランジスタM2のゲートに接続される。トランジスタM2のゲートに出力端Toutが接続される。出力電圧Voutは、出力端Toutから出力される。
【0024】
このようなトランジスタM3を設けることにより、ソースフォロワが構成される。トランジスタM3を介して出力端Toutから負荷LDに電流を供給することができ、出力電圧Voutに影響を与えることなく、定電圧生成回路11に電流能力を持たせることができる。
【0025】
また、トランジスタM4は、デプレッション型のNチャネルMOSFETにより構成される。トランジスタM4のドレインは、トランジスタM3のソースに接続される。トランジスタM4のゲート・ソース間は短絡される。トランジスタM4のソースは、接地端に接続される。このようなトランジスタM4により定電流源CIが構成される。定電流源CIは、能動素子(トランジスタM4)による能動負荷とも捉えられる。負荷LDが接続されていない場合、高温の場合にトランジスタM3に流れるリーク電流を定電流源CIにより吸収することで、出力電圧Voutが上昇することを抑制できる。
【0026】
また、本実施形態に係る定電圧生成回路11は、デプレッション型のトランジスタM1,M3,M4とエンハンスメント型のトランジスタM2により構成することができる。すなわち、2種類の素子により構成することができる。これにより、素子のばらつきによる影響を抑えたり、素子レイアウトをシンプルにすることができる。
【0027】
<第2実施形態>
図3は、本開示の第2実施形態に係る定電圧生成回路12の構成を示す図である。第2実施形態に係る構成の第1実施形態(図2)との相違点は、スイッチSW1およびSW2を設けていることである。
【0028】
スイッチSW1は、トランジスタM3のソースとトランジスタM4のドレインとの間に接続される。スイッチSW2は、トランジスタM2のゲートと出力端Toutとの間に接続される。
【0029】
負荷LDに出力電圧Voutを印加する場合は、スイッチSW1はオフ状態、スイッチSW2はオン状態とする。これにより、定電流源CIに電流が流れなくなり、消費電流を抑制できる。
【0030】
一方、負荷LDに出力電圧Voutを印加しない場合は、スイッチSW1はオン状態、スイッチSW2はオフ状態とする。これにより、リーク電流を定電流源CIにより吸収させ、出力電圧Voutが上昇することを抑制できる。
【0031】
<第3実施形態>
図4は、本開示の第3実施形態に係る定電圧生成回路13の構成を示す図である。定電圧生成回路13においては、トランジスタM2はp型不純物がゲートに注入されたデプレッション型であり、トランジスタM1,M3,M4は、n型不純物がゲートに注入されたデプレッション型である。なお、先出の第1、第2実施形態におけるデプレッション型のトランジスタは、ゲートにn型不純物が注入されている。
【0032】
このようなp型不純物がゲートに注入されたデプレッション型のトランジスタM2により、閾値電圧を正の値とすることができ、エンハンスメント型の代わりに用いることが可能となる。さらに、トランジスタM1~M4は、それぞれのデバイス構造(特にゲートよりも下層の部分)が共通となる。従って、本実施形態の定電圧生成回路13であれば、素子ばらつきによる影響をより抑えることができる。また、素子レイアウトもよりシンプルにすることができる。
【0033】
<第4実施形態>
図5は、本開示の第4実施形態に係る定電圧生成回路14の構成を示す図である。定電圧生成回路14における第1実施形態との相違点は、トランジスタM3をエンハンスメント型としていることである。このような定電圧生成回路14によっても、出力電圧Voutに影響を与えることなく、電流能力を持たせることができる。ただし、トランジスタM3をデプレッション型とするほうが、動作電圧ひいては入力電圧Vinを低くすることができる。
【0034】
<その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0035】
また、上記の各種実施形態は、矛盾のない限り、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【0036】
<付記>
以上のように、本開示の一態様に係る定電圧生成回路(11)は、デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、入力電圧(Vin)の印加端に接続される第1ドレインと、第1ソースと、前記第1ソースと短絡された第1ゲートと、を有する第1トランジスタ(M1)と、
NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ソースと接続される第2ドレインと、第2ソースと、第2ゲートと、を有する第2トランジスタ(M2)と、
NチャネルMOSFETとして構成され、前記第1ドレインと接続される第3ドレインと、前記第1ソースと接続される第3ゲートと、前記第2ゲートと接続される第3ソースと、を有する第3トランジスタ(M3)と、
前記第2ゲートに接続され、出力電圧(Vout)が出力されるように構成される出力端(Tout)と、
を備える構成としている(第1の構成)。
【0037】
このような構成は、定電圧生成回路に電流能力を持たせるという課題を解決する。すなわち、一定の出力電圧を生成する定電圧生成回路において、第3トランジスタによりソースフォロワが構成され、出力電圧に影響を与えることなく、電流能力を持たせることができる。
【0038】
また、上記第1の構成において、前記第3トランジスタは、デプレッション型である構成としてもよい(第2の構成)。
【0039】
また、上記第1または第2の構成において、前記第3ソースに接続される定電流源(CI)をさらに備える構成としてもよい(第3の構成)。
【0040】
また、上記第3の構成において、前記定電流源は、能動素子(M4)を有する能動負荷として構成されることとしてもよい(第4の構成)。
【0041】
また、上記第4の構成において、前記能動素子(M4)は、ゲート・ソース間が短絡されたデプレッション型のNチャネルMOSFETである構成としてもよい(第5の構成)。
【0042】
また、上記第3から第5のいずれかの構成において、前記第3ソースと前記定電流源との間に接続される第1スイッチ(SW1)と、
前記第3ソースと前記出力端との間に接続される第2スイッチ(SW2)と、をさらに備える構成としてもよい(第6の構成)。
【0043】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、前記第3ソースに接続される第4ドレインと、第4ソースと、前記第4ソースと短絡された第4ゲートと、を有する第4トランジスタ(M4)をさらに備え、
前記第2トランジスタは、エンハンスメント型であり、
前記第3トランジスタは、デプレッション型である構成としてもよい(第7の構成)。
【0044】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、デプレッション型のNチャネルMOSFETとして構成され、前記第3ソースに接続される第4ドレインと、第4ソースと、前記第4ソースと短絡された第4ゲートと、を有する第4トランジスタ(M4)をさらに備え、
前記第2トランジスタおよび前記第3トランジスタは、デプレッション型であり、
前記第1ゲート、前記第3ゲート、および前記第4ゲートには、n型不純物が注入されており、
前記第2ゲートには、p型不純物が注入されている構成としてもよい(第8の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示は、各種用途の定電圧生成回路に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1,11~14 定電圧生成回路
CI 定電流源
LD 負荷
M1~M4 トランジスタ
SW1,SW2 スイッチ
Tout 出力端
図1
図2
図3
図4
図5