(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005719
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】スラグ分離方法、耐火物レンガのリサイクル方法、スラグ分離装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20250109BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20250109BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B09B3/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106020
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 達宏
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA19
4D004AA43
4D004CA02
4D004CA50
(57)【要約】
【課題】より効率よく、処理対象の耐火物レンガからスラグを分離可能とする。
【解決手段】表面にスラグが付着した耐火物レンガBrである処理対象の耐火物レンガBrから上記スラグを分離するスラグ分離方法であって、上記処理対象の耐火物レンガBrを複数の塊に分割し、上記分割した処理対象の耐火物レンガBrに対して落下衝撃による荷重を負荷することで、当該処理対象の耐火物レンガBrから上記スラグを分離する。スラグの分離は、処理対象の耐火物レンガBrを、直径Dに対し外周壁1Bの高さが低い回転円筒体からなる皿形容器1に収容し、上記皿形容器1を、鉛直軸から傾斜させた回転軸で回転させることで実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にスラグが付着した耐火物レンガである処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離するスラグ分離方法であって、
上記処理対象の耐火物レンガを複数の塊に分割し、
上記分割した処理対象の耐火物レンガに対して落下衝撃による荷重を負荷することで、当該処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離する、
スラグ分離方法。
【請求項2】
上記スラグの分離は、上記分割した処理対象の耐火物レンガを、直径に対し外周壁の高さが低い回転円筒体からなる皿形容器に収容し、上記皿形容器を、鉛直軸から傾斜させた軸を回転軸として回転させることで実行する、
請求項1に記載したスラグ分離方法。
【請求項3】
上記皿形容器は、直径が2000mm以上5000mm以下である、
請求項2に記載したスラグ分離方法。
【請求項4】
上記皿形容器は、容器内に、当該皿形容器の円周方向に交差する方向へ延在する仕切り板が、互いに円周方向に離隔して2カ所以上設置されている、
請求項2に記載したスラグ分離方法。
【請求項5】
上記仕切り板は、皿形容器の底面部から立設すると共に、上記延在する方向の一端部側を、皿形容器の外周壁に接続し、上記延在する方向の他端部側は、平面視で、上記底面部の中心から、上記皿形容器の直径の1/10以上1/4以下の距離だけ離隔している、
請求項4に記載したスラグ分離方法。
【請求項6】
上記回転軸の鉛直方向からの傾斜角度を、25度以上70度以下の範囲の角度とした、
請求項2に記載したスラグ分離方法。
【請求項7】
上記皿形容器に収容するレンガの粒径を20mm以上50mm以下の範囲とする、
請求項2に記載したスラグ分離方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のスラグ分離方法によって、表面にスラグが付着した耐火物レンガからスラグを分離して、分離後の耐火物レンガを再利用する、
耐火物レンガのリサイクル方法。
【請求項9】
表面にスラグが付着した耐火物レンガである処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離するために使用されるスラグ分離装置であって、
レンガを収容する、直径に対し外周壁の高さが低い回転円筒体からなる皿形容器と、
上記皿形容器を、鉛直軸から傾斜した軸を回転軸として回転させる回転機構と、
を備え、
上記皿形容器は、直径が2000mm以上5000mm以下の範囲で、
上記回転軸の鉛直方向からの傾斜角度を、25度以上70度以下の範囲の角度とした、
スラグ分離装置。
【請求項10】
上記皿形容器は、容器内に、当該皿形容器の円周方向に交差する方向へ延在する仕切り板が1又は2以上設置されている、
請求項9に記載したスラグ分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み耐火物レンガ等の処理対象の耐火物レンガの再利用等のために、処理対象の耐火物レンガに付着しているスラグをレンガから分離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製銑工程などを行う製鉄施設におけるリサイクル効率を高めるために、製銑プロセスで使用される耐火物レンガを再利用することが提案されている。
【0003】
耐火物レンガとは、トピードレンガや転炉レンガ等などとして使用される、1000℃を超えるような高温に耐えられる蓄熱性のあるレンガである。一般的に、耐火物レンガの稼働面(溶鋼やスラグと接触する面)側には、耐火物レンガ中の気孔を通して鉄やスラグが付着して、スラグ層が形成される。また、耐火物レンガのそれ以外の面にも部分的に、モルタルが付着している場合もある。
【0004】
耐火物レンガを再利用する場合、再利用するレンガにスラグ等が混入すると、耐火物レンガとしての耐用性が著しく低下して使えなくなる。このため、リサイクルするレンガから付着していたスラグ等を取り除く必要がある。
【0005】
現在は、手作業の打撃で、各耐火物レンガ一つ一つの表面に付着したスラグ等を剥離した後に、耐火物レンガ自体を破砕して、リサイクル用のレンガ材料としている。しかし、この方法は、手間が掛かる割には、耐火物レンガの一部しか再利用されていない。すなわち、従来の手作業でのケレン作業を行った場合には、作業の能率及びランニングコスト等の面で満足のいくものではなかった。
【0006】
このようなことから、耐火物レンガのリサイクルを効率的に実施するためには、耐火物レンガからの付着スラグの分離を自動化かつ大量に実施できるようにする必要がある。
これに対し、特許文献1に記載されるようなドラム式ケレン装置や、特許文献2に記載されるようなウォータージェットケレン装置のように、金属ワークの表面に付着したセメント、モルタル、塗料等を自動的にケレン(除去)できるようにする装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-131400号公報
【特許文献2】特開2001-9390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来技術には以下のような問題がある。
母材表面に付着したスラグ等だけをできるだけケレンすることが望ましい。しかし、耐火物レンガの硬度が約9.6MPaに対し、付着したスラグの硬度が約14.0MPaと、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低い。
そして、発明者は、特許文献1又は2に開示されたケレン装置を単純に使用すると、必要以上にケレンが発生しやすく、レンガの歩留まりが低下するおそれがあるとの知見を得た。すなわち、特許文献1又は2に開示されたケレン装置では、耐火物レンガを処理対象とした場合、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低いため、耐火物レンガを大きく削ってしまい、リサイクル率の歩留まりが低下する問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、より効率よく、処理対象の耐火物レンガからスラグを分離可能とすることを目的とている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、種々検討した結果、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低いことを考慮して、表面付着スラグがはがれやすい状態にしたうえで、瞬間的な力を加えることが考えた。そして、瞬間的な力を加えて、表面付着スラグをレンガから剥がして分離することで、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低くても、レンガのリサイクル率の歩留まりの低下を抑えつつ、効率良く付着スラグが分離することが可能になるとの知見を得た。
【0011】
そして、課題解決のために、本発明の一態様は、表面にスラグが付着した耐火物レンガである処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離するスラグ分離方法であって、上記処理対象の耐火物レンガを複数の塊に分割し、上記分割した処理対象の耐火物レンガに対して落下衝撃による荷重を負荷することで、当該処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離する。
【0012】
スラグの分離は、例えば、分割した処理対象の耐火物レンガを、直径に対し外周壁の高さが低い回転円筒体からなる皿形容器に収容し、上記皿形容器を、鉛直軸から傾斜させた回転軸で回転させることで実行する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、前処理として処理対象の耐火物レンガを複数の塊に分割することで、表面に付着したスラグがはがれやすい状態とする。その後、分割した処理対象の耐火物レンガに対し、落下による瞬間的な力を負荷することで、耐火物レンガから表面の付着スラグをレンガからはがして分離する。
【0014】
スラグの分離は、例えば、分割した耐火物レンガを収容した皿形容器の回転軸を傾けて回転することで、傾斜した皿形容器の底面部における上側部分から下側部分への落下による衝突を与える。これによって、耐火物レンガに瞬間的な力(同程度の大きさの荷重)を繰り返し加えて、耐火物レンガから表面の付着スラグをはがして分離する。なお、落下による衝突は、表面に付着したスラグがはがれやすい状態とする処理としても作用する。
落下衝撃による荷重は、皿型容器の直径で調整できるため、適度な衝撃荷重を安定且つ繰り返し与えることが出来る。したがって、レンガの破損を抑えるような衝撃荷重に簡易に調整できる。
【0015】
このように、本発明の一態様によれば、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低くても、より効率よく、処理対象の耐火物レンガからスラグを分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係る耐火物からのスラグ分離の処理フローを説明する図である。
【
図2】本発明に基づく実施形態に係る皿形容器を示す、回転軸方向からみた上面図である。回転軸方向からみたとは、平面視でと同義である。
【
図3】本発明に基づく実施形態に係るスラグ分離装置の例を示す模式的側面図である。
【
図4】仕切り板の個数と付着スラグ残留率との関係を示す図である。
【
図5】容器の傾斜角度と付着スラグ残留率との関係を示す図である。
【
図6】容器の傾斜角度とレンガの歩留まりとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について説明する。
以下の実施形態では、処理対象の耐火物レンガとして、トピードレンガや転炉レンガとして使用された耐火物レンガを想定して説明する。
【0018】
(構成)
本実施形態における、リサイクルのために、耐火物レンガに付着したスラグを分離する処理は、次の処理工程で行われる。その処理工程は、
図1に示すように、破砕工程10A、第1の篩工程10B、ケレン工程10C、及び第2の篩工程10Dを備える。
【0019】
<破砕工程10A>
破砕工程10Aでは、処理対象の耐火物レンガを、付着スラグが分離(処理)しやすい大きさの塊に分割する処理を行う。本例の破砕工程10Aでは、処理対象の耐火物レンガの分割位置に衝撃を与えて、当該処理対象の耐火物レンガを複数の塊に分離する処理を行う。
【0020】
分離後の各塊の破砕粒度は、例えば粒径が20mm以上50mm以下の大きさとする。ここで、本実施形態での粒径とは、円相当径とする。例えば、上面視の面積を円換算した場合に、直径Dが20mm以上50mm以下に収まるように調整して、処理対象の耐火物レンガを破砕し分割する。
【0021】
破砕処理は、例えば、ジョークラッシャーなどの破砕機を用いて分割する。ジョークラッシャーを用いる場合には、両刃の開度を設定することで粒度を調整する。
【0022】
<第1の篩工程10B>
第1の篩工程10Bでは、破砕後の耐火物レンガに対し、粒度調整のための篩処理を行う。第1の篩処理では、例えば目開き20mmの篩を用い、破砕した耐火物レンガを篩に投入して、篩上の耐火物レンガを回収する。なお、本例では、篩目の1例として20mmとしているが、異なる大きさの篩目でも良い。また、数種類の篩目の篩を用いて、同時に篩処理など実施してもよい。
【0023】
本例では、第1の篩工程10Bによって、処理対象の耐火物レンガからなる粒度20mm以上の塊が、次のケレン工程10Cに送られることになる。
以上の処理によって、ケレン対象となるレンガの粒径(粒度)を20mm~50mmと規定している。
【0024】
ここで、ケレン対象となるレンガの粒径が20mm以下の粒径の場合、レンガの粉比率が増加してしまい、リサイクル率の歩留まりが低下するおそれがある。
【0025】
一方、レンガの粒径が大きすぎると、レンガからスラグが剥がれにくくなり、ケレン後のスラグ残留率が増加するおそれがある。この観点から、ケレン対象の耐火物レンガの粒径の上限を50mmに設定した。ここで、ケレン後のスラグ残留率が多いほど、リサイクル時にスラグ成分が不純物として混入してしまう。
【0026】
<ケレン工程10C>
ケレン工程10Cでは、耐火物レンガの表面に付着したスラグを除去する処理を行う。
ケレン工程10Cでは、破砕した耐火物レンガに対し、繰り返し同程度の落下衝撃を与えることで、耐火物レンガの表面に付着したスラグ分をレンガから分離する。
【0027】
本例では、耐火物レンガの表面に付着したスラグ分をレンガから分離するスラグ分離装置として、
図2及び
図3に示すような、パン皿型の皿形容器1を回転体とした回転ドラム装置を用いた。
本実施形態のスラグ分離装置は、皿形容器1と、皿形容器1を軸回転させる回転機構2とを備える。
【0028】
[皿形容器1]
皿形容器1は、
図2に示すような、ケレン対象の耐火物レンガBrを収容する容器である。皿形容器1は、直径Dに対し外周壁1Bの高さが低い回転円筒体からなる。すなわち、皿形容器1は、円形の底面部1Aと、その底面部1Aの外周に沿って立ち上がっている環状の外周壁1Bとを備える。
【0029】
直径Dに対し外周壁1Bの高さが低い回転円筒体とは、外周壁1Bに対し、底面の面積(直径D)が大きい状態を指す。この皿形容器1は、
図3に示すように、中心Pに設定さえる軸(回転軸)が、鉛直方向に対し所定角度θだけ傾斜した状態で使用される。この傾斜によって底面部1Aが傾斜する。このため、底面部1Aにおける、相対的に上側に移動した耐火物レンガBrが底面部1Aに沿って下方に落下させることができる。そして、その落下による衝撃力を稼ぐために、底面の面積(直径D)が大きい回転円筒体を採用する。
【0030】
本実施形態では、皿形容器1の直径Dを2000mm以上5000mm以下の範囲とした。なお、本実施形態では、この直径Dは、
図2に示すように、皿形容器1内、つまり底面部1Aでの直径Dとする。また、本例では、外周壁1Bの高さHは、
図3のように、500mmとした。
【0031】
ここで、直径Dが2000mm未満の場合は、皿形容器1内の耐火物レンガBrに負荷する落下衝撃が充分に得られず、レンガからの不純物の剥離が充分得られないおそれがある。
また、直径Dが5000mm越えの場合は、落下高さが高すぎてレンガ表面だけでなく、レンガそのものが落下衝撃で破壊され、回収物の純度が低下することが懸念される。皿形容器1の直径Dは、上述のような考えから、皿形容器1に投入されるときの耐火物レンガBrに対するスラグの付着度合いと、対象とする耐火物レンガBrの強度に応じて設定すれば良い。例えば、レンガの落下実験などによって、最適な皿形容器1の直径Dの範囲を求めて使用すればよい。
【0032】
また、皿形容器1の回転軸を鉛直方向から傾斜、つまり底面部1Aを水平に対し上下に傾斜させている。これによって、皿形容器1の回転に伴い相対的に上側に移動した耐火物レンガBrを、下方に落下させることができる。
【0033】
皿形容器1の傾斜角度θ、つまり底面部1Aの傾斜角度θは、皿形容器1の回転に伴い相対的に上側に移動した耐火物レンガBrが、底面部1Aの上面に沿って落下可能な角度に設定する。傾斜角度θは、例えば、水平位置を0度とした場合、25度以上70度以下の範囲が好ましい。後述のように、この傾斜角度θとすることで、上側に移動した耐火物レンガBrが下方に落下可能となると共に、確実にスラグの残留率を低減させることができる。
【0034】
[仕切り板3]
また、本実施形態では、
図2及ぶ
図3に示すように、皿形容器1内に、2枚以上の仕切り板3を設けた。
図2及ぶ
図3では、仕切り板3を4枚(4カ所)に設けた場合を例示している。
【0035】
各仕切り板3は、皿形容器1の円周方向(回転方向)に交差する方向に延在するように配置され、仕切り板3同士を、皿形容器1の円周方向に沿って離隔して設置した。
【0036】
本例では、各仕切り板3を、ドラム壁面から容器1の中心方向に向けて延在するように、つまり径方向に延在させて配置した。仕切り板3の向きは、容器1の径方向から円周方向に傾けた方向に延在していてもよい。
また、仕切り板3同士の間隔を等間隔に配置した。仕切り板3が2枚の場合は、180度間隔で配置されるようにした。
仕切り板3の設置箇所は、2~8箇所が好適である。
【0037】
本例では、仕切り板3の高さは、400mmとした。なお、仕切り板3の高さH1としては、投入したレンガが容器内から外部へ飛び出さないようにするために、ドラム高さよりも低めが望ましい。ただし、ある程度のレンガを所定の高さまで持ち上げるために、300mm以上の高さで有ることが好ましい。
【0038】
仕切り板3によって、容器の回転に伴い円周方向に移動するレンガが、
図2に示すように、仕切り板3における回転方向上流側の面に集められる。そして、仕切り板3は、容器の回転に伴い、仕切り板3前にある程度のレンガが底面部1Aの上側部分まで持ち上げる。そして、上側に移動したレンガの塊の集団は、底面部1Aの上面にそって、下方に落下しやすくなる。このため、仕切り板3は、少なくとも2カ所に設置することが好ましい。
【0039】
本例では、仕切り板3は、皿形容器1の底面から立設し、延在方向の一端部側を、皿形容器1の外周壁1Bに接続する。また、仕切り板3の延在方向の他端位置は、平面視で、上記底面の中心Pから所定距離Lだけ離隔している。離隔する距離Lは、例えば、皿形容器の直径Dの1/10以上1/4以下の距離だけ離隔している。すなわち、離隔する距離Lは、例えば、半径(D/2)の1/5~1/2とする。
【0040】
これによって、仕切り板3によって上側に持ち上げられたレンガBrの集合に対する落下距離を稼ぎ、且つ各レンガBrに与える落下による衝撃力のバラツキを抑える。
例えば、仕切り板3の延在方向の他端位置を、底板部1Aの中心Pの位置近傍まで延ばした場合を考える。このとき、仕切り板3で上側に持ち上げられるレンガの集合のうち、外周壁1B側に位置したレンガに対する落下衝撃に比べ、回転中心P位置側に位置したレンガに対する落下衝撃が小さくなる。これによって、落下衝撃にバラツキが発生する。これに対し、仕切り板3の外周壁1Bからの延在方向の幅を短くするほど、衝撃力を稼ぎつつ落下衝撃のバラツキが小さくなる。ただし、仕切り板3の外周壁1Bからの幅が短いほど、仕切り板3によって上側に持ち上げられるレンガBrの集合が小さくなり、分離の効率が低下する。この観点から、離隔する距離Lは、例えば、皿形容器の直径Dの1/10以上1/4以下の距離だけ離隔した。
【0041】
[回転機構2]
回転機構2は、例えば、回転駆動装置としてモータを備え、皿形容器1の回転軸を鉛直軸から傾斜した傾斜軸として、皿形容器1を軸回転させる装置である。なお、回転軸は、上述のようなレンガの持ち上げと落下が可能であれば、皿形容器1の中心Pから偏心していてもよい。
【0042】
回転速度は、例えば、2rpm設定する。回転速度は、特に限定は無いが、例えば1rpm~10rpmとする。回転速度が遅すぎる場合には、繰り返し与える落下衝撃の時間間隔が大きくなり、分離処理に時間が掛かり過ぎる。一方、余り回転速度が高すぎると、レンガに係る遠心力が大きくなって、レンガが落下しづらくなるおそれがある。すなわち、1rpm以下の場合、処理時間が掛かり過ぎてしまい非効率である。一方、10rpmを超える場合、レンガに遠心力が掛かり過ぎてしまい、回転中に容器外部へのこぼれが顕著に発生してしまい、歩留まりが低下するおそれがある。この観点から、回転速度は、例えば1rpm~10rpmの範囲とする。
【0043】
[第2の篩工程10D]
第2の篩工程10Dでは、ケレン処理後、回転容器内の耐火物レンガBrとスラグ分を回収して、篩処理を行い、篩上の耐火物レンガBrを回収する。すなわち、第2の篩工程10Dケレン後のレンガとスラグを分別する処理を行う。第2の篩処理では、例えば目開き20mmの篩を用いる。
そして、第2の篩工程10Dで分離した耐火物レンガBrをリサイクル原料とする。
【0044】
(動作その他)
本実施形態では、処理対象の耐火物レンガBrを、破砕工程10Aで処理しやすい大きさに破砕する。
そして、破砕して分割した各耐火物レンガBrに対し、繰り返し同程度の落下衝撃を付与することで、表面のスラグが削れて耐火物表面に付着したスラグ分が除去される。すなわと、処理対象の耐火物レンガBrに付着していたスラグの分離が出来る。
【0045】
本例では、回転軸を傾斜させた皿形容器1を回転円筒体として使用することで、レンガに対し、安定し且つ適度な落下衝撃を繰り返し付与することができる。
【0046】
以上によって、母材であるレンガの方が付着スラグよりも硬度が低くても、より効率よく、処理対象の耐火物レンガBrからスラグを分離することが可能となる。そして、本実施形態では、耐火物レンガBrの再利用工程で発生する耐火物レンガBr表面のスラグ除去に関して効率的な分離方法を提案するとともに効率的な耐火物のリサイクル処理方法を提供するが可能となる。
【0047】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)表面にスラグが付着した耐火物レンガである処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離するスラグ分離方法であって、
上記処理対象の耐火物レンガを複数の塊に分割し、
上記分割した処理対象の耐火物レンガに対して落下衝撃による荷重を負荷することで、当該処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離する、
スラグ分離方法。
(2)上記スラグの分離は、上記分割した処理対象の耐火物レンガを、直径に対し外周壁の高さが低い回転円筒体からなる皿形容器に収容し、上記皿形容器を、鉛直軸から傾斜させた軸を回転軸として回転させることで実行する。
(3)上記皿形容器は、直径が2000mm以上5000mm以下である。
(4)上記皿形容器は、容器内に、当該皿形容器の円周方向に交差する方向へ延在する仕切り板が、互いに円周方向に離隔して2カ所以上設置されている。
(5)上記仕切り板は、皿形容器の底面部から立設すると共に、上記延在する方向の一端部側を、皿形容器の外周壁に接続し、上記延在する方向の他端部側は、平面視で、上記底面部の中心から、上記皿形容器の直径の1/10以上1/4以下の距離だけ離隔している。
(6)上記回転軸の鉛直方向からの傾斜角度を、25度以上70度以下の範囲の角度とした。
(7)上記皿形容器に収容するレンガの粒径を20mm以上50mm以下の範囲とする。
(8)本開示のスラグ分離方法によって、表面にスラグが付着した耐火物レンガからスラグを分離して、分離後の耐火物レンガを再利用する、
耐火物レンガのリサイクル方法。
(9)表面にスラグが付着した耐火物レンガである処理対象の耐火物レンガから上記スラグを分離するために使用されるスラグ分離装置であって、
レンガを収容する、直径に対し外周壁の高さが低い回転円筒体からなる皿形容器と、
上記皿形容器を、鉛直軸から傾斜した軸を回転軸として回転させる回転機構と、
を備え、
上記皿形容器は、直径が2000mm以上5000mm以下の範囲で、
上記回転軸の鉛直方向からの傾斜角度を、25度以上70度以下の範囲の角度とした、
スラグ分離装置。
(10)上記皿形容器は、容器内に、当該皿形容器の円周方向に交差する方向へ延在する仕切り板が1又は2以上設置されている。
【実施例0048】
本実施形態に基づくスラグ分離装置について実験を行った。
(実施例1)
実施例1では、皿形容器1として、直径D3000mmのものを用いた。また、皿形容器1の回転数を2rpmにて回転させた。また、本例では、皿形容器1の傾斜角度θを35度に設定した。なお、処理時間を3分に設定した。
【0049】
上記の条件に対し、仕切り板3の個数と付着スラグ残留率との関係について実験を行ったところ、
図4に示す結果を得た。なお、各仕切り板3間の間隔は等間隔となるように、仕切り板3の設置箇所を決めた。また、仕切り板3の幅(容器の径方向への延在長さ)を、皿形容器1の直径Dの1/4とした。
【0050】
図4から分かるように、仕切り板3の個数は、2~8個の範囲が好ましいことが分かった。
ここで、「付着スラグ残留率」とは、スラグ分離装置で分離し、第2の篩工程10Dで回収したレンガに付着していたスラグの処理前に対する、スラグ残存の割合である。
【0051】
(実施例2)
実施例2では、傾斜角度θの影響について調査した。
実施例2では、仕切り板3を4枚とし、傾斜角を変更した以外は、実施例1と同様な条件で実験した。
【0052】
求めた皿形容器1の傾斜角度θと付着スラグ残留率との関係を
図5に示す。
図5に示すように、傾斜角度θとしては、水平位置を0度とすると、25以上とすることにより、スラグ残留率が低減することが明らかとなった。
【0053】
また、同じ条件にて、皿形容器1の傾斜角度θとレンガの歩留まりとの関係について調査した。その結果を、
図6に示す。
図6から分かるように、傾斜角度θが70度を超えると、歩留まりが急激に低下した。このため、70度超えた傾斜角度θでの使用は望ましくないことが分かった。また、角度25度未満で歩留まりは高くなるが、
図5に示すように、スラグの残留率が高い状態となる。したがって、純度の高いレンガを確保するためには、設置角度25度~70度の範囲が適正と言える。
【0054】
(実施例3)
実施例3では、容器として直径D3000mm、高さ500mmの皿形容器1を用いてケレン処理を行った。容器の回転速度は2rpmとし、3分間だけ処理を行った。
【0055】
そして、表1に示すように条件を変更して、耐火物レンガBrを処理した場合のケレン処理後のスラグ残留率、処理量を調査した。その結果を、表1に示す。
ここで、比較例として本発明以外の方法におけるスラグ残留率、処理量、及びケレン処理を実施しない場合のスラグ残留率を示す。なお、比較例で用いたドラム回転型のケレン方式では、直径D500mm、長さ3000mmの円筒状のドラム回転型装置を用い、回転速度20rpmでケレン処理をした際の結果を記載している。
【0056】
【0057】
表1に示すように、本発明例に基づき処理を行うことにより、スラグ残留率を大幅に低減可能であると共に、処理量についても高能率での処理が可能であることが分かった。