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  • 特開-リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法 図1
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  • 特開-リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005714
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/20 20060101AFI20250109BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250109BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20250109BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C25B1/20
C25B9/00 E
C25B15/08 304
H01M10/54
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106013
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】391023415
【氏名又は名称】株式会社アサカ理研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 博人
【テーマコード(参考)】
4K021
5H031
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA03
4K021AB01
4K021DB05
4K021DB31
4K021DC11
5H031BB09
5H031EE03
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】水酸化リチウムの品質悪化、及び設備の劣化が防止されるリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法を提供する。
【解決手段】リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法が、第1の塩化リチウム水溶液を膜電解し、水酸化リチウム水溶液、塩酸、及びこの第1の塩化リチウム水溶液よりも希薄な第2の塩化リチウム水溶液を得る第1の膜電解工程、及び、この第1の膜電解工程で発生する塩素酸塩を含有する塩化リチウム水溶液を膜電解する第2の膜電解工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法であって、
第1の塩化リチウム水溶液を膜電解し、水酸化リチウム水溶液、塩酸、及び当該第1の塩化リチウム水溶液よりも希薄な第2の塩化リチウム水溶液を得る第1の膜電解工程、及び、
当該第1の膜電解工程で発生する塩素酸塩を含有する塩化リチウム水溶液を膜電解する第2の膜電解工程を含む、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法において、
リチウムを含む固体を塩酸で溶解して酸溶解液を得る酸溶解工程、
当該酸溶解液に水酸化リチウムを添加する中和工程、及び、
当該中和工程で得られた酸溶解液から、リチウムを除く少なくとも1種の金属を溶媒抽出により分離し、当該溶媒抽出の残液として前記第1の塩化リチウム水溶液を得る溶媒抽出工程を更に含み、
前記水酸化リチウム水溶液の一部を、当該中和工程、及び当該溶媒抽出工程からなる群から選択される少なくとも1つで使用される水酸化リチウムとして用い、前記第1の膜電解工程で発生する塩酸を当該酸溶解工程で用いる、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法において、前記第2の塩化リチウム水溶液の一部と前記第1の塩化リチウム水溶液を混合して濃縮し第3の塩化リチウム水溶液を得る混合濃縮工程を更に含む、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載されたリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法において、イオン交換膜を用いて前記第1の塩化リチウム水溶液を膜電解して得られた塩素と水素とを反応させて生成した塩酸を前記酸溶解工程に用いる、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載されたリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法において、前記第1の膜電解工程、及び前記第2の膜電解工程からなる群から選択される少なくとも1つに用いる電力は、再生可能エネルギーによって得られた電力を含む、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載されたリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法において、前記再生可能エネルギーによって得られた電力は、太陽光発電、風力発電、水力発明、及びバイオマス発電からなる群から選択される少なくとも1つによって得られた電力を含む、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載されたリチウムに膜電解後の淡塩水の処理方法おいて、前記第2の膜電解工程で塩素酸塩の一部を分解し、前記第2の膜電解工程に付された塩素酸塩を含有する塩化リチウム水溶液を前記第1の膜電解工程に戻す、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の普及に伴い、廃リチウムイオン電池からコバルト、ニッケル、マンガン、リチウム等の有価金属を回収し、当該リチウムイオン電池の材料として再利用する方法が検討されている。
【0003】
引用文献1には、廃リチウムイオン電池を前処理して得られた活物質粉を鉱酸にて溶解して少なくともリチウムを含む該活物質の酸溶解液を得る工程と、水酸化リチウムを添加した当該酸溶解液から、リチウムを除く少なくとも1種の金属を溶媒抽出により分離し、当該溶媒抽出の残液として第1のリチウム塩水溶液を得る工程と、イオン交換膜を用いて当該第1のリチウム塩水溶液を膜電解し、水酸化リチウム水溶液と、酸と、当該第1のリチウム塩水溶液よりも希薄な第2のリチウム塩水溶液を得る工程を備える廃リチウムイオン電池からのリチウムの回収システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7060899号公報号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩化リチウム水溶液の膜電解において、膜電解で生成する水酸化リチウムの品質悪化、及び設備の劣化防止が希求されるようになってきた。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、水酸化リチウムの品質悪化、及び設備の劣化が防止されるリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、塩素酸塩が、塩化リチウム水溶液の膜電解における水酸化リチウムの品質悪化、及び設備の劣化の原因の1つであること、塩素酸塩は陰極室から逆泳動してくる水酸化物イオンによって生成され、蓄積されること、塩化リチウム水溶液の膜電解工程で発生する塩素酸塩を含有するリチウム塩水溶液を膜電解して、塩素酸塩の蓄積を防止できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明は、第1の塩化リチウム水溶液を膜電解し、水酸化リチウム水溶液、塩酸、及び当該第1の塩化リチウム水溶液よりも希薄な第2の塩化リチウム水溶液を得る第1の膜電解工程、及び、当該第1の膜電解工程で発生する塩素酸塩を含有する塩化リチウム水溶液を膜電解する第2の膜電解工程を含む、リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法に関する。
【0009】
前記リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法は、好ましくは、リチウムを含む固体を塩酸で溶解して酸溶解液を得る酸溶解工程、当該酸溶解液に水酸化リチウムを添加する中和工程、及び、当該中和工程で得られた酸溶解液から、リチウムを除く少なくとも1種の金属を溶媒抽出により分離し、当該溶媒抽出の残液として前記第1の塩化リチウム水溶液を得る溶媒抽出工程を更に含み、前記水酸化リチウム水溶液の一部を、当該中和工程、及び当該溶媒抽出工程からなる群から選択される少なくとも1つで使用される水酸化リチウムとして用い、前記第1の膜電解工程で発生する塩酸を当該酸溶解工程で用いる。
前記リチウム膜電解後の淡塩水の処理方法は、好ましくは、前記第2の塩化リチウム水溶液の一部と前記第1の塩化リチウム水溶液を混合して濃縮し第3の塩化リチウム水溶液を得る混合濃縮工程を更に含む。
前記第3の塩化リチウム水溶液は、好ましくは、イオン交換膜を用いて膜電解され、得られた塩素と水素とを反応させて生成する塩酸は前記酸溶解工程に用いられる。
前記第1の膜電解工程、及び前記第2の膜電解工程からなる群から選択される少なくとも1つに用いる電力は、好ましくは再生可能エネルギーによって得られた電力を含む。
前記再生可能エネルギーによって得られた電力は、好ましくは太陽光発電、風力発電、水力発明、及びバイオマス発電からなる群から選択される少なくとも1つによって得られた電力を含む。
好ましくは、前記第2の膜電解工程で塩素酸塩の一部は分解され、前記第2の膜電解工程に付された塩素酸塩を含有する塩化リチウム水溶液は前記第1の膜電解工程に戻される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法は、水酸化リチウムの品質悪化、及び設備の劣化が防止されるリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法を示す説明図。
図2】本発明のリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法の第1の膜電解工程に用いるイオン交換膜電解槽の構造の1実施態様を示す説明的断面図。
図3】本発明のリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法の第2の膜電解工程に用いるイオン交換膜電解槽の構造の1実施態様を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について更に詳細に説明する。
なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について更に詳しく説明する。
図1に示すように、実施形態のリチウム膜電解後の淡塩水の処理方法(図1)は、リチウム含有物1を出発物質としてよい。前記リチウム含有物1は活物質粉であってよい。
【0014】
前記活物質粉について説明する。廃リチウムイオン電池が電池製品としての寿命が消尽した使用済みのリチウムイオン電池、又は、製造工程で不良品等として廃棄されたリチウムイオン電池である場合、まず、放電処理を行う。放電処理は抵抗放電など、安全性の高い種々の方法が採用され得る。放電により残留している電荷を全て放電させ、次いで、該廃リチウムイオン電池の筐体に開口部を形成した後、例えば、100~800℃の範囲の温度で加熱処理(焙焼)した後、ないし加熱処理せずにハンマーミル、ジョークラッシャー等の粉砕機で粉砕し、前記廃リチウムイオン電池を構成する筐体、集電体等を篩分けにより除去(分級)することにより、前記活物質粉を得ることができる。あるいは、前記放電処理後の前記廃リチウムイオン電池を前記粉砕機で粉砕し、前記筐体、集電体等を篩分けにより除去した後、前記範囲の温度で加熱処理することにより、前記活物質粉を得るようにしてもよい。
【0015】
前記廃リチウムイオン電池が、製造工程において製品化に用いられた残余の正極材料等である場合、前記放電処理及び開口部の形成を行わず、前記範囲の温度で加熱処理した後、ないし加熱処理せずに前記粉砕機で粉砕し、集電体等を篩分けにより除去して前記活物質粉を得るようにしてもよい。さらに前記廃リチウムイオン電池を前記粉砕機で粉砕し、集電体等を篩分けにより除去した後に前記範囲の温度で加熱処理して、ないし加熱処理せずに活物質粉を得るようにしてもよい。
【0016】
さらに前記リチウム含有物1は、リチウムとアルミニウムを含むケイ酸塩鉱物の一種であるスポジュメンであってもよい。
【0017】
<酸溶解工程>
実施形態では、次に、STEP1で前記リチウム含有物1を塩酸に溶解して、少なくとも前記リチウム含有物1の酸溶解液を得る。前記リチウム含有物1は、前記リチウムの他に、鉄、アルミニウム、マンガン、コバルト、ニッケル等の有価金属を含んでいる場合がある。
【0018】
<中和工程>
実施形態では、前記酸溶解液は、次に、STEP2で水酸化リチウム(LiOH)が添加されることにより中和される。
【0019】
<抽出工程>
前記中和後の前記酸溶解液は、次に、STEP3で溶媒抽出に供せられる。前記溶媒抽出では、前記有価金属のうち、リチウムを除く、マンガン、コバルト、ニッケルが各別に溶媒抽出され、あるいは鉄、アルミニウムが分離されそれぞれの金属硫酸塩水溶液2として除去され、第1の塩化リチウム水溶液を得ることができる。
【0020】
前記抽出工程で使用される有機溶媒として、例えばリン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、及びビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸が挙げられる。前記有機溶媒は炭化水素、例えばケロシンで希釈されていてよい。
【0021】
前記鉄含有有機相、アルミニウム含有有機相、マンガン含有有機相、コバルト含有有機相、及びニッケル含有有機相のそれぞれに対し硫酸による逆抽出が実施され、金属硫酸塩(硫酸鉄、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸コバルト、及び硫酸ニッケル)水溶液2が回収される。
【0022】
本発明の別の実施形態では、前記リチウム含有物1は、塩湖、海水、及び汽水からなる群から選ばれる少なくとも1つ由来の鹹水、より好ましくは塩湖由来の鹹水であってよい。カルシウム、マグネシウム、及びホウ素の少なくとも1つが前記鹹水から除去されてよい。前記除去は、例えば特許第6122944号公報に示された方法で実施される。すなわち前記鹹水にアルカリ金属水酸化物及びその水溶液の少なくとも1つを混合し、マグネシウムを水酸化マグネシウムとして生成できる。この時、前記アルカリ金属水酸化物が混合された塩水のpHを8.5~10.5に維持させ、ホウ素(例えば、ホウ素イオン)を水酸化マグネシウムに吸着させてマグネシウムとホウ素を共沈させることができる。ホウ素が吸着して沈殿した水酸化マグネシウムと塩水を分離させるため、ろ過等の固液分離によりマグネシウムとホウ素が同時に回収され、ろ液が得られる。前記ろ液にアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩(例えば、NaOHまたは炭酸塩を単独または混合して)を混合し、前記ろ液のpHを12以上に維持させてカルシウムを沈殿させることができる。前記ろ液と混合される前記アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩の種類に応じて水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムが沈殿し、カルシウムが前記鹹水から除去され、第1の塩化リチウム水溶液を得ることができる。
前記アルカリ金属水酸化物のアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムの少なくとも1つを含む。前記アルカリ金属は、好ましくはリチウム、ナトリウム、及びカリウムの少なくとも1つを含み、より好ましくはリチウムである。
【0023】
<第1の膜電解工程>
前記2つの実施形態は、次に、STEP4でイオン交換膜を用いて、前記第1の塩化リチウム水溶液を膜電解する第1の膜電解工程を含む。STEP4の前記第1の膜電解工程は、例えば、図2に示す膜電解槽11を用いて行うことができる。
【0024】
膜電解槽11は、一方の内側面に陽極板12を備え、陽極板12と対向する内側面に陰極板13を備え、陽極板12は電源の陽極14に接続され、陰極板13は電源の陰極15に接続されている。また、膜電解槽11は、イオン交換膜16により、陽極板12を備える陽極室17と、陰極板13を備える陰極室18とに区画されている。
【0025】
膜電解槽11では、陽極室17に前記第1の塩化リチウム水溶液を供給して膜電解を行うと、塩化物イオンが陽極板12上で塩素ガス(Cl)を生成する一方、リチウムイオンはイオン交換膜16を介して陰極室18に移動する。
【0026】
陰極室18では水(HO)が水酸化物イオン(OH)と水素イオン(H)とに電離し、水素イオンが陰極板13上で水素ガス(H)を生成する一方、水酸化物イオンがリチウムと化合して水酸化リチウム水溶液3を生成する。
【0027】
前記第1の膜電解工程で用いる電力は、好ましくは再生可能エネルギーによって得られた電力を含み、より好ましくは太陽光発電、風力発電、水力発明、及びバイオマス発電からなる群から選択される少なくとも1つによって得られた電力を含む。
【0028】
前記実施形態では、前記第1の膜電解工程で生成した水素ガス(H)と塩素ガス(Cl)とを反応させることにより、塩酸4を得ることができ、塩酸4はSTEP1で前記固体1の溶解に用いることができる。
【0029】
<リチウムの回収>
前記第1の膜電解工程により得られた水酸化リチウム水溶液3中のリチウムを、STEP5で晶析により水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)として回収でき、STEP6で炭酸化することにより、炭酸リチウム(LiCO)としても回収できる。前記炭酸化は、水酸化リチウム水溶液3を、炭酸ガス(CO)と反応させることにより行うことができる。前記炭酸化工程で得られるスラリーをろ過等により固液分離して得られる塩化リチウム水溶液は、後述するSTEP7で濃縮されてよい。
【0030】
水酸化リチウム水溶液3をSTEP3で溶媒抽出に用いる場合、水酸化リチウム水溶液3は抽出溶媒に添加される。STEP3で溶媒抽出に用いられる抽出溶媒は陽イオン交換抽出剤であるので、継続して使用すると液性が酸性側に偏り抽出率が低下するが、水酸化リチウム水溶液3を添加することにより、抽出率の低下を抑制できる。
【0031】
また、水酸化リチウム水溶液3をSTEP3で溶媒抽出に用いる場合、水酸化リチウム水溶液3は、各別に行われるマンガン、コバルト、ニッケルの溶媒抽出の少なくとも1つの溶媒抽出に用いてよい。
【0032】
また、前記第1の膜電解工程では、前記第1の塩化リチウム水溶液が膜電解される結果、当該第1の塩化リチウム水溶液より希薄な第2の塩化リチウム水溶液が生成する。そこで、前記実施形態では、前記第2の塩化リチウム水溶液の一部と前記第1の塩化リチウム水溶液を混合してSTEP7で濃縮し、第3の塩化リチウム水溶液を得てよい。STEP7での濃縮は、例えば逆浸透膜(RO膜)及び蒸発濃縮からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いて行うことができる。
【0033】
<第2の膜電解工程>
前記第1の電解工程では、塩素酸塩が陰極室18から逆泳動してくる水酸化物イオンによって生成され、蓄積される。前記蓄積された塩素酸塩は、アルカリ金属水酸化物水溶液の膜電解におけるアルカリ金属水酸化物の品質悪化、及び設備の劣化原因となる。そこで、前記実施形態は、前記第1の膜電解工程で発生する塩素酸塩を含有する塩化リチウム水溶液を膜電解する第2の膜電解工程を含む。
【0034】
前記陽極室17中の、塩素酸塩を含む塩化リチウム水溶液の一部を第2の膜電解工程に付す。前記第2の膜電解工程は、例えば、図3に示す膜電解槽21を用いて行うことができる。
【0035】
膜電解槽21は、一方の内側面に陽極板22を備え、陽極板22と対向する内側面に陰極板23を備え、陽極板22は電源の陽極24に接続され、陰極板23は電源の陰極25に接続されている。また、膜電解槽21は、イオン交換膜26により、陽極板22を備える陽極室27と、陰極板23を備える陰極室28とに区画されている。
【0036】
膜電解槽21では、陽極室27に希硫酸を供給して膜電解を行うと、水(HO)が水酸化物イオン(OH)と水素イオン(H)とに電離し、陽極板22上で酸素ガス(O)を生成する一方、水素イオン(H)はイオン交換膜26を介して陰極室28に移動する、下記式(1)で示される反応が起きる。
3HO→1.5O+6H+6e (1)
【0037】
陰極室28では、前記塩素酸塩を含む塩化リチウム水溶液が供給されて、前記塩素酸塩と水が反応して、塩化リチウムと水酸化物イオン(OH)が生成する、下記式(2)で示される反応が起きる。
LiClO+3HO+6e→LiCl+6OH (2)
陽極室27から移動してきた水素イオン(H)は、生成した水酸化物イオン(OH)と中和される。
【0038】
前記第2の膜電解工程で用いる電力は、好ましくは再生可能エネルギーによって得られた電力を含み、より好ましくは太陽光発電、風力発電、水力発明、及びバイオマス発電からなる群から選択される少なくとも1つによって得られた電力を含む。
【0039】
前記第2の膜電解工程で塩素酸塩が分解され、その濃度が低減された、塩素酸塩を含む塩化リチウム水溶液は、前記第1の膜電解工程で使用される電解槽11の陽極室17に戻される。
【符号の説明】
【0040】
1・・・リチウムを含む物質、 2・・・金属硫酸塩水溶液、
3・・・水酸化リチウム水溶液、 3A・・・水酸化リチウム一水和物、 4・・・塩酸
4A・・・アルカリ金属水酸化水溶液、 5・・・塩酸、 6・・・炭酸リチウム、
11、21…電解槽、12、22…陽極板、 13、23…陰極板、
14、24…陽極、 15、25…陰極、 16、26…イオン交換膜、
17、27…陽極室、 18、28…陰極室。
図1
図2
図3