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特開2025-5724皮膚化粧料用結晶析出抑制剤及び皮膚化粧料用黄変抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005724
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】皮膚化粧料用結晶析出抑制剤及び皮膚化粧料用黄変抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20250109BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20250109BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/49
A61K8/42
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106026
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 克哉
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB282
4C083AB352
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD262
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD432
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD622
4C083AD642
4C083AD662
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD12
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ニコチン酸アミドに起因する結晶析出を抑制する成分、及びニコチン酸アミドに起因する紫外線やLEDなどの光照射によって起こる化粧料の黄変を抑制する成分を提供することを課題とする。
【解決手段】下記(B)及び(C)を有効成分とする(A)由来の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤、又は下記(B)及び(C)を有効成分とする(A)由来の皮膚化粧料用黄変抑制剤により上記課題を解決する。好ましくは、(A)~(C)の配合比率が、(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ((B)+(C))/(A)が0.1以上である。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤。(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
【請求項2】
前記(A)~(C)の配合比率が、
(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ(((B)+(C)/(A))が0.1以上である請求項1に記載の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤。
【請求項3】
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の光照射によって起こる皮膚化粧料用黄変抑制剤。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
【請求項4】
前記(A)~(C)の配合比率が、
(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ(((B)+(C)/(A))が0.1以上である請求項3に記載の皮膚化粧料用黄変抑制剤。
【請求項5】
下記(A)~(C)の含有する皮膚化粧料。
(A)ニコチン酸アミド 1.0質量%以上
(B)パントテニルアルコール 0.01質量%以上
(C)フェノキシエタノール 0.05質量%以上
【請求項6】
下記(A)に下記(B)及び(C)を配合することを特徴とする前記(A)由来の結晶析出抑制方法。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
【請求項7】
下記(A)に下記(B)及び(C)を配合することを特徴とする前記(A)由来の光照射によって起こる黄変の抑制方法。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はし、ニコチン酸アミドにパントテニルアルコール及びフェノキシエタノールを組み合わせることで、ニコチン酸アミドに由来する結晶析出や経時での黄変劣化を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニコチン酸アミドは様々な美容効果を有する物質であり、スキンケア用途の化粧品または医薬部外品に多く用いられている。また、その美容効果を十分に発揮するため、ニコチン酸アミドを化粧料中に高濃度で配合することで効果を高める手法が検討されている。ニコチン酸アミドは水溶性の物質であり、また比較的安定な化合物であるが、化粧料中に高濃度で配合をすることで容器などに付着した化粧料が経時で乾燥して水分が蒸発することで、ニコチン酸アミドに起因する白色の結晶析出を生じ、化粧料の品質の低下だけでなく、ジャリジャリとした触覚の不快感や外観上好ましくない状況になることが近年明らかとなってきた。また、ニコチン酸アミドを化粧料中に高濃度で配合していると、化粧料の保管条件によっては、温度や光などによる劣化や長期保管による影響などに起因して、化粧料全体が黄変したり変臭したりすることが明らかとなってきた。
【0003】
そのような背景から、ニコチン酸アミドの結晶の析出抑制をするためにいくつかの検討がなされている。例えばニコチン酸アミドとトラネキサム酸と組み合わせ、さらにD-パントテニルアルコールと多価アルコールとを組み合わせた例(例えば特許文献1を参照)や、ニコチン酸アミドとトラネキサム酸とを組み合わせ、さらにムコ多糖と両親媒性ポリマーとを組み合わせた例(例えば特許文献2を参照)、ニコチン酸アミドとトラネキサム酸を組み合わせ、さらにピロリドンカルボン酸とを組み合わせた例(例えば特許文献3を参照)等が知られている。
【0004】
また、ニコチン酸アミドを含有する化粧料は、経時的に熱や光照射によって化粧料が黄変することに知られている。それらを抑制する手法として、例えばニコチン酸アミドと糖類との併用による変色を、カルボニル基を有する化合物及びクロルフェネシンとを組み合わせた例(例えば特許文献4を参照)が報告されている。
【0005】
上記従来技術の化粧料はニコチン酸アミドを含む化粧料について結晶析出の抑制作用について言及されているが、一般的にニコチン酸アミドよりもさらに結晶の析出性が高いトラネキサム酸と併用し、その強い結晶析出性を抑えるために過剰な結晶析出抑制作用を与えるよう検討されていた。また、結晶の析出以外の経時での化粧料の黄変変化については十分に検討されていなかった。このような背景から、化粧料中にニコチン酸アミドを高濃度配合しながらも、結晶析出や経時での黄変劣化が生じないようにする手法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2021-162074号公報
【特許文献2】特開2021-161111号公報
【特許文献3】特開2021-161112号公報
【特許文献4】WO2023-085118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ニコチン酸アミドに起因する結晶析出を抑制する成分、及びニコチン酸アミドに起因する紫外線やLEDなどの光照射によって起こる化粧料の黄変を抑制する成分を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成するためにさらに鋭意検討をした結果、ニコチン酸アミドにD-パントテニルアルコールおよびフェノキシエタノールを配合することで、結晶析出の抑制作用及び光照射によって起きる黄変抑制作用が得られることを見出した。
【0009】
そして、本発明の結晶析出の抑制作用を皮膚化粧料に用いることで、肌表面での結晶析出も抑えられ、それによって塗布後の肌の手触りのきしみ感も軽減することができるという副次的作用も見出した。また、本発明の黄変抑制作用を皮膚化粧料に用いることで、経時での劣化、特に紫外線やLEDなどの光照射によって起こる化粧料の黄変を抑制するという副次的な作用を見出し、本発明を完成した。
【0010】
本願発明は以下のとおりである。
[1]
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤である。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
[2]
前記(A)~(C)の配合比率が、(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ(((B)+(C)/(A))が0.1以上である[1]に記載の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤である。
【0011】
[3]
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の光照射によって起こる皮膚化粧料用黄変抑制剤である。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
[4]
前記(A)~(C)の配合比率が、(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ(((B)+(C)/(A))が0.1以上である[3]に記載の皮膚化粧料用黄変抑制剤である。
【0012】
[5]
下記(A)~(C)の含有する皮膚化粧料である。
(A)ニコチン酸アミド 1.0質量%以上
(B)パントテニルアルコール 0.01質量%以上
(C)フェノキシエタノール 0.05質量%以上
【0013】
[6]
下記(A)に下記(B)及び(C)を配合することを特徴とする前記(A)由来の結晶析出抑制方法である。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール%
[7]
下記(A)に下記(B)及び(C)を配合することを特徴とする前記(A)由来の光照射によって起こる黄変の抑制方法である。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール%
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、ニコチン酸アミドに起因する、結晶析出を抑制する成分及び光照射に対しての製剤の黄変を抑制する成分を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本明細書において、「皮膚化粧料用結晶析出抑制剤」とは、ニコチン酸アミドもしくはその誘導体またはその塩、あるいは化粧料中に含まれる別の成分との複合体に由来する結晶析出を抑制するための剤を意味する。また、「皮膚化粧料用黄変抑制剤」とは、化粧料全体が高温条件や紫外線、蛍光灯、LEDライトなどの照射条件にて、経時で変性し、着色して全体に黄色~褐色に変化する現象を防ぐための剤を意味する。
【0017】
<(A)ニコチン酸アミド>
(A)成分はニコチン酸アミドである。ニコチン酸アミドはニコチンアミド及びナイアシンアミドとも呼ばれる、ナイアシン(ビタミンB3)のアミド体であり、分子量122.12、CAS登録番号98-92-0の水溶性のビタミンである。ニコチン酸アミドは保湿、抗炎症、美白などの美容成分として化粧料に一般的に用いられる成分であり、市販の化粧品原料として入手することができる。
【0018】
(A)成分は、化粧料中に1質量%以上含まれるのが好ましい。1質量%以上である場合、充分な美容効果、特にしわ改善効果を発揮することが近年知られている。一方、1質量%以上となると、ニコチン酸アミドの析出が顕著となる傾向がある。
【0019】
<(B)パントテニルアルコール>
(B)成分はパントテニルアルコールである。パントテニルアルコールはパンテノールとも呼ばれる、パントテン酸(ビタミンB5)のカルボキシル基部位がヒドロキシル基に還元された類縁体であり、分子量205.25、CAS登録番号81-13-0の水溶性のビタミンである。パントテニルアルコールは保湿、抗炎症、バリア機能改善の美容成分として化粧料に一般的に用いられる成分であり、市販の化粧品原料として入手することができる。パントテニルアルコールは不斉炭素原子を有しているが、本発明で用いるものはD-パンテノールであることが好ましい。
【0020】
(B)成分は、化粧料中に0.01質量%以上含まれるのが好ましい。0.01質量%以上である場合、充分な美容効果を有することができ、また本発明の課題であったニコチン酸アミドの析出抑制作用及び黄変抑制作用を発揮することができる。また、べたつきのなさの観点からは2.0質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
<(C)フェノキシエタノール>
(C)成分はフェノキシエタノールである。フェノキシエタノールはフェニルセロソルブとも呼ばれる、フェノール1分子とエチレングリコール1分子がエーテル結合をした、分子量138.16、CAS登録番号122-99-6の水溶性の化合物である。フェノキシエタノールは防腐・静菌剤として化粧料に一般的に用いられる成分であり、市販の化
粧品原料として入手することができる。
【0022】
(C)成分は、化粧料中に0.05質量%以上含まれるのが好ましい。0.05質量%以上である場合、充分な結晶析出抑制効果及び黄変抑制作用を発揮することができる。また、べたつきのなさの観点からは1.0質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明では、(A)成分に、(B)成分及び(C)成分を組み合わせることが、結晶析出抑制及び黄変抑制に必要である。この作用については、解明できていないが、次のように推測している。
【0024】
まず、結晶析出抑制は、ニコチン酸アミドにパントテニルアルコールやフェノキシエタノールを配合することで、容器などに付着した化粧料の経時での乾燥速度が穏やかになり、かつ乾燥後に残存する水分の量を高める作用がはたらき、ニコチン酸アミドの結晶析出が抑制されるものと推測している。あるいは、ニコチン酸アミドにパントテニルアルコールやフェノキシエタノールを配合することで、乾燥して濃縮されていく過程でニコチン酸アミド分子同士が規則正しく配列し、結晶の核を形成するのを抑制する作用がはたらき、ニコチン酸アミドの結晶析出が抑制されるものと推測している。
【0025】
一方、光照射による黄変抑制は、ニコチン酸アミドにパントテニルアルコールやフェノキシエタノールを配合することで化粧料中でのニコチン酸アミドと他成分とが光による酸化・ラジカル化などの変性を受けるのを防ぐ作用がはたらき、ニコチン酸アミド自身、さらにはニコチン酸アミドが配合される化粧料の黄変が抑制されるものと推測している。
【0026】
本発明において、(A)~(C)の配合比率は、(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ(((B)+(C)/(A))が0.1以上であることが望ましい。この配合比率であれば、十分なニコチン酸アミドの結晶析出抑制作用、光照射による黄変抑制作用及び塗布後の肌の手触りのきしみ感の低減作用が得られる。さらに好ましくは、(((B)+(C)/(A))が1.5以下であれば、十分な化粧料のべたつきのなさ、化粧料の経時安定性が得られる。
【0027】
<その他の成分>
本発明の皮膚化粧料は上述した成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、油剤、エモリエント剤、高分子化合物、増粘剤、多糖類、粉体(色素、樹脂、顔料)、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、ミネラル塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、パール化剤、中和剤、pH調整剤、植物エキス、酵素、ビタミン類、アミノ酸等の成分を適宜配合することができる。
【0028】
また、本発明の皮膚化粧料には、本発明の目的を損なわない範囲で、生理活性成分を適宜配合することができる。生理活性物質とは、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質であり、例えば、美白剤、抗炎症剤、老化防止剤、紫外線防御剤、収斂剤、抗酸化剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤等が挙げられる。
【0029】
<皮膚化粧料>
本発明の皮膚化粧料は、常法に従って製造することができる。また、本発明の皮膚化粧料の一例としては、ローション、乳液、クリーム、美容液、ジェル、シートマスク、メイク、ボデイローション、ボディジェル、ボディクリーム、洗顔せっけん、洗顔フォーム、ボディソープ、クレンジング剤、化粧下地等が挙げられる。剤形も目的に応じて任意に選択することができる。すなわち、液状、クリーム状、ジェル状、乳液状、シート状、ステ
ィック状、エアゾール状等のものが挙げられる。本発明の皮膚化粧料は、一般の皮膚化粧料に限定されるものではなく、医薬部外品、指定医薬部外品、外用医薬品等を包含するものである。
【実施例0030】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これに限定されるものではない。実施例に先立ち、各実施例で採用した試験法、評価法を説明する。
【0031】
1.結晶の析出性試験
<評価方法>
本発明の皮膚化粧料を黒色のプラスチック板の上に2滴(約0.1g)滴下し、25℃・湿度60%の条件で12時間静置した。その後プラスチック板状に残存している乾燥した皮膚化粧料について、ボランティア3名により目視および指で塗擦することで、結晶の析出性を評価した。結晶の析出性の評点は、下記の「目視評価」の項目と「手触り評価」の項目それぞれについて評価した評点を基に、2つの点数の合計に基づき点数を付け、3名の平均点を用いて以下の通りに分類した。
【0032】
<目視評価についての評点の内容>
3点…まったく白い結晶析出が見られない
2点…わずかに白くなっているが、結晶は視認できない
1点…やや粉を吹いたように白くなっている
0点…白あるいは透明の結晶性のものが視認できる
<手触りについての評点の内容>
3点…まったく固体状の手触りを感じない、なめらかである
2点…わずかにさらさらとしている
1点…小さな固形の結晶をやや感じるが、固さは感じない
0点…ジャリジャリとした固い固体を感じる
<固い結晶の析出性の評価基準>
◎:3名の平均点が5点以上であった
○:3名の平均点が3.5点以上5点未満であった
△:3名の平均点が2点以上3.5点未満であった
×:3名の平均点が2点未満であった
【0033】
2.光照射による黄変試験
<評価方法>
本発明の皮膚化粧料50gをガラス容器に入れ、ウェザーメーターを用いてキセノンランプ光源を約1週間、合計照射量が30MJとなるように照射した。その後目視評価にて取り出した皮膚化粧料の外観について試験前の皮膚化粧料の外観と比較を行い、下記の評点にて評価した。
<経時での黄変の評価基準>
◎:まったく黄変しておらず、試験前の皮膚化粧料の外観と差を感じない
○:試験前の皮膚化粧料と比較をするとわずかに黄変しているよう感じるが、ほぼ黄変していない
△:試験前と比較しなくても、変化に気づく程度にやや黄変している
×:はっきりと黄変しているとわかる
【0034】
3.塗布時のきしみ感試験
<評価方法>
専門パネル5名について、手の甲に本発明の皮膚化粧料を0.1mL塗布し、なじんだと感じてからの肌表面のきしみ感について下記の評点方法にて評価を実施した。ここで、
本発明におけるきしみ感とは、肌上を水平になでた際に、粉が乗っているようなキュッとしたひっかかりを感じることを示す。試験結果は、5名の平均点を用いて、以下の通りに分類した。
【0035】
<きしみ感のなさの官能評価についての評点の内容>
5点…きしみ感がない
4点…ほとんどきしみ感がない
3点…あまりきしみ感がない
2点…ややきしみ感がある
1点…きしみ感がある
<きしみ感の無さ評価基準>
◎:5名の平均点が4点より高かった
○:5名の平均点が3.5点より高く以上4点以下であった
△:5名の平均点が2点より高く3.5点以下であった
×:5名の平均点が2点以下であった
【0036】
4.塗布時のべたつき試験
<評価方法>
専門パネル5名について、手の甲に本発明の皮膚化粧料を0.1mL塗布し、なじんだと感じてからの肌のべたつきについて下記の評点方法にて評価を実施した。ここで、本発明におけるべたつきとは、もう片方の手で手の甲の肌に垂直に触れた際に、粘着性の物質が乗っているようなべたっと吸い付いてくる感じがあることを示す。試験結果は、5名の平均点を用いて、以下の通りに分類した。
【0037】
<べたつきのなさの官能評価についての評点の内容>
5点…べたつきがない
4点…ほとんどべたつきがない
3点…あまりべたつきがない
2点…ややべたつきがある
1点…べたつきがある
<べたつきの無さ評価基準>
◎:5名の平均点が4点以上であった
○:5名の平均点が3点以上4点未満であった
△:5名の平均点が2点以上3点未満であった
×:5名の平均点が2点未満であった
【0038】
<実施例及び比較例>
表1及び2に示す実施例1~16および比較例1~6の各処方における化粧料を常法により調整し、各試験法により評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1、2から明らかなように、本発明の成分を用いた実施例の化粧料はいずれも優れた性能を有していた。一方、必須成分のいずれかを欠いた比較例では、結晶の析出性、経時での黄変のなさ、きしみ感のなさ、べたつきのなさのいずれかの項目で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【0042】
以下、本発明の化粧料のその他の処方例を実施例として挙げる。なお、これらの実施例の化粧料についても、上記の固い結晶の析出性、顕微鏡による結晶の状態確認、経時での黄変、ぬるつきのなさについて検討したところ、いずれにおいても優れた特性を有しており良好であった。
【0043】
実施例17(化粧水) (質量%)
(1)ニコチン酸アミド 6.0%
(2)パントテニルアルコール 0.3%
(3)フェノキシエタノール 0.4%
(4)ヒアルロン酸ナトリウム 0.01% (5)加水分解コラーゲン 0.01%
(6)パルミチン酸レチノール 0.01%
(7)ジプロピレングリコール 5.5%
(8)グリセリン 4.0%
(9)1,3-ブチレングリコール 1.5% (10)プロパンジオール 1.0%
(11)クエン酸 0.05%
(12)水酸化カリウム 0.005%(13)ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.1% (14)モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.1%
(15)エデト酸二ナトリウム 0.005%(16)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.001%(17)ポリグリセリン-6 0.3%
(18)メチルグルセス-20 0.2%
(19)トリプロピレングリコール 0.2%
(20)水素添加大豆レシチン 0.1%
(21)フィトステロール 0.03%
(22)メチルパラベン 0.05%
(23)ツボクサエキス 0.02%
(24)マデカッソシド 0.01%
(25)ハトムギ種子エキス 0.05%
(26)セラミドNG 0.001%(27)酵母エキス 0.05%
(28)アロエエキス 0.01%
(29)精製水 残部
【0044】
(製法)(1)~(5)、(7)~(19)、(22)~(25)を(29)に投入し、均一溶解するまでプロペラで分散させた(A液)。(6)、(20)、(21)および(26)を(7)に溶解させたのち、A液に加え、均一溶解して化粧水を調製した。
【0045】
実施例18(乳液状シートマスク) (質量%)
(1)ニコチン酸アミド 4.0%
(2)パントテニルアルコール 0.4%
(3)フェノキシエタノール 0.3%
(4)エタノール 0.5% (5)1,3-ブチレングリコール 8.0%
(6)グリセリン 4.0%
(7)アスコルビン酸 0.2%
(8)PEG-60水添ヒマシ油 0.2%
(9)ポリソルベート20 0.1% (10)PPG-13デシルテトラデセスー24 0.1%
(11)トコフェロール 0.005%(12)スクワラン 1.0%
(13)ミリスチン酸オクチルドデシル 0.01% (14)ジメチコン 1.0%
(15)イソドデカン 1.0%
(16)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー 0.04%
(17)カルボキシビニルポリマー 0.08%
(18)水酸化カリウム 0.01% (19)リン酸カリウム 0.01%
(20)キサンタンガム 0.1%
(21)サクラン 0.01%
(22)ヘキサンジオール 0.1%
(23)エチルヘキシルグリセリン 0.1%
(24)メチルパラベン 0.1%
(25)精製水 残部
【0046】
(製法)(11)~(15)を50℃に加熱し、均一溶解させる(A液)。(1)~(10)および(16)~(24)を(25)に加え、50℃に加熱し均一溶解させる(B液)。A液にB液を加え、均一になるまでホモミキサーにて分散し、シートマスク用の乳液状美容液を調製する。この美容液を不織布(材質:レーヨン)に含浸させ、アルミパウチに充填してシートマスクを調整した。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤。(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
【請求項2】
前記(A)~(C)の配合比率が、
(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ((B)+(C))/(A)が0.1以上である請求項1に記載の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤。
【請求項3】
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の光照射によって起こる皮膚化粧料用黄変抑制剤。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
【請求項4】
前記(A)~(C)の配合比率が、
(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ((B)+(C))/(A)が0.1以上である請求項3に記載の皮膚化粧料用黄変抑制剤。
【請求項5】
下記(A)~(C)の含有する皮膚化粧料。
(A)ニコチン酸アミド 1.0質量%以上
(B)パントテニルアルコール 0.01質量%以上
(C)フェノキシエタノール 0.05質量%以上
【請求項6】
下記(A)に下記(B)及び(C)を配合することを特徴とする前記(A)由来の結晶析出抑制方法。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
【請求項7】
下記(A)に下記(B)及び(C)を配合することを特徴とする前記(A)由来の光照射によって起こる黄変の抑制方法。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール%
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本願発明は以下のとおりである。
[1]
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤である。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
[2]
前記(A)~(C)の配合比率が、(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ((B)+(C))/(A)が0.1以上である[1]に記載の皮膚化粧料用結晶析出抑制剤である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
[3]
下記(B)及び(C)を有効成分とする下記(A)由来の光照射によって起こる皮膚化粧料用黄変抑制剤である。
(A)ニコチン酸アミド
(B)パントテニルアルコール
(C)フェノキシエタノール
[4]
前記(A)~(C)の配合比率が、(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ((B)+(C))/(A)が0.1以上である[3]に記載の皮膚化粧料用黄変抑制剤である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明において、(A)~(C)の配合比率は、(B)/(A)が0.01以上、(C)/(A)が0.05以上、かつ((B)+(C))/(A)が0.1以上であることが望ましい。この配合比率であれば、十分なニコチン酸アミドの結晶析出抑制作用、光照射による黄変抑制作用及び塗布後の肌の手触りのきしみ感の低減作用が得られる。さらに好ましくは、((B)+(C))/(A)が1.5以下であれば、十分な化粧料のべたつきのなさ、化粧料の経時安定性が得られる。